蝋光説
1 / 6
DESCRIPTION

亥子は、今日も調子に乗っていた。


「おら、死ねよ雑魚! ぎゃはははは!!」


ほんの少し、人より運動神経がよかった。一目置かれていたかもしれない。でも、ただそれだけで、特別な力を持ってるわけでも、なんでもなかったのに。少しばかり調子に乗ってしまう……今風に言えばイキッてしまう……そんな彼を戒める大人も、やり返す子どもも、たまたま彼の周りにはいなかった。

「面倒な奴は放っておくのが一番」──令和らしい距離の取られ方。だが、頭の回らない亥子は、そんな彼らのことを“自分に屈した弱者たち”だと勝手に思い込んだ。

さらにタチが悪いことに、似たような友人に恵まれてしまった。止まらない無敵感。どんどん、調子に乗ってしまう。

自分は一番強い、最強の星のもとに生まれた……そんな勘違いを抱えたまま、今日も彼は暴君を気取る。




一気もまた、調子に乗っていた。


「先生! またイッキ君が暴れています!」


女子の叫びにも臆することなく、一気は学校の廊下の窓ガラスを拾ったブロックでたたき割る。

そこに特別な理由なんてない。音楽の授業なんてつまらない、なんとなく退屈だった──それだけ。


この古い町では、そんな彼を「まぁ子供のやることだから」と流してしまう大人が多かった。もっときちんとした町なら、支援の手や配慮が届いたかもしれないのに。

周囲の諦めにつられて、一気自身も“自分がおかしい”と気づくことはなく。

そうして彼は、いくつになっても好き放題に暴れ続けた。中には、そんな一気を笑ってはやし立てる男子もいたから、一気は止まらない。ほら、どうだ。こんなつまらない時間をぶち壊すオレは、かっこいいだろう!そんなうぬぼれ、舞い上がり。今日も彼はヒーローを気取る。


彼らにとって、それはある意味で“幸福”だった。

どれだけ迷惑をかけても責められることもなく、責任を問われることもない。


そして同時に、ある意味で“不幸”でもあった。

こんな子供を今さら躾け直してやろうなどという酔狂な大人は、もうどこにもいない。


──だが。

その「突然の出来事」で、すべてが変わることになる。



【基本的人権改正により】



「お、おい! なんだお前ら!! 放せっ!! 放せよ!!」

「う、うわぁあああ!! こ、こんなことしていいと思ってるのかっ……ぐぁっ?!」


今まで誰からも叱られず、戒められずにきた彼らの前に、初めて“暴力”が降ってくる。逃げ場のない痛み。大人たちが遠慮なく、痛めつけてくる。

それがすべて《合法》だったと知るのは、さらに後のことだ。

亥子と一気は、突然にして人権を失った。



【行状よろしくない者は、かかる権利を享受すること適わず】



国民アンケートによって「更生が必要」と判断された者は、たとえ法を犯していなくても身分を剥奪される。

以後は「社会に適合するまでの矯正処遇」が行われる。通常の刑務所の数十倍、数百倍の罰が与えられると噂されているが、詳細は公開されない。

助けは来ない。規定上、来てはならない。まぁ、そもそも誰も来たいなんて思わない。そんな存在なら、そもそもここには連れてこられていないはずだから。


「ぐぁあああああ!! 助けてっ!! 助けてくれよぉおおおおお!!」


少年二人は、この処遇施設で、果たしてどんな生き物に作り替えられるのか。

それが不幸なのか、幸福なのか。まだ、誰にも分らない。



● 蝋光説 ●



この国は、国土の7割近くが森林や火山地区、人の生活圏に適さない領域で占められている。

住宅も店も何もない、その“使い道のない土地”が、今では彼らの住まい……いや、飼育場所として利用されていた。


「う……ぐっ……た、たのむ……もう、足が……足が痛い……」


か細い少年……亥子……の声は、乾いた空気を裂く鞭の音にかき消された。


ビシィッ。


「うぐぁあああ!」


「はは。なんだって? 聞こえなかったな」

「休むな、しっかり働けよクソガキ!!」





鞭をふるった男たち。まともな人間なわけがない。大の大人が、自分たちみたいな子どもに暴力をふるって、笑顔でいるなんて、気がおかしい。サイコパスってやつだ。いや、you tubeでみたそんな話とはくらべものにもならない、いかれた大人たち。

一気は、後ろから響いた悲鳴に反応して喉が震えた。

喉の奥まで上ってきた弱音を、必死に飲み込む。

吐くかわりに、心の奥底で呪いのように言葉が渦巻いた。


(……ふざけんな。こんなの……こんなの、おかしいだろ。ありえない……! 許されるわけがない……!)


ただ、暴力を震われているからではない。すべてが異常、ありえない。許されるわけがない。

まず、自分たちに強制させられている仕事が狂ってる。砕いた岩を運んで、捨てる。砂防ダム、とやらを作るためにさせられていると、まだかろうじて自分たちが人間扱いされていたときに聞いた。ああそうだ、あのときはまだ余裕があった。なんか警察みたいなのに連れてこられたけど、どうせすぐに帰れるはず。だって今の時代、子どもってだけでなんでも余裕。ちょっとむかつくことをされたらむしろバズるネタGET、痛い目を見るのは向こうだって本気で思っていたのに。


服を全部脱がされてから、何かがおかしいと気づき始めた。

怒鳴ったら、奥歯が折れるほど叩かれて、これはやばいって理解した。

もう、ここに連れてこられて、何週間たつのかなんて覚えてないけど、その間一枚の服も着せてもらっていない。だんだん、秋になってきて、もしかしてこのまま家に帰れない……それどころか、服すら、もらえないままなのか??


それからは恐怖で行動を支配されるようになる。毎日、毎日岩を運んでいる。犬みたいに、四つん這いになって。

全部いうことを聞いているのに。そう。

こいつらのいうとおり、ケツの穴だって……おもちゃに、させられているのに!


「夜はまたおまんこ、掘り壊してやるからな。楽しみにしてろよッ」


その言葉に少年二人は震えた。おまんこ。そのエロワードは知っていた。

ちんこのための穴。母親にも教師にもクラスのブスにも、どんな女にもついてるきもくてエロイ穴。

でも、自分にはついてないもの。女だけについてるキモイもの。そう思っていたのに。


仕事の前と、後、彼らはおまんこにもさせられていた。いや、仕事中も。

手で押せばいいはずのトロッコに、鎖でつながれるだけでなく、尻に棒まで刺されてつながれる。

途中で抜けたら、「怠慢」「非協力的」という評価のもと、さらに罰として、ちんこの皮や乳首にも穴をあけられて、つながれる場所が増える。





「畜生…なんで、オレが、こんな目に…!!」


亥子は爪がつぶれたつま先をなんとか地面に押し付けて、立ち上がる。目の前のトロッコを押す。だけど、押しすぎると、つながれた皮膚まで引っ張られるから、丁寧に、気を付けて。


「この間まで、世の中ちょろくてイージーモードだったはずなのに…」


一気は、後ろから押されるトロッコの勢いにつぶされないよう膝に力をいれた。

下り坂は特に危険だ。岩の重さで勢いがついたトロッコ、その先の棒が、さらに尻の中に入り込んでくる。

一度そのせいで、激しくおもらしをしてしまったときは、生まれて初めて、死にたいと思うほどのむち打ちをくらった。その傷跡はもう、一生消えないだろう。


「助けて…助けて、母ちゃん……。」

「ごめんなさい……ごめんなさい……もう、悪いことしないから……許してくれよぉ……!!」


痛いのも、汚いのも

臭いのも不味いのも、全部ヤダ。

こんなことになるなんて知らなかったんだ。こんな……みんなは、もしかして知ってたのか?だったら、ずるいじゃないか。オレだって、知ってたら……こんな、恥ずかしくて苦しい目にあうなんて、わかってたら、悪いことなんてしなかったのに。


誰でもいいです。助けてください。

お願いします、許してください。





「許すわけねぇだろ?アホガキ。」


仕事が終わっても、地獄は終わらない。

予告されていた通り、ボロボロになった体をつかみ上げられ、性処理道具として使われる二人。


別に男たちが欲望強く持っていて、ぶつけてるわけではない。

すでに、体も、心もぼろぼろで、それでもなお、この悪童たちを踏みにじるための、ただの手段でしかない、性暴力。

誰のためにも、なんのためにもならない。そんなものに、少年たちの心はけがされていく。


捕まった日には、アナルセックスを仕込まれて。二人とも精通もまだだったから、そこからしばらくしてから迎えた初めての射精は、名前も知らぬ中年男のチンポを尻の中にいれながらだった。それから、毎日見世物として射精を強制されてきたが、そのすべては、何かしらの拷問とセットだった。同じ年ごろの子のような、気持ちのいいオナニーをまだ彼らは知らない。自分たちの体から出てくる、膿のようなもの。何のためのものでもない、ごみのような汁。それが、彼らにとっての精子だ。

小便よりはまだ少し味がマシなだけの、汚物。


「おごっ!うぎぃいい!!!」


この日、最初にイかされたのは一気だった。昼の作業中の間拡張されつづけていた尻の穴に、左手の指、四本。鼻の穴に、右手の指一本ずつ。太い男の指を詰め込まれたまま、オナニーを命じられた。ぶさいくで、下品な顔をしながら、それでも一気は頑張って笑顔を作ろうとする。男たちが構える、スマホのレンズに向かって。


「そうだ、いいぞ。そうやって、いい子の顔をキープできるなら、もしかしたら明日にでも卒業できるかもなぁ。」

「は……はぃい……いい子、いい子になるから、終わりに…終わらせてくださいぃ……!!」


こうして罰を受けて、二度と悪いことはしないと誓う姿を認められたら、ここから出してもらえると聞いた。そんなのはきっと嘘だ、最初はそう思っていた。だけど、もう、それぐらいしかすがれるものがなく。みじめで、かわいそうな変態になった姿を、こうして毎日何度も、何回も撮影されている。名前、小学校名、住所。全部言わされながら、自分がみっともない生き物であると宣言させられた。こんな姿が本当に、誰かに見られているのか。それとも、やっぱりただのウソで、男たちの戯れでしかないのか。どちらでも、地獄でしかない。


「こっちのガキは、精子でねぇなぁ。こづくりもできねぇ役立たずじゃ、生きてても仕方ないよな。ここで死ぬか?ん?」

「は…はぎぃ…あ……っ…ば……」


亥子は昼間に受けた痛みのせいで、もうボロボロだった。実は昼間の途中にも、その日興奮気味だった鞭打ち男の一人に掘られて、いかされていたから。何か必死に応えようとしているが、日本語には聞こえない、いや、人間の言葉にすらなっていない。汚れにまみれた細い体、尻の穴からは、腸の中から出てきたものか、外から注がれたものかわからない汁が溢れている。


「おい、ガキ。友達だろ?お前もかわいがってやれよ。」


自分の番は終わったと、安心していた一気は途端、表情がゆがんだ。こんなやつは知らない。同じようにここにつかまっていることには同情するが、こいつだってろくでもなかったやつで、だったらいっそオレの代わりに囮になってくれたほうが助かる。こいつだってどうせ、オレのことはそう思ってる。そんな関係性の相手のことなんて、どうでもいいけれど、逆らう権利はそもそも存在しない。

こいつのことなんて、どうでもいい。それなのに、毎日、つがいのように、肌を絡めさせられる。キスも、セックスも、こいつとさせられた。それ以外のことも、全部。



「お……んんんん……ッっ」

「そうそう、そうやってケツの穴しっかりクンニしてやれ。上手に勃起させないと、またお仕置きだからな?」


こうやって、ほかの誰にもしたことないこと、されたことないことを、毎日、こいつと。


「う……うぅう…おえっ ……うげっ」


目の前の尻の、真ん中の、ひどい色になった尻の穴を、べろべろと舐める一気。

舐められている亥子の顔面には、その真上から男の小便が降り注がれている。


「口開けろ!石ころぶちこまれたくなけりゃ、小便終わるまで勃起続けてろよっ!クソガキ共!!」


男の怒号に、失神していたように見えた亥子の口が少しだけ開いた。臭い小便に、舌を伸ばす。


「きれいな体で帰りたかったら、しっかり糞穴気持ちよくしてやれ!」


一気もまた、舌の動きを激しくする。小便よりまだこっちのほうがマシ、そう心の中で唱え続けて。

そう思っていたら、一気の頭にも小便が降り注がれた!

鼻の下、口元にも降り注がれる小便。アンモニアの臭いで染まった舌で、尻舐めを続ける。

こうやって肛門をなめることで、体が謎の反応をおこす。自分の尻の穴も、ゆるくなっていることに一気は気づいた。


二人そろって、変わってしまった。

小さいほくろ程度の大きさだった乳首は、大きな豆みたいになって、単語帳のカードリングみたいなものがしっかり刺さっている。

小便のためだけの存在だったちんこは、男たちのおもちゃ。毎日引っ張られたり、殴られてるせいか、倍ぐらいに膨れてしまった気がする。そして、時々金玉が持ち上がって、白い膿が溢れてしまう。

尻の穴のことは考えたくない。毎日、相手の穴が広がっていってるのを見ている。それは、そのまま自分の穴もそうなってるってことで。

こんな穴になってしまったと、知られてしまったら、もう、元のような人生を過ごせるわけもない……なのに、なんで、おれたちは、こんなことをしているんだろう……。


「あ……あはは……ああああ……」


喉から、悲鳴のような、笑い声のような、自分でもわからない音が出て

そして、少しずつ目の前の景色が消えていった。









気を失ったのは、どれくらいの時間だったのか分からない。

気がついたのは、朝の冷たい光が地面を這う頃だった。


最近、朝目が覚めると思うことがある。日に日に、自分の体が自分のものじゃなくなっているかのような感覚だ。

確かに自分の体のはずなのに、知らなかった痛みや、恥や、ほんの少しの興奮と刺激が。

あんな目にあったっていうのに、朝から固くなっているちんこが。

自分のものだなんて、信じたくなくて。


「……あ……ぁ……」


一気は、かすれた声……というより、空気が勝手に逃げただけの音を喉から吐く。

亥子は声すら出なかった。

チンポの汁まじりの小便でねばついた喉は、固く乾いて閉じてしまったようで、ただ息が震える気配だけが漏れた。


朝だ。だが、朝という事実は何も救わない。

今日も仕事がある。男たちはいないけれど、おそらく朝食でも食べているのだろう。その残り物が、自分たちの餌だ。

昨日と同じ、明日とも同じ、延々と続く作業だけが、一気と、亥子の時間を支配する。


立ち上がらなければならない。立ち上がらなければ、罰が増える。それを知っているのに、体が動かない。

だめだ、また涙が溢れそうで。もう、いよいよだめなのかもしれない。震える体が、生きることをもう嫌っているのがわかる。


「……行くぞ……」


亥子が、そう言った。

一気は驚いた。こんな風に、声をかけられるなんて今まで何度あっただろうか。

彼のその目に、生きる意志はもはや見えないのに。


二人はよろめきながら立ち上がった。

昨日の痛みは、もちろん消えてはいない。全身に残っている。だが、それすらも彼らにはもう判断がつかなかった。


ここを出られる日が来るのか?何かが変わるのか?

“もしかしたら終わるかもしれない”という期待だけは、

どれほど体が汚されてしまっても、消えずに残り続ける。


それこそが、少年たちへの最も重い罰なのだろう。いっそ消えてしまったほうがいい、蝋の火のような思いで胸を焦がしながら。

二人は今日もまた、壊れたまま生かされるために、岩を運ぶ列へと歩いていった。


======


没イラスト




torikick PIXIV FANBOX 200 favs
VIEWS1
FILES6 files
POSTEDDec 1, 2025
ARCHIVEDDec 1, 2025