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DESCRIPTION
無数の霊魂漂う、幽美なお屋敷。
冥界にて魂の管理を行う、白玉楼のお屋敷。
そこの主人である西行寺幽々子は高い能力と知性を以て、冥界全土の魂を統率するという大任を閻魔より任されている。
また彼女の醸す穏やかで幽玄な雰囲気とその美貌は、館の名物であるどこまでも続くような桜並木に比肩し得る目(?)の保養として冥界の住民に愛されている。
しかし、そんな冥界のカリスマが、今。
(……これは、どうしたことかしら)
館の一室で、知られざる窮地に陥っていた。
寝間着のまま両手を縛られ、柱に括りつけられる。通常の館の警備が機能していたならばあり得ない状態。
というより幽々子は本人がこの館で最高峰の実力を誇る弾幕勝負の名手。館の警備をすり抜けたとて、そこからさらに勘のいい彼女の警戒をもすり抜けて拘束できるような存在となると、その数は非常に限られる。
そして実力もさることながら、襲撃する理由がある存在となると……
「妖夢~?いるのでしょう?出てらっしゃ~い」
大方それは彼女の側近か、親友かの二択だ。それ以外にはまずあり得ない。
そのうち側近の方はさほど妖術面に強くはなく、そうした方面は他者の手を借りることが多い。異変の時などは幽々子がその役割を担うように。
『おや幽々子さま、よく私だとわかりましたね?紫さまとどっちか迷うと思ってたんですけど』
「わかるわよ~。だってこんな、博麗のお札なんかが必要なのは、身近なところだと貴女くらいなものだもの」
「それで妖夢、どうしてこんなことをしたのかしら?縄抜けの訓練がしたいのなら、せめてお着替えくらい済ませてからにしてほしいのだけど……」
『…………本当に、心当たりはありませんか?』
「えっと……私、何かした?」
『…………人里で買ってきた、おいしそうな外来のおやつ』
「ああ!あれおいしかったわね~。ぷりん、だったかしら?また食べたいわぁ」
『5個、買ってありましたね?そのうち4つは幽々子さまにお譲りする気でいたんですよ。冥界の主人だけに4つ。最後の1個には、後で名前を書いとこうと思って……!』
「そうだったの~。あら?でもお名前なんてどこにも……」
『……ええそうでしょうとも!書く前に全部食べたら!それは!そう!でしょうとも!!』
『もうどうしてこうなったかはおわかりですね!?あなたを勝手にプリンを食べた罪で拘束します!反省の準備をしておいてください!』
「ええぇ……」
そう。此度の主犯である妖夢は、幽々子にプリンを食べられた恨みが発端でこのようなことに及んだのだ。
その怒りの裏にはもちろん、冥界ゆえの独特な食糧事情や買い出し担当の悲哀なども込められているのだが……
しかしそれにしても、博麗印の妖怪封じまで持ち出してくるとなると相当なものだ。これが落ち着くまでにどれだけかかるだろうか。
(大変なことになっちゃったわね~……)
思わず天を仰ぎ、幽々子は黙々と柱に括られるのだった。
____________
【お昼時】
ぐぐううぅうううーーーー
「………………」
ぐぐうううぅーーー、ぐきゅるるるーーーーー
「………………………………」
ぐごごぐぎゅきゅるるぅーーーーー
「…………ねえ、妖夢」
『なんですか、幽々子さま?』
「貴女にはこの、お腹の虫の怒り狂う音が聞こえないかしら?」
『お腹の虫より私の怒りの方がよっぽどですから。それにそのくらいの方が反省できるでしょう?』
「うぅ、妖夢が反抗期だわぁ……お盆に一膳くらいくれたっていいじゃない……」
『それは普通に一食分なんですよ。幽々子さまにとってどうかは知りませんけど』
「後生よ妖夢ぅ……ちょっとでいいから何かちょうだい~……」
『……仕方ありませんね。はいどうぞ』
そう言って妖夢が放ってよこしたのは、おにぎりひとつ。
その横にこん、とお茶を置いて……これでお昼ご飯の完成である。
「…………ねえ妖夢。もしかして、すっごく怒ってる?」
『今更気づいたんですか?』
「こんなんじゃ全然足りないわ~……!反省したからそろそろ解放してくれないかしら?」
『口八丁の反省ほど信用できないものってありませんよね。特に幽々子さまの場合』
「しくしく……妖夢がひどいわぁ……」
普段の100分の1あるかないかという量のお昼ご飯は、そのもの妖夢の怒り様を表しているようで。
しかも両手を縛られ、霊力封じで幽霊使役もできない幽々子は文字通り手も足も出ない状態。これでどうやっておにぎりを食べろというのだろうか。
…………するとおもむろに妖夢の半霊が頭(?)におにぎりを乗せ、幽々子の顔に近寄っていく。
どうやら本人が食べさす気は微塵もないらしい。そのことに少なからぬショックを受けながらも、幽々子は差し出されたおにぎりにはぐはぐとかぶりついた。
自他共に認める腹ペコ亡霊である。最高のスパイスを常時備えている彼女にとっては、ただの白米のおにぎり一つでもおいしくいただける。
ただ、致命的に量は足りないが。
その分を補うかのように、湯呑のお茶をいただく。
どうやらこちらはおかわり可能のようで、たくさんおかわりをした。
『ではまた後で来ますので、しっかり反省してくださいね』
「おやつがほしいわぁ……」
食べ物がない分を補うべく、やかん4個分のお茶を胃袋に放り込み……
それでなお収まらぬ腹の虫を抱えながら、幽々子の反省は続く。
【おやつ時】
ゴゴゴゴゴゴゴ………………
ズゴゴゴゴゴゴゴ………………
『……もはや腹の虫ってレベルじゃないですね。お元気ですか幽々子さま?おやつを持ってきましたよ』
「…………っ!おやつ!?」
『なんでも永遠亭が月の栄養学やらで作った最新の戦闘糧食だそうで、豆のような形でありながらどんな大飯ぐらいもひと口で満たs』
ぱっくん!
その時、部屋全体を揺すぶるような振動が嘘のように止んだ。
幽々子の飼う、怪物じみた腹の虫。もはや化け物と呼んで差し支えない腹の虫が、豆粒ひとつで鎮められたのだ。
これはもう、奇跡としか言いようがなかった。
『……これはすごい。想像を遥かに超えています……!』
「……なあにこれ……味気がないわあ……」
『これから毎食これでいきましょう、幽々子さま!』
「お願いだからやめてくれる?なんだか蓬莱人のにおいもするし……おいしくないのよ~……」
『ああ、そういえば永遠亭の人らはお嫌いでしたっけ。仕方ありません、お口直しのお茶をどうぞ』
「あら、ありがとう。少しずつではあるけれど、機嫌も直ってきたかしら?」
『それと許すかどうかはまったく別ですけどね』
「手厳しいわ~……」
少しずつ幽々子への当たりが軽くなってきた妖夢であるが、とはいえ元より目に見えない尺度である「反省」を求めている時点でこのお仕置きの終着点は見えにくい。
幽々子が心から、言葉ではない何かを以て「反省した」と妖夢が思えるまでこのお仕置きが終わることはないのだ。
「…………あ」
お仕置きがまだまだ続くと改めて突きつけられたその時、幽々子が何かに気付いた、あるいは何かを思い出したように小さく声をあげた。
「…………ねえ妖夢、ちょっとでいいからこれを解いてくれないかしら?少しだけ、行かなきゃいけないところがあるのよ」
『駄目です。幽々子さまのことですから絶対逃げますし……そのお札、一度でも剥がれたらダメなんですから。何か用があるなら私が聞きますよ』
「それは……ちょっとだめねえ。絶対に、私が行かなきゃだめなことだもの~……」
「じゃあダメです。閻魔さまの応対だとか、そういったご予定がないことは確認済みですから。次はもう少しまともな言い訳をなさってください』
「そういうんじゃないのに~…………いけず」
お願い虚しく、一時解放の願いは一蹴された。
幽々子に果たして何があったのか。幽々子はなぜ望み薄な解放を頼んだのか。それはしばらく後にわかることとなる。
_____________________________
【夕飯時】
「ん…………」
赤い夕陽が地平線に沈んでいく、夕暮れ時。
普段ならそろそろ夕飯という頃だが、未だ幽々子は囚われたままで。
これまで空腹時以外基本的には落ち着いていた幽々子が、少し落ち着かない様子を見せていた。
時々脚を揺すぶって、まだかと言わんばかりに辺りを見回す、落ち着かない様子。
「……ねえ妖夢。私って、まだ反省したことにはなっていないかしら?私としてはもう十分、身に染みたのだけど……」
『……ふむ、確かに今は反省なさって、もうしないと決意してくださっていると思います』
『ですが時間が経てば別です!しばらくしたらどうせ全部忘れてまたやらかすに決まってます!身だけじゃなくて骨にも!骨身に染みてもらわないとだめなんです!』
「うぅ……それじゃあ、少しでいいから放してくれない?お札も剥がしたりなんてしないから~……」
そして幽々子は、彼女を急かす何かに耐えかね、また妖夢を呼びつける。
先のやり取りから数時間。さすがにもう反省したことになったのではと思った幽々子に突きつけられる、手厳しい妖夢の言葉。
いつもならここですんなり引き下がり、妖夢のお叱りを余裕たっぷりに付き合ってあげるところだが……
らしくもなく、幽々子はなおも食い下がる。
それにはある理由があった。
『駄目ですってば。幽々子さまらしくないですよ、そういうの。いつもみたくのんびり構えてたらいいじゃないですか』
「そういうわけにはいかないのよ~。私にだって、いろいろ事情があるんだもの」
『事情ってなんですか事情って。今日はお仕事が暇なのは確認済みですけど?』
「…………そうねえ。妖夢は半分とはいえ人間だからわかるでしょう?人が生きて、ごはんを食べたりすれば、当たり前にやらなきゃいけないことがあるわよね」
「私もね、人間ではないけれどね、人の形をとっているからにはそういうこともしないといけないのよ?」
『…………?つまり、えっと……どういうことです?』
「……そろそろ、察してほしいのだけど……そうねえ。つまり……妖夢がいっぱいごはんを食べたりお茶を飲んだりした後にすることを、私もしないといけないってこと」
『………………?????』
「…………もう、さすがに怒るわよ~?」
その理由を、幽々子なりに説明するものの妖夢には理解してもらえず……
業を煮やした幽々子はとうとう、単刀直入な言葉で要求を伝えた。
「だから、つまり………………お手洗いにいきたいの」
『……え?あ、あぁ~~~~…………そういう』
「そうよ。…………妖夢ったら、私にこんなことを言わせるなんて……」
『いやー……まあ、そうですかぁ。幽々子さまが……へえ』
『ふむふむふむ、なるほど。ふむ……』
お手洗いに行きたい。幽々子の口から放たれた要求はとても意外で、それでいて至極当然のものだった。
幽々子は亡霊である。霊体によって形作られるその身体は、実体こそあるが人間の肉体とは様々なところで勝手が違う。
既に死んでいるその身体はどんな傷を負おうとこれ以上死ぬことはないし、生命の証たる心臓も彼女にはない。
肉体ではなく魂準拠であるため老いることもなく、霊魂と肉体とそれぞれの特色を備えているとも言える亡霊ボディ。
だが、言ってしまえば彼女の存在は「人の模倣」である。一度死した彼女が、全てを忘れ死後の世界で再誕したのが今の状態だ。
食べることも飲むことも霊体であるため本来不要なところ、彼女の生への深い想いが生命の象徴としての食事を強く望んだ結果、彼女はお腹も空くし喉も乾く独特な霊体ライフをエンジョイしている。
であれば当然、人間が食事のあとにするべきことも彼女はしなければならないのだ。なぜなら彼女は「亡霊」であると同時に「人間」らしくも在らなくてはならないのだから。
彼女にとって、排泄もまた「生きる」ために必要なことなのである。
『確かに言われてみれば、少しもじもじしていらっしゃる気がしますね』
「…………あんまり言わないでくれると嬉しいわ~。見られて嬉しいものじゃあないもの」
「それで妖夢、ちゃんと言ったのだからそろそろ……」
『………………だめですよ、幽々子さま』
「…………え?」
『だめです。お手洗いになんて行かせません。だって……丁度いいじゃないですか』
「ちょうどいい……って……ひあっ!?」
だがそんな、幽々子にとって不可欠な排泄をするための許可が下りることはなく……
いたずらっぽい顔をした妖夢が、幽々子のお腹をさする。唐突に触れられたくないところを触れられ、幽々子が声を上げた。
『お、おおぉ……幽々子さまのお腹、こんなに大きく……あの幽々子さまが、ほんとうにおしっこを我慢してらして……』
「……っ、い、いきなり何をするの~!びっくりしたじゃない……」
『……ふふ、ふふふ……幽々子さま、幽々子さまが……ふふふふ』
「……よ、妖夢……?」
『ねえ幽々子さま?このまま幽々子さまをずぅっとお手洗いに行かせず、ずっと我慢させ続けたら……きっとすごく反省できますよね?』
「な、なにを……言って……」
『ふふ、ふふふふ……!その方が、ただ縛っておくよりずっと効果的ですよね……!幽々子さまもおしっこするのなら、この方がずっとずっといいですよね……!』
「よ、妖夢……目が怖いわ……!」
幽々子の反省を促す。そう言って妖夢は引き続き、尿意を訴える幽々子の拘束を続けるのだ。
その視線に宿る、邪な思いを隠すこともなく。
【お夜食時】
妖夢は今、かつてなく舞い上がっていた。
妖夢にとって幽々子は、身近にいながらしてとても遠く感じる存在。ただの主従というだけではない、家族のような……あるいはそこにどこか神格化された憧れの入り交じった感情。
どこまでも一緒にいてくれて、どこまでも自分を導いてくれる。そんな確固たる信頼を向ける相手。
そんな彼女が今、目の前で下品な欲求に身悶えている。
「んっ……!ふっ……ぁ、はぁっ……!」
実のところ妖夢はこれまで、幽々子が手洗いに行くなど想像もしたことがなかった。
なにしろ幽々子は亡霊である。常軌を逸した健啖家ぶりではあるが、逆にそれゆえ彼女の排泄がイメージできない面もあったのだ。
あれだけ食べるのなら出す量も凄まじいはず。なのにそういう一面を見たことがない。
ならば食べた物や飲んだ物は亡霊ゆえ、食べた端から消滅していて排泄は必要ない……と、妖夢はこれまで思っていたのだ。
それは妖夢の幽々子に向ける崇敬を、より補強するものとなっていた。
幽々子が妖夢の前でそういう姿を見せなかったのは、単に見せたくなかっただけだと知る由もなく。
『幽々子さま、お夜食を持ってきましたよ』
「……え」
「……あ、あら。ありがとうね妖夢。ただ、手が縛られてるから……」
『食べさせて差し上げますよ。はいどうぞ』
昼間とは打って変わって、自分から率先して幽々子に食べさせに来る妖夢。
だがそんな雪解けを思わせる態度の変化に、喜んでいられるような余裕は既になく。
食べる様子からも普段の勢いは感じられず、どことはなく覇気がない。
ぶる、ぶると小さく身体を震わせる彼女を、妖夢は愛おしむようにひと口ずつ丹精込めて食事を振舞う。
そしてまた、食事といえば避けられないものも……
「……んぅ、ご、ごちそうさまぁ~……」
『お粗末さまでした。こちら食後のお茶でございます』
「あ……ええと、ね……今はちょっと、お茶は……」
『幽々子さま、どうぞ』
「……妖夢、お茶はちょっと……」
『幽々子さま』
食事といえば避けられない水分の補給。食中食後のお茶は、いわば食事のルーティーン。
いつもなら毎食、やかんひとつ分程度は軽く嗜んでいた幽々子が今、湯呑一杯すらも拒むという異常事態。
だがそれも無理はない。幽々子が捕まったのは寝間着から着替えてさえいない朝のうち。つまり朝一番の用足しはできておらず、昨晩から一度もできていないそれは強靭な幽々子の膀胱からさえも溢れてしまいそうだ。
そんな尿意を抱え、水分補給を拒む幽々子に対して妖夢は湯呑を片手にずいとにじり寄り、そして……
「ひぃあ!?」
ぎゅう、と強く、強く、膨れたお腹を押しこんだ。
どれだけ溜め込んでいるのだろうか。押されたお腹は強力な反発力を以て妖夢の指を押し返す。
しかしその反発力はつまり、膀胱内の小便が外に出ようとする力の強さそのもの。圧迫され行き場を失くした小便の、出ようとする力そのもの。
その力は当然、圧迫した妖夢の指以外にも向けられる。
奇声をあげた幽々子がきつく両脚を閉じ、出口に渾身の力を込める。そうしなければこの圧力そのまま、噴き出してしまうから。
「ぁ……っぐ、んぁ、っは……!」
『……幽々子さま』
「…………ぁ」
『飲んで、くれますよね?』
暗い、暗い笑顔を向けながら迫る妖夢に、幽々子は観念するほかなかった。
抵抗するなら、何度でも同じことをする。そう言わんばかりの妖夢の表情に、幽々子は折れることしかできなかった。
寝込みを襲われ、妖力を奪われた今、彼女はあまりにも無力だった。
拘束されていても飲みやすいよう、ほどよく冷まされたお茶。無駄なところで気が利くのだからと、悪態すらつくこともできず……
幽々子は飲みたくもないお茶を、しっかり飲まされるのだ。
『はい、よく飲めましたね幽々子さま。かんしんかんしん』
「……っ、っは、はぁっ……っぁ……!」
『お夜食も済みましたし、私はこれでお暇しようと思いますが……』
『……ねえ幽々子さま、なにかしたいこと、ありませんか?』
つらいつらい食事を終えた幽々子に、妖夢が強い圧力でもってにじり寄る。
それは先ほど膀胱を押したのと似て非なる、あれよりいくらかねっとりとしたような感じの雰囲気を纏い……
まるでそれは幽々子から、自分の望む言葉を引き出そうとでも言うかのように。
事実、それはそうなのだろう。
妖夢は言わせたいのだ。自分のあこがれる存在から、下品で原始的な欲求を……恥ずかしい言葉を。
だがそれは、幽々子にとってどうしても言えない言葉だった。
なぜ幽々子がこれまで、従者である妖夢の前ですらそれを隠していたのか?排泄などしないものと思わせるようにしていたのか?
それは彼女が1000年もお嬢様として在り続けたがゆえ、築き上げられた強固な貞操観念のなせる業……
ことに妖夢が代替わりするまで、館にいたのは祖父の妖忌だ。いくら幽々子がつかみどころない性格であっても、あの厳格な性格の、内心少し苦手に思う男性の前で、気にせず手洗いに行くほど恥知らずではない。
そんな暮らしを続けてきた幽々子にとって、それを口にすることは何より恥ずべきことで。
『……どうして何もおっしゃらないんです?幽々子さまがどこに行って、何をしたいのか言ってくだされば……させてあげますよ?』
『ねえ幽々子さま。したいことを我慢するのはおつらいでしょう?たった一言、この私に申し付けてくだされば……思う存分、できますよ?』
そんな幽々子の決意を挫かんと、甘い言葉を耳元で囁く妖夢。だが、幽々子の1000年はその程度で揺らぐようなものではなく。
横一文に口をつぐみ、一つも言葉を発しない沈黙。それこそが彼女の決意を何より雄弁に物語っていた。
『……そうですか。それでは失礼しますね幽々子さま』
その覚悟を受け取ってか否か、妖夢はそれ以上何も言うことなく部屋から出ていった。
その内心で妖夢は意外と意地っ張りだとか、明日の掃除が大変だとか、色々と考えながら。
それでも水溜まりの中でいつもより少ししおらしくなった幽々子を想像して、少し胸を高鳴らせながら妖夢は自分の寝室へと戻るのだった。
_________________
【早朝】
『ふあぁ……!……はふ』
チュンチュンと、小鳥のさえずりが聞こえてきそうなくらい清々しく穏やかな朝の陽ざし。
実際は冥界に小鳥などいないのだが、幻聴さえ聞こえそうなほど「画になる」冥界の朝。
そんな幽美なる朝の時間に、ここ白玉楼のナンバー2である魂魄妖夢は目を覚ました。
『…………ちょっと夜更かしし過ぎましたね』
大きなあくびと共に目覚めた彼女は、寝間着を着替えながら昨晩のことを思いだす。
幽々子が見せてくれた艶姿。それを想いながら長いこと布団の中でもぞもぞと……
いっそそのまま「致して」しまったほうがすっきりしたかもしれないが、彼女にとってのメインは今日この後に訪れる。まだその時ではないと抑え込み、悶々とした一夜を過ごしたのだ。
その悶々は翻って寝不足となり、今の気だるさを生んでいた。
『さて、どうしましょうか。このまま幽々子さまのところに行ってもいいですけど……うぅん、絶対怒られますよねえ。正直、やりすぎたとは思ってますし……』
『……でもおもらしして怒る幽々子さま、ちょっと見たいかも……』
『…………いやいやいや!いけませんいけません。私は幽々子さまの従者なんですから、そのような邪念は……』
『……うん。やっぱりすぐ行って謝ろう。それがきっと一番いいはず……』
だが妖夢がメインディッシュをいただく前に、越えねばならない難関がある。
昨夜より放置され、確実に破滅を迎えているであろう囚われの主人。事情があるとはいえ妖夢のせいで追い詰められたあの方は、絶対に怒っているはず。
その主人に対してできること。お詫びの品を携える?大好きなおかずを作って持っていく?
否、今ここでするべきは今すぐの謝罪。そう結論づけた妖夢は頬をぺしぺし叩いて景気をつけ、幽々子のもとへ向かう。
『ゆ、幽々子さま~……おはようござ……』
『………………え』
すたすた歩いて幽々子の「おしおき部屋」へやってきた妖夢は、剣士らしい思い切りとは程遠い……悪さをした子どもそのままの仕草でふすまを開く。
精一杯絞り出した「おはようございます」。だがそれを最後まで言い切る前に、彼女は信じがたいものを目の当たりにした。
「…………っ、…………~~~っ」
妖夢はずっとこう思っていた。まさかあれから一晩我慢できるはずなんてない。夜の間にしてしまって、朝起きたら主人のお尻の下には大きな水溜まりがあって……
その不快感と屈辱のはけ口を、元凶たる妖夢に求める。ずっとそう思っていた。
だから、思いもよらなかった。あれから今まで、よもや我慢できるなどと。
『ゆ、幽々子さまっ!?ま、まさかまだ……っ』
慌てて主人のもとに駆け寄る。近づいて初めてわかる、主人のひどい有様。
妖夢が近くにいることも気づかないほど憔悴して、瞳はどこを見ているのかわからずぼやけている。
額には球の汗をかき、じっとり湿った前髪が張り付いている。
身体中に渾身の力が籠められ、ぶるぶると小さく震えている。
太ももはきつく押し付けられ、足の指はこぶしを作るごとく握りしめられている。
だがそれでも……
彼女の座る床は、床だけはまだ無事なまま。それが何よりも彼女の懸命な努力を物語っていた。
『え、えぁ、ぜったい無理って、おそうじするつもりで、ええぇぇ……と……!』
『……っ、待っていてください幽々子さま!すぐお手洗いにお連れしますからっ!』
「……ぉ……て、ぁら……」
まだなお耐え続ける、憔悴しきった幽々子のもとに駆け寄り縄をほどく。近づいた時に感じるむわりとした熱気は、まるで熱々の風呂釜を前にした時のように。
それだけがんばり続けてきた幽々子に、まる一日ぶり与えられる自由。両手も両脚も、久方ぶりに動かすことができる。
しかしこれまでずっと拘束され、崩した正座のような姿勢でずっと居続けた幽々子の両脚はもう力が入る状態ではなく……
『……大丈夫です。すぐ着きますから、あと少しですから……っ!』
自分で歩くこともままならない幽々子を、妖夢は半ば背負うように肩を借りて引きずっていく。
決してその身に衝撃を与えないようにそっと、そっと、信じられないほど熱く汗ばむ身体を支えながら。
2人が向かうのは広い広い白玉楼にはいくつも存在する、一般的な汲み取り式トイレ。
古式ゆたかな形状のそのトイレは、普段は妖夢が……そしてこっそり幽々子が使い、宴会の時などには来客に向けて解放することもある。
汲み取り式という都合、普通ならかなり不衛生になってしまいがちなのだがそこは死者の国の幽霊屋敷。
死を操る幽々子の能力により完全な「殺」菌が可能となっているここのトイレは、存外に清潔そのもの。宴会の時などにはほぼ全員が快適な排泄環境を謳歌している。
そんな白玉楼のトイレは当然宴会対策で各所に点在しており、それぞれの間隔は歩いて2~3分ほども離れてはいない。
それだけに2人が部屋から出て間もなく、目的地にたどり着くことができた。
『さ、着きましたよ幽々子さ』
「…………っっ」
『わ……っとと』
『…………どうかごゆっくり、幽々子さま』
背負ってくれていた妖夢を半ば突き飛ばすように、もう余裕の無さを取り繕うこともできなくなった幽々子が厠に突撃する。
普段の緩慢さが嘘のように素早く駆け込み、寝間着をまくってしゃがみ……
「……あっ」
ずでぇん!!
これまで長く座らされ続けていたからだろう。ここに来るまでだって脚に力が入らず歩くこともできなかった幽々子に、日本式のしゃがむ動作は余りにも辛すぎて。
しゃがもうとする勢いを受け止めきれず脚を滑らせ、尻餅をつく。身なりを整える暇さえなかった幽々子の寝間着は緩み、豊かな双丘と……
白くふくよかな両脚の付け根、無毛の陰裂までもがはだけた衣服から覗く恥ずかしい姿。
そして……
『大丈夫ですか!?幽々子さまっ!!』
_______________
どうも皆さん魂魄妖夢です。
昨晩から引き続き、やらかしてばかりのこの私ですが……
『…………え』
「あ…………っ」
私はここで、どうすればいいんでしょうか
なにかすごい音が厠からして、幽々子さまの身に何かあったのではと思ってとっさに行動して……
戸を開けてみたらそこにはお召し物をはだけさせ……その、お胸や……あの、見てはいけないようなところが全開の幽々子さまが……
尻餅を、ついてしまったんでしょうか。広げたおみ足の間から、私とあんまり変わらない……もしかしたら昔の私くらいの形の、幽々子さまのあそこが……
……ゆ、幽々子さまのあそこ……あんな形なんだ……
ぶしゅうぅっ!!!びしゅしゅしゅしゅいっ、しゅいしゅいしゅいいぃっ……!!
『わっ……ぁ……!』
「んんっ!?……っぐ……!んは、ぁ……!」
思わずまじまじ幽々子さまのあそこを見ていたら、ふいにそこから半透明のお水が噴き出して……
間違いありません。これは……これは幽々子さまの……!
幽々子さまが目の前で、お、お……おしっ……!
ぶじゅうぅっ!じゅじゅっ、じゅいっ、じゅいいぃっ……!
「う……んぐっ!?はっ……ぁ、よ、うむ、でて、て、はや……!」
『…………ぇ、ぁ』
幽々子さまが何か言ったような気がします。でももう私は幽々子さまのあそこに釘付けで
じょろじょろとおしっこを噴き出し続ける幽々子さまのあそこから、目を離すことができなくて
「あっ……う、あっ……!?」
びじゅうぅっ!!
ぶしゅっ……びゅしししししぃいいいいいいいいっっ!!!!ぶしぃいいいぃいいしいいぃいいいいいいいいーーーーーーー!!!!!!
『わあぁ!?』
突然爆発的な勢いで噴き出した幽々子さまのおしっこに、びっくりしてしまいました。
今までちょっとずつ出ていたのも、もしかしたら必死で我慢しようとなさっていたのかもしれません。それでも止めきれなくて、ちょっとずつ漏れてしまっていたのかもしれません。
力尽きたみたいなお声といっしょに、ものすごい勢いのおしっこが噴き出していきます。それは普通の宴会で、お酒を何本も開けた鬼がその辺でやっちゃうのよりもなお強くて
厠にある的といいますか、はみだし防止の板を飛び越す……なんてものじゃなくて
こう……なんといいますか、壁とか天井に当たってます。勢いすごすぎて、ぜんぜん厠の中に納まってません。
ぶしょおおおぉおおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!びしゅしゅしゅしゅびしゅっ!!!びしゅしししいいいいぃいいいいいーーーーーーー!!!!!
「は……ぁ、ん……はぁぁ……!」
そんなおしっこを噴射する幽々子さまのお顔は今までとは真逆の真っ赤になって、なんだかとろんとしたお顔になって……
まるで私がその、夜中ひとりでする時みたいに身体をよじらせて、そのたんびにおしっこがそこらじゅうの壁に当たって……
ほんとうに、ほんとうにすごいです、幽々子さま……!
見てはいけないとわかっていても、そのお姿から目を離すことができませんでした。
それからずっとずっと、幽々子さまはおしっこを出し続けられて……
私と幽々子さまの両方が、幽々子さまの出したおしっこまみれになる頃、ようやく勢いが収まってきました。
あんなにいっぱい出せるくらい、あのお腹の中にこれが溜まっていたんだと思うと、なんだか胸がどきどきしてきます
「…………っはああぁ……」
ぜんぶ、出し終えたんでしょうか。ふいに幽々子さまが大きなため息をついて……
「……妖夢」
そして私の名前を呼びました。
それにしても考えてみたら、これまで長く長くご一緒してきたのに幽々子さまのお身体をまじまじ見たのってこれが初めてなんですよね。
すごく小さい頃はお風呂もご一緒していたみたいなんですが、その時の記憶なんてありませんし……
私が従者になってからは湯沸かし係ばっかりで、この壁の向こうに幽々子さまが裸でいるって思うたんびに私がどれだけもやもやしてたとでも今日幽々子さまのお胸とあそこが見れてだいまんぞk
「妖夢!」
『ふぇあ!?はいっ!?はいなんでしょう!?』
「……あら、言わないとわからないかしら?……色々と、見ちゃったみたいだけれど?」
『……あ、え……っと、そのぉ……』
「……ふぅ。いいわ、とりあえずお風呂の支度を……そうね、あなたの半身にでもさせて、あなたはここのお掃除をよろしくね。私はもう疲れちゃったわぁ……」
『は、はい!はいぃ!!承りましたっ!!』
ううぅ、怒られたぁ……だって幽々子さまがきれいすぎるから……
身の回りほとんど幽霊で、たった一人の同居人があれですよ!?まじまじ見なきゃ不作法ってものだと思いません!?
あーーーーーーーーーそういえば昨日は消化不良だったんでしたとにかく掃除して私もやすm
『……うぉ……すっっごい臭い……頭ぶっ刺さる♡脳にクる臭い♡幽々子さま臭すっご♡そこらじゅうおしっこ祭♡味もみておこう』
『あこれヤバい飛ぶやつ♡エグみと塩味の奇跡の共演♡鼻と舌と耳が幽々子さま一色♡♡従者の誉れ♡言に出でて言はばゆゆしみゆゆこ川』
「………………変態」
『ふお!?』