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1.
「この世界は2.5周目なんです!」
「あっ、それ平原さんに聞いたんでもういいです」
銀髪ロングの少女、『水崎紫乃』が得意げに語る遅れた情報をオレこと『白井弟』は手で制した。
場所は移って、月ノ宮聖イネス学園の教会内。日が落ちている時間帯ではあるが、教会の照明が昼と変わらない輝きで俺たちを照らしている。そんな照明とは真逆の印象の顔つきで、水崎さんは話の続きを口にした。
「そうですか、ではあなたのフラグメントを回収して『コモン』の扉を開き、不安定化していつ崩壊への道を辿るかも分からないこの世界を救うという話も省略して――」
「すいませんでした!詳しいご説明をよろしくお願いします!!」
「まったく、始めから素直ににそうしてください。いいですか…」
ところどころお説教を喰らいながらもこの世界の説明は続く。この人、割と説明が上手いな。教祖様かなんかなの?
話を要約するとこうだ。
「つまり、世界の管理者が今いない状態だから、世界が不安定化していて……それを元に戻すためには、人の心が管理されてる世界『コモン』に行く必要があると」
「その通りです。その後にもしなければいけない事があるんですが…話がややこしくなるので、今はそこまで理解していただければ充分、後はあなたのフラグメントを使う事を許可してくれれば、すぐにでも扉は開き、問題は解決。世界は平和になるでしょう」
「…ちなみに、フラグメントを使った後、オレはどうなるんすか?」
「病院のベッドで、一生可愛いナースさんにお世話してもらえます」
「廃人じゃねーか!アンタ、オレの命をグーでパンチしていいと思ってんだろ!?」
「この世界に殿方の人権などないのです!」
「ご説明ありがとーございました。グッバイ月ノ宮!」
きびすを返し、教会の出口へと足を向かわせる。当たり前だ!こんな倫理観狂ったところにいつまでもいられるか。
「というお話は冗談で、もう一つだけ方法があります」
ピタリ、と足を止め、声の主である水崎さ…もう『水崎』でいいや、に向き直る。まあ、世界の行く末とかかかってるみたいだし、話だけは聞いといて損はないだろう、うん。
「その方法は安全なんだろうな?」
「もちろんです。時間はかかりますが、あなたの命に危険はありません」
「…………聞かせてくれ」
「承知いたしました。その方法とは…」
2.
「その方法とは…白井さん、あなたが写真を撮る事です」
「は?」
あまりにスケールが小さくなった事象に、間の抜けた声が出てしまう。コツコツとオレに近づいてきながら水崎は説明を続ける。
「あなたが気絶している間に、お持ちのカメラを調べさせていただきましたが、その中にリフレクターと同じ『想いを汲み取り力を発揮する機能』が確認されました。」
「いやいやいや、これ爺ちゃんの形見だし、なんでそんな……」
「さあ、理由は分かりませんが事実です。あなたがシャッターを切る時に、被写体の理想の姿を映し出すなんて事ありませんでしたか?」
……思い当たる節がありすぎる。
姉ちゃん撮った時、服のON/OFFができたのはそういう事だったのか。
「どうやら心当たりはあるようですね。つまりは、その機能を使って、あなたが撮る写真にフラグメントの想いを乗せる。それを集めてコモンの扉を開く…と、そういう作戦です。」
「なるほどな、写真に気持ちが乗っかるってヤツだから安全かもな。
展覧会用の写真を撮りに来たオレの目的とも外れない。
でもさ、その扉を開くには何枚くらい撮ればいいんだ?」
よくぞ聞いてくれましたとばかりに不敵な笑みを浮かべ、水崎はバッとウデを振り上げ、ある一点を指し示す。
「ここにあるフラグメントの数以上です!」
3.
水崎が指し示した先にあるものは『ステンドグラス』だった。
そこには色とりどり種類もまばらな花達の模様が、満員電車の中のようにギュウギュウと……って
「は!?これ全部フラグメントなの?何個あるの?ってか抜き取られた人達大丈夫!!?」
「…………ここにあるフラグメントの代わりにあなたの写真を埋め込み、少女達のフラグメントを持ち主に返すことから始め…」
「いやいやいや、さも当然のように説明続けてもごまかされないからな!?フラグメントって人の心だろ?それ抜いちゃマズいでしょ!!」
「うるさい人ですね!そんなことは分かりきってますよ、文句なら2周目の私に言ってください。この周回が始まった時から、すでにこの状態では手の打ちようがないでしょ。……本当、馬鹿な事をしました…」
そう言って、ステンドグラスに目を向ける水崎は、本当に悔やんでるように見える。前に何があったのかは知らないが、こいつはこいつで真剣に自分の過ちと向き合い、罪を償おうとしてるのかもしれない。
「分かったよ、良い写真を撮るってだけの話なら協力させてもらう。
ざっと100枚くらいか?少しキツイけど頑張ってみるよ」
「ありがとうございます。まあ、あなたの好みはすでに把握してるので、案外簡単に終わるかもしれませんよ」
含みのある笑みを浮かべてそう言い放つ水崎の手には、ひらひらと3枚の写真が踊っていて……って
「んな!?姉ちゃんの写真…か、返せ!!」
常に、お守り代わりに懐に忍ばせている自身の宝を取り返すために、必死の形相で、水崎へと手を伸ばす……が
<ズウゥゥゥゥン!!!!>
突如として、重くなる大気の衝撃に、上から押しつぶされ、床に叩きつけられる。
『忘れてた……こいつもあの変態痴女達の仲間だったんだ。何かしらの能力持ちなのは当然、警戒すべきだった』
すぐに重さは消えたものの胸から落ちて息が苦しい。
……う、動けねえ
「へえ~、気絶されてる時に拝借したものですが、これはあなたのお姉さんの写真だったんですね。綺麗な方です。」
「ぐっ……」
まとわりつくような目で姉ちゃんの写真を舐めまわす水崎をただ上目遣いで睨みつける事しかできない。
「これだけ綺麗だと自慢のお姉ちゃんなんでしょうね~、さぞ写真映えもするでしょうし、ひょっとしなくてもあなた……」
「!!」
マズい、姉ちゃんが好きな事バレて……
「白井さん、あなた制服(ユニフォーム)フェチでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・ふえ?」
予想してたものと全く違う方向の言葉に、つい間の抜けた言葉が出てしまう。そんなオレの様子などお構いなしに水崎は、酔いしれた得意顔で自論を展開する。
「隠してもバレバレです。この写真、被写体はお姉さんですが、
レオタード、体操服、チアガールと衣装がバラバラです。
そしてあなたは、結構ひねくれた性格してますし、さぞ女の子とは縁のない青春を送っていることでしょう。
なので、仕方な~く、お姉さんの写真で自分の欲望を満たしている…違いますか?」
…
……
「…………ウン、ソノトオリデス」
「やはりそうですか!ならあなたに協力していただく手前、数多の衣装は私が用意して差し上げましょう。感謝してください」
自分の推察が正しかった事がよほどうれしかったのか、上機嫌で鼻歌を歌い始める水崎。
その水崎にバレないようにオレは、唇を噛みしめ、必死に本音を押し殺し続ける。
『耐えろ、耐え忍ぶんだオレ!こいつに姉ちゃんが好きだと知られたら、姉ちゃん拉致って人質にするかもしれない、フラグメント抜かれる可能性だってある。姉ちゃんの安全のためだ、反論するな!オレ、頑張るよ、姉ちゃん!!』
ひとしきり満足し終えたのか、水崎は思い出したかのように床に這いつくばるオレに向き直り、新たな情報を口にする。
「まあ、あなたは強制されているようで不満もあるでしょうが、全てが終わった時、あなたにも素敵な報酬が用意されているので、頑張ってください」
「報…酬…?」
「そうです」
スッと人差し指を立て、マジメな目を向ける水崎。
「このミッションが完遂できれば、アナタの願いが一つだけ叶えられます」
4.
「なっ、アンタ何言って……」
そんな上手い話あるわけないだろと疑うオレに、水崎はブレることなく言葉を続ける。
「コモンとは、人の心の集合的無意識の世界、人の心に触れられる世界です。つまり人の心に介入したり改ざんするなんて悪行も可能。また、コモンにはエーテルと呼ばれるエネルギーが満ちていて、強靭な肉体を持つ事だってできます。
例えを挙げるならば、あなたを『大金持ちの親友に仕立て上げる事』や『モテモテムキムキハーレム男』にする事だって夢ではありません。」
「…………」
「あなたにだって願望の一つや二つあるでしょう?さて、白井さん、
あなたは何を願いますか?」
……オレの願いだって?そんなのとっくに決まっている。
ずっとそれを追い求めて、それができる手段はないかと
それが叶えばどんなに幸せかと思い続けてきたんだ!
打ちつけた時の胸の痛みはすでに消えた。だから、今度は――
過去から続く胸の痛みを消す番だ。
そう心を奮い立たせることに呼応し、二本の足に力をこめて、大地を踏みしめ立ち上がる。
そしてオレは――
自身のココロの内を再び刻み込むかのように――
世界中に反射させるかのように――
たった一つの狂おしい願望をこの世界に解き放った。
「オレの願いは、白井日菜子…姉ちゃんの足を治す事だ!!」
『ブルーリフレクションR Piss (Picture Success Story)』
始まります。
―――――――――――――――――――――――――――――――
ってなことで、長くなりましたが、弟君の物語、本格始動です。
読むのダリ~って人用にまとめると
・弟君の持つカメラには、想いを汲み取る能力がある
・その機能を使って撮った写真にフラグメントの想いを乗せる
・教会のフラグメントと写真を交換していく
・ココロこもった100枚撮って、コモンゲートを開く
ってな内容になってます。
弟くんはヒナ姉ちゃん一途ですが、男の子ではあるので、月ノ宮の女の子達のかわいい~写真撮ってくれるはずです。
紫乃たんも手伝ってくれるし大丈夫でしょう。
今回、ヒナちゃんの幼少期や中学時代の姿を想像で描いてみましたが、大きなポイントとしては
『星型の髪留め(ブルマ姿ではブレスレット)』にこだわってます。
これはユズライムがヒナちゃんの演技を見に来た時に渡したもので、
『二人にとってすでにエトワールなんだよ』という意味合いを持たせる為に設定したものです。
ただ、二人が小学生の時に作ったものなので形もそんなにしっかりしてません。だからヒナちゃんが成長する度、周りからは、「もうちょいオシャレに気を配った方がいいんじゃない?」とか言われるんだろうなと想像しました。が、ヒナちゃんの事だから、違う形で着け続けるだろうと思い、体操服姿(中二)では、ブレスレットに変化させて身に着けてもらってます。
というわけで、まだまだ弟くんの物語は続きますので、応援していただけると幸いです。『燦』で否定された可能性、しっかり見せてやんよ!