〜ズボンの下には〜
「つばさ〜!こっちこっち〜!」
ショッピングモールの入り口で手を振るまさふみくん。
その姿は、中学の頃よりもひと回り大人になったように見えます。
「久しぶりだなぁ、つばさ!」
「うん!まさふみくんはなんか大きくなったね…」
「あぁ!身長も伸びたし、部活で筋肉ついてるからな!つばさは…なんか子供っぽくなったか?」
「えっ…!」
「なんて冗談だよ!アハハハハハ!」
「そうだよね…あはは」
(…びっくりしたぁ!何か隠しきれてなかったわけじゃないよね?少しちびっちゃったかも…)
子供っぽくなった。
まさふみくんにとっては冗談で言ったつもりのようでしたが、つばさくんから何かしら隠せない雰囲気のようなものでも察したのか、その冗談は核心をついたものであり、つばさくんは内心ドキドキしてしまいます。
まさふみくんはそんなことなど気にせず、つばさくんが手に持ったリュックをじっと見ています。
「それにしても、そんなに大きなカバン持って来なくてもよかったのに…ゲーセンで遊ぶくらいだぜ?」
「こっ、これは着替えが入ってて…」
「着替えも持ってきてるなんて、気合十分って感じだな!」
「うん、そんな感じ…」
とっさに誤魔化せず、着替えと答えてしまいましたが、つばさくんの言う着替えとは汗をかいた時のものではありません。
今もズボンの下にあてているおむつ、それを交換するには大きなリュックじゃないと替えのおむつやパッド、おしりふきなどが入りきらなかったのです。
他にも今のつばさくんには必要なおしゃぶりや哺乳瓶などが入っていることもあり、リュックとズボンの中身を見られるわけにはいきません。
立ち振る舞いなども気をつけないと、普段無意識にやっていることで何かしら勘付かれてしまうかもしれません。
つばさくんには友達と遊ぶのに、隠さなければならないこと、気をつけなければならないことが沢山あるのです。
「じゃあ、行こうぜ〜!」
「うん…!」
昨日今日で急におむつを外すことはできませんし、他にもすぐにはどうしようもないこともあります。
それでも、習慣づけられた幼さを隠し通し、友達と高校生らしい1日を過ごすことができたのなら、きっと赤ちゃん生活を脱却するための一歩になるのではないか。
つばさくんは秘かにそんな思いを胸に抱きながら、まさふみくんとの久しぶりの1日はスタートしていくのでした。