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怪しげな光に照らされた地下の一室。
成金じみた格好の若い男性や派手な服装の若い女性たちがひしめくこの場所は、イリーガルな賭博が行われる裏カジノ。
「21! よっしゃあ!」
「やれやれ……ついてない……」
「そ、そんな……嘘だ……ま、待ってくれ! こんなはずじゃ……!」
一攫千金の夢見る人、持て余した金を遊び半分で使う人、もう後がなくなり全てを賭けに来た人、様々な人の思惑が絡み合う影の楽園。
その奥のさらに奥、この時代の勝利者とでも呼ぶべき指折りの資産家たちしか入れないVIPルームに、私はいた。
「むほほ! なんて爆乳なんだい君は! 今にも服から溢れてしまいそうじゃないか、ええ?」
鼻の下を伸ばしながら手をワキワキと握るジェスチャーをしている中年の男性。
もちろんこの人は私ではない。
その視線の先にいるのが私……今の、私だ。
「……お客様、お飲み物は何になさいますか?」
目の前のニヤけた顔の男性に対して、あくまでもマニュアル通りの対応をする。
しかし、そんな私の気丈な振る舞いは軽く一蹴された。
「飲み物? そんなのどうでもいいから、早くその爆乳をモミモミさせてほしいんだよ。こっち来なさい!」
男性の下品な物言いに逃げ出したい衝動をグッと堪え、私は静かに男性の隣についた。
いやらしさを全面に見せながら、男性はその手を私に近づけてくる。
「おやおやぁ、こりゃまた揉み甲斐のある爆乳ですなぁ、ほれ!」
「……ッ、んおッ!?」
男性が私の胸をその手で握りしめた瞬間、なんとも間の抜けた品のない喘ぎ声が響いた。
一瞬思考が止まってから、慌てて私は自分の口を抑えた。
今のは、私の口から出たものだった。
「おいおい、今『んおッ』って言ったよね? 『んおッ』って? ちょっと揉まれただけだっていうのに、女の子の出していい声じゃないだろう、ええ?」
「……っ、も、申し訳ありませ、んおぅッ!?」
「また出たぞ! どれだけ感度がいいんだい君は? これじゃあ女の子じゃなくてただの発情したメスウサギじゃないか」
私は顔がどんどん熱くなるのを感じていた。
羞恥によるものと、触れられた身体が反応したものとで、あっという間に真っ赤になってしまいそうだった。
まさか、ちょっと触られただけでこんなに疼くなんて。
なんてひどい身体なんだろう、この身体は。
「ええっと、君の名前はなんだったか……そうだ、『バニーガール7号』ちゃん。君は本当に僕好みだよ、7号ちゃん。そのアホみたいな金髪も、ムチムチとしたドスケベボディも、この溢れちゃいそうな爆乳も、全部最高だ、いひひ!」
男性が私の胸元についた札を見て言う。
それには、黒髪の真面目そうな女性の顔写真に『バニーガール7号』という文字が添えられていた。
かつての私の姿と、今の私の名前。
尊厳を踏み躙られた私という存在を示すこの名札の着用を、今の私は義務付けられている。
「それじゃあ早速この爆乳でご奉仕してもらおうかな? ほら、僕の股間の逸物をパイズリしてくれたまえ」
「パっ……!? そ、そんなの、で、できません……!」
私は突然の淫らな命令に対して、咄嗟に拒絶の意を示す。
けれど、目の前の男性はそれを許す気はなさそうだった。
「んー? いいのかな? そんなこと言っちゃって。オーナーに報告しちゃうよ? そしたら君の『本当の』身体、どうなっちゃうんだろうねぇ?」
「っ……わ、わかりました。やります……」
「そうそう、それでいいんだよ。じゃ、頼むよ。ほら」
「きゃぁっ……!?」
男性がいきなりズボンから股間を出してきて、私は思わず軽い悲鳴を上げてしまった。
男の人の、アソコなんて、今まで全然見たことがなかった。
それが、こんな目の前で露出されている。
赤黒くて、血管が浮き出てて、なんだかグロテスクで。
とてもじゃないけど直視していたくなるようなものじゃないし、これに触れるなんて尚更だ。
「んふふ、随分とウブな反応だねぇ。大丈夫かい? パイズリのやり方はわかる? その爆乳で、このオチンチンを揉み揉みするんだよ?」
「っ……や、やってみます……」
私は、震える手で恐る恐る自分の胸を抱えて、それを少しずつ男性のアソコへ近づけた。
あまりにも胸が大きすぎて、服からはみ出してる部分だけで十分男性のアソコを包めそうだった。
私の胸が熱を持ったソレに触れそうになった瞬間、背筋に悪寒が走る。
本当に、これに触れなきゃいけないの?
すると、私の躊躇いに気づいたのか、男性が私の方に腕を伸ばしてきた。
「もう、何やってんの? 早くしてよ。というか、何ちゃんと服着たままやろうとしてんの?こういうときは胸をはだけるのがお約束でしょうが」
「きゃっ!?」
男性がかろうじて私の胸を隠していたバニースーツの胸元をグイッと下す。
その反動でスイカみたいな大きさの私の胸がぶるんっと大きく揺れながら露出した。
「それで、こうやってオチンチンを胸の谷間に挟むんだよ。両手はこうやってグイグイ動くして胸でオチンチンを刺激するの。わかった?」
「ひ、ひぃ……」
男性は強引に私の胸の間にアソコを挟み込み、さらに両腕で私の手を使い胸を力強く押さえ込んできた。
あまりにも大きすぎる胸が、力を込められてグニグニと変形する。
その間に挟まれている固く熱いアソコがまるで快感に震えるようにビクビクと脈動をしていた。
き、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!
こんなの触れていたくない。
でもやらないとどんな目に遭うかわからない。
私は泣きそうになりながら男性に言われた通りに胸に挟まれたアソコを両手で刺激させ続けた。
「そうだ、そうそう。おぉっ、いいぞぉ……辿々しくて、稚拙な手つきだけど……むしろそれがいい……おっ……」
男性は満足そうに胸を使って奉仕する私を見下ろしていた。
お願いだから早く終わってほしい。
そう頭で考えながら無心で手を動かし続ける。
「……んー? なんだかつまらなそうな顔だねぇ。あ、そうか、君も持ち良くなりたいんだね! いやぁ、気づかなくて悪かったよ。そら」
「……んお゛ッ!?」
胸の先端から突然電流のような刺激が走り、思わず奇声を上げてしまった。
何が起きたのか確認すると、男性が私の乳首に付けられたピアスを引っ張っていた。
「はっはぁ、すごい声だなぁ。そんなによかっかい?」
「ちょっ、それやめ……おお゛ッ!? おッ、おおッ……!」
男性がピアスを弄るたびに、私の口からは汚く下品な喘ぎ声が上がる。
押し留めようとしても、そのあまりの刺激に耐えきれず口から漏れ出てしまう。
「んふふ、いいねぇ。ウブな生娘のようでいて、身体はちょっと触られただけで汚い声上げる発情メスウサギ。興奮してきたよ。ほら、続けて」
「……は、い……あッ、おっ、おッ……」
男性に言われるまま、胸を動かす。
頭の中は嫌悪と羞恥と焦燥と、それを遥かに上回る快感でぐちゃぐちゃになっていた。
自分でも何を考えているのかわからないままとにかく男性のアソコに奉仕し続ける。
「おぉっ……あぁ、気持ちいい。そろそろ出そうだ。君の顔にかけるよ。いいかい?」
「は、はひぃ……おッ、お゛ォおッ……!」
私は快感に耐えながら必死で胸を動かす。
すると、胸に挟まれた男性のアソコがビクビクッと震えた。
次の瞬間、その先端から何かが飛び散り私の顔に思い切り降りかかった。
「おっ、おおッ……ぉ…………ふぅ、いやぁ、素晴らしい奉仕だったよ」
男性がすっきりとした顔で私の頭を撫でてきた。
……終わった、の?
ぼやけた頭で軽く混乱していると、顔にかかった何かが口元まで垂れてきた。
舌に触れると、しょっぱいような苦々しいような、とにかく変な味がする。
なんだろうと思い軽く手で拭うと、どろっとした白い液体が付いていた。
そういえば、さっきから鼻をつくをような変な臭いがする。
どうやらこの液体からしているようだけど……。
と、そこまで考えてやっと気付いた。
これって、まさか。
「どうしたんだい7号ちゃん? 僕のザーメンがそんなに気になるのかい?」
男性がニヤニヤと笑いながら私を見下ろしている。
私は全身からゾワゾワと寒気がするのを感じた。
思わず悲鳴を上げそうになるのを懸命に堪えながら、なんとか気持ちを落ち着ける。
「いやぁ、最高だったよ7号ちゃん。ありがとう。これはチップとして受け取ってくれ」
男性は股間を仕舞って装いを正すと、私の胸元に折り畳まれた札束を挿し込んできた。
「……こちらこそ、ありがとう、ございました……」
私は言いたくもないお礼を言ってその場を後にする男性を見送った。
顔から胸元まで精液まみれになりながら。
悔しさと恥ずかしさでおかしくなりそうだった。
でもだからと言って私にはどうすることもできない。
抵抗も逃亡も私には許されていない。
この身体にされてから、そんな権利は私にはないのだから。
どうして、こんなことに……。
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全ての始まりは数週間前。
国内有数のメガバンクに就職が決まっていた私、神崎絵梨花は、卒業までの残り少ない大学生活を楽しんでいた。
働き始めてしまえば、きっともう遊んでばかりいられなくなる。
その前に今の大学の大切な友人たちとたくさん思い出を作っておきたかった。
しかし、そんな私の日常はある日突然崩れ去った。
「支払請求……300万円って……な、なんなんですかこれ!?」
いきなり私の家に押しかけてきた怪しい黒服の人たちに突き出された請求書に、私は取り乱すばかりだった。
「ふぅ……絵梨花ちゃんさぁ……君、お友達の連帯保証人になってるよね?」
「それは……友達が一人暮らしするときに頼まれて……家族と、折り合いが悪くて頼める人が他にいないって……」
「そう、その君のお友達の安沢優菜ちゃん。彼女、失踪しちゃってね」
「優菜が、失踪……!? そんな、嘘ですよ!」
優菜は最近就職活動で忙しいと言っていた。
それで大学でもあまり顔を合わせなくなっていたけれど、だからって失踪なんてそんなわけが。
「本当だよ。ほら、これ見てよ。優菜ちゃんの部屋。ひっどい荒れ方でしょ?」
黒服の人が私に写真を見せてくる。
そこには窓ガラスが割れ、タンスが横倒しになり、壁はズタズタに引き裂かれ、破壊されたドアが床に落ち、まるで嵐でも通り過ぎたかのような惨状の優菜の部屋が写っていた。
「ここまでされたら当然修繕費その他諸々を回収しなきゃいけないんだけどさ、優菜ちゃんとは連絡も取れないわけよ」
「そ、そんな……」
私も慌てて優菜に電話をかけてみたけれど、繋がる気配はなかった。
チャットを送っても未読のままで、反応は全くない。
「優菜に、何があったんですか……?」
「そんなの俺が知るわけないだろ。警察にでも聞いてくれ。とにかくこっちとしてはいなくなった優菜ちゃんの代わりに絵梨花ちゃんに払ってもらわなきゃいけないんだよね」
「そ、そんなこといきなり言われても……」
そんな300万円なんてお金、大学生の私が持っているわけがない。
私がバイトをしてコツコツ貯めたお金を合わせてもこの半分以下だ。
「そんな金額、払えません……」
「……はぁ……絵梨花ちゃんさぁ、そんな言い分が通ると思ってんの? ガキじゃねえんだからさ」
「で、でも……」
「こっちだってさぁ、気ぃ遣ってるわけよ。そりゃ裁判所通して支払督促するのは簡単よ? もちろんそれに対して君が異議申し立てして訴訟にまで発展させるのだって自由だ。でもさぁ、そんなトラブル抱えてんのがバレたら内定先はどう思うかねぇ?」
「……っ!」
私は身のすくむ思いだった。
苦労して手に入れた内定がもしこんなことでご破算になったりしたら。
でも、払えるお金は全然足りない。
両親に頼めばなんとかなるかもしれないけど、今更こんなことで心配させるなんて。
混乱で頭の中がぐちゃぐちゃになりかけていた私に、黒服の人が言葉をかけてきた。
「……絵梨花ちゃんがどうしてもって言うなら、こっちにも一つ提案があるんだけど、どうする?」
「え……?」
私はその言葉に藁にもすがる思いで食いついた。
……今思えば、このときに私の運命は決まってしまったのかもしれない。
このときにもっと落ち着いていれば。
優菜の状況にもっと疑問を抱いていれば。
両親を頼っていれば。
警察や弁護士に相談していれば。
いくらでも他に道はあったかもしれない。
でも、全ては後の祭りだ。
ここから、私の転落人生は始まった。
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「着いたぞ。ここだ」
黒服の人に連れられ私がやってきたのはいかにも怪しげな地下施設だった。
広々とした空間にいくつものテーブルが並んでおり、派手な格好をした人たちがそれぞれカードなどのゲームに興じている。
「ここって……」
「会員制の隠れ家風カジノ風バーってとこだな。誰もが楽しめる新時代の商業エンタメ施設だ」
「あの、それって裏カジノなんじゃ……」
「おいおい、人聞きの悪いこと言うなよ。せっかく紹介してやってるのに。ほら、こっちだ。ついて来い」
私は黒服の人の後に続いて中を歩いていく。
ギラついた目をした人たちの熱気に溢れていて、あてられるとクラクラしてしまいそうだ。
バーと言うだけあってお酒を飲んでいる人もたくさんいる。
中にはかなり露出度が高いバニーガールの格好をして給仕している女性スタッフもいた。
肉付きのいい手足や大きな胸を惜しげもなく強調していて、見ているこっちが恥ずかしくなってしまう。
今まで真面目に生きてきた私とはあまりに縁遠い世界に困惑が隠せなった。
奥まで移動した後、黒服の人は私に何枚かのチップを手渡してきた。
「このチップは貸しだ。それを今から数倍にして返してくれればいい」
「そ、そんな簡単に言われてもどうすれば……私、賭け事なんてしたことないですし……」
「あそこのテーブルのディーラーがいるだろ? 実はあいつは俺の知り合いだ。今からあのテーブルについてゲームをしろ。そして、俺の合図に合わせて全額賭けるんだ。勝てるように手筈は整ってる」
「それって、イカサマじゃ……」
「馬鹿……! 声がでけえよ。いいか? バレたら洒落にならない。君も、俺もだ。だが言われた通りにしてたら絶対に勝てる。ほら、行ってこい」
黒服の人に背中を押され、私はテーブルについた。
頭の中は不安でいっぱいだったけれど、もうこうなってしまっては後には引けない。
とにかく言われた通りにやるしかない。
黒服の人の合図を待ち、タイミングを見計らってチップを全て賭けた。
その結果は……。
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「あの……」
「どうした?」
「なんで、負けたんですか?」
私の手元には一枚もチップが残らなかった。
何が起こることもなく、私の賭けたチップはディーラーに持っていかれてしまった。
「そりゃあんな賭け方で勝てるわけないだろ」
「でも! あなたがあそこで賭ければ勝てるって……! 勝てる手筈は整えてあるって……!」
「馬鹿かお前。ディーラーの買収なんてそんな簡単にできるかよ。お前はなんの勝算もなく全ベットして普通に負けたんだよ」
「っ……!」
黒服の人は悪びれる様子もなく淡々と述べた。
私は、騙されていたらしい。
怒りではらわたが煮えくり返りそうだった。
人の不安に漬け込んでこんなふざけたことを……。
「貸したチップの分は当然返してもらうぞ。約束だからな」
どうやら私は更に返済額を上乗せされてしまったようだった。
こんな騙し討ちじみたやり方で、なんて卑怯な人……!
「貸したチップ代は3000万だ。ちゃんと払ってもらうぞ」
「……は?」
一瞬何を言われたのが理解できなかった。
3000万?
何が?
いったいなんの話?
「自分がどんな高レートのギャンブルをしているのかってことぐらいちゃんと確認しとかないとダメだぜ? そうじゃないと3000万円なんて莫大な借金を負ってから後悔することになるんだからよ」
「……ふ、ふざけないでください! そんな金額払えるわけないじゃないですか!」
私が声を上げた瞬間、周りにいたサングラスをつけた男性たちが私を取り囲み身体を押さえつけてきた。
「きゃっ!? は、離してください!」
「安心しな。なんと、今なら君の借金全部このカジノのオーナーが肩代わりしてくれるってさ。よかったな。ちゃんとお礼言っとけよ? それじゃあ俺は帰るから、元気でな。」
「ま、待ってください! ちょっと!?」
黒服の人がヒラヒラと手を振りながらカジノから出ていく。
一方私はサングラスの男性たちに抱えられて別室へと運び込まれた。
スタッフだけが入れるような薄暗い裏方のような部屋だった。
部屋の奥にはソファが置いてあり、そこにはスーツを着た身なりのいい男性が座っている。
「神崎絵梨花さんですね?」
サングラスの男性たちに押さえつけられた私を見下ろしながらスーツの男性が言う。
私は静かに頷いた。
「私はこのカジノのオーナーです。もう聞いたと思いますが、貴女の借金は私が肩代わりしました。3300万円ですか? 随分な額ですね」
「それは、騙されて……」
「騙されたのだろうがなんだろうが貴女が負った借金であるのに間違いはありません。ですから絵梨花さん、貴女にはこの借金を働いて返して頂くことになります」
「働いてって、どこで……?」
「勿論このカジノで、です。借金を返し終えるまでこのカジノから出すわけにはいきません」
「そんな……!」
あと数ヶ月後には大学の卒業と就職を控えているのに、そんなの困る。
3300万円なんて借金、全額返すのにいったいどれだけかかるのか。
「安心してください。私は真面目に働くスタッフには十分な報酬を支払います。貴女がこのカジノに尽くしてさえくれればきっとすぐに返せるでしょう。ただ……」
そう言うとオーナーは立ち上がり私に近寄ってきた。
すると、いきなり私の髪をグイッと掴み上げた。
「痛いっ!」
「この野暮ったい黒髪も、この貧相な胸も、痩せ細った小柄な体躯も、全て私のカジノには相応しくありません」
それまで紳士的な振る舞いをしていたオーナーが、その口調のまま乱暴に私の身体に触れてくる。
私の心は一瞬にして恐怖に染まり、ガタガタと震えながら涙を浮かべることしかできなかった。
「そこで、です。絵梨花さん、貴女には私から良いものをお貸ししましょう」
オーナーがパチンと指を鳴らした。
すると、壁にライトが照らされ、そこにいた一人の人物が私の目に入ってきた。
手足を繋がれたまま、壁際に置かれた板に磔にされた一人の女性。
その女性は、髪はパーマのかかった金髪で、私より長身で肉感的な身体をしており、大きな胸をかろうじて服で隠しているだけのバニーガールの姿をしていた。
表情は虚ろで、まるで人形のように微動だにしない。
この人は、いったい……?
「この身体は私が管理している『バニーガール7号』の肉体です。絵梨花さん、今から貴女にはこの身体になってもらいます」
「……は、え?」
言っている意味が全く理解できなかった。
この身体になってもらうってどういうこと?
同じような格好をしろってこと?
私と彼女では体型が全く違うと思うけど……。
「これは説明するよりも実際になってもらった方がわかりやすいでしょう。では、お願いします」
オーナーがそう言うと、私はサングラスの男性たちに抱えられてバニーガールの女性の前に立たされた。
そして私も彼女と同じように手足を拘束され、用意された板に磔にされた。
何?
何をする気なの?
「しばらくはその身体には戻れませんからね。しっかり別れの挨拶をしておいてください」
オーナーの言葉の意味がわからず頭が混乱してしまう。
身体に戻れないって何?
別れの挨拶ってどういうこと?
状況に全く理解が追いつかないまま、私はただバニーガールの女性と向かい合っていた。
派手な髪に派手なメイクをした、私とは正反対の女性。
その虚ろな瞳を見ていると、まるで吸い込まれてしまいそうな不思議な感覚に陥った。
「始めてください」
オーナーがそう言った瞬間、私の身体に激しい電流が流れた。
「んぎっ!? がぁっ!?」
予期していなかった突然の衝撃に、私は大きく口を開けて声を上げることしかできなかった。
頭の中が、焼ける……。
おかしく、なりそう……。
チカチカと視界が明滅する中、私は喉元に何かが迫り上がってくるのを感じた。
抵抗することもできず、私はそれを思い切り吐き出した。
目の前で口を半開きにしているバニーガールの女性の顔を見ながら……。
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「終わったようですね。彼女の拘束を外してください」
……オーナーの声が聞こえる。
すると、周りにいたサングラスの男性たちが私の拘束を外していった。
あの電流を受けて、一瞬意識が飛んでいたみたいだった。
ぼんやりして頭が上手く回らないけれど、とりあえず何かが終わったらしい。
カチャカチャと手足の拘束が外されていく中、なんとなく真正面を見つめたそのとき、私の頭は再び混乱状態となった。
「え、え? なん、で……?」
さっきまでバニーガール姿の女性が磔にされていたはずの私の真正面には、何故か黒い髪の女性が磔にされていた。
小柄で華奢な身体をしており、胸も小さく、服は地味で大人しいもの。
その姿は、鏡の中で何度も見た私の姿そのものだった。
今私の前には鏡なんてない。
本当にそこに『私』がいるのだ。
その表情は虚ろで、ついさっきまでバニーガールの女性のしていた表情と変わらない。
私は、拘束を外された腕を目の前の『私』に向けて伸ばした。
そのとき視界に入ったその腕に、私は強い違和感を抱いた。
腕にはカフスが付けられているのみで肩までほとんど露出している。
それに、普段の私の腕よりもどこか肉付きがいいようにも見える。
私は視線をそのまま肩から胸元に移した。
「なっ!?」
私は驚愕した。
ささやかな膨らみがあるばかりだった私の胸が、足元を見ることが叶わないほどの大きさの巨大な乳房に変貌していた。
それだけじゃない。
私の着ている服はかなり露出度の高いラバー質のものになっており、鼠蹊部から先はムチムチの太ももが剥き出しになっている。
「如何ですか? 新しい身体になった気分は」
オーナーがそう言いながら私に鏡を向けてきた。
そこに映るのはいつもの私の顔ではなく、パーマのかかった金髪、アイラインを強調した派手なメイク、そして頭にウサ耳をつけたバニーガールだった。
「な、なんですかこれ!? 私、どうなってるんですか!?」
思わず叫んだ私の声は、いつも聞く自分の声よりも幾分高い音で、少なくとも自分の声とは完全に別人のものになっていた。
「貴女には今日からその身体、『バニーガール7号』として働いてもらいます」
「そ、そんな……!」
私は、本当にあのバニーガールの女性になってしまったらしい。
身体のバランスが全然違うためか、立っているだけでフラついてしまう。
特に気なるのはやはり胸。
いつもよりも重量を感じることに全然慣れない。
すると、私の本当の身体が磔にされた板が台車に乗せられ奥に運ばれて行ってしまった。
「あの、私の身体はどうなるんですか!?」
「神崎絵梨花さんの身体は我々が預からせてもらいます。3300万の借金の担保として。勿論全額返済頂いた暁にはお返ししますので悪しからず」
「そんな、嫌です! 戻してください! 私の身体……っ!?」
私が必死に懇願しているといきなり近づいてきたオーナーが私の手で無理やり口を塞いだ。
「少し想像力を働かせてください。今、神崎絵梨花さんの身体は私の手のうちの中にある。下手なことをしたときそれがどうなるか……わからなくはないでしょう?」
「んっ……は、はい……」
口から手を離された私は、素直に頷くしかなかった。
この恐ろしい人に逆らったら私の身体がどうなるか、考えたくもない。
「もう一つ言っておきましょう。今の貴女はバニーガール7号です。もう神崎絵梨花さんではありません。これから私たちは貴女のことを7号と呼びますし、貴女は名前を聞かれたらバニーガール7号と名乗ってください。ここではそれがルールです。わかりましたか?」
「はい……」
私は身体だけでなく名前まで奪われてしまった。
バニーガール7号なんて、とても人の名前には思えない。
でもこれからはそれを自分の名前としなくてはならない。
この人に逆らえない以上、どんな命令にだって従うしかないのだから。
「大丈夫ですよ。その身体ならすぐに借金を返済することができます。バニーガール7号は全身開発済みですからどんなお客様だろうと満足させることができるでしょう。例えばこのように……」
オーナーは私の胸に手を添えると唐突にギュッと握りしめてきた。
「んおッ!?」
その瞬間、凄まじい快感に私は思わず声を上げていた。
何、今の感覚は?
それに……今の変な声、私の口から出たの?
「ちょっと刺激を与えるだけで軽い絶頂を迎えて品のない嬌声を上げるほどに、全身が性感帯として機能しているはずです」
全身が性感帯って、なんて卑猥な……。
私は今まで異性と交際をしたことがない上に、性行為はおろか自慰すらほとんどしていないというのに。
元の身体とのあまりの違いに私の中には嫌悪感が募るばかりだった。
「それでは早速入っていただきましょう。彼女をVIPルームにお連れしてください」
「あの、私は何をすれば……」
「周りのバニーガールたちの真似をしていれば大丈夫です。お客様も事情を理解した上でお楽しみになりますから」
オーナーはそれだけ言うと去っていった。
私はサングラスの男性たちに連れられ別の部屋へと移動させられた。
その部屋はカジノの中ともまた少し雰囲気が違う部屋で、バニーガールたちがいかにも裕福そうな身なりのお客さん相手に接待をしていた。
「ん? 新しい子か? 君、名前は?」
両脇にバニーガールを侍らせた男性が私に問いかけてくる。
私はオーナーに言われた通りに名乗った。
「ば、バニーガール7号、です……」
「7号ちゃんね、よろしく。声が小さいが、恥ずかしがり屋なのかな? そんなドスケベな身体しといて今更なにを気にしてるんだか」
私の全身をジロジロと眺めながら男性が言う。
私はハッとなってつい身体を手で隠してしまった。
「はっはっは! これは随分とおぼっこい子だ。気に入った。おい、君はもう下がれ。あの子とチェンジだ」
「はーい。ありがとうございましたー」
男性の左隣にいたバニーガールが男性に手を振って部屋から去っていく。
「小慣れてきたバニーなんかつまらん。せっかくここで遊ぶんだからその反応を楽しみたいんだよこっちは。6号ちゃん、君もそう思うだろう?」
「は、はいっ、そうですね……」
男性の右隣にいるバニーガールが俯きがちに返事をした。
銀髪で派手なメイクをしていて肉付きのいい身体をしているいかにもなバニーガールだけれど、もしかしたら彼女も私と同じような境遇なのかもしれない。
「さあ、こっちに来るんだ」
「はい……」
私は空いた男性の左隣に座る。
すると、男性はいきなり私の身体を引き寄せ脇から胸を揉んできた。
「おッ……!?」
「ふふん、感度の方も良好か。流石だな」
胸を揉まれた私の情けない喘ぎ声を聞いた男性は満足そうに頷く。
私は自分の出した声で恥ずかしくなり顔が真っ赤になっていくのがわかった。
もう嫌だこの身体……。
「よし、少しゲームでもするか。今から君たち二人をイカせる。そのときにより遠くまで潮吹きした方に罰ゲームだ」
潮……?
なんのことかよくわからず困惑していると、突然男性は私たち二人の股間の部分をずらして指を突っ込んできた。
「んお゛ォッ!?」
「お゛、お゛ぉッ!?」
私たち二人はほぼ同時に奇声を上げた。
快感に震える汚い喘ぎ声。
ちょっと触れられただけでも抑えられなかったのに、股間の大事なところを触られたせいか今までで一番大きな声を上げてしまった気がする。
「さて、何秒でイクかな?」
「おッ、んお゛ッ!? お、おほぉッ!?」
「あ、あ゛ッ、んんッ、んお゛ぉッ!?」
私の耳には何も入ってこず、ただ股間からもたらされる破壊的な快感に震えるばかりだった。
頭、おかしくなるぅ……!
もうダメ、壊れちゃうアソコが、あ、あぁっ!
「んおお゛ぉォお゛オぉッ!!?」
「イグゥッ、イグゥぅんお゛ォッ!!?」
一際大きく叫んだ瞬間、私の股間からはプシャァッと、液体が飛び散った。
我慢していたわけじゃないのに勝手におしっこが出てしまったようなそんな感覚がした。
「うおっ、すげえ飛んでるな。二人ともかなりの勢いだが、7号ちゃんの方が段違いに飛んでる」
「ぉ゛ッ……ッ……」
「ぁ゛ッ…………んッ……」
私と隣の6号さんはビクビク身体を震わせながら果てていた。
何、今のは……。
あんな感覚、私は知らない。
この身体、絶対おかしい……。
「それじゃあ罰ゲームだ。7号ちゃん、今から君にはこのバイブを挿しながら俺に接待をしてもらう」
「んっ……え……? ばい、ぶ……?」
「ん? なんだ、もしかして知らないのか? すごいな、今どきそんな穢れを知らない女がいたとは。玩具だよ。大人の玩具。このチンポを模した棒を股間に突っ込むんだ」
男性はピンク色をした棒状の機械を手に取ると、それを私の股間に強引に捩じ込んできた。
「んおぉ゛ッ!?」
「もちろんただ挿れるだけじゃないからな。しっかり感じるんだぞ」
男性はそう言うと棒についているスイッチのようなものを入れた。
その瞬間、ギュインギュインと音を立てて棒が振動を始めた。
私の股間の中で振動しながらモゾモゾ動く棒。
私は堪らず声を上げた。
「んお゛オォぉッ!? おッ、お゛ォッ、んオ゛ぉォッ!?」
あまりの刺激と快感に私は椅子から転げ落ちて床に倒れ込んだ。
さっき私の股間から吹き出た液体が飛び散っているのも関係なく、私はその場でのたうち回る。
「お゛ッ、んおお゛ぉッ!? と、どめ、てぇ、あッ、んあ゛ぁァッ、おぉ゛ぉォッ!?」
「はははははッ! こりゃあすごい! こんなに感じてたら接待なんてできないだろうが、まあこれはこれで面白い。俺が満足するまでそこでのたうちまわっていてくれ」
「そん、な゛、あッ、あ゛ぁァッ!?」
頭を焼き切る勢いの快感は、止まることなく私を蹂躙していく。
股間からは断続的にプシャァッと液体が飛び散っていた。
人間に、こんな感覚があるなんて、私は知らなかった。
「たかがバイブでここまでになるとは。本当に期待の新人だ。君もそう思うだろう? 6号ちゃん」
「え、ええ……そうですね……」
6号さんが憐れみに満ちた目でこちらを見ているけれど、そんなことを気にする余裕は私にはなかった。
私はそのお客さんが帰るまで、ひたすらずっと獣のような奇声を上げ続けることしかできなかった。
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そして、それから数週間。
私はこのカジノでバニーガールとして働き続けている。
当たり前のように胸やお尻を揉まれ、時には乳首に付けられたピアスを弄られ、またある時は股間の大事なところに付けられたピアスを弄られ、その全てにおいて私ははしたない喘ぎ声を上げていた。
でもそのおかげか最近は少し快感にも慣れてきて、少なくとも初日のようにバイブを挿れられただけでのたうち回るようなことはなくなってきた。
「……ッ……」
今だって、ちゃんと普通に過ごせている。
お客様の命令で股間にバイブを挿したままカジノ内で給仕の仕事をしていても倒れたりなんてしない。
「……ぉッ、ぉ゛ッ……」
たまにイッて潮吹きしてしまうけど。
あ、イクというのは性的な快感で絶頂を迎えることで、潮吹きというのは女性が無理やりイかされたときに股間からは液体を吹き出してしまうことなんだって。
こういう性的な知識って今まで全然持っていなかったのだけれど、ここで働くうちに自然と身についてしまった。
なんだか自分がどんどん別の何かに変わっていくようで嫌悪感がある。
「おい、あのバニーガール、バイブ挿れてんぞ」
「おいおいマジかよ……」
「やあねぇ、まったく……」
「あんだけドスケベな体なんだからお似合いじゃね?」
周りの視線が集まり、私は顔が赤くなるのを感じた。
自分の身体じゃなくたってこんな醜態を見られるのは恥ずかしくて仕方がない。
早く、借金を返して元の体に戻らないと……。
────────
ここで働き始めてから一ヶ月以上が経過した。
未だに借金は返せていない。
私の給料は全て返済に充てられていると聞いているけれど、それがあとどれぐらいなのかは教えてもらえない。
早くしないと、大学卒業までもう時間がないのに。
焦る気持ちばかりが募るけれど、今の私には地道に働き続ける以外に選択肢がなかった。
今日もカジノ内で給仕に勤めていると、後ろから声をかけられた。
「7号さん、VIPルームで指名が入りました」
「あ、わかりました。ありがとうございます、9号さん」
私は教えてくれたバニーガール9号さんにぺこりと頭を下げてVIPルームに急いだ。
あの9号さんは私より後にやってきたバニーガールだ。
恐らく私同様に借金をさせられてここで働かされているはずだ。
名札についている写真にはお嬢様のような可愛らしい女性が写っていたし、きっと私と同じように日々恥ずかしい思いをしているに違いない。
全部私の憶測ではあるけれど。
バニーガール同士は不要な会話をしないように言われている。
なので私たちはお互いの境遇を知らないし、本当の名前もわからない。
ただ番号で呼び合うだけだ。
中にはまだ会話すらしたことがないバニーガールも何人かいる。
けれど、私たちの間には不思議な連帯感があって協力する意識だけは共有されていた。
いつかみんなでここから出たいという気持ちで働き続けているのだ。
……ただ、一つだけ気になるのは、新しくバニーガールが増えることはあっても減ることがないことだ。
借金の返済が終われば身体を返してもらえてここから出られるはずなのに……。
そんなことを考えている間にVIPルームに着いた。
私は深呼吸してから中に入る。
「お待たせしました。お客さ、ま……!?」
「やあやあ7号ちゃん。会いたかったよぉ。むほほ、相変わらず溢れそうな爆乳だねぇ、君は!」
いつものように私に向けられる下品な欲望に塗れた言葉。
その言葉の主を見て、私は驚愕した。
黒い髪の小柄で華奢な女性。
それは紛れもなく、元の私の身体だった。
「なん、で……」
「ありゃ? 驚いちゃったかな? このVIPルームのサービスの一つに身体貸し出しっていうのがあるんだけど、君たちバニーガールには教えられてないみたいだね」
『私』は立ち上がるとニヤニヤと笑いながら私に近づいてきた。
露出の多い白いドレスを着ており、人の身体で勝手に着替えを楽しんでいたのは明らかだった。
「このカジノに預けられている身体は金さえ払えば借りることができるのさ。もちろん僕は7号ちゃんのファンだからこうして君の身体を借りたってわけ。7号ちゃんが長年共にした身体になれたってだけで……んんっ、興奮しちゃうなぁ、んひひ!」
「っ……!」
『私』はクネクネしながら自分の身体を抱きしめていた。
人の身体で変なことを言わないでほしい。
ただでさえこんな身体にされて苦労しているというのに、その上さらに本当の身体まで好き勝手にされたら堪ったものじゃない。
「あ、もちろんこの身体は借り物だから丁重に扱うよ。下手なことしたらあのオーナーに何されるかわからないしね。それに、この身体のレンタル代は君の借金返済に充てられるんだからむしろ感謝してほしいぐらいだよ。ほら、お礼言って」
「……あ、ありがとう、ございます」
私は拳を握りしめながら心にもないお礼を口にした。
こんな人に、私の身体を使われるなんて。
「んー、せっかくお金払ってあげてるんだからお礼だけじゃ物足りないなぁ……そうだ! 僕のことは名前で呼んでよ。この身体の名前でね。『絵梨花様』って」
「なっ!?」
他人に使われる自分の身体を、自分の名前で呼べって?
それも、私の方は名前を奪われて7号なんて番号で呼ばれているっていうのに?
冗談じゃない。
「ほら、早く呼んでよ7号ちゃん。聞こえてるの? 7号ちゃん。早く『絵梨花様』って呼んでよ、7号ちゃん」
「っ……! ……え……絵梨花、様……」
「はぁい! よくできましたぁ! ありがとうねぇ、7号ちゃん。お返しにその爆乳揉んであげるね」
「んおッ!?」
いきなり胸を揉まれて、思わず上擦った嬌声を上げてしまう。
それを見た『私』はニヤニヤと歪な笑みを浮かべている。
「自分の身体に爆乳揉まれる気分はどうだい? いつもより感じちゃったんじゃないの?」
「そ、そんな、こと、んお゛ォッ!?」
「むふふ、相変わらずな喘ぎっぷり。君のその品のないメスウサギの鳴き声はクセになるねぇ」
『私』は楽しそうに私の乳首についたピアスを指に引っ掛けて弄んでいた。
当たり前だけど、自分のこんな姿は見たことがない。
見た目は自分なのに、まるで自分じゃないみたい。
それは、今の私も同じ。
中身は自分なのに、身体は全く違う別人のものになっていて、自分なのに自分じゃない気分を味合わされてる。
私という人間の像がどんどん壊れていっているような、そんな感覚に襲われていた。
「そうだ! せっかく女の子同士になったんだからあれやってみたいな! 貝合わせ!」
「っ! そ、そんなこと……!」
人の身体でなんてことをするつもりなのだろうか。
とてもじゃないがそんなのは認められない。
「んー? 嫌だって言うのかい? こっちはオーナーの許可は得てるんだけどねぇ。それでも嫌だって言うのならオーナーに報告を……」
「わ、わかりました! やります!」
「うんうん、それでいいんだよ。それじゃあ服を脱いでそこに座ってくれたまえ」
私は言われた通りバニースーツを脱ぎ、マットの上に座り込んだ。
普段は隠れている乳首と股間のピアスが完全に露出し、流石に恥ずかしい。
『私』の方もドレス脱ぎ捨て、付けていた下着もその辺に放り投げて全裸になってしまった。
小ぶりな胸が少しあるだけの小柄で華奢で傷一つない綺麗な身体。
無駄に肉付きのいい下品な今の私の身体とは大違いだった。
早く、あの身体を返してほしい。
そのためには、ちゃんと仕事をするしかない。
「ほら、身体くっつけて」
私は『私』と足を絡めてお互いの股間を近づけていく。
ピアスを付けられ黒ずんだ私の股間に、綺麗なピンク色の『私』の股間がピタリとくっつく。
「ん゛ッ……」
「おや、もう感じてるのかい? まだこれからだって言うのに。じゃあ、いくよ?」
『私』は股間を擦りつけるように身体を動かした。
その瞬間、グチュグチュッという音と共に私の股間には激しい快感が迸った。
「んお゛ォッ!? おッ、ほォッ!?」
「んっ……あ、ちょっと気持ちいいかも……」
私が獣のような嬌声を上げるのに対して、『私』はどこか可愛らしい声をあげるだけだった。
「んぉッ、んん゛ッ、あッ、んお゛ォッ!?」
「あ、クリトリスに、ピアスが当たると、きもち、いい……」
『私』は私の股間についたピアスの部分に重点的に股間を擦り付けてきた。
股間のピアスは私の性感帯の中でも特に弱い部分で、そこをこんなに責められてはまともに思考する余裕すらなくなりそうだった。
ダメ、わたし、もう……。
「んお゛ッ、おッ、んッ、あ゛ッ、イグッ、イグイグッ、あッ、ん゛ッ、イグゥんおお゛ォぉォッ!!?」
「きゃっ!? ……え?」
私はビクンッと大きく身体を震わせながらプシャァッと思いきり潮吹きをした。
吹いた潮は全て目の前の『私』にビチャビチャと降りかかり、『私』は何が起きたのかわからないような表情で目を丸くしていた。
「もうイッちゃったのかい? いやいや、流石に早すぎるでしょうよ。こっちの身体はまだ全然イキそうにないのに……」
「……ぉ゛ッ……ッ……」
舌を伸ばしたまま果てている私を、本気で驚いたような顔で『私』が見ている。
そ、そんな顔で、私を見ないで……。
「うーん、もしかしてこの身体ってあんまり感度良くないのかい? だとしたらちょっと興醒めだなぁ。こっちは気持ちよくなりに来てるっていうのに。まあ、だからって7号ちゃんみたいに家畜のように喘ぐクソ雑魚マンコにはなりたくないけどねぇ」
『私』が立ち上がって股間を指でほじりながら言った。
今の私があんな乱雑なオナニーをしたら3秒でイッてしまいそうだ。
改めて、今の身体と元の身体の違いを見せつけられてしまった。
「まあ、それなりには楽しめたよ。それじゃあ、7号ちゃんは早くこの身体を取り戻せるように頑張って。じゃあね」
「んッ……あ、ありがとう、ございました……ぁッ……」
ドレスを着直して部屋から出ていく『私』を私は地面に潰れたカエルのように伸びた姿勢で見送った。
早く、元に戻らなきゃ。
こんな姿は本当の私じゃないんだから。
────────
それからさらに数ヶ月が経過した。
月末に大学の卒業式を控え、いよいよ時間がなくなってきた。
もうここから出ないと私の人生はめちゃくちゃになってしまう。
あれからは自分の身体を相手することはなかったものの、それ以外のありとあらゆる性接待をしてきた。
セックスはもちろんアナルだって使ったし、排泄シーンを見せたりもした。
それもこれも全ては元の身体を取り戻してここを出るため。
どんな羞恥にも耐えて早くここから出なければいけないというのに、いっこうにその日は訪れない。
もうこうなったらオーナーに直接かけ合わなければいけないのかもしれない。
あの人は恐ろしいけれど、もうそんなことを言っている場合でもない。
なんて、そんなことを考えていたらつい不注意から持っていたグラスを落としてしまった。
パリーンッ、という音にハッとなった私は慌ててそれを片づける。
「し、失礼しました!」
「失礼しました!」
近くにいたバニーガールが気づいて声をかけながら片付けを手伝ってくれた。
うぅ、やってしまった。
グラスを割ったら弁償代が借金にプラスされることになっている。
こんなんじゃあいつまで経ってもここから出られないっていうのに。
そのとき、手伝ってくれていたバニーガールが突然手を止めたのに気付いた。
顔を上げてみると、ピンク色の髪をした彼女は驚愕と絶望が混じり合った今にも泣きそうな顔で私の胸元を見ていた。
どうしたんだろう?
ほとんど話したことがない相手だったので、私は名札を見て相手の名前を確認した。
バニーガール5号さんか。
いったいどうしてそんな顔して……。
と、そこで私の思考も止まった。
相手の付けている名札の顔写真。
そこに写っていたのは、あの日失踪したと告げられた私の友人、優菜の顔だった。
「っ……!?」
思わず名前を呼びそうになった。
でも、本当の名前を呼ぶことはここでは禁止されている。
私はすんでのところでそれを堪えた。
でも、どうして優菜がここに?
私に借金を押し付けて失踪したはずでは?
……いや、思えばあのとき聞かされた優菜の話は何もかもおかしかった。
もし優菜が私より先にここに連れてこられたのだとしたら。
あのとき黒服に聞かされた話は全て私を陥れるための罠だったということになる。
なんて、ことを……。
「……っ……7号、さん……」
「……5号、さん……」
私たちは万感の思いでお互いの名前を呼んだ。
思い入れのかけらもない、ただの番号の名前を。
私たちはそれから特に何も話すことなく、片付けを済ませてお互いの仕事に戻った。
でも、このままじゃ終われない。
オーナーに話をつけないと。
私はその日の業務を終えると、いの一番にオーナーの元へと向かった。
薄暗い部屋の中で、オーナーはいつものようにソファに座っていた。
「おや、7号さん。どうかしましたか?」
「……オーナー、お話があります」
私は全てを問いただすつもりでオーナーに近づいた。
それに対してオーナーはいつもと変わらない態度のまま口を開いた。
「その様子では、お友達がここで働いていることに気付いたようですね」
「っ!?」
どうやら私がここに来た理由を察しているらしい。
一瞬驚いたけれど、それならこちらとしても話が早い。
「全部、仕組んでいたことだったんですか?」
「いいえ。私は何も知りませんでした。全てはあの取り立て屋さんが建てた計画です。君のお友達を罠にかけ、そしてそのついでに君も罠にかけた。そうして二人の女性を私に売りつけた。ただそれだけの話です。私としては従業員が増えればそれでいい。別にそれが普通に借金を負った女性だろうと、罠にかけられた君たちだろうとどうでもいい。私には関係のない話です」
淡々と語るオーナーに私は唖然としていた。
人の人生を弄んでおいて、なんて言い草を。
「いずれにしても貴女達がこのカジノに借金を負っている事実は変わりません。まあ……最初の分の300万はなかったことにしてあげてもいいですが、それでも3000万は残ります。その分はきっちり返して頂かなければ」
「その3000万も、いつまで働けばいいんですか!? ちゃんと働けば早く戻れるって言ってたのに、全然戻れないじゃないですか!」
私はずっと抱えていた不満をぶちまけた。
もういい加減我慢の限界だ。
怒りと不安と焦燥、それらの感情を吐き出さずにはいられない。
それに対してオーナーはいつものように、ただ淡々と言葉を続けた。
「現在の返済額は2918万円です。もう残りは100万円を切っていますね。あと数日も働けば返済は完了するでしょう」
「……え?」
唐突に告げられた事実に私は間の抜けた返事をしてしまった。
もうほとんど借金を返済し終えているの?
じゃあ、あと少しでここから出られるってこと?
突然降って湧いた希望に私は感情が追いつかなかった。
「しかし……そうですね。貴女は優秀な方でしたから。お客様からの評判も良く、うちの売り上げによく貢献してくれました。それに免じて、残り82万円分はチャラにしてあげましょう」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ、構いません。今すぐにでも身体をお返ししましょう。ちょうど、開発も完了したことですし」
オーナーはそう言うとパチンと指を鳴らした。
すると、部屋の奥からライトに照らされた板が運ばれてきた。
そこには女性が一人磔にされている。
水色の髪、ムチムチとした肉付きのいい手足、全身に施された淫らなタトゥー、耳、鼻、乳首、クリトリスなどあちこちに付けられた淫らなピアス、小柄な身体に不釣り合いなあまりにも大きな胸。
今まで見てきた色んなバニーガールの中でも特に下品な姿をした女性が、私の前に運ばれてきた。
これは……何?
私の身体を返してくれるって話じゃ……?
「如何ですか? 数ヶ月ぶりの自分の身体との対面は」
「……え、は? あの、何を言って……」
「貴女の借金返済が近づいてきていたので数週間ほど前から調整に出していたのですよ。ちょうど昨日開発完了の連絡があって引き取ってきた所です。本当にベストタイミングでしたね」
「あの、だから何の話を……」
「お分かりになりませんか? この女性は、貴女の身体……『神崎絵梨花』さんですよ」
私は絶句していた。
嘘だ、嘘だ。
そんなの、嘘だ。
これが、私の身体?
今の身体以上に下品な、これが?
そんなわけ、あるはずが……。
けれど、じっと見ているとわかる。
その目や口の形、身体にあるホクロの位置など、元の私の特徴と一致する部分が多々ある。
それじゃあ、本当に……。
「どうしますか? この身体に戻りたいと仰るのならば今すぐにでもお返しします。もっとも、この身体で外を歩けるとは思いませんし、銀行勤めをしようなどというのは論外でしょうが。比較的マシなそちらの身体に残るというのならこちらの身体は引き取りますがその分の対価はお支払いします。いずれにしてもこのカジノに残るのでしたら今後はきちんと給料をお支払いしますし福利厚生に関してもしっかりと保証しますよ。さあ、どうしますか?」
「わた、し、は……」
目の前が真っ暗になっていく中、心の中に張り詰めていた緊張の糸が、プツンと切れる音がした。
────────
ここで働き始めてから一年が経った。
借金がなくなったおかげでお金は自分の使い放題になった。
最近は外出許可も取り付けられるようになったので、外に出ては豪遊を繰り返している。
お金は使い始めるとあっという間になくなるけれど、その分働いて取り戻せばいいから何も問題ない。
今日もいつものようにお客様の接待だ。
「あ〜ん、もっとおっぱい触ってくださ〜い♡ その逞しいおててで〜……んおッ♡」
色々と吹っ切れた結果、今までよりも真っ直ぐこの仕事に向き合えるようになった。
前はあんなに苦痛だったのに、今では楽しくって仕方ない。
もっとも、そんな私の変化を快く思わないお客様もいるようだけど。
「はいはい、そんなに揉まれたきゃ揉んでやるよクソビッチが。……はぁ……7号ちゃんもすっかり変わっちまったな。前はあんなに可愛かったのに……」
「ええ〜? 何言ってるんですか〜? 今だってかわいいでしょ〜?」
「ただドスケベなだけだろ……まったく、こうなるとつまらんのよなぁ」
すると、そのとき入り口の扉が開いて誰かがVIPルームの中に入ってきた。
「ん? 新人の子か? 君、名前は?」
男性が入ってきたバニーガールに問いかける。
私はその姿を見て、あっ、と声をあげそうになった。
水色の髪、ムチムチとした手足、チンポやマンコを模した下品なタトゥー、あちこちにつけられたチンポ型のピアス、私よりもでっかいスイカみたいな爆乳。
「……ば、バニーガール、19号です……」
その姿は紛れもなく、開発された元の私の身体だった。
ついにあの身体も別の人間に貸し出されることになったのか。
そうかそうか。
なんだか面白くなってきて思わず笑いそうになってしまった。
「こりゃまた随分ドスケベな身体してんなぁ……見た目に反して中身は恥ずかしがり屋っぽいし、昔の7号ちゃん見てるみたいだ。いいじゃん、気に入った。7号ちゃん、19号ちゃんとチェンジで」
「は〜い♡ ありがとうございました〜♡」
私は席を立って出口に向かって歩き始めた。
そして、すれ違い様に元の私……いや、19号さんの肩にポンと手を置いた。
19号さんはビクッと震えると不安そうな顔をしながらこっちを見ていた。
私はそのまま何も言わずに外に出る。
扉を閉めてから軽く振り返ると、中から「んお゛ォッ!?」という汚い喘ぎ声が聞こえてきた。
始まったみたいだ。
相当ウブな子って感じだったし、最初は苦労しそう。
精々頑張ってね、19号さん。
その身体、多分私の身体よりもずっとすごいから。
もしかしたらいつか19号さんと3Pやレズセックスさせられる日も来るかもしれない。
そのときは先輩として、元の身体の持ち主として、優しく手解きしてあげるとしよう。