こんにちはこんばんは、ぱぱを🐼🐾です。もうタイトル全然思いつかないので超絶テキトーになってしまった……なんだよこれ。タイトル考えられる人と、登場人物の名前を考えられる人は本当にすごい。偉大。天才。その力を分けてください。
300円プラン以上支援者の皆様、お待たせしました!今月は犬おっさん強化月間ということで、犬おっさんのオカズを持ってきました。ラーメン屋で働く熊おっさんと、犬おっさんのカップル🐻🐕です。字数は約2万4000字程となっております。
イチャイチャな普段の彼らと、それから夜の彼らを是非ご堪能ください。ケモおっさん同士のカップルもめちゃくちゃ好きです。ええ。あと熊おっさんがめちゃくちゃ雄臭め塩気濃いめです。300円プランなのに??
……それと軽いお知らせをば。今までは
◆300円プラン
約2万字前後のものを1作品
◆500円プラン
約2万字前後のものを2作品
4万字前後のものを1作品
みたいな投稿頻度でやってきたのですが、イベントの原稿を考えるとちょっとこれが厳しくなってしまって。なのでしばらくは500円プランでも投稿作品が2万字ぐらいの1本になってしまうかもしれません。すまぬ……。本を出すのと仕事を両立するの、本当に難しいですね。仕事がある日にもっと書ければいいのですが、体が一つしかないのが悔やまれる🐼
というわけでまた前置きが長くなってきたので、ここいらで退散します。今回のお話も支援者様が楽しんでいっていただければ幸い🐕
※以下、本編。
****
手打ち生麺 -味熊-。赤めな背景に達筆な黒文字で書かれたそのラーメン屋は、個人経営のラーメン屋さんだった。実に八時間以上じっくり煮込んで作るそのスープから作られるこってり系ラーメンは、今でこそ一部の客から絶大な支援を得ているのだが……。
俺がここで働き始めるまでは、一日に客が数人来ればいい程度の客入りだった。あんなにうまいのに、あんなにクセになる味をしているのに、他の店では味わえないシコシコの生麺を濃厚なスープに絡めてすするこの瞬間たまらなく体が喜ぶというのに。この店はまったくと言っていいほど繁盛しておらず、俺は日々疑問に思っていたのだ。
……全てはここの店主――響(ひびき)という、まぁ人相の悪い、愛想も悪い、ヒト受けが全くもってよろしくない熊獣人が一人で切り盛りしていたという何とも単純な理由だったのだが。
人生で何度もナンパしてはオトコに振られまくった経験のある、犬獣人にしては可愛げのない老けきった俺。そして人生でオトコ相手に一度も告白したこともないしされたことのないという強面童貞奥手熊獣人。俺たちは二人で、互いに支え合いながら生きている。
今日もまた営業中を意味する”手打ち生麺 味熊”と書かれた暖簾を店の前へ設置し、開店前の準備を終えた。いつもの常連客たちは来てくれるだろうか。はたまた、新規の客は増えるだろうか。それもこれも全ては俺の接客と、アイツの調理にかかっている。
*
俺たちの出勤時間は、意外にも遅い。というのも、ラーメンのスープを作るのは前日の営業時間中にほぼ終えているという理由からだ。お互い朝には弱いから助かるが、逆に朝が弱いということは夜に強いということで……。その、体の火照りが収まらなくなることもしばしば。
「……クアァッ…………ふぁっ……」
目覚ましが鳴る前に、俺はカーテンから漏れ出た朝陽を浴びて起床する。んー……なんか今日は自分の毛皮が湿ってんなぁ。なんだよ、昨日ちょっと風呂入って乾かさずに寝たせいか? 大体は寝てる間に乾くんだがなぁ。そう思って俺は自分が寝ていた布団の方へと視線を移した。
「…………は?」
「グゴォ〜〜〜……グォッ……」
大の字でイビキをかきながらグッスリと眠っている熊獣人。その隣にあるわずかなスペースで俺は寝ていたのだが。なんか……その、えっ、漏らした……? ウソ、だろ? 俺が寝転んでいたシーツ部分には、なぜだか大きな液体染みのようなものが浮かび上がっていた。ウソだよな、ウソだと言ってくれ。自分の股間をまさぐるようにしてパンツを確認して――。
「……あービビった、漏らしてねぇじゃんかよ」
独り言を発しながら、俺は自分がこの歳にもなって小便をしたのかとヒヤヒヤしていた。齢にしてもうすぐ四十になるというのに、まったく危ないところだった。ということは、このシーツにたっぷり染み付いているのは……。
「…………汗、かきすぎだろうよ。おい」
その正体はすぐにわかった。アイツだ。この腹の出てる熊オヤジの――響(ひびき)の寝汗。見るからにじっとりと湿っている焦茶色の毛皮は、ところどころ露のようなものを作ってポタ……ポタ……と垂れていた。さっき湯浴みしてきたわけじゃあるめぇし、ほんっとコイツ汗っかきだよな……。夏場は一緒に寝るのも大変だこりゃ。まぁ、悪い気はしない。
「……うへへへ、スゥッ…………ん゛おぉおっ」
最後に湯浴みして……ええと……三日、だったか。厨房がサウナみてぇに暑い職場で、コイツはもう三日も風呂に入ってない。接客することはないから問題ねぇと言っていたが、コッチは問題あんだよ。クソッ、熟成臭たまんねぇ……。今日こそ風呂に入れてやろうと色々企んではいるのだが、コイツは乗り気になってくれるだろうか。まぁやってみなきゃ何事もわかんねぇしよ。それにしてもはぁ……鼻が曲がるぐらい汗クセェのに、下半身に生えてブラ下がっている俺の愚息は血液を大量に溜め込んで痛いほど勃起しやがった。
「……脱がすぞ」
静かにそう呟くが、目の前で大口を開けている熊の反応はない。むしろ急に静かになって……えっ、おっおい、大丈夫か。さっきまで地響きするほどうるせぇイビキをかいていたはずなんだが。
「……………………んごっ、ふぅぅう……スー……」
最近医者にも心配されている、無呼吸症候群だったらしい。はぁ良かった〜……じゃねぇんだ。おい、ちゃんと呼吸しろや。なに息止めてんだよ。テメェに先死なれたら俺、一生恨んで生きてやるからな。……医者にも酒やらタバコやらを止められまくっているし、俺より長生きする未来がまるで見えない。塩分の摂りすぎでラーメンも本当はあまり食べちゃならねぇと言われているらしいが、よくこっそり食べているのを見かける。少なくとも定年までは生きててもらえるよう、俺も全力でサポートしてやりてぇんだがなぁ。
そんな無呼吸を心配する前に脱がしたトランクス。俺は軽くそこに鼻を当てて、ニシシと笑う。どうせ見てねぇんだから好きなだけ嗅いだっていいだろ。……あ〜〜くる、くるくるっ、鼻の奥までガンガンに犯すようなこのドギツイ汗のニオイ、たまんねぇよ……うっ……。と、俺はそんなことするためにこの7Lサイズのパンツを脱がしたわけじゃねぇ。コイツのぶってぇムスコに挨拶するために脱がしたんだぞ。
「はぁっ……蒸れてやがる。昨日も風呂入ってねぇし、うっわ……」
自分のものよりも遥かに長く、太い肉竿。それでいて仮性包茎。皮を下にずり下ろすような感じで握ってやると、カリの周りには恥垢と呼ばれる垢の塊がいくつかこびり付いていた。あんましいい味はしねぇんだけど、コイツのなら……。俺は長い舌を巻き付けるようにして擦り、恥垢を削ぎ落としていく。う゛ぇっ……マズルん中に不快な味が広がっていった。しょっぺぇ。やっぱ食えたもんじゃねぇなこんなの……。
「ん゛っ……んぶっ、お゛っ……」
本当なら今すぐに胃袋の中を洗浄して吐き出したい気持ちに駆られるのだが。俺は逆に興奮して、鼻息を荒くしながらもっと奥まで咥え込んでいた。いつものことだ、コイツの汗のニオイには媚薬みてぇなたまんねぇ香りが含まれているに違いねぇ。奥まで咥えこめば陰毛のモジャモジャ地帯に鼻を埋められるから、俺はそれを目標にして喉奥までコイツを咥えてやる。前は喉の肉が全然拡がらなくて半分も咥えられなかったが、慣れというものは恐ろしい。今では喉仏あたりが大きく隆起するほどまで咥えられるようになった。それもこれも、ほぼ毎日しゃぶり尽くしているお陰とも言える。
「う゛〜〜……ん゛っ、ん゛⁉︎ …………ん……んぐっ……」
……ふぅん、もう出しやがった。今日は随分と早ぇな。刺激に弱い亀頭をキュウキュウに締め付けてやったからだろうか。苦くて、喉に絡みついて、味もそんなによくねぇし、何好き好んで俺はコイツのブツを咥えてご奉仕してんだろうな。
「ん゛……んぶっ……ふー…………ごちそっさん。おい、起きてんだろ。朝だぞ、起きろや」
射精したということは、意識が覚醒したということ。俺は喉のイガイガと口臭の雄臭さを気にしながらも、コイツの腹をペシペシ叩いてやる。それにしてもまた一回りデカくなったような気がするな。大太鼓を思わせるようなこのボヨンボヨンの腹は、俺の大好きなポジションの一つ。ここで馬乗りになって上下に跳ねると、昔どこぞの公園にあったフワフワドームなるゴムのトランポリンを思い出す。
「…………ん」
「ん、じゃねぇよ。挨拶」
「…………おっ、おう、おはよ……」
響のヤツは、普段寡黙で全然喋りやしねぇ。だから人付き合いも苦手だし、接客なんかもってのほか。こうやって挨拶するのもどこか恥ずかしがっているし、相変わらず変わらねぇやな。俺は毎日こうやって挨拶しながら会話の重要性を教えてやっているのだが、まだまだだな。一年ぐらいじゃダメ、かぁ。こればっかりは根気強くやっていかねぇと。
「んん……ふぅ……今日も、すまねぇな。気持ちよかった……」
「ん? あぁ。まぁ俺の日課みてぇなモンだし、気にすんなよ」
……実のところを言うと、コイツめちゃくちゃ寝つきがいいから全然起こせねぇんだよな。だから最初、目覚まし時計を五つ鳴らしたり、目の前でフライパンをなんかの金属棒で叩いてみたり、色々やってみたんだが……ほんっとに起きねぇの。だから昔は営業時間もまばらで、寝過ぎるせいで昼間営業時間を過ぎて夕方四時頃から営業し始めたり、何なら突発的に定休日になったりした。俺がいなくなったらコイツ、多分一日中寝っぱなしじゃねぇかな。今までどうやって一人で生きてきたのか、是非ともビデオで映像を流しながら酒でも飲んで見てみたい。
「……オレも、その、やっ、やった方がいいか」
「あ? いーよ別に。朝の作業とかあるだろ?」
「…………ん」
めちゃくちゃ申し訳なさそうな顔をしながら胸の前で腕を組む、俺よりも断然体格がいい大熊。まぁその、こっちもしゃぶってもらいてぇ気持ちはあんだけどよ。恐る恐る舌を差し出して、ゆっくり咥えて、蚊が止まるようなスピードで頭を動かすフェラチオはまぁ……定休日前とかにしてもらえりゃいいかな。
「ほら、早く顔洗ってこい! 俺はほら、大丈夫だ。コイツで一発抜いとくから」
「……あ゛っ、ちょっ、返せ‼︎ コラッ!」
「コイツは朝抜き代として頂戴しとくからな〜〜。へへっ」
一体どうやったらこんなにパンツの脚穴が広がるかわかんねぇ。ふってぇなぁ。俺の二倍以上あるんじゃねぇのかと思えるようなサイズ。まぁコイツは洗濯機にぶち込んでおけばいいんだが……俺はご褒美と称して朝から響のパンツを鼻に押し当てて抜くのが日課となっていた。
朝飯は取らず、起き抜けすぐにアイツは出勤しちまう。といっても二階建ての建物の一階に移るだけなんだがな。そこでチャーシューとか、トッピングとか、そういうのをつまみ食いしながら腹を満たすらしい。お前本当にそれだけか? 本当はこっそり何か菓子でも摘んでるんじゃないのか? そう思うのだが、厨房に隠されたモンは俺じゃ探し出せねぇからな。医者にも程々にと言われてるせいで、最近こっそり食べやがるしよぉ……。
*
「お〜い、特盛り二丁入ったぞ」
締め切った厨房の扉をほんの少し開け、俺はオーダーを通してやる。本当はもっと換気ができそうな、開けっぴろげの厨房がいいんだがなぁ。自分のキツい体臭が外へ漏れねぇように、換気扇だけで厨房の空気を回しているんだとか。確かにこのドギツイ汗のニオイがラーメン食べてる時に漂ってきたら、そりゃもう食欲も失せるわな。逆に性欲の方はビンビンになっちまいそうだが。
「…………」
返事がないところを見ると、彼に余裕なんてものはないらしい。それはそう、だって最近の昼時はいつも満席で列が出来るほどなのだから。今思うとこの状況自体が信じられない光景だ。昔はなんたって客同士の会話もねぇから、店の中に設置された古いタイプのテレビの音が一番うるさかったからな。
「しゃーねぇ、そろそろ手伝ってやっかねぇ……」
客もあらかた入れ終えたし、食券も全部受け取ったし、ここからは店主である彼のアシスタントとして提供物のトッピングや、器や、注文された飲み物などを準備してやる。バイトを雇えばいいのだが、こんな雄クッセェキッチンに若者を長時間拘束するわけにもいかねぇしよ。……うへぇ、今日も汗のニオイやっべぇや。濃い味ラーメンと同じぐらい、響の黒シャツはいい出汁がとれそうだ。
「じゃーこれ、持ってくぞー」
「…………」
何も言わないということは、肯定の合図とみるからな。少しぐらいは会話しろっていつも言ってるんだが、やっぱ余裕がねぇウチは無理かねぇ。厨房の空気がなるべく外へ漏れ出ないよう扉の開け閉めを最小限にしたあとで、俺は一番客である牛獣人と虎獣人のペアへ特製ラーメンを差し出した。
「へい、おまちー」
雑な接客だが、響が接客をやっていた時と比べれば随分とマシな方らしい。これでマシって、一体どんなやり方でラーメン渡してたのやら。まぁ想像がつかねぇことはないが、きっとあの怖ぇ顔しながら無言で机の上に器を置いたりしてたのだろう。
「いや〜うまそっすね、いただきやす!」
後輩っぽい若虎獣人は、真っ先に割り箸を手にとって麺をすすり始める。いい食べっぷりじゃないか。こういう客の姿が見れるように、アイツも厨房なんかに引きこもってねぇで外に出てくればいいのにな。
「これ、店主からサービスっす」
「お〜悪いねいつも。ウチの後輩の分までくれちゃって」
「いやいや、響の……店主の指示っすから。それに一番ご贔屓にしてくださってるわけですし」
俺は無言で預かった味付け煮卵とチャーシューを彼らに渡し、お礼の言葉を受け取った。近所で現場仕事をしている牛の彼は、今日ここに来ている客の誰よりも常連さんだ。毎日ラーメンばっかり食って栄養バランスは最悪だろうに。だけど彼はこの味が大好きだからと言って、ニコニコしながら何回も食べにきてくれる。
「しっかしここの店主さんってどんな人なんすか? 何回か来てるっすけど、まだ一度も見たことないっすよ」
無邪気そうな後輩虎が、そう俺に聞いてきた。うーん……職人気質、はあながち間違っちゃいねぇけどな。ラーメンのことになったら寝る間も惜しんで研究してるぐらいだし、発情期になったらムラつきすぎて一日中センズリこきまくってる日だってあるし。要するにハマりやすい体質ってヤツだな。
「牛川先輩は見たことあるんすか?」
「んー、俺も見たことはないがなぁ。なんでも物凄い大男だって、この犬の店員さんが言ってたぞ」
「へぇ。オレたちもガタイじゃ負けちゃあいられないっすね」
……オレ、そんなこと喋ってたっけか。確かにまぁ、大男ではあるか。オレがジャンプしてようやくアイツの頭部にギリギリ手を置けるぐらいだし。
「店主さんによろしく頼む。いつもトッピングサービスしてくれて助かるって言っといてくれ」
「……うす」
現場仕事しててガタイが良くて、髭を生やしてて男らしくて、それでも愛想のいい獣人もいる。目の前の仕事がデキそうで後輩からも慕われてそうな牛獣人と、厨房の奥で引きこもりながら調理しまくってる熊獣人と、どうしてこんなにも差が出てしまったのだろうか。考えても考えてもわからないが、これもまた性格ないしは個性ということで。
昼時の混雑時間が終わり、昼営業を終える十五時頃になるとようやく俺たちも休憩だ。夕食時にもまた店を開けるのだが、何時までやっているかはその時の材料ないしは響の気分次第。……せっかく客との話題にも挙がったわけだし、今日はアイツを連れてある場所へと行こうと思う。いつまでも体臭気にして厨房に引きこもっているこの引きこもり風呂嫌い絶倫巨根熊に、外の空気を吸わせてやらねぇとな。
「……ほれ、賄いだ」
「あーサンキュ。……へへっ、うまそう」
「…………」
昼間の最後の客を見送り、熊の汗でサウナみたいになった厨房へと戻る俺。すると中にあったテーブルにはどんぶりに麺が大盛り乗っけられたラーメンが湯気を出しながら俺を待ってくれていた。
「なぁ、今日はもう店閉めちまおうぜ」
「……あ? まだ材料は残ってっぞ」
「そりゃそうだろうな。俺もさっき冷蔵庫ん中チェックしたし。それよりも、だ」
スン……スンスン……。厨房の中がジメジメとした空気で満たされている原因となった人物に俺は鼻を近づけ、ニオイを嗅いでやった。わざとらしく大きく吸い込んで、咳き込みながら。これには響のヤツも少し不快に思ったのか、太い眉毛をキッと逆ハの字にしながら俺を見つめてきた。
「……響お前、もう三日も風呂に入ってねぇだろ。汗クセェぞ」
「…………」
「風呂嫌いなのはわかる、わかるぞ。濡れると毛皮も乾かすの面倒だし、そもそも体を洗うこと自体が面倒なのもよ〜く知ってる」
「…………」
正直言うと、この蒸れた熊のニオイはたまらなくムラムラするからずっと嗅いでいたい。が、一般的にはウけないニオイなのでしっかりと汚れは落とすべきだと思っている。そう、自分自身の欲望を抑え込んでまで俺はコイツに風呂へ入ってもらいたい。そしたら客と対話する時間も増えるだろうし、コミュニケーションの取り方も学べるだろうし、いいこと尽くめだろ?
「お前が風呂に入りたくなるように、いいとこ連れてってやるよ」
「……いいとこ」
「最近出来たんだとよ。まぁ今日は俺の奢りにしてやらぁ」
どうだ、ついでに風呂上がりのコーヒー牛乳もサービスでつけてやるぞ。そう言ってはいないが、響はカロリーの高いモンが大好きだからなぁ。最近医者に止められて酒とタバコは控えっぱなしだったし、たまにはこういうご褒美があってもいいだろう。サプライズ的な感じで、風呂から上がったら自販機で買ってやるとしよう。
「………………」
「なっ、お前なにいきなし勃起させてんだよ‼︎ ちげぇよ! いいとこってそういう意味じゃねーよ‼︎ ったくなに考えてんだこのどスケベ熊が‼︎」
だが俺の想像の斜め上をいく彼は、どうやら“いかがわしいお店”に連れて行ってもらえると思ったらしい。アホか、そんな鼻が曲がるほど雄クッセェヤツが見知らぬオトコに抜きサービスをしてもらえると思うなよ。それに俺というものがありながらコイツは……。
「…………その、悪い」
「ほんっとお前、頭ん中ピンク一色だよな」
恥ずかしかったのか、エプロンの下で隆起している彼のデカブツを押さえ込むようにして手のひらで隠し始めた。そんなもので隠せるほど小さかねぇのに。……ちょっとムカついた。それは俺のブツが決して短小だから、というわけではない。決して。それに人間よりはデケェんだ、もっと小せぇヤツがいるから落ち込む必要なんてない。そうだ、きっとそう。
自分より下のサイズの人のことを考えながら、俺はとてつもない罪悪感に襲われていた。というより、虚しくなった。はぁ……何食ったらあんなにぶっとくなるんだ。俺も肉竿が太くなるトレーニングとか、薬とか、そういうのに手を出すべきなのだろうか。きっとこれは、一生悩むべき問題なのだと思う。
*
足取りが重い。そんなに行きたくないか、そんなに入りたくないのか、風呂。俺に引っ張られながら何とかついてきている、だが隙を見て帰りたいという思いが彼の手のひらから伝わってくるようだった。……肉球、めちゃくちゃ汗ばんでる。
「…………」
「ついたぞー。ほれ、そこに靴入れて鍵くれ。俺が受付けしてきてやる」
響が汗まみれのサンダルを脱いでいる間、俺は先に行列ができているカウンターへと向かった。しまった、今日は世間一般でいう休日だったか。あちゃー……コイツ人混み苦手だからなぁ。明日にしとけば良かったか。こういう土日や祝日がわからない業界で長く働いていると、曜日感覚が狂ってしまう。なるべく響に負担がかからなそうな場所で風呂に入らせるしかねぇか。
「……なんだ、今日はこの旅館に泊まりか?」
「泊まりじゃねぇよ。ココはなぁ、温泉だけじゃなくて漫画読んだり、テレビ見たり、寝転んだり、色々できんだよ。宿泊施設じゃねぇんだ」
「風呂屋、なのにか?」
「ああ。お前、まさか昔ながらの番台と銭湯みたいなのしか知らねぇのか?」
「…………外で風呂なんか、親父に連れてかれた時ぐらいだ」
ええと響の親父さんが死んで、もう十数年ぐらい経ってるはずなんだがな……。となると学生の頃か、下手したらもっとガキの頃に行ったっきりかよ。そりゃあ何か困ったような顔しながら俺の手を離さないわけだ。初めての場所になると、響はいつもこうなる。根っからのビビり、なんだろうな。今時そんな銭湯、老朽化とかの理由でそもそも残ってるところの方が少ないっての。
「こん中、結構入り組んでっからよ。離れるんじゃねぇぞ」
「……ん」
ちなみに響は超がつくほどの方向音痴だ。下手に一人で行動させたらいつ合流できるかわかったものじゃない。それを危惧して本人も離れないように腕や体が引っ付くぐらい近づいてくれているのだが、これがもうまたムラッとくる。やめて欲しいとは言わないが、蒸れた毛皮を俺に押し付けんじゃねぇや。う゛っ……今日はとびきり汗クセェな……。横を通った子連れの家族が通りざまにコチラを見ていたから、おそらく周りのヤツらにもかなり悪影響を及ぼしているだろう。これはさっさと体を洗わせて、汗や皮脂汚れを落としてやらねぇと俺まで飛び火しちまう。
男湯という文字の入った暖簾をくぐり、俺たちは脱衣所へとやってきた。やっぱ今日は混んでんなぁ、ロッカーが全然空いてねぇじゃんか。たまたま一つ空きを見つけたが、ここは二人で一緒に荷物をまとめる他ない。
「うひょ〜……ひひっ……」
……おっと、つい声が漏れちまった。なんだよ、今日はガキばっかりかと思ったらちゃんといるじゃねぇか。ガタイのいいあの若獣人グループたちは体育会系のサークルか部活動の集まりだろう。見るからに男臭そうな、芋臭そうな顔をしてやがるヤツが何人かいるな。カァーッ、ケツの一つや二つ揉みしだきながら首元のニオイ嗅ぎてぇ〜〜。若いヤツの汗のニオイ、きっとたまんねぇ香りなんだろなぁ。
「おい」
「……い゛っ⁉︎ お前、その馬鹿力は反そっ、ぐっ‼︎」
「……どこ見てんだどこ。着替えるんじゃねぇのか」
「わっ、わーってるよ! ってかお前脱ぐの早ぇな!」
若ぇ雄に目を奪われていると、響は俺の腕を掴んでグッと近寄せてくる。脂肪たっぷりの腹で体がボヨンと跳ね返り、俺の毛皮に熊の汗がほんのちょびっと染み込んだ。生温い、ちょっとベタつくような汗だ。一度毛皮下の肌に染み込んだらニオイが取れなそうなタイプ。こりゃ後で自分の腕に染みついたニオイを嗅ぎながらセンズリがこけるな……ふぅ……。
「なんだよ、タオルで隠しやがって」
「…………マナー、だろ」
「んなマナーねぇよ! どこで習ったんだ。男はなぁ、こうやって堂々とちんぽこ出して歩けばいいんだ! ほら、見てみろ! 股にタオル当ててるヤツの方が少ねぇだろ?」
自分よりも遥かに巨根でいいモン持ってんだから、恥ずかしがるこたぁないだろ。逆に俺のモンを見てみろや。どうだ、人間よりちょいデカぐらいで獣人にしたら小せぇだろ? ダチにコイツをバカにされたことも数知れず。そんなちんぽこでも見せつけるように堂々と歩いてりゃ男らしくなんだよ。まぁお前のはそこらのガキから見たらグロテスクだろうがな。
「肩にタオル引っ掛けて……そうだ、そうそう。下ぁ向くな、前を見ろ。……いい面構えになったな」
「……ぐぅ」
真正面から見た響は、正直めちゃくちゃ男前でカッコ良かった。太眉、顎髭、顔つき、やっぱコイツの全てが大好きなんだと再認識する。そのせいで見せつけながらブラブラしていたちんちんがちょっとばかし硬くなっちまったが、まぁすぐに落ち着くだろう。それよりも響の方が心配だ。
「なに顔んとこ、赤くしてんだよ」
「……っ、してねぇよ」
「ふぅん。どれ」
そんな口実で、俺は響の顔をより近くで覗き込むようにして観察する。ここでいっそ、マズルを奪ってちゅーしてやろうかと思ったけれども。公共の場だし、それにいっぺんだけでもキスしたら響は発情モード入っちまうかんなぁ。あんまし前戯をしっかりやっちまうとめちゃくちゃ燃えるタイプ。だからガッツリやりたい時は一時間以上じゃれあってるし、そうじゃねぇ時はサクッと終わらせる為に即ハメだ。
「……ししっ、まぁどっちでもいいや。それよりマッパのまま突っ立ってねぇで、早く風呂行くぞ風呂」
そう、入り口はもう目と鼻の先だ。俺は先陣を切って引き戸を開けると、中から夏場の厨房へ入る時に降りかかる熊の汗で作られた蒸気みたく、大量の白いモワモワが俺たちの体を包み込んでいった。当然雄熊のキツい饐えたニオイはしない。温泉特有の、何というかな……石鹸系の香りがする。こういうのも悪かねぇんだよなぁ、鼻がツンとなるぐらい雄クセェのもいいんだけどよ。
「まずは体洗うぞー。そうだな……おっ、端っこが空いてるじゃねぇか」
ロッカーがほぼ全部埋まっているとはいえ、洗い場はそこまで人で混雑していない。おそらく長風呂をしている客が多いのだろう。当然の如くメインの大風呂には大量の人間や獣人がピクリとも動かずに湯で温まっていた。あそこん中に響が入れるスペースあっかなぁ。となるとじっくり体を洗って、先客が出ていくことを期待した方がいいか?
「へへっ、二人で風呂なんて久しぶりだなぁ」
「…………何、してんだ」
「何って、お前を洗う準備だよ」
「……自分で洗えるからいい」
「いい、じゃねぇよ。よかねぇわ。お前、一人で風呂入ってると二分ぐらいで出てくるだろ。体も満足に洗えねぇ大人の面倒を見てやろうって言ってんだよ。まぁ介護だな。大人しく座ってろや」
「ぐっ……」
かなり不満そうな、渋そうな顔をしてきやがった。ふぅん、これはこれでそそる顔だ。俺は響のデカケツで潰された可哀想な洗い場の椅子を見てニヤつきながら、彼の真ん前で胡座を掻いて洗う準備をする。まずは……そうだな、ここがいいだろう。
「ほれ、足出してみ」
仕事柄、厨房の中では水で滑りやすいので響は長靴を着用しているようだった。そのせいで随分とまぁ蒸れて、毛皮の内側にまで饐えたニオイが染み込んじまっている。だから汚れも臭いも、完全には取れやしないだろうけども。足の裏って全身のツボみたいなものが揃ってる箇所だし、ちょっとばかしマッサージしてやってもいいか。これでちったぁ元気になってくれりゃあいいんだけどな。
「……でっけぇなぁ。俺の手のひらじゃ敵わねぇや」
自分の手のひらと、響の足裏のサイズを比べながら俺は言う。何もかもが規格外サイズ、たまらねぇ。本当なら指を一本ずつ、ついでに指の間も舌で舐めながら掃除してぇ所ではあるが……。公共の場ということを考えて、今日は我慢するとしよう。
「ん゛っ、んんぅ……」
「お〜ら、気持ちいいだろ」
「……う゛っ、ん゛っ……くすぐった……」
前に見た時より、触った時より、随分と肉球の触り心地が良くなったような気がする。足なんてケアするのはオンナぐらいだろと最初はめちゃくちゃ嫌がってクリームを塗らせてくれなかったが、最近毎晩せっせと塗りたくった甲斐があったというものだ。ツヤツヤ……とまではいかないが、肌へ当てる感触は十分気持ちがいい。
「……うわっ、泡の色‼︎」
土汚れでもついていたのか、俺の手のひらへ大量に擦り付けておいたボディーソープの泡がなんだか燻んだ色になっていて……。毛皮の内側で大量の汗がこびり付いていたのだろうか、これは二度洗いしないと完全には汚れが落ちないだろう。黒カビを落としたかのような色の泡をどんどん流しつつ、俺は足の裏を熱心に揉み続けた。
「んー……また腰んところ痛めてんのか。ココが張ってんなぁ」
「ぎっ……ん゛うっ……おい、もうそのぐらいにし……い゛っ⁉︎」
足裏のツボを見れば全身どこが悪いのかわかる、熟練のマッサージ師はそう言っていた。そんなものが簡単にわかってたまるかと思ったこともあるが、響の足裏を何遍も触らせてもらったことがある身としてはあながち間違いではないらしい。特にこの、踵の方に近い足裏部分を指で軽く押すと激痛で目がガン開きになって……。
「…………な゛っなぁ、その、あ゛っ、あとで……」
「じ〜〜っくり湯で体を温められたら、帰って腰も揉んでやるよ。湯に浸からねぇ風呂嫌いの悪い子にしてやるマッサージはねぇぞ」
「…………」
これでやる気のスイッチが入ってくれるといいのだが。特に何も言い返さないということは肯定、でいいんだよな? な? 勝ち誇ったニヤケ顔を見せてやりながら、俺はシャワーで流しながら二度目の足洗いを終える。うん、まぁ無臭とまではいかないが大分マシになったはず。厨房で使ってる長靴もそろそろ新しいヤツに変えさせた方がいいだろう。……ああ、履き潰したヤツは俺が責任を持って処分してやるとしよう。捨てるのは……そうだな、数年後ぐらい、でいいだろうか。俺も使う、からな。
「……交代だ」
「んおっ⁉︎ なんだなんだ、うひゃっ、ひゃっ! お前、ちょっくすぐった‼︎」
これから時間をかけて上半身も洗ってやろうと手に持った白タオルを奪われ、俺は響が座る椅子の前でよくわからないくすぐりを受けていた。いや、本人からしたらこれは……洗ってくれている……? いつも俺をマッサージしてくれる時は力加減をミスって骨が折れそうなほど馬鹿力を込めてくるのだが、今日は真逆。めちゃくちゃこそばゆい。力の抜きすぎで、まるでくすぐりの刑を受けているかのような洗い方だった。何なら手という天然のタワシで洗ってくれてもいいってのに。逆にタオルなんか持って擦り付けるから余計に力加減がわからなくなってやがる。
「…………へへっ、あんがとよ」
響は何も言わない。ミラー越しに彼の顔を見たけれど、その顔は真剣そのものだった。そうか、ならお言葉に甘えるとしようか。めっちゃくすぐったくて勃起しかけたけども。
洗いっこ、いいな。昔は親や兄妹とよくやったものだが、最近はずっとコイツとやり合っている。といっても毎日風呂に入る俺と、たまに風呂へ入る響とじゃ中々入浴タイミングが被らないのだが。これを機に風呂嫌いが治ってくれねぇかな〜、一緒にこうやって温泉に行くの俺好きなんだけどな〜〜。……な〜〜。目でそう訴えかけてみたのだが、コイツは全くと言っていいほど俺の顔を見やがらねぇ。どこ見てんだよどこ。俺の背中、何かついてるか?
「……肉付きが良くなった」
「へ?」
「いつも重いモン、運んでるから」
「あー……そう、だな。お前の作るラーメン、めちゃくちゃボリュームあって器を運ぶの大変なんだぞ。わかってくれたか?」
昔は手掴みで直接持っていってたものだが、最近はお盆なんかを使って客までラーメンを運びに行っている。それがまぁ、どれもこれも特盛りだったりトッピングマシマシだったりでめちゃくちゃ重てぇのなんのって。ドカ盛り、なんて名前で超大盛りラーメンメニューを開発したら一部の体育会系学生や物好きな社会人に注目されるようになっちまって、今や昼時はそこそこ客の入る有名店だ。
バイトの一人、雇ってもいいだろうに。俺の仕事の負担を減らしてくれよと何度も言っているが、響はどれだけ忙しくなろうと、仕事が追いつかなくなろうと、新規の働き手を雇わない方針らしい。それがウチのやり方だと言われてしまうと何も言えなくなっちまうが、何とはなしにアイツの気持ちは察していた。……単に愛人である俺以外の獣人をこの店の従業員スペースに入れたくないだけだろう。ナワバリ意識っつうのかな。執着心といい、嫉妬心といい、熊獣人はそういう部分が強く出ちまう生き物だから。
「…………んおっ」
突然ボフッと肩に何か乗っかる。何事かと鏡を見てみれば、そこには目を瞑りながら俺に頬擦りしてくる響の姿が映っていた。周りも気にせず、そんな急に体を密着させられたら……その……。
「コラッ、ここではお預けだお預け! どいたどいた!」
「…………ぐぅ」
熊の熱であやうく勃起しかけたところを、俺はちんちんが萎えるような妄想を瞬時に頭の中で思い浮かべて事なきを得た。不意打ちでこういうことやってくるの、本当にズルいよな。奥手に見せかけて、ちゃんとヤることはヤってくる。油断ならない相手だと思う、それと同時に……これ以上ないぐらい理想な恋人だとも思っている。
「さーさー、洗ったらじっくり温まるぞ。体洗うのはまぁ前戯みたいなモンだ。お楽しみはこっからだぜ?」
そうだ。俺たちは体を洗いに来たんじゃない。いや洗いに来たんだが、メインはこっちだ。十種類以上ある湯船の中でも人気なのはぬる〜い湯と、泡がボコボコ出る湯、それから体毛に泡がつくシュワシュワの炭酸水みたいなお湯だ。このデケェ熊が一人入っただけで浴槽がミチミチになっちまうから、まずは空いている場所に行くのが良いだろう。……ははぁ、いいものを見つけた。
「響、お前これ入ってみろよ」
「…………電気?」
「ビリビリ〜ってきて気持ちいいんだぞ」
ちょっとしたイタズラ心というヤツだ。俺は誰も入ってなさそうな“電気風呂”と書かれた札を指差しながら、響の背中を押してやった。為すがままに奥へグイグイと追いやられたコイツは、少しだけむぅ……と考えながら恐る恐る湯に足をつける。
「……あ?」
「そこはまだビリビリこねぇんだなこれが。もっと奥の……そうだ、あそこの座るとこ。行ってみ?」
ああ、ちなみに俺は電気風呂が大の苦手だ。温泉施設でダチから入ってみと言われて興味本位で体を入れたらビリビリきて、尻尾の毛が膨れ上がるぐらいビビって、それからは一度も入ったことなんてない。あんな風呂、誰が好んで入るんだかわからねぇや。だから今日は俺も誰かにこの気持ちを味わわせてやろうと思ってなぁ……ひひひ。
「…………?」
「え? ビリビリ〜ってきたろ?」
ハテナを頭の上に浮かべながらコチラを見て、まぁとりあえず座るか的な感じで風呂内の腰掛けにズッシリと重たい尻を乗せる。そこ、横からも背中からもビリビリくる風呂のはずなんだがな……さては機械が止まってんな? 悪運の強いヤツめ。
「いやそんなはずな……ん゛おぉおおっ⁉︎」
何食わぬ顔で湯に浸かったままの響を見て、俺は油断していた。手にくるこのビリリとした感触、全身が震え上がるような妙な刺激。湯船の中でブワッと広がる自分の尻尾が、感情を的確に表している。恥ずかしくなって股の間に尻尾を挟み込みながら、俺は響の顔を見上げた。すると急に口角を上げて勝ち誇った顔をするモンだから、尚更ムカついて――。
「……なぁ、一緒に入ろうや」
「あっ、いや、俺は、いいや。俺、泡の風呂の方が好きだからさ。…………腕、離してくんねぇ?」
毛皮の内側まで指を埋め込むほど力強く握られたその腕は、何やら怒りのような感情が流れ込んできているような……。そんな気がした。
「いやっ、ビリビリは俺ダメなんだって! うわっわっ引っ張るなっ、引っ張るなーーーっ‼︎ あ゛〜〜〜っ‼︎」
俺はこの時、初めて知った。毛皮の厚さ、脂肪の厚さ、そういったもので電気に対する耐性が人それぞれ異なるのを。俺はどうやら電気を感じやすい体質だったらしい。多分今後一生、電気風呂に入ることはないだろう。俺がゲッソリとした顔で湯から上がった時も、響はなんだか心地よさそうな感じで電気風呂椅子に座ったまま風呂を楽しんでいた。
*
「響ぃ……そろそろキツくなってきたろ?」
「……」
「…………ふぅん」
隣で座る大熊に耳打ちするようにして話しかけても、コイツは岩のように動かない。首から、腕から、色んな箇所から汗がボタボタ滴り落ちているというのに。……俺たちは十種類の湯を全て堪能したあと最後にサウナでキめてから帰ろうとしていた。もう入って……十五分は経ってるぞ。それなのに響は暑そうにしながらも全然出る気がないようで、俺は今にも倒れそうなぐらいゼェゼェ呼吸を荒らげていた。
「わっ、わかった、俺の負けでいいから、出ようぜ、な?」
「……風呂上がりのビールがうまくなるんだろ? ならもうちょっと汗を流しておきたい」
「…………も、もう充分じゃねぇか、ひっ、はひっ……」
熊は体毛がゴワゴワで暑がりな種族だと思ったから、サウナ勝負をふっかけたら絶対勝てると思ったのだが。ラーメン屋の厨房で働いている経験が活きているのか、汗をかいてもそれを耐え抜くというスキルが充分に備わっていたらしい。おかげで俺の方が先にバテてしまい、正直立ち上がるのもキツくなっていって……。
「う゛〜〜……わり、響、俺、倒れそう……う゛っ……」
コイツの我慢大会に参加するのはもう懲り懲りだ。そう思った瞬間、目の前が真っ暗になった。
「ひっ……ひっ……んん……」
「お〜い、生きてるか〜」
ベンチか何かの硬い床上で、俺はものすごい風に吹かれながら体を乾かされていた。響の声がする、そう思って腕を伸ばしたら手を握ってくれた。やさしい。……でっけぇなぁ手。俺もそんぐらいデカい体格に恵まれたかったよ。そんなことを思いながら俺は全裸で汗をビチョビチョ垂れ流していた。
目元を覆っていたタオルを取り払うと、そこにはもう着替えて帰り支度をしている響の姿が。ウチワを仰ぎながら何だか申し訳なさそうな顔をしているのがまた可愛いな。……あれ、さっきサウナ、俺たちサウナに入ってなかったか?
「ひゃっ、つめたっ‼︎」
「……ほれ」
ビール、ではなく水。響きから手渡されたヒエヒエのペットボトルを、俺はゆっくりと流し込むようにして飲んでいった。……うめぇ、風呂上がりの飲み物は何もビールやコーヒー牛乳じゃなくても充分すぎるほどうまい。生き返った。だけどまだ頭がクラクラする。う〜……。
意識が覚醒してくると、俺はサウナでプツンと糸が途切れたみたいにぶっ倒れたことを思い出した。そうだ、そんなことあったな。はぁ〜……。よく死ななかったな俺。
「着替えられるか?」
「…………このまま全裸で帰りてぇ」
正直まだ体全体が熱を持っているように暑い。マッパで帰れたらどれだけ気持ちがいいだろう。そう思いながら響に提案するも、どうやら彼はそれを受け入れてはくれないようだった。彼だけでなく、世界が受け入れてくれないようだ。おそらく猥褻物陳列罪でお縄になること間違いなし。
「バカ言ってんじゃねぇや。服、持ってくる」
「…………おう」
服ぐらい自分で着れらぁ、俺を何歳だと思ってやがる。そう言い返してやりたかったのだが、体が思うように動かなくて……。それに脱衣所の時計をふと見れば、あと十数分で閉館時間というところまで時が進んでいた。長風呂していたのもあるが、それ以上に俺がぶっ倒れていた時間の方が長いんじゃないか? それを思うと、なんだか響に申し訳なくなってきたな……。
「……おわっ、わっ‼︎」
「立てないんだろ?」
「いやっそうだけどっ……」
下着はまぁ……別にノーパンでも気付かれないだろうから省略して、汗がじっとり染み付いたシャツとズボンを着させてもらったオレは響に軽々と持ち上げられ、背中におぶさるような形で運ばれていった。ガキの頃以来だ、こんな誰かに背中へ乗せられたのなんて。
肩にマズルを置かせてもらいながら、俺は響の力強い心臓の鼓動を体の前面で感じていた。それに……見える景色が全然違ぇや。背ぇ高っけぇなぁ。いつもこんな上から見下ろしてんのか。羨ましいったらありゃしねぇ。
「……は〜〜……外もあっちぃなぁ……」
夏を思わせる、ムシムシとした深夜の空気。温泉施設から脱出したばかりだというのに、俺たちはそれぞれ体毛の下で汗を分泌させる。密着している部分は特にそうで、響の体からは徐々にモワモワとした汗の香りが立ち込めていった。それを背中で直に嗅いでしまった俺はモロにその影響を受けて――。
「…………おい」
「……」
「やっぱ湯浴みしねぇ方がいいんじゃねぇのか」
「ばっ‼︎ 不潔なのは一番よくねぇよ! ちゃんと風呂入れ!」
「…………ヤる時は仕事終わりそのままの状態でってよく言ってんじゃねぇか」
「それは…………」
「……オレも溜まってっからよ。帰ってからおっ始めても構わねぇぞ」
硬くなって背中をグイグイ押し始める俺の愚息にいち早く気づいた響は、それを鎮める為の儀式をしようと誘ってくる。いつもは俺からヤろうぜ〜ぐらいのノリで誘うことの方が多いだけに、逆から誘われるとちょっと新鮮だ。しかも結構乗り気。あんだけサウナ入って、湯にも浸かって、それでまだ夜の相手をする元気があるなんてタフすぎる。俺はサウナでのぼせて、しかも結構眠気もあって、だけど生理現象で勃起しちまって……どーすっかぐらいの気持ちだったのに。
誘われたら断らねぇのが俺のポリシーだ。返事もせず、俺は肯定の意味を込めて響のバカでけぇ乳首をシャツ越しにギュウッとつねってやった。
「お゛っ‼︎ おまっ、道端でそれやめろ‼︎」
「いいじゃねぇか、減るモンじゃねぇんだし。それにオンナみてぇにやわっけぇ胸してんのが悪い」
そんだけ乳首がモロ感ならウケの才能もあると思うんだがなぁ。そう言ってやると、冗談も休み休み言えと怒られた。だが悪い気はしない。……帰ったら今日は激しく盛り合うのだろう。早く寝たいと思っていた体のダルさが、一瞬で吹き飛んだ気がした。俺にとって睡眠よりも大事なもの、それは二人でヤる性欲の処理だから。
*
帰宅早々エアコンをつけたが、この部屋の熱気は収まることを知らない。むしろ発情した二匹の雄によって、密室が天然のサウナになりかけているほどだ。
「はっ……んぶっ……」
「ん……ん……」
帰宅早々パンツ一丁となった俺たちは、互いの熱を求めるように唾液を交換しながらの接吻をする。何十年と吸ってきた煙草のせいで禁煙しててもヤニ臭ぇし、賄いで食べたラーメンにニンニクをトッピングしたのかめちゃくちゃ臭う。ラーメンに限ってはまぁ……お互い様か。
「……う゛っ」
使い込まれて色のたっぷりついた響の褌に、俺は興奮しっぱなしだった。それと同時に脱がされる俺のトランクスは、コイツにとってのオカズとなり得るだろうか。少し鼻を鳴らしたあとで、響は俺の股座へ躊躇なく顔面を突っ込んでくる。負けじと俺も湿り気たっぷりの褌に顔を埋めながら結び目を解き、中で待機していた雄の象徴を引きずり出してやった。
「……やっぱデケェや」
片手では決して握れない、雄としては勝ち組である熊の肉竿。今日も鈴口をヒクつかせながらしゃぶって欲しそうにヨダレをたっぷり垂らしてやがった。褌がビチョビチョなのは大方この我慢汁のせいであろう。俺は響を押し倒し、皮をしっかりと剥いてやりながらカリの弱い箇所を重点的に舌で舐め上げてやった。体格差的に押し倒せるなんてことは絶対にないのだが、こうしてしゃぶってやるという意思表示をしてやればこの熊はすぐ無防備な状態で俺に任せてくれるのだ。
「ん゛っ……お゛っ、そこっ、お゛おっ……」
本当は俺のもしゃぶってもらいてぇと思っていたが、気持ちよさそうに鼻の穴を大きく拡げながら目を細めているトコを見ると俺の感情はどんどん変化していった。しょっぺぇスケベ汁がいっぱい出るように、もっと悦ばせてやりてぇと。喉の奥でキュッと逸物を絞り上げながら、俺は陰毛へ直接鼻を押し当てながら臭いを嗅ぎ回った。
「ぶっ、んぶっ、ん゛っ……んじゅっ……」
飲んでも飲んでも湧いてくるこの粘液は、喉の奥に絡みついて非常に気分が悪い。口臭が熊のちんちんと一緒になるのはまぁ……悪い気はしなかった。朝も雄クッセェの舐めて飲んだしな。竿を転がすようにして舌を押し付け、時折刺激するように先っちょをぬるりと舐め回す。この動きで響はいつも声を上げながら我慢汁をドバドバ出して、口の中の唾液が我慢汁と入れ替わるほどの量を出し続ける。
「…………飲めるか?」
「……んぐっ、うっ……んん……」
「……わり、振るぞ」
「…………ん゛っ⁉︎ がっ、がぁっ、ん゛っ、お゛っ‼︎」
突如またがるようにして仰向けにさせられ、俺はコイツのズッシリと重たいキンタマを鼻へ直に押し当てられながら腰を振られていた。苦しくて吐きそうになる。喉の肉を、女性の股にあるマンコの肉壁だと思われているらしい。鼻にくる強烈な雄の臭気を嗅がされながらの口淫は、好きモノにとってはたまらない苦痛で、快感だった。キンタマの裏側ってのはまぁ、めちゃくちゃ蒸れやすいからアガる。俺の大好物と言っても過言ではない。見た目もエロいし、握り心地も最高だし、嗅いだら薬キめたみてぇに気持ちよくなっちまう。
「う゛〜〜っ……出すぞっ、中出しだっ、う゛っ‼︎」
キンタマからザーメンが迫り上がってくるタイミングで、響は必ず声に出して俺へ合図を送る。ちなみに初めてまぐわった時はいきなり大量の汁を出されたので咽せまくって大変だった。そんなこともあって、毎回声を上げてくれるのはいいのだが……。出すという言葉はなぜこうもムラムラくるのだろう。中出しという言葉は聞けば聞くほど雄の性欲を掻き立てる力強いワードだ。俺はそんなことをずっと頭の中で考えながら、鼻で響の雄フェロモンを摂取しつつ天然の熊ミルクを飲み干していく。
「ふっ……ふぐっ…………う〜……わりい、今日もいっぱい出しちまった……」
「…………ガハッ‼︎ お〜……ゲホッ……喉がイガイガしやがる……」
正直口淫は、というよりザーメンを飲み干す行為があまり好きではない。響以外の男とも経験があるが、苦くてネバネバしてて飲めたものではないからな。
……でもそれはコイツ以外のザーメンの話だ。俺は響の汁ならなんでもうめぇと思ってる。だがいつも中に出されっぱなしで癪だから、俺はだるい身体をすぐに起こして響にキスしてやった。上澄みザーメンをたっぷり出され、汗クセェ肉竿の臭いが擦り付けられてニオイが染み込んだ俺の口臭を嗅がせてやるんだ。ふうっ……と息を吐きこむと、目の前で複雑な顔をしながら困っている熊の姿がよく見える。
「う゛……」
「今日のは一段と苦ぇやな。ったく、すっげぇザーメンタンクだ」
玉をワシワシ揉みしだくと、中にはまだたっぷり子種が詰まっているのかパンパンに腫れ上がっていた。あー……今日もこりゃ絶倫モード、だな。朝までヤらねぇと全部出しきれねぇタイプのヤツ。
「おい、なに吐きそうにしてんだよ。こっちは全部飲んでやったってのに」
「…………その、すまん。いつも……」
「ああ?」
射精後にやってくるこの独特の瞬間、賢者モードとも呼ばれる射精の余韻は響をいつも惑わせる。デカい図体に見合わず根は優しい性格だからか、今はムラムラして乗り気な時とは違ってシュンと縮こまっていた。もっと無理矢理犯すぐらいの気持ちで襲ってくれて全然いいんだが、この辺りはやっぱ何年経っても変わらねぇやな。……そこが、コイツのいいところでもある。
「謝る気があるんだったら、もっともっと気持ちよくしてくれや。俺がひぃひぃ言いながら潮を吹くぐれぇ男らしい交尾、期待してっぜ」
「……」
ずぷりっ。ぬっちょりとした熊の太指が一本秘部へ押し込められると、俺の身体はすぐに相手を認識して体温を上げやがる。俺の意思じゃねぇ、身体が勝手にだ。具合のいい穴になろうと必死なのだろう、全身からじんわりと汗が染み出してシーツを汚していく。
「…………スゥッ」
「あっこらっ、お前は吸わなくていいんだよ‼︎ 犬じゃねぇんだから!」
「……いつもオレのニオイを嗅ぎまくってニヤニヤしてんだ。たまには嗅がせろ」
「はっ、んあっ……んんっ……恥ずかしっ……うっ……」
シャツも、褌も、靴下も、タオルまで。俺は毎日、響自身のニオイを嗅がないと禁断症状が出るタチだ。鼻を押し付ける度に満更でもなさそうな顔をして引き剥がしてくるのだが、逆は絶対ダメ。俺は嗅がれるという行為に耐性がない。熊は犬よりも嗅覚が鋭いと聞くし、変なニオイまで感じとられたら恥ずかしいだろ?
「…………もう我慢できねぇや。挿れてもいいか」
「……早くしろ。挿れんのに許可なんていらねぇよ。好きな時に好きなだけブチ込みな」
仰向けに寝る俺へ覆い被さり、両手をバンザイさせられ、手をギュッと握られる。互いの指をズラして咬ませるやり方は、恋人がデートする時にヤる手の繋ぎ方だ。こうなれば両手の自由は奪われ、俺は脚で蹴飛ばす以外にコイツの寝技から逃れる術を失った。両脚もぶってぇ寸胴のような胴体を股へ挟み込むように拡げられているから、結局のところもう抵抗手段はない。あとは響の、響がどうしたいかによって俺の運命は決まる。
「ぐっ、お゛っ……」
思わず俺の声が漏れるのも無理はない。何せ三分の一ほどしか挿れられてないのに、一番気持ちのいい前立腺と呼ばれる場所を太い肉竿が通り過ぎていったのだから。神様はなぜ男同士で交尾する時に気持ちよくなる性感帯をケツの中に作ったのだろうか。神様も同性愛者か何かか? ……まぁ悪い気はしねぇ。
「ふっ……てぇな、またデカくなってねぇか⁉︎」
「…………」
手のひらはもうビチョビチョだ。互いの熱をこれでもかとぶつけ合っている空間で汗をかかないはずがない。太すぎる肉竿をほぼ根元までグッ……と埋め込んだあと、響はちょっと俯きながらこう答える。
「…………興奮すっと、デカくなる」
「……ふぅん」
「今日、やべぇんだ。帰り道、ずっと勃起してたから」
「はぁっ⁉︎ おまっ、さっきズボンの中でテント張らしながら俺をおぶってたのかよ!」
……やべ、なんかまたケツの中で一段と硬くなってやがる。どこまで膨張すんだよ、風船じゃねぇんだぞ。これ以上太くなったら俺、俺……。
「…………そ、その。褌も、汁まみれで……」
「…………ぁ」
さっきしゃぶってた時も、今さっき挿入した時も、股座に締め回されていた響の締め込み褌。それが今、結び目に手を当てられて解放される。クシャクシャに丸めたティッシュのような布は見れば見るほどおぞましい汚れ方をしていて、俺はそれだけで鼻の穴が一段と大きくなったのを感じた。……嗅ぎてぇ、あんなもの直に押し当てられたら俺は……。
「……きょ、今日は」
「今日は?」
「…………オレが、巻いてやる」
いつも嗅がれるのを恥ずかしがって部屋の隅へ投げ飛ばされることも多いが、今日は響もノリノリなようだ。こうなるともうコイツは止まらないぞ。今日は期待していいんだな? そうだな?
「……へへっ、そうかよ。好きなようにしてくれ」
挿入してからすぐに腰を振りたいだろうに。俺が興奮できるよう配慮してくれていると思うと、コイツの愛を直に感じる。本来であればドン引きされてもおかしくない性癖だと自覚しているのだがな。
「ん゛おっ、お゛っ‼︎ 鼻いってぇ‼︎ お〜〜……キまるぜ……ふぅっ……」
「……三日も締めたからな」
「へぇ、三日。なんだ、俺の為に締めてくれたのか? ん〜?」
「…………」
言い返さねぇってことは、つまるところ――。褌に染み込んだ雄のキツい臭いも相まって、俺はニヤケが止まらなくなっていた。からかい甲斐のある熊だ。雄クセェのも男らしいのもそうだが、俺がコイツに惚れたのはきっと曇りのない真っ直ぐな愛をぶつけられたからだと思う。
「あっ、待てっいきなりはダメだろっ、がっ‼︎」
「……うるせぇ、今オレのことバカにしたろ」
「そんなんじゃっ、ねぇっ、やっ、お゛っ‼︎」
太長い竿は、正直腰振りの技術がなくても気持ちよくなっちまう。指が届かない奥をほじくり回されるのもそう、道中の前立腺を突き上げてないのに竿の太さだけでゴリゴリに潰し上げるのもそう。スケベする時に絶対汗だくになる、脂肪たっぷりでエロい体も……。
「ナマっ、だぞ、これなら中に直接種汁仕込むしかねぇやな」
「ひぃぃいっ、い゛っ、もう中っ、ぬるぬるしてっ、あひっ‼︎」
響の汁だく体質は、ただエロいだけじゃない。すぐに俺のケツを濡らし、滑りが良くなったところでまた腰の振る速度が上がる。削岩機でガンガンに中をほじくられているようだ。しかも重量級の上半身をそのまま押し付けるようにして倒し、俺をギュッと抱きしめてくる。コイツがたまらなく愛おしくて、暑苦しくて、好きだ。しかも今日は鼻にとびきりニオイのキツい締め込み褌を巻きつけられている。これなら今日は死ぬほど気持ちのいいメスイキができるに違いねぇ。
「ふーっ、ふぅっ、お゛っ……どこに出してもらいてぇんだ、言ってみろ」
「ぎぃっ、ん゛んっ‼︎ おっ俺ん中にっ、だっ出しっ‼︎」
「中じゃねぇだろ中じゃ。このヤらしい種壺にちゃんと名前があるってこの前教えたやな。おら言ってみろ‼︎」
「けっ、ケツのまんこにっ、タネっ付けてくれっ、頼むっ、あっ、ひぃいっ‼︎」
気分が乗り始めた時に聞ける、響の言葉責め。男ならこれぐらいガンガン来てほしいものだ。俺の中のエロゲージが最大近くまで上昇し、いつでも発射準備OKの段階まで来た。あとは流れに身を任せるだけ。俺は尻尾をブンブン振りながら組み敷かれ、最大級に力強い交尾でその瞬間を待ち続けた。
「……オレの褌に染みついた漬け汁、鼻で吸いながら締めとけよ。ふーっ……ふぅっ、今から特濃汁、このやらしいまんこに仕込むぞっ、う゛〜〜っくるくるっ、気持ちぃっ……たまんねぇ、たまんねぇよ……」
ニヤリと笑う響の顔はまさに悪人面。人相の悪い熊が笑う瞬間、俺の体は屈服するように力が入らなくなる。孕ませてくれ、俺に熊の子を授けてくれ。鼻からくる強烈な雄のニオイを嗅ぎながら、俺は種付けの直前いつも何かの間違いで妊娠しねぇかなと願い続ける。現実世界ではあり得ないような妄想だが、それぐらい俺はコイツのことが……。
「いいのかっ、種付けたらもうひり出せねぇぞ! いいんだな!」
「来いっ、あ゛〜〜ああっあっ、いつでもっ、来いよっ‼︎ 受けてやらぁ‼︎」
この瞬間だけ、俺はいつもオンナとしてこの世に生を受けたかったと思っちまう。だがオンナに生まれたとしたら、同性愛者であるコイツとは絶対に結ばれてなかっただろう。そう考えると、俺たちの巡り合わせというのは奇跡に近い。互いが男で生まれて、しかも同性愛者で、近場に住んでて……。どこか一つでも歯車が噛み合わなかっただけで、俺たちは今頃こんなに激しくセックスなんてしていなかっただろう。
「お望み通り、お前の好きな種付けプレスだ‼︎ 意識飛ばしたら起きるまで腰、振るからなっ! お゛〜〜〜出るっ、ナマで熊汁出すぞっ、孕めっ‼︎ ……う゛ううううっ‼︎」
「あ゛〜〜〜あああああっあっ‼︎」
最後に響の凛々しい男顔を目に焼き付け、俺は目を瞑って鼻に意識を集中させた。おでんの具材である染み染みの大根のように、たっぷり男らしいニオイを擦り付けられた褌から得るフェロモンは最高にキまる。こんな状態でケツが壊れるぐらい腰を振られれば、誰だって――。
互いの腹には、温水のように熱い汁がびゅっ、びゅるるるっ……とぶっかけられていく。ドロドロの濃いヤツに続いて、失禁したみたいに透明な汁まで噴射されて。潮吹きと呼ばれるこのしょっぱい体液は、俺が極限までアガってキまらないと出せない汁だ。
「はぁっ……はっ、はー……ぁあ……」
「ゲホッゲホッ‼︎ うー……吸いすぎた……」
呼吸を整えようにも、俺の鼻は響の熟成褌フィルターを通して空気が流れ込んでくる。嗅げば必ず股間が疼き、全身がムラムラするような酷い臭気。俺は自分の逸物が萎えないように何度もハスハスと鼻を鳴らし、褌に染み込んだニオイを嗅ぎ続けた。
「……まだガチガチじゃねぇか。はー……流石だな」
「…………もっと」
「おう。いつでも、スゥッ……んあぁ……準備できてんぜ」
強い男に組み敷かれることは、最初とてもイヤな気分だった。なんだか負けた気分になるし、何よりケツの中へ遺物をねじ込まれるのに抵抗があったし。それがいつしか、自分から挿れてくれと懇願したくなるほどにハマっちまった。
今日も腹が膨れるまで、そして朝まで休むことなく腰を振るのだろう。こりゃ明日の営業は中止、だな。掻き入れ時だとか、仕込んだスープの質が落ちるとか、そんなことはどうでもいい。俺たちの愛を育むことが、今は何よりも重要なことだから。
「……先に張り紙、してくっか」
「…………後でいい。もうケツから抜きたくねぇ」
「へへっ、そうかい。俺も同じだ。何なら駅弁して外まで張りに行くか?」
まだバカなやりとりができるほどの余裕があるが、それもあと何回か種付けされたら……。俺は余裕のあるうちに響へ冗談をかましながら、二度目の交尾を始めさせられた。いつまでも鼻に残る、このツンとくる雄の饐えたニオイ。とてつもなく鼻に、体に悪いニオイだと思うが、それをいつまでも嗅ぎながら朝までヤるセックスは俺にとって極上のご馳走だった。
*
「あ〜、今日は定休日かぁ。たまにこういうのあるんだよなぁ」
「ええっ、せっかく楽しみに来たっすのに!」
「しゃーねぇ。近くの中華料理屋にでも行こうぜ」
「……それにしても突発すぎません? 別に明日休みとか、そんなことあの犬の店員さん言ってなかったっすよ。店内に張り紙もなかったし……」
「ああ、それは――」
……あー、うるせぇうるせぇ。聞こえてんだよ。木造建築だからか、ウチのラーメン屋は二階で寝てても入り口付近の会話は聞こえるほどだ。今日もまた、昼時にあの現場仕事の牛と後輩の虎がやって来たのだろう。逐一俺らのことを説明せんでもいいっての。恥ずかしいから。
「…………な、なぁ響、そろそろ離さねぇか?」
「…………」
「暑苦しいんだが……はー……」
昨晩は歳の割にはえげつないほど激しく、長時間交尾したと思う。腹ん中は音をゴポッ……と立てながら今にも下しそうな勢いだし、身体中熊臭くてたまんねぇし。何よりもこのぶってぇ腕で背後から抱きしめられながらシーツの上で横になっている現状、この状態になってからもう何時間経っただろうか。
「…………もっかい」
「まっ、待てお前! 昨日朝までしっぽり中に出しただろうが! 俺のケツ、もう種汁入らねぇって!」
「出せば、入るだろ?」
「そ……そりゃ、まぁ」
容量がいっぱいになったペットボトルは、中身を捨てればまた液体を注げる理論。んな簡単にケツ交尾できたら苦労はしねぇよ。これから俺、大量に中出しされた代償として下痢になってトイレに篭ることになんだからな。
「それに今ヤったら、店の前にいるあの常連客に聞かれちまうぞ」
「…………それでもいい。ヤりてぇから」
「お前頑固だなぁほんとに……」
なんか精力アップするようなものでも飲ませてしまっただろうか。それほどまでに興奮し、今も尚勃起させながら俺の背中に擦り付けてくる響の逸物。雄みを感じてすごくその……アガる。昨晩キンタマの中が空っぽになるほどしこたま腰を振られてメスイキした俺だったが、朝勃ちというヤツで正直いつでもおっ始められる状態になっていた。なんだろうな、今日はセックス終わりの体をしっかり休ませるって意味で定休日にしたってのに。これじゃ昼間も俺たち激しくヤっからテメェら客が邪魔すんじゃねぇっていう定休日になっちまう。
「こんな立派なブツが俺のウンコまみれになったらそれこそ悲惨だろが。口で我慢しろ」
「…………しゃぶってくれるのか」
「へへ、俺を誰だと思ってやがる。お前の絶倫具合についていけるぐらい、どスケベなワンコだぞ?」
振動の少ない、響がスケベなオヤジみてぇなセリフを吐くことがない、騒音に配慮したエッチ――口淫。昨日の時点でもう顎が痛くなるぐらいしゃぶってやったんだが。一発で済んでくれたら万々歳、二発ならまずまず、三発以上は……死。この絶倫熊が満足するのは、口で果ててから何回目の出来事になるだろうか。俺は朝メシとして熊のごんぶとソーセージをマズルの中まで咥え、しょっぱさと苦味を存分に味わったのだった。
「じゃあ今頃は……」
「ああ、もしかしたら、な」
「うひゃ〜。男同士、どんなセックスするんすかねぇ。というか先輩が学生だった頃ってケツの貸し借りがあったって本当すか?」
「…………」
「先輩?」
「…………なんだ、知りたいのか」
「あ、いや、オレは別にノーマルすから。……え、ちょ、先輩、なんか顔がヤラしいんすけど……」
「男同士で発散し合うのはいいぞ。すごく気持ちがいいことだ。お前も一度経験してみればわかる」
「せんぱっ、先輩! あの! だから俺にその気はないって――」
店の外から何だか進展のありそうな野郎同士の声が聞こえてきたが、それらの言葉は俺の耳はそのまま突き抜けてどこかへ行ってしまった。ふぅん……いいねぇ、初々しいってのも。熊のぶってぇモンをしゃぶりながら股間を硬くした俺は、後日常連客の彼らがどうなったのか聞いてやろうと思いながら陰毛をハスハスしてニヤついていた。
了