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スケベスキルで世界最強~やっぱ最強はちんぽっしょ!!~ 番外編2

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 ――――これは夢の話。もし、を体現した絵空事。

 

 ――――最初、おれを引き取ったのがグリッジだったら……。


 トラックにはねられて、なんだかよく分からない神様に頼みごとをされて、異世界に飛ばれるとかいう。なんかもう説明するのも辟易してきた省略安定のコンボを決めて、やってきました異世界。

 こういうのってスタート地点が不条理だったりするものが多い中、人通りが多いところから始まったおれは運がいい方だろう。トラックにはねられて運がいいもないが。

 さらに言葉も通じる上になんか立派な人に保護されてぬくぬくと暖炉で温まれているのも運がいい方だろう。だから死んどいて幸運もくそもないけど。


 それに加えて、保護を買って出た人の性格が終わっているのだから、絶対幸運なんかじゃないんだろうな。


「大丈夫か?」


 月明りだけが部屋を照らす中、大きな熊がおれの頬を冷やしながら心配して聞いてくれた。

 医者を呼ぶとグリッジの機嫌がまた悪くなるだろうからと、エギザクタ家跡取りであるフォグがわざわざ手当てしてくれている。あの親からどうしてこんな良い人が生まれたのかわからないけれど、そのおかげでかなり助かっていた。

 

「うん、平気。ありがとう」

「礼はいい。親父のせいだからな。お前の訓練結果が期待にそぐわなかったからって、何も殴ることないだろうに……」

「本当に人権意識が低すぎるよ。おれのこと人だと思ってないんじゃない?」

「……否定してやれないのが申し訳ない。ただでさえ、お前のスキルがエロ特化だと分かってから、苛立ってるんだ」

「兵器運用とか期待してたみたいだからね。おれとしてはそんなことしなくて済んでよかったけどさ。……まあでもさすがにおれもびっくりだったよ、エロってなんだよって思ったもん。同人誌の中に入ったかと思っちゃった」

「ドウジンシ……ってのはわからんが、確かに驚きはしたな。でも、才能は自分で選べないんだ。それはおれもよーく知ってる。だから気落ちするなよ」


 頬に薬を塗るためにかがんだ巨体の熊から、憐憫の視線が降り注ぐ。泥中の蓮とは言うけれど、フォグの優しさはまさしくそんな感じだ。

 かがんだことで雄とは思えないほど大きなおっぱいが張り詰め、服越しでもその存在感を主張している。この世界の雄はみんな体がでかくて、基準がバグってるよ。


「フォグっていい人だよね……」

「そんなことはねえよ。本当にいい人なら、お前の処遇を改善してる」


 父であるグリッジをフォグはよく思っていない。昔は期待に応えようと頑張ってたらしいけど、今では家督を奪うためにいろいろ画策しているらしい。

 まああの父を持つと、反抗心どころか殺意だって芽生えるよなあ。ここに引き取られてから、スパルタすぎて泣いたことも数えきれない。フォグはその教育を受けてなお、こんないい人なんだから恐れ入るわ。


 おれとしては、早いところフォグが家督を奪い取って、安心できる環境になってほしいものだと切に願っている。


「今日は泣かないのか?」

「まだ平気。一発殴られただけだし」

「……無理するなよ」


 ここに来て最初の日は元の世界に帰りたいとフォグの胸で号泣したこともあって、毎晩この熊は心配して聞いてくれる。そして、泣きたいときは胸を貸してくれる。

 フォグは騎士として鍛えているから平均よりも大きいみたいで、体幹はおれの倍以上もある。熊という種族柄なのか、はたまたこの親子だけの遺伝なのかは知らないが、筋肉で膨らんだ山のような肉体を持っていた。

 そこに安心感を見出してしまうのは我ながら子どもっぽいと思うけれど、死んだ上に異世界に飛ばされたんだからちょっと大目に見てほしい。


 この世界で孤立しているおれにとって、フォグは唯一の心の拠り所だ。

 嫌われたくないと思うし、これ以上情けないところは見せたくないとも思ってる。


 だけど、フォグは唐突におれを抱きしめてきて、背中を撫でてくる。

 不意打ちの安心感は涙腺を緩め、すすりたくもないのに鼻が勝手に鳴きだしてしまった。

 みっちりした肉の感触と柔らかい毛皮に包まれて、おれの肩が震えだす。


「ほら、無理してるじゃねえか」

「フォグが、こんなことしなきゃ……まだ耐えられたし……」

「それを無理って言うんだよ。あの親父の教育がえげつないなんて、おれが一番知ってるんだ。そうやって人は壊れていくんだ……お前も、親父もな」


 この熊は本当に優しい。おれが触るまいとしてることも見抜いて、腕をほどいてくれないんだ。


「抱き返してこねえのか?」

「だって……おれが触ると『愛撫』が……」

「そんなもんに負けるほど柔な鍛え方はしてねえよ。おれは気にしないから、いつでも触っていいぞ」

「うん……」


 おずおずと触れれば一瞬だけ熊の体がこわばったけど、表情に出さないよう努めてくれた。こんなスキルを発動してから、誰もおれに触らなくなった。オンオフできないせいで、この屋敷での孤立を余計に際立たせている。


 今やこの世界でおれに触ってくれるのは、フォグだけだ。


「帰りたい……」


 思わず漏れた声に、熊の目が悲しそうに伏せられる。困らせるだけだと分かっていても、留めることはできなかった。

 涙が流れ、感情が止められない。毛皮を握ってしまい、いくつか抜ける感覚がした。

 だけど熊はおれを離さなかった。


「逃げるか?」


 おれの限界を悟ったのか、熊が問うてくる。


「どこに……」

「お前を引き取ろうとした人がもう一人いるんだ。その人の所なら、こんな目に合うことは絶対にない」

「それってジェイルラルって人? フォグが尊敬する……上司だっけ」

「そう。あの人は騎士の模範だ。敵対していたおれを信じて副隊長にしてくれた人。誰にでも優しく、この国で最も強い人。その人の庇護があれば、お前は安心だ」

「でもそんなことしたら、フォグが……」


 ただでさえ家長である父と険悪なのだ。これ以上問題を起こしたら、何をされるかわからない。あのグリッジのことだ、きっとろくでもないことしかしないに決まってる。


「人の心配してる場合じゃねえだろ。お前も大概お人好しだな。エギザクタ家の跡取りはおれしかいないんだ。いくら親父でも、そうひどいことはしないはずだ」

「おれはフォグがひどい目に合うのは嫌だよ。せっかく仲良くなれたのに……」

「限界のくせに。なら、おれが親父から家督を奪う時には協力してくれ。そのためにもジェル様を味方につけておいてくれよ」

「でも……」


 なおも言いつのろうとしたおれの口を胸部で塞いで、心配するなとばかりに頭を軽く叩いてくれた。お人好しはどっちだと、叫びそうになった。


 フォグが強いことは知っている。おれが望めば本当に逃げられるかもしれない。

 

「フォグと離れるのは寂しいよ」

「大丈夫、ジェル様がいる」


 抱きしめていた手がおれを抱えあげ、視界が揺れる。

 唐突のことに慌てると、フォグはにんまりと笑った。


「逃げるって……今っ?!」

「早い方が良いだろ。おれはこの家の警備にも詳しいから、いつでもできるしな」

「で、でも、そのジェイルラルって人に了承とか……」

「それならもう取っといてある。あの人はいつでもお前を歓迎すると言っていた」


 この熊はもともとおれを逃がすつもりだったんだ。泣いてばかりいるおれを案じて、ちゃんと根回しをしていた。

 それならお言葉に甘えてもいいのだろうか。このまま逃げてしまっても。


 こんな地獄みたいな家に、フォグを置き去りにしても……。


「それは困るな。やはり出来損ないの管理はしっかりせねばならんか」


 割り入った声は冷え切っていて、おれの背筋に寒気を与えるものだ。

 この家の支配者にして、くそ野郎。フォグと似ているのは見た目だけの熊、グリッジがそこにいた。

 並べば親子だとすぐわかるほど盛り上がった体躯はそっくりだというのに、内面がにじみ出る表情はまるで違う。フォグが真面目で優しそうなら、こいつは侮蔑と嘲笑を詰め込んでいる。


 そんなグリッジは傷のついた片目を醜悪に歪ませ、我が物顔で部屋へと足を踏み入れた。いつから話を聞かれているのかわからなかったが、まずい事態になったのは明らかだった。


「くそっ」フォグが父親を憤怒でにらみつけ。「人払いは済ませたはずなのにな。どこかに盗聴の魔道具があるようだ。そこまでするとは思わなかったおれが甘かったか」

「念には念をいれねばならんだろ。異世界人(ギフト)の手綱を握るのは、国のためにも必要なことなのだ」

「親父の場合、自分のためだけだろうが。……こいつをどうするつもりだ?」


 フォグがおれをかばうために後ろに置いて、間に入ってくれる。まだスキルを発現させたばかりで何もできないおれは、ただ守られるだけだった。


「貴様の案に乗ってやろうと思ってな。可愛い息子の作戦だ、俺もやぶさかではない」

「何を言ってやがる……!」

「こいつがジェイルラルの所に行くのは賛成だ。だが、その手綱を完全に手放す気がないということ。どうやってこいつの手綱を握ろうか色々考えていたのだが、ちょうどいい方法があったではないか」

「どういう――――」

 

 グリッジが合図を送ると、フォグから言葉が消えた。

 構えを解いて腕をぶら下げる後ろ姿を見て、おれは激しい不安に駆られる。フォグがどこかに行ってしまったんじゃないか。そんなことを考えずにはいられない。

 呆然としたままの熊の顔は能面のようで、感情一つ見当たらない。たくましい肩に手をのせてゆすっても、フォグからは何の反応も返ってこなかった。


「フォグっ! フォグっ!」

「…………」

「いったいどうしたんだよっ! フォグってば!」

「…………」


 おれを守ってくれたフォグはただ無表情で、その瞳には何も映していない。力なくたたずむさまは幽鬼を思わせ、ぞっと冷たいものが背骨に走った。


「まさか、死んだの……?」

「死んではいない」笑いをかみ殺したクソ野郎の声。「ただ俺の命令にだけ従うようになっただけだ」

「どういうことっ!」

「こいつは俺にたてつきすぎた。エギザクタ家の悲願を無視するどころか、あまつさえ、あのジェイルラルと懇意にしている」


 自分の息子を機械のようにしながらも、その顔に罪悪感はない。こいつは本当に、これが正しいと思っている。


「『疑似人格』、対象に別の人格を植え付けるスキルだ。まだ試作段階だが、お前の手綱を握るにはいいだろ。我が息子はいまや、俺の命令で何でもこなせる。泣けと言われれば泣くだろう。お前を殺すことさえ、たやすいのだ」

「どうして自分の息子にこんなことができるんだ……」

「これもフォッグライが我が家の悲願を達成できるようにするためだ。フォッグライを管理するために仕込んだスキルだったが、まさか思わぬところで役立つとはな」

「ひどい……」


 あの優しいフォグが毛嫌いする理由を再認識する。こいつは骨の髄までくそ野郎だ。


「お前が我が家の悲願を達成するというのなら、こいつを元に戻そう。そうなればもはや不要だからな」

「おれに何をさせるつもりだよ……!」

「案ずるな。お前はただ、フォッグライの提案通りアーミライト家に行けばいい。そして、そのスキルを存分に振るえばよいのだ。あのジェイルラルを色狂いの阿呆に堕としてやれ。最強の地位さえ貶めれば、『疑似人格』と『強制テレポート』を持つ我が息子がその地位につける。そうなれば、ついに! あの忌々しいアーミライト家の陰から抜け出せる!」


 グリッジが興奮してわめいているが、家同士の軋轢なんてまるで興味がない。どうしてそんなものに巻き込まれないといけないんだ。


 今までおれに優しかったフォグの無機質な視線がおれに突き刺さり、殴られた頬よりもずっと痛みを訴えている。涙がたまっていくけれど、フォグはもう、何も言ってくれない。


「……」

 

 さっきはあんなに優しく抱きしめてくれたのに。今は彫刻のように微動だにしなかった。

 ぬくもりはあるのに死んでいるようだ。フォグの感情はすべて、グリッジの手にゆだねられている。


 おれは胸中に渦巻く途方もない絶望感に打ちひしがれて、熊の体を抱きしめた。何の反応も示さないけれど、強く、強く。少しは届いてくれることを信じて。

 フォグはこの世界で唯一、おれを助けてくれた人なんだ。でも、おれのせいで感情を奪われてしまった。遅かれ早かれかもしれない、けど、おれがきっかけなのは間違いなかった。


「さて、そうなればアーミライト家に行く前に、スキルをものにしてもらわなければな。今日手放すのはさすがに尚早だ」

「フォグ……ごめん、おれが来たばっかりに……」

「ふむ、そのスキルを育成するにはやはり実体験が必要だろうな。――フォッグライ」


 軽々と持ち上げられたおれはベッドへと放り投げられる。抵抗する暇もないほど素早い行動に、フォグが日頃どれだけ鍛えているのかがわかった。

 だから上にのしかかられれば、おれにできることはない。ただガラス玉のような瞳に見つめられるまま、涙を反射させるだけ。


「何するんだよ……!」

「フォッグライはお前のことをいたく気にかけていた。お前もそうだろう。だから、そのスキルの育成に一役買ってもらおうと思ってな。なに、手加減は無用だ。どうせ何も感じはしまい。自由にスキルを使ってみろ」

 

 フォグの手がおれを服の下に入ってきて、その意味を理解する。こいつは自分の息子に股を開かせて、おれを育成するつもりなんだ。


「フォグっ! 止めて! おれ、こんなことしたくない! フォグ、フォグっ!」

「…………」

「フォッグライ、終わったらこいつの状況を報告しに来い。どんなスキルか把握しておく必要がある」

「かしこまりました」

「待って! 本当にこんなことするの? お前の息子じゃないか!」

「だからなんだというのだ……ああそうか、努力には褒美が必要か。もしお前がそのふざけたスキル系統を十分に育成できれば、少しの間、フォッグライの人格を戻してやろう。だから励むがいい」


 狂っているとはいえ、さすがのグリッジも息子の情事を見るつもりはないのだろう。満足そうに部屋を出ていったが、おれはそれどころではなかった。


「フォグ……」

「…………」


 てきぱきと作業のように服が脱がされ、おれらは生まれたままの姿をさらしあう。筋肉で太ったたくましい熊は機械的なしぐさで愛撫して、興奮しろと無茶を言う。

 こんな状態でエッチなことなんてできるわけがない。

 だけど、おれが頑張らないとフォグは永遠にこのままなんだ。


 どれだけ泣いても、フォグは抱きしめてくれない。グリッジから言われた通り、淡々と動いているだけ。


 もうこの世界におれを抱きしめてくれる人はいなくなったんだ。それを実感すると、どうしようもなく悲しくなって、どうしようもなく――――怒りが湧いてくる。


 おれはこんな世界に来たくて来たわけじゃない。アーミライト家を倒すとかそんなどうでもいいことのために使われるなんて、真っ平ごめんだ。

 泣いていてもどうにもならないんだと、おれは理解した。泣いてうずくまっていたって、グリッジみたいなクズにいいようにされるだけ。


 だから、自分で立ち上がらないといけないんだ。おれ自身を守るために、フォグを救うために。


「ごめんね、フォグ……」


 この日、おれは初めてをフォグに捧げながら思った。

 こんなくそな世界、もうどうでもいいやと――――


****


 王都の外で、人知れず集まる集団がある。それはいくつかのテントの集まりであり、詳しいものが見れば軍が行う野営であると分かるだろう。彼らは最低限の明かりだけを灯し、誰にも見つからないよう努めていた。


「それで、王宮はどうなっている?」


 ひときわ大きなテントの中で、暗がりの中でも隠し切れないほどの瞬きをまとう金色の龍が、厳かな声音でフードの斥候に問う。


「っは、中はやはり凄惨な有様でした。誰もかれもが、その……」

「構わぬ。申せ」

「セックスに溺れ、まともな人は誰もいないようでした。もはや王宮は機能していないと思われます」

「……そうか」


 短く返事をした龍だが、内心の動揺を押し隠したものだ。どんな時でも王子たれと自分を抑圧しているコハクは、そのまま続けて口を開いた。


「あそこには『神風』をはじめとして二つ名持ちが多く在籍しているはずだ。父上もそうやすやすと負けることはない」

「その通りです。あの忌々しいグリッジも実力だけはあります」

「誰か残っているものはいたか?」

「残念ながら……我らの中にも王宮に張られたスキルの影響を受けたものがおり、数名が色狂いになってしまいました。あそこは足を踏み入れるだけで精神を捻じ曲げられてしまう地獄と化しております。こちらの手の者は回収できたため、存在はばれていないとは思いますが……」

「……つまり、生存者は絶望的だと」

「おそらくは……」


 コハクたちが異変に気付いたのは、少し前のこと。

 支援者であり王都で援助してくれているランドたちからもらった物資が、ザーメンまみれだったのだ。本人たちに問いただしても何が悪いのかわかっていないようで、ありえないことが起こっていると認識させられた。


 そして調べてみれば、異常という言葉では表現できないほど狂った事態が起きているではないか。

 王宮では裸の雄たちが所かまわず盛り、いたるところに白濁をぶちまけている。勃起していない雄など存在せず、誰もがセックスのことしか考えられていない。狂った世界を、日常だと受け入れてしまっていた。

 さらにそんな王宮を誰も不審に思わないのだ。裸の騎士たちがザーメンまみれで巡回していても、家庭に戻った雄が今日あったセックスを食卓での会話にしても、王都の民たちは違和感ひとつ抱いていない。


 城壁の中は今、性に狂った世界となっていた。


「我々はコハク王子より『スキル耐性』を付与されているため異変に気づけますが、それがなければおそらくランド様たちのように……」


 支援者であったランドたちは違和感に呑まれ、訓練と称して勃起ちんぽをぶつけあっていた。太鼓腹の虎であるランドが自らの腹よりちんぽを前に打ち付けるために腰を突き出す様子は、滑稽以外の何物でもない。

 斥候の一人がこっそりと声をかけたのだが、何が狂っているのかもわかっていないようで、勃起ちんぽを見せながら表情一つ変えなかった。


 『竜の爪』は王国でも最高峰の武人が集まる軍だ。そんな彼らでさえ異変に呑まれたということに、この異常の恐ろしさが詰まっている。


「私のスキルをもってしても、若干名の被害者が出た。これは厄介だな……」


 『スキル耐性』自体は基本的なスキルではあるが、コハクのように他者に付与できるのはまれだ。スキル自体へ干渉することを得意とするコハクならではのスキルがあったとしても防げないとなれば、相当レベルが高いことを意味していた。


「だが、完全に防げないわけではない。そうだろう、ランド?」

「いやー、ごもっとも。それにしても、まさかこんなことになってるとは全く思わなかったですね。王子に助けてもらって感謝です」


 フードの集団から一人、大笑いした虎が腹を撫でながら素顔をさらす。

 『竜の爪』所属の騎士にして、第一王子派の家門である虎のランドは、マントの下の裸体からザーメン臭を漂わせている。コハクの名前を出して連れてくることに成功したため、スキルの影響下から逃すことができたのだ。


「王子に治してもらうまで、何が悪いのかもわかってなかったです。なんであんなのを訓練だと思ってたのか、うーん……」

「原因は不明ということか?」

「はっきりとはわかりませんが、原因と思われるものなら……おそらくは」

「申してみろ」

「多分ジェル様が引き取った異世界人なんじゃないかなーと」

「……なるほど、だとすればこんな強力なスキルも説明がつくか」


 異世界人の成長速度は天才と呼ばれる人を凌駕するほどに早い。それはこの世界の常識だ。彼ならば、このような離れ業もやってのけるだろう。


「最近、ジェル様の様子がおかしいってノインとも話してたんです。いつも誰よりも騎士らしくあれと自分を律しているお方なのに、このところ訓練にも上の空なことが多くて、あと……匂いが」

「匂い?」

「最初はあのジェル様がそんなはずないって決めつけてましたけど、今にして思うと、ザーメンの匂いがうっすらしてました」

「その原因が異世界人にあると?」

「おそらく。正直、それ以外にジェル様が負ける未来が見えないっていうのもあります」

「ふむ……」


 ランドがそういうのも無理はない。ジェイルラル=クリン=アーミライトと言えば、『神風』の二つ名を持つ最強だ。その動きを目で追えるものは存在しないと言われており、いくらコハクがスキルの無力化を得意としていても、目標に捕らえることすらできないだろう。


 異世界人の持つ特異なスキルでなければ、そんなジェルが負けるとは思えない。ランドはそう言いたいのだ。


「ちなみに聞くが、ジェルは訓練場にいなかったのだな?」

「っは」控えていた斥候が口を開く。「ジェル様は訓練場にいらっしゃいませんでした。ですので、どうなっているのかは確認できておりません」

「……はあ、敵の傀儡になっていると考えるのが妥当だろうな。ここまで認識を操れて、ジェルを手籠めにしないわけがない」


 異世界人のスキルについてはわからないものの、現状災害クラスの認識改変が行われているのだ。ジェルが無事であると信じたいコハクだが、現実は把握できていた。


「となれば、私が行くしかないか……。私ならこのスキルの影響を受けることはなく、ノインなども救える」

「いけません」


 凛とした声が、コハクの提案を遮った。


 それは黄金の龍の後ろに控える屈強な虎から発せられたもの。ランドとはまるで違う巌のような体つきに、鎧からのぞく橙の毛皮にはいくつもの傷跡が走っている。

 簡素な装備ではあったが、その覇気は隠しきれていない。片目につけた眼帯が威圧感をさらに際立たせ、そばに控えた斥候たちの肩を震わせた。


 ジェルが最強と称される前までその地位にいた男、ウィザロン=テロッドは毅然と主に反対を投げる。


「コハク王子までもがスキルにのまれてしまえば、王家はおしまいです。私一人で十分対処可能ですゆえ、王子はお待ちください」

「国自体がすでに終わりかけているというのに、王家の血に何の意味がある。それに、戦力の逐次投入は愚の骨頂だ。どうせ私かウィザロンが負ければ終わりなのだ」

「いえ、私が負けてもコハク王子さえいらっしゃれば負けではありません」

「……ウィザロン、わかっていて言うのは止めろ。お前が負けたということは、認識を操られるということと同義だ。ジェルとウィザロンを同時に相手できる猛者がこの世界のどこにいる。例え私が逃げたところで、どうにかなる問題ではない」


 スキル自体から身を護ることを得意とするコハクと、あらゆる状況に対応できる前最強ウィザロン。この二人の内、どちらが欠けても敗北だと龍は言う。

 大抵の問題ならウィザロン一人でどうにかできるとコハクも理解している。だが、ジェルが敵にいるというのなら話は変わる。最悪、ウィザロンが負ける可能性すら考慮に入れなければならない。


「それに、攻めるなら今が最も好機であろう。王宮は機能不全を起こし、おそらく異世界人一人が管理している。そいつさえ押さえてしまえば、この国は私のものだ。……お前たちはそういう展開を期待していたのであろう?」


 後半に若干の皮肉を混ぜたのだが、忠誠心の塊であるウィザロンは気づかない。ただ、ランドだけが悲しそうに目を伏せるだけ。

 だがコハクの言い分は正しいと、ランドは慎重に言葉を選びながら口を開く。大らかな主とは違い、ウィザロンは上下関係にめっぽう厳しいのだ。


「恐れながら、コハク王子の発言に従うべきだと思います。あの異世界人のスキルはただの認識操作ではありません」

「……ほう、どういうことだ?」

「実際に見てもらったほうが早いかと……」


 膝をついていたランドから光る糸が伸びていく。それはウィザロンの前に来ると、そっと触れた。

 『土神』と称されるほどの腕前を持つ虎相手には頼りない糸ではあるのだが、何かを感じ取ったウィザロンの顔色が迫真へと変わる。


「これは……! 私の力が吸い取られていく……!」

「おれの新しいスキル『吸精』です。こうやって他人から魔力を奪って、また他者に与えることもできます」

「いつのまにこんなスキルを得たのだ?」

「わかりません。コハク王子がおれを救ってくれた時に気づきました。見たこともないスキルを持ってるなって、感覚として理解したんです」


 スキルが増えるということはできることが増えるということだ。騎士としてスキルの基礎は一通り学んでいるランドはそれを無意識に感じ取っており、気づくことができた。


「今は自主的に使い始めたばかりなので実戦でどのくらいできるかはわかりませんが、おそらく、他の隊員も似たようなスキル……もしくは全く新しいスキルを持っている可能性があります」

「信じられん……こんなにも簡単に他者にユニークスキルを付与するとは」


 ユニークスキルは極めさえすれば二つ名付きにも並べるほどレアであり、才能とも言われている。それが認識を操られているだけで生まれるなど、あっていいことではない。


「つまり、あのジェルがもっと強くなっているかもしれないということか……これはなかなかに絶望的だな……」

「どういたしましょう、王子」

「なおのこと私が出るしかないだろう。ジェルを救うことができれば、そのままこちらの戦力になるのだからな。むしろ、今の王宮の参事が他国に漏れることの方を憂うべきだ。ジェルやその異世界人をかすめ取られることがあれば、王宮を取り戻したとてすぐに侵略されて終わる」


 誰かが異世界人に接触する前に、自分らで片を付ける必要がある。コハクはそう結論付けた。


「もしかしなくとも、王子はその異世界人すら手に治めるおつもりですか?」

「それ以外にどうしろというのだ。やむをえん場合は殺すのも致し方ないが、こんな大規模な認識改変が一瞬で解かれてみろ、王都中が阿鼻叫喚だぞ。その隙を隣国が逃してくれるとは思えん」


 できることなら殺すのではなく和解したい。それは王子としての意見だけでなく、コハク自身の意志も多分に含んでいた。


「……うまくいけば、こんな地位から解放されるかもしれんな」


 そのほの暗い希望を込めたつぶやきは誰にも聞かれなかったが、沈鬱な表情を見たランドが元気づけようと声を張り上げる。


「ジェル様が言ってましたけど、その異世界人は最初グリッジのところにいて、そこでひどい扱いを受けてたらしいです。今回の騒動もそこに原因があると思いますよ。思えば、その頃からフォグを見なくなりました……」

「フォグというと、エギザクタ家の跡取りか?」

「はい。異世界人がジェル様のところに来る少し前くらいから休職してて、多分家のことだろうなってみんなで話してました。フォグはあのグリッジの息子とは思えないほど真面目で、ジェル様のことが大好きなので、それくらいしか考えられないです」

「なるほどな……」


 異世界人が今回の原因であれば、そのルーツをたどるのも悪くない。黄金の龍は交渉材料として使えると判断して、真っ赤な体毛が伸びる尻尾をくねらせた。


「ランドが特異なスキルを得たことから、時間との勝負となった可能性が高い。ジェル以外にも他の二つ名持ちがこれ以上強くなれば、数でウィザロンが押されるだろう。そうなれば勝ちの目は絶望的だ」


 コハクの意見に誰も異を唱えないのは、それが正しいから。手が付けられなくなる前に、対処する必要がある。


「だが、今のままでもジェルが向こうにいる以上、正面衝突は愚かな選択だ。ランド、お前は確か『茜差す栄光』のファンダルと親しかったと記憶している」

「はい、ファンダルとはよき友人ですよー」

「ならば個人的に呼び出すこともできるはずだ。そこで私がスキルを解除する」

「なるほど、徐々に仲間を増やしていく作戦ですね。ですが、ファンダルは……」

「グリッジの手先だと言いたいのだろ。だが今は非常事態、そんなことに構っている場合ではない。それに、ファンダルは国の危機に立場にこだわるようなやつか?」

「違います! ファンダルはジェル様と並んで王国の良心と言われるくらい良い奴です。きっとコハク王子のお力になってくれますよ。それに、同僚の『騎士道走行』グランドはそもそも実家が第一王子派のはず。そこから仲間を増やしていきましょう」

「なら決まりだ。時間をかけすぎるのはよくないが、かといってこのまま無策で突っ込むのは最も愚かだ。情報収集と併用して、仲間を増やしていこう。……ウィザロン」


 今後の方針をまとめた後、主は騎士を呼ぶ。


「っは、何なりとお申し付けください」

「お前の『聖域』で王都中を覆うのにどれほどかかる?」

「……三日もあれば」

「なら五日だな。お前はすぐ過労死寸前を攻めるのだから。そのあと戦闘があることを忘れるなよ。その日をめどに、攻め込むとしよう。ランドはできるだけ早くファンダルとの約束を取り付けてくれ。ここからは時間との戦いになる。各々、決してばれないよう細心の注意を払え」

「かしこまりましたー!」

 

 絶望的状況とはいえ、天幕の中の士気は高い。それはひとえにコハクという龍に対する信頼を表している。本人が全く望んでいない立場とはいえ、能力の高さは疑いようがないのだ。

 いったい王宮で何が起こっているのか。コハクたちにはまるで分らず、ただ外から得られる最低限の情報だけで対策を立てるしかない。


 果たしてジェルや他の二つ名持ちは無事なのか、それすらもわからないまま、彼らは突き進んでいく。


****


 あーあ、とおれはもう何度目になるのかわからないため息を吐く。

 どこを間違えてこんなところに来てしまったのか、鬱屈だけが胸中を支配していた。


 グリッジの策で飛ばされたとはいえ、ジェルは優しかった。フォグの休職は絶対おれとの関係性を疑うはずなのに、追及してこない。おれが話すまで待ってくれるつもりなんだろう。

 フォグの言っていた意味がよく分かる。確かにこの人ほど騎士にふさわしい人はいない。高潔を体現したような人格者で、少し抜けているけど優しい人。ただ、己が本分を真っ当しようとしているだけなのに、グリッジのようなクズに妬まれている。

 そんなかわいそうな話があっていいはずないだろう。


 それでもおれはフォグを人質に取られている以上、やるしかないのだ。

 スキルはだいぶ成長して、使い方も把握した。隙さえつければ、後は簡単だった。


「……これでいいでしょ」

「はっはっはっ❤❤❤」


 王宮の一室にグリッジを呼び出したおれは、見る影もなく落ちぶれたジェルを差し出した。


 鍛えあげた狼の体は太いくせにしなやかで、特に足の発達が目覚ましい。ばねでも仕込んでるのかと思うほど膨らんだ腿を筆頭に、蹴りだけでもおれの内臓が爆散するだろうと確信させるだけのたくましさがある。


 だけど今はその頼もしさをすべて裏切るほど緩んだ顔をしている。熱っぽい目には媚びしかなくて、ジェルの頭にはセックスのことしかない。ちんぽを恵んでもらえるかどうか。それだけが判断基準になっている。


 全裸でおすわりをしたままのジェルを前に、グリッジの浮かべる醜悪な笑顔が気に障る。なんでこんな奴のために、ジェルやフォグのようないい人が犠牲にならないといけないのか。


『……そうか、私はお前に信頼される努力が足りなかったのだな』


 スキルで動きを封じられたジェルの悲痛な声が、今でも頭に残っている。おれが篭絡しようとした時ですら、おれを案じてくれていた。

 この人は最後の最後まで、父になろうとしてくれていたのに。


 おれがフォグのことを打ち明けて助けを求めていれば。

 最初からこの人の所に引き取られていれば。

 きっと何かが変わっただろう。


 それでも、現実は揺るがない。ただ性に狂ったジェルが物欲しそうな目でおれらを見上げるだけ。


「あーっはっはっはっ! いいざまだなジェイルラル! 貴様にお似合いの末路だ!」


 不愉快な声が耳朶を揺らす。お似合いなわけがないだろうが。


「約束だ。フォグを戻して」

「……だが、演技という可能性もある」


 グリッジが指示を出し、部屋に入ってきたのは幾人もの雄。彼らはジェルを取り囲むと、無造作に一物をさらけ出した。


「んおおぉっ❤❤❤」


 狼の顔が阿呆にとろけ、垂れ下がった舌から唾液が糸を引く。ちんぽとおれと見比べて、早くほしいと視線が雄弁だ。


 何がしたいのかは明白だったので、おれはため息交じりに顔をそむけた。納得するまで好きにしたらいい。どうせジェルは何をしても喜ぶんだから。


「ち、ちんぽ❤❤おほぉ❤ちんぽがこんなにたくさん❤❤我が主よ、こんなにいただいてしまってもいいのだろうか❤❤」

「いいよ。たくさん気持ちよくなって」

「わおん❤❤」


 躾の結果、ジェルは色狂いの忠犬になってしまった。自身の勃起からはしたない蜜を垂らし続ける様を見て、グリッジは笑いをかみ殺しながら指示を出す。


「やれ」


 一本が狼の口に突き刺さり、気道をふさぐ。傍若無人なイラマだけど、ジェルにとってはご褒美と変わりない。すぐさま汚い音をたててしゃぶり、根元に溜まった臭気を堪能し始める。

 そもそもが最強の風使いだ。呼吸を封じたところで窒息なんてするわけがない。しかもおれが調教したことで、喉奥のえずきにも大分慣れている。どんなオナホよりいい口マンコになっていると、おれは保証できるよ。


「むふぅー❤❤むふっ❤❤ジュッポジュポジュポォ❤❤ジュルルルル~❤❤❤」

「すげえ食いつき❤ちんぽ溶けちまいそうだ❤❤」


 グリッジの手下だけあって、品性がないのは共通しているようだ。まあ、手荒に犯してくれそうなやつらを集めたんだろうけど、しょせん似た者同士ってこと。


 狼は自発的に顔を前後に動かして、ちんぽから蜜をすするのに必死だ。鼻水やよだれで顔中ぐちょぐちょになりながらも、決して離すまいと刺激し続けている。


「んむうぅ~~❤❤❤❤」

「うまそうにしゃぶるじゃねえか!❤騎士様とは思えない舌使いだな❤❤❤」

「おいしい、ジェル?」

『美味しいです我が主❤❤❤雄臭くて頭が溶けそうになります❤❤こんな素敵ちんぽを恵んでくださってありがとうございます❤❤❤』

「は? なんでこいつの声がするんだよ」


 風使いだからね。振動でしゃべるなんて朝飯前だよ。だからジェルは口を封じられてても、こうして意思疎通が可能なんだ。もっとも、フェラ中にしか役に立たないスキルだけどさ。


「ブジュルジュル❤❤ズゾォォ❤❤んぐんぐっ❤んっふうぅ❤❤❤」

『美味しい❤美味しい❤❤❤ちんぽちんぽちんぽちんぽ❤❤❤あーたまらんんん~~❤❤❤ちんぽ臭で脳みそが壊れて❤私の役立たずクリちんぽからおもらしが止まらん❤❤❤』


 おしゃぶり音と淫語を同時に響かせながら、ちんぽを恵んでくれたことへの感謝をささげ続ける『神風』。誰かもしれない雄のちんぽをうまそうにフェラしながら、自身も腰をへこへこと揺らしていた。


 おれに壊されるまでは精悍で優しい顔をしていたジェル。今は唾液と先走りを鼻づらに塗りたくって、鼻提灯を心臓のように鼓動させるド淫乱だ。


「ジェル、待て」

「わふん❤❤」


 おれが指示するとジェルは口を開けてフェラを中断する。どれだけちんぽに狂っていても、ちゃんと命令は聞くようにしてあるから。


「はっはっはっはっ❤❤❤」


 舌にちんぽを乗せたまま荒い呼吸で興奮をごまかしているようだけど、尻尾と尻の揺れが激しくなっている。足元には淫液の水たまりができていて、先走りとマン汁が混ざった結果なんだろう。


「あー❤あー❤」

『我が主よ❤ちんぽをお恵みください❤❤喉マンにザーメンをぶちまけられたくて我慢できません❤❤んお゛っ❤ちんぽ臭すんごおぉ❤❤❤』

「しゃぶりたい?」

『はい❤❤どうかこのいやらしいおマンコ犬にご奉仕の許可をください❤❤私の口マンコでこのちんぽをきっと満足させてみせます❤❤我が主よ、どうか私にちんぽしゃぶりの許可をおおぉ❤❤❤❤』


 口を開けたまま唾液を滂沱と垂らし、必死に懇願している。部屋にいる全員に聞かれても構うことなく、空気を揺らしていた。

 ちんぽの根元の毛が不自然に揺れていることから、風を使って匂いを鼻に送っているのだろう。おれとは違う雄の性を嗅ぎながら、ジェルの眼球がけいれんする。


「んおっ❤お゛っ❤おおぉおぉ~~~~❤❤❤❤」

『ちんぽ~~❤❤ちんぽがたくさん❤❤我が主❤❤私は彼らをこんなに興奮させているのです❤❤どこもかしこも勃起ちんぽ臭が❤おっほぉ❤私を犯したいとちんぽビンビンにしております❤❤どうか❤私に処理させてください❤❤❤』


 違ったわ。こいつ、部屋中の雄の股間から匂いを集めてる。『神風』としてのスキルを性癖のために使ってるんだ。


 さすがにここまでやれば演技などとは到底思えないだろう。グリッジを見てみれば、底意地の悪い笑顔を浮かべている。


「どう、これでもまだ演技だと思う?」

「確かにここまで乱れるジェイルラルが見れるなど、想定外ではあった。……だが、万が一ということもある」


 このクズ、楽しんでるな。ジェルにフェラさせている雄に指示を飛ばすと、舌上に乗ったちんぽが動き出す。

 

「お、おおぉおぉ❤❤❤ふぐ❤んおぉ❤❤❤」


 待てをされたままのジェルは口を閉じれないから、ただちんぽをこすりつけられ続けるだけ。股間の毛と鼻水で橋をかけながら、震える口が閉じないように耐えていた。


「あー❤あー❤あー!❤❤❤」

『我が主❤おちんぽ❤フェラさせてぐだざいいぃ❤❤❤ザーメン全部飲みます❤ちんカスも掃除します❤❤ですのでどうか❤どうか私にちんぽをしゃぶらせてください❤❤❤』


 振動による声だけじゃなく、しゃべれもしない阿呆のような呻きも合わせてする懇願は迫真に満ちている。だからこそ、それは一層無様だ。


 恥骨を鼻面に当たるくらい奥へと差し込んだまま雄が止まると、ジェルの耳がぴんと立ち上がる。下あごにぺちぺちと金玉がぶつかって、そこに滴る唾液が淫液の水たまりへと零れていった。


「ふへえぇ❤❤あるじぃ❤あるじぃ❤❤❤」


 まなじりを下げて媚びを売るジェルのなんと情けない顔。おれのせいだから、申し訳なさが出てくる。


「ジェル」


 まあそろそろいいだろう。このままだと興覚めだ。こんな悪趣味な見世物、とっとと終わらせよう。


「ちんちん」

「あおん❤❤」


 おれの命令ひとつで、あれだけしゃぶりたがっていたちんぽからあっさりと離れたジェルは、ごろんと横たわって腹をさらす。股間では童貞ちんぽがしっかりと勃起していて、あまつさえ、見せつけるように突き上げていた。


 あれだけみっともない真似をしながらも興奮しているのだという証が、血管を浮かべて硬くなっている。この狼は紛れもなく雌の快楽を望んでいた。


 ここまでセッティングしたら、さすがに周りの雄たちも動き出してきた。

 フェラさせていた雄は腰を下ろし、金玉袋を狼のまぶたに垂らす。汚いアイマスクに視界をふさがれたところで、『神風』にとっては何の意味もない。空気の振動で大体把握できるし。


「お゛おおぉん❤❤❤」

「ほら、しごいてくれよ『神風』さま❤お前の大好きなちんぽだぞ❤❤」

「わかった❤任せてくれ❤❤」


 頭上にそびえるちんぽへと両手を伸ばし、丁寧にしごいていく。手を持ち上げたせいでおっぱいが引っ張られ、体の分厚さがわかりやすくなっていた。

 汗ばんだ毛皮から『フェロモン』が出ているので他の雄たちもつられて、我先にと狼へと群がってくる。


「手を独り占めしやがって❤腋マンコ使わせろ❤」

「でっけえおっぱいだな❤制服の下にこんな卑猥なもん仕込んでたのかよ❤❤」

「おひへええぇえぇ❤❤❤」


 一人が腋にちんぽをこすりつけ、もう一人がおっぱいをしゃぶりだす。しかもご丁寧に乳首もつねり始めているのだから、ジェルの感じる快楽は相当だろう。

 乳首はおれがすでに調教済みだから、しっかりでかいし感度も高い。胸筋がでかいせいで目立たないけれど、近づけばすぐにわかるはず。ジェルの胸についているのは肥大化雌乳首だ。


「乳首、きもぢいぃ❤❤もっど、すっでくれええぇ❤❤」

「まじしゃぶりがいあって最高だな❤ちょっと噛んでもよがりやがって❤こっちはデコピンでもしてやるよ❤❤おらっ❤おらっ❤❤❤」

「お゛っ❤❤❤❤デコピンきくううぅぅぅ❤❤❤❤」


 手荒くはじかれるだけで狼の巨躯が震え、背筋が反り返る。身体強化系のスキルもちゃんと高レベルだから傷を負うことはないのだけど、快楽には勝てないようになってしまった。

 

 腋をこすって悦に浸っているちんぽはさっきのフェラシーンからずっと興奮していたのか、すでにくぼみを先走りでべたべたに汚している。人ってそんなところに興奮するんだ、とはちょっと思ったけど、まあ楽しそうだしいいか。


 これで上半身は全部予約済みになってしまった。

 そして当然、残りにも雄たちが群がっていく。


「あーあ、おもらししすぎだろこのちんぽ❤❤すんげえ匂いしやがって❤❤」


 狼ちんぽに顔を近づけた雄が、うっとりと鼻を鳴らしてつぶやいた。フェラでもするのかと思ったけどそうではなくて、眼前で汁を噴きだす様を眺めるだけで満足しているみたい。

 それでも手は金玉を握って転がし、もっと出せと発破をかけている。片手からこぼれるほどでかい玉を握られれば、いくら強化スキルがあっても雄なら怖い。だけど、ジェルは嬉しそうにちんぽを揺らすだけだった。


 凌辱にしては優しいのは、まあ、ジェルに発現した新しいスキルのせいだろうな。そこまで教えてやる義理はないから言わないけど。


 ジェルの新しいスキル『フェロモン』は文字通り対象を誘惑するスキルだ。自身が操る風と抜群に相性が良いこれのせいで、どんな雄からもジェルはちんぽをもらえるようになっている。

 おれは無効化系を一切持っていないので、絶対におれには使うなとは念押ししてある。けど、他は好きにしろとも言っているから、こいつらはジェルを犯したくてしょうがなくなっているはずだ。


 実のところ、この場はグリッジが支配しているように見えて、おれらが掌握しているんだ。

 その証拠に、あれだけ呵々大笑としていたグリッジも、今はおとなしくジェルの痴態を食い入るように見つめているのだから。


「ふん、どうやら演技ではなさそうだな。どけ、俺に使わせろ」


 手下を押しのける熊は興奮を隠しきれていなくて滑稽だ。もどかしいと言わんばかりに服を脱ぎ去って、先走りに濡れた一物を露わにしている。

 その体は二つ名持ちの名に恥じぬ程度には鍛えられており、脂肪と筋肉のミルフィーユによってむっちむちに仕上がっている。腕はごつごつしてるのに、腹と胸が張ってるところはフォグとそっくりだ。

 

 大将であるグリッジは我が物顔でジェルの足を割り開き、その肛門を白日にさらす。躾の過程でかなり使い込んだアナルはぷっくりと膨らんで、肉の持つグロテスクさを淫靡な光沢へと昇華させている。そこはもう性器でしかなくて、呼吸するように蠢いては塞ぐものを求めて愛液をこぼし続けていた。


「演技ではこんな下品な穴になるわけがないか。どれだけのちんぽを咥えこんだのだ? なあ、ジェイルラル?」

「お、覚えていないが❤たくさん❤使ってもらったああぁ❤❤最近は朝も晩もちんぽがいっぱいで❤おぉん❤私のおマンコが幸せなんだぁあぁ❤❤❤」

「そうかそうか、無様よなぁ。俺のちんぽが欲しいか?」

「ああ、欲しい❤❤❤頼む❤❤入れてくれ❤私のはしたない雌犬おマンコは❤ちんぽが無くて寂しがっているんだ❤❤早くおマンコ❤おマンコしてくれえぇえぇぇぇ❤❤❤」


 金玉袋でアイマスクをされたまま、ジェルは舌と共に懇願を垂らす。目が見えないのは幸いなんだろうな。きっととろけ切った情けない顔になってるはずだから。

 狼はちょんまげのように置かれたちんぽをしこしこしながら、マンコをひくつかせて雄を誘う。腰が揺れるせいでちんぽから垂れる糸が回り、きらきらと輝いてはちぎれて落ちていく。


 浅ましく無様な行為に踊るちんぽだけど、童貞を守り続けたそこは桃色で綺麗だ。いや、ちんぽだけじゃなくて、この人は見た目すべてが綺麗なんだ。

 ジェルの体はフォグとは違ってすらりとした印象を受ける。実際はこんなにも筋肉の塊なのに、きゅっとした腰だっておれの腕がまわるかどうかなのに。シルエットが優美すぎだからこそ、そんな印象を与えるんだ。


 だから、顔さえ見えなければ、この狼は美しいまま犯してもらえる。


「お゛ほっ❤ちんぽ当たってるっ❤❤このまま頼む❤奥に入れてくれえっ❤❤早くちんぽもらえないと❤❤うずきすぎでっ❤頭っ❤おがしくな゛る゛❤❤❤」


 ジェルの最奥はおれのスキルで常にうずいた発情状態になっている。何も入っていない時間が長くなってきたから、かなりつらいはずだ。おかげでこの狼は寝る時でさえディルドが必要になってしまった。

 そうでもしないと、ジェルが強すぎて落ちなかったんだ。どれだけ貶めようとしても、この狼は折れなかったから。


「おおおぉ、おがじで❤おがしてくれええぇ❤❤もうちんぽないと、おマンコがうずきだじできた❤❤お願いします❤❤おねがいじまずうぅ❤❤」


 薬物中毒者の禁断症状と似たようなものだ。ジェルのマンコが空っぽの状態が続けば、どんどんなりふり構わなくなってしまう。


 目が見えないおかげで若干中和されているが、かなり狂った顔になってると思う。金玉袋の隙間から、涙がこぼれているのが見えた。

 ディルドがなければ日常生活もできないほど壊れてしまった狼。それが今のジェルだった。


「おい、これでは使い物にならんだろうが」

「おれはジェルを色狂いに堕とせとは言われたけど、兵にするとは聞いてないからね」

「まあいい。肉便器くらいには使えるだろ。……入れるぞ」


 もはや『フェロモン』によって取り繕うこともできなくなったのか、グリッジは苦言もそこそこにちんぽを柔肉へと突き立てていく。

 マンコは当然のように飲みこんで、慣らす時間など惜しいとばかりに浅ましく汁をこぼして潤滑にする。雄のための器官と化したおかげで、グリッジのような無作法なちんぽですら快感を得られるようになっていた。


「お゛っ❤んおおおぉおぉぉぉ❤❤❤❤ちんぽきたぁ❤あぁ、あ、ありがとうございます!❤❤❤ありがとうございます!❤❤❤❤」

「くぅ、いい肉壺じゃないか❤妻よりもずっといい❤まさかあの『神風』が肉便器の才能まであったはな❤❤」

「ああ、そうだ❤私は肉便器❤ちんぽがなければ生きられない、哀れな淫乱狼だ❤❤だからもっと使ってくれ❤私のおマンコで性欲処理をさせてくれ❤❤❤」


 ぶっといちんぽを入れられて、ジェルは少し冷静になっているようだ。この調子だとうずきのスキルはまだ解除できないなあ。普通ならもう廃人になってるはずなのに、さすがすぎる。


 熊の一物は太く、マンコをみっちり埋めているのだろう、狼の鼻が小刻みに動いて喜んでいるのがわかる。鼻水もよだれも駄々洩れで哀れな口だが、笑みだけはしっかりと固定されていた。


「なら、たっぷりと使ってやろう❤喜べジェイルラル❤❤❤」

「――――お゛っっほおぉ❤❤ちんぽぐるううぅうぅぅ❤❤❤❤ふはっ❤たまらん❤おマンコの奥が喜んでいぐうぅ❤❤❤」

「お前らも、何をぼさっとしている❤早くこの狼を食い散らかせ❤」


 グリッジの指示は凌辱を加速させ、ジェルからあられもない咆哮を引きずりだす。

 乳首を弄っていた口や指は速度を上げ、金玉を握っていた手は強くなる。


「ほひいぃ❤❤んお゛んっ❤お゛っお゛っお゛っおおおおぉぉぉ~~~~❤❤❤❤きもぢいいぃいぃぃいぃ❤❤❤❤乳首いいぃ❤んおおぉ❤もっといじっでぐれえぇ❤❤❤」


 引き延ばされた乳首は毛皮を飛び出して、使い込んだ大きさを周囲に知らしめていた。小指の先ほどはある大きさは完全な性感帯なので、少し痛い程度なら快楽しか感じない。爪を立てられたところで、ちんぽが嬉しそうに泣くだけだった。

 しゃぶられている方は唾液が外まで染みこんでおり、毛皮のへたりが広がっていた。もうふやけてるくらい吸われているから、片方だけ肥大化が進みそうだ。雄も一生懸命だから、母乳でも出てるんじゃないかと錯覚する。


「き、金玉ぁ❤いたきもぢいぃ❤そんなところをぉっほぉ❤強く握られると❤おマンコがきゅんとなってしまう❤んおおぉおぉ❤私の玉が❤ごろごろじでええっへええぇ~~❤❤❤❤」


 金玉はいつの間にか両手でいじられていた。片方ずつ玉を握られて引き延ばされたり、掌をこすり合わせる動作でもみくちゃにされたりと、雄の弱点がいいように弄ばれている。

 いくらスキルによって強化できるとはいえ、本能的な恐怖は変わらない。生殖のための器官に関する快楽は、スリルと隣り合わせだ。


 根元に顔を置いて見上げている雄だけど、さっきから舌なめずりが多い。どうにもしゃぶりたいらしいのだけど、グリッジが視線で抑えている。

 どうやら雄としての刺激以外でいかせたいらしい。


「んっへえぇ❤ちんぽ太いぃ……❤おかげで、んふぅ❤おマンコが満杯だ❤私のスケベマンコが、もーっと広がってしまうなぁ❤❤❤おぉおっん❤……お゛っ!❤❤奥までぐるっ❤❤❤たまらんっ❤❤」


 だが、ジェルを一番喜ばせるのはやっぱりおマンコだ。


 『フェロモン』を浴びたグリッジの腰使いは野獣もかくやって感じで、荒々しく肉を打ち付けている。スパンキングよりも重い音がジェルのデカ尻から鳴り、そのたびに鼻息と嬌声が打ちあがっていた。

 おれとは体格が全く違うのだ。いくらスケベスキルでごまかしても、この雄々しさは出せない。まるで重戦車が蹂躙していくようだ。


 圧倒的な雄の一撃がマンコを揺らせば、狼の背中が限界までのけぞる。それはちんぽを突き出すような恰好で、より高く雌汁を誇示するだけのアピールでしかない。

 泣きわめく肉槍は尻を犯されて気持ちよくなる雌狼なのだと、雄に媚びるためのお飾りだ。


「つよっ❤❤❤おマンコにきくうぅ❤奥にぃ、強い一撃が……っほおおぉおぉぉ❤❤❤ぎぼぢいいぃいぃ❤❤❤」

「ぐおおぉ❤締まりが、よいではないか❤俺の子を孕ませてやってもよいぞ❤❤貴様との子はさぞかし強いだろうな❤❤貴様が我が家に嫁入りすれば、アーミライト家は終わりだ❤❤❤」


 ずんぐりとした山のような肉体で、フォグに似た顔で、そんな下卑たこと言わないでほしい。


「でも、フォグがあの性格なのに、なんで第二子を作らなかったの?」

「……フォッグライを産むときに、妻が体を壊してな。いい女だった。政略結婚だけの俺にはもったいないくらいのな。だから俺はあいつをっ❤何としてでも❤エギザクタ家にふさわしい男にする❤❤」


 奥さんがいないのは知ってたけど、思ったより愛してたんだな。そのせいで余計にねじくれた感じがするけど。やっぱりエギザクタ家の教育って悪だよ。もっと愛情表現して。不器用か。


 おれがしれっとかけた『操作』にもちょっと抗ったしね。なんで息子のことも愛してるのに、あんなことができるのかな。奥さんが生きてたら、ここまでひねくれなかったのかもね。

 まあどうでもいいけど。こいつがフォグにしたことは絶対許せないし。


 当のグリッジは発情によっておれのスキルにも気づいていない様子で、一心不乱に腰を打ち付けている。鍛えた体も肉体強化のスキルも、今はすべてセックスにしか使われていない。


「ははっ❤あまりに貪欲すぎるぞジェイルラル❤❤そんなに俺のちんぽがお気に召したのか❤❤」

「うっほぉん❤ああっ❤このちんぽっ、でかくて硬いのが❤たまらん❤❤❤それに、んおおぉおぉ❤腰使いも、はっはっはっ、激しくて❤おぐにひびぐうぅううぅ❤❤❤❤」


 どれだけ手荒に扱ってもジェルが壊れないなんて、みんな理解している。なにせあの『神風』なのだから。

 そのせいでグリッジの腰使いはまさしく削岩のようで、ただただ自分が気持ちよくなるためだけに抽挿を続けている。おかげで結合部では粘液のはじける音がすさまじく、汚さをこれでもかと主張していた。


 マンコをかき混ぜるのではなく叩きつぶすかのような、そんな、汚くも荒々しい音。

 おれがやっても、こんな音は出ない。打倒ジェルのためだけに鍛え続けた結果が、ちんぽに宿っていた。


「ほひゅぅ❤❤」だから、ジェルの口から空気の抜ける情けない声が漏れる。「んぐおっほおぉおぉ~~❤❤❤でかちんぽぎぼぢぃ❤いぐいぐいぐううううぅ❤❤もっどおマンコしてくれええぇ❤❤❤」


 ぷしゅぷしゅとジェルのちんぽは絶え間なく何かを吹き出している。

 それは先走りなのか潮なのかも判断つかないくらい雑多なもので、尿かもしれない。もはや馬鹿になったちんぽを見せびらかしつつ、ジェイルラルという雄が壊れている様子を周囲へと見せつけていく。


 しかもグリッジの膨らんだ腹がちんぽを殴りつけるものだから、二人のへそを往復運動して汁をまき散らしている。パンチングマシーンみたいな扱いをされても、狼ちんぽは勃起したまま。この程度の痛みは、快楽の前には無力だ。


「締めろ締めろっ!❤❤オナホのくせに奉仕精神が足りんのではないかぁ!❤抜いてやってもいいんだぞ、ジェイルラル❤❤」

「ひ、うおぉおぉ❤駄目だ❤それだけはぁ❤❤ちんぽがないと、私のおマンコが狂ってしまうっ❤❤❤鍛えたケツマンで❤しっかり締めようっ❤んおっほぉっほおぉぉ❤❤❤おマンコごんごんしゅんごおおぉおぉ❤❤❤」


 だから、おマンコのことしかジェルはしゃべらない。

 いかに自分のちんぽが雄として終わっている扱いをされようが、金玉の圧が雄として終わらせようとしてきても。マンコさえ気持ち良ければそれでいいのだ。


「マンコばっかりじゃなくて、こっちも気持ちよくしろよ雌犬!❤どかしちまうぞっ!❤❤」


 金玉アイマスクをしながらしごかれている雄が屈伸しながら発破をかける。ぺちんぺちんと袋が狼の顔を打つと、舌が限界まで上へと昇る。舐めようという魂胆なのだろうが、届かず震える様はいっそ哀れだった。


「ああ、すまない❤❤❤おマンコが、きぼちよすぎでぇ❤力が入らなかったっ❤❤今すぐ、シコシコしよう❤❤このちんぽもぉ❤十分デカくてすばらしいぞ❤❤」


 なんてしっかり媚びながらしごき始めた。こぼれた先走りが口に入ると、嬉しそうに飲みこむ狼はスケベの塊だ。その無様な姿だけで十分に雄の性欲を刺激できる。


「ふーっ❤ふーっ❤」


 それに加えて『フェロモン』まであるのだから、グリッジらの性欲はとどまることを知らない。なぶっている雄たちは全身から汗を噴きだし、毛皮がそよぐたびに雄臭さを振りまいて興奮の度合いを示していた。


 発情は高まり続け、ついにグリッジの鼻息が荒く噴き出す。重戦車みたいとは言ったが、今はどちらかというと蒸気機関車かな。車輪を動かすかのように、落とした腰を前後に振り続けていた。


「んふーっ❤❤まずは一発出すぞっ!❤貴様の中を❤俺で満たしてやる!❤どちらが格上か、体で思い知れっ!❤❤❤」

「だじで❤❤❤私にたくさんザーメンを注いでくれっ❤❤❤おっふうぅ❤❤」

「イクぞ……ぐるおおおおぉぉぉぉぉっ❤❤❤❤」


 傷のある熊の顔が吠え、狼の最奥で射精する。

 こうして見るとグリッジは荒々しく男くさい顔をしている。雌を孕ませている姿が堂に入っているというか、弱者を蹂躙するのが様になっているというか。時折山のような巨躯を震わせるから、種付けのために尿道がしゃくりをあげているのが分かる。


「くはっ、ふははははっ!❤❤止まらんな❤これほど出したのは初めてだ❤うおっ❤まったく、あまりに貴様が無様なものだから、張り切ってしまったではないか❤」

「こんなにたくさんんんっ❤ザーメンが私にっ❤❤興奮してくれたのだなグリッジ❤❤ああ、すばらしいぃ❤❤おマンコ満たされていく……❤❤❤❤」

「まだ止まらんぞ❤貴様を俺で上書きするまで、どれだけでも出せる気分だ❤❤こんなに気分がいい日はいつ以来か❤ついに、アーミライト家が俺の手に堕ちたのだ!❤❤」

「ふーん、じゃあ前に気分の良かった日はいつだったの?」

「…………フォッグライが生まれた日だ」


 しれっと『操作』をかけて聞いてみたけど、やっぱこの人、まともな人生送ってないな。しかも毎回ちょっと抗うのなんなの。『フェロモン』で理性溶かしてるはずなんだけど。


 おれがグリッジの弱みを探している間に、射精済みちんぽがズロロォと抜けていく。盛り上がった体躯にふさわしい巨根は血管ばきばきのホカホカで、これぞ雄って感じの威圧感満載だ。

 栓を無くした狼マンコからは、スライム状の熊ザーメンがぼたぼたと零れ、粘膜の赤をいっそう卑猥に仕立て上げていた。毛皮がない分、そこには隠し切れない淫売の本性が現れている。


「おおおぉっん❤❤んあっあっ❤ちんぽぉ……❤❤」

「もっと欲しいかジェイルラル❤❤」

「ほじいいぃ❤私はちんぽがないと生きていけない雌犬だ❤ずっとおマンコの奥にうずきを抱えて、犯されないと狂ってしまう❤❤だから頼む❤ちんぽを恵んでくれ❤❤」

「ふははっ❤結構だ❤……お前たち、こいつの足を持て❤❤」


 部下たちがジェルを折りたたむと、正常位で尻を突き出す体勢へと変わる。金玉アイマスクも外れてあらわになった狼の相貌はでれでれにとろけきっており、中出しの余韻に浸っていた。


「お、へぇ?❤❤何をする、つもりだ……❤❤」

「なに、貴様が本当に堕落したのか確認したくてな❤どうだジェイルラル、我がエギザクタ家に今後歯向かわないと誓えるか?❤❤」

「何のことだ❤❤私がいつ、歯向かったというんだ❤❤私はただ、陛下の剣として仕えていただけ……」

「そんなことを聞いているのではない❤誓うか、誓わないかだけ答えればよい❤」


 子作り済み雄マラでマンコを叩かれると、萎えることを忘れた狼ちんぽが震えた。マンコの疼きを前に、ちんぽ以外は些事だ。罪を捏造されてもなお、狼から笑みは消えなかった。


 ぶぴゅっと狼マンコから汁が飛ぶ。それは投げキッスのように媚びを売る仕草で、柔肉は熊ちんぽに焦がれてうごめいているはずだ。

 だから、そもそも逆らえるわけがないんだ。


「ち、誓う❤私は今後、そのちんぽに逆らわない❤❤❤エギザクタ家のオナホとして❤この狼マンコを常にうずかせておくと誓う❤❤」

「ははははっ!❤あーははははっ!❤❤」


 笑いすぎ。よっぽど気分がいいんだろうな。

 おれのジェルなんだけど、まあいいか。


「いい子だ❤そこまで言うのなら俺のちんぽをくれてやる❤❤感謝しろ❤」


 雄としての格を見せつけるように、グリッジは自分のちんぽで狼ちんぽを叩く。興奮と喜悦で人生最高の硬度になっているであろうそれは、ジェルの愛液と混ざってものすごい雄臭を放っている。ちょっと離れたおれでさえわかるくらいだもん、ジェルにとっては、最高の興奮剤だろうな。


「ふごっ❤んふぅ❤おっおおぉん❤❤❤すごい、雄の匂いいぃ❤❤」


 さっきから鼻を鳴らしては、匂いを堪能する狼。風使いとしての能力をいかんなく発揮して、尻尾をぶんぶんと振っていた。


 さすがにここまで宣言させればもういいだろう。このまま第二ラウンドを始められても困る。何が悲しくてグリッジのセックスを見なくちゃならないんだ。


「もういいでしょ。ジェルは堕ちきって、もうちんぽのことしか考えられない」

「確かにな❤ここまでするのは、よほどの阿呆くらいのものだ」

「これでエギザクタ家の悲願とやらは達成した。フォグを縛る必要はどこにもないはずだ」

「それもそうだが、貴様はこれから先どうするつもりなのだ?」

「おれ……?」

「引き取ってくれたジェイルラルを壊した厄介者など、誰が引き取ってくれるというのか。この国に、貴様の居場所はもうない」

「何が言いたいの?」

「なに、簡単なこと。俺が貴様をうまく使ってやろうというのだ。そのスキルは使いようによっては強力な武器になる」

「おれはもうこんなことしたくないよ」

「ジェイルラルを下した貴様に安穏などあるはずがないだろう。俺が庇護してやると言っているのだ」


 あーあ、やっぱり。正直この展開を予想してなかったわけじゃない。

 こいつはなんだかんだ言いつつ、おれを手ごまにしようとするんだろうなと思ってたよ。


「うちのフォッグライが傾倒していたジェイルラルを、貴様が壊した」


 おれの肩が震えるのを止められない。どうしたって、それはおれの弱点だ。


「だが、『疑似人格』でそのことを意識させなければ、いつものフォッグライが貴様のもとに返ってくる」

「…………」

「ただ戻すよりそのほうがいい結果になると思わんか? 俺ならそれが叶えられる」

「…………ふん」


 だから従えってことね。じゃあもういいや。こいつの手中にいる以上、フォグが簡単に戻ってくるわけないと思ってたし。


「なんだその反抗的な目は。忘れるなよ、俺の命令ひとつでフォッグライはどうにでもなるということをな」

「うん、わかってる。だから『しゃべるな』」

「――――っ!!」


 このくそ野郎に誤算があるとすれば、おれはエロに関することなら大抵のことは習得できるってことだ。例えば『操作』で人を操ることだってそう。

 最初からこうすればよかったんだ。諸悪の根源さえつぶしてしまえば、フォグが危険な目に合うことはなくなる。


「ジェル」

「んぅ、どうしましたぁ?❤❤」

「こいつらを群れに入れていいよ」

「なんとっ!❤素敵なちんぽを感謝します、我が主よ❤」


 おれらが何を言っているのか、グリッジはわからないだろう。

 だけど、良くないことが起ころうとしているのはわかっているようで、しゃべれもしない口を必死に動かしていた。


「――――っ?!」


 憤怒と驚愕を張り付けたグリッジの目は訴えている。自分を害せば、フォグは二度と戻ってこないって。


「別に、もういいよ。おれが知らないと思ってるの? 『疑似人格』の実験のために、フォグの人格を壊したでしょ。お前にとって都合がいいように動く、完璧な人形にしたんだ」


 グリッジの動きは落とした雄を使って逐次観察していたから知ってる。あの優しかったフォグはもう戻ってこないってこと。

 約束を守って治してくれる一縷の望みにすがったけど、駄目ならもういいよ。


 それに、フォグの大好きなジェルを壊した時点で覚悟はしてた。フォグはもう、おれを許してくれないかもしれないってこと。

 この世界で唯一……今はジェルもそうか。おれに優しかった二人を、おれは不幸にした。


「わおぉん❤❤」


 部屋中をジェルの『フェロモン』が満たす。ジェルが発現させた新しいスキルは、雄を支配する力を持っている。それを浴びて、まともでいられるわけがない。

 雄が一人、また一人と床にひれ伏して、腰を揺らす。床オナのような行動をしながら、その目はジェルを切なく見つめていた。


「――――っ?!」


 グリッジが最後まで残っているのは、意志が強いからだろう。でも、結局末路は同じなんだけどね。


「何が起こってるのか、わからないって顔だね」

「…………」

「いいよ、教えてあげる。ジェルは新しいスキルを手に入れたんだ。『フェロモン』ってやつだね。これは雄を発情させるから、さっきまでお前は馬鹿みたいにセックスしてたってわけ」

「……っ!」

「ああ、もちろん、それだけじゃないよ。これはジェルの群れに引き寄せる効果もあるんだ。ジェルは『フェロモン』で群れを率いることもできるってわけ。お前も犬みたいにひれ伏して、入りたくなってきたでしょ?」

「…………っ!!」


 これこそが『フェロモン』の真骨頂。ただ発情させるだけならそれこそ『発情』の下位互換だからね。

 ジェルは自分のフェロモンを吸った雄を性欲で管理し、射精権限で優位に立ち、リーダーとしてちんぽを支配する。しかも本人は最強の風使いだから、逃げ場はほぼないときている。どんな雄であれ、ジェルに目を付けられた終わりなんだ。


 それは騎士団長としての経験があるからなのか、家族を欲している欲望からなのか、ともあれジェルの気質がいかんなく発揮されたえぐいスキルだと思う。いうなれば、洗脳を風に乗せて振りまいているみたいなものだからね。


「もう『しゃべっていいよ』」

「……んっぐぅ! なんだこれは、馬鹿な……俺が、ジェイルラルの下に行きたいなど……そんな馬鹿なことが……!」

「気にしなくていいから、ジェルの配下はみんな幸せだよ。毎日毎日犬みたいに盛りあって、気持ちいいことだけ考えてればいいんだ。もうエギザクタ家がどうとか、馬鹿みたいな話にとりつかれることもない」

「貴様、俺を……エギザクタ家を愚弄するか……!」

「うん。馬鹿みたいだなって思ってるよ。そんなどうでもいいことで、おれとかフォグを追い詰めたおまえを、絶対に許さない。……ジェル」

「あおーん❤」


 いつの間にかグリッジに近づいていたジェルが思いっきり『フェロモン』を吹きかける。雄を堕落させる匂いに包まれて、険しかったクマの顔から眉間のしわが取れていく。


「……お、おおぉ……おぉ?❤❤」

「グリッジ❤お前はいいちんぽを持っている❤それに動きも悪くない❤今まで政治活動にかまけず鍛錬をしてきたのだろう❤私にはわかる❤そんなお前を群れの副リーダーにしてやろう❤❤これからは私と一緒にちんぽを貪って、主の役に立とうではないか❤❤」

「誰が……この俺は……エギザクタ家を……❤❤」

「ふふふっ❤家同士の確執など、今日で終わりだ❤本来ならお前は主に切り捨てられても文句は言えない立場なのだぞ❤それを我が主が広い心で群れ入りにとどめてくださったのだ❤❤抗うなどできん❤さあ、私と共に来い❤❤」

「あ、お……あぉん❤❤」


 口から勝手に犬の鳴き声が出て、脳がセックスで埋め尽くされる。群れの絶対的な掟、それはちんぽを拒まないことと、ジェルやおれの命令に従うことだ。


 グリッジの意志がとろけていく。セックスしたいという欲望が膨れ上がって、優先順位をぶっ壊す。ジェルのケツマンコの味を知ったんだ、絶対逃げられないでしょ。

 おれが言うのもなんだけどさ、けっこうえげつないスキルだよ。この王宮はおれの認識改変とジェルのフェロモンで支配されてるんだ。だからみんなセックスのことしか考えられてないわけ。


 案の定、大きな熊は鼻息を荒くすると、ジェルを押し倒した。性欲の暴走を抑えきれず、犬になってしまったようだ。


「うううぅぅ❤犯す❤犯すううぅ❤あおーーんっ❤❤❤❤」

「ああ、いいぞ❤❤この後はケツマンコの味も覚えよう❤セックス三昧の群れにようこそ、グリッジ❤❤❤」


 そうして始まるのはケダモノの交わりだ。犯して犯されて、体力と精力の続く限り延々とまぐわい合うだけの、原始的な遊び。


 確執も歴史も頭から抜け落ちたグリッジは発情期の雄犬だ。その山のような体躯でジェルを包んでの種付け活動に夢中で、結合部から逆噴射していた。

 まあ、あいつにとってはこの方が幸せかもしれないな。復讐のつもりだったけど、失敗したかも。もうどうでもいいけど。


 おれの頭を悩ませる次の問題事は、これからどうするかってこと。

 フォグもジェルも壊れた今、おれは完全に孤独だ。


 でも逆に言えば、なんでもできるってこと。誰の目も気にせず、こんな狂ったスキルを使い放題なんだ。


「……となると、世界統一しかないか」


 創世神に聞かされた時は絶対無理だろとは思ったけど、何でも願いを叶えてくれるのなら話は別だ。


 おれは、おれに優しくしてくれた二人を戻してあげたい。

 そのためなら、世界でも何でも統一しよう。


「まずはこの国からかな」


 認識改変をばらまいて、おれにとって都合のいい国へと変える。

 ジェルが堕ちた今、おれを止められる人は誰もいないんだ。


「ひとまず、エロに浸からせてスキル習得からの戦力向上が最初で……そのあとは……まあいいか、王宮なんだから軍師とかいるでしょ。適当に篭絡して作戦練ってもらおっと」


 世界さえ統一できればそれがどの国だってかまわないし、興味もない。

 どうせ王都に足を踏み入れた瞬間から認識阻害のスキルがかかるんだ、心配する必要もないだろう。


「……フォグの顔が見たくなっちゃったな」


 早くあの家から連れ出してあげないと。もうグリッジにおびえなくていいんだ。

 すでに何も感じなくなっているだろうけど、それでもおれの大事な人だから。


「行こう、ジェル」

「わんっ❤❤」


 少し前まで父になろうと頑張っていた狼の面影はどこにもない。心が痛むけど、これに関しては完全に自業自得だ。


 ああでも、もう帰りたいなんてわがまま言わないから。どうか……なんて願ってしまう。


 どうか、二人を元に戻してください、なんて――――


****


 ひどい夢を見た!

 ひっっっっっどい夢を見た!!!


「フォ~~~~グ~~~~っ!」


 見つけた瞬間、おれは巨漢の熊へと抱き着いた。

 いつも通り王宮での仕事に来ていたフォグはおれの勢いに驚いたようだったけど、何かあったのかと察して抱きしめ返してくれる。いつも優しい熊だ。


 この胸も腹もでかい熊は間違いなくフォグ。しかも夢よりも肥大化しているから、たくさん鍛えたんだというのもわかる。


「なんだなんだ、どうしたんだよお前……」

「フォグが生きてる……!」

「勝手に殺すなよ……んで、どうしたんだ?」

 

 実は『夢調教』っていうスキルを習得したんだけど、それが中々制御できなくって、ひどい夢を見た。

 もしを体現した過去の話で、おれがグリッジに引き取られていたらってやつ。


「……想像するだけでろくでもないってことだけはわかった。そこで、おれは死んでたと」

「『疑似人格』のせいで廃人になってた」

「最悪すぎる……あのくそ親父……いやあいつならやるだろうけどさ……あいつはここまではやらないだろうという良心のハードルをやすやすと超える野郎だから……」


 ため息をつきながら、フォグはおれを抱いたまま白竜宮を歩き出す。フォグの腕力からすればおれなんて綿毛みたいなものだから苦でもない。

 いつもなら恥ずかしいからやめてほしいと訴えるんだけど、今日はさすがにフォグのぬくもりが欲しかったのでおとなしくしておこう。


「だったらジェル様も無事じゃないんだろうな」

「まあ、大体想像通りです……」


 完全に性狂いで人格崩壊してたよ。おれのせいだったけど。

 朝普段と変わらない優しい狼の顔を見た瞬間泣いてしまったので、ジェルをものすごく狼狽させてしまった。仕事を休んだ方が良いとか過保護に言われたけど、学生じゃないんだから……っていうかやっぱ夢よりも人権意識高いよこの世界。グリッジ周りがおかしいだけだって。


「でもしょせん夢だろ?」

「調教用のスキルだからさ……本当に生々しくて……目覚めた時はここが夢なんじゃないかと思ったくらいだよ」

「えげつないな……調教用というか拷問用の間違いだろ」

「どっちにも使えそうではある」


 こんなスキル二度と使わん。誰が使うか。けど、また暴走したら困るな……ちゃんと制御できるようにしとかないと……。


 なんて思っている間に、フォグに抱かれながらみんなと合流したせいで、好奇の視線が刺さってくる。そりゃそうだ。

 ……さすがに恥ずかしくなってきた。


「おやおや、いったいどうしたんだい。足でもひねったとか?」


 心配した母性の塊、トリドスが駆けつけてくれた。その後ろで回復を得意とするモウダンも慌てて近寄ってくる。


 冷静に考えて、怖い夢を見たから抱き着いてるって子どもすぎない?

 恥ずかしさで死にたくなってきた……。


「一緒に来る途中でこけたんだよ。別に怪我はしてないけど、念のため見てくれ」

「わかったぞ」


 気の利いたフォローを添えておれをモウダンに引き渡すフォグがイケメン過ぎる。優しいうえに人格者とか、なんであのグリッジからこんな風に育ったのか不思議でならない。

 だから夢の中のおれはあんなことしちゃったんだろうなー。

 ひなは一番最初に見たものを親だと思うみたいだけど、おれは異世界で最初に優しくしてくれた人に惚れるのかもしれない。

 だから、もしエギザクタ家に引き取られてたら、フォグに惚れてた可能性があるってこと?

 ……うーん、あんまり想像できないや。


「うん、確かに怪我はないな。でも、なにか違和感があったらすぐに言えよ。セックスは結構激しい運動だからな」


 モウダンの診察が終わったので、これから仕事……という名のセックス活動だ。みんなを最強にするためにも、夢みたいなことを引き起こさないためにも、頑張らなくちゃ。


「おい」


 意気込んでいたおれのほほをフォグが突いてくる。なんだと思って視線を上げれば、熊の顔が薄く笑っていた。


「こっちが現実だろ?」

「当然。あれが現実だった方が終わりだよ」

「ははっ、もう大丈夫そうだな。それじゃあ、今日もびしばしいくか」

「いや、さすがにちょっとお手柔らかにお願いしたんだけど……」


 夢で見たからわかるけど、フォグはあんな教育を受けてきたんだよな。

 おれに対する扱いはだいぶ丸いけど、その片鱗が見えて複雑な気分になる。


 ……でも、夢の中のおれもどうにかならないかな。なんて思ってしまう。

 一歩間違えたらあっちが現実になってた可能性があるんだから、かわいそうが過ぎる。

 フォグやジェルを助けたいなあ。というかおれのスキルだぞ、自分で調教内容を操作できなくてどうする。


「……よし!」


 しょせん夢の話だけど、あそこまで見てしまったらやっぱり気になる。

 どうにかハッピーエンドにならないか、頑張ってみよう。


「…………」


 意気込んだおれのそばで、フォグがなにやらもの言いたげな視線を投げていた。


****


 ――――そして、話はまた夢へと戻る。


「王子」


 王都の外に張られた天幕の中に、ウィザロンが入っていく。

 コハクは王都や王宮の地図を眺めて何やら思案していたようで、虎へと向ける視線は険しいものだった。


「『聖域』の展開準備が完了しました。これで私を含め、『聖痕』を刻んだ者たちへのスキルは無力化できます」

「ご苦労だった。起動にはどれほど時間がかかる?」

「十分もいただければ。なにせ範囲が広すぎるため、どうしても時間がかかってしまいます」

「よい、想定内だ。それに加えてお前も戦わせようというのだ、無理をさせてすまないな」

「いえ、これを乗り切ればコハク王子が王座を取ることができるのです。死力を振り絞る覚悟です」

「……そうだな」


 別段欲しくもない地位だが、このまま国を放っておけるほど冷血漢でもない。コハクは煮え切らない感情を持て余しながら、これからのことを頭でまとめていく。


「ファンダルとグランドはこちらについた。これで残りは『華炎』『影に満ちた鏡』『墜落する三日月』『竜の冠』、そして『神風』か……多いな」

「なにせ、陛下御自身が『竜の冠』という二つ名を冠するのです。あの方の政策によって、軍は歴代で最も強いと言われております」

「その分政治が弱く、グリッジに足元をすくわれたのだがな。まあ、詮無き事を言った。今は目先の問題を片付けるべきだ」


 コハクの有する二つ持ちは『土神』であるウィザロンと『茜差す栄光』ファンダル、『騎士道走行』グランドの三人だ。一人で戦況を変えると言われる二つ名持ちは、数が強さに直結する。


「お前に戦いながら二つ名持ちに『聖痕』を刻めと無茶は言えんな。倒しさえしてくれれば、私がスキルを解除しよう」

「一時的にでも無力化できれば、私が『聖痕』を刻みます。そうすれば王子のお手を煩わせることはないでしょう」

「ノインなど『竜の爪』の部隊の幾人かとも接触ができている。とはいえ、やはり二つ名持ちはもう少し確保しておきたかったところだが……」

「時間が迫っております。『神風』がどれほど強くなっているのかわからない以上、人を集めても不安が残ります。また、我らのことがばれ、『聖域』への対処を取られれば、勝利は絶望的です」

「そうだな……情報もいくつか集まった故、ここらを潮時とすべきだろう」


 ノインらから、やはり元凶は異世界人であることと、ジェルが完全に陥落していることを知ったコハクは、できる限りの手を打った。

 ファンダルら二つ名持ちの解放や、認識阻害領域に対してコハクがどれほど抗えるのかなど。必要と思われる情報はなるべく回収したつもりだった。


 ウィザロンの『聖域』は、領域内において自身や『聖痕』を付与した対象に特殊なバフを与えるものだ。それは支配への抵抗や身体能力の向上など、戦況を変える一手にもなりうる強力なスキルである。

 ただ、領域を拡張することや『聖痕』を刻むのに少し時間がかかるという弱点があるため、少数精鋭で挑まねばならなくなっている。トリドスのように超広範囲で無差別にバフを振りまけるのは、世界でも一握りだけなのだ。


 そうでなければ、傭兵街に媚びを売ってでも人を集めていただろう。実際、コハクを慕って隠れ住んでいた兵の半数以上には『聖痕』がない。『聖域』の拡張に忙しかったウィザロンではここが限界だった。


「人数が少ない以上、短期決戦しかない。どれだけ早く二つ名持ちを救出し、味方につけることができるのか。これに尽きるわけだ。二つ名持ち達の予定は把握できているか?」

「こちらに。ファンダルらに調べてもらったものですから、おそらく間違いないでしょう」

「なら、明日はこれを基準に動くぞ。もっとも迅速に確保すべきなのは、『神風』以外なら『影に満ちた鏡』だろう。あの神出鬼没なスキルは致命になりうる」

「それがよいかと。ガニスのやつは忠誠心が厚い。この惨事を前に、必ずや王子の力になってくれるでしょう。まず真っ先に『影に満ちた鏡』を鎮圧、『聖痕』を刻みます」


 これで準備は整った。国を救うため、コハクたちは王宮へと進軍する。

 本来なら二度と戻りたくなかったとコハクは内心憂いているが、国の一大事とあっては見過ごすことはできない。嫌々ながら、しっかりと務めを果たそうとしていた。


「さて、どうなることやら……」


 だが、内心では負けてもいいとは思っている。

 性欲に呑まれてしまえば王子の責務から解放されるのだから、彼にしてみればどちらでもかまわないのだ。


 コハクにとっては勝ちがわかっている勝負でしかない。

 だから臆病なくせに気負いもなく、明日を迎えることができる。


 どうせ明日にはすべてが終わっているのだから。


****


 念入りに下準備したこともあって、コハクの進軍は順調だった。

 『影に満ちた鏡』を抑え込むことに成功し、『聖痕』を刻むことができた。被害も少なく、上々な滑り出しと言える。

 ガニスは兜をかぶったままではあったが、首から下は丸裸で黒い毛皮を露わにしていた。その黒にはいたるところに白濁がぶちまけられた跡があり、屈強な肉体を性で汚し、この狂った常識の中で溺れていたことが明白だった。


 正気に戻ったガニスは膝をついて頭を垂れ、戻ってきた王子へと最大級の敬愛を示す。

 黒騎士の態度は、まさにコハクが王位継承者であることの証明でもあった。


「正常にしていただいて、感謝いたします。まさか王子が戻ってきてくださるとは……」

「状況はわかるか?」

「おぼろげながら……今にして思えば、どうしてあんなことをしていたのか理解に苦しみます」

「よい、認識阻害とはそういうものだ。お前にはあの異世界人を探ってもらいたい。無論、ジェルにばれないようにな」

「はっ! 我であれば『神風』にばれず王宮内を探索することが可能です。ウィザロン様より『聖痕』もいただいた今、必ずやお役に立ってみせます」

 

 忠義に厚い黒騎士にとって、ほぼ全裸であることは何ら恥ずかしいとは思わない。この異変を解決するために、そのような感情に惑わされるような男ではないのだ。

 影の中から黒一色で出来た刀身を取り出してコハクへとささげた騎士は、そのまま沈んで消えていく。部隊を率いるでもなく、ただ一人で将の位を持つ『影に満ちた鏡』は単独行動こそ最も得意とする二つ名持ちだった。


「……はあ、まったく忠義に厚いのも良いが、重いなぁ」

「王子」

「どうしたファンダル」


 誰にも聞かれないようにつぶやいたつもりだったコハクにとって、すぐそばに来ていたむっちりとしたこげ茶の犬の声掛けはまさに不意打ちだった。それを表に出さないのはさすがではあるが、聞かれたのは間違いなかった。

 だが、ジェルと並んで王国の良心とも言われるファンダルは言及することもなく、むちむちに膨らんだ姿をさらしたまま恭しく話し始めた。極太のソーセージは体躯に見合ったもので、分厚い皮の隙間から綺麗な色を見せつけていた。


「ガニスさんを戻していただいてありがとうございます。予定ではそろそろ『華炎』のお二人が部隊演習のために訓練場を訪れるはずです。次の目的地はそこにしてはどうでしょう?」

「『華炎』か……あのチームワークは厄介だが、あやつらの本領は野外での広範囲爆撃だ。室内戦に持ち込めば大した問題にはならんから鎮圧するなら今だな。すぐにそちらに向かおう。これで残りは我が父『竜の冠』と『墜落する三日月』、そして『神風』か」

「ジェル様たちの動向は依然として不明です。王子たちが来る前から、彼らの行動はあの異世界人が管理していましたから……」

「我らが進軍したことなどすでに承知しているはずだが……何の動きもないのが気になるな。王宮内であるというのに、罠の一つもないとは……」

「あの異世界人のスキルは性欲を支配するデバフが中心です。無効化とは相性が悪く、コハク王子やウィザロン様のようなタイプと相対するのは初めてのはずです」

「だが、あちらにはジェルやグリッジがいる。やりようなどいくらでもあるのだから、気を抜いてはならんぞ」

「もちろんです。王宮が汚染されてからずっと、気を抜いてなどおりませんので、ご安心ください」


 『茜差す栄光』ファンダルは他の二つ名持ちと違い、ユニークスキルを持たない二つ名持ちだ。その分『剣技』や『スキル耐性』などの基礎とされるスキルのレベルが尋常でなく高いため、単騎性能が二つ名持ちの中でもずば抜けている。

 おかげでつねに異常に対するパッシブが発動しているようなものであり、王都が狂ってしまった時でさえ、わずかな自我を残していた。デバフをかけるという基本戦術が効かない性能を持っているところにコハクの『スキル耐性』がさらに付与されれば、常時無効化と言っても過言ではないパッシブへと強化されている。


 コハクらにとって幸運だったのは、そんなファンダルが同僚である『騎士道走行』グランドを守っていた点だろう。

 結界を得意とし、中にいれば怪我や状態異常を自然治癒させるサイの騎士は、ファンダルの助言に従って結界内部に引きこもり、異変の影響から逃れていた。性欲に負けそうになったファンダルを結界内部で治癒し、そしてまた耐性のあるファンダルが外に出て情報などを集めてくる。

 そうして、彼ら二人はコハクに出会う前からこの異変についてある程度調べていたのだ。


 だからこそ、コハクたちは誰にもばれることなく『影に満ちた鏡』を解放することができた。性欲に狂った王宮では全裸でいるだけで疑われることはないのだから。

 もっともそのせいで、ファンダル含め、コハクやウィザロンたちは鎧など着ることもできず、武器だけを構えたちぐはぐな格好を強いられているのだが。


「まったく、何ともザルな警備だ。だがこの認識改変の強度があれば、過信するのもしょうがないか……。ウィザロン、『華炎』との戦いはファンダルに任せて、お前は少し休んでおけ。聖域の拡大に聖痕処理と数日働きづめだろう」

「ご配慮感謝いたします。ですが、私はまだ戦えます。この国のため、王子のため、たとえ手足がもがれても戦い抜く覚悟でここに来たのですから」

「だから重いと……」

「えっと、コハク王子の言う通りだと思います。ウィザロン様にはジェル様の相手をしてもらわないといけませんし、ここは私にお任せください。コハク王子の手助けがある今なら、あの火力にも耐えられるはずですから」

「むぅ、そこまで言うのであれば……」


 ウィザロンが不承不承ながらも頷けば、ファンダルがホッと胸をなでおろす。だが先ほどコハクの漏らした独白がしっかり聞かれていた証左でもあるため、当の本人は複雑ながらもその配慮に感謝した。


「助かった。ウィザロンはどうにも頑固でな……」

「忠誠心の表れでもありますから。それに、ウィザロン様を温存するのには私も賛成です。ジェル様を抑えることができるのは、あの方だけですので……」

「そうなのだ、情報通りなら、ジェルの相手をするのは最後が望ましい。群れの規模では負けていようとも、質で圧倒せねば勝ち目がないだろうからな。本当に、群れをつくる能力とは厄介よな。ただでさえ個人の力量もトップだというのに……」


 今ジェルがどうなっているのか、ファンダルから教えられたコハクは正直逃げ出したかった。

 最強と評される実力に加えて、他人を支配する力を身に着けたのだ。勝てる望みが薄すぎる。

 だが、群れを大きくする前に叩くことが最も有効であると本人もわかっているため、何とか二つ名持ちを味方につけようと行動しているのだ。


「二つ名持ちの確保と、兵力の削減。これが王宮を攻め落とすために必要な要素だ。グランドは順調か?」

「定期報告では問題ないと思われます。グランドさんが結界で閉じ込めた兵はまだ誰も気づいていないようです。『竜の爪』のみんなが体を張って足止めしてくれているおかげです」

「そうか、ならやはり優先すべきは二つ名持ちだな」


 『結界造形』によって鉄壁を誇る騎士、グランドは王宮兵たちをいくつかの部屋に集めて結界で隔離する作業をしている。結界内部は暗示などの影響を受けないため、『聖痕』を与えられなかったコハクの兵や『竜の爪』の隊員たちが乱交を誘発して、交尾による時間稼ぎをしていた。

 サイの結界は中にいるものを癒すこともできるため、性欲に負けそうな兵などを優先的に割り当てることで、コハクら本陣は盤石の戦力で攻略に臨むことができていた。


「今のところは作戦通りだが……グランドが崩れれば一気に敵勢力が流れ込むだろう。不審なことがあればすぐさま対処するようにしてくれ」

「かしこまりました。向こうには新しいスキルに覚醒したランドやノインさんを護衛として配置してあります。例えジェル様が向こうを襲ったとしても、グランドさんを逃がす時間は稼げるはずです」


 城中を結界で覆うために必要な力をランドの『吸精』でサポートし、敵の本拠地でありながら自らに有利になるよう環境を変えていく。こうすることで、ジェルの力を少しずつそいでいくのだ。

 

「では、次は『華炎』だ。ばれないよう最少人数で行動する。不審に思われたら性行為に誘ってごまかし、決して我らが正常だと気づかれないようにしろ」


 コハクの号令に、そばに控えていた兵たちが小さく返答を投げる。例にもれず全裸な彼らだが、『聖痕』のおかげで性欲に呑まれることはない。鋭い視線をさまよわせ、祖国奪還のために動き出す。

 この日のために集落で鍛え続けた兵たちの進軍にぶれはなく、そばにいたファンダルは感嘆を漏らす。練度を見れば、彼らがどれほどの執念を持っているのかわかってしまうからだ。


「では急ぎましょう。私もコハク王子のために剣を振るえて光栄です」

「わかっててやっているのか?」

「申し訳ないですけど、本心です。私はずっとグリッジ様の下に居たので……」

「それは……難儀なことだ。さあ早いところ二つ名持ちを掌握して、『神風』を単騎にせねばならん。さすがにグリッジからの協力を得られるとは思わんが、敵対されても面倒だ」

「結託されればそれだけ敗北のリスクが上がります。時間との勝負で……王子っ!」


 ファンダルが大剣でコハクをかばうと、閃光と共に雷鳴が響く。狙撃されたのだと気づいた龍が視線を上げると、辟易とした声が返ってきた。


「はぁ……気配消えてないじゃん。これで何とかなるんじゃなかったの?」

「ふむぅ❤❤すまない❤余の『雷銃』はよほどのことが無ければ防げぬはずなのだが❤❤」


 見知らぬ男と赤銅色のたてがみを持つ黄金の龍が暗がりからのそりと現れる。その龍はコハクに年月を加えた見た目をしており、筋肉という筋肉が発達した巨体を赤裸々にしていた。

 赤々とした陰毛から汁をこぼしながら締まりのない顔で笑う龍を前に、コハクは尻尾を震わせる。覚悟はしていても、実際に見てしまえば動揺を隠すことはできないようだった。


「父上……」

「コハクよ❤余のおマンコハーレムを壊そうとするとは、さすがに我が子とはいえ許せんな❤❤」

「……お前が父をここまで壊したのか?」

「うん。王様って便利だったから。もともとグリッジもそのつもりだったみたいだしね」


 いけしゃあしゃあと言ってのけた男はつまらなさそうにコハクたちを一瞥し、ため息を吐いた。死んだ目には光もなく、どうでもいいと言わんばかりの調子だった。


「……ふうん、『発情』も『魅了』も効かないか。前情報通りではあるけど、厄介だな」

「こちらの対策は問題ないようだ。さて、お前が異世界人だろうが、なぜこんなことを?」

「ただ世界を統一しようと思ってさ。創世神みたいなやつからの依頼だよ」

「そうか。異世界人には啓示を持つものが来るとは聞いたことがあるが、神は我らの衰退をご希望か」

「なんでかは知らないけどね。だからおとなしくしててくれないかな。おれに身をゆだねてくれれば、今より強くなれるし、この国が世界を支配できるんだからさ」

「尊厳を無くした家畜のような扱いを受け入れろと? いくら神がそれを望もうとそんなものは人の世ではない」


 コハクにとってはそれが理想ではあるのだが、全世界の人に強要するつもりは端からない。異世界人の言うことが人道にもとることを理解して、王子らしい行動が自然と口を突いて出てきた。


「おれもそう思うよ。でも、おれにはそれしかできることがないんだ。ガネート、こいつら無力化できるよね?」

「もちろんだとも❤余こそ『竜の冠』と名高き武王であるぞ❤❤若輩者がどれだけ束になろうと余に勝てる道理はなし❤❤❤だからこの後はそなたのおちんぽで余のことをかわいがり、無様敗北させるのだぞ❤❤」

「別にいいよ。この前みたいにジェルの群れでめちゃくちゃにしてあげる」

「っほぉ❤約束であるぞ❤❤」


 龍の頭上で光り輝く数珠のようなものが生まれ、瞬きながら回りだす。それはバチバチと爆ぜ、好色に狂ったガネートの顔を厳かに照らしていた。

 『竜の冠』と呼ばれるゆえんである『雷冠』は回転しながらエネルギーを溜めており、時間が経てばそれだけ強力な一撃を放てるスキルでもある。それを理解しているファンダルは即座に前に飛び出し、黄金の王へと切りかかった。


「大変申し訳ございません! ですが、これも国のため、不敬を承知で相対させていただきます!」

「ファンダル、父上の『雷冠』が発動すれば私が抑える! 無理をせず、確実に戦え!」

「かしこまりました、王子!」

「くはぁ❤ファンダルよ❤こうして見ると、そなたの体はよく実って美味そうではないか❤余のおマンコハーレムに加わり、ちんぽ三昧の生活をしようではないか❤❤」

「お誘いはありがたいのですが、謹んでお断りさせていただきます! 私はこの国を救いたいのです!」


 基本性能一点特化であるファンダルの一撃は、たとえ二つ名持ちであったとしても構えがぶれるほど重い。同じ大剣使いであるがゆえに、そのりょ力のすさまじさがガネートにはよく理解できた。

 だが、ガネートの大剣は常に帯電しており、打ち合うたびにファンダルの体力が削られていく。常人なら二、三度打ち合うだけで感電して倒れるのだろうが、相手は『茜差す栄光』のファンダルだ。常人をはるかにしのぐ体力を持つ犬にとって、多少の傷など意に返すこともない。


「さて」


 『竜の冠』を『茜差す栄光』が抑えている間に、コハクが異世界人へと振り返る。彼さえ押さえてしまえば、この戦いは終わったも同義だ。


「ウィザロン、まだ手を出すなよ。そういう話だったろう?」

「御意。心得てございます」


 いつの間にか、音もなくコハクの背後を陣取っていた巌のような虎が豪華な剣を構えていた。『土の聖剣』と呼ばれるそれは王宮を作る岩と共鳴し、いつでも異世界人を貫けるように準備をしている。


 異世界人がいるとなれば、『神風』がいる可能性も高い。ウィザロンが探知を広げながら異世界人をにらみつけると、使ったこともない形の良い肉棒がこの空気とは不釣り合いにぶらぶらと揺れた。どれだけ覇気を出したところで、全裸であることに変わりないのが少し滑稽だった。


「世界統一と言ったが、どういう手段で成しえるつもりだ? まさかこの常識改変の範囲が世界中に広がるとは言わんよな?」

「さすがにそれは無理だよ。でも別に、国のトップを犯しちゃえばどうにでもなると思うよ。見ての通り、性欲に浸らせればおれに逆らえないから」

「それもそうだな。では、元首のみ堕とせば問題ないだろうに、ここまで常識改変の範囲を広げたのはなぜだ?」

「単に初めて使ったから勝手がわからなくてさ。次はもうちょっとスマートにできるはず」

「なるほど。では……手を組まんか?」

「え?」

「お前は世界を統一するために対外に気を配る、私は内政を担当する。頭のネジが飛んだ父上らに政治を任せてはろくなことにならんことくらい、理解できるだろう?」

「まあね。王宮が機能不全になっちゃったし、どうしようかなと思ってたんだ」

「利害は一致してるだろう。私は国が欲しい、お前は世界を統一したい。ジェルから話を聞いてるだろうし、私は役に立つぞ」


 不確定要素を詰め込んだ『神風』と戦うくらいなら、交渉で解決できるに越したことはない。コハクはできることを最大限にするために、交渉というカードも手元に温存していた。

 そもそも、時間を稼げさえすればグランドたちが戦力をそいでくれるのだ。ジェルがどこにいるのかわからない以上、へたな手を打つのはためらわれる。


(ジェルの速度ならウィザロンの探知外から一息に距離を詰められるから、細心の注意を払わねばな。グランドから襲撃の報告があればジェルが来る前に仕留めることができるだろうが、来ないままなら、おそらく付近にいる。そしてこの感じだと……付近だな)

 

 『吸精』に『卵生』とグランドにはジェルの足止めを行える兵もいる。通信する余裕もないとは考えにくく、どこかでこちらをうかがっているのだろうと、コハクはあたりを付けた。


(すなわち、こちらから手を出すのは愚ではあるのだが……ファンダルが腑抜けた父上に負けるとは思えんが、『華炎』と合流されれば圧倒的不利、か。ふむ、どうしたものか……)


 ウィザロンがコハクのそばを離れた瞬間にジェルが切りかかれば、この黄金の龍はあっさり死ぬだろう。強化された後なら話は別だが、今のコハクでは『スキル耐性』などでジェルの攻撃を防ぐことはできないのだ。

 ジェルがどこにいるのかわからないというのはそれだけで脅威であり、この異世界人はそれをわかってやっていた。


「それでどうだろうか、どちらにとっても悪い話ではあるまい?」

「そうだね。でも……」


 異世界人が言いよどんだ時、一陣の風が吹いた。


「おれはもう誰も信用しないことにしてるんだ」


 同時にウィザロンが飛び出して剣を振るえば、コハクの首を狙う凶刃が鈍い音をたててはじかれる。この虎は突風のような速度のジェルに対応し、さらには床の岩を操作して足をからめとろうとスキルまで発動してみせた。


 どんな生き物であれ、足場がなければ走ることはできない。

 だがウィザロンのスキルが床を変形させるより早く、狼は罠をかいくぐり飼い主の元まで引いている。

 結果として、ただジェルが現れたようにしか見えないだろう。すべてはコハクが瞬きをしている間に終わったことだった。


 攻防は一瞬。ガネートと対面しているファンダルを除けば、いったいどれだけの兵がそのやり取りを認知できたのか。

 二人の力量を知っているコハクですら、あっけにとられる速度。これこそが『神風』なのだと、場にいる者すべてが畏怖をもって狼を見上げた。


「ふへ❤」


 だが、畏敬を集める狼は凄惨を極めた全裸をしており、周囲に芬々と雄の色香をまき散らしていた。精液によってごわついた毛皮はみすぼらしく、熱っぽい吐息が漏れる口からはよだれが滴っている。命のやり取りを行ったにも関わらず、勃起した一物からも汁をこぼし、潤んだ目がだらしなく弧を描く。


 最強と称される『神風』ジェイルラルが変わり果てた姿で、コハクたちの目の前に立ちはだかった。


「お久しぶりです、コハク王子❤」

「ジェルか……まさかお前がここまで堕ちるとはな。話に聞いてはいたが、実際目にするとやはり慣れないな……」


 コハクの知っているジェルはいつも優しくて頼もしかった。常に騎士らしく振舞い、愚直ともいえる善性を固めて作られたお人好し。それがコハクの持つジェル像だった。

 そんな狼は狂ったようにニタニタと笑いながらたまに勃起をしこり、ザーメンまみれの手で剣を握り直す。そこに、コハクの知る狼の姿は重ならなかった。


「まさかジェルの攻撃を防ぐなんて思わなかった。これで終わったと思ったのに……さすが元最強って言われるだけはあるのか。ジェル」

「なんでしょう我が主❤」

「あいつら強くて使えそうだから、できれば殺さないで。おれが躾けるよ」

「かしこまりました❤❤」


 交渉は決裂し、戦闘は避けられない。ウィザロンは毛皮をなびかせながら前に進み、主を守る盾となる。


「王子、後ろへ。こやつの相手は私にお任せください」

「そのつもりだ。だが『スキル耐性』は念のため付与しておく。『聖痕』があるとはいえ、ないよりはましだろう」

「感謝いたします」


 最強の相手は最強にしか務まらない。一騎当千の二つ名持ちの間に挟まるのは無謀だ。

 コハクは距離を取ってから声を張り上げ、士気の低下を防ぐためにも折れない意志を見せつける。権力など欲していなくとも、彼にある為政者としての才は眩く人々を導くのだ。


「皆のもの! 『神風』は『土神』が抑える! 我らは残りの二つ名持ち、『墜落する三日月』と『華炎』への警戒を強めながら、異世界人の確保を優先! また、グランドたちにこちらの状況を伝達し、加勢を急がせろ!」


 コハクの兵たちが世界人を逃がすまいと圧をかけ、周囲へと散らばっていく。それを見る目にはやはり光がなく、暗澹とした感情だけが空気を震わせた。


「王宮内で兵力に勝てるわけないのに。ここに来る前に伝達を出しておいたから、囲まれるのはそっちだよ」

「それはどうだろうか。ウィザロンがおまえを抑えられれば、解決する話だ」

「ずいぶん信用してるんだね。確かにおれのスキルが効かないのなら、ジェルの『フェロモン』も効かなさそうだしな……無効化系と相性悪いのか、なるほどなぁ」


 この反応から、グランドの行動はばれていないようだ。ただ閉じ込めるのではなく、乱交をベースにしたため気づかなかったのだろう。コハクはこれ幸いと黙っておくことにして、相手の計算が狂うのを待った。


 ファンダルはコハクから賦与された『スキル耐性』おかげで優位に立ち回れているようで、勝利は時間の問題のようだった。『雷冠』のチャージだけが心配事項だが、一発でファンダルが倒れるとも考えづらい。

 また、『雷冠』が発射されたとしても、コハクの援助が間に合えば十分対処は可能だった。


 そして、コハクは『華炎』と『墜落する三日月』の参戦を不安視しているが、『墜落する三日月』グリッジに関してはすでに戦闘不能なほど壊されているため、実のところ考慮する必要などない。あの熊は今、ジェルの群れの中で乱交に明け暮れており、グランドたちに見つかっていないだけなのだ。

 もちろんそんなこと知る由もないコハクにとっては憂慮すべきことであるのに変わりなく、グランドとの合流によって戦力差がどうなるのか計算し続けている。


(問題はあの異世界人が与える特異なスキルだ。それによって戦況が大きく変わる。全員それを加味したうえで戦闘に臨んでいるはずとはいえ、万が一がある。だが良くも悪くもこの戦の勝敗はウィザロンらにかかっているな)


 最強の名を冠する虎と狼は本来なら敵を圧倒するだけの力を持っている。

 それが二人もそろい、なおかつ敵対するとなれば、戦況与える影響は計り知れない。


 すでに二人は王宮を縦横無尽に動き回り、何度も打ち合いながらスキルでの応酬を繰り返していた。


「これ以上の醜態をさらすくらいなら、私の手で終わらせてやろう『神風』」

「ウィザロン様にはわからないかもしれませんが、私は今最高に幸せですぅ❤『土神』もこの幸せを味わい、我が主にお仕えしましょう❤」

「……なんと不憫な。これがあの忠誠心にあふれたアーミライト家の末路か」


 互いの大将が近くにいる以上、二人の戦場はどうしても王宮内に限られる。そうなれば、土を操るウィザロンの方が有利だ。虎は四方八方に鎮座する建材を操作し、狼の行動を制限していった。


 精巧につくられた柱からとげが飛び出し、床からは手が伸びてくる。そのどれもが高レベルであり、生半可な腕では壊すことすらできない。建物内部の戦闘において、ウィザロンは無類の強さを誇っている。


「ふおぉん❤しかも『聖域』内部での戦闘となれば、私の方が不利ではあるか❤防衛に関しては、もとより一枚上手でしたからね❤」

「お前が正常であったなら、私が『聖域』を拡張していることにも気づけただろうに。しかも、野外ではなく室内戦闘に駆り出されるとは、貴様の主は貴様の使い方が下手だな」

「ふふっ❤まだ新米の主ですから❤ですが、ウィザロン様とて私の速さについてこれるわけではないでしょうに❤」


 ジェルの姿が消えたかと思えば、ウィザロンはすぐさま飛びのいた場所を斬撃が通過する。虎が狼の追撃を石柱で防いでから石槍を放つものの、それはひらりとかわされてしまう。

 確かにウィザロンはジェルを完全に視認することはできていないが、『聖痕』によりバフがかかっている今ならある程度は対応できる。逆に言えば、ウィザロンですら対応するのが手いっぱいとも言える。


「さすが腐っても最強か。速さを上げたな、ジェイルラル。やはりお前に隊長の座を渡したのは間違いではなかった」

「お褒めに預かり光栄です❤まだ抵抗を続けますか?❤我が主に任せておけば、ウィザロン様もコハク王子も、全員が幸せになれるというのに……❤」

「戯言を。貴様の雲ったその眼、私が覚まさせてやる」

「それはこちらのセリフです❤」


 そしてまた放たれる斬撃。不可視の速度で詰め寄られる虎は瞬きする間も惜しいと、険しい顔で受けて立つ。


「……貴様に一つ不幸があるとするならば、その速さだけで最強になったところだな」


 俊足の一撃をウィザロンはなんとか防ぐことができたが、ジェルはまたも即座に距離を取ろうとして――――足が重いことに気が付いた。


「……土がっ、まとわりついている?! なぜっ!」

「わかっているだろうジェイルラル。貴様が立っているこの石の上ですら、私の影響下だということ」

「もちろん、ですから風をまとってすべてはじいてきたはずですっ!」

「貴様の行動が見えてさえいれば、足枷を作るなどたやすい。何度も愚直に切りかかるだけでは、目が勝手に慣れたわ」

「さすがウィザロン様」


 ジェイルラルという男は風を操ることを得意としている。だがここは王宮内であり、暴風を産めば彼の主やガネートにどんな影響が出るのかわからないうえ、コハクらはウィザロンが壁などで守ってしまうだろう。


「ですが、足を捕らえたところで私を封じられると思ったなら、それは大間違いです❤」


 狼の体を暴風が回れば、ウィザロンが操る鉄よりも硬い足かせがぱらぱらと崩れ、風の化身たる狼を自由の身に戻していく。

 その原理は至極簡単で、ジェルは風で作った小さな刃を暴風に仕込み、高速で削っているのだ。やすりがかかったかのように瞬く間に削れる足枷を、虎は驚愕を浮かべて確認する。ウィザロンがスキルを込めて作った一品だが、暴風の前ではもろいもの。

 ひとたび間違えれば肉もえぐれてしまうのだが、『神風』にとってはたやすいことだった。


「なんと……!」

「殺さず捕らえよが我が主の命ですが……ウィザロン様相手には手加減など無理ですね❤」

 

 足枷は土へと戻り、軽やかに飛んだ狼は空中で踏み込むと、虎の頭上めがけて突っ込んできた。とっさに現れた土の壁が防ごうとするのだが、それはウィザロンが想定する以上の圧をもって押しつぶさんとする。


「ぐ、おぉ……!」

「死なないでくださいね、ウィザロン様❤」


 風を操作することで、まるで重力が襲い掛かってくるような圧が壁ごとウィザロンにかかってくる。それは壁の中にいたとしても逃げられるものではなく、土壁がみしみしと嫌な音をたててきしんでいく。


 常人であればすぐさま骨が折れるような圧力の中、それでもウィザロンは膝をつくことなく耐え忍んでいた。しかし、それでもなお虎を苦しめるのは、息苦しさ。ジェルによってあたりの空気が薄くされたせいで、どれだけ呼吸しても酸素が脳にいきわたらなくなってしまった。


「ふぅ、ふぅ……!」

「ここまですると大抵殺してしまうのであまりやらないのだが……ウィザロン様なら問題ないでしょう❤」


 普段のジェルであれば無用な殺生を避けるために威力を調節しているのだろうが、今は主のためであれば、王子へと刃を向けることも辞さない淫乱犬だ。そのストッパーははずれ、もてるすべてで虎を狩ろうとスキルを駆使している。

 

 土使いの最高峰であるウィザロンは『聖域』など自身の足場を固めるスキルを得意としている。だからこそ、その上、空気の支配権はどうしたってジェルに取られてしまうのだ。

 だが、それでも対抗手段がないわけではない。


「その程度で私を下せると思っているのなら、舐められたものだと言っておこう……!」


 ジェルが足蹴にする土壁が隆起し、肉片を切り裂かんと刃をとがらせる。空気圧をものともせず伸びていく土槍は毛皮のいくつか散らせるが、狼を捕らえることはできなかった。

 自身の速度についていけるだけの動体視力を持つジェルにとって、この程度をよけることは造作もない。だが、その土槍からウィザロンが飛び出してくれば、話は変わる。


「……なんだとっ!」


 先ほどの槍よりも数倍早く詰め寄られ、狼から驚愕の声が上がる。回避行動後で体勢が整っていない隙を突かれては、さしもの『神風』もその素早さを十全に発揮することは困難だ。


「貴様が俊足で動けるように、私は土の中を移動することができる。知らなかったとは言わさぬぞ?」

「だが、そのような速度ではなかったと記憶している! まだ強くなられるというのか!」

「当然。私は王子の懐刀だ。王子が政権をとるために、貴様と相対することさえ想定して鍛錬していたのだ。快楽に絆され鈍った剣筋に負けるわけがない!」


 虎と狼の剣が交わり、甲高い音が城に響く。どちらも裸ではあるのだが、それを茶化せるものなどこの場にいない。凡人なら足を踏み入れることすら躊躇する威圧が吹きすさぶ中、剣戟が幾度も火花を散らしていた。

 あまりの速度に刀身が軌跡だけしか映らず、それがいくつも二人の周りに描かれる。風や土といった特異なスキルとは関係なく、彼らの剣技は達人の域だ。剣先一つとっても、致命となりうる威力を秘めていた。


「どうした、ご自慢の逃げ足は品切れか?」

「ご冗談を。どれだけ距離をとっても土を移動して一瞬で詰めてくるでしょうに。四方を石に囲まれた王宮でそんなことをされては、私の方が不利になってしまいます」

「なんだ、脳が溶けていても考えられるだけの知能は残っていたのだな」

「ウィザロン様がそうであるように、私も主のオナホ刀ですので❤」

「……一緒にされるなど不愉快極まりないな」


 土を移動して不意を打たれては、ジェルも対処が遅れてしまう。一度見ただけで危険性を把握できるのは経験のなせる技であり、狼には油断などみじんもなかった。


「……んはぁ❤」


 だが、異世界人によって常時マンコがうずくようにされてしまったことで、剣戟の振動が甘い声を誘発してしまう。命を懸けた死闘の最中であっても、欲情は常に狼を襲っていた。

 普段であれば問題などなかったはずだ。最強の名を冠する『神風』にとって、この程度のハンデはないに等しいのだから。

 しかし、相手がウィザロンであれば少しのハンデが勝敗に影響を与えてしまう。

 剣先の乱れを見逃す虎ではなく、土を使った攻撃と合わせて確実に狼を追い詰めていく。


「力むたびに気色の悪い声が漏れているが、首輪のせいで力が出せんのか?」

「ふへ❤問題などないですよ❤これのおかげで、私はより気持ちよくなれるのですから❤❤」

「騎士としての本懐を上書きされるとは、いっそ哀れだな」


 剣だけでなく、土槍が伸びては狼を貫こうとするのだが、周囲にまとう風の結界に阻まれて致命打にはなっていない。鎧など紙のように貫く強度があったとしても、風に阻まれて終わるだけ。打ち合いばかりが目をひく立ち回りだが、その実、互いが干渉できる環境を駆使しながら水面下でスキルの応酬が繰り広げられていた。

 

 しかし、それにも終わりは来る。

 狼の動きが明らかに鈍り始めてきたのだ。


「……うっ、ぐぅ❤」

「どうしたジェイルラル。剣筋がさびてきているぞ、貴様の剣は主のためではなかったのか」

「私は……❤❤」

「ようやく利いてきたか」


 不調をきたしたのはジェルだけではない。ファンダルと相対するガネートもまた、動揺を隠しきれなくなってきたのだ。


 その様子を見ていた異世界人は狼狽しながらあとずさり、困惑の視線をさまよわせる。彼のかけたスキルは盤石であり、甘い夢から覚めるなどありえないことだった。


「いったいどうして……! 抵抗できなくなるまで躾けたはずなのに!」

「仕掛けがわからぬならそれに越したことはないな。さて、今ならジェルの妨害もなく異世界人の身柄を抑えられるだろう。全軍、かかれっ!」


 どれほど圧倒的なデバフ能力を有していても、無効にされては抵抗するすべはない。そして、回復されては意味もない。

 この王宮はすでにグランドによって結界に囲まれている。ジェルやガネートがどこに居ようとも、異世界人の仕掛けたデバフは徐々に解除される仕組みになっていたのだ。

 ジェルなどはグランドを知っているからこそ、このような大掛かりな技はできない芸当だと思考から除外するだろう。だがそこに『吸精』を持ち他人に魔力を付与するランドを付ければ、サイだけではできないほどの出力をカバーすることが可能になる。

 

 グランドの部隊が兵を部屋に閉じ込めているのは、合流防止というより魔力吸収の側面の方が強い。結界を解除されたとしても、王宮兵たちに戦うだけの力は残されていないだろう。

 そして、結界内にいる間は怪我や状態異常が自然と治癒されていく。いくら躾けられたとはいえ、発情などが解除されていけば理性が有利になるのは自明だ。自我を取り戻したジェルが逡巡することは、狼を知るものすべてがわかりきっていた。

 だからこそ、グランドの部隊は戦の生命線として別行動をしているのだ。


「陛下、無礼を承知で眠らせていただきます……!」

「余は……うぐぅ!」


 ファンダルがガネートを下し、黄金の龍が傾ぐ。ところどころ毛皮を焦がした犬が汗をぬぐうと、兵たちから歓声が沸き上がった。勝利に近づいた感動でもあり、王国の良心と言われるファンダルはコハクの兵の中にもファンが多かったりする。

 この勝利のおかげで、場の戦力はコハクに有利に傾いた。そして、動きに精彩を欠いたジェルはウィザロンが圧倒している。ジェルは解放され始めた自我と性欲に支配された本能によって翻弄されているようで、スキルすらうまく発動できていない。

 誰の目から見ても、勝敗は明らかだった。


「これで終わりだな。おとなしく投降するなら、命は取らない」

「……するわけないじゃん。そうしたらおれは……フォグを助けられない……!」


 異世界人の目に宿る輝きは剣呑で、ほの暗い。危うい光を湛えたままスキルを発動させると、場の空気が汚れていく。それは本能的な不快感を誘うものであり、波打つ甘い欲望と相反しては、理性を殴りつけるようなものだ。


 『聖痕』と『スキル耐性』という鉄壁を持つコハクでさえ、足元がおぼつかない感覚に陥るほど濃く暗いスキル。王宮を満たす感情の発露は、怨嗟に満ちた叫びだった。


「どうしてこうなるんだよ! おれだって好きでこんな世界に来たわけじゃない! 好きでこんなことしてるんじゃない! もういい! お前ら全員、快楽漬けにしてぶっ壊してやる!」

「……ガニスっ!」


 影が揺らめいてから、世界はスローモーションだった。


「……え?」


 暗がりから黒い巨体が現れたかと思えば、漆黒の刀身が異世界人へと向けられる。ずっと隙を伺っていた『影に満ちた鏡』による一撃は、確実に対象の命を奪う精度で迫っていた。

 できれば生かして捕らえたかったコハクだが、もうそんな甘いことは言っていられない。このスキルホルダーを止めなければ、何が起こるか想像すらできないと即座に判断したのだ。

 凶刃はきらめき、男の命に届くかと思ったその瞬間。


 ――――風が吹いた。


「……え?」


 男は自分の顔に熱い液体を降り注ぐ影を呆然とした顔で見上げる。性に汚れてはいるがたくましく、優しい顔をした狼を。


「な、んで……」

「無事か……?」

「なんでおれを助けたんだよ……おれ、許されないことをしたのに……! ジェルのことだって、ぶっ壊したのに!」


 刃からあふれる血は赤く、床に海が広がる。それでも口の端からも血を流しながらも狼は微笑みを消さず、柔らかく異世界人の頭に触れた。

 想定外のことにわななくガニスだが、命令を守ろうと柄を握る手に力を込める。だが、それは筋肉と風によって固定され、ピクリとも動かない。


「ジェイルラル……そこまでされてなお、何がお前を突き動かすのだ……?」

「すまないガニス。だが……私はこの子に言ったのだ、家族になりたいと」


 狼の顔からみるみる血の気が引いていく。命が、失われていく。


「なんでだよ、ジェル……なんで……」

「家族になりたいと、ゴフッ……言った責任を取っただけだ……これで、私のことを、信じて……くれたかい?」

「そこまでして、おれなんか……いないほうがいいのに……!」

「そんなことはない……そう思わないでくれ……お前がフォグのことを大事に思っていたのを、ケフッ、知っている……フォグのために、世界を統一しようとしたことも……」


 異世界人のそばにいたジェルはその目的も理解していた。何も言わなくなったフォグのそばで一人泣いていたことも。

 性欲に支配されていた頃はただ乞うだけしかできなかったが、今は違う。この狼は自分の気持ちを素直に伝えることができる。

 もとより家族になりたいと思っていたジェルは、心の奥底で守りたいと強く思っていたのだ。


「駄目だ……お願いだから、死なないで……」

「コハク王子、どうか、私の命に免じて、この子を……許していただけないでしょうか……この子はグリッジに追い詰められただけで……決して、悪い子では……」

「もういいから! どうせおれが失敗したら、フォグを救えないんだ! そんなおれのために死ななくたって――――」

「おれがどうかしたか?」


 その声はこの場にいた者すべてにとって予想外であり、視線が一ヵ所へと集中する。そんな重圧の中熊は――フォグは迷いのない足取りで異世界人の所へとやってきた。


 ずんぐりとした小さな山のような巨体の熊が、心配そうに男と目線を合わせてしゃがみ込む。


「フォ……グ?」

「ああ、待たせて悪かったな。まったく、お前は目を離すとすぐ無茶するんだから。国ひとつを一人で落とそうなんて、無茶苦茶すぎるだろ」

「なんで、喋れてるの……? 『疑似人格』のせいで、自我が無くなってるはずなのに……」

「まあ……だから『おれ』が入ってこれたんだけどな。お前の知るフォグとはちょっと違うかもしれねえけど、おれは正真正銘フォッグライだ」


 鍛えられた膨らんだ熊の体に白い霧をまとう熊は異世界人が知るまま。しょうがないなと笑う顔は、記憶にある通りの優しい熊だ。


「フォグ……フォグっ!」


 抱き着いた温度も同じ。抱き返してくれる腕の力も同じ。

 これはフォグなのだと、彼は断言できる。


「お前はよく頑張った。後はおれに任せておけ。怪我の治療はできないけど、傷をふさぐくらいならできるから」


 フォグの出す白い霧が狼を止血する。ガニスの黒い剣を抜き去った後も、血が流れることはなく、狼が弱々しく笑って礼を投げた。


「感謝する……お前が無事でよかった……」

「ジェル様、もったいないお言葉です。おれが親父を止めれたら、こんなことにはならなかったのに……」

「なに、気にするな……お前は十分よくやってくれた……よ……」


 『乳霧』に包んだジェルをコハクの元へと送り、熊は男を抱きしめる。異世界人からは先ほどの暗澹たる雰囲気が霧散して、子どものように泣きじゃくって熊の胸に顔をうずめていた。


「コハク王子、ジェル様をお願いします。おれらは見ての通り……投降しますから」

「わかった。投降を受け入れよう。至急ジェルに医者を手配しろ! ウィザロン、『聖痕』を刻み、少しでも体力の補強をしてくれ!」

「かしこまりました」


 戦いは終わった。コハクたちは勝利を味わう余韻もなく終戦処理に駆け回る。グランドとの連絡や『華炎』への対処。やることはまだ山積みだった。

 だが、慌ただしいまわりの空気とは隔絶された二人は、抱き合ったまま互いの心音を響かせている。嗚咽を止められない異世界人を包むフォグはなだめるように背中を撫でていた。


「これでジェル様も助かるはずだ。よかったな」

「うん……。フォグ、ごめん、ごめんよぉ……! おれのせいで、グリッジに壊されて……! おれが来なかったら、こんなことにならなかったのに……! なのに、おれはフォグを救えなくってぇ……!」

「気にするな、あの親父が全部悪い。おれでもそう言う」

「……なんか、フォグがフォグじゃないみたいに言うんだね」


 先ほどからの言い回しに違和感を覚えて問うと、あっさりと熊は頷いた。


「まあな。今のおれは……なんていうか、夢の世界から来たフォグって感じか。同じだけど同じじゃねえ。けど、おれはフォグなんだ」

「どういうこと……? でもフォグはフォグだし……『疑似人格』の残りみたいなものなのかな……じゃあ、少ししたら消えちゃうの……?」

「そうかもな。詳しいことはおれもわからん。けど……おれがいなくてもお前なら何とかなるだろ」

「ならないよ! おれはここに飛ばされてから、何もできてない……」

「そんなことはねえよ。お前のおかげでおれは親父から解放されて、ジェル様だってお前のことを大事に思ってるし、コハクもヤードもみんなお前のことを大事に思ってる。おれはそういう世界から来たんだ。だから、お前なら大丈夫だって信じてる」

「……なんだかそっちの方が夢みたいだね。おれは、こんなにも……ひどいことしかしてないのに……」

「今からでも償えるだろ。ジェル様もいるんだ」

「そうかな……」


 そこまで温かい雰囲気で流していた熊だが、ふいに男の頬をつねりあげて目を怒らせる。その真面目堅物な気迫は間違いなくフォグのものだった。


「おれのためにここまで怒ってくれて嬉しいよ。だけどな、やりすぎだ! おれは別に、お前に不幸になってほしいとは全く思ってねえんだよ! 思いつめすぎるな!」

「ひゃい……」

「わかればいいんだ。二度とこんな暴走するなよ」


 なんてやり取りをしながらフォグは虚空へと目線を上げる。まるで誰かが見ていることを理解しているかのように、そこにいる誰かに話しかけた。


「これで満足だろ? お前の好きなハッピーエンドにはまだ遠いけど、いずれそうなる。絶対になる」


 そして、男へと笑いかける熊の顔は温かく――――


「だって、お前はお前だもんな」


****


 目頭に涙を浮かべたままおれは目を覚ます。

 そこは温かい毛皮の中で、みっちりと肉のついた男の腕の中だった。


「……フォグ?」


 慣れ親しんだシーツの感触は間違いなくおれの家だということを教えてくれるのに、どうしてフォグがおれを抱いているのかがわからない。

 あれ、ここってジェルの家だよね?

 一瞬まだ夢なのかと思って身構えたけど、目覚めた熊が発する問いは間違いなく現実のことだった。


「よう、いい夢見れたか?」

「……おかげさまで。なんでここにいるの?」

「お前のことだから、どうせ今晩も『夢調教』のスキルを使うんだろうと思ってな。ジェル様に警告しようと家まで行ったら、もう寝てるじゃねえか。しかも、ジェル様がなぜだかおれに泊っていけばいいと言ってくれたし、お言葉に甘えてこうしてたってわけだ。また昨日みたいにおれに抱き着くくらいなら、寝起きから一緒の方が良いだろ」

「そうなんだ、でもおかげで助かったよ。フォグが来てくれなかったら、きっとああならなかった」

「おれもまさか添い寝すると一緒の夢に入れるとは思わなかったが、結果オーライだな。どうせ夢の話ではあるんだが、ああいうのが見たかったんだろ?」

「うん、でも自分の力だけじゃちょっと難しかったなぁ。このスキル、本当に扱いが難しいよ……」

「練習あるのみだな。頑張れ」


 寝巻姿のフォグと同じ布団にいると、妙に安心する。それはあの夢の所為だってのはわかるんだけど、まだ気持ちを引きずってるみたい。

 熊の服にそっと手を差し入れて胸を揉むと、いつも通りのしょうがないなと言わんばかりの顔。

 ああ、フォグだなぁと思う。


「朝から盛るなよ」

「時間ない?」

「いや、結構早起きしたから、まだ大丈夫だ。けど、どうせ職場でやるだろうが」

「今したい……だめ?」

「しょうがねえな」


 フォグを裸にすると、ボリュームたっぷりな肉が飛び出してくる。熊という種族柄なのかは知らないけど、本当にむちむちしてて揉みごたえ抜群だ。強い弾力に掌が沈むと、ふわっと手入れされた毛皮が包み込んでくれた。

 そこから香るフォグの匂いはおれを安心させてくれるけど、同時に情欲に火を灯す。


 ひどい夢はフォグが修正してくれたけど、それでも感情はまだ引きずっている。顔を上げてフォグを求めると、熊の口唇が降ってきた。


「んっ……んっぅ❤」


 ふたりの呼吸を同期させるような口づけを深く行って、舌を躍らせながら唾液を貪る。フォグの体は分厚すぎるから、抱きしめたところで寄せられやしない。まるで巨木に抱き着いているような気分になる。

 身長差もあるけれど、今は横たわっているからしっかり目線を合わせることができている。あの夢を体感したせいでおれの気持ちがわかるのか、フォグはなんか優しい目をしてる。むずがゆい。


「んはぁ❤遅刻する前に終わらせるぞ❤ジェル様にばれるのも困るしな❤」

「それもそうだね」


 巨漢がベッドに沈み、おれを呼ぶ。おれのベッドは貴族用ということもあって特大だ。ジェルもそうだけど、みんな体がでかいからサイズも相応なのだろう。

 見慣れた体ではあるけれど、何度見てもその大きさには舌を巻く。生まれ持ったものもあるんだろうけれども、夢よりも大きいのは努力の証だ。夢の中のフォグも、壊されなければこうなっていたはずだ。


 横たわる巨大な熊に抱き着いていると、自分が小さな子どもみたいになった気がする。それはやっぱり、夢の名残なんだろうな。夢のおれにとって、フォグは唯一の拠り所だった。

 きっとあの続きがあるならば、ジェルもそうなってくれるはずだ。続きのおれが彼らをしっかり守ってくれることを祈るばかりだ。


「あ、うぅん……❤」


 『愛撫』のせいで熊からは悩ましい吐息が漏れていく。みっちりと肉の詰まった体に清潔で柔らかい毛皮。おれが知っているフォグ。


「フォグ」


 名前を呼んで、何度も、何度も口づけを。

 膨れた腹の山はおれごときの体重ではびくともしていなくて、口の大きさだってマズルには及ばない。ただ先端をくっつけるだけのキスを繰り返しながら、おれの手は下へと、盛り上がった胸へと伸びていく。


 そこは腹よりも硬く、腕よりも柔らかい。雄々しさを詰め込みながら、雌の色香をまとう巨乳だ。わしづかみにしてみると、指の隙間から肉がとろけるようにはみ出した。


「ん、おぉっ❤お前、さっさとしないと、ジェル様が来るだろ……❤❤」

「わかってるけど、ごめん、もうちょっとだけ……」


 男の胸がこんなにも大きいなんて想像したことなかった。毛皮のせいでいっそう膨らんで見えるのは分かっているけれど、触ってみれば期待を裏切らない塊があるんだ。傭兵街で男たちが魅力されるのも当然というもの。


 もし乳首がしっかり立っていたなら、かなり下品な大きさになっていただろうな。それはそれで見てみたかったけど、フォグといえば、やはり陥没乳首だ。


 毛皮のない艶やかな丘陵を触れるか触れないかぎりぎりで撫でまわす。いくら『胸部強化』で保護されていたとしても、おれの『愛撫』は性感を押し付ける。


「おおぉ、おっおおぉぉん❤❤おま、それっ……やばいからぁ❤❤やめろぉ❤」

「乳輪を撫でてるだけなのに、陥没が濡れてきたね。『乳霧』なのか『乳首マンコ』のせいなのか、どっち?」

「し、知るわけねえだろ❤❤ただ、興奮すると勝手に、うぉ……乳首も濡れちまうんだよ❤❤」

「ふうん、じゃあ舐めてみようか」


 舌で陥没をほじくって、熊乳の味を確かめる。濃厚な風味は間違いなくミルクがベースであり、『乳霧』由来だった。


「あっあっ❤陥没の中、すげえ敏感になってる❤」

「ミルクだね。普通に飲めるくらいの味だよ。こんなにだらだら漏らして、おっぱい張ったりしないの?」

「しねえよ❤戦闘訓練で『乳霧』も使うから、困ったりもな、んああぁ❤❤」


 乳輪を指で挟んで絞ると、白い液体が一筋打ちあがる。マンコでもあるのに、穴はミルクまみれで母性を湛えているのがちぐはぐだ。試しに指先でかき混ぜると、くちゅくちゅと音が鳴った。


「ひあぁっ❤おっぱい、やばいぃ❤『愛撫』強い❤いつもよりずっと、感じでるぅ❤」

「そりゃおれ以上に高レベルの『愛撫』持ちはいないしね。フォグの陥没マンコ、両方に指入れちゃうね」

「お、おう……っほおおぉおぉぉ~~❤❤❤❤」


 両手の中指と人差し指をそれぞれ陥没へと差し込んで、内壁をこすってえぐる。中は本当のマンコみたいになっていて、スキルの神秘を感じざるを得ない。どこまで深いのか確かめてみたいけど、今は性欲を発散することが優先だ。


「手マンやっば❤おほぉ❤んふうぅうぅ❤❤おっぱいマンコ感じる❤やべえぇ❤やっべえぇえぇぇぇ❤❤❤」


 巨体をけいれんさせるフォグは舌を突き出してのけぞりながら性感に翻弄されている。後ろでは見えないけど熊ちんぽがいきり立って泣いているはずだ。陥没マンコは指を締め付けながら、隙間からミルクをぴゅっぴゅっと噴き上げている。


「んおっおっおおおぉおぉ~~❤❤❤❤気持ちぃ❤乳首いぐっ❤手マンだけでっへえぇいっぐうぅうぅ❤❤❤」


 熊が叫んだ直後に、ひときわ太い白濁が噴水のように湧いた。両の胸から同時に発射しながらアクメ顔をさらすフォグを見て、なんだか懐かしい気持ちを抱いてしまう。

 夢でフォグとやってるときは『疑似人格』で無表情だったから、こうして感じている表情をしてくれるのが嬉しい。


 だからもっと見たくなってしまって、締め付けを強くする絶頂乳首マンコから指を抜いてから、巨木のような熊の脚を軽く叩いた。


「上げてもらっていい?」

「んあぁ❤わかった❤❤」


 よろよろと持ち上がる脚はM字に開き、おれを受け入れる体勢を取ってくれる。自分で出来ればいいんだけどおれごときじゃびくともしない体重だから、こうしてもらわないと困るのだ。頑張ればできないこともないけど、協力してもらったほうがスムーズなのは間違いない。

 先の乳首アクメでいっていたのか、熊ちんぽはすでに白く濁った汁をこぼしており、幹から金玉、そしてシーツに流れ着いていた。雄熊臭のきつい袋の影には、雄を待ち望む雌穴が物欲しそうにうごめいている。


「……別にほぐさなくていいからな❤」

「早くほしいんだ」

「とっとと終わらせたいんだよ❤」


 赤ら顔でむっとする熊が素直じゃないのは百も承知。でも、時間がないのも本当だから、おれは興奮に硬直する肉槍を熊の穴へとあてがった。早くほしいのは、おれも同じだし。


 正常位で臨む熊の肢体は分厚さがすさまじく、肉厚のステーキを前にしたような気分になる。ゴライザほど腹が出ているわけではないけれど、やはり鍛えた肉体はたくましい。

 そんな雄々しい肉体の胸部から白いミルクの残滓をとろとろこぼすさまは、あふれ出る肉汁を想起させる。おれの喉が自然と鳴って、勝手に伸びた手が毛むくじゃらな指に絡めとられた。


「おれはここにいるから❤そんな顔するなよ❤」

「……寂しそうな顔したつもりはなかったんだけどな」

「じゃあおれの見間違いかもな❤あんな夢を見たものだから、つい過保護になっちまう❤」


 フォグはいつだって過保護だと思うんだけど、今はそれが嬉しいので黙っておこう。

 言葉にする必要もなく、おれが腰を進めればフォグの穴はすんなりと受け入れてくれる。熱く熟した内壁はとろとろで、だけどひだがまとわりついてくる雌の穴。ちんぽをしごくことに慣れた、熟練なマンコだ。


「ふっおおぉおぉん❤❤んがぁ❤おっぱい、漏れるっ❤❤❤」


 快楽が連動しているのか、デカパイからあふれる白が毛皮に染みこんでいく。まるで噴火のように白い火砕流が雄性を飲みこんで、フォグの淫蕩な側面をむき出しにした。


「おおおぉ……❤んあ❤やっぱり、ちんぽ入れられるのは❤すごいな❤❤声抑えられる自信がないっ❤❤」

「ジェルにばれちゃうね」

「だから、口塞いでくれよ❤ジェル様に聞かれたら、二度と来れなくなる❤❤」

「じゃあ体起こしてもらわないといけないから……枕はさむね」


 身長差的にキスしながら腰を振るにはこうしてもらうしかない。ヤードみたいにマズルが長いならいいんだけど、熊はそこまで長くないしね。


 こうして上体が浮いたフォグは本当にぬいぐるみみたいだ。ふわふわでがちがちな体に体重を乗せながら、何度目かもわからないキスをした。

 

「ん、むぅ……❤❤」


 そしてフォグの顔がうっとりと蕩けたことを確認して、おれは腰を振る。

 すでに何度も味わった雄熊の内部はいつも具合がよく、飽きのくる気配がない。突き入れれば締まり、抜こうとすれば締まり、おれの動きに合わせて愛撫してくれるのだ。


「ふうぅー❤❤ふぅ❤❤」


 決して声を出すまいと抑えるフォグは真っ赤な顔で快楽をかみ殺すのに忙しく、おれの口へと舌を差し込んでいる。まるでそうすれば快楽を受け流せると信じて疑っていないようだが、実際の所、あまり役に立っていないようだ。


「んごおぉ❤おっ❤おっ❤んちゅぅっちゅっちゅっちゅっ❤❤❤」


 窓から差し込むさわやかな朝日に鳥の歌声が乗る。そこに混じって部屋を満たす、湿った水音とフォグの嬌声と、雄熊の淫臭。

 背徳感が胸を高鳴らせるのは夢から覚めてきた証なのだろう。周りのことが気になってきたけれども、おれはただ自分の性欲に従って、ちんぽを最奥目指して叩きつけた。


「――――ふっほおおぉおぉ❤❤❤」


 くぐもった声が漏れ、フォグの目がひっくり返る。おれの口蓋で反響する嬌声は脳まで響き、興奮に火をくべてたまらない。自然と抽挿が激しくなって、結合部からは朝にふさわしくないほど汚い音楽が奏でられていた。


「ほふぅうぅうぅ❤❤んあ、あ、あっ❤ちゅうぅぅ❤❤❤」


 大きな熊の手はおれを抱きしめ、大好きホールドを決めた。太すぎる四肢とりょ力によってがんじがらめにされるけど、この程度はいつものこと。すっかり慣れたおかげで腰を振るのに影響はない。


 フォグの弱いところは手に取るようにわかるから、内壁を削りながら奥へとぶち込めば、巨躯が大きく跳ねる。いくら巨大ベッドとはいえフォグの体重は考慮されていないので、スプリングが嫌な音をたてた。


「あっむぅ❤すんげぇ❤あっ❤いつもより、感じるっ❤ちゅぅ❤お前の朝立ち❤ガッチガチでぇ❤❤マンコ感じすぎちまうぅ❤❤❤」


 その言葉が嘘ではないことは、さっきから漏れ続ける先走りとミルクが証明している。おれが体を支えるために置いた手が、汗とミルクでぬるぬるになっているのだ。少し押しこめば毛皮から搾り取れそうなほど、フォグから淫液の排出が止まらない。


「んおおぉ~~❤❤❤だべだ、声、出ちまうぅ❤もっとキス、してくれ❤❤んちゅうぅぅぅぅ❤❤❤」


 おれの頭をかき抱き、もっと深くを口づける。舌同士を絡ませながら嬌声を噛み砕こうとするのだが、快楽の電流によって誘発される舌ピンアクメが邪魔をするようだ。


「ふおぉ❤おっほおぉおぉ❤❤ぢゅるぅ❤んっ❤んぅむうぅぅぅ❤❤❤」


 パンパンとフォグの尻から乾いた音が鳴るせいで、声を抑えたところでとは思う。外に待機してるメイドとかにはもうばれてそう。

 だけど、硬く抱きしめ合ってキスしながらするセックスは心地よく、おれもこの幸せに浸っていたいから二人で耽溺するのだ。


「フォ、グぅ……すごい締め付けだね。こういうところでするほうが、好きなんだ」

「う、るせぇ❤ジェル様にばれたらって思うと❤おぉん❤体が、火照ってたまらねえんだよ❤❤んほおぉおぉ❤馬鹿、しゃべってる時に突くなっ❤声、こえぇもれるだろおぉ❤❤」

「こんないやらしい音でセックスしてるんだから、もうばれてそうだけどね」

「それはぁ❤お前が、こんな強く❤腰振るから❤おマンコの奥までっ❤ほぉ❤響いちまうんだよぉ❤❤お前こそ、いやらしい攻め方しやがって❤アクメ声ぇ❤駄々洩れになっちまう❤❤」


 駄々洩れなのは声だけじゃなくって、ミルクもだけどね。おかげでシーツのシミが熊の形になってそう。

 でもおれも人のことは言えなくて、絶えず腰を振るっていたせいで汗がにじんでいる。それはおれの肉布団になっているフォグが、毛皮に加えて筋肉の塊ため温かいからというのもある。

 

 ぽたぽたと落ちる汗が接着剤みたいにおれらをくっつけて、快楽の往復運動に発破をかけている。ここにフォグがいるという現実を噛みしめるように、呼吸を交換しながら幸せに浸る。


「うおっおっおおぉぉ❤❤そろそろ、いくぞっ❤でっけえアクメ来るううぅぅ❤❤❤」


 いくらこの瞬間が気持ちよくても、終わりはくるものだ。フォグの叫びはその合図となって、マンコ肉が一斉に終着点へと拍車をかける。

 本人はささやいているつもりなんだろうけど、肺活量が尋常じゃないから勝手に音量が上がっている。おかげでキスの隙間から爆音がこぼれてしまった。


 なら、その口をふさぐのはおれの役目だ。背を伸ばして噛みつくような口づけを送り、これから来るであろう嬌声の洪水を飲み干そうと努めた。


「んむうぅうぅぅ❤くちゅっくちゅっ❤うおっうおおぉ❤❤いっぐ❤いぐいぐいぐ――」

「くぅ……!」


 ひだというひだがおれの肉棒に噛みついて、行為の幕を引こうと熱心にねぶってくる。刺激は精巣をゆだらせ、尿管をザーメン用滑走路へと整えていくから、おれの我慢がこじ開けられてしまう。

 きゅっとしまる内壁は絶頂の合図だ。それがわかるくらいにはフォグと体を重ねている。

 だからおれはタイミングを合わせようと、互いのとどめとなるように力強く叩きつけた。


「い――むううぅぅぅ❤❤ふぐおおぉおぉぉ❤❤❤」


 射精の弁が開いたのは同時。おれはフォグの中へと、フォグはおれらの隙間へと、欲情の終着点をぶちまける。

 フォグのごん太ちんぽがビュクビュクと白濁を吐き出して、あっという間に隙間を埋めていく。性機能が向上しているおかげで、子作りしたら一発着床ものの精液を大量に生産できるのだ。

 おかげで部屋には青臭さが開花して、性の色香が埋め尽くす。おれが注ぐザーメンも逆流して、足元に温かい水たまりができていった。


「んー❤んー❤❤」


 脳天までしびれそうな絶頂に浸っていたいところなんだけど、フォグの嬌声を嚥下するのに一生懸命でそれどころじゃない。フォグもそれをわかっているのか、しきりに舌を突き入れて言葉を流し込もうと必死だった。


 やがて快楽のピークが静まれば、潤んだ熊の視線がおれへと降り注ぐ。

 唾液の糸を繋げたまま口を離し、熱っぽく荒い吐息をおれに吹きつけて嬉しそうに微笑んだ。


「これで満足したか❤」

「うん、目が覚めたよ」

「そうか。じゃあ今日もしっかり働けるな」

「……まあ、そうかも」


 あまりに真面目過ぎる。仕事に対して真摯といえば聞こえはいいが、実際の所ワーカーホリックだぞ。


 結合を解除して、フォグの胸を枕に横たわる。ミルクと汗の匂いが鼻をくすぐるけれど、それに興奮するには満足しすぎていた。

 熊の心音は悪夢を振り払うお守りみたいで、寝起きなのにまた眠くなってくる。

 フォグが背中を優しく叩いてくれるからなおのこと、夢より現実の方がずっと素敵だ。


「また怖い夢を見たら、おれに言えよ」

「助けてくれるの?」

「ああ、当然だろ。ジェル様もヤードも、誰だって、きっとお前を助けてくれる」


 だからあの夢のおれみたいに抱え込むなよと、フォグはそう言いたいのだろう。

 

 でも、夢はしょせん夢だ。こんなにも温かいフォグがいてくれるから、大丈夫だと胸を張って言える。

 おれはまどろみを振り払って体を起こし、ベッドから出ることにした。

 仕事の時間だ。おれがこうして働いているのは、みんなをスケベスキルで最強にすることだから、怠けてばかりはいられない。例え夢みたいなことが起こっても、おれが壊れてしまっても、みんなが壊れてしまわないようしないと。


 みんながおれを助けてくれるなら、おれもみんなを助けたい。

 そう思ったから、今日も元気にスケベをしよう。


 だけどその前に、おれを助けてくれた熊へとあいさつを投げないと。

 ここは現実で、夢じゃないんだと確認を込めて。

 おれは優しいフォグへと振り向いた。


「――――おはよう、フォグ」


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POSTEDApr 21, 2024
ARCHIVEDJun 10, 2026