女の世界
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「ハァ・・ハァ・・」


ギシギシと背中で軋む音がする。

しまった・・。

左フックを警戒しすぎるあまり、ロープ際に追い込まれていたんだ。


あの女が近づいてくる。爛々と光る二つの目。

どっしりと大きなお尻を重心とした、威圧感のあるファイティングポーズ。

硬く握った拳を包む赤グローブが、ステップと同期して揺れている。


そのグローブで・・また私を犯そうとしているんだ。




怖い。


今まで何試合もしてきたのに、ボクシングを初めて怖いと思う。


ズタズタに切れた口内。

とめどなく溢れる鼻血。

ダメージの溜まった内臓。


アマチュアとは違う、本気で相手を壊しあう闘い。

・・これがプロのボクシング。


これまでの3試合。

決して弱い相手達ではなかった。

けど、この女は違う。


殺意を形にしたような破壊力のあるパンチ。

人間が受けていいパンチじゃない。


いや、それより恐ろしいのは__

常人なら躊躇うであろうそんな恐ろしいパンチを、

人に向けて躊躇なく放つことができる、この女の精神。

完全にリミッターが外れている。


「・・ッ・」


顔面がヒリヒリする。

あの女にぶん殴られて、りんごみたいに腫れ上がった顔。

ママに初めてインターバルでアイシングして貰った。

・・・悲しんでたな。


右目の視界もほぼゼロ。

私の勝てる確率も・・・


ああ。


怖いよ。

痛いよ。

逃げたいよ。




・・・でも。


恐怖以上に。

それ以上に、私の中で何かが目覚めようとしてる。


この女・・

本物のボクサーとの邂逅によって・・!


うまく言葉にできないけど・・。

よく分からないこの気持ちに、

この身体を、命を・・・全部、預けてみたい!



「来なさいよ、この短足ケツでか女・・!

絶対・・一発ぶん殴ってやるんだからぁ・・!」





___

______



ロープ際に追い詰めた小娘が、私に向かって啖呵を切った。

英語だから言葉の意味は分からない。

けれど____




「ふふ・・・

ビビリのくせに、いいカオするじゃない」



一歩踏み出し、互いのパンチが届く間合いに入る。



「ようこそ。 

汗と血の煙る、女の世界へ」




グレース・キャンベル  (174cm 73kg)


天真爛漫なカナダ国籍の19歳少女。

男4兄弟の長女として生まれたことで負けず嫌いの性格が形成される。

5歳から兄達と同様にボクシングを始め、ハイスクール時代は学生リーグで準優勝を果たす。

アマチュア選手として素晴らしい結果を残す一方で、過酷なプロの世界に密かに憧れを募らせていたようだ。

18歳の成人後、親の反対を押し切りすぐプロボクサーへ転向。破竹の勢いでカナダ国内ランク14位に浮上した。

ルックスの良さと抜群のスタイルで熱狂的なファンを集めている。


プロ4戦目のこの日は、ホームのトロントで日本選手との対戦であった。


戦績

4戦3勝1敗 (2KO)







↓髪型違うやつ







あけましておめでとうございます。

今年も一年、よろしくお願いいたします!


これは前回出したものの加筆です。




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POSTEDJan 3, 2025
ARCHIVEDJun 10, 2026