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強面の龍人が人間と仲良くなる為に頑張るお話

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強面の龍人が人間と仲良くなる為に頑張るお話
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こんにちはこんばんは、ぱぱを🐼🐾です。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。私はたまにクシャミが止まらなくなって困っています。秋の花粉、やろか……。アレルギー検査とやらをしてみたいなと思いながらもう二年ぐらい経ったような気がする。やっぱりわざわざ病院まで行かないといけないから足が重いよ〜〜でも自分が何に反応するのか検査してみたいよ〜〜。


そして今月300円プランでは倉庫から引っ張り出してきた私の作品をお届けいたします。単純に間に合わなそうだからストックでお茶を濁す的なヤツ😇これでストックなくなっちゃった〜…来月どうすっかな…。FANBOXとイベントの原稿と仕事とゲームを全部こなしてる人、どうやってるんですか??私に教えて欲しい。……なに?ゲームの時間を減らせ??



今回は龍人と人間くんのお話です。多分甘め……なのかな……。フォルダを見た感じだと、2020年8月1日にこの作品を完成させたらしいです。やば。3年前やんけ。というわけで読み直して色々修正してたらまぁ粗がすごいうというか何というか。……なんでこんな展開に??となる場面多数。ちょっと無理矢理すぎたかなぁと思ってしまったけれども、でもせっかく書いたヤツなので供養という意味でFANBOXに投稿しておきます。


2万5000字ぐらいありますので、お時間のある時にお楽しみいただければ🐲




※以下、本編。

****


 朝の満員電車、それを避ける為には少しだけ早く家を出る必要がある。僕の家は都心から離れているけど、毎回始発の電車に乗れるため必ず座りながらの通勤が可能なのだ。家賃も安いし、我ながらいい場所で暮らしていると、正直自分で自分を褒めている。


 早起きは辛い、座るためとは言え重いまぶたを上げながら駅まで歩くのは相当にストレスがかかる。そんな中、僕には最近気になっていることがあった。いつも朝の同じ時間に始発の駅で見かける獣人がいるんだ。肌の色はキラキラした翠色をしていて、見た目的にはおっちゃんぐらいの歳なのだろうけど老いを感じさせないそのピチピチで美しい肌に見惚れてしまうほどの人物――龍人。この地域で龍人という種族を見かけるのはこの電車が初めてだった。



 獣人好きな自分にとって眼福ではあるのだけど……少しばかり困ったことが。電車が来ると僕ら乗客は椅子取りゲームを始め、ふぅと一息ついて眠りに入ろうとする。向かい側に座っている龍のおっちゃんはこんなに朝はやくから出勤しているというのに、いつも読書をして過ごしているのである。正直通勤時間なんて睡眠に充てる以外考えたことないのだけど、このおっちゃんは随分と勉強熱心なようだ。僕も見習うべきかな……。


 ただ、本を見ながら急に笑顔……のようなちょっと怖い顔のような表情を作り始めたり、いきなり牙を見せつけてニィッとしてきたり、一体どんな本を読んでいるのか気になってしまう。本には書店でよくある紙のカバーがかけられていて、真正面からでは何を読んでいるのか知ることはできなかった。龍人というだけでもだいぶ厳つい風貌なのだが、顔がまたなんというか怒らせると街一つぐらい簡単に消滅させてしまいそうな強者のオーラを放つ怖さなんだよな。僕はむしろああいう男らしい人の方が好みだから全然気にならないけど、多分一般の人が見たら驚いて逃げてしまうだろう。



 それも毎日同じ時間に乗って本を読んでいるものだから、一週間ほど経ったあとついに僕はその本が何なのか気になって我慢ができなくなってしまったのである。週明けの月曜日、いつものように早朝に電車に並ぼうとすると……おっいたいた。今日も相変わらず乗車前から本を読んでいる。身長が高過ぎて横からだと見えないな……やっぱり電車で席に座ってからが勝負だ。


 いつもなら真向かいに座るところを、今日はおっちゃんの隣に座ってやった。だけどあまり隣からジロジロ見るのもよろしくないので、スマホを見るフリをしながらチラッと見ることにする。おっちゃんは一体どんな本を読んでいるのか、もしかしてそんなに面白い小説なのだろうか。


 その本を覗き込む前、不意におっちゃんが牙を見せつけてきたので思わず体がビクンッと跳ねてしまう。以前まで遠くから見守っていただけの怖そうな龍のおっちゃんをこんな間近で見ると、やはり迫力が段違いだ。今は……なるほど、何か面白いシーンを読んで笑っているんだな。一体どんな内容の本を――。


「……んんっ、その、ワシの本になんかついとるか」


 何か今隣から声が聞こえた気がするが、僕は気にせず本をチラ見していた。なんかこのタイミングを逃したらまたしばらく見るチャンスが来ないと思って、それはもうチラ見ってレベルじゃないぐらいジロジロ見てるけど、致し方ない。どれどれ、“獣人が人間と仲良くなるための秘訣100選! これで今日からあなたもお友達に“……ってなんだこれ。


 一体どんな内容の本なのかもう少し詳しく見たいなと思って体を動かしていると、ススッと本がこちら側に寄せられる。ああどうもありがとうございます、これで読みやすくなる。……読みやすくなる?


「あっ、ああっ、ごごごめんなさい、なんでもないんです! なんでも! ちょっと、その、失礼ですよね!」


「お主、先週からワシの持ってるこの紙の本を気にしていただろう」


「え……なんで知ってるんです」


「そりゃあお主が人間だから……ン゛ッ。今のは忘れてくれ。その、毎朝向かい側の座席から熱い視線を送られたらイヤでも気づくわい」


 スマホを見るふりをしながらほんの少しだけ視線を送っていただけなのに、それなのにこの龍のおっちゃんには全部バレていた。人間よりも感覚が研ぎ澄まされているのだろうか、自分は人間だから獣人のことがよくわからない。でも普段獣人を見ていると身体能力が凄そうだから、きっとそれで気が付いたのだろう。


「ごめんなさい、イヤ……でしたよね」


「んなこたぁない。それよりお主、随分と落ち着いてるな。ワシのこと、怖いと思わんのか?」


 本ではなく本人の顔に視線を動かすと、そこにはムスッとした顔の龍のおっちゃんがいた。白髪まじりの顎髭がビッシリと生えていて、鼻の横には細長い毛なのか肉なのかよくわからん髭がなびいていて、おまけに人一人簡単に殺せそうなほどの強い目力。確かに普通の人だったら逃げ出していたかもしれないな。


「うーん、僕は特になんとも……あっ⁉︎」


 本を膝の上に落とし、唐突に僕は両手をガッシリト掴まれる。交渉成立、そんなテロップが出てきそうなこの握手。


「あのっ、わっわっ、ワシとっ、そのっ」


「は、はい」


「友達になってくれませんか」


「……はい?」


 電車の中で小声でやり取りをしている僕たちだが、目の前で吊り革を持ちながらスマホをいじっているおっちゃん達には僕らがどう映っていただろうか。強面の龍のおっちゃんが人間の男性を脅迫している、そんな風に見えただろうか。おっちゃんの目を見るとどうやら本気のようで、僕はどう返事をしていいか戸惑ってしまう。何か危ないことに巻き込みやしないだろうな、そう疑いながらも龍のおっちゃんとお話する機会なんて滅多にないものだから、僕はコクリと頷いて了承することにした。


 その時のおっちゃんの立派な牙を見せつけるような笑顔ときたら、本気で殺されるかと思った。それにいきなり大声で”本当か⁉︎“なんて言うものだから、早朝の電車内にいる人が一斉に僕らの方へと視線を向けてくる。流石に気まずい空気になってしまったのと、ちょうど僕の会社がある最寄り駅に到着したので二人で降りることとなった。


「いきなり大声で喋るもんだからビックリしましたよほんと。あー心臓止まるかと思った……」


「タハハハ……すまんすまん。でも、久しぶりに人間とお話出来てワシは嬉しいぞ! むふふ、お主は本当にいい子だな。ワシ、感動した!」


 さっきから掴みっぱなしの手をブンブン振りながらおっちゃんは興奮気味のご様子。僕の会社の最寄り駅だという理由で降りた駅だったが、どうやら龍のおっちゃんもここで降りる予定だったらしい。つまりは自宅の最寄り駅と会社の最寄り駅が一緒ってことだよな、まさかの衝撃の事実でした。そしていつもは始業時間までどこかのカフェで朝食タイムをとっていた為、今日は二人で食べることにしたのである。


 その時もおっちゃんは僕の手を掴んで離さず、まるで逃さんぞと言われているような気がした。それ……他の人にいきなりやったら警察に通報されますよ。



 カフェの店内に入り、僕らはアイスコーヒーとパンがセットになったモーニングセットを注文する。比較的空いていたので、一番奥のテーブル席にしようかな。まずはアイスコーヒーを一口、それから僕はサンドイッチをハムッと口に含んで至福のひとときを過ごす。対しておっちゃんはカレーパンを丸呑み、クロワッサンを丸呑み、そしてエッグマフィンを丸呑みして一気にアイスコーヒーを飲み干す。めっちゃ早食いじゃないですか、それあまり体に良くないんじゃないかな。


「……ゲフッ。さて、まずは自己紹介といこうか。ワシは宇龍(うりゅう)だ。宇龍 銀之助(ぎんのすけ)。よろしくたのむ」


 へぇ……カッコよ。見た目だけじゃなくて名前もその、男らしさで溢れている。僕がまだサンドイッチを食べているのにも関わらず固い握手を求められ、んぐんぐと言いながらとりあえず挨拶をした。それにしても宇龍さんか、珍しい苗字だな。龍人にとっては多い苗字なのかもしれない。そして次から次へと机に出されたのはノートパソコン、それからメモ帳、そしてあの毎朝熱心に彼が読んでいる本。僕がまだモグモグ食べている中でも熱心にセッティングを始め、一体これから何を聞かれるのかドキドキしてしまう。


「ワシは人間と仲良くしたい、そう思っとるんだがどうもうまくいかんのだ。一体何がよくないのか、ワシにもわからん。お主はワシを見てどう思った?」


「どう思った……ですか。うーん」


 正直に言うとですね、顔が怖い。怖いよおっちゃん。今もグイグイくるその感じ、圧を感じる。だがそれをそのまま言ってしまうと、このおっちゃんはすごく落ち込むような予感がする。僕の中に眠る勘がそう言ってるんだ、ここはどう伝えてあげればいいだろうか。物は言いようだ。そして悩みに悩んだ末に出した答えが――。


「そのですね、顔がとっても男らしくてですね。僕はとってもカッコいいと思います。だけど一般人にとってはその、強すぎる男らしさ全開オーラによって近寄りがたいというかなんというか……」


 捻り出した答えはなんとも歯切れの悪いというか、こんなんでいいんだろうかと不安になるような返答になってしまった。それを聞いた宇龍さんは一瞬ポカンとした表情をしたあと、猛スピードでパソコンに何か文字を打ち込んでいく。


「なるほど、やはり表情が大事ということだな。うむ、本にも書いてあったぞ、ほら」


 それはもう知っているといった自信満々の表情で僕に見せてきたページ、そこには“笑顔の基本”といういかにもおっちゃんに今必要そうな情報が記載されているのであった。


「はぁなるほど、だからいつも電車で気味の悪……いや、笑顔の練習してたんですね」


「うむ。笑顔で接することができれば、人間は警戒心を解いてくれると思ってな。ここ最近毎朝ちゃんと練習しとるから、笑顔には自信があるんだ」


 むふふと笑いながらマズルを軽く開き、手入れの行き届いている白い牙が左から右までしっかりと生えそろっている様子を見せられ、目は今ギラギラと輝いていた。この様子でよく自信を持てたなと思ったが、ここは成長を褒めるべきところだ。世の中には常に厳しくという考えをお持ちの人もいるが、僕はそうは思わない。とにかく褒めて褒めまくって、やる気というかモチベーションを上げていくことが大事なのである。


「すごくいい笑顔ですよ。さすが宇龍さん、かっこいい!」


「ふふん。最近電車でみんながこっちをよく見てくれるようになったからな、成果が一目でわかってしまうな」


 僕は知っている。毎朝気味の悪い笑顔を練習しているところを周りの乗車客が一人残らず観察しているのを。プラス思考なのはいいことなのだけど、もう少し僕が色々指導してあげないとダメかもしれない。


「えっとですね、もうちょっとマズルを閉じた方がいいかもしれないです」


「そうなのか? 本にはちゃんと歯を見せつけるようにって書いてあったが……」


 この本はたぶん宇龍さん向けの本じゃないと思う。基本的に肉食獣がそんな笑顔してたらたぶん人間はみんな怖がるんじゃないかと。特に宇龍さんなんかそこらへんの獅子獣人とか虎獣人なんか比べ物にならないぐらい立派な歯というか牙が生えそろってるから、すこし牙を触っただけでも血がブシャーッて出そうなんだもの。だから人間はみんな怖がりそうだな……。


「ところで、なんで人間と仲良くなりたいって思ったんですか?」


 そう、そこが一番僕の気になっていたところ。別に人間と接しなくても仕事ってなんとかなることが多いし、よほどの人間好きとかじゃない限りは……ってまさかおっちゃん、人間が大好き系の獣人さんですか?


「うむ、よく聞いてくれたな。それはだな――」


 予想していた通り、宇龍さんは最初に“ワシは人間が好き”だと言っていた。なぜ好きなのかという事までは教えてくれなかったけど、社会人になってからたくさんの人間と一緒に仕事ができるとワクワクしていたらしい。昔は人間と獣人が混合の部署が多かったのだけど、ここ最近になってからはそういった部署の方が希少な存在になってしまったのだ。


 人間と獣人は違う種族で一緒に仕事をするとストレスを感じる人も多いとかネットニュースで話題になって、基本的には人間だけのフロア、獣人だけのフロア、と勝手に分けられてしまったんだよな。それはそれは、僕にとっちゃ地獄のような毎日でした。だって同じフロアに獣人がいないんだぞ、モフモフの獣人が目の前で座っていた時代が最初の半年ぐらいはあったのだけど、あれはよかった。一々淹れたてのコーヒーをすすってあちぃっと涙目になる虎のおっちゃん、最高だった。もう毎日火傷してほしかった。そう言うとサイコパスな人になってしまうので、もうちょっと控えめに願望を言うと“毎日コーヒーをフーフーしてあげて飲ませてやったお礼にハグしてもらってついでにお昼ご飯を一緒に食べる約束をしてほしかった”かな。それから席替えがあってからの熊部長が隣の席になった時は――。


「――、というわけだ。ワシはその日から毎日勉強して――」


 熊おっちゃんである部長はすごく体臭を気にしているようで、毎朝僕に臭くないか聞いてくるというイベントがあった。僕が微妙な返事をするといきなりバッグから獣人用の消臭スプレーを取り出し、これを背中にかけてほしいと頼まれたんだよな。もうかわいすぎて毎日鼻血出そうだった。……まぁそれから突如、獣人と人間が別フロアになってしまうという事件が発生したんだっけ。はぁ、つらい。



 そしてごめんなさい、今は宇龍さんがなんで人間と仲良くなりたいかって話をしてたんでしたっけ。目の前の龍のおっちゃんは、僕がどうしてようが気にせず話続けている。……流石に思い出の世界に浸りすぎたか。ちゃんと話を聞いてあげよう。



 獣人と人間の部署を別々にしよう問題が発生してから数年が経ったんだけど、やっぱり人間と獣人は手を取り合って生きていくべきだという主張が増えてきたんだ。そして宇龍さんの会社でもそれは例外ではなく、試験的に人間しかいない部署へ獣人を一人送り込んで慣れさして、少しずつ増やしていこう的な話になったんだって。その話に宇龍さんはそれはもういち早く手を挙げて“私が行かせていただきます”と元気に発言したそうな。


 だけどその意見はおっちゃんより上の役職にいた獣人さんに秒で断られ、何度も申請を出してみたものの全部拒否という可哀想な状況に。なぜダメなのかと理由を聞いてみたところ、単純に怖いからと言われたらしい。そんなのいきなり面と向かって言われたら傷つくだろう。


 だが宇龍さんはめげなかった、獣人に何を言われても気にしない性格だからだ。その代わり人間にそれを言われたらめっちゃ落ち込むらしい。よほどの人間好きなんだな宇龍さんは。


 どうしたら部署移動させてくれますかと聞いてみたところ、人間が視界に入れても逃げ出さないぐらいのやさしいオーラというか雰囲気が出せるようにしてくれとのことだ。そこで宇龍さんは毎朝本に穴が開くぐらい目をパチクリと開いて人間と仲良くなる方法を学び続け、現在に至るのだとか。そんなに人間好きな獣人もまぁ珍しい部類だろう。僕もどっちかというと人間よりも獣人さんが好き。そう考えたら僕も宇龍さんと同じ部類に属するのかな。


「よし、じゃあ明日からまたよろしくな」


「は? なんですって?」


「いやだから、明日から毎朝ワシに人間のことについて教えてくれってことだ。せっかくここで出会えたんだ、これも何かの縁。本に載ってないことを、お主はたくさん知ってそうだしな」


 勝手に毎朝一緒に朝ご飯食べながら人間と仲良くする方法を教えるというイベントが組み込まれました。しかも強制イベント。僕は獣人さんが大好きだけど、でも朝の時間は眠いからあまり他人と一緒に行動したくないんだけどなぁ……でも久しぶりに獣人を堪能できる突発イベントだし……ううむ……。夜だったら嬉しいのだけど。そう言ってやろうかと思ったのだが、このおっちゃんは強面なくせして意外とメンタル面が弱そうなのでやめておく。特に人間から言われたことは全部正しいみたいに思っていそうなので、これで落ち込まれて飛び降り自殺なんてされたら困るしな。


「は、はぁ。それはいいんですけど、僕そんな何か特別なことを知ってるとかそういうのないですよ? ただの人間ですから」


「その“ただの人間”がいいんだ。うむ、決まりだな」


「えっ……」


 気分をよくした宇龍さんは安心してお腹が空いたのか、追加でまたパンを購入しにレジまで走って行ってしまった。その途中で太すぎる尻尾によって近場にあったテーブルをなぎ倒し、店員さんにめっちゃ怒られているところを他人のフリをしながら見る羽目になるとは思わなかったが……。そのあと笑顔で手にパンを抱えながら向かい側の席に座り始めたので、他人のフリが出来なくなってしまったけどな。



 その日彼と初めて話をしたのをきっかけに、起きるのが億劫だった朝も宇龍さんが待っているからという理由だけでなんかいつもより起きるのが怠くなくなった気がした。毎朝電車で隣り合って座り、ニィッとニコニコする練習。前で立っていた通学途中の小学生にめっちゃドン引きされた気がするけど気にしない気にしない。僕はとてもいい笑顔だと思いましたよ。


 日常会話なんかも人と獣人が仲良くなるのには不可欠な要素だ。……よし、試しに昨日の夕飯についてのお話をしてみよう。


「僕は昨日久しぶりに牛丼食べたんですけど、宇龍さんは何食べたんですか?」


「おお、奇遇だな。ワシも牛の肉を食べたぞ。ちょっと口周りが血だらけになってしまったが、たまには生もいいものだ。歯応えが全然違う」


「……え、生で?」


「生が一番、素材の味を感じられていい。今度一緒に食べるか?」


「えと…………人間は生で肉、食べませんね……」


「そうなのか⁉︎」



 人間と仲良くなれるまで、先は長そうである。




 平日の朝だけでは時間が足りないと言い始めた宇龍さん、龍獣人は何かしらに特化してすごい人が多いような印象だが、このおっちゃんも例に漏れずと言った感じのようだ。とにかく探究心が強い。休日に暇なら是非うちで過ごさないかとお誘いを受けてしまったのでどうしようか悩んだところ、マズルがくっつきそうなぐらい近付かれてダメか? どうなんだ? と返事を急かされた為、ひとまず遊びに行ってみることにしました。


 歳が二回りぐらい離れてそうなおっちゃんの一人暮らしの家に遊びに行って、話題とか続くかな、大丈夫かな。そういう不安があるものの、勿論楽しみもある。龍人とそもそもこうやってお話できることさえ貴重な体験なので、そんな彼はどのような家で生活しているのか非常に興味があるのだ。今日はそんな謎を解明できればいいな。


「おお、来たか! お腹は空かせてきたか? むふふふ。いやぁ、人間がワシの家までわざわざ遊びにきてくれるなんて……ぐふふ」


 まだぎこちない笑顔を見せられたが、初めて会った時と比べたら成長しているからちゃんと褒めてあげなきゃ。一体どっちが歳上なんだか。宇龍さんの家はタワーマンションの中層、最初入り口で指紋認証が必要なタイプのハイテクな建物だ。今日はまずお昼ご飯から一緒に食べることになったのだが、当然何を食べるかなんて聞かされていない。というかその場で決めるみたいなこと言ってたな。そんなので大丈夫なのだろうか。


「確かお主は魚が好きだったな」


「はい。宇龍さんは……お肉が好き?」


「うむ。じゃあ間をとって、今日はそうめんにするかぁ」


 肉と魚の間でそうめんになる意味がわからなかったけど、今日は暑かったから急に食べたくなったのかな。まぁそうめん好きだからいいんだけど。そしてガサゴソ探し始めてから数十分、どうやら麺を切らしていたらしい。ダメじゃん。


「ううむ、じゃあハンバーグなんてどうだ?」


「それならまぁ」


 そうめんはなくてハンバーグ用のミンチ肉はあるのか、変わった家だ。そうめんなんていつもストックで置いてあると思うんだけどな、やっぱり龍人にとってはそういう文化がないのかもしれない。ハンバーグか、子供の頃作ったことあるようなないようなってやつだ。最初はコネコネして、それから形成してパンパン叩いて、焼いて終わりだったかな?


「今日は牛と豚の……ん゛っ、おとと……ヨダレが……。合挽き肉にするか」


 宇龍さんはめちゃくちゃお腹が空いているのか、まだパックに入った肉だけを見てマズルからヨダレが垂れ落ちそうになっている。早い、早すぎる。そんなにお腹が空いていたのだろうか。宇龍さんだけそのまま食べてもらっていいですよ。僕は焼いて食べるので……。


 やはり龍人と人間の食生活の違いは大きくて大変だ。


「じゃあまずは玉ねぎはワシが切るからな。ちと待っとれよ」


 すると結構頑丈そうな黒いまな板に乗せて、Tシャツ姿のおっちゃんは左右の腕をグルングルンと回し始める。玉ねぎ切るのにそんな準備運動する必要があるのかな、でも気分というか気合いって大事だよねと考えればまぁ一般的な光景なのかもしれない。ちなみに僕はそんなことわざわざしない。


 それから右手の指をウネウネと動かしながら玉ねぎへと近づけていくと、そこには先程までなかった黒い爪が出現しているではないか。それもかなり鋭利で危ないやつ、それを一思いに振りかぶって――玉ねぎは細かい六つの欠片に分断されるのであった。


「はい、先生質問です」


「うむ、遠慮なく言うがいい」


「龍人っていっつも野菜切る時、自分の爪を使ってるんですか?」


「そうだな、衛生面を気にする輩は皆包丁を使っている。ワシみたいな雑な独り身のおっちゃんはこの手入れされてピカピカの爪で切断する。人間にも爪はあるのだろう?」


 そこで僕の指を見せてやると、どこから第二の爪が出てくるんだとか意味のわからないことを質問され、これが人間の爪ですと説明してやるとマズルを開けままポカンと立ち尽くしてしまった。って毎日握手してるじゃん、なぜ知らなかったんですか先生。


「包丁……なぁ、あるにはある。だがここに引っ越してきてから一度も使っていないぞ」


 そうやって手渡されたのは普通の包丁ではなく、なんか小型ナイフみたいなやつ。これ果物ナイフってやつじゃないですか? まぁ全部おっちゃんに任せるよりはいいか。念入りに洗ってやったあと、雑に切ったおっちゃんの玉ねぎを細かく微塵切りにしてやる。やはり爪だと大きく切ることしかできないらしく、ハンバーグの時はでかい塊をミンチ肉にぶち込んでいたのだとか。なんというか豪快な男の料理な感じがあるな。


「ほぉ、やはり人間は繊細な生き物だな。こんなに細かく玉ねぎを切れるとは、今日はお主が来てくれてよかった。むふふ」


 僕が料理する様子を嬉しそうに眺めてくるので、ついつい調子に乗って玉ねぎがペースト状になるぐらいにまで細切れにしてしまった。そして次にこの玉ねぎを炒めてやります。玉ねぎを炒めてからハンバーグのタネに入れてやると甘さを感じやすくなるし、水分を飛ばしておけば焼いている間に出てくる水分が少なくなるから割れにくくなるんだよな。フライパンにバターを入れて、さて火をつけようとしたところで待ったがかかる。ここで待たなきゃいけないポイントなんてありましたっけ。


「まぁ待て。ここは龍人の特技っちゅうもんを見せてやろう。むふふ、これ見たらお主も龍人の虜になってしまうかもしれんぞ」


「まっ、まさか、まさか⁉︎」


 脚を前後に開き、左手をマズルの前に構える。その構えはまさにこれからコンロに向けて火を拭くぞと言わんばかりの体勢だ。よく漫画で見るやつ、龍人ってそんなこともできるのか。やばいワクワクしてきた、だって火を吹くなんてサーカスぐらいでしか見たことないんだもの。ガス設備がちゃんとあるというのに自分で火を吹いて着火させようだなんて、やっぱり宇龍さんはすごい。


「いくぞっ、んんっ‼︎」



 それから数秒の静寂。目の前にあるフライパンの下に向けておっちゃんは――空気を吹き込んだ。それはただ自分の吐息をガス台に吐き続けるだけの動作。火、火はどこだ。


「うむ、何百年も前の龍人はこうやって火が吹けたらしいのだが。ワシにはそのような力はないようだな」


「……」


 驚かせやがって。くっそ、期待してただけあって若干テンションが落ち込んでしまう。それを見た宇龍さんは僕が玉ねぎを普通に炒めている間に何度も謝りながら後ろから抱きついていた。謝罪ついでに人間の体をたくさん触ろうという魂胆なのだろう。


「ちょっとあぶな……んあっ! ちょっとあの!」


「ほぉ、人間にもちゃんと乳首というものがあるのか。それに中々いい肉付きをしておる、ワシはこのぐらいのちょっと脂肪のある胸がいい」


 人間に興味を持ってくれてるのか、僕に興味を持ってくれているのかよくわからなくなってきた。とりあえず手つきが大変にやらしい。それに首元に鼻息をかけるのだけはやめていただきたい。くすぐったすぎて料理に集中できない。そんな攻防がありながらもなんとか玉ねぎが飴色になるまで炒められたので、今度はハンバーグの肉をコネコネすることにした。


 パン粉や水、それからゼラチンや卵なんかを入れてこねるのだけど、せっかくだから二人で二個ずつ作る事にした。これでお互いがお互いのためにハンバーグを作る、そして人間との仲を深めるみたいなことを言ってたな。これで本当に人間と仲良くなるコツを覚えられるのだろうか、正直よくわからない。


「それじゃあワシはドラゴンの頭みたいな形にこねてみるかな。これでひと目見てワシが作ったやつだとわかるだろ。むふふ」


「そんな器用なことできるんだったら、もう宇龍さん会社員やめて料理人になった方がいいと思いますよ」


 ここでひとつ重大なことに気がつく。宇龍さんって僕が人間じゃなかったとしてもこういう風に接してくるのかなって。たぶん同じ獣人だったとしてもツッコミが追い付かなそうなのですが。なんか宇龍さんの生活って人間とも獣人とも合わない独特な感じがするので、もしや人間というより人付き合いが不得意なおっちゃんといったほうが良いのではなかろうか。


 ハンバーグだけでは寂しいので、ここで付け合わせのポテトを作ることにした。一から作ると手間がかかるが、実はとあるポテトのお菓子でそれを簡単に作ることができるとこの前ネットで話題になっていた。とあるカリカリに揚げたポテトのスナック菓子の容器にお湯を入れ、チーズを入れて混ぜるだけという誰でも簡単にできそうなやり方だ。形成したハンバーグを焼いている間に二人で一つずつスナック菓子の容器を持ってぐるぐるかき混ぜ、スプーンで出してやれば付け合わせの完成だ。こんなお湯とチーズを入れただけなのに、なんともいい匂いがしてくるではないか。早く食べたい。


 こんがりと焼けたハンバーグ、ちょっといびつな形のは宇龍さんが作ったやつ。それを僕の皿に乗せて、おっちゃんの皿には僕が作った丸いハンバーグを乗せてやる。おっ、ちょうどご飯が炊けた音がした。宇龍さんの家にあった炊飯器はかなり本格的なもので、正直一人暮らしでは勿体無いぐらいのやつだ。お米って少量炊くよりも多く炊いた方がうまいって聞いたことがある。というわけで今日は遠慮なくたくさん炊いてもらったというわけだ。


「よしよし、ワシがよそってやろう」


 得意気にしゃもじをサッサッと切るように動かすと、炊き立てのお米本来のいい匂いがフワッとキッチンを包み込む。やっぱお米っていいなぁ、この国に産まれてよかったと思った瞬間である。


「……で、宇龍さんはなんかギネスにでも挑戦しようとしてるんですか?」


 茶碗が小さめだから油断していた。よそっては盛り、よそっては盛りを繰り返されたそのご飯のタワーに僕は圧倒されて一歩後退りしてしまう。


「若いモンが遠慮なんてしなくていいぞ。食べ盛りな年齢だろう、んん……このぐらいか? お代わりは沢山あるからな」


 そういう宇龍さんのご飯はというと、結局僕と変わらないぐらいのお米タワーが完成されていて、僕は無言でおっちゃんからしゃもじを奪い米を半分まで減らすことにしたのであった。



「うわぁっ……おいしい」


「んっ、はぐっ、んんっ」


 僕が久しぶりに作ったハンバーグの美味しさに感動している中、宇龍さんはと言うと米を食べる手が止まらないといった様子でマズルにどんどん食べ物を押し込んでいた。宇龍さんが若い時ってこれ以上食べていたってことになるのだけど、胃袋どうなってたんだろうか。もしかして牛みたいに複数の胃袋を持っていたりするのかな。


「あっ、ああっ‼︎ いかんっ、大事なことを忘れとった!」


 何か急用を思い出したかのように慌て始め、おっちゃんは皿の上にハンバーグがまだ残っているのを見て一安心する。そのハンバーグを箸で器用に摘むと、それを僕の口の前に持っていきながら日々練習している笑顔でニコニコし始めた。


「人間はこうやって互いの仲を深めるのだろう?」


 いつも読んでいる”人間と仲良くする本“にはこんな事も書いているのだろうか、これってもはや獣人と人間がお付き合いした時なんかにやる行動だと思われるのだけど。たぶん僕が食べるまでこの箸を降ろしてくれなそうな予感がするので、仕方なくかぶり付いてやった。うん、他人からこうやって食べさせられるなんて何十年振りだろうか。


「いい食べっぷりだな、さぁどんどん食べてくれ」


「ちょっと恥ずかしい……んですが……」


「そうなのか? ふうむ。やりすぎはよくないということか。なら一日一回までにしておくか」


 職場で人間とご飯食べた時もこんな風に食べさせたりしないだろうなと心配になったので念のため細かく説明してやると、お主は物知りだなぁとベタベタに褒められる。照れてしまう。


 お店の味には敵わないが、それでも自分で作った料理というものはまた格別にうまい。肉汁が止まらなくて、中のお肉が最高にご飯と合う。付け合わせのポテトで気分を変えて、また一口。食事中はとにかく食べることに夢中になってしまったので、無言の時間が刻々と過ぎていく。全てを平らげたあと、僕らは狸のように腹をポンポンと叩いて横になる。


「しかし、暑くなってきたな」


 唐突にTシャツを脱ぎ始める宇龍さん、もはや自宅ということで遠慮がまるで

感じられない。ムキムキの腕、からのボヨンボヨンの腹。それにツルツルで触り心地の良さそうな肌だ。


「お主も脱いだらどうだ、ここは家だぞ。いつものようにスーツなんて着なくていいし、何なら下まで脱いでくれても構わんぞ」


「しっ、下……?」


「ワシはツルツルだからなぁ。だが人間は何かと蒸れるであろう。ほら、早く脱ぎなさい」


「脱ぎなさいって! セクハラ!」


 こわい顔が徐々に近づいてきて、でもおっちゃんは決して無理矢理脱がしたりはしてこない。でもその目つきは人間の体に興味津々といった純粋な眼差しをしており、視線が痛いほど突き刺さる。その後に別の話題を振ろうとしたのだが、宇龍さんは僕がシャツを脱ぐまで離れてくれないらしい。この人に諦めさせるのは無理だと悟ってしまった僕はちょっとだけですよと一応断りを入れて、恥ずかしがりながらもゆっくりとシャツを脱ぐことにした。


「ほぉ……これがナマの人間乳首か。ううむ、本で見た通りだ。それに他の部分はワシの体とそんなに変わりないな。ちょっと肉が少なすぎやせんか? やはりもっとごはんを食べさせないとダメかもしれん。夜は大盛りにしてやるから、ちゃんと残さず食べるんだぞ」


「えっ、よ、夜も?」


「せっかくうちに来たのだから、もっと色んなことを教えてもらわねば。時間なんてあっという間に過ぎていくからな、何もしておらんとも勝手に夜になるぞ。ほらほら、早く、今日も頼んだぞ先生。ワシにもっと色々教えてくれ」


 休みの日まで勉強熱心なこの龍のおっちゃんは、次から次へと僕に質問責めをしてくる。会社の先輩だったら途中でイライラする人が出てきそうなぐらいの熱意を持っているようだ。そうとなりゃ、とことん教えてやろうじゃないですか。手取り足取り、教えてやろうじゃありませんか。人間が何たるかを。僕、人間の体について全然詳しくないですけどね。医者に聞いた方がもっと細かいところまで詳しく教えてくれると思う。



 そんな週末が、そして平日は喫茶店で朝から特訓が、宇龍さんを強くしていく。いつか人間がたくさんいる部署へと異動するために。そんな些細な願い事のために、僕はおっちゃんの勉強に付き合ってやった。正直その怖そうな厳つい顔さえなんとかすればいける気もするんだけどな、そんな本心は心の奥底深くへしまっておくことにしよう。



 毎日行われていた人間との交流会、それも今日で大体一ヶ月。食事の文化や生活の文化は大分理解してくれたようで、最近はお茶碗によそう米の量もすり切りいっぱいにまで減っていた。かなり厳密に計っているようで、うーむ三十粒ぐらい多いとか、あと数粒あればとかなんかゴチャゴチャ言っていたが、楽しそうなので良しとしようか。


 今日は金曜日、最近は宇龍さんと華金という時間で一緒に過ごすことが多くなっていた。それもどこか飲み屋へ行くのではなく、自宅で飲み食いするのにハマっている。今日もたっぷりお仕事したのでお互いクタクタだ。


「おーい、帰ったぞぉ」


「おじゃまします」


 誰もいるはずのない宇龍さんの家、そこに二人の男が帰宅する。僕は帰宅するというよりはおじゃますると言ったほうが正しいが、もう何回も来て慣れてしまったこの家がどうも自宅のように感じられる。


「先、お風呂沸かしときますね」


「うむ」


 だぁーっと大きいため息をつきながら、宇龍さんはソファへと腰を降ろしていた。あちらも相当に今日激務をしていたらしい、会議続きで全身クタクタだと言っていた。今日は先に風呂に入らせて、僕がお夕飯を作ってあげようかな。


 もはや冷蔵庫を開けるときも何一つ声をかけずに自然に中を見てしまう、それだけ僕はこの家に馴染んでしまったようだ。今日のために買い物は宇龍さんが済ませてくれていたようで、卵やら肉やら魚やらなんでもある。もはやこれで居酒屋でも開けるのではなかろうか。特に肉は量が多い。特売シールが貼ってあるのと、肉が大好物という獣人が買い物に行ったから致し方なし。


 前々から思っていたけど、このマンションはかなり家賃の高そうな造りになっているんだよな。風呂場に大理石みたいなのが敷かれてるし、それにお湯がたまるのもめちゃくちゃ早い。いつも自分の家だと十五分ぐらいはかかるはずなのに、たぶんこの家のは十分ほどで沸いてしまうのだ。機械から優雅なクラシックが流れ、お風呂が溜まったぞとお知らせしてくれている。未だワイシャツを脱がずソファでぐでーっとなっている宇龍さんに声をかけてやるが、返答がない。どうしたものかと目の前で手をフリフリしても、まるで見えていないようだ。そのままもう少しだけ顔を近づけて――するとおっちゃんは急に覚醒したかのように僕の肩を掴み、そしてソファへと押し倒してきた。


「なんか今日はな、ムラムラするんだ。どうだ、お主はそういう気分にならぬか」


「あっあの、お風呂沸いてますんで先に――」


「まぁまぁいいじゃないか。ここはひとつ、体同士の相性を確かめて見るのも悪くないだろう。……ああ、とてもいい匂いがするな。うまそうだ、ぐふふ」


「でっでも……」


 仕事帰り、まだワイシャツとネクタイを着用中の宇龍さんはほんのりと汗の匂いを漂わせたまま僕をベッドへと連れていく。普段一人で寝ているであろうそのベッドに僕のような小さな人間が入ったところでスペース的には何の問題もない。仰向けに寝かされれば腹の上に重量感のあるケツを降ろして僕を押さえつけた。日々人間に対する力加減を学んできたおかげか、僕が動けない絶妙な重さで腰を浮かせているのである。


 先に風呂に入れるようにちゃんと宇龍さん用に熱めの湯を張っているのに、それよりも僕との愛を育むほうが優先されてしまう。仕事に行っている間離れ離れになった分、宇龍さんはいつも寂しい気持ちになってしまうと熱弁していたな。そのせいなのか? そうなのか? そういや……最近ボディタッチが多くなったような気がする。前から多かったけどここ最近は特に、だ。


 カチャカチャと金属音を立てながらベルトを引き抜き、僕を押さえつけたまま下半身を見せつける彼。あれ……なんで急にこんなことに……。そして彼は毎日風呂に入っていると思われるのだが、今日は一段と蒸れてキツいオスの臭いがするな……。



「お主の好みはよくわかっているぞ。こいつが欲しいんだろ。だが今日はあまりワシの匂いが付いとらんようでなぁ、今準備するから待っとけよ」


「う……」


「本気でイヤがっとる顔はしとらんからな、ふん。ワシには全てお見通しだ」



 いつだったかもう思い出したくもないのだけど、人間は性欲を処理する時にどうするという話題になり、僕が隠していた性癖を全て暴かれるという人生で最大のバッドイベントがあったんだ。……ああ思い出した、初めて遊びに行ってハンバーグを作った日か。暑くなったからとお互いTシャツを脱ぐと、急に宇龍さんの方から話題を振ってきたんだっけか。


 僕の恥ずかしい性癖を全て聞き終わったおっちゃんは、ワシと性癖が似ておるなとガハハ笑いしながら僕の肩を抱いてくれたなぁ。僕は獣人のおっちゃんが好き、宇龍さんは僕ぐらいの若い人間のオスが好き、まさにピッタリだった。神様か誰かが僕らを巡り合わせてくれた、そうとしか考えられないぐらい事がトントン拍子に進んでいく。



 それからは宇龍さんからの遠慮のない体を触るスキンシップが追加され、毎日色んなところを弄られたものだ。だからいつか来ると思っていた。男同士でこういうエッチなイベントが起こるということは。だから……僕は驚かなかったし、抵抗もしなかった。


 宇龍さんの匂いがかなりこびりついてそうな年季の入った赤褌を、ぐちゃぐちゃに丸めてとある場所へと押し込む。それは僕の口ではなく、自分自身の股下にあるスリットへだ。酷く湿った布を受け入れるその直前、スリットをクパァと指で開けばそこからドボドボとヌメッた透明の液体が垂れ落ちた。漏れ出る量を最小限に抑えながらその布で塞き止め、徐々におっちゃんのスリットへと褌が飲み込まれていく。既に汗にたっぷり塗れた褌は吸収量の限界を超え、スリット内の我慢汁を全て吸いきれずポタポタと粘液を垂らしながらその赤い布は姿を消した。


「お主の大好きな汁をたっぷりまぶしておかんとなぁ。さて、その間に上のお口で楽しませてくれ」


「んっ、んぶっ……」


「仕事で離れ離れになっている間にこんなにワシの匂いが薄くなっておるではないか。今からその口にたっぷり唾液を注いでやる。たっぷり愛を込めた粘液がお主を蕩けさせてくれるはずだ」


 舌を口の中にねじ込まれ、有無を言わさずねっとりとした唾液を飲ませてくる。押し返そうにも宇龍さんの力強い舌遣いには敵わず、端からダラリと溢しながらもゴクゴクと喉を鳴らしておっちゃんの唾液を体内へと取り込んでいった。一度注いだ分を全て飲み込んだのを確認すると、次の分だとまたマズルの奥底深くから唾液が送られる。窒息しかけながら行うという命懸けの接吻だ。肺活量の違いからか、宇龍さんは息苦しくなっても全く影響なんてなさそうに僕の口からマズルを離すことはない。


「ほぉ、随分と甘い唾液だ。そんなにワシとの交尾を心待ちにしていたのか?」


「……っ」


「ワシは人間のことなら何でも知っとるからな。お主の些細な心情で変化する唾液の味は、うまくてクセになる」


 以前軽く一度だけちゅーされたことがあったが、その時には既に僕の唾液の味を覚えていたらしい。怖い、怖すぎる。その時は一体どんな味がしたのだろうか、正直今の唾液が甘いとかそんなこと僕自身は全くわかるはずもなく。


 目がとろんと蕩けるまで、宇龍さんは僕の顔に猛烈なキスの雨を降らし続ける。熱を持った舌が肌にくっ付けられるたびにビクンと体が反応し、粘液を付けられた部分の熱が奪われてスースーする。そこをまたねっとりとした舌遣いで唾液を塗られ、僕のスケベメーターが最大値まで一気に上昇してしまった。


「こういうのは女性から気持ちよくしてやるものだ。ワシと離れ離れになっている間、ちゃんと我慢してたか確かめてやろう」


「あっ、んはぁっ僕、オンナじゃっ!」


「雄に組み敷かれて良いようにイジられるヤツは皆、オンナだ。お主はワシの、オンナ。……よぉく覚えとけ」


 宇龍さんは僕が先に気持ちよくなるように僕の体を弄ってくる。そしてちんちんをしゃぶるのも宇龍さんが先。こんな小さいのをしゃぶって何が楽しいのだろうと僕は思ってしまうのだけど、この大きさはおっちゃんの舌で弄ぶのにはちょうど良いサイズだと言っていた。それは僕のことを気遣って言ってくれたのか、それとも本心で言ってくれたのかはわからない。だがおっちゃんは僕の肉棒を愛おしそうにしゃぶってくれていた。


「これが人間の蜜の味か、ううむ……うまいな。それにたったこれだけで我慢汁をこんなにも漏らすとは、ワシがいない間にちゃんと禁欲していたようだな。ぐふふ」


 別に禁欲を命令されたわけではないのだが、ここ最近忙しくて抜いてなかっただけだ。僕の逸物と玉をマズルの中に押し込めることなんて造作もない、そういった余裕の表情で舌をペロペロ動かされて僕のちんちんは遠慮なくお漏らしをしてしまう。透明でトロットロの我慢汁は全ておっちゃんの口の中に出てしまい、数分後にはマズルを全開にして僕へと見せつけてくる。そこには唾液と我慢汁が混ざり合った大きな池が出来ていて、ちょっとだけ指を突っ込んでみるとキレイなようで汚らしい粘液の架け橋ができた。


「ワシも辛抱たまらんぞ、ぐふふ。そろそろここも大分濡れてきたようだ」


 自らのスリットに指を突っ込むと、そこから赤い褌が引き出される。最初に見たときは汗のニオイが凄かったのに、今はそれがさらに濃い臭いを放つ下着に変わっていた。スリットの中は宇龍さんの我慢汁が大量に分泌されていて、それが全てこの布地に吸収されたようだ。乾いた部分がなくベトベトのその褌は僕の目の前に差し出される。



「口で咥えろ」


 今までやさしく接してくれた宇龍さんが、この瞬間だけは強気に僕へと命令をしてくる。丸められたその褌を僕は咥え、おっちゃんによって奥深くまで押し込められた。汗と我慢汁のしょっぱさが合わさったこの褌の味に慣れることはないだろう。口に咥えるということはそこから穴が繋がっている鼻にもたっぷりとオスの臭いが移送され、まるでおっちゃんのちんちんをしゃぶっているかのような錯覚さえも感じてしまう。


「まずは金玉ん中を空っぽになるまで搾ってやるからな。いい声で喘いでくれよ。ワシが一音も漏らさず全部聞いてやる」


「……ン゛ーッ‼︎」


 騎乗位による上下運動は他のどんなメスよりも力強く、そして迫力があった。僕は童貞で今まで他人にちんちんを挿入したことなんてないけど、宇龍さんのスリットの中の締まり具合は本当に意識を飛ばしかねないほどに気持ちがいい。オナホと違って自分から動きにくるし、なによりローションなんてなくても中はねっとりと粘液で濡れていて。僕は口に咥えた褌によるおっちゃんの股座の臭いを肺へ取り込みながら、無意識のうちにおっちゃんの腰を掴んでしまう。初めてのことだらけで頭がおかしくなりそうだった。


「お゛おっそうかそうか、お主もオスとしての本能を思い出したか。そうだぞ、オスは自分から腰を振りにいかなくてはな。だがワシの騎乗位には勝てぬということを、その体に思い知らせてやろう」


「んっ、ん゛っ‼︎」


「中できもちいいのが擦れているだろう、ワシのちんちんも喜んどるわい。今からこの人間のかわいらしいちんちんからワシの臭いしかせんように、じっくり粘液をまぶしてやるぞ」


 僕が下から突き上げようと腰を動かしても、その上からもっと強烈で素早い上下運動によって上書きされてしまう。挿入しているのは人間である僕なのに、絶対的強者である獣人が主導権を握っているのは明らかだ。両手首はベッドに押しつけられ、重量のあるおっちゃんのケツがパンッパンッと僕の股座に押しつけられる。さっさと子種を出さないとひどい目に合わせるぞ、そんな意思が太眉の下にあるギラついた目から伝わってきた。


「ン゛ッ、ンンンーーーッ‼︎」


「あ゛っ、はっ入ってくるぞぉ、お主のちんちんが子孫を残すために、今ワシに濃くて新鮮な種汁がっ、入ってくるっ、グウウッ」


 僕が痙攣させながらおっちゃんに中出ししている最中も、上からズンとくるスクワットは止まることなんてない。むしろ全身から汗を吹き出し、フンスフンスと鼻が荒くなってからが本番のようだった。宇龍さんはここから玉袋で溜め込んである僕の種汁を全量搾り取るつもりだ。いつも一発や二発で満足してしまう僕にとっては、この射精し続けることで与えられる刺激的な気持ち良さが逆に拷問となる。


「なんだ、まだビンビンじゃあないか。心配いらんぞ、ワシが全部中で受け止めてやろう。夫婦間の子作りは何よりも大切なスキンシップだ、お主が満足するまでワシがその玉袋から種汁を吸い上げてやるからな」


 一発目からそう時間が経っていないのにも関わらず、僕のちんちんは二発目、そして三発目と次々にザーメンを発射していく。発射した先は全て宇龍さんのスリットの中、つまりは中出しだ。腰を振り続けるおっちゃんの結合部分を見てみると、周りに漏れ出た子種はほとんどない。おっちゃんのスリットは出入り口の締まりがかなり良いようだ。僕のちんちんが出入りしている時点で多少の漏れはあるものの、それでも常人が同じことをやったら今頃布団が悲惨なことになっているだろう。


「どうした、もう終わりか? ワシの中に挿れたお主のちんちんが萎えかけているぞ」


「……ゲホッ、も、もう、出ない、です」


「どれどれ……んー、まだ底の方に残っておるじゃないか。玉袋の柔らかさ的にあと二発ほどといったところか」


「いっ、いやもう種汁ないですから! ね?」


「嘘はいかんぞ嘘は。……ん、なんだ、そんな褌じゃあ物足りないと言いたげだな。お主がほしいのはこいつか? ならばこれでもう一踏ん張りするんだ、いいな」


「いやそうは言ってな……ガァッ‼︎」


「そういえばお主は褌だけでなく靴下も大好物であったな。……まったく、人間というものはこんなものを好んで食べるとは不思議な生き物だ。人間について記載された本の出版社に文句を言いに行かねばなるまいな。ヒトは獣人の下着を定期的に食べないと気が済まない、とな」


 革靴の中で外気に触れることのなかった宇龍さんの靴下が、褌と一緒に僕の口へねじ込まれる。口では拒否していても、もうおっちゃんを騙すことなんてできなかった。鼻を摘まれれば勝手に口が開くこともしっているし、それにおっちゃんがいない間に部屋内を物色して見つけ出したおっちゃんの臭い付きの褌でこっそり抜いていたこともバレている。


 おっちゃんはもう人間のことならなんでも知っている、いや、僕に関してなら他の誰よりも理解している存在となってしまったのだ。



「ワシの匂いがこんなにもついた褌や靴下を、こんなにも好んでくれる人間がいるとはな。どうだ、これで少しは興奮してきただろ。お? ……ぐふふ、ここが硬くなってきたぞ。ほれ、ちっとペース上げてくからなぁ」


 おっちゃんによる精液搾取、それは日付が変わるその時まで休むことなく行われた。最後には汗塗れでムワッとした男の臭いを放つおっちゃんにのしかかられ、そして二人で呼吸を荒げながら抱きしめ合う。口から褌や靴下を引っ張り出されると、そこに容赦なくおっちゃんの長い舌がねじ込まれる。あんなに汗や粘液まみれの下着を咥えたばかりで汚いというのに、宇龍さんは接吻をやめることはない。むしろ興奮すると言いたげなその表情に押され、僕の口の中がおっちゃんの匂いで満たされたことを確認すると舌先に絡みつくようなキスをしたあと龍のマズルから解放される。


「人間は獣人と違って性欲が弱い。だが、それはワシら獣人と出会う前の話だ。人も獣人も、学んで強くなる。ならお主もワシと交尾することで強くなるということだ」


「ゲホッ……お゛……もう……」


「さて、次はワシの番だな。お主は今日七発もワシに中出ししてくれた、人間は何か親切にされたらそれ以上の親切でお礼をするのだろう? ならワシは最低でも八発は出してやらないといけないな。ぐふふ、まぁ八発ならワシにとっては造作もないことだ」


「え……はっ、八、も……がぁっ‼︎」


「コラ、口から下着を離すでない。咥えておかねば穴の締まりが悪くなる」


 正常位で僕のケツに当てがわれたのは、僕よりも何倍も大きな棍棒だ。それは狭くてキツいケツ穴をグイグイと拡げていき、奥へズブブッと挿入される。もし僕が一般の人間だったら流血で大変になっていたところだ。


 再び咥えさせられていた下着も、あまりの激しい腰の振り方で振動を繰り返し僕の口からポロポロとこぼれ落ちる。既に舌の上へとたっぷりこびり付いたおっちゃんのニオイによって、もはや咥えていなくとも鼻と口で雄のフェロモンを感じられるようになっていた。


「ぐうぅっ、人間の穴というのは随分とキツいな。お主は毎日トレーニングをしていたのだろう、つまりはワシのを受け入れられるのはお主だけということだ」


「い゛っ、いやっ、ちょっと尻で遊んでただけでっ、あっ、そのっ‼︎」


「なんだ、ワシのために解していたのではないのか。……ウソはいかんぞウソは」


 本当に恥ずかしくなる。慣らすことなく僕のケツ穴にグイグイとちんちんを当ててきながら、おっちゃんは舌でマズルの周りをペロッと舐めながらニヤついていた。


「この一週間で大分溜まっているからな、今からワシが抜かずの三発で上澄みを出し尽くす。そこからが子作りの本番だ。龍の種汁は量も質も他の獣人とは比べ物にならないぐらいだからな、それ相応の覚悟で受け止めてくれ」


「ひっ、ひいいっ‼︎」



 ヌチャッと粘液が混ざり合う音、それが僕らの交尾の開始合図だった。叩きつけるような容赦のない種付けプレス、それからボタボタと垂れ落ちるのはおっちゃん汗とヨダレだ。このおっちゃんは興奮すると体液を撒き散らす癖がある。そんな二つの液体が僕にぶっかけられている様子を見るのがたまらなく好きなのだろうか。まったく、とんでもない性癖の持ち主だ。もちろん僕にとっては一般性癖なので何も問題はない。普通の人間にこんなことしたら絶対に嫌われると思うのだが、やはり僕と宇龍さんの体の相性は抜群に良いのかもしれない。


「ワシのちんちんは気持ちいいだろう、こんなに奥までほじくれるのだからな」


「あ゛っ、そんな奥までやったらっ、壊れるからぁっ‼︎」


「S字結腸の先まで挿入することは獣人にとってはごく普通のことだ、なんも心配はいらん。それよりもちゃんと奥の奥で感じられるようにワシが体に覚えさせてやらねばな、うむ。お主が自分で子種を掻き出してしまわぬよう、奥の奥で種汁を注いでやろう。……むふふふ、はぁ〜〜……いい、人間はやはりいい……たまらん……」


「あ゛〜〜〜っ‼︎」


 宇龍さんのちんちんはどちらかというと海洋獣人っぽい形をしている。先端がかなり細いくせに、根本はエゲツないほど太い肉棒だ。その独特の形のちんちんは僕の奥の奥まで抉り掘り進めるのにはとても相性のいい形をしていて、尚且つ根本の太い部分は前立腺をしっかりとゴリゴリ潰してくる。毎度のことながら子種はもう玉袋に残っていないので、僕は透明な体液をビュッビュッと潮吹きするみたいにちんちんから発射し続けた。


「ぎゃっ、あ゛っ‼︎」


「おお、美しい潮吹きだな。きもちいいだろう、ワシのちんちんじゃないとこんなに奥までねじ込む獣人はいないだろうからな。ほれ、この辺りも気持ちいいだろうが。どうなんだ」


「むぅっっ無理っ‼︎ やばいっ‼︎」


「何が無理なんだ、ちゃんと順序よく説明してくれないとワシにはわからんぞ。お主もそう会社で教わっただろう。どこがどうヤバいのか、ちゃんと教えてくれるまでワシは止めんからな」


「いぎっ、いっ、いじわるっ‼︎」


「ほれほれ、お主にそんな余裕があるのかな? ん? ここは前立腺なんかよりももっと気持ちいいぞ、ほれほれぇ」


「あ゛あああっ‼︎」


 もう出すものは全て出してしまったのか、ザーメンの空打ちをしながら僕はおっちゃんに組み敷かれていた。両手足は全て宇龍さんの体に絡みつき、僕の体はおっちゃんの種汁を欲しがっている。それなのに脳ではこれ以上危険な交尾を続けてはいけないと警笛を鳴らしていた。だが宇龍さんの前では無力も同然、僕はケツを限界まで広げておっちゃんの濃くて濃厚な種汁を今か今かと待ち望んでいるのだ。


「……気張っとけよぉ、今上澄みをその奥に中出ししてやるからなっ、これで意識飛ばすんじゃあないぞっ、お゛っ、ワシの種汁で孕んでみろっ‼︎」


「がああああああっ‼︎」


 真上から見たら宇龍さんが四つん這いになっている姿、それから僕の細くて小さな手足しか映らないであろう。中出しいている間もおっちゃんは腰を振るのを止めずに奥へ奥へとザーメンを押し込んでいるようだ。こんなにも最奥部で中出しをされると、腹に直接影響が出てくる。目に見えてお腹がどんどん膨らんでいくのだ。まさに本当に子供を授かった気分になって、萎えかけていた僕のちんちんは再びムクムクと勃起し始める。それがおっちゃんの腹に当たると、彼は嬉しそうにこちらを見ながらヨダレを垂れ流すのだ。


「お゛おっ、ワシの中出しがそんなに良かったか」


「ひっ……いぎっ……んお゛っ……」


「よおしよし、ならさっさと三発出して上澄みを抜いてやらんとな。心配せんでもちゃんと意識が飛びそうになったらワシが起こしてやろう。こんな時のために、スリットの中に何日も押し込んでおいた褌なんかを用意しておくのはどうだろうか。なぁ、ワシの股座の臭いが好きなお主にはちょうどいいだろ」


 いいえと首を振ると激しく腰を振って脅され、仕方なく頷くと今度はご褒美に激しく種付けプレスをお見舞いされる。性経験なんてほぼないと言っていたおっちゃんだったが、どうも腰遣いが上手すぎるのだ。こんな僕が逃げられないようなガッチリと組み合う種付けプレス、それからニオイ付き下着で相手を興奮させるという完璧すぎる流れ。一体どこでそんなことを覚えたのか、そう考えた時に思い当たることが一つしかない。エロ本だ、あれだけでおっちゃんはこんなにも上手なエッチをするようになってしまったのである。


「あ……ぁ……」


「なに惚けた面をしとるんだ。まだワシは四発しかイッておらんぞ。こういう時のためのスイッチがんん……この辺に……あったような」


「ぎぃぃいっ、がぁっ‼︎」


「ぐふふ、ここだったか。前立腺以外にも、お主にはたくさんのメスイキスイッチが中に眠っておるからな。さて、意識が覚醒したところで五発目も元気よくいこうじゃないか。振り落とされんようにちゃんとワシにしがみついておくんだぞ」


 上澄みを抜き終わってからの本番は、対面座位か駅弁で根本までずっぽし入り込むような体勢で交尾が行われる。ベランダでご近所の人たちに喘ぎ声を聞かせてやろうかと脅されながら、家の中で何度も何度も中出しされた。最後の八発目を外に漏らすことなくS字結腸よりも先のところで中出しを終えると、僕は突如瞼が重たくなりおっちゃんの体の中で意識を失った。



 最後に見えたのは、宇龍さんのやり切って気持ちよさそうな笑顔であった。




「い……いたい……」


 次の日、当たり前だが僕の体はズタボロで、一人で立ち上がることすら出来ない生まれたての小鹿のような存在と成り下がってしまう。土曜日で良かった。今日が仕事日であったら確実に会社の人から心配される。その歩き方、どうしたんですかって。


 ベッドに宇龍さんの姿はなかったが、台所からいい匂いがしてくるところをみるときっと朝ごはんを作っているのだろう。いつもは僕が作るのだが、昨晩は本当に夜遅くまで交尾をしてしまったせいでおっちゃんが作ってくれたようだ。


「起きたか。……その、大丈夫か。随分と疲れているようだ」


「あ、宇龍さんおはようご……ざ⁉︎」


 ヒョコッと顔を出した宇龍さんの顔、そこには吸血鬼のように赤い鮮血がビシャアとマズル周りに付着しているではないか。まるで殺人犯、一体何をやったのか。毎朝たまにこういうことが起こるのだが、最近は眠たい頭の中でもちゃんと冷静に分析することができるようになっていた。これも獣人の生活様式をちゃんと教えてくれた宇龍さんのお陰なのだが……。


「ちょっ、また牛肉つまみ食いしたでしょう! しかも生で!」


「おお? よくわかったな。やはりお主は鼻がとてもいいな」


「いやいや匂いじゃなくてそのマズル‼︎ 鏡! 見て!」


「……あっ、こりゃすまん。あとで洗ってくるからな」


 まさか自分のマズルがこんなにも鮮血で汚れているとは思ってもいなかったのだろう。このまま外にゴミ出しに行った日には、マンションの住民に110番通報されていても何らおかしくはない。


「それで、立てるか?」


「……」


「悪い、悪かった。ちょっとやりすぎたな。今夜はもうちっと少ない回数にしとくか」


「え、いや、ちょっと待ってください。毎晩やるの、流石にキツいです」


「え……え? 毎晩……やらんのか……?」


 ……確かに宇龍さんが読んでいた本には“仲良しの秘訣は毎日愛を確かめ合うこと。できれば交尾は欠かさず行いましょう”なんて書いてあった気がする。あれって人間ではなく、夫婦間の中での話なのではなかろうか。それにおっちゃんはちょっと普通の獣人よりも性欲が強すぎる。僕がまったくと言っていいほどついていけないぐらいに。


 今日はやめとこうと言うと、おっちゃんに困ったような悲しいような顔をされる。人間とこんなにも密接に関わるようになってからというものの、宇龍さんは喜怒哀楽を顔で表現するのが上手になった。だからこそ、そんな顔をされると気持ちが揺らいでしまう……。


「ほら、宇龍さんも疲れたでしょう。無理しなくてもいいんですよ」


「ワシ、普段からたくさん抜いとるからな。むしろ絶好調だ」


「睡眠時間少なくて、今日も朝起きるの大変だったでしょう」


「ワシ、意外とショートスリーパーとかいうやつみたいだ。うん、全然へーき。なんの問題もない」


「……はぁーっ」


 大きくため息をついたあと、僕は二発までなら許すと小声で伝えてやる。その瞬間おっちゃんは僕が寝ていたベッドに飛び乗り、頬に熱いちゅーをしてくるのだった。


「うわっ、おっちゃん血! 血がつく!」


「やっぱりかわいいなぁお主は。ほんと、このまま食ってしまいたいぐらいだ」


 マズル周りについた生肉を食べた際の血が頬に擦りつけられる前に、僕は全力でおっちゃんを阻止する。だけど、どことなく宇龍さんは嬉しそうだ。尻尾がユラユラと揺れている。


「なぁ、来週の月曜日に有給を使って休もうと思うんだが」


「えっ、は、はい。いいんじゃないですか」


「うむ。じゃあお主も有給を取るんだ」


「僕関係なくないですか?」


「お主は今日一日安静にしてなきゃならんだろう。するとどうだ、いつも一緒に料理していた休日の貴重な機会が一回分、いや夜も合わせて二回分が失われるということだ。その分は月曜日に取り戻すとしようじゃないか。今日はワシがちゃんと面倒を見てやるからな、ぐふふふ。そんでもって、一緒にゲームして、それから、ああっ今日はすき焼きが食べたい。ほら、冷蔵庫に牛肉買ってくれていただろう。それから――」


「は、はぁ……。そういえば昨日冷蔵庫で見たあの大量の牛肉、あれを半分も食べちゃったんですか⁉︎」


「……許せ。獣人は腹がへっては何もできぬ生き物なのだ。致し方なし」



 獣人と、いや、宇龍さんと過ごす休日は本当に驚きの連続だ。今日もまた、退屈しない一日になりそうな予感がする。僕らは大きな手と小さな手を絡めあって、それからベッドで抱きしめ合う。何やらご飯の炊けた音が気がしたが、そんなものは僕ら二人きりの世界に届くことはなかった。


 獣人と人間の生活、それは決して不可能なものではない。文化の違いで最初は大変だけど、でも僕たちは他の誰よりも幸せな自信がある。これからも、僕は宇龍さんとイチャイチャしながら残りの人生を過ごすのが楽しみだ。




 結局のところ、宇龍さんはいつしか人間のたくさんいる部署への異動を希望しなくなったらしい。それは人間ではなく、僕のことを一番愛し、世界のどんな人間よりも好きだと気がついたからだとか。毎週通っていた宇龍さんの家に、僕がお引っ越しをするようになるのもそう遠くない未来であろう。




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POSTEDOct 19, 2023
ARCHIVEDJun 10, 2026