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フィスト・ドミネーション

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フィスト・ドミネーション
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パン!


鋭い風切音と共に、私の顔面が弾ける。

奥に押し込むようなパンチに、足がぐらつく。


「速い!

ルーキー紺野、グローブの隙間を刺すかのような見事なラピッドパンチ!

式崎、危うい!足に来ている!

残酷な展開に発展するリングに目が離せない!」


上手い。えげつないパンチだ。

無垢であどけない少女が構える、不釣り合いで無愛想なグローブ。

私の皮脂をふんだんに吸ってでテカるそれは、もはやスポーツの道具じゃない。

公式に人に振るうことを許された、凶悪な鈍器だ。


試合前の、年頃でおとなしい女の子の印象とは違う。

構えたグローブの間から覗く目が、

パンパンに腫れた私の顔をさらに作り変えようと研ぎ澄まされている。


この子・・単なる人にパンチを当てる才能だけじゃない。

それだけじゃただスポーツ神経がいいだけだ。

この子のずば抜けた天賦の才能は・・まさに人を殴ることの抵抗の無さ。

そのおそらく無自覚であろう狂気と暴力性。

・・ボクシングという競技の怖さを、こんな女の子から再認識するなんて。


心臓が高鳴る。

怖い。パンチが、拳が、その痛みが怖い。


・・久々だな。この感じ。


プロ始めた頃は試合前、いつも怖かった。

パンチが怖くて、でもどうしても勝ちたくて、泣きながら練習したっけ。


たくさん試合する中で、いつのまにかその痛みにも怖さにも慣れちゃって、

勝ち負けとかもどうでも良くなって、

いつもおんなじトレーニングするだけ。

それなりの試合結果に満足するようになってしまった。


恐怖の中で思い出せたよ。

あの頃の新鮮な気持ち。この痛み。

自分がこんなに負けず嫌いなんだって。


綻び始めたスキーン腺が、下着を湿らせ始めた。

それはまるで暗に敗北を認めるかのように、私の心に影を差す。

無垢で残酷な瞳。高鳴る動悸。


・・でも、それがどうした。

最高に楽しくなってきたじゃん。

やっぱり、ボクシングはこうじゃなくっちゃな。



「デビューの花向けに白星あげようと思ったけどさぁ・・

私もやられっぱなしじゃ、終われないんだわ!」








いつもご支援ありがとうございます。


試合の結果は、、

神のみぞ知る、、



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POSTEDOct 11, 2025
ARCHIVEDJun 10, 2026