「少しぐらいは手加減するつもりですけど・・・」
私は、取り囲む男たちを見据える。
「おい、何か目が据わって・・・」
「もし、やり過ぎちゃったら・・・」
私は最初に殴り付けて来た男に、ツカツカと歩いて近付き。
「え、うっ! ぐ・・・ぁっ」
胸倉を掴むと、左手一本で持ち上げ。
「お、おい・・・やめ」
「・・・ごめんなさい、ね?」
右拳を握り込み、男の顔目掛けて打ち放った。
ドガンッッ!!
「うごおぁぁぁっ!!」
超握力で握り込んだ私の拳は、砲丸よりも硬く。
男の鼻骨部分を完全に減り込ませ、クレーターを作りながら吹っ飛ばした。
「お、おいっ! 放せっ」
「く、くそっ」
私は右手で一人、左手で一人。男の後頭部をそれぞれ掴んで、片手で持ち上げ。
「うるさいっ」
私自身の顔の前で何度も、男二人の顔面を何度も“ドッキング”させた。
ゴシャッ。「うげぇっ!」「うぎゃっ!」
ゴチャッ!「うごぉっ」「うがぁっ」
ゴギャッ。「・・・」「・・・・・」
ゴガッ、ゴガ!「「・・・・・」」
ガン、ガンッ!「「・・・・・・・」」
「おいっ! そいつら、もう・・・」
「・・・そう? じゃあ、はい」
私は既に動かなくなった男二人を、その辺にズシャッと放り捨てた。
「「ひぃっ!?」」
地面に転がった男二人の顔は、“失敗した福笑い”みたいにグチャグチャだった。
もはや、ピクリとも動かない。
「・・・この野郎っ! 死にさらせぇ~」
正面に立った男は、恐怖を怒りで上書きしたようで。
ナイフを手に、私のお腹目掛けて向かって来る。
「この、クソ女ァ!」
後ろからは、リーダー男と思しき叫び声と。
パンッ、パンッ。パンッ、パンパンッという乾いた爆竹のような音が聞こえた。
「これで、どう・・・だっ」
ズブ、と。男は確かに、ナイフを私のお腹に突き立てていた。
「ちょっと、痛いじゃない」
「・・・え?」
だけど、それはホンの数ミリ、刺した程度。貫くには至っておらず。
「ナイフなんて、危ないじゃない」
私は、ナイフを握った“男の両手”ごと、掴み。
ナイフを折り曲げ、丁寧に潰して行った。
「ひぎゃっ! い、痛いっ。や、やめぇっ!?」
ゴギ、ゴギャッ。
小学生の時点で『100kg』を超えていた私の握力は天井知らず、で。
今となっては何キロあるのか、想像も付かない。
ゴギャギッ!
そんな超握力が、人間の手に振るわれればどうなるか。
「お。俺の、手が・・・あ、ぁ・・・っ」
男は余りの激痛と、ナイフ入りの肉団子と化した自分の両手を見て、卒倒した。
「バ、バケモン・・・かよ」
「それ、拳銃よね? そんなの人に向けて撃っといて、言う言葉がそれ?」
そんな風に、カッコ良く台詞を言ってはみたものの。
当の私自身、内心は少しビビッていた。
ナイフならまだしも、流石に拳銃の弾丸を喰らうのは初めての経験。
背中にチクチクとした痛みはあるものの、風穴が開いたような感覚は無い。
どうやら、自慢の僧帽筋や広背筋は、弾丸をキチッと受け止めてくれたみたい。
ワイシャツぐらいなら、隆起させるだけで弾き飛ばせるだけ、はある。
とは言え、頭部に銃弾を撃ち込まれれば、絶命していただろう。
人体の基本として、筋量が増すのは首から下、なのだ。頭部は、弱点。
「くそぉっ・・・」
カチッ、カチッとリーダー男が握る拳銃からは乾いた音が鳴るのみ。
恐らく、ナイフ男をヤッている内に、全弾撃ち尽くしたのだろう。
「ひぃぃっ! く、来るなぁっ」
リーダー男は、余りの恐怖からか身体が硬直させてしまったようで。
弾切れの拳銃を手放すことなく、その場に立ち尽くしていた。
「オジサンも、“肉団子”にしてあげるね」
「や、やめ・・・っ、あ、ぎゃ」
私は、左手で男の両手を、右手で拳銃を握り締め。
徐々に、“圧縮”して行く。
ゴリッ、ゴギョッ!
「い、ぎゃぁ・・・あっ、が、あっ」
渾身の力で、男の手を“捏ねて”行く。
メギョ、グギョギョ。
「あっ、あっ、あ・・・っ」
かなり痛い筈なんだけど、男は捏ねる度に少し声を漏らす程度。
「あれ? オジサン?」
いつの間にか、男の目線は空中を彷徨っていた。
「あ! あ~~っ」
何か匂うと思ったら、男の股間が濡れていた。湯気も立っている。
「やだぁ。ばっちぃ」
私は、ドンッと男を突き放す。
男は地面に横たわっても尚、同じ体勢で視線を夜空に向けたままだった。
「え~~、っと・・・」
私はふと、我に返り。周囲を見渡す。
男たち相手に振るったのは、平手打ちと、右拳。
後は、粘土を捏ねるかの如く、“お手て”を捏ね繰り回しただけ。
「ひょっとして、やり過ぎちゃった・・・?」
何を今更、と我ながら思う。
「・・・・・ふぅ」
私は夜空を見上げ、一息付く。
「どうせ鍵も壊れてるし、引っ越すか・・・」
やるだけやってしまって、逃げる。我ながら、余りにも身勝手。
こういう所が喪女たる所以なのだと、実感した夜だった。