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Skebにて依頼を受けて書きました。
「獣人やふたなりがいる世界で、ふたなり筋肉娘に変わっていく話」です。
全体で19000字オーバー。お楽しみ頂ければ幸いです。
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この世界は残酷だ。
亜人と呼ばれる、人間に限りなく近しいが異なる特徴も兼ね備えた種族たち。
中でも動物関連の性質を有した者たちを獣人と呼び、身体能力が非常に高いことでも知られている。
それらがみな同じ人間として扱われ、とくに大きなトラブルもなく共に暮らしているのだが……。
個人のレベルでみれば、そう綺麗に行く話でもなかった。
「はぁ…………」
俺、玲王は大学生らしいことも何もせず、ただ部屋でゴロンと横になって無為に時間をつぶしていた。
休みの日だったのだが、すでに窓からは夕日が差し込んでおり、とくに出かけるでもなく1日が終わろうとしている。
とはいえ自覚していてもやる気は起きないし、空虚ではあっても後悔はない。最近はずっとこの調子だ。
二次性徴あたりからだったか、亜人たちは一気に身長や体格を成長させていく。
そして、普通の人間である俺たちとは一線を画す存在へと変貌していった。
別に、いじめや何かがあったわけじゃない。経験してきたトラブルも一般的な学生生活の範疇だろう。
ただ……普通に学校生活を送るだけで、覆しようのない差を見せつけられるのだ。
肉体的にも、くわえて勉強面でも、獣人と人間のそれには大きな乖離がある。
例えるなら、プロのバスケ選手に子供が向かっているような感じ。
くわえて……あきらかな差は、日常生活にも現れてくる。
あちら側にも悪意はないのだが、こちらを可愛がったり弱いものとして扱ってくるのだ。
あいつらが本気を出したらこっちが危ないので、自然な振る舞いではある。
むしろ亜人側も配慮した結果だろう。それは頭では理解している。
だが……曲がりなりにも1人の男子として、培ってきた努力は無意味でしかないなんて現実を突きつけられて、無力感を覚えたりプライドが摩耗していくのは避けられなかった。
『王』なんて大それた漢字を名前に使われたことを、今さらながら恨みたくなるくらいには。
こんな名前になった由来としては、なんでも遠い先祖に獅子の獣人がいたかららしい。
本当かどうかも怪しいし、そもそも事実だったところで俺自身は普通の人間でしかない。
薄まりまくった血には何の意味もないだろう。
それでも中学、高校と食らいついてはいたんだが……正直、受験勉強や将来設計を練らされるあたりで折れた。
社会に出るタイミングが近づけば近づくほど、普通の人間は相対的に低く見られていく。
そりゃあ新人を雇用する会社だって心身ともに壊れやすい人間よりも、一度に100キロ以上の荷物を安定して運べて、頭もキレる亜人たちの方が人材として欲しいに決まっている。
就職をはじめとした世の中のことを調べれば調べるほど、見えてくるのはどうしようもない種族の差と、覆しようもない扱い。
……じゃあ、俺は何のために生きているんだ?
自然と浮かんできたその問いに納得できる答えを持ち合わせないまま、大学に入ってしばらく経ったところで、俺の意欲は朽ち果てた。
そんな状態では何かに打ち込むものもなく、ただ留年しない程度にキャンパスに顔を出すだけの無気力な大学生と化していた。
ひねくれた俺の性格を「腐っている」と表現した奴もいた。……が、そもそも腐るような世界だろと言い返したい。
(何も知らない頃の方が楽しかったよな……)
昔はよかった、なんて年寄りじみた言葉だけど、俺の場合は実際そうだとも言える。
それこそ快活な少年だったのだ……自分で言うのもなんだが、当時は別人みたいに明るい顔をしてるし。
証拠だってある。棚の片隅に飾られた、かなり古くなった写真。
満面の笑みをカメラに向けてピースしてる俺と、その隣に立って俺の腕を両手で掴んでいる獣人の少年。
マオ……短く切られた銀髪に、手足の白い毛皮や肉球、頭についた三角形の耳。その見た目の通りに猫族だ。
まだ成長期前だったのもあるけど、俺よりも小柄で華奢だった。
公園でからかわれていたマオをかばったのが最初の出会い。
正義感というか、真っ直ぐだったなと今では思う。
それがきっかけで懐かれたというか、マオにとって安心できる場所ができたのだろう。
俺もそれを拒否する気もなかったし、自然と一緒に過ごすようになった。
気弱でおどおどしてはいたけど、根は真っ直ぐで性格もよくて……兄弟みたいに思われたことも何度かあったっけ。大抵は途中で耳の位置をみて気づくんだが。
ヒマがあれば一緒に遊んだし、親友と呼べる存在は彼だけだったと思う。
「あいつがいたら、少しは変わったのかな……」
少なくともあの頃は、獣人を相手にしても卑屈になる事はなかったし、むしろ対等というか「オレが引っ張ってやるよ!」くらいのノリだった。
それどころか、マオにも直接そんな事を言った記憶すらある。
ただ……そんな関係は唐突に終わりを迎えた。
中学も半ばだっただろうか。
マオの、突然の引っ越し。
本人の口から一言もなかったし、かなり急を要する事情があったらしい。
親からは身体の異常だとか何だと曖昧なことを言われたが……いくら聞いてもそれ以上のことが語られることはなかった。
結局、突然の離別から連絡すら取ることもできないまま、彼とは音信不通となっていた。
(獣人と仲良くなったのって、あれきりだからな~)
自分の人生のピークはあそこだったのかもしれない。
それからすぐ後には二次性徴を迎えて、同学年の亜人たちと差をつけられていくばかりだったし。
そういう奴らとは、同じ目線で友人関係になれる機会もなかった。
じゃあ、もしマオが引っ越ししなかったとして、二次性徴とともに疎遠になったかというと……これはそうとも限らないと思ってる。
そもそも獣人がどうこうというより、マオ自身がいい奴だったから親友でいられただけだった気も──
ピンポーン
「うん?」
思考を遮るように、唐突にインターホンが鳴る。
休日の昼間に誰かがやってくる心当たりもないし、怪しい勧誘とかじゃないだろうなと半ば警戒しつつ玄関に向かう。
ガチャ
「はい、どちら様……っ!?」
ドアを開けて、そこにいる訪問者を見ようとして……固まる。
見慣れた外の光景はそこにはなく、分厚い胸板が視界いっぱいに迫ってきた。
ゆさっ
くわえて、その上に乗っている丸々とした膨らみ。
大きめのTシャツでラフに包まれた乳袋は、想定されたバストよりもかなりデカすぎるようで、見るからに窮屈そうに張りついている。
両サイドに控えているのは、乳房に匹敵するボリュームのぶっとい二の腕、そこから先は毛皮に包まれた前腕と猫っぽい手が連続していて、相手が獣人だとわかった。
強靭な体躯を有することの多い種族だが、その中でも相当に逞しい部類に入るだろう。
「えっと、あの……うちに何か用で……?」
そして俺を見つめる顔は、美女と呼んで差し支えないないものだった。
中性的で、男女どちらからも人気だろうなと思わざるを得ない美貌。
銀色のウェーブがかった長髪はふわふわとボリュームを感じさせながら背中まで伸びている。
こんな獣人の知り合いはいない。
頭に猫耳はついてるけど、あいつは男だし。
正体不明の彼女は俺の顔を見つめて笑みを深くして、やたらと筋肉のついたゴツく太い腕をこちらの後頭部へと回し……。
そのまま抱き寄せてきた。
「やっと会えた~!」
「いや、ちょ……むぐっ!?」
あまりにも力が強すぎて、俺の顔は分厚い胸板にダイブする。
お互い直立していたはずなのに、ちょうど胸の膨らみに顔面が埋もれることになった。
……てか、どんだけデカいんだよこの女!?
俺は平均的な身長で170センチ台だから、前傾してることを差し引いても20センチは高くないとあり得ない状況だ。
くわえて横幅も俺の倍……まではいかないけど、こちらの前面を包み込むには十分すぎる広さがある。
密着してる上半身は筋肉で逆三角形になってるのが、直に身体ごしに伝わってくる。
胸板の厚みは比べるまでもないし、乳房の分を合わせたら本当に俺の倍あるかもしれない。
「ぐっ……っ、んぷっ!」
息を吸おうとしても、密着した彼女の胸板と両腕の圧力がそれを許してくれない。
かろうじて吸えた空気も少し湿ったシャツを介したもので、濃厚な汗の匂いと女性らしい甘い匂いが押し寄せてくる。
顔面と上半身で感じるのは、がっしりとした筋肉と、その上を包む柔らかな肉。
このままじっとしているだけでも、頭がくらくらしてきそうだ。
とにかくこのままじゃまずい。
胸の圧力から逃れるべく必死に首を動かして、ずりずりと乳肉の檻を這い進む。
分厚い胸板から脱出するには、身長差を振り切って上を目指すのは無理がある。
それゆえ、俺の顔は自然と下を向くことになり……
「ぷはっ……うん?」
どうにか下乳を抜けて、拓けた視界。
眼前に迫るボコボコに割れた腹筋の、さらに奥。
ぶっとい太腿も見えるけれど、それよりは手前。
ローライズのホットパンツを履いたその布ごしに、はっきりと浮き上がった膨らみに、俺の目の焦点が合う。
股間についたそれはとんでもなくデカいけど、よく知った形状をしていた。
「いや、え?」
少し緩んだ腕の拘束を抜けるように両腕で距離を取り、身体の主を見上げる。
理解が追いつかないまま固まる俺とは対照的に、相手はニコニコとこちらを見つめていた。
(男……?)
胸とか美人な顔立ちはあるけれど、それでも股間は嘘をつかない。
説明はつかないものの、脳があのときの少年と繋げていく。
自然と口がその名を呟いた。
「マオ……?」
「やっと分かったの~?まぁ仕方ないか、結構変わっちゃったし」
その笑みの奥に、確かにかつての親友の面影を感じた。
困惑、喜び、混乱、動揺……。
色々な感情が噴き出してきて、言葉が出てこない。
俺は、しばらく見つめ合ったのち──
「と、とりあえず、中に入るか」
ドアをめいいっぱい開けて、自室の中へと案内する。
久しぶりの再会は、相手の性別すらも変わっていた。