Previous Post

「絶望に、渇望」(創作小説)

Next Post
「絶望に、渇望」(創作小説)
1 / 8
DESCRIPTION

最近のインターネットは、なんだかすごく荒れている。

スクロールするだけで、勝手に決められた「おすすめ欄」、誰が決めたか分からない「トレンド」。

どこか遠くの学校の名前がついた、ひどいいじめの動画がポンポン回ってくる。

誰かが地面に押し倒されて、笑いながら蹴られたり、髪の毛引っ張られたり……ひどく嘘くさくも見えるけど、AIのインチキ動画に鍛えられた世代だからさ。並べてみると、わかる。これはリアルだ。同じ時代のどこか別の場所で、オレと同じような学校で起きている、現実。

見てるだけで、胸がざわつく。

たまたま、そうじゃなかっただけで、俺がこうなってる世界線だって、きっとどこかにあったはずなんだ。


オレはまぁまぁちびで、しかもデブだから。体型的に、ターゲットにされやすいタイプだもん。

でも、実際にはそんなこと今までに一度もない。親がまぁまぁ太くて(これは体型の意味じゃない)治安がいい地域で暮らしてるのもあるんだろうけど。学校にも、友達に恵まれてたからさ。




「あー、帰りたくねぇー。家帰っても最近妹マジうざくてクソでさぁ。」


少し悪態の多い、たくみも。


「いや兄弟いるのうらやましいけどな。一人っ子の身としては。ケンもそう思うよな?」


最近女子にイケメンって噂されてるひなたも。


こんなオレと仲良くしてくれて、クラス違ってもタイミングあえば一緒に帰ることが多い。

他にも友達はいる。クラスでも、放課後も、オレはまぁまぁ、いつも誰かと一緒にいるから。いじめなんて、異世界チートと同じぐらい、遠い世界の話みたいに感じるんだ。

みんなでくだらない話で笑い合って、スマホ見せ合ったり。フツーの……フツーじゃないのかな、こんな平凡な時間って、っておもうことも最近多いけど……フツーの、いつもの時間。




「ごめん、オレは先に帰る。用事あるから」


たくみの、どこかに寄り道したいという誘いを、オレは断った。家までの道、分かれ道の角にすすむ。


「えー、付き合い悪いな。」

「まぁまぁ。んじゃ、また明日!」

「ん、バイバイ。」


くるっと背を向けた。そのまま、一人で歩き出す。

夕方の道は、少し静かで、風が気持ちいい。


気持ちよくて、少しだけ寂しい。

それが、熱くなり始めたオレにはちょうどよかった。


===


家に着いて、玄関のドアを閉めた瞬間、静けさが体に染みてくる。

親はまだ仕事だし、他に住んでいる家族は居ない。少なくともあと2時間は、完全に一人だ。

部屋に入って、誰もいないのは分かってても、内鍵を閉める。いつも一番最初に脱ぐのは、べたついて気持ち悪い気がする靴下だ。それからシャツ、ズボン…パンツまで、全部脱ぎ捨てて、ベッドにドサッと倒れ込む。素肌に、少しひんやりしたシーツが気持ちいい。太った体が沈み込んで、なんだか安心する。




少しそうして、肌のシャリ感を楽しんだ後、一度立ち上がって。ズボンに入れっぱなしだったスマホを取り出すと、昨日からずっと気になってた動画を開いた。

それは、おとといぐらいからネットで炎上してた、流出したいじめ動画。画質は粗いけど、映ってるのはぼくよりちょっと背が高いくらいの男の子だってわかる。それが、同級生か上級生か分からないけど…全裸にさせられて、首に縄みたいなものをつけられて、犬の散歩みたいに歩かされる動画。

囲まれて、笑い声が響いてる。自分たちでしているのに「キモいわ」って声が重なってる。見てるうちに、胸の奥が熱くなって……思わず、のどの奥から声が出ていた。


「……いいなあ」


自分の言葉が部屋に響いて、とてつもない罪悪感と、それを打ち消す興奮が湧いてくる。

不謹慎だ。この動画の彼は、こんなこと望んでいないのに。

でも止まらない。


パシン。

自分で、裸の尻を軽く叩いた。

もう、それだけで、チンコが固くなっていくのが分かる。ああ、もう。こんなこと、止めたほうがいいのかもしれないのに、止められない…。

脱ぎ捨てたばかりのズボンから、さっきまで巻いていたベルトを抜き取って、それを首に巻いた。クラフトテープを両足に巻く。さすがに手までは縛れないから、ここまでだけど……もう、こんな格好で十分だ。


金属のバックルの音が、カチャンと首元で鳴る。革の感触が、首を軽く締め付ける。

スマホの画面では、まだ動画がループしていた。蹴られてうずくまるあの子を見て、オレはまた小さくつぶやく。


「……いいなぁ。」


自分が変態だって気づいたのは、少し前のことだ。チン毛が生えて、オナニーを覚えて。そこまでは、普通だったはずで。

だけど。使い方に慣れてきたスマホに流れてきたいじめ動画。これが、覚醒のきっかけだった。無性に興奮する。こんな風に、されてみたい。頭がおかしくなったのかも、って。でも、色々調べていくうちに、オレは、オレが「マゾ」っていう趣味だってことを知った。名前がついて、欲望に輪郭がついてからは……どんどん、おかしなことをやりたくなって。

生えたばかりのチン毛を剃ってみた。もう、一生生やさないかもしれない。

覚えたばかりのオナニーが、普通だったのはほんのわずかな期間だった。今じゃ、こんな、恥ずかしい格好じゃないと、出した気にならない。


「あ………いじめて、いじめてほしい……ッ」


男と恋愛したいとか、そういうのじゃない。ホモってわけじゃない、でも女の子にいじめられたいわけでもない。ホモの、アナルセックスをしたいとも思わない。

ただ、虐げられたい。

人間じゃない扱いされてみたい。

誰かに踏みつけられて、笑われて、痛いって言っても許してもらえなくて……。

想像するだけで、胸がざわざわする。

尻をもう一度、自分で叩いてみる。パチン、と乾いた音が部屋に響いて、ちょっと痛い。でも、その痛みがじんわり広がって、気持ちいいがよくて……。


オレは、絶対おかしいのに。

こんなの、みんなにばれたら、どうなっちゃうんだろう。

友達だと思ってくれてたみんなに、オレが、こんなマゾだってばれたら……。


「おいケン!一人で帰ろうとすんなよ!一緒に帰ろうぜ!」

「ほら、お前変態なんだろ!ズボンなんか脱げよ。フルチンで歩かせてやるからよ!」

「はっ?! 何勝手にイッてんだよ!クソが!」

「頭おかしいんじゃねぇの。何とか言えよ、ケン!」


===



「あ、あ、あ、いくっ いくっ ああああ あっ!!」






ああ、またやっちゃった。自分でも嘘って思うぐらい、勢いよく精子が出ちゃった。チンコには、触ってないのに。友達をオカズにするだけで、簡単に射精する体。

もう、ずっとこんなオナニーを繰り返してて。


「オレは、最低だ……」


自分で言って、その言葉に胸がずきんと痛む。でもその痛みさえ、なんだか心地いいんだから、本当にオレはしょーもないやつだ。

あんなにいいやつらなのに、オレをいじめる妄想に使っちゃってる……。


こんな最低なオレのこと、本当にいじめてくれたらいいのに。

本気で、踏みつけて、笑って、捨ててくれてもいい。

そうしたら、もっと気持ちよくなれる気がする。




ふと、ほったらかしていてスリープモードになっていたスマホを手に取る。

カメラをセルフィーモードに切り替えて、画面を自分に向けた。


写ってるのは、首に制服のベルトをきつく巻いた、赤らんだ顔の自分。

汗でテカテカ光ってる太った体。

下半身はぐちゃぐちゃで、シーツに白い跡が残ってる。


「……これが、オレの本当の姿……。」


もし、この写真を見せたら、どんな顔されるんだろう。想像するだけで、心臓がばくばく鳴り始める。

メッセージで、送りつけてみたらどうなるんだろう。

最初は「え、何これ?」ってメッセージが来て、

すぐに「ケン?」「マジ?」「キモすぎwww」って。スクショされて、拡散されて、

「汚ねぇ裸!」「変態だろ」「学校来んなよ」そんな言葉を投げつけられるはず。


その想像で、また下半身が疼き始めてる。

ああ、だめだって。心臓の音が耳に響く。頭が熱い。目が潤んできた。

震える指が、カメラのシャッターボタンに伸びていって…。


まだ、押してない。

まだ。

まだ。

でも、いつか。


終わる未来を望んでいる、最低な生き物が吐き出した汚い汁。ティッシュで拭ってごみ箱に捨てた。





torikick PIXIV FANBOX 205 favs
VIEWS1
FILES8 files
POSTEDMar 16, 2026
ARCHIVEDMar 15, 2026