すけべ差分3枚になります。
彼女視点のお話つき。
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「おはようございます、レーヴェ。これから指名先に向かいますね」
いつものように私は勤務前に体験施設の所長の事務室へ入室し、青味がかった灰色の皮膚を持つサメ獣人型の生体スウツへと会釈をしつつ挨拶をした。
「おはよう、エルデ。今日は長丁場になるけれどもよろしくね」
彼女はこの施設の所長であり、私達の大切な仲間でもあり、仕事では指名客を奪い合うライバルでもあるの。
ぎらぎらした眼光と牙のある口腔の顔の見た目はとても攻撃的だけれども、その内面には女性本来の母性のような繊細な優しさが溢れていて、この姿に生まれ変わってからは数え切れないくらい心の支えになってもらえたし、たまに彼女と交わりあう時も本気で付き合ってくれるので大好きなお姉さんといった感じ。
今日はあらかじめ指名客に設定してもらう体験時間で一番長い12時間、それにに加えて課金で2時間の延長で計14時間という最長枠での契約
で、ここでの仕事でもまだ1度しか経験が無い上客相手なので少しだけ緊張してしまう・・・気がする。
「ふふっ、いっぱい楽しんでくるね、レーヴェ」
幾重にもセキュリティが張り巡らされた従業員専用のバックヤードを抜け、勤務場所となる部屋の前に到着する。
私は右手を胸の前に当てた姿勢で直立すると目の前のシャッターが開くと一般的な人間が居住するくらいの部屋があらわれ、その中央に置かれたキングサイズのベッドに今日のお客様が座ってこちらを凝視していた。
「あなたが私を指名してくれたお客様ね、ありがとう」
『彼』はやっぱり驚いている様子だった。今の私は直立したドラゴンそのものであり、明らかに人間ではない容姿の者が流暢にクリアな発声をしているのが彼にとっては未知の世界なんだろうな、と思う。最初の対面時のこの瞬間がとても好きだった。
「私はドラゴンメイド・エルデ。あなたも色々と知った上で私を指名してくれたんだと思うけれど、私は有名なカードゲームに出てくるクリーチャーを再現した容姿なの」
私はベッドに座ったままの彼と視線を同じにするために片膝をついて一礼をした。
「エルデさん・・・よろしくお願いします」
標準体型でとりわけて美形ということでもない、今時のルックスな彼は声もおとなしかった。もしかしたら緊張しているのかもしれない。でもそれが愛おしくてかわいい・・・。
その緊張を少しでもほぐそうと、私は両手で拍手をするように手を合わせて少しユーモラスな動作をしてみせた。
「ふふ、形式ばった挨拶はこれでおしまい。今日はいっぱい楽しみましょうね!」
「はい、わかりました、エルデさん」
彼の表情には自然な笑顔が浮かんでいる。ここでごく一部の体験者は凄んでしまうこともあるので、とりあえずはよかった・・・。
私は彼の真横に腰かけ、手を触れ合った。
「すごく・・・大きいですね」
彼は身長170cm台はあるだろうけれど、身長は190cm近くあって背中の翼を含めると2mになる見た目の私が横に座るとサイズ感の差でまるで親子のように見えてしまう。なので私はいつもこう返してあげるの。
「あなたを抱くためにはこれくらい大きくないとね。これでも体重はあなたよりは軽いのよ、抱いて寝てみたらすぐに分かると思うわ。それで・・・今日はたくさん時間があるけれども何から体験してみたいのかしら? 交じわう準備をしてすぐにでも始める? 今日の主役はあなただから、ここの規則で決まっている範囲内で何でも言ってね」
言い終わると彼は私に体重を預けてきた。前回のお客のおじさんは性欲が有り余った感じですぐに性交したいといってきたので、それとは異なったもじもじした感じが本当にかわいらしい。これはしばらくお話のターンかなと予想してしまう。
「俺、差支えが無ければでいいんですけれども・・・・エルデさんが人間だったころの話とか、この姿になった経緯とか知りたいです」
予想は的中だった。私の想定外の中身ではあったけれども。
今まで数え切れないくらい多くの体験希望のお客を相手にしてきてこのような話題を振られたのは初めてではなかった。体験所の本分の内容とは乖離しているので上手くごまかして回避していたんだけれども、今回は彼の雰囲気でお話してもいいかなって直感で感じてしまったの。
だから・・・
「いいわよ、自己紹介も兼ねて私のことを話してあげるわ。ただし『覚えている範囲で』だけれどもね」
「生体スウツは元は人間だったのはあなたも周知していると思うけれども、私も同じ。あなたが聞きたがっている人間だったころの話はね、正直ぼんやりとしかもう覚えていないのよ。だって人間を辞めたがってこんな姿になった存在なんだから、人間だった頃の名前や記憶なんて不要でしょ? だからその部分はこの姿にされる際に削ぎ落とされちゃうのよ。個人差で削除具合も異なってくるみたいだけれども。私は適性はかなり高いみたいだからこれでも人として生きてきた中で培ってきた知識はある程度は残されているから、こうして接客仕事も難なくこなせるわけなの」
身振り手振りを交えて私は彼に話してみた。
実は話の一部は少し盛っている。人間だった頃の記憶はぼんやりしか残っていないというのは嘘で、そこそこ残っているけれども、初対面の相手なので探り探り言葉選びをしている感じ。
でも彼は私の言葉をしっかりと聞き、時折うんうんと頷きながら真剣に聞き入っている。こういう姿を見るのもまれなので話していて楽しい。
「じゃあ、エルデさんはまったく人間だった頃の記憶は無い感じなんですか?」
「うーん、家族とか名前とかはもう思い出せないけど、はっきりと思い出せる点はあるかな。人間をやっていた頃は私は雄・・・男だったってこと」
私は出会ってまだ数分の彼に揺さぶりをかけるかのように、私自身の大きな秘密をさらっとカミングアウトしてみた。
大抵の男子はこれでちょっと引いちゃうと思うし、もしそうなったらそうなったですぐに性交タイムに移ってしまえば私も彼も性欲を早く満足させられる、と思っての駆け引きだった。でも、なぜか受け入れてくれると思ったから・・・
「・・・凄いですね! 実は俺も・・・その、異性の姿にも憧れているところがあって」
数秒の沈黙の後に彼の口から出て来た言葉は共感を感じるものだった。私は心の中でやっぱりね、と勝利の笑みをしてみせる。
「体験中は電子機器の持込が禁止されているからお見せできないんですけれども・・・俺、自分の考案した竜のキャラクターの着ぐるみを持っているんです。女性型の・・・」
「竜の着ぐるみってケモノ着ぐるみのことかしら? 確か海外ではfursuitと言われてるのよね」
「エルデさん知識あるんですね! 話が通じて嬉しいです!」
彼が最初のときとはうってかわって嬉しそうな表情を浮かべているのが分かった。
嬉しいよね、共通の話題が見つかると。
・・・そう、私も実は持っていたから。ケモノ着ぐるみを。
さすがにこれをバラしてしまうと話が盛り上がりすぎて本番が遅くなっちゃいそうだからまだ言わないけれどもね。
「今持っている竜の着ぐるみがエルデさんのような色合いのデザインだったこともあって、一目惚れしてしまって指名をさせていただきました」
「ふふ、嬉しいわね。でも今日はあなたが持っている着ぐるみを着た姿でなくてもいいの? ・・・あ、規則で持ち込みもNGなのよね、ごめ
んなさい」
「そういうことなんです。本当は見て欲しかったんですけれども」
彼は頭を抱えて照れ笑いをしてきた。本当にかわいい・・・。
「なら尚更のこと、性別を変えてまで人間を辞めたかったのか、気になっちゃうわよね。いいわ、ゆっくり時間をかけて教えてあげる。私が人間を辞めたいと思うようになるきっかけになった出来事も、この姿になる資格を獲得するまでのことも。少し長話になっちゃうけどいいかしら?」
私の問いかけに彼は二つ返事でOKを出した。
「じゃあ、飲み物を飲みながらゆっくりおしゃべりしましょうか。ある程度の種類はこの部屋のキッチンにあるから希望のものを言ってちょうだい」
「そんな、俺が取りますよ」
「今日の主役はあなたなんだから、ここは私に任せてね」
立ち上がろうとする彼を体格差のある身体で押さえ込み、私は立ち上がって部屋の一角にあるキッチンのほうへと歩き出した。
「ああ、凄い・・・お尻や尻尾もかわいい・・・」
背後から思わず漏れた声を聞いた私は、彼を振り返るとにっこりと微笑み返す。
「あなたと私は同じものを感じるわね、まるで削ぎ落とされた私が人間だった頃の記憶が蘇ってくるような感じで。今日は最高の1日を体験させてあげる」
「はい、エルデさんお願いいたします!」