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閉園時間になる頃、ようやくマスク内の換気が自然に行われて、臭いから解放されたのだが、鼻に染み付いたのか、まだ臭いがするような気がする。ショーでの消耗が思ったよりもきつくて、今日の分の休憩は使い切ってしまった。重い身体を引きずって、ゲートでのお見送りグリーティングだ。日差しが弱くなってはいるが、アスファルトが溜め込んだ熱は依然として脚の裏から私を蒸し焼きにする。
パークのあちこちからアヤカシたちが集まってきている様はまるで百鬼夜行だが、その裏側が本当の地獄であることは、私たちしか知らない。互いに同情の念を感じながらも、元気よく触れ合って、抱き合いながら写真撮影に応じる。
「ヌエちゃーん!」
今日何度も聞いた声だ。手を振りながら、駆け寄る。しゃがんで両手を広げると、ハルナちゃんは、思い切り飛び込んできて、私は思わず尻餅をついてしまった。尻尾が揺れて、ベルトが食い込むと同時に、追い打ちで尻餅の衝撃が股間に走った。仰け反りそうになる身体を無理やり留めて、ハルナちゃんをぎゅっと抱きしめたが、変な震えは伝わっていないだろうか。
「ショーも見てたよ。かっこよかった。」
ありがとう、と両手のジェスチャーで伝える。汗で濡れているのがすごく申し訳なく感じた。嬉しさを伝えようと、ほっぺたに手を当てて、舌を動かして尻尾をフリフリと操作すると、ハルナちゃんが頭を撫でてくれた。息が苦しい。はぁはぁと舌を出して撫でられていると、褒められている嬉しさと、こんな小さな子に犬みたいに扱われている羞恥心とで、頭がぐちゃぐちゃになっている。体を這い回っているロボットの感触も何か気持ち良い。尻尾の動きに合わせて、気持ちいいところが擦れながらぐりぐりと食い込んでくる。もうだめ、もう止めて、と哀願する頭とは裏腹に舌は艶かしくインナースーツの呼吸口を舐め回すのをやめなかった。身体中のロボットが激しく私をくすぐり始めたのは、ハルナちゃんの手が尻尾を撫で始めたからだ。たまらず体を震わせたのが面白かったのか、ハルナちゃんは私の後ろに回り込んで尻尾を抱きかかえた。
「こちょこちょ〜!」
掃除用ロボットの攻撃が一層激しくなった。首元や脇の下、胸の下など、汗がたくさん出るところに集まったまま、無数の触手が私を犯す。ハルナちゃんを突き飛ばしてしまわないよう、もがきながらゆっくりと逃げる。正直なところ焦っていた。汗ばかり食べていた掃除ロボットたちが、下半身へと移動し始めたからだ。私は小学生の女の子にくすぐられて、そこを汚してしまっているのか。自覚すると同時に込み上げる羞恥心が頭を沸騰させる。もう這い回るクラゲたちは私のそこを舐め始めている。
「あ、逃げちゃだめ!」
ハルナちゃんが尻尾を強く掴んだ瞬間、頭の中に白い閃光が弾けた。もう体の痙攣も隠せない。無邪気なハルナちゃんに犯されてひと知れず私は絶頂した。
「だいじょうぶ?」
ハルナちゃんの心配そうな声にハッとして、よだれをだらだらと垂れ流したまま、立ち上がってうんうんと、元気に頷く。脳が酸素を求めている。しかし、肺を満たすのは湿った薄い空気だけだ。
「ごめんね。」
抱きついてきたハルナちゃんの頭を「大丈夫だよ」と言うように、優しく撫でながら、まだ引かない熱と快感を耐え忍んだ。
最後にもう一度いっしょに写真を撮ってようやくお別れになった。やっと悩ましい責苦から逃れられるのに、少し寂しくて、ずっと手を振っていた。ハルナちゃんは何回も振り返って手を振ってくれた。
さて、今日最後の仕事だ。スタッフの案内で、マイクロバスに乗り込む。当然休憩時間はない。というより、移動時間が休憩時間だ。席に座ったアヤカシたちは、手渡されたドリンクのチューブにむしゃぶりつき、すぐに中身を飲み干した。車内の冷房が効いた空気が少しずつだが、体を冷やしてくれる。
これからバスは、パークに併設されたホテルに向かう。もう一台のバスと二班に分かれてそれぞれの行き先のホテルのレストランで、宿泊客の食事会場に登場してグリーティングするのだ。今日は、4人体制のようだ。鬼のシュテンちゃんや、雪女のユキちゃん、九尾のコンちゃんと、ファン垂涎のオールスターチームだ。
この仕事自体はそれほどキツくない。想定通り、一緒に写真を撮ったりしながら、各テーブルを回って、ステージに集合して、一曲ダンスを踊る。疲れ切っている体でも、染みついた振り付けは、音楽が鳴れば勝手に動いてくれた。全員とハイタッチを交わして、会場を出る段取りに入る頃には、本当の最後の仕事を思って憂鬱だった。
今日はVIPルームの指名が入ったのだ。正式なサービスではないが、関係者などのVIPからスペシャルスイートルームに呼ばれることがあるのだ。もちろん拒否権はあるし、報酬もかなり良いから納得はしている。それに、最初に想像したような性接待の現場ではなかった。それでも、裏側はどうあれ、無邪気な子どもたちを相手に頑張る方が私は好きだった。帰りのバスに乗り込むアヤカシたちを見送る。人気のキャラばかりだから、皆、指名された経験もあるのだろう。皆一様に励ますようなポーズで別れを告げていった。
部屋に入ると、VIPの女性がソファに座っていて、高そうなお酒の入ったグラスを片手で弄びながら、パークの偉い人と談笑していた。私は無邪気に元気に手を振る。
「わぁ、可愛い!ヌエちゃん、こっち!座って座って!」
私は言われるがまま、お姉さんの隣に密着して座った。優しそうな女の人で少しホッとした。
「それではごゆっくり。後ほど催し物があります。それが終わりましたら、アヤカシさんたちもすみかに戻りますので、よろしくお願いします。」
憂鬱なのは、どちらかというとこの催し物だ。VIPのためだけに、即興でショーが行われるのだ。スーツの人が去っていったドアを一瞥して、演技に頭を切り替える。私はヌエちゃん。
「ねぇ、ショー楽しみだね。」
お姉さんは、私のふわふわのファーで包まれた太ももを撫でさすりながら、お酒を飲んでいた。少し手つきがいやらしいが、キャラクターを愛でている以上の動きはない優しい手のひらだった。だというのに、インナーの内側の掃除ロボットは連動して、熱心にそこを撫でまわす。内側の敏感なところをさわさわといじられると、くすぐったさと気持ちよさが同時に襲ってくる。溢れ出て止まらない愛液を舐めとるべく集まってきたくらげたちは、ひだのひとつひとつの裏側までその短い触手を忍び込ませてくる。敏感な突起が纏った皮もなすすべなく剥かれてかりかりと擦られている。しかし、そんな裏側を窺わせるような反応は絶対に見せられない。早く、早く終わって。撫でられて嬉しそうにしているようにしか見えない私を、お姉さんは延々と可愛がる。
さて、そろそろか。そう思った瞬間、部屋の電気が消えた。きゃっ、と声がしてお姉さんが私にしがみついた。染み込んでいた1日分の汗がインナーの中に逆流して、ぐちゅぐちゅと聞こえない音を立てた。
「ここがあのヌエがいるって情報があったホテルでやんすか?」
「そうだよ、今日こそは、ヌエを捕まえて、我々チミモウ旅団の戦力にするわよ!」
男女の声がして明かりが再び点くと、そこには、全身黒ずくめのぴっちりした全身タイツのような格好の男と、同じく黒のレオタードに編みタイツという姿の女が立っていた。多分、同じ養成所出身の役者さんだと思うのだが、この女の子の恥ずかしい格好を見て、正直あっちの役じゃなくてよかったと思う。着ぐるみの中も相当恥ずかしいことにはなっているが、顔を晒さなくて済む。
「きゃー!本物ー!完成度高ーい!」
アニメ版に出てくる悪役たちを見て、お姉さんはオタクらしい感動の声をあげている。
「ほら、いた!捕まえるよ!」
2人が私めがけて襲いかかってくる。少しアクションと殺陣を交えて、何度か交差して立ち位置を入れ替える。しかし、本当に広いな、この部屋、いくらするんだろ。膠着状態から、私が相手に飛びかかろうとした瞬間。
「待ちな。」
女の方が言った。いつの間にか、ソファの方に移動して、お姉さんを後ろから捕まえている。
「きゃー!助けてー!」
ノリノリなのはいいが、セリフは棒読みだ。
「このお姉さんがどうなってもいいのかい?」
私は慌てたそぶりで、両手で「やめて」というようにポーズを取る。
「そうだ、いい子だ。さ、両手を前に出しな。」
言われるがまま差し出した両手に、手錠のようなものが嵌められた。私は力が抜けたようにヘナヘナと座り込む。もちろんこれは演技だ。
「セッショー石の腕輪だ。効果抜群ですぜ。」
つまりはそういう設定だ。
「さてさて、ヌエちゃん。これで、私たちの仲間になってくれるよね?」
私は激しく首を横に振る。
「へぇ。でも、きっとすぐに仲間にしてほしくなるよ?抑えときな。」
私は、後ろから抱えられて立たされた。ふらふらと力が入らないように立ち上がって、されるがままに、両腕を持ち上げられバンザイの格好になった。
「ほら、これでも抵抗できるかな?こちょこちょ〜!」
がら空きになった脇の下を変態的な格好の女がめちゃくちゃにくすぐり始めた。すると、連動してインナーの内側の同じ場所に集まった掃除ロボットが暴れ始めて、とんでもないくすぐったさを生み出し始めた。悪役の手袋に多分秘密があるのだと思うが、さらにまずいことに、悪役たちは、私たち着ぐるみの裏側の仕組みを知らされていないようなのだ。当然、何が起きているのか中の人に伝わるように、強めに刺激をしてくる。思わず体を丸めてしまいたくなるが、今は力が入らない設定だ。されるがままに体をくねらせて、じっと耐えるしかない。
「ほら、あんたもやるんだよ!」
前からは脇の下、後ろからは脇腹を散々にくすぐられて、呼吸が苦しい。
「そろそろ仲間になりたくなっちゃったんじゃない?こちょこちょ〜。」
10分ほどくすぐり拷問ショーは続き、悪役も疲れたのか、私は床に放り出された。やっと解放されたが、まだ終わりじゃない。
「強情ですね、こいつぁ。姉御、確かヌエは尻尾が弱点なんじゃ。」
嫌な予感がした。そこは本当に弱点だ。今は流石にきつい。
「へえ、あんたもたまにはいいこと思いつくじゃない。おら、おら!」
二人掛かりで、尻尾を足で踏みまくる。その度に、気持ちいいところが擦れて、掃除ロボット達は、激しく動き回りながらぬるぬるになった私のワレメへと集まっていく。断続的に訪れる強い快感に体の震えが止まらない。
「ほらほら、そろそろ諦めな!ここには、応援してくれる仲間はいないだろ?なぁ!」
客席、と言っても観客は1人だが、そっちを向いて悪役が煽る。ここが普通のショーなら子ども達の応援の声がうるさいくらいに響くところだ。
「頑張れ〜。」
お姉さんが、お酒片手に穏やかに応援している。その隙にも、ぐりぐりと私の尻尾は責められている。
「ん〜?何か聞こえたかなー?」
女幹部が改めて客席を煽る。もう一度応援を求める合図だ。
「ヌエちゃん!頑張ってー!」
尻尾に置かれた足から体重が抜けたのがわかった。ぐぐぐぐと力を込めるように立ち上がると派手に悪役が転がった。そのまま、手錠を引っ張ると、カチッと音がして、綺麗にバラバラになって外れた。
「ああ!高かったのに!」
間抜けな声をあげる悪役をアクションで追い詰めていくシーンだが、尻尾が揺れるたびに腰が引けてしまう。なんとかアクションをやり切った頃には、もはや何か分からない液体で股間がびっしょりと濡れてしまっていた。悪役を追い払うと、お姉さんが駆け寄ってきて私を強く抱きしめた。
もう流石に限界だ。それでもお姉さんは、お構いなしに体のあちこちを撫でたり揉んだりしてくる。着ぐるみ相手だからそれほどエッチな悪戯をしているつもりはないのだろうが、中は大変なことになっている。戯れに尻尾をぶんぶんと振り回されるたびに目の前で火花が散り、胸を鷲掴みにされれば思わず身悶えするほどの快感が全身を突き抜けた。もうわけがわからない。演技も忘れて犬のように尻尾を振って、自らを快楽の渦に堕としていく。
「あー、楽しかったぁ!ありがと、ヌエちゃん!また指名するね!」
最後は、ほっぺたに軽くキスされた。唯一、中まで貫通しない接触のはずなのに、もう限界のはずの体が火照っていた。
ほとんど搬送される患者のように、宿舎へと送られた。先に帰っていた子達が脱がせてくれなければ、着ぐるみのまま気絶して、もう一日地獄のような勤務を強いられていたかもしれない。早く、夏、終わらないかなぁ。