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敗北フロントライン②【M82A1】

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敗北フロントライン②【M82A1】
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グリフィンは負けた。

タリン、潜水艦基地にて──

狙撃手ゆえ最前線より後方に位置していたM82A1は、敵の反乱軍からその報せ、もとい降伏勧告を受け取った時、遮蔽物に身を隠したままほとんど損傷していなかった。

しかし、彼女は動けなかった。その言葉の意味することが、M82A1にとって凄まじい衝撃となって彼女を襲った。


グリフィンは負けた。

指揮官が、敗れた。


M82A1は信じられなかった。あの指揮官だ。彼が敗れることなどあり得ない。

今まで何度も、己の高度な演算能力で以ってしても敗北が必至だった作戦を、彼の指揮のもとで生き延びてきたではないか。彼の指揮が部隊を助け、人形たちを生かし、自分を導いてきた。彼に失敗は無い。

どれだけ火力で劣っていようと、数で劣っていようと、彼の輝かしき指揮は圧倒的不利の戦況を覆してきた。

彼についていけば勝てる。

彼についていけば生き残れる。

彼についていけば、私は、二度と過ちを犯さずに済む。


緑色の軍服に身を包んだ兵士たちが近付いてくる。最前線のグリフィン人形は既に全滅したのか投降したのか、いずれにせよ防衛線は瓦解したようだ。散発的な銃声以外、激しい戦闘の音は止んでいる。

反乱軍のドローンはグリフィンの指揮官を拘束したとしきりに放送しながら飛んでいた。真偽を知る術はないが、確かに指揮官やカリーナさんからの命令は途絶えている。本部への連絡には応答がなく、味方同士の通信回線も絶たれたままだ。

しかし死んだとも言われていない。生きているならば、反撃の機会はある。

と同時に、生きて捕まっているならば、それは人質だ。人形たちはいざとなれば自爆も辞さなかったが、それが封じられた。


M82A1はその対物ライフルを、巨大な己の分身を地に置くと、両手を挙げて兵士たちの前に身を晒した。

ここが潮時か、奇妙な一生だったと、彼女は振り返った。

絶望の淵にいる人間たちから縋られ、メシアと呼んで崇められ、その末路は悲惨なものだった。

その自責の念と絶望から逃亡し、このグリフィンで指揮官の命令を待ち望んだ。任務は完璧に遂行してきた。考えることをやめ、ただ命令を達成するだけでいい空間は楽だった。

だがそれは、かつて自分を崇拝した人間たちと何が違うのか。

私は指揮官を崇拝していなかったか。

彼は神ではない。ただの人間だ。だが、それを超えた何かを彼の中に見出してはいなかったか。

圧倒的な戦果を上げ正規軍すら翻弄し続ける彼に、私はただの人形として付き従っていたのか。それとも、まるで何か、信者の如き感情を持ってはいなかったか。

彼が負けた報せを耳にした時、自分は何を思った。

あり得ないと一蹴に付さなかったか。その根拠は、いったいどこにあったのか。


これこそが、私への罰なのだろう。

人形の身の程を見失った自分への。


兵士たちが寄ってくる。

意外なことに、彼らは撃たなかった。背中に銃口を押し当てられた時、全てを受け入れて目を閉じたM82A1だったが、その銃口は背中を押した。

「歩け」

二人の兵士に左右から促され、彼女が着いたのは小さな広場だった。

反乱軍が制圧し確保した野営地のようで、もともと舗装された潜水艦基地の敷地内ではあるが、軍用テントがいくつも並んでいる。

そして並んでいるのはテントだけではなかった。

仲間の人形たちが、いた。

そこに兵士たちも並んでいる。

その光景を一目見て、M82A1はテントの中で行われていることを全て察した。


私への罰は、一発の弾丸で終わるほど易しいものではないようだ。





制作後記

Skebご依頼でもないのに私は何故こんな手の込んだものを……


本命のSkebご依頼漫画に向け、タッチの確認のつもりで描いた4枚でした。4枚でした。気付いたらもう4枚増えてた……

ま、思い付いてしまった以上は仕方ない。私にとってお絵かきとは情動に突き動かされてやるもので、描きたいと思ってしまったが最後というわけです。

個々のコマのクオリティはともかく、全体としては、まあこの量を一週間で描けるなら上等、といったところでしょうか。人間を描くことに慣れてきたと感じます。サクサク描けました。

基本的はこの乱暴とも言えるタッチを継続して、数をこなせば個々のコマも上達するでしょう。

ところで今作は、勢いで一気に描いた漫画にしては珍しく、キャラクター性にかけた描写と展開をさせています。

M82Α1はその高度な演算能力ゆえ預言者に近いポジションでカルト宗教の教祖に祭り上げられ、自らの「預言」の結果なんらかの惨劇を招き、逃亡し、グリフィンにやってきたという過去があります。

それを踏まえて彼女と彼の言動を見直すと、もう少し股間に来るかもしれません。


次回作は今度こそSkebご依頼です。

キャリコが失恋する漫画(R-18)を描きます。断じて嘘ではない。

また次回!

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POSTEDApr 23, 2024
ARCHIVEDJun 10, 2026