『ポンコツ探偵ミナモ(仮)』
-前日譚-
『エレガント探偵ヒカリ /“膨”悪のスケベ犯罪を追う』
ep.1:プロローグ“貧乳女子失踪事件”
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スケベ犯罪シンジケート“珍寶會<ちんほうかい>”。
S県・杯間<はいま>市に、このスケベ犯罪者どもは巣くっている。
でも、好きにはさせない。
この街には私たち──探偵がいる。
……………………
「フッ!!!」
軸足から火花が散る。
「げびっ!?」
回し蹴りは狙い通り頭にヒット。
痴漢は壁に叩きつけられ、意識を手放す。
「エレガントでしょう?」
「……え?」
私の言葉に、少女はぽかんと口を開く。
「自分の蹴りで折れないように、ヒールを特注の金属製にしてあるの」
「……え? あ、はぁ……」
身につけるものまで一流であること。
それが“あの人”に教わった探偵の流儀だ。
「この路地はクズが多いの。助けられて良かったわ」
「ありがとう、ございました……」
俯く少女に化粧っ気はない。
けれども、乳房は十二分に膨らんでいる。
(可哀想にね……)
杯間市はスケベ犯罪の巣窟。
彼女のような豊満な身体では生きづらい街。
「危ない場所なのは知ってたんです、でも……うぅ……」
嗚咽が、少女の言葉を遮る。
──ワケあり、か。
「私は徐王院ヒカリ。探偵よ」
そう言って、名刺を差し出す。
「解決したスケベ犯罪は100を超えてる。悩みがあるならどう?」
……………………
新たな依頼人・千倉ハルキが語ったのは、杯間市ではありきたりな事件だ。
曰く、親友があの路地で失踪した。
警察の捜査はすぐに打ち切られ、家族もそれを受け入れた。
珍寶會は警察内部にも入り込んでいる。
捜査妨害なんて珍しくない。
私は調査を引き受けることにした。
報酬は雀の涙。
けれど、あの子は泣いていた。
弱者の涙を拭くことが、探偵にとって一番の報酬であるべきだ。
……………………
5日後。
「よくまとまっているわ。ありがとう」
私はセダンの中で、タブレットを眺めていた。
『本当に一人で大丈夫かい?』
通話相手の男・新田 綺志郎が言う。
彼は探偵助手。
けれど、私のじゃない。
「心配なら、ミナモから私に乗り換えてくれる?」
『……ごめん。それはできない』
何度誘っても、こうして断られてしまう。
「そう……他人の助手を現場に連れ出すのはエレガントとは言えないわね」
でも、諦めるつもりはない。
助手としても、異性としても。
「それじゃあ、解決したら……どう? ディナーでも」
『ああ、ミナモ所長にも伝えておくよ』
「……デートの誘いなんだけど?」
『えっ、あ──』
返事の途中で電話を切る。
「……バカ」
改めて、彼のファイルに目を通す。
例の路地で行方不明になった女性のリスト。
睨んだとおり、かなりの数だ。
その中には、依頼人の親友も含まれている。
奇妙なのは、被害者たちの体型だ。
バストはAカップ、ヒップも平均以下。
いずれもスケベ犯罪のターゲットになりにくいタイプばかり。
「でも……」
その他の証拠と私の勘は、“あの店”を指し示している。
開店したばかりのガールズバー“BAKA-MELON”。
爆乳の従業員をウリにする穢らわしい店。
裏ではVIPを集めて違法な性奉仕をさせている疑いもある。
例の路地にもほど近く、被害者たちはあの店に運び込まれている……はず。
「被害者たちの体型から言って接客はできない……
その分、裏で仕事をさせている……?」
違和感が拭えない。
でも、数日間の張り込みで、珍寶會関係者の出入りは確認できた。
「だったら──」
組織犯罪を相手にする場合、敵地に潜り込むべき時が必ず来る。
推理力だけでは、この街の探偵は務まらない。
ただ一つ不安要素があるとすれば。
「生理直前の、このムダに痛い腹ね……」
とはいえ、常に万全とはいかないのも、この仕事だ。
「大丈夫、私は一流よ」
私は今夜、BAKA-MELONに潜入する。
それが取り返しのつかない結果を生むとも知らずに──
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