「……ん……ん? あれ……私、なにして……ここは……?」
軽い頭痛に苛まれながら、私は目を覚ました。
未だ頭はぼんやりとしているけれど、なんとか状況を整理しようと試みる。
「って、な、なにこれ!?」
手足に違和感を感じて身体を見下ろすと、私は椅子に座らされた状態で身体を拘束されていた。
金属の枷のようなものでガッチリと椅子に固定されていて、少しもがいた程度じゃびくともしない。
「なんで、こんな……」
どう見ても今の状況は誰かに誘拐されて監禁されているとしか思えない。
だったら目的は身代金?
もう家族はこのことを知っているの?
私、一体これからどうなるの?
考えるほどに不安が押し寄せてくる。
「……あの、目が覚めたんですか?」
隣から声をかけられ反射的に首を向ける。
薄暗くて見えづらいけれど、そちらにも私と同じように椅子に拘束されている女の子がいた。
歳は私より少し上だろうか。
大人しそうな、髪の長いお姉さんだ。
「もしかして、あなたも……?」
「はい……わたしも、気づいたらここにいて……。わたしたちだけじゃありません。あちらにも……」
お姉さんが私を挟んだ反対側に視線を促してくる。
そのまま視線の先に顔を向けると、私たちと同様に椅子に拘束された女の子の姿があった。
髪は綺麗な金色で、日本人離れした顔をしている。
外国の子だろうか。
歳はまだ幼く、見た目の可愛らしさも相まってまるでお人形さんのような女の子だ。
「えっと、日本語わかる?」
「ハイ……むずかしいコトバじゃなければだいじょうぶデス……ワタシたち、どうなるんでショウ……?」
女の子は返事をしてくれたけれど、怯えきった様子で震えていた。
無理もない。
私だってこれからのことを想像すると血の気が引くような思いだ。
するとそのとき、突然眩しい光が私の視界を覆った。
「な、なに……?」
少しずつ目が慣れてきたので瞼を開くと、どうやら私たちがいる部屋の灯りがついたようだった。
部屋全体が眩い光に照らされていてはっきり見える。
思っていたよりも広い部屋に私たちは閉じ込められていたようだ。
けれど、何よりも目を引くのはこの部屋の壁だ。
「この部屋……周りが全部鏡になってる……?」
「一面鏡張りですね……」
見渡す限り、壁も床も天井も全て鏡だった。
どこを見ても不安そうな顔をしている私たちが目に入る。
こういうアトラクションがどこかの遊園地にあったような気がするけれど、今の状況ではただ不気味に思えてならない。
「どうも、こんばんは」
いきなり聞こえてきた男の声に、私たちは一斉に視線を向けた。
そこには、スーツ姿の初老の男が立っていた。
張り付いたような笑顔を浮かべていてどこか胡散臭さが滲み出ている。
もしかして、この男が私たちをここに閉じ込めた犯人?
「手荒な歓迎をしてしまい申し訳なかったね。君たちに危害を加える気はないから安心してほしい」
「……だったら、早くここから解放してほしいんだけど」
「残念ながらそれはできない相談だ。君たちは今宵のショーの主役なのだからね」
「ショー……?」
初老の男の不審な言葉に嫌な予感を覚える。
すると、私の左隣にいるお姉さんが口を開いた。
「こ、こんなことやめてください……これは犯罪ですよ……? 早く解放しないと、あなただってタダではすみませんよ……!」
お姉さんは震える声で初老の男へと告げる。
きっと私たちの中で自分が一番年上だからと勇気を振り絞ってくれているのだろう。
「はっはっは。たしかに、これは非合法なパーティだ。だが、こんなことは世界中で行われている些事の一つ。手回しさえすれば何も問題はない」
「っ……! でも、わたしのお父様に言えば……」
「ほう、君のお父上……トレジャーアーツホールディングスCEOの大久保雅之氏のことかね? 大久保佳織さん」
「っ!?」
トレジャーアーツホールディングスと言えば誰でも知っているような有名なベンチャー企業だ。
そのCEOの娘さんということは、このお姉さん、佳織さんは相当な資産家の娘さんということになる。
私と同じように。
「君だって考えたことはあるのではないか? 名家に生まれた娘ならばいつかこのような目に遭う可能性もあると。君たちもそう思うだろう? ミラージュインタラクティブCEO、ジェームス・ガルシア氏の娘さん、メアリー・ガルシアさん。そして、株式会社TTNの代表取締役社長、伊藤昌治氏の娘、伊藤乃々香さん」
初老の男は私と私の右隣の女の子、メアリーちゃんにもそれぞれ言葉をかける。
ここに誘拐されている女の子は三人とも資産家の娘のようだ。
だったら目的はやっぱり……。
「身代金……ですか?」
佳織さんが初老の男に問いかける。
この国でも有数の資産家たちの娘を誘拐してきたということは相当な規模の営利誘拐という可能性が高い。
一体どれだけの額が要求されるのだろうか。
しかし、初老の男はお姉さんの言葉を鼻で笑った。
「そんなもの必要ないよ。我々が求めているのは、それだけの価値がある君たちに我々のショーの主役となってもらうことさ」
初老の男がパチン、と指を鳴らす。
すると周りの鏡が透けていき、後ろに何かが見えてきた。
「……っ!? こ、これって……」
「この鏡は特殊な造りをしていてね。マジックミラーと言えばわかるかな?」
鏡の外側にあったのは、まるでパーティの会場。
豪華な会食を楽しみながら私たちを見て談笑する人、人、人。
「な、なんですか、この人たち……!?」
「い、イヤ……こわい……」
まるで見せ物小屋にでも連れてこられたような状況に私たちは戸惑うしかない。
見たところ周りの人間たちは皆裕福そうな身なりをしている。
悪趣味な成金たちの立食パーティー。
そんな風にしか思えない。
「まあこれはあくまで君たちの置かれている状況を説明しただけだ。君たちには是非見られていることを気にせず肩の力を抜いていてほしい」
初老の男がもう一度指をパチン、と鳴らすと周りのガラスのように透けていた壁が鏡に戻る。
鏡に映る私たち三人の顔は青ざめていた。
こんな状況で肩の力を抜くなんてできるわけがない。
「さて、ここらで君たちのお相手にも登場してもらおう」
すると、私たちの目の前の壁がおもむろに開き、奥から誰かが部屋へと入ってきた。
「デュ、デュフフ……みんな、かわいいんだなぁ……」
「ヒヒッ、美少女ぞろいで涎が垂れそうでゲス……」
「ゲヘヘ……どっかのお嬢様だって聞いてたが、全員予想以上の上玉じゃねえか」
現れたのは、三人の男。
小汚い格好で下卑た薄笑いを浮かべていて、喋り方も相まって印象は全くよくない。
なんなの、こいつら……?
「わたしたちの相手って、まさか……」
私の隣で佳織さんが息を呑む。
その様子を見て私もハッとなった。
拘束された三人の女の子と薄汚い三人の男。
まさか、これからここで行われるショーってこの男たちに乱暴されるってことじゃ……。
「そんな野蛮なことはしないさ。暴力的なだけのショーなんて今の時代にはそぐわないんだよ。女性というのは丁寧に扱わないとね。それに今日のお客様たちは皆紳士淑女なんだ。もっと背徳的で倒錯的なショーをご所望なのさ」
どうやら乱暴なことをされるわけじゃないらしいので少しだけ安心したけれど、初老の男の口ぶりはとても不気味で別の不安を私の中に植え付けてきた。
「さて、後は本人たちに任せるとしよう。君たち、言われた通りにしてくれれば後は自由だ。好きにしたまえ」
初老の男はそう言い残して部屋から出ていく。
そうして、この空間には私たち三人と男たち三人が残された。
「デュ、デュフ……だ、誰から行くのがいいかなぁ……?」
「ヒヒッ、オイラはどちらでもいいでゲス」
「ゲヘヘ、じゃあ俺から行っていいか?」
三人の中から、頭の禿げた厳つい男が一歩前に出てくる。
その手にはペンダントのようなものが握られていた。
赤い色をした、半分に欠けたハートのような形の奇妙なものだ。
いや、よく見ると男自身もペンダントを首から下げている。
手に持っているものと対になるような形をしているけれど、色は青い。
他の二人の男も同様のものを首から下げていた。
「ゲッヘッヘ……まさかこんな形で人生逆転するチャンスが来るなんてな。それもこんな美少女とは」
男は何やらよくわからないことを口走りながら、私の右隣にいる金髪の女の子、メアリーちゃんに近づいてきた。
メアリーちゃんは涙目になりながら震えている。
「イヤ、こないデ……!」
「ちょっと! その子になにするつもり!?」
「さっきのオッサンが言ってたろ? 乱暴なことはしないってよ。ただ、これをつけさせてもらうだけだ」
男は手に持っていたペンダントをメアリーちゃんの首にかけた。
そのとき、二人の首元のペンダントが一瞬光ったような気がした。
「ゲヘヘ、これでよし……お前ら、頼んだぜ」
「デュフ、わかったんだなぁ……」
すると、男たちは何故かメアリーちゃんの手足の拘束を外し始めた。
一体どういうつもり?
当のメアリーちゃん本人も困惑している。
「あ、あノ……」
「おっと大人しくしてるでゲス。これからが大事なところでゲスよ」
拘束は解いても解放する気はない様子。
何をするつもりなのか、固唾を飲んで見守っていると、今度は厳つい男を他の二人が椅子に拘束し始めた。
いよいよわけがわからない。
「ゲッヘッヘ……これで準備完了だ……」
完全に体を拘束されて身動きが取れない状態になった厳つい男が不敵に笑う。
そして、舐め回すような視線をメアリーちゃんに向けた。
「俺が今からこれになるんだと思うと興奮しちまうぜぇ……ゲッヘッヘ」
男の意味不明な言動に私たちは戸惑うしかない。
けれど、何故だか嫌な予感がしてならなかった。
「さあ、始めるぜ……『心換』!」
「ッ!?」
男がそう唱えた瞬間、小柄で華奢なメアリーちゃんの身体がビクンッと大きく震えた。
それと同時に二人の首元のペンダントが光り始める。
メアリーちゃんのペンダントは赤色、男のペンダントは青色に。
「アッ、アッ……」
「あ、がぁッ……」
すると、急に二人が苦しそうにうめき始めた。
まるでペンダントに何か大事なものを吸われているようにも見える。
「メアリーちゃん!? 大丈夫!?」
「…………」
私が声をかけてもメアリーちゃんは返事をしない。
生気が抜かれたように虚ろな表情でぼーっとしている。
なおも光を放ち続けるペンダントから、今度は一筋の光が伸びてきた。
お互いのペンダントを繋ぐように光と光が結ばれ、やがてその色が徐々に滲むように混ざり合う。
光全体が紫がかった色に変わったと思うと、また色が分離していく。
けれどそれは最初のときとは逆でメアリーちゃんの方が青色、男の方が赤色だった。
完全に色が分かれると、ゆっくりと光がおさまっていき、何事もなかったように元の状態に戻った。
「な、なんだったの、今の……?」
「わかりません……」
不安に駆られながら佳織さんと二人で見ていると、それまで虚ろな表情で佇んでいたメアリーちゃんがゆっくりと顔を上げた。
どうやら何もなさそうで少し安堵する。
「んん……あぁ……上手くいったのか……? ん? この声……っつーことは……」
メアリーちゃんはキョロキョロと周りを見回し、鏡に映った自分の顔を認識するとその顔を笑みに歪めた。
「ゲッヘッヘ……すげえな。まさか俺がこんな外人のガキになっちまうとはな。それも女のよ」
「メ、メアリーちゃん……?」
メアリーちゃんの口から出た言葉は、先ほどまでの辿々しい日本語ではなかった。
その気色の悪い笑い方はあの厳つい男のもので……。
「ゲヘヘ……そうだよなぁ……今の俺は『メアリーちゃん』に見えるよなぁ?」
メアリーちゃんは自分の金色の髪をかき上げながら私たちに笑いかけてくる。
まるで自分がメアリーちゃんではないかのような口ぶりで。
実際、私には今の彼女がさっきまでのメアリーちゃんと同じ人とは思えなかった。
「な、なんデ……ワタシが……?」
すると、私の右隣で拘束されている頭の禿げた厳つい男が震えながら口を開いた。
さっきまでの粗野な態度はなりを潜め、無害な小動物のように大人しい。
さながら、さっきまでのメアリーちゃんのように。
「悪ぃな。お前の身体は俺がもらっちまったぜ。ゲッヘッヘ……」
「う、ウソ……そんな……イヤ……」
嘲笑うように頬を吊り上げるメアリーちゃんとポロポロ涙を流す厳つい男。
いったい何が起きているのか、わけがわからない。
「す、すごいんだなぁ……本当に入れ替われるなんて」
「女の子の身体、どんな感じでゲスか?」
「すげぇぞ、軽いし臭くねえし、生まれ変わったみてえな気分だぜ。この『入れ替わりペンダント』さまさまだな」
メアリーちゃんは自分の身体をいやらしい手つきで撫で回す。
あのペンダントが光ってからの彼女の言動。
そして、入れ替わりという言葉。
「まさか、二人の中身が入れ替わったの……? そんなことあるわけ……」
「おっ、気づいたか。察しがいいようだな。だったら話は早え。次はお前らの番だぜ」
メアリーちゃんがそう言うと、周りの二人も懐からペンダントを取り出した。
まさか、こいつらの目的は私たちと身体を入れ替えること……!?
「な、なんでそんなことするんですか!? やめてください! メアリーちゃんも、元に戻してあげてください!」
「無理でゲスよ。オイラたちは外の金持ちどもに命令されてやってるだけで拒否権なんてないんでゲス」
「『美少女とキモいオッサンを入れ替えるショー』なんていう悪趣味な変態たちの余興に付き合わされてるだけなんだよ、俺らは。仕方ねえだろ? ま、こっちもそんなオッサンの身体に未練なんかこれっぽっちもねえがな」
「ぼ、ボクも早く美少女になりたいんだなぁ……デュフフ」
……最悪だ。
やっと全てを理解した。
初老の男は乱暴はしないとは言っていたけれど、確かにこれなら女性の身体が乱暴されることはない。
心の尊厳が全く尊重されていないだけで。
ニタニタと笑う男二人とメアリーちゃんに見つめられた私と佳織さんは、ただ己の未来に絶望することしかできなかった。
────────
「おお、素晴らしい! あんな醜悪なハゲ男と精巧な人形のように美しい美少女を入れ替えてしまうとは!」
「いきなり日本語がペラペラになったのもいいですね。外見からは想像もつかない荒っぽい口調なのもポイント高いですよ」
「まだ幼いのにあんな気色悪い男になってしまうなんて、なんとも気の毒ね……うふふ」
お客様たちの歓談が一層盛り上がる。
まずは掴みとして上々といったところか。
我ながらいいマッチングができたと思う。
「皆様、以上が一組目の入れ替わり『メアリー・ガルシア』と『佐藤権蔵』の入れ替わりとなります」
「さすが我らの『入れ替わりマッチメーカー』だ。お見事と言う他ない」
「残りの二組の入れ替わりも楽しみですなぁ」
「それよりセックスはしないのか? いつも通り、やるんだろう? アレを。早く見せてくれ」
お客様の一人が急かしてくる。
私だって見たいのは山々だがこちらにも段取りというものがある。
待たせて悪いが進行通りに進ませてもらう。
「もちろん予定にはございますが、それはこのショーの華ですから、もうしばしお待ちを。まずは二組目の入れ替わりをお楽しみください。『大久保佳織』と『中岡喜助』の入れ替わりです」
────────
「ヒヒッ、次はオイラの番でゲス」
二人のうちの片方、ガリガリに痩せた出っ歯の小男がペンダントを手にこちらに迫ってくる。
入れ替わりのことを知ってしまった今となっては、この男たちに対する嫌悪感は先ほどまでの比ではない。
だって、あんなとてもじゃないけど褒められない容姿の男に私自身がなってしまうかもしれないのだ。
想像するだけで背筋がゾッとしてしまう。
「馬鹿っ! 来るな!」
「やめてください! 来ないで!」
私と佳織さんの拒絶の言葉には耳も貸さず、出っ歯の男はこちらに近づいてくる。
嫌だ嫌だ嫌だ。
あんな男になりたくない。
現実に向き合うこともできず、私は目を閉じてそう念じるしかなかった。
やがて男は歩みを止めた。
佳織さんの目の前で。
「ヒヒッ! オイラと入れ替わってもらうでゲス」
「ひっ!?」
佳織さんの顔が絶望で引き攣る。
私では、なかった。
よかった、なんて安堵はしていられない。
だって結局次は私なんだから。
「さあ、このペンダントをつけてもらうでゲスよ!」
「やめてください! それ、近づけないで! やめてぇっ!」
必死で首を振って抵抗しようとする佳織さん。
けれど、そんなのは無駄とでも言うように出っ歯の男の手によって簡単にペンダントがかけられてしまった。
メアリーちゃんのときと同様に首にかけられたペンダントが一瞬赤く光ったように見えた。
「あ、あぁ……」
「ヒヒッ、これでいつでも入れ替われるでゲス。お二人とも、頼んだでゲス」
「デュフ、了解なんだなぁ」
「おう、任せろ」
もう一人の男とメアリーちゃんがさっきと同じように佳織さんから拘束を解いていく。
佳織さんは絶望しきった顔でされるがままだ。
「さて、その身体には退いてもらって、代わりにオイラの身体を拘束するでゲス」
佳織さんを無理やり立たせ代わりに椅子に座る出っ歯の男。
もう一人の男とメアリーちゃんは言われた通りに出っ歯の男を拘束していく。
するとそのとき、予想外のことが起きた。
「……こんなものっ……!」
声の方を見ると、絶望して項垂れていたと思っていた佳織さんが首にかけられたペンダントを外そうとしているところだった。
まさか、男たちを油断させるためにわざと無抵抗なフリを……?
「ちょ、何してるでゲスか!?」
男たちもこれは予想外だったようで慌てた様子だ。
しかし止める間もなく佳織さんは首からペンダントを外して地面に叩きつけようとしている。
あのペンダントが入れ替わりの機能を果たしているのは間違いない。
つまり、あれさえなければまだ助かる可能性があるということだ。
「これさえ壊してしまえ、ば…………ぁ…………」
今まさにペンダントを手から離そうというその瞬間、佳織さんはまるで糸が切れた人形のようにその場にドサリと倒れ込んでしまった。
「……え? か、佳織さん……?」
私が声をかけても佳織さんは虚ろな表情で床に倒れ込んだままピクリとも動かない。
まるで魂が抜けてしまったような、そんな様子だ。
「あーあー、なにやってるでゲスか? これからオイラの身体になるのに、無茶してケガでもされたら困るのはオイラでゲスのに」
出っ歯の男がため息をつきながら言う。
思わず私は男たちに問いかける。
「ちょっと! 佳織さんはどうなったの!?」
「どうなったもなにも、身体から魂が離れたから動けなくなったんでゲスよ」
「このペンダントはな、身に付けた時点でその人間の魂を吸い取るのさ。入れ替わる前だからって外せばいいってわけじゃねえんだよ。ま、一回入れ替わりが済んじまえばただの石ころなっちまうらしいがな」
メアリーちゃんは自分の首にかかっていたペンダントを外してポイっと投げ捨てる。
けれど佳織さんのように倒れたりはせずピンピンしている。
つまり、あのペンダントをつけられた時点で誰かと入れ替わるしかなくなってしまい、一度入れ替わってしまったらもう使えなくなってしまうということ。
入れ替わってしまったメアリーちゃんや、ペンダントをかけられてしまった佳織さんはもうあのペンダントで元に戻ることはできない。
「それじゃあオイラもいくでゲス。ヒヒッ、なんだ興奮するでゲス……『心換』!」
出っ歯の男がそう言った瞬間、二人のペンダントが光始める。
佳織さんのものは赤色に、男のものは青色に。
メアリーちゃんのときと同じように二つのペンダントは光の線で結ばれ、色が混ざり合っていく。
やがて光は分離し、佳織さんのペンダントが青色に、男のペンダントが赤色に染まる。
この過程、きっとこの光は二人の魂の色なんだ。
それがこうして入れ替わってしまったということは、もう……。
「ほら、ちゃんとペンダントつけろ。これでどうだ?」
メアリーちゃんが佳織さんの首に改めてペンダントをかけ直す。
すると、倒れ込んだままだった佳織さんの身体がピクリと動いた。
そのままゆっくりと身体を起こした佳織さんの顔は、緩みきった笑顔に歪んでいた。
「ヒヒッ、成功でゲス。これでオイラも美少女でゲス!」
立ち上がった佳織さんが珍妙な喋り方をしながら興奮気味に鏡を覗き込む。
その立ち居振る舞いも言葉遣いもさっきまでの聡明そうな彼女からは想像もできないものだった。
「ヒヒッ、長い髪でゲスねえ……サラサラで触り心地もいいでゲス! それに何より……やっぱり一番いいのはこのおっぱいでゲス! これがこれからはオイラのものなんて、たまらんでゲス!」
佳織さんは乱雑な手つきで髪や胸を触っている。
はっきり言って見るに耐えない。
佳織さんの尊厳が彼女自身によって踏み躙られているようで思わず目を逸らしたくなってしまう。
「あ、ああ……そんな……どうして……」
私の左隣で椅子に拘束されている、ガリガリに痩せた出っ歯の小男が絶望に染まった声で呟く。
私にはわかっている。
こっちにいる出っ歯の男が本当の佳織さんなのだ。
けれど、この醜い男を彼女とは思いたくなかった私は、そちらを見ることができなかった。
この後に来る自分の絶望的な未来がそこにあるように思えて、直視することができなかったのだ。
「ヒヒッ、悪いでゲスが、この身体はこれからはオイラのものでゲス。この可愛い顔も、この長い髪も、この大きなおっぱいも、ぜーんぶ!」
「や、やめてください! わたしの体です! 勝手に触らないでください!」
「なに言ってるでゲス? キミの体はそのガリガリのオッサンの身体でゲスよ。その身体はもう好きにするでゲス。オイラには関係のない身体でゲスからねぇ」
「そんな……ひどい、です……」
出っ歯の男が涙ながらに項垂れる。
嫌だ、嫌だ嫌だ。
私はあんな風になりたくない。
気づけば体がガタガタと震えている。
この体を奪われたくない。
私は私のままでいたい。
けれどそんな私の願いも虚しく、最後の一人、太った豚鼻の男が私の方を見てニタリと笑った。
「つ、次はボクの番なんだなぁ……」
────────
「はっはっは、見ろ! あんなに真面目そうだった娘が酷い喋り方をしているぞ。なんだその阿呆丸出しな語尾は」
「高貴な家の娘が下賎なものに体を奪われる瞬間はやはり何物にも変え難いですねぇ」
「あの微妙にガニ股な立ち方がまたいい。普段の彼女であれば絶対にしないだろう」
二組目は一組目に輪をかけて好評だ。
私が今まで見てきた中でも取り立てて気品のある娘と、これまた今まで見てきた中でも最低レベルの卑しさを持つ男のを入れ替えたのだ。
このマッチングの芸術点の高さには我ながら惚れ惚れしてしまう。
「途中で起きたトラブルもまた良かったな。入れ替わり防ごうと足掻く娘たちの生の反応はこのショーの醍醐味の一つだ」
「なんとしてでも逃れようという強い意思が一瞬で失われて虚ろな表情となるあの瞬間、くぅー、最高でしたなぁ!」
あの場において娘たちが入れ替わりから逃れる術はない。
何か行動を起こすならそれすらお客様を楽しませるスパイスとなるのだ。
精々我々を楽しませるよう足掻いてほしいものだ。
「お、次も始まるようだぞ」
「いよいよ最後の組み合わせか」
「ええ。三組目の入れ替わり『伊藤乃々香』と『真鍋信太』の入れ替わりです。皆様、是非最後までお楽しみください」
────────
全身脂肪だらけで私の二倍近い体格の男が、私の目の前まで迫ってきた。
興奮しているのか、鼻息が荒く、その目は少し血走ってるように見える。
「もう、我慢できないんだなぁ……ぼ、ボクも早く美少女になりたいんだなぁ……」
「おうデブ。お前も早く美少女になれよ」
「最高でゲスよ、美少女の身体は」
メアリーちゃんと佳織さんが太った男の言葉に同調する。
さっきまで私と同じ立場にいたはずの仲間のような存在だった二人の女の子が、今はまるで理解できない遠い存在なってしまったことがただ悲しかった。
「さ、さあ、早くその身体をボクに渡すんだなぁ」
太った男は涎を垂らしながら私の首にペンダントをかけようとする。
……そんなこと、許してたまるか。
「……誰が、アンタなんかに体を渡すもんか!」
「いたぁッ!?」
伸ばされた太った男の右手に、私は思いきり噛みついた。
突然の私の反抗に太った男は驚きながら後ずさる。
歯形のついた手からは微かに血が出ていた。
「い、痛いんだなぁ……」
「また近づいてみなさい! 今度は逆の手も痛くしてやるから!」
私は全力で男を威嚇する。
これで少しはビビってくれればまだ私が助かる可能性も出てくる。
そう思っていたけれど、男の反応は私が思っていたものとは違った。
「ゆ、許さないんだなぁ……」
こちらを見る男の目は完全に座っていた。
背筋がゾクっとする。
私はなにか間違いを犯してしまったんじゃないか。
そう考えたときにはもう遅かった。
「ふぬぅ、ふぬうっ! 痛かったんだ、なぁっ!」
「きゃっ!? いたっ、やめっ……あぁっ!?」
男は私の髪をぐいっと掴むとそのまま頬に張り手をしてきた。
バチンッと大きな音を立てて叩かれた瞬間、脳が激しく揺れたような感覚がした。
「ちょ、おい!? なにしてんだ馬鹿! 暴力はまずいって!」
「お、落ち着くでゲス! その身体はキミのものになるんでゲスよ!?」
「ふーッ、ふーッ……」
メアリーちゃんと佳織さんに引き剥がされ太った男が落ち着きを取り戻していくのを、私は痛みで潤んだ視界を通して呆然と見ていた。
こんな風に暴力を振るわれるのは初めてだった。
初めて知った強烈な痛みという感覚は、私の心を折るには十分すぎる効果があった。
「わ、悪かったんだなぁ……も、もうしないんだなぁ……」
「たくよぉ……まあ、あのジジイが止めにこないっつーことはギリセーフって感じか? やれやれ、危ないとこだったぜ。お前も余計な挑発するんじゃねえよ。このデブ、馬鹿だからなにするかわかんねえんだぞ」
私は黙ってコクリと頷く。
もう既に抵抗する意思はなくなっていた。
「そ、それじゃあ今度こそ、始めるんだなぁ……」
太った男が私の首にペンダントをかける。
私はそれをただ見ていることしかできない。
私の体に触れた瞬間、ペンダントが赤く光る。
ああ、これで、私も……。
その後も手際よく拘束が外され、椅子から立たされると今度は太った男が拘束されていく。
メアリーちゃんと佳織さんと一緒だ。
これから、私はあれになってしまう。
手足を拘束されて身動きの取れない状態の太った男そのものが、私にとっては牢獄に思えた。
私の魂を閉じ込める醜い檻。
「デュフ、デュフフ……わ、ワクワクするんだなぁ……あの子がボクに……そ、それじゃあいくんだなぁ……『心換』!」
「……っ! ぁっ……」
強い力で何かに引っ張られていく。
体がではなく、私そのものが。
浮遊感と共に体の感覚が失われていく。
やがて完全に体の感覚が消失すると、勢いよく前に向かって私が飛んでいく。
私と同じように勢いよく目の前から迫る青い光と、そのまますれ違う。
その瞬間、『デュフフ……』という気味の悪い笑い声が聞こえた気がした。
しばらくすると、私は何かの中へと吸い込まれていった。
それと同時に体の感覚が戻ってくる。
でも、それはさっきまでの感覚とはかけ離れたものだった。
重苦しくて気怠い。
そんな感覚が常に付き纏っていた。
体の感覚が全身に行き渡ると同時に、私は目を開く。
目の前の視界に入ったのは、こちらを見てニタニタと笑う、見慣れた少女の顔だった。
「デュフフ……入れ替わり成功なんだなぁ……」
目の前の『私』は気味の悪い笑い声を上げながらそう呟いた。
「あ、あぁ……」
自分の喉から呻き声が漏れる。
それは野太く汚らしい枯れた声で、元の自分の声とは似ても似つかないものだった。
私は自分の声を聞きたくなくて思わず口を閉じる。
ああ、そうか。
さっきから周りの二人が全然喋らないと思っていたけれど、こんな気持ちだったのか。
自分の喉から醜い男の声が出るという現実を、私たちは受け入れられていなかった。
「デュ、デュフ……か、身体が軽いんだなぁ……汗も、全然かいてなくて、スッキリしてるんだなぁ……も、もうこの身体、手放したくないんだなぁ……」
『私』は吃りながらその場でぴょんぴょんと跳ねている。
ニヤケ面で喜ぶその姿は私の神経を逆撫でした。
人の体で、なにを勝手なことを……。
「って、いてて……ほ、ほっぺが痛いんだなぁ……って、やったのボクなんだなぁ……デュフフ、たしかに、あれは失敗だったんだなぁ……」
『私』がさっき叩かれた左頬を撫でる。
向こうが痛みを感じているのと同じように、私も右手がズキズキと痛むのを感じていた。
さっき相手につけた傷が、今は私にあり、私が受けた痛みを、相手が感じている。
それもまた、私たちが入れ替わってしまったことを何より証明していた。
「よし、これで全員入れ替われたな。それじゃあ次の予定に移るか」
「そうでゲスねぇ」
「んだなぁ……」
メアリーちゃん、佳織さん、そして『私』はお互いに目配せして頷き合う。
次……?
今度はなにをするつもりなの?
「しっかし、ヒラヒラした格好だな、女の服ってやつは。よいしょっと……」
「ヒヒッ、ドキドキするでゲスねぇ……新しい自分の裸を見るのは……」
「ふぅ、ふぅ……この身体でも、ちゃんと興奮するんだなぁ……んふぅ……」
「っ!?」
三人はいきなり私たちの目の前で服を脱ぎ始めた。
あまりのことに私は思わず口を挟む。
「な、なにしてるの!? 勝手に服脱がないでよ!」
「や、やめてください! わたしの体で、そんなこと……!」
「やめテ! みないデ! ワタシのハダカ!」
私たちは野太い声で一斉に止めに入った。
自分の体で勝手にこんなことをされては、もう声を出したくないなんて言ってられない。
けれど、そんな私たちの制止は全く聞き入れられず、三人はあっという間に全裸になってしまった。
「デュフフ……お、女の子の裸……は、初めて生で見たんだなぁ……ふぅ、ふぅ……」
「ヒヒッ! ツヤツヤの肌でゲス。おっぱいもこんなに柔らかくて……最高でゲス!」
「すげえな、股間がマジでツルツルだ。マンコってこんな感じなんだな……ゲヘヘ」
『私』は鼻息を荒げながら自分の体を撫で回していて、佳織さんは自分の胸に指を食い込ませてワシワシと握りしめており、メアリーちゃんはニタニタ笑いながら自分の股間に指を這わせている。
三者三様に元の中身であったなら絶対にしないであろう言動を取っていて、私たちからすれば自分の体の痴態を見せつけられるという最悪な光景だった。
「いい加減にしてよ! なにがしたいのアンタたちは! もうやめてよそんなこと!」
野太い声で怒鳴った私に、メアリーちゃんが目を向けてくる。
「これもショーの一環なんだよ。文句言うな。それに、お前たちにだって悪い話じゃないんだぜ?」
そう言うと、メアリーちゃんが私の方へ近寄ってきた。
「な、なに? 私になにする気?」
「ゲヘヘ……しっかし不細工なツラしてやがるな。自分でも見てみろよ」
メアリーちゃんが私の頭を抑えて無理やり床に向ける。
そこには、今まで見ないようにしてきた鏡があった。
映っているのは、丸々と肥え太った豚鼻の男。
これが、今の私の、顔。
「……っ!」
「おいおい、目を逸らすなよ。これからは鏡見るたびにその顔が映るんだぜ? そんなんでやってけんのか?」
「う、うるさい! だから、アンタはなにがしたいのかって、聞いて……っひゃ!?」
突然メアリーちゃんは私のズボンの上から股間を撫で回してきた。
その瞬間今まで感じたこともない妙な刺激が全身を駆け巡るように走り抜けた。
「どうした? 俺がなんだって? 続けろよ」
「んっ、やっ……ちょっと、アンタなにして……あっ……」
「ゲヘヘ……そんなキモい声で喘いでんじゃねえよ」
メアリーちゃんは私の反応を面白がりながら、ひたすら手で股間を弄り続けてくる。
なんなの、この感覚……?
もどかしいような、切ないような、いや、それよりも……。
「随分気持ち良さそうじゃねえか。鼻の下なんか伸ばしてよ」
「っ!? そ、そんなわけ、ない……んっ……」
「へぇ、そうか。じゃあもっと激しくしてやらねえとな」
そう言うとメアリーちゃんはカチャカチャと私のズボンのベルトを外し、パンツの下にあったものを空気に晒した。
「な、なにこれ……」
それは、グロテスクな見た目の赤黒い一本の棒だった。
張り詰めたように力強く反り勃っており、私の鼓動に合わせてビクン、ビクンと震えている。
「フル勃起か。よっぽど興奮してたんだな」
「そ、そんな、興奮なんかするわけない! 私は、女の子なんだから……」
「今はもうおっさんだろうが。中身がどうとか、そんなことは関係ねえんだよ。ほら、周りを見てみろ」
「え……?」
そう言われて私は周りに意識を向ける。
「ヒヒッ、ほらほら、どうでゲスか? 男のチンポも気持ちいいでゲスからねぇ」
「や、やめテ……きもちよくなんて、ないカラ……ンアっ……」
「デュフ、て、手コキならオナニーで慣れてるんだな……」
「だ、駄目です……そこ、そんなに擦ったら……あっ……」
いつの間にか厳つい男の前には佳織さんが、出っ歯の男の前には『私』がついて、相手の股間を弄っていた。
男二人は抵抗しながらも鼻の下を伸ばして気持ち良さそうに野太い声で喘いでいる。
「男の身体で美少女にチンコ握られたら誰だってああなるんだ。お前も楽しんじまえよ」
「い、嫌だ……私は、そんな……あっ……!」
メアリーちゃんがその小さくて細い指で、私の股間のモノをギュッと握り締め、上下に擦る。
瞬く間に熱いなにかが込み上げて、爆発しそうになる。
「あっ、あっ……くるっ、なにかきちゃうっ……ぼ、ボク……」
「おっと、そこまで。一旦休憩だ……」
「なっ、へ……?」
すると、それまで楽しそうに手を動かしていたメアリーちゃんが急に手を止めた。
昂っていた私の中の情動は、宙ぶらりんのまま行き場を失ってしまう。
「いい感じに出来上がってきたみたいだからな。そろそろ次に移るぜ」
メアリーちゃんは不敵な笑みを浮かべると、何故か私の手足の拘束を外し始めた。
隣を見ると、厳つい男と出っ歯の男も拘束を外されている。
「……どういうつもりなの?」
「お前、さっきイキそうになった瞬間なんて口走ったかわかってるか?」
「……? なにを言って……」
「『ボク』って言ったんだよ。あのデブ本人みてえにな。これがどういうことかわかるか?」
「!?」
私、そんなこと言ってたの?
なんで?
疑問に思いながらも、そういえば確かに無意識にそう言った気もする。
自分で自分がわからなくなる。
「入れ替わった状態で快感を味わうとな、魂が体に馴染むんだよ。分泌される脳内麻薬が心と身体に作用するとか聞いたが、まあそんなのはどうでもいい。とにかく、お前はイッたら身も心もそのデブそのものになっちまうってわけだ」
それは、なんて恐ろしい。
体を失っても心だけはまだ私でいられているというのに、その心すらも失ってしまうと言うの?
だったら、絶対にそんな状況になるわけにはいかない。
そう決意した私の体に、全裸のメアリーちゃんが寄り添ってくる。
「だから、セックスしようぜ?」
甘い声で、メアリーちゃんが私に囁いた。
幼い少女の蠱惑的な声の音色は、私の理性を容易く溶かしていく。
「手コキされて気持ちよかっただろ? だったらマンコの中にチンコを入れた日にはどれだけ気持ちいいんだろうなぁ? 想像してみろよ。このいたいけな女のマンコがうねってお前のチンコに絡みつくのをさ」
そう言いながらメアリーちゃんは私の前に寝転がると指で股を開いた。
その両隣には佳織さんと『私』も並んでいる。
「ゲヘヘ……ほら、挿れろよ。このツルツルのマンコによ」
「デュフフ……きっと、気持ちいいんだなぁ……」
「ヒヒッ……このおっぱいも、好きにしていいでゲスよ?」
「はぁ、はぁっ……ふぅ……ぼ、ボクは……いや、私は……」
「そんな、こと……しない……でゲス、オイ……わ、わたしは……」
「……うるせえ、黙りやが……だ、だまって、クダ、サイ……んっ……」
少女たちの誘惑に、徐々に言葉遣いが怪しくなってくる。
そして、同時に脳内をある考えで埋め尽くされていく。
犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい。
あのマンコにチンポをズポズポ突っ込んで気持ちよくなりたい。
余計なことはなにも考えずただ快感に浸りたい。
それはきっと、幸せな時間、なんだなぁ……。
「ふぅ、ふぅ……ふぬぅ……」
「もう、我慢できない……ゲス」
「はぁっ、くっ、ぐぅ……」
一歩ずつ少女たちに近づく。
そして目の前の相手に組みついた。
厳つい男は佳織さんに。
出っ歯の男は『私』に。
そして、ボクは、メアリーちゃんに。
三人が同時に、大きく固く勃起したチンポを、目の前の少女に突き挿れた。
「あっ、きたっ、ああっ!?」
「ふぬうっ、ふぬうっ!」
ボクは力任せに目の前の少女を犯す。
セックスなんて初めてだからやり方なんてわからない。
だからただ気持ちよくなるために、身体を動かし続ける。
「ふうっ、ふぬぅっ! これ、すごく、気持ちいいんだなぁっ! セックス、最高なんだなぁっ!」
腰を振るたびに頭に電流が走る。
自分の中で何かが歪んでいく気がする。
思い出が、考え方が、自分自身が、別物へと変わっていく。
でも、そんなのはどうでもいいんだなぁ……。
「あっ、これ、やばっ! んぐっ、あっ、挿れられるの、こんなきもちいいのカ……? し、しらなかっタ……ワタシ……んんっ!?」
犯されているメアリーちゃんも少しずつ様子が変わっていく。
乱暴な男らしい口調が辿々しくておぼつかない喋り方へと徐々に変わっていく。
金髪の幼い外国の少女に相応しいものへと。
「わ、たし……こんな、気持ちいいことがあるなんて、知らなかったでゲス! おっぱいの揉み心地も最高で……腰止まんないでゲスぅ!」
「デュフ……ぼ……わた、私も、初めてだから……こんなに、気持ちいいなんて、知らなかったよ……んあっ!」
「ワタシ……こんな、こと……したくなかったが、知っちまったらやめられねえよなぁ! 女犯す快感ってやつをよぉ!」
「お、オイラ、犯されてるのに、きもち、よくなっちゃってます……んっ、こんなはしたないのに……声が、とまらな……あっ……!」
全員が身体に相応しい言動へと変わっていく。
今の自分が慣れ親しんだ本当の自分だと思えてならない。
きっと、ボク以外のみんなも同じことを思っている。
だってほら。
鏡に映ったボクの顔。
いつも見慣れたボクだ。
隣で犯されてるあの子は初対面の女の子としか思えない。
だってもうあの子はボクの見る鏡には映らない。
ボクではないのだから。
鼻の下を伸ばして、息を荒げて、メアリーちゃんを犯している今のボクこそがボク、『真鍋信太』だ。
「ふぬぅ、ふぬうっ、デュフ、め、メアリーちゃん、もう、イキそうなんだなぁ……!」
「ヒヒッ、乃々香ちゃん、オイラもイクでゲスっ!」
「ゲヘヘ、オラっ、佳織! 中で出すぞ! しっかり受け止めろよ!」
「は、ハイっ、ワタシも、なにか、きちゃいそうデス……んっ」
「私も、んっ、もう、イッちゃいそう……んあっ」
「こんな、人前でなんて……でも、わたし、たえられな……ああっ!」
ラストスパートをかけるように全力で腰を動かす。
込み上げた熱いものを全て目の前の少女に注ぎ込む。
それしか、考えられないんだなぁ……!
昂りきったチンポが激しく震え、ついにその熱を全て吐き出す。
「んぐ、があぁぁッ!!!」
ビュルルッ、と勢いよく射出される白い液体。
ボクは自分の全てを精子として少女の子宮の吐き出した。
ああ、気持ちいいんだなぁ……。
熱、興奮、精子。
それらと同時に、なにか大切なものをまで吐き出してしまったような、そんな気持ちになりながらボクはゆっくりと意識を手放した。
────────
「いやはや、今宵も素晴らしいショーだった。感激したよ」
「高貴な娘たちが下賎な男の精神へと堕ちていく過程は最高の肴になりますなあ」
「敢えて行為の相手をシャッフルする趣向もなかなかでしたね。他人の身体で他人とセックスを行う倒錯感……お見事です」
「お褒めに預かり光栄です」
私はお客様たちへ深々と頭を下げる。
あの太った男が少女に手を上げたときは少しヒヤリとしたが、結果的には私自身満足のいくショーにできた。
この達成感があるからこの仕事はやめられない。
「支配人、準備ができたそうです」
「うむ、わかった」
部下からの報告を受け、私はお客様たちへと向き直る。
「それでは、今宵のショーの主役たちに来ていただきましょう。どうぞ」
部屋の奥の扉が開かれ、ドレス姿の三人の美少女が姿を現す。
伊藤乃々香、大久保佳織、メアリー・ガルシアだ。
「あ、えっと……こんばんは」
「なんだか、恥ずかしいですね……」
「……っ……」
いきなりこんな晴れ舞台に連れてこられ、少女たちは皆照れている。
事前に説明していなかったのも理由の一つだろうが、それはこちらの狙いでもある。
私もお客様も、少女たちのこういう初々しい反応を楽しんでいるのだから。
「伊藤乃々香さん、大久保佳織さん、メアリー・ガルシアさん。今のお気分はどうですか?」
「ええっと……すごく、晴れやかな気持ちです。まさか、私がこんな姿になれるなんて、今まで夢にも思ってなかったので……」
「そうですね、わたしも……この容姿もそうですが、まさか家柄まで立派なものにしていただけるなんて、本当に感謝してもしきれません」
「あ、あノ……そノ……ワタシも、すっごく、嬉しい、デス……」
三人の言葉に会場から拍手が上がる。
少女たちはぺこりとお客様たちへと一礼する。
彼女たちの一挙手一投足には育ちの良さと気品を感じざるを得ない。
まさか元が卑しい三人の醜い男だとは誰も思えないだろう。
この変化のギャップもまた、我がショーのセールスポイントだ。
「さて、それではこれから恒例の第二部、オークションの時間に移りたいと思います」
私の言葉に会場は再び盛り上がる。
私のショーは第一部と第二部で構成されている。
第一部は先ほどに入れ替わりショー。
そして、これから行われるのはその入れ替わりの結果を利用する特殊なオークションだ。
「それではお三方、宣誓の言葉をどうぞ」
「は、はい。えー、私の父の会社、株式会社TTNの社外秘情報を皆様にお売りします」
「わたしのお父様の会社、トレジャーアーツホールディングスの社外秘情報を皆様にお売りいたします」
「わ、ワタシのパパ……お父さまの会社、ミラージュインタラクティブの社外秘情報を、皆様にお売りシマス!」
少女たちは自分の父が経営する会社を裏切る宣言を堂々と行った。
それに対してより一層会場が盛り上がっていく。
わざわざ一流企業の経営者の娘を入れ替わりの相手に選んだのはこのためだ。
この第二の余興であるオークションを盛り上げてもらうため。
精々今宵も稼がせてもらうとしよう。
「今の私たちがあるのは皆様のおかげです」
「ご恩をお返しするのと同時に今後良好な関係を築くためにも、どうかよろしくお願いいたします」
「ワタシも、がんばりマス!」
「はい、というわけでまずは株式会社TTNの社内情報から参りましょう。リザーブプライスは500万円から……」
その後はオークションも無事大成功を収め、お客様たちの盛大な歓声を受けながらパーティは幕を閉じた。
結果として、この日のショーは過去最高の盛り上がりを見せることとなった。
私もプレゼンターとして鼻が高い。
だが、今後もこれに負けないショーを行なっていくと私は約束しよう。
だからこれを読んでいるそこの貴方にも、是非我がショーに参加できるだけの地位を築いてもらいたいものだ。
……ん?
少女たちに体を奪われた三人の男たちのその後?
そんなことが気になるのかね?
そのまま解放したよ。
身体を失い、地位を失い、気品を失い、志すら失った哀れで醜い男たちだ。
どうせ何もできやしない。
そんな者たちのその後など気にかけるだけ時間の無駄だよ。
下賤な者は下賤な者らしく下界で無様に野垂れ死ぬまで。
当然の話だろう?