からん、ころ~ん。
安っぽい鐘の音が、朝の澄んだ空気を切り裂くように響き渡った。
音はどこか人工的で、それでいて神秘的で、それは耳を通して聴くというよりも心に直接響くような不思議な余韻を残す。
宇宙が絶えず膨張していくように、崇N侮外世界『N本』もまたどんどんと場所やルールがN本人に都合よいように拡張されていた。
だが、それでもその世界の中心と呼べるものがあるとすれば、やはりそれはこの世界で最初に存在した都市『アキハバラ』だろう。
そのアキハバラからほど近い場所にそびえる『聖桜女学園』の校門の前に────クロエ・フォン・アインツベルンは立っていた。
「……どこ、ここ?」
ここはアキハバラの一角にある『学園都市』。
学園都市は、安っぽい鐘の音が鳴り響くN本において当然のように異常な常識に支配された場所であり、聖桜女学園は表面上では白亜の校舎と桜並木が美しい、名門女子校の趣を漂わせていた。
しかしその実態は、N本という一部の人間の自我を肥大化させるためだけに作られた、欲望と支配を具現化したディストピアの縮図なのである。
「わたし、なんでこんな場所にいるんだっけ……? 確か特異点へレイシフトして、任務も終わったからカルデアに帰還して……えっと、そこから……?」
クロエは褐色の肌に澄んだピンクオパールのような瞳、桃色の髪を肩まで伸ばして一部を結い上げたその姿は実に可憐な美少女そのものだ。
だが、そんなクロエの記憶は霧のように曖昧だった。
ついさきほどまで、クロエはN本とは別の世界で、カルデアなる組織に所属して人理を修復する戦いに身を投じていたはずなのに、何故だか今は彼女は見知らぬ学校の校門の前に立っているではないか。
しかも、クロエの自認では季節などとっくに春を終えたはずだというのに、この聖桜女学園の周囲には桜の花びらが風にひらひらと舞い、朝日を浴びてきらめくように広がっている。
だが、その桜の美しさとは裏腹に、クロエの胸には得体の知れない違和感が広がっていた。
(なんて格好してるの……この子たち……!)
それは、恐らくこの学園の生徒と思われる制服姿の少女たちが楽しげに談笑しながら校舎へと向かっていく光景が原因である。
それだけならば何もおかしくないその光景は、しかし、その制服はクロエの中にある常識から大きく逸脱したものであるがゆえに異様な光景になっているのだ。
少女たちが身につけている、イリヤが通う学校とよく似た『黒のスカート』は股下数センチほどの長さしかなかった。
そのため、それを身に着けているのがまだ未成熟な少女だというのに、もはや立っているだけでその奥にある下着が見えるような『ドスケベスカート』になっている。
これが存在しているというだけでも、現実の児童を守るための児童ポルノ禁止法に触れてしまいそうなスカートだった。
また、異様なのはスカートだけではなく上半身を包む『薄茶色のセーラー服』は薄い生地で出来ており、さらにその胸元を強調するように異様な切れ込みが作られ、それでいでワンサイズ小さいものを纏ってるかのようにぴったりと体に密着している。
それはまるで、この学園に通う少女たちの肉体を考慮しているのではなく、そんな少女たちを見る男の視線と欲望を意識して作られているような、扇情的なデザインだった。
これもまたクロエが通う学園の冬服と似ているが、しかし、この薄茶色のセーラー服の袖は切り詰められた半袖という相違点が存在している。
さらに、少女たちの体型に強い違和感を覚えてしまっていた。
(なんだか、風邪の時に見る悪い夢みたい……騙し絵? 一人や二人ならともかく、女の子が揃いも揃って発育が良すぎるでしょ……胸だけ高校生みたい。それも、胸元を開いて谷間をアピールしちゃってるし……!)
クロエの肉体年齢と同じく10歳前後の幼い顔立ちをしているにもかかわらず、少女たちの胸は不自然なほどに大きく、セーラー服を押し上げているのだ。
その胸元からは谷間が見えるほどに開かれており、発育が大変良い大きさのロリ巨乳が嫌と言うほどに強調されていた。
さらに、そんな発育の良い女の子たちが全体の一割や二割ほどならばともかく、目に付く全て、生徒の100%がロリ巨乳ともなれば、クロエが眼の前の光景を現実と認識できないのも仕方のないことだろう。
「私も似た制服……だけど、体型が違うだけで、こんなに違うものなのね」
気づけば、クロエ自身もその制服に服装が変わっていた。
違いがあるとすれば、セーラー服が他の少女たちは薄茶色のセーラー服だが、クロエのセーラー服は白のセーラー服という点だろう。
また、セーラー服のスカーフが他の生徒達は真っ赤なものなのだが、クロエのスカーフはその赤を基調としつつも、その中心に日本の国花である『桜』の花びらのモチーフが縫い付けられていた。
また、クロエも気づかぬうちに服装が変わっていること自体は驚く必要はない。
特異点でさえも、レイシフトしてきた対象に干渉して服装を変化させるということも、珍しくはあるものの、あり得ないというほどではないからだ。
スカート丈は異様に短く、胸が年相応なクロエでもお腹がチラリと見えるほどに裾が詰められている。
普通の少女ならば、あまりの露出度の高さに羞恥で顔を真っ赤に染めそうなものだが、小悪魔系キス魔ロリであるクロエは、それほど恥じらう様子は見せなかった。
(わたしの元の学校の制服に似てる……けど、ここまでスカートは短くないし、なんだか生地も薄めで汗をかいたら透けたりしないかしら、これ? まあ、色が薄茶色と白の違いあるから、判を押したように発育のいいあの子たちと『同じ』ではないだけまだマシだけど……! まったく、肌の感触からしてかなり良い生地を使ってるだろうに、こんなに露出量が多いんじゃ台無しじゃない……!)
クロエは周囲に眉をひそめ、自身の中にある警戒心を強める。
今までの戦闘経験から、クロエは異常な状況にこそ冷静に対処する必要があると知っていた。
「とりあえず、情報を集めなきゃ……。ここがどんな場所か、まず把握しないと。こんな変な世界……ああ、もうっ! 変すぎるでしょ! 何よこれ、頭おかしいんじゃないの!? 黒ひげだってこんな馬鹿げた、単純すぎる特異点を作ろうなんて思わないでしょ!」
だが、冷静であろうとするにはこの光景はあまりにも突飛でありすぎる。
正直なところ、雄の『性欲』というものを嫌でも意識してしまうあけすけな世界だ。
かつ、クロエ自身も記憶が曖昧であるため『なぜここにいるのか』がわからず、どうしてもすぐに冷静さが途切れて理不尽への怒りや動揺というものが湧いてきてしまう。
もはやわかることは、二つだけ。
この場所がただの学校ではないということと、こんな世界を意図的に作った人間がいるならそれは最低の下衆であるということだけだ。
そんな風にクロエが声を荒げた瞬間だった。
「クロっ!」
からん、ころ~ん。
安っぽい鐘の音とともに、クロエの背後から聞き慣れた明るい声が響いたのである。
「イリヤ!」
こんな異常な状況の中で聞こえた慣れ親しんだ声に、クロエは思わず普段のお姉さんぶった姿を取り繕うこともできず満面の笑みとともに振り返ると、そこにはやはり見覚えのある少女が立っていた。
透き通るような白い肌に神秘的な白銀の髪と、宝石のような赤い瞳。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
クロエにとってはある意味で『自分自身』とも呼べる存在であり、分かちがたい『姉妹』のような間柄で、そして、共に戦ってきた大切な『仲間』なのだ。
「……って、え?」
だからこそ、そんなイリヤの予期せぬ姿に間の抜けた声を漏らしてしまった。
イリヤは他の少女たちと同様に、聖桜女学園の制服を着ていたのである。
いや、同様というと少し語弊があるだろう。
イリヤが着ているものは、クロエと同じ白のセーラー服に桜の花びらの刺繍が入ったスカーフという、他の少女たちと異なるものだった。
そして、異なるものはもう一つある。
(お、おおお、おっぱい、大きすぎるでしょぉ~?!)
他の少女たちは年齢に不釣り合いな、『巨乳』と呼ぶには十分すぎる豊満な乳房を持っていたが────駆け寄ってくるイリヤの胸は、『巨乳』と呼ぶことさえ躊躇われるほどの規格外の大きさ、いわゆる『爆乳』だったのである。
まるでアニメや漫画から飛び出したようなありえないほどの爆乳が、他の生徒達の薄茶色のセーラー服とは異なる、真っ白なセーラー服の薄い生地の制服をパツパツに押し上げて、桜の花びらがワンポイント入ったスカーフを持ち上げていたのだ。
クロエの知るイリヤはまるで妖精や天使をたとえに使いたくなるほどに愛らしく幻想的な美少女であって、こんな雄の欲望を満たすためだけに生まれたよなドスケベ少女などでは決してない。
そう、イリヤの大きすぎる胸はこのN本という世界の異常性を象徴するモノであり、そしてクロエが持っている常識を嘲笑っているようにも見えるモノであった。
「な、なに……は、へ……?」
「さっき先生から連絡を受けたんだけど……うん、クロもやっと来たんだね! それに、その制服! クロもわたしと同じ、最初から『選抜生』になってる子なんだね!」
「選抜……? な、なんなの、どういうこと……?」
動揺の余りいつもの余裕など完全に無くしているクロエを無視するようにイリヤは無邪気に笑い、その手をぐいっと掴んだ。
その力強さは、クロエが思わず体勢を崩してしまうほどの勢いである。
「ようこそ、わたし達と先生の聖桜女学園へ……偉大なる、N本へ! ここはね、最高の場所だよ! クロも絶対に気に入ると思うんだ!」
イリヤが浮かべている笑顔こそかつての美少女のものだったが、しかし、その表情の中にはどこか不自然な『熱』が漂っている。
見知った人間の見知らぬ肉体に、クロエは動揺を隠せずに思わずその手を振りほどいてしまう。
「な……なに、なんなの!? い、イリヤ? ちょっと待って……これ、なんなのか説明してくれない? なんでこんな……その胸……ぅぅ~~~!? こ、こんなの、イリヤじゃない!」
それは文字だけを思えば支離滅裂に思える言葉だったが、だからこそ、クロエが抱いている動揺というものをわかりやすく伝えていた。
その声には焦りと苛立ちが混じっているのだが、イリヤはそんな彼女をまるで子犬をあやすように、優しく、しかし力強く再び手を握り返して、そのまま引っ張っていく。
イリヤの手は魔法少女としての力をも上回る力強さが宿っており、抵抗を許さなかった。
「うんうん、いきなりN本に来たからびっくりしてるんだよね? でも、心配しなくても大丈夫だよ。ここには最高の『先生』がいらっしゃるんだから……えへへ、素敵な学園生活が待ってるよ、クロ! わたしはクロエの案内役を任されてるから、教室まで連れて行くね!
なにせわたしは……先生から直々に任命された、委員長なんだもん!」
イリヤはそう言うと、半袖の裾をぐいっと引っ張ると桜を連想させる薄ピンク色の腕章をクロエへと見せつけた。
そこには、『先生専属オナホ委員長❤』という、理解不能な言葉が刻まれているではないか。
さらに、あり得ないほどに淫靡な言葉だけではなく、♀マークの◯の中に♂の矢印部分が貫いている記号──つまり、下品な言い方をすればセックスを意味するマークが刻まれているのだ。
純粋で恥ずかしがり屋なイリヤがつけるはずのない、あまりにも卑猥な腕章である。
「ちょ、ちょっと! 離してよ、イリヤ! 話聞いてる!?」
もはや何がなんだかわからないクロエは、その腕章に刻まれた言葉さえも正しく認識する暇がないほどに動揺していた。
しかし、クロエのそんな動揺や抵抗も無視するようなイリヤの力強い手に引かれて、二人は校門をくぐってさらに校舎へと向かっていく。
桜並木の間を抜ける風は春の柔らかな香りを暖かく運んでくるのだが、クロエの心にはそんな風とは裏腹に冷たい不安が広がっていた。
まるで新造されたばかりの校舎の中を進んでいく間、すれ違う女生徒たちの姿がさらに彼女の違和感を増幅させた。
イリヤのような爆乳でこそないものの、どの生徒も当たり前のように巨乳のおっぱいを所有しており、薄茶色のセーラー服の薄い生地が体にピッタリと張り付いてアンバランスなラインを強調している。
彼女たちの目はキラキラと輝きつつもどこかうっとりと蕩けており、それはまるで何かに取り憑かれたかのような妖しい表情だった。
「な、なに……ここ……?」
それだけならば、まだいい。
いや、何も良くないのだが、異常な光景は『肉体の変化』だけだと受け止められただろう。
恐らくは相当な技術で美しく維持されている校舎の中、廊下の掲示板にはとある『スローガン』と思える文字だけのポスターが貼られていたのだ。
『先生に愛されるために、最高の女性へ』
特定の一人を指していると思われ、さらには自分というものは自分自身のためではなくその特定の人物のためだけに存在しているとさえ思えるようなるその言葉に、クロエの背筋に冷たいものが走る。
(ここ、絶対におかしい……! イリヤも、なんか変で……この世界は、全部がおかしい!)
クロエは目に飛び込んでくる情報から必死に状況を整理しようとするが、しかし、その飛び込んでくる情報のすべてがクロエの常識からは逸脱するものであるために、頭は混乱するばかりだ。
やがて、イリヤに連れられてたどり着いたのは、校舎の最上階にある特別教室だった。
その教室に刻まれたプレートを見たクロエの胸に、恐怖と怒りと──呆れが同時に渦巻いた。
『特別クラス:先生のお嫁さん候補牝奴隷選抜クラス』
ドアに掲げられたプレートには、そのように刻まれているのだ。
動揺していたクロエも、さすがにこの異常な世界の方向性を理解した。
「牝奴隷……!? ああ、もう……本当になんなのよ!? こんなの、冗談にもならないじゃないの!」
これはエロゲやエロ漫画と呼ばれるような、男にだけ徹底的に都合がいい空間となる、唾棄すべき世界なのだ。
そうして、そんな男がチンポをシコシコと擦るためのオカズとなるために、クロエはこの世界に迷い込んでしまったのだと、カルデアでの活動の知識があるからこそクロエはその『正解』に簡単にたどり着いたのである。
「ふふ、クロエ、びっくりしすぎだよ。まぁ驚くのはわかるけど、でも、すぐ慣れるよ。このクラスで教えてくれる『先生に愛される方法』ってすっごく楽しくて、すっごく幸せなことだもん❤」
「イリヤ……!」
からん、ころ~ん。
安っぽい鐘の音が鳴り響く世界の中で恍惚とした表情のまま漏らしたイリヤの言葉に、クロエは強い怒りを抱きつつも言葉を失う他なかった。
イリヤは完全にこの特異点に取り込まれてしまっている。
クロエは、単なる当て推量ではあるが、恐らく自分やイリヤは何らかのアクシデントに巻き込まれて強制的にレイシフトしてしまい、その特異点の『強制力』を受けようとしていると判断した。
(本当にふざけてくれるじゃない……! イリヤをこんな身体にして、こんなイリヤが絶対に言わないような言葉を口にさせる『お人形さんごっこ』を楽しんで……! 誰が特異点の主なのかとか知らないけど、絶対に許さないわよ……!)
クロエは強い決意とともにイリヤとともにその教室の中に入っていった。
彼女が考える以上に、このN本という世界は恐ろしいのだということも知らずに────。
□
特別クラスのドアが開くと、そこにはすでに数人の女生徒が自身の席に着いていた。
白を基調とした清潔な教室は広々としており、南側に備えている大きな窓から差し込む朝日が柔らかな光を投げかけている。
まさに、理想的な学校の教室と言ったところだろう。
そんな教室は、教壇の前の席には特別クラスの生徒たちが利用する、いかにも高級そうな机が整然と並んでおり、その後方には二十席ほどの簡素な机と椅子が並んでいる。
これらの机は特別クラスの一員と認定されている『選抜生』の席であって、それらの後方に置かれた簡素な机はこの教室で学ぶことを許された、一般クラスの中でも秀でた成績を持つ、『研究生』と呼ばれる生徒たちの席であった。
研究生に認定された生徒たちは、ここで実際に特別クラスの様子や先生の授業を間接的に受けることで、『N本人様』にお仕えする牝奴隷としての実力を磨くことになる。
そして、その研究生としての授業態度や学業成績などでその実力を認められた生徒は、研究生から『選抜生』へと昇進することができるのだ。
「今日の朝に連絡が来たけど、クロエは最初から特別クラスの生徒なんだって! しかも、研究生じゃなくて選抜生だよ! わたしもそうだったけど……これって、凄いことなんだからね!」
「そんなこと言われても、別に嬉しく……って、うぇ……!?」
周囲の生徒たちは教室に入ってきたクロエを興味津々な視線で見つめていたが、クロエの注意を引いたのはそんな研究生たちではなく、教壇の前の席に座っている選抜生、いや、『見慣れた少女たち』の姿である。
この学校の制服なのだろう、イリヤやクロエと同じ白を基調としたセーラー服の制服に身を包んでいるその少女たちは、みな、10歳前後の幼い外見とは裏腹に、異様なまでに豊満な胸を持っていた。
イリヤと同じく、『桜の花びら』が刻まれたスカーフをまるで誇るように爆乳で持ち上げているそのいびつな肉体は、クロエの目に異様な光景として映るが、問題なのはそこではない。
「カーマに……ナーサリーに、ジャック!? それに、ジャンヌ・リリィまで……!」
そう、そこではカルデアで共に旅をする仲間であったサーヴァントたちが席についていたのだ。
伸縮自在の肉体を持つカーマは小柄な肉体に白銀の髪を短く揃えた少女の姿のまま幼児性とは正反対に当たるドスケベなセーラー服を着込み、そしてまた、その小柄な身体には不釣り合いな爆乳を机の上に載せてリラックス状態でくつろいでいる。
また、普段は首から手元や足元まで露出を見せない清楚な印象を与える美幼女であるナーサリーは、ドスケベセーラー服のミニスカートと半袖に着替えて、普段は周囲に一切見せていない透き通るような美白肌を見せつけ、そして、いつものナーサリーには存在しなかったはずの巨大な胸を見せつけるように背を伸ばした姿勢で座り込んでいた。
「あらあら、久しぶりの転校生ですね…………ふふふ、実に情けない体♪ N本人様への敬意が足りないんじゃないですか~?」
「もう、カーマったら意地悪を言ってはいけないわ。N本人様のお姿を見ていないぐらい、来たばかりの子なのよ。それなら、多少は仕方のないことなのだわ」
この二人は、まだ良い。
いや、何も良くないのだが、それでもカーマとナーサリーにはサーヴァントとして肉体を変化させる特質を持っているのだから、普段の姿とは異なる姿を晒している事自体は理屈的に起こり得ることなのだ。
しかし、ジャック・ザ・リッパーとジャンヌ・ダルク[オルタ][サンタ][リリィ]は違う。
「新しい……クラスメイト……おっぱい、ちっちゃい……」
「N本人様の先生に教わるには相応しくない貧相さですね! 決まったことに文句を言うわけじゃありませんけど、こんな人が選抜生だなんて、研究生の子に失礼なんじゃないですか?」
ジャックは普段ならば肉体にピチピチと張り付いたトップスと布面積の少ない海水パンツのようなボトムスを身に着けているため、その普段の服装と比べればまだ肌面積を隠している制服を身につけているが、しかし、普段の未成熟な胸が大きく膨れ上がったその胸元の影響でセーラー服が持ち上がって、おヘソが見えてしまうことでなんとも淫靡な姿を創り出していた。
ジャンヌ・リリィも同様である。
純白のケープで大きく胸元を覆っているものの、実はトップスはビキニブラだけを覆っているその特徴的なクリスマス衣装を脱ぎ捨てて、やはり純白の制服を身に包んでいるのだが、普段の露出された胸元からわかるまだ膨らみのない少女の胸が、その小さな頭部を上回るほどに大きく膨らんでいた。
成長した姿であるジャンヌ・ダルクたちが豊満なおっぱいを持っている影響なのか、ナーサリーやジャック、カーマと比べると幾分か大きく見える。
この二人には肉体を変貌させる特製は持たない上、しかも、『少女の姿である』ことこそがその存在の基軸となる種類の英霊だというのに、少女とはかけ離れたロリ爆乳を持っている事自体がおかしいのだ。
「ど、どうなってるの……? みんなの胸が大きくなっているなんて……!?」
イリヤの美貧乳がロリ爆乳に変貌している時点でそのような疑問を抱くこと自体がおかしいのだが、それでもやはり、外見や振る舞いの割には高い知性を持つクロエからすれば、サーヴァントを成り立たせる理屈や記憶があるからこそ、動揺をしてしまった。
しかも、彼女たちの顔にはなんとも楽しげな、こんな淫靡な笑みを浮かべていることがクロエにゾッと背筋を凍らせるような恐ろしさを感じさせてしまう。
「びっくりするよね……わかるよ、クロ。でもね、これって自然なことだから。そのことも『先生』が授業で教えてくれるから、楽しみにしててね」
クロエを嗜めるイリヤの声に混じって、研究生として参加している生徒たちからクスクスと笑い声を漏らし、クロエも知っている選抜生の少女たちもくすっと微笑む。
その笑顔には年相応の愛らしさはなく、まるで世間擦れして大人の女が浮かべるような淫らさと嘲りが混じった、どこか不気味な印象を持つ笑顔だった。
間違いなく異常である。
しかし、この空間にはもはや異常なものしか存在しないために、どの異常から触れていけばいいのかもわからないほど、クロエは混乱してしまっていた。
「さあ皆、席に着きなさい。朝礼を始めるよ」
からん、ころ~ん。
何を問い詰めればいいのかもわからず、ただみっともなくポカンとした表情を浮かべることしかできないクロエがなんとか言葉を発しようとする前に、ガララ、と教室のドアが静かに開いた。
安っぽい鐘の音とともに響く、穏やかだが、どこか『威厳のある声』を感じたクロエが声の方向へと振り返ると、そこには一人の男性が立っていた。
「なっ……!?」
「あっ、先生~❤」
そう、『先生』である。
いかにも最先端な構造になっている、言うならば近未来的とさえ言っても良い教室だと言うのに、不思議とガラガラという懐かしい音が響く扉を開いて現れたその先生の姿は、クロエの想像を大きく裏切るものだった。
イリヤが妙に高い声を上げて嬉しそうに駆け寄っていく姿を見つめつつ、クロエはなんとも間の抜けた様子で口をぽかんと開けてしまうしかなかった。
(先生って、ただのおじさんじゃない……! そりゃ、『声は迫力があった』けど……服装も顔つきも体型も、全然普通のおじさん……!)
先生の体つきは身長は平均的ではあるものの少しぽっちゃりとした、とは言え、肥満というほどは不衛生な印象は与えない平均的な日本人男性の体型だった。
眼鏡をかけた冴えない顔立ちに少し乱れた髪、スーツのネクタイは緩く結ばれて、シャツの裾がわずかにズボンから飛び出しているためにだらしない印象はあるものの、それでもそれだけを理由に遠ざかろうとは思わない。
なんというべきか────典型的な、うだつの上がらない凡庸な男性だった。
クロエは、ここまでイリヤやカルデアの仲間たちが崇拝しているというのだから、たとえ妖しい御業を利用しているとはいえ、その容貌や立ちふるまいからして油断ならぬ『大物』が現れると、それこそ、先生とは言っても教師というよりも政治家のような、外見からして貫禄が溢れる人物が現れるだろうと考えていた。
だというのに、実際に現れた先生は、どこにでもいるような中年の教師そのものだった。
クロエの知る『強者』のイメージ、例えばカルデアで召喚されたような英雄や魔術師とはかけ離れた、平凡すぎる姿だった。
とてもこの異常な教室を統べるような人物には見えない。
「せ、先生……!? こんな奴が……!?」
見れば見るほどに湧き上がる疑問をついに堪えきれなくなり、クロエは思わず声を上げる。
だが、そんなクロエとは正反対に教室の空気が一変した。
「あ~、先生っ❤ 今日も出会えて嬉しいで~す❤」
「おはようございま~す❤」
「今日も……かっこいい……❤」
特別クラスの少女たちは目を輝かせ、一般クラスの生徒たちもウットリとした視線を先生に向けながら、黄色い歓声を上げていった。
イリヤに至っては、まるで恋する乙女のように頬を赤らめながら、着いていた席から立ち上がるほどの歓びを見せている。
そんな風に急に飛び立つものだから、イリヤの不自然な爆乳が制服越しにぶるるんと揺れる様子は、まるで先生という一人の男に媚びているかのようにドスケベな光景だった。
「先生! 今日からクロが新入生として来ました! わたしがお姉ちゃんとして……そして、委員長として! しっかりサポートしますね!」
いや、大きく声をあげつつも胸を張り、さらに卑猥な腕章をビシッと引っ張って見せつけるイリヤの姿からして、この幻想的な美貌を持つ絶世の美幼女は、事実としてこの平凡な中年教師に『媚びている』のだろう。
先生へと声をかけられること自体が嬉しいと言わんばかりに、ニコニコと心からの笑みを浮かべながらわざとらしく体を揺さぶって柔らかな爆乳をアピールしているのだから。
クロエは目を疑った。
このような冴えない男が、なぜイリヤのような美少女にこんなにも崇拝されているのか。
クロエの知るイリヤは確かに、冴えない中年男性だからと軽んじたりはせずに誠実に対応するような心優しい少女だったが、同時に年長だからというだけでこんな盲目的な忠誠心を示すような人物ではなかった。
そんな動揺しているクロエへと向けて、その中年教師はなんとも特徴のない、ヘラリとした頼りない笑みを向ける。
「うん、話は聞いているよ。君は転校生のクロエ・フォン・アインツベルンだね。ようこそ、聖桜女学園へ。僕は君の担任だ。これからよろしくね。みんなも、クロエさんと仲良くするように」
からん、ころ~ん。
安っぽい鐘の音が鳴り響く中で微笑む先生の姿を見て、クロエは一瞬ドキリと胸を高鳴らせてしまった。
それは『お兄ちゃん』や『マスター』へと抱くような愛情と同等の、ともすればそれよりも大きな程の歓喜である。
先生の笑顔と声は、まるで心に染み込むような柔らかさを持っており、思わずイリヤたちのようにとろりと表情を崩しそうになったが、すぐに首を振って警戒心を取り戻す。
(なに……なんなの、この状況は!? 誰か、 説明してっ! 絶対おかしいのに、『なにがおかしい』のか『わからない』じゃない! イリヤも、みんなも……わたしもっ! なんでこんな冴えない男に、胸をドキドキさせちゃってるの!?)
まさに、今のクロエは混乱の極みと言うに相応しい状態だった。
そんな様子をニヤニヤと見つめているのは、イリヤやクロエと同じく『選抜生』と呼ばれている、カルデアでも見知った顔の少女たちである。
「あらあら~♪ どうやら、クロエさんは先生に一目惚れをしちゃったみたいですね~♪」
「まぁっ! ふふふ、クロエもN本の魅力をちゃんと心で理解できているのね! とても素敵なことなのだわ♪」
「なっ……!? そ、そんなわけ……!」
「……? ちがうの……? 先生、とっても素敵だから……恥ずかしいことじゃ、ないよ?」
「恥ずかしがるなんて先生に失礼ですよ、クロエさん。まるで先生が男の人としての魅力に乏しいと言っているようじゃないですか」
「だから……そういうのじゃ……!」
からかうようなカーマとナーサリーの言葉に、クロエは顔を真っ赤にして否定するものの、ジャックは心底から不思議そうにその言葉に疑いを持ち、ジャンヌ・リリィは呆れたようにクロエを諭しだす始末だ。
彼女たちにとって、先生を見て胸を高鳴らせたクロエの反応はなにもおかしなことではなく、それを受け入れきれていないのはクロエただ一人である。
そんな普段は大人びているクロエの、その内心の動揺を隠しきれない表情の変化を見た先生は、ただ穏やかに言葉を口にした。
「クロエ、君が戸惑うのも分かるよ。でも、この学園は……いや、この国は特別な場所なんだ。君たち外国人の女の子をN本に相応しい最高の女性に育てるために、僕が全力で指導する。
イリヤも、カーマも、ナーサリーも、ジャンヌも、ジャックも、みんなそうやって成長してきたんだ。君もすぐに分かるよ」
「は……? N……本? さっきから日本じゃなくて、何の話をしてるの……? なんだかもう、意味がわからない……! なんで、なんでイリヤもみんなも……わたしも……! こんな情けない男に、なんでこんな……!」
諭すような先生に対して反発心を抱いたのか、思わず漏れ出したクロエの声は苛立ちに満ちていたが、先生はもちろん周囲の生徒たちもただ懐かしそうに柔らかく微笑むだけだった。
今のクロエの反応は、この『世界』に迷い込んだ外国人女性にとってそう珍しいものではないのだろう。
その内心を透かして見るような不快なはずの微笑みが、なぜだかクロエの心を心地よく揺さぶっている
クロエという単体の存在としての勘と魔法少女としての経験が、眼の前の先生がただの外見通りの凡人ではない『なにか』を持った存在だと強く警告していたが、その『なにか』が何なのか、クロエにはまだ理解できなかった。
教室の壁に掲げられたスローガンが目に入る。
(『先生に愛されるために、最高の女性へ』って……本当に、狂ってるとしか思えないっ! イリヤもみんなも、本当にそうなろうとしているし! どうなってるのよ、この世界は!)
その異常なはずのスローガンに対して、理性で反発を覚える。
しかし、クロエ自身も気づいていないだろうが、最初に廊下でそのスローガンを読んだときよりも、奇妙な納得のような感覚も心の中に生まれていた。
言うならば、『確かに先生のような人物は特別視されるのも納得だ』というような、先生という存在を高く評価する心から生まれた感覚だ。
「さて、朝礼は終わりだよ。今日は一限目が体育だからね。みんな、早く準備をして体育館に移動しようじゃないか」
先生の言葉に、教室が一斉に動き出す。
イリヤを代表とする選抜生の少女たちは嬉々として立ち上がり、一般クラスからの研究生たちも興奮した様子でぞろぞろと教室を出ていく。
イリヤはクロエの手を再び掴み、にっこりと笑った。
「先生の授業、最高だからね……絶対、クロも大好きになるよ!」
「ちょ、ちょっと! イリヤ、離して……離してよ!」
からん、ころ~ん。
安っぽい鐘の音が鳴り響く中で、クロエは抵抗するがイリヤが引く手は予想以上に力強く、体育館へと連れていかれる。
そうして、この異常な世界────『N本』に染まっていくことが運命づけられてしまった、そんな哀れな少女の一日が始まるのだった。
□
N本はアキハバラで、小中高一貫教育を施している聖桜女学園の『第三体育館』は、広大で荘厳な空間だった。
広大な敷地の中にドンと建築されているその施設は、まるで巨大なコロシアムを思わせる円形のスタジアム型ドームであった。
高い天井には擬似的な青空が投影されて柔らかな光がコート全体を照らし出しており、床は最新のクッション素材で覆われていてどんな激しい運動でも怪我を防ぐ設計だ。
壁には巨大なモニターが設置され、さらには数百席ほどの観客席としてのスペースがあり、スポーツの大会を開くには十分すぎるほどに施設が整っている。
しかも、『第三体育館』と呼ばれているように、このスタジアム型ドームと同じような施設が他にも二つ存在しているのだ。
それだけでも聖桜女学園の、いや、N本の莫大な資本力を感じさせるものだった。
「む、無駄に凄いわね……ここ、学校の体育館でしょう……?」
クロエ・フォン・アインツベルンは、そんな『体育館』に備えられた『更衣室』の中で、ここに来るまでに見た施設の数々を思い出して呆然とつぶやいた。
「そりゃあ、そうですよ。ここはN本の中でも随一の施設を誇る、名門校ですからね。学費だってものすごく高いですし、入試の倍率だって目眩がするような学園なんですよ? それら全てが免除される特待生に選ばれたこと、少しは感謝したらどうですか~?」
「カーマ……」
そんなクロエのつぶやきに、カーマが厭味ったらしく、または小馬鹿にするような形で応えた。
カーマの言葉は事実である。
聖桜女学園はN本で暮らす外国人ならば、絶対に娘を入学させたいと願うような学園だ。
その設備に教育水準の高さ、さらには卒業後の進路などを考慮すれば、ここに入学すれば外国人たちの誰もが望む『名誉N本人』の資格を取得する未来を手に入れられるも同然なのである。
「まあ、特待生最高の栄誉は、入試や学費が免除された上でここで学べることよりも……ほかでもない、偉大なN本人様に選ばれたという事実なんですけどね。研究生から選抜生に昇格した子はともかく、クロエさんやわたしみたいに『N本に迷い込んできた』上で選抜生になれるのは、N本人様が無意識にわたしたちを望んだという……それこそ、魂が極楽に登ってしまいそうなほどの歓喜を覚える栄誉なのですからね❤」
カーマは上気した頬を支えるように両手を当てながら、そのまま虚空をうっとりと見つめる。
その視線の先には、あの冴えない男性教師の姿を夢想しているのだろう。
「それに、この学園での授業風景は可視できるドローンも不可視のドローンでも撮影をされていますからね。その映像はN本人様は無料アクセスできるサイトでライブ中継されたり、アーカイブ化されていますから、先生のお眼鏡に叶わなくても他のN本人様から指名を受けて、専属奴隷になれる未来もあります。クロエさんも、先生に見捨てられた未来も踏まえて、せいぜい頑張ると良いですよ」
学園の授業風景は公式サイトで公開されている。
それらはN本人は無料でアクセスできるが、外国人の場合は高額な月額料金を払うことで限定的な映像を見ることができた。
高額なサブスク料金を支払ってこの学園の授業風景を見ている外国人たちは、入学試験に受からなかった娘のために契約しているものや、そもそもとして爆乳ロリや巨乳ロリたちが真面目に授業を受けている様子を見てシコシコと外国粗チンをシゴくるために契約している外国人男性に、または、N本人である先生の授業風景を見つめてN本崇拝オナニーでオマンコを耕す外国人美女など多岐に渡る。
「自分がいかに恵まれてるか、早く実感することを願いますよ……クロエさん♪」
そう言うとカーマは更衣室に用意されていた体操服へと着替えを開始していく。
そんなカーマに釣られるように動き出すクロエだが、その褐色の手にいつの間にか用意されていた自分専用の更衣室の中に置かれていた体操服を握った瞬間に、思わず固まってしまった。
「な……なに、これ……?」
いや、それはもはや体操服というよりも、もはや下着と呼べるような衣装だろう。
体操着としての白シャツは非常に布地が薄く、水に濡れたわけでもないのに向こう側が透けて見えるほどであり、今どきならばハーフパンツであるべきボトムスはまさかのブルマで、しかも、ハイレグと呼べるほどに鋭い角度を作った布面積が極端に少ないものだった。
さらに、明らかに体育には不必要と思われるような肘まであるロンググローブと膝上まであるニーソックスがセットになっているではないか。
「なんなのよ……これ!? なんでこんなのを着なきゃいけないの! ふざけてるわ!」
怒りに満ちたクロエの叫び声が更衣室に響くが、周囲の少女たちはまるで気にも留めない。
セーラー服をいそいそと脱いで、ためらいなく体操服へと袖を通していく。
そして、その際に下着姿になったことで、クロエは何度目になるかもわからない大きな驚きに襲われてしまう。
生徒たちは、色や細部に違いこそあれども、総じて卑猥な下着を身につけていたからだ。
清楚なあの子も、元気そうなあの子も、真面目そうなあの子も、ちょっと悪そうなあの子も。
スパンコールなテッカテカの紐パンに、そのロリ巨乳やロリ爆乳の半分も隠せていない上に少女によっては乳輪が見え隠れしているサイズのマイクロビキニ型のブラジャーだ。
何をしに学校に来ているのだと、クロエでなくとも問いただしたくなるような異常な下着姿である。
「あ、頭がおかしくなりそう……いや、もうなってるのかも……」
そんな風に混乱しているクロエを尻目に、イリヤにジャンヌ・リリィ、ジャックやナーサリー、カーマたちは、すでにその体操服に着替えており、その爆乳に裾を持ち上げられておヘソが丸出しになっている児童ポルノとしか思えない扇情的な姿を曝け出している。
もちろん、爆乳までは行かない巨乳サイズに過ぎない『研究生』にしても、その体操服の裾は不自然に短くて、同じようにへそ出しルックのまま更衣室を出て体育館へと向かっていっていた。
どう考えてもそんな服装に着替えた生徒たちのほうがおかしいというのに、イリヤはなんとも困ったような顔でクロエを諭すように声を掛ける。
「クロエ、早く着替えないと授業が始まっちゃうよ? 体操服に着替えないと、先生の授業は受けれないんだから早くしないと」
イリヤが無邪気に笑いながら、クロエに近づいてくる。
見慣れたはずの笑顔だと言うのに、嫌でも見たこともない爆乳が揺れる姿を意識してしまう。
クロエはイリヤの姿にかつての頼りになる仲間としての面影を探すが、そこにはただ『N本』の価値観に染まった従順な『生徒』の姿しか見出せなかった。
「時間もないんだからさっさとしてくださーい。先生の担任しているクラスが、時間になっても授業が始められないなんてあってはいけないんですよ? あなた一人のせいで偉大なるN本人の先生に屈辱的な評価をつけたいんですか?」
そして、イリヤだけではなくカーマもまたクロエを責め立てる。
朝のホームルームでクロエへと投げかけたからかい混じりの言葉ではなく、その中には明確な嫌悪の色があった。
クロエが着替えを遅々として行わず遅刻をするようなことがあれば『優秀な教師』である先生を侮辱する行為になると、カーマは本気で思っているのだ。
そして、そう思っているのはカーマだけではない。
周囲の生徒も言葉にこそしないが、クロエへと批難するような視線を向けているではないか。
だからこそ、クロエはそんなイリヤや世界の常識を受け入れられずに叫んでしまう。
「こ、こんなの、おかしいわよ! こんな授業、絶対変よ……!」
「もう……クロエ、先に行くから着替えてきてよ? 先生を待たせちゃ駄目なんだからね」
クロエの声には怒りとともに、確かな『恐怖』が混じっていた。
この世界の異常な空気は、クロエの中にある『抵抗心』を無力化するような圧倒的な力を放っていたのだ。
一瞬だけ逃げ出すことを考えてしまうが、しかし、眼の前でニコニコと笑うイリヤのことを放置して逃げるわけにはいかないと、クロエは拳を握りしめ、心の中で自分を奮い立たせる。
(情報集めるためよ……! この変な世界の仕組みを理解するまでは、我慢するしかない……!)
クロエは唇を強く噛みながら、仕方なく更衣室の隅で体操服に着替えていく。
スルスルと身を包んでいく、ぴっちりと体に張り付く肌の感触が心地良いことすら腹ただしい。
白のシャツと紺のブルマがクロエの褐色の肌を際立たせており、そんな露出が異様なだけの体操服に加えてロンググローブとニーソックスがさらに異様さを強調させていた。
さらに、その袖はノースリーブに切り詰められている。
周囲を見渡せば、巨乳ロリの研究生たちはその付け根が見えて『着エロ』という言葉を連想させるエロさを醸し出しており、さらに別の人物────イリヤとカーマを見れば、もはや付け根だけではなくおっぱいの横半分が丸見えになっており、『着エロ』ではなく『ガチエロ』と呼ぶに相応しいものになっているではないか。
乳の横半分が丸見えになっているくせに、ノースリーブから伸びる可愛らしい短い腕はロンググローブで隠れているアンバランスさもまた、明らかに男性の欲望を煽るための服装だということをアピールしている。
イリヤやカーマのような美少女がこの体操服に着替えるだけでも巨乳ロリの性癖を持つものならば────いや、仮にそんな性癖を持たなくとも、健康な男性ならばその場で勃起をして、早漏な人間ならばお漏らし射精をしてしまうようなエロさを醸し出していた。
(なによこれ……なんなのよ、これぇ……!)
ぴっちりと体に張り付いたシャツと鋭角なハイレグブルマに着替えた自分の姿が鏡に映り、クロエはどうしようもない羞恥で顔を背けた。
元々が小悪魔的で、年上の男性に対してもいたずらっぽく『色仕掛け』をすることに躊躇わない『メスガキ』気質のクロエではあるが、自分の意思でそのようなセクシーな服を着ることと、自分が望まないままにスケベな服を強制的に着せられることではまた違うのだ。
褐色の肌が薄い生地越しに透け、ハイレグブルマは彼女の体のラインを過剰に強調していた。
胸は他の少女たちのように大きくはない幼女らしいささやかなものために、その体操服自体はノースリーブ型の体操服というレベルにとどまっているが、それでもこの衣装ではぷっくりとではあるが膨らみを見せる胸元が異様に目立ってしまう。
「ああ、もうっ……! こうなったら鬼でも蛇でも、悪魔でもレイプ魔でも、神様でも仏様でもなんでも出てきなさいよ……!」
着替えを終えたクロエが体育館の内部に戻ると、すでに体育の準備が始まっているようだった。
クロエたちが体操服に着替えたように、ジャージへと着替えた冴えない中年男性、先生が体育館の中央に立っている。
そして、特別クラスの選抜生たちが先生の前できれいに横一列に並び、その後ろに一般クラスから参加している研究生たちが並んでいる。
「クロ、早く早く!」
「……!」
イリヤに急かされて、クロエもまた選抜生たちが並んだ前列に立つ。
それだけならば確かに単なる体育の授業だろうが、卑猥な体操服姿というだけでまるで卑猥な見世物へと変貌してしまっていた。
羞恥がクロエを襲うが、そんな羞恥を感じているのはクロエだけで選抜生も研究生もニコニコと先生を見つめていた。
「それじゃ、準備体操から始めるよ。みんな、先生を喜ばせるような動きを意識してね」
『は~い❤』
「それじゃ……イリヤ、前に出て先導役をお願いしようかな。イリヤの声に合わせて、みんなも準備体操をするんだよ」
「はいっ、わかりました❤」
先生の指示に従って、イリヤは嬉しそうに先生の隣へと並んだ。
その声は穏やかだが、どこか絶対的な威厳と卑劣な欲望を帯びており、さらにはその顔にはニタニタとしたいやらしい笑みを浮かべて、イリヤやクロエたちを視姦するようにジロジロと見つめている。
その言葉に『自分を喜ばせるように』という内容も含めていることからも、誰がどう見てもその権力勾配を利用しているセクハラ教師そのものだった。
だが、クロエはその先生の声にやはり胸がドキリとするのを感じたが、すぐに首を振って警戒心を取り戻す。
「なっ……!?」
だが、準備体操の光景に、彼女の嫌悪感はさらに増した。
「いっちに、さんしっ❤ ごーろく、しちはちっ❤」
『いっちに、さんしっ❤ ごーろく、しちはちっ❤』
イリヤを筆頭に体育に参加する少女たちは、誘惑するような動きで体操を始めていったのだ。
腕を伸ばす動作では必要以上に胸を突き出し、脚を屈伸させる動作ではブルマのラインを強調するようにお尻を突き出し、腰を左右に振る動作では爆乳が揺れる様子を誇示するように激しく動いているのだ。
彼女たちの動きは単なる準備体操ではなく、先生が宣言した通り、雄を喜ばせるためのパフォーマンスそのものだった。
妙に動くものだからブルマはどんどんと食い込んでいってもはやTバック状態になっているし、ただでさえ短い体操着の裾はどんどんと上がっていって胸元まで持ち上がってしまっている。
「良いよ、みんな。準備運動はちゃんとしておかないと、怪我をしちゃうからね♪」
(何よ、これ……! こんなの準備運動じゃなくて、エロいだけのショーじゃないの……!)
クロエの身体が怒りと嫌悪に震えていく。
彼女の知るイリヤはこんな卑猥な行為に喜んで参加するような少女ではなかった。
「は~い❤ ふふふ、先生どんどん見ちゃってくださいね~❤ わたしのエッチな準備体操❤」
「怪我をしたらいけないのだから、真剣にやるのは当然ね❤ 先生、ダメなところがあったらご指導をお願いするのだわ❤」
「うんっ、しょ……うんっ、しょ……❤ 先生……お尻は、これぐらい後ろに出したほうが良いのかな……❤」
「皆さん! もっと真剣にやってください! こう、してっ❤ もっと、大胆に腰を振ったりしないと、ダメなんですからねっ❤」
このようなことをしないという点ではカーマやナーサリー、ジャックやジャンヌも同様だ。
だというのに、彼女たちはまるでそれが当然のように先生の視線を浴びることに喜びを感じているようだった。
クロエだけが必要以上に身体を揺らさない、しっかりと節々を伸ばしていく真っ当な準備運動をしていくのだが、それでも準備運動で身体が温まるようなことはなく、思わず身体が震えるような得体の知れない恐怖が広がっていくのである。
そうする間に、イリヤの掛け声が止まり準備体操が終了した。
「はい、これで準備体操……終わりました、先生❤」
「さて、今日は徒競走だよ。走るのは運動の基本だからね、走り方を学んでいこう」
準備体操が終わると、先生が次の指示を出した。
どんな卑猥な運動を、例えばポールダンスやリンボーダンスなどをさせられるのかと構えていたが、思いの外、普通の授業内容である。
だが、そう感じたのも一瞬のことだ。
「これは授業だからね、単純に速く走ることだけじゃなくてフォームの美しさ……特に胸をどれだけ魅力的に揺らせるかが評価のポイントだよ。先生たちN本人の男性を楽しませることも、大事な学びだからね」
先生の言葉にクロエは耳を疑った。
信じられないセクハラ発言だ、それこそ昭和の時代だって強い嫌悪を抱かれ、気の強い生徒がいればその教師よりも上の立場の人間に訴えられて一発でアウトの可能性も高いだろう。
「はいっ! わかりました!」
「うん、それじゃイリヤとクロエ……それと、カーマも含めて三人ずつ行こうか。ああ、研究生の子はあっちでタイムを測ってもらおうかな」
『はーいっ❤』
しかし、体育館に集まった少女たちは目を輝かせてその指示を受け入れて、指名されたイリヤとカーマは何の疑いもなくスタートラインへと並んでいくではないか。
その姿にクロエの嫌悪感はピークに達した。
「ふ、ふざけないで! こんなの、体育の授業じゃないわっ! こんなのに付き合ってなんていられない……!」
当然と言えば当然とも言える、クロエの叫びが体育館に響き渡る。
しかし、先生は動じることもなく穏やかに答えた。
「クロエ、とにかく先生の言う通りにやってごらん。この授業は……いや、この学校での生活はね、君たち女の子の魅力を最大限に引き出していく授業で、あくまで君たちのために行うものなんだからね」
「もうっ、クロ! わがままばかり言わないで! 先生に迷惑かけちゃ駄目だよ?」
「べ、別にそういうわけじゃ……!」
「そう言うわけじゃないって……いやいや、そういうことでしょう、クロエさん?」
先生とイリヤの諭すような言葉は、それでもクロエにはまだ響かない。
それでもなんとか大事な姉妹であるイリヤをこんな卑猥な世界から取り戻そうと奮起をするクロエだが、そこにイリヤの隣に並んでいるカーマがバカにしたような嘲笑を浮かべながら言葉を投げかけた。
「ああだこうだ言いながらも、結局はかっこいい先生の前で惨めにかけっこに負けたくないから逆らってるんでしょ? かっこ悪くヒーヒー言いながら、わたしやイリヤさんに大差をつけられてからゴールをするなんて嫌ですもんね? でも、自分が亀さんみたいに遅いから嫌だなんて言えなくてわがままを言うなんて……はぁ。本当に恥ずかしいお子ちゃまですよねぇ~、クロエちゃんは❤」
「なっ……!?」
しかし、カーマの明らかな挑発となると別だ。
ニタニタとした笑みは明らかにクロエのことを下に見ており、さらにはわざとクロエのことを『クロエちゃん』などと小馬鹿にしたように呼んでくるではないか。
「~~~! わかったわよ……! そんなふざけた身体のイリヤやカーマに、わたしが負けるわけないじゃないっ!」
そんなカーマの言葉は的確にクロエの怒りの炎を増していき、そのまま怒りに任せてクロエは徒競走のスタートラインに立った。
それを見たゴールラインに構えていた研究生の生徒が、学校の備品であるスタートピストルを上に掲げながら、大きく叫ぶ。
「よーい……ドン!」
クロエは本気で走るつもりだった。
明らかにハンデとしか思えないデカ乳をぶら下げているイリヤとカーマをぶっちぎって圧勝し、先生が楽しむための見世物にはならないと心に誓うのである。
そして、こんな授業を素晴らしいと勘違いしているここにいる全員を嘲り笑ってやるのだ。
(な、なに……これ……!?)
だが、スタートの合図とともにクロエの体はまるで鉛のように重く、思うように動かなかった。
普段はしなやかに動くはずのクロエの足は惨めにもつれていき、まるで泥の中を走っているかのような重い感覚に襲われてしまう。
クロエが把握している、サーヴァントの力を宿した俊敏さが完全に封じられているのだ。
本人はまだ気づくはずもないが、これもN本という世界が未だN本に染まっていないクロエに与えた『世界の強制力』としてのデバフの一つである。
「う、嘘っ……!?」
一方、イリヤとカーマは違った。
この二人は、その走り方こそ両肘を胸に添えながら上半身を左右に振りながら走るという、完璧なフォームとは程遠い体操服越しに爆乳を激しく揺らすことを重視している、わざとらしいドスケベな走り方だ。
それはどう考えても走る上で邪魔なはずの爆乳をぶるんぶるんとダイナミックに揺らす非合理的な走り方だというのに、しかし、イリヤとカーマは成人女性のアスリートと同等ではないかと思うほどの見事なスピードで走っていた。
「やった! わたしが一等賞だ!」
「あー……もう、イリヤさんには勝てませんでしたか。さすがは委員長と言ったところですかね……本気で悔しいですね、これ」
そのため、クロエを大きく引き離してイリヤがゴールに到達し、それとほぼ同時にカーマがゴールへとたどり着いていた。
イリヤはぴょんぴょんとその場で可愛らしく飛び跳ねることで淫靡に爆乳を揺らし、カーマも膝に手を当てた前かがみの姿勢で体操服の胸元から長い谷間を見せつけるドスケベポーズをしていた。
そんなエロい爆乳ロリを見た先生は、ニヤ二ヤとした笑みを浮かべながら二人へ近づいていく。
「うん! イリヤ、とっても良かったよ! フォームも速さも、胸の揺れも完璧だ!」
「えへへ……❤ ありがとうございます、先生っ❤」
先生は満足げに頷き、そんな先生の称賛にイリヤは頬を赤らめて笑う。
また、他の生徒たちからも歓声が上がった。
表面上は出さずとも、未だN本に染まっていないクロエに不満を抱いている生徒たちが、そのクロエを代表的なN本のJSであるイリヤとカーマが圧倒したことに、言いようのない歓びを抱くのは当然と言えるだろう。
「はぁ……! はぁ……! あ、脚が、うまく動かない……!」
クロエはそんな光景に、吐き気を覚えるほどだった。
だが、彼女自身の走りは惨憺たる結果に終わった。
イリヤとカーマがクロエはたっぷりと数秒は経ってからゴールに到達するその差は、子供と大人ほどの差と呼べるだろう。
「あ~あ……困りますねぇ、クロエさん。もっと真面目にやってくれませんかぁ? 幼稚園児じゃないんですから、そのスピードは……ぷぷぷっ♪ さすがにわざとやってるんですよねぇ?」
「うぅっ……こ、このぉ……!」
そんなクロエを、カーマはここぞとばかりに煽っていく。
どうやら、先生に媚びないクロエに対してカーマは強い敵意を抱いているようだ。
そんな相手がここで惨めな姿を見せたのだから、元々の性格が『メスガキ』気質のカーマがニコニコと見逃すわけがないのだ。
「カーマも、よく頑張ったね。走ってる時におっぱいがぶるんぶるんって上下に揺れて、すっごくエロかったよ♪」
「あぁんっ❤ あ、ありがとう、ございますぅ❤ ご褒美のパイ揉み、嬉しいですぅ❤」
そんなカーマだが、イリヤを褒め終えた先生が近寄ってきておっぱいを揉みだすと、先ほどまでの楽しそうに行っていた『クロエいじめ』を一瞬で辞める。
体をくねくねと動かしながら顔を赤く染めて、そのおっぱいをもみもみと揉みだす懲戒免職もののセクハラを嬉しそうに受け入れていた。
「よぉし、それじゃ次の組へと行こう。みんな、準備をして!」
「あんぅっ……終わっちゃった❤」
「…………」
それでもクロエは、カーマの言葉に何も言い返せず、その小学生にセクハラをする淫行教師を止める気力も沸かなかった。
カーマの言う通り、幼稚園児にもかけっこで負けてしまいそうなスピードでしか走れない自分の体に起こった異常に戸惑いを覚えていたためである。
「……って。まだ居たんですかぁ? はいはい、お疲れのクロエさんは休憩しててくださいね。先生の授業中に倒れられたら、先生のご迷惑になっちゃうんですから」
「うぅ……」
先生のセクハラが短く終わってしまったことがカーマも少し物足りなかったのだろう。
その不満をぶつけるように、クロエへと先ほどまでの発情した様子とはかけ離れた冷めた様子でクロエを見下すと立ち去っていった。
クロエは盛り上がる周囲やイリヤやカーマの発情した姿から逃げるように、スゴスゴと隠れるように体育館の床に体育座りでへたりこむしかできなかった。
そして、体育の授業が進んでいく様子を見つめる。
「……嘘でしょ。サーヴァントのみんなはともかく、なんで普通の生徒に見える子たちまでこんなに速いの……!?」
からん、ころ~ん。
安っぽい鐘の音が鳴り響く中で見ていた体育の授業だが、どの生徒もクロエよりも圧倒的に良いタイムでかけっこを追えていた。
この特別クラスの授業の中で、クロエはダントツの最下位である。
その出生から運動神経には自信があるクロエにとって、信じがたいことだった。
「クロエ、残念だったね……でも、ルールを破った子には、お仕置きが必要だよ。信賞必罰じゃないけれど、君たち子供が物事を覚えるために、嫌なことも経験しなきゃいけないからね」
キャッキャッと黄色い声をあげている爆乳ロリと巨乳ロリたちに囲まれていた先生は、にたりとした笑みを浮かべながらクロエへと近づいてくる。
ニタリとした笑みにねっとりとまとわりつくような言葉に、クロエの全身へと泡立つような不快感が襲いかかる。
「お、お仕置き!? 最下位がそんなのを受けるなんて、き、聞いてない……!」
「うん? ああ、違うよ。先生である僕はね、成績の優劣で子供を差別するような真似はしないよ。クロエを怒らなければいけないのは……最初に僕が言った言葉を無視したからさ」
先ほどまでは少々いやらしい視線を向けつつも、人畜無害という言葉がよく似合う平凡な中年男性だった先生が、ここに来てその毒牙をむき出しにしてきたのだ。
思わず後ずさるクロエを追い詰めるように、じわじわと先生は嘘くさい言葉を口にしながら近づいていく。
「良いかい、僕は『フォーム』を意識して走りなさいと言っただろう? 胸を揺らすような、先生の目を楽しませてくれるドスケベな走り方だ。
なのに、クロエ。君は速く走ることだけを考えた……まあ、結果的には最下位だったけれど、とにかく先生である僕を楽しませようとはしなかった。そんな不良生徒にはね、このN本ではお仕置きが許されているんだよ!」
「ひぅっ……!? か、壁まで……もう、逃げれない……」
先生の声は最初こそ穏やかだったものの、次第に私怨を感じさせる強い憤りに満ちた言葉へと代わっていった。
その迫力に、思わずクロエはその喉から怯えた声が漏れ出す。
さらに後ずさり続けた結果、壁まで下がりきってしまって逃げ場所を失ってしまった。
「あ~あ、クロエさん可哀想~❤ 先生は優しい人だけど……だからこそ、怒った時はとっても怖いですからね~♪」
「あらあら、それは体験談かしら? ここに来たばかりのカーマも、クロエと同じように先生のお手を煩わせたものね」
「……ナーサリー、そういうことはいちいち言わないで良いんですよ!」
そんなクロエへと嘲笑を向けるカーマだが、そんなカーマをナーサリーライムがからかうように声をかけた。
そう、カーマもまたここに来た最初の一瞬は、クロエと同じように先生へと強い拒否反応を示し、それこそ耳を覆いたくなるような罵詈雑言を先生に投げつけたのである。
(それって……わ、わたしも、あんな風になっちゃうかもしれないってこと……?!)
そんな会話が耳に入ってきたからこそ、クロエはゾッとするような恐怖に襲われた。
今のカーマからは、そんな不良生徒のような姿は一切感じられない。
つまり、先生の手によって『躾』を施されてイリヤたちのように先生を崇拝する従順な奴隷生徒になったということなのだ。
それが自分が辿る道なのかもしれないと思えば、クロエが震えるのも仕方のないことだろう。
「……前の世界の、息苦しい上に大人をナメた子供で溢れた学校と、このN本の学校は違うんだ! さあ、クロエ! 覚悟しなさい!」
「ひぃっ……!?」
先生は大きな声でクロエを威嚇した。
クロエやイリヤたち生徒は知るよしもないが、先生はこのN本に『弱者男性』かつ『性欲旺盛な男性』と認識されて、強制転移してくるまでも小学校の教員として務めていた。
しかし、見ての通り冴えない風貌に、気弱なところもある性格からか、十にやっと届いたような子供たちにさえ侮られて、学級崩壊を起こしてしまうような低能教師だったのである。
そんな低能教師はN本に来たことで、自身の授業を妨害せずに真面目に聞いてもらえるような誰からも尊敬される、それこそ彼がかつて憧れた『熱血教師ドラマ』の主人公のような存在────かつ、そのロリ爆乳やロリ巨乳な生徒たちに強い恋慕の念を向けられる、エロ漫画の主人公のような存在へと生まれ変わったのだ。
そして先生は今、かつて『前の世界』で自分をバカにしていたような、見るからに『メスガキ』の性根を感じさせるクロエを前にして、劣等感と嗜虐心を相混ぜにした薄汚い欲望でその全身を満たしていた。
イリヤやジャンヌ、ナーサリーやジャックは実に従順な『優等生』だったが、かつて、クロエと同じように生意気なメスガキのカーマという『劣等生』を『教育』したように、先生は動き出す。
「い、いやっ……!」
異様な雰囲気を放ちながらゆっくりと近づいてくる先生に対して、クロエはその隙をついて大人と子供の体格差を活かし、空いたスペースへと逃げ出そうとする。
だが、そんな行動を先生のことを崇拝している他の生徒が許すはずもない。
クロエにとっては誰よりも大切なイリヤが、クロエを逃さんとばかりに腕を押さえつけたのだ。
「おとなしくしないと、クロっ! 先生のお仕置きは単なる暴力じゃなくて、立派な『教育』なんだから! 怖いからって、逃げちゃ駄目だよ!」
「イ、イリヤ!? 嘘っ、なんて力……!? やめて……は、離してっ!」
クロエを拘束するイリヤの腕力は、普段の生活で見知っていたはずのそれを遥かに上回るほどに力強いものだった。
あるいは、クロエ自身からパワーが失われているのかもしれない。
そんなこともあってか、クロエの抵抗も虚しく先生が眼前に迫る。
先生はクロエの体をガシリと掴むと、そのまま華奢なその体を持ち上げて自身の膝の上にお腹がくっつくような姿勢で寝かせていくではないか。
「あぅっ……❤」
からん、ころ~ん。
安っぽい鐘の音が鳴り響くように、クロエの子宮が反射的にキュンキュンとうねり出す。
大人である先生の両手ですっぽりと掴めそうなほどに細い腰を掴まれたことで、ある種の女性として当然の反応として、思わず強い興奮を抱いてしまったのである。
昂ぶる性感によって、クロエの全身から力が抜けていく。
「よしっ……! 我慢するんだぞ、クロエ!」
「な、なにをして……えっ、手を振りかぶって……ま、まさか……!?」
そんなクロエの様子を感じ取った先生は、もはやニヤついた笑みを隠そうともせずに、大きくその手を振りかぶった。
ここまでくれば、もはや先生が何をしようとしているのか、もはや誰でもわかるだろう。
先生はそのまま、大きく振りかぶった手をハイレグブルマ越しにクロエのお尻へと振り下ろしていったのである。
「そぉぉ、れっ!」
パァァァンッ!
「ふぎゅぅぅぅぅぅぅぅんっぅぅっ❤」
ぷしゃっ❤ ぷしゅ、ぷしゅ、ぷしゃぁぁぁ~~❤
相手の身体のことなど何も考えていないような、SMプレイだとしても『力任せでしかない』と嫌われてしまいそうなほどに豪快なスパンキングだった。
だが、クロエの喉から漏れたのは苦痛の叫びではなく、歓喜の喘ぎだった。
それだけではない。
ハイレグブルマを叩いたそれがまるでなにかのスイッチであったかのように、オマンコから勢いよく潮を吹き出したのである。
クロエは、お尻を叩かれただけで性的に絶頂したのだ。
「にゃ、にゃにっ❤ にゃんにゃの、こりぇぇぇぇ❤ な、なんで……なんで、お尻を叩かれただけなのに、こんなに気持ちいいのぉっ❤」
もちろん、その事態に最も混乱をしているのは当のクロエ本人だった。
お尻を叩かれて覚える感情は屈辱と恥辱であり、伝わる感覚は苦痛でしかないはずなのに、そのどちらも全く浮かばないのだから、当然と言えるだろう。
いや、正確に言えば鋭い痛みも感じてはいる。
感じてはいるが、その直後にそれが消え去るほどの甘美な震えがクロエを襲いかかるのだ。
そんな風に混乱をしているクロエだが、先生は止まることなく続けていく。
「クロエ、君はまだこの学園のルールを理解できていないね! でも、大丈夫だよ……先生がちゃんと、言葉でだけじゃなく、体でも教えてあげるからね!」
「ひっ! や、やめ……んきゅぅぅぅっ❤」
パンッ、パンッ、パシィンッ! パチィィィィンッ!
先生の平手打ちが、一度、二度、三度と幾度となく振り落とされる。
そう、これは単なるお尻たたきではなく、いわゆる『お尻ペンペン』なのだ。
普通ならば卒園をして入学すればされることもなくなる、屈辱的なお仕置きである。
それなのにお尻を叩かれるたびにクロエの心臓が高鳴り、頭はぼうっと蕩けていってしまう。
持ち前の精神力で抵抗しようとしても、それが苦痛ならば耐えられただろう。
だが、人は快感や歓喜に抗うことは苦痛に耐えるよりも難しいのだ。
クロエの抵抗はまるで霧のように溶けていくだけだった。
「……おっ♪ 変化が出てきた……なっ!」
「ほぎょぉぅっ❤ おぉ、おぉおっぉぅ❤」
そして、クロエに訪れた異常は、感情や感覚といった精神面での異常だけではなかった。
先生はクロエの小さな可愛らしい体を膝の上に乗せているからこそ、その変化を鋭敏に感じ取ったのである。
そう、うつ伏せに先生の膝の上に乗せられたクロエの胸部にぷっくらと変化が訪れているのだ。
「ふふふ……クロエ、実にいい反応だよ。君もすぐに立派な……先生好みの生徒になれるよ♪」
「ひぐぅっっ、おぉぉっ❤ な、なんで……胸が、胸が熱いぃ……❤ なんだか、へ、変な感触が……んぎぃぃぃっ❤」
パシンッ、パシィィィンッ!
お尻ペンペンをされながら、さすがにクロエもその肉体の変化に気づいた。
感じれば感じるほどに胸が大きくなるというこの聖桜女学園の、いや、N本のルールがクロエに適応されているのである。
N本において最優先となるものは、言うまでもなくN本人男性の快感と興奮である。
すなわち、この女学園ではN本に染まれば染まるほど、先生好みの『ロリ爆乳』へとその肉体を変貌させていくのだ。
研究生とされている少女たちも、先生のお気に入りとなってより深くN本に染まれば、ロリ巨乳からロリ爆乳に成長するという仕掛けである。
その仕組の一つにはめ込まれたクロエは今や、ロリ爆乳とはいかずとも研究生相当のロリ巨乳へと急成長、いや、急変化してしまったのだ。
「よしっ、最後だ! この痛みと一緒に、この学園のルールを覚えるんだぞ、クロエ!」
「ひっ……ま、待ってっ❤ そんな大きく振りかぶったら、ぜ、絶対強いやつになるじゃないっ❤ 強いほど気持ちいいってわかっちゃったから、そ、そんなの味わったら────おほぉぉぉぉぉっっ❤」
バシィィィィィンッ!
ものすごい甲高い打撃音が、体育館へと響いていく。
そして、同時にクロエはその美少女フェイスを無様なアヘ顔に崩壊させて、普段の可愛らしい声からは想像できないほどの野太い絶叫をあげた。
もちろん、そこに含まれている感情は
「ほ、ほごぉぉ、ぉおぉぉ~~……❤」
ガクリ、と。
先生の膝の上で、幸せそうな顔をしてクロエは倒れ込む。
肉体と精神へ同時に襲いかかったあまりの衝撃に、クロエの意識は簡単に遠のいていった。
────そして、どれぐらいの時間が経ったのだろうか。
「うっ……ぅぅ~ん……」
「おほぉぉおっ❤ おっ、おっ、おひぃぃっ❤ せ、先生❤ 気持ち、気持ちいいですぅ❤ もっともっと、イリヤの外人ロリマンコぉ、犯してくださぁ~い❤」
からん、ころ~ん。
意識を失っていたクロエが、安っぽい鐘の音と合唱をするように響き渡る野太い喘ぎ声によって覚醒していく。
いつの間にかマットの上に寝かされ、毛布をかけられたクロエは体を起こしてその野太い声の方角へと視線を向けた。
すると、そこには。
「イ、イリヤ……先生……❤」
「ふぎゅぅぅ、んひぃぃっ❤ おっきい❤ おっきいN本人様チンポ、好きぃっ❤ わ、わたしっ❤ わたし絶対、卒業しても先生のオマンコお嫁さんに、なるっ❤ご褒美セックスがいっぱいもらえる優等生で卒業して、先生の奴隷妻になるために、頑張るのぉぉっ❤」
体育館の片隅でクロエが寝ているのと同じように柔らかなマットを敷いて、その上でイリヤが先生に『ご褒美』としてマットの上で犯されているのだ。
いや、犯されているという表現は適切ではないだろう。
なにせ、イリヤは冴えない中年男性でしかない先生に押し倒されながら、クロエでさえ見たことがないほどの恍惚とした表情を浮かべているのだから。
まるで天国にいるようなイリヤの幸せそうな姿を見て、クロエの心に奇妙な羨望が芽生える。
(先生は……見た目はあんなに情けないおじさんって感じなのに……全然、かっこよくなんてない……『はず』なのに……なんで、なんで先生を見てるとすごくドキドキしちゃうの……?)
からん、ころ~ん。
強く警戒をしていたはずのクロエの心は、すでにこの安っぽい鐘の音が施す『N本の洗脳』、その波に飲み込まれ始めていた。
クロエはお尻ペンペンというお仕置きをされただけで、先生のことを『子どものために本気で怒ってくれる素晴らしい大人』だと本気で思うようになっているのだ。
それは、この異常な世界の前にクロエ・フォン・アインツベルンという一人の少女が築いてきた人格は脆くも崩れだし、N本人男性に都合の良いドスケベロリとしての人格が再構成され始めている証拠であった────。
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