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王の淫堕~雄を奪われた孕み袋~⑥

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王の淫堕~雄を奪われた孕み袋~⑥
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前回

王の淫堕~雄を奪われた孕み袋~⑤

前回 https://moke.fanbox.cc/posts/8572704  じゅる、じゅずうう。ちゅ、じゅるる。  痛いほどに強く乳首に吸い付いた分厚い唇から、わざとらしく下品な音が響き続ける。  一体何匹を産まされたのか、それすらも分からぬほどに醜い肉塊を産み落とし続けた股ぐらの割れ目は、ゆるゆるとだらしなくよれたまま口を開...


 肉と肉がぶつかり合い、滴る体液が弾ける卑猥な音。そればかりが絶え間なく響き続ける。

 黒紫のぬらぬらとした表皮に覆われた屈強な腹に視界を阻まれ、太く強靭な無数の手で体中を押さえつけられ、尽きることのない欲望を叩きつけられる。

「――ッ♡ ――ッッ♡♡♡」

 生ける雌穴と化した体は、もはや呼吸も必要とせぬほど変わり果てているのに、それでもなお剛直で射抜かれるたび甘い息遣いを漏らしてしまう。

 一瞬の休息すらも得られぬまま、我が子達が叩きつける肉の杭の熱と硬さを全身で感じ続けることだけが、今のレオに与えられた役目となっていた。

 ――どちゅ。ごちゅん。ごりゅうううう。

 今やレオと変わらぬ体躯にまで成長した我が子たちが、かつてレオが有していたのと同じ強靭な膂力を思うがままに振るい、頭に、鼻面に、尻に、股に、胸に、腹に、屈強な腰を叩きつける。

 荒々しいピストンを受けるたび、頭蓋は痛みもなく肉棒の形に変形し、肉棒に吸い付くための淫穴を浮かべるのみの顎が押し潰される。

 タールのように黒く濃厚な精液を体中から注ぎ込まれるたび、肉棒に拡げられた耳から、黒く染まった瞳を見開く目元から、口とも呼べぬ肉穴の上に浮かぶ鼻の穴から、今やレオの内を満たす黒い体液が溢れ出していた。

(お゙ォォ……ッ♡)

 流れ落ちてゆく。失われてゆく。極限まで希薄になった自身が、息子たちに突き上げられ悶えよがるたびに、さらに薄くなってゆく。

 人としての感覚を一つ失うたびに、この異常な近親相姦のもたらす快感をより深く感じられた。

 全身を形作る肉片の一つ一つまでもが、ただ雄の猛りを受け止め味わうための器官へと、変じてゆく。

(くる……ッ♡♡ また……ッ♡♡ また、アレ、が……ッ♡♡♡)

 押し寄せる快感の波に震えながら、剛直に射抜かれた胸は鼓動を高鳴らせるのではなく、乳首と置き換えられる形で胸板に浮かんだ二つの女性器を震わせ、厚く逞しい胸の内を満たす淫肉を収縮させ、雄竿を締め上げる。

 まるで産まれたときからそうであったかのように、穴という穴が雄の猛りに応えて悶え震え、縮み上がる。

 どくん、どくんと、もはや自分の胸からは感じることのできぬ鼓動が、密着し絡み合う我が子達の逞しい体の向こうから響き、伝い、体中へと甘く伝播してゆく。

『――ッ、――ッ』

 非生物じみた、悍ましい嘶きが木霊する。尽きせぬ獣欲のみに支配された異形の命どもの咆哮が、幾重にも渡ってこの肉の牢獄に響き渡っていた。

 それぞれがばらばらに、レオの思考をかき乱すようにちぐはぐなリズムで腰を打ち付けながら、少しずつ、少しずつ、その咆哮と腰使いが重なってゆく。

 荒く、ただただ乱雑な快楽の奔流が、研ぎ澄まされ、削り出されてゆくように、心地よい一つのリズムに収束してゆくのを感じながら、レオの黒く染まった瞳がぐるんと上を向き、瞼の奥に半ば隠れた。

 元から備えていたもの、そのために作り替えられたもの、後から付け加えられたもの、全身の穴という穴を同時に蹂躙されながら、僅かな狂いもなく同じタイミング、同じ強さで肉棒を突き挿れられるとき、レオは人の形をしているだけの雌穴へと成り下がってゆく。

「――ッッッ♡♡♡」

 ――ずちゅん。

 ついに寸分の狂いもなくレオを射抜く衝撃が、張り詰めた肌の内で震える淫肉を波紋のように伝い、折り重なり、混ざり合い、一つとなる。

 黒紫の無頭の獅子たちが、レオを中心にして重なり合い、尽きせぬ衝動に任せて腰を突き出したまま動きを止め、小刻みに震える肉の玉の如き光景を作り出していた。

 ぬらぬらと粘液を纏う異形たちに押し潰されるようにされながら、助けを求めるように伸ばされた右腕のみが、折り重なる黒紫の体の合間から投げ出されている。

(あ゙ァァ……っ♡♡)

 みちみちと圧っされ抑え込まれた体の奥で、幾本もの肉棒が震え、膨れ上がり、レオを魅了する。

 雌穴と化した体の全てでそれを受け止めることだけが、今のレオの役目だった。

――ごっぽおぉおっ!びゅくぅうううっ!ごびゅるううっ!

 熱く、濃く、あまりにも力強い生命力に溢れた精液が、肉棒に射抜かれた体中の穴から流し込まれる。

 子宮の肉壁へと迸るほどの勢いで精液を叩きつけられる感覚、レオは今やそれを体中で感じることができた。

(ア゙っ♡ ア゙ァ゙ッ……♡♡♡)

 折り重なる体の隙間から伸ばされたレオの腕が、ビクビクと痙攣しながら跳ね回る。指はありえぬ咆哮へと向いて曲がり、腕は骨を失ったかのように捻じれ、注ぎ込まれた精液がまるで意思を持つかのようにレオの皮下で蠢き、広がってゆく。

 浅く日焼けした瑞々しい肌の下に詰め込まれた、ただ快楽を感じるための淫肉を隅々まで愛撫されながら、その中に残るほんの一握りのものを探り、かき集められてゆく。

「……っ♡」

 はち切れる寸前の水風船の如く膨らんだ腕が、ゆっくりと本来の形を取り戻してゆく。逞しく強靭な筋肉の隆起に、濡れた肌がピタリと吸い付いて、レオの本来の形を再現してゆく。

 全身を駆け巡る絶頂の快楽に蕩け果て霧散した体が、余韻が過ぎ去るにつれて形を取り戻してゆくその様を、レオは文字通りに体験しながら、その恍惚に酔いしれる。

 そして、過ぎ去ってゆく余韻の代わりに湧き上がる期待に、肉棒を締め上げるための淫肉ばかりが残る胸を震わせた。

「――ッ♡♡」


 ……ずりゅうう。じゅぽおお。ぐぷ。

 レオを絶頂へと導いた、示し合わせたかのように狂いなく一致したピストンから打って代わり、我が子達が思い思いの動作で肉棒を引き抜いてゆく。

 体中の肉穴は青紫の粘膜を晒しながら、タールのように黒いどろりとした精液を滴らせ、凛々しさなど微塵も残らぬ醜い異形へと作り替えられた獅子の顔が、細められた目元のみでその悦びを物語っている。

 臍の代わりに女性器が浮かぶ腹は、何度目かも分からぬ妊娠を示すように膨れ上がり、引き伸ばされ薄くなった皮膚の下には、怪物の血肉と同じ黒紫の肉が薄っすらと透けている。

 孕み腹の奥で蠢く精液が、レオの内に残されていた最後の血肉を貪り侵し、幾匹目かも分からぬ異形の命へと変じてゆく。

(ああ、また……ッ♡)

 愛しい我が子達と体を重ねその子種を腹に宿す悦びを、精液の詰まった頭で想いながら、レオはすぐにでもまた始まるであろう激しいまぐわいを待ちわびるように、全身の雌穴をヒクヒクと震わせて、我が子達を誘う。

 腹に宿る新たな命が、己を力強く抱き欲望を叩きつけてくれる様をも思い浮かべながら、冷めやらぬ火照りに満ちて、終わり無く続く恍惚の時間に身を任せる。

「……、……?」

 だが、期待していた快感が与えられることはなく、淫肉の塊も同然となった体を、久しく味わうことのなかった静寂が包んでいた。

(な、ぜ……っ)

 しかし、ついに与えられた休息はむしろ、狂おしいほどの疼きを際立たせレオを責め立てる。

 レオは肉床の上に横たえた体を無様に揺すりながら、体中の雌穴から潮を垂れ流し、耐え難い飢えに悶え続ける。

「……ッ! ……っっ!」

 声を発することもできぬ肉穴となった口が痙攣して、喉に残る精液をこぽりと溢れさせる。

 あれほどまでの熱量で求め愛し続けてくれた我が子達が、あの悍ましい嘶きをも忘れて動きを止め、眼孔を欠いた異形の獅子の顔で冷ややかにレオを見下ろしていた。

(な、なぜ、我を求めぬ……!?)

 早く。もう一秒とて耐えられない。すぐにでもその逞しい腕で組み伏せて、どの穴にでもいいから肉棒を突き立ててくれ。

 眠ることも、食事を摂る必要すらもなくなった体に残る、ただ一つだけの欲求がレオを支配し、突き動かす。

 見た目だけはかつてと変わらぬ腕で体を支え、膨れ上がった孕み腹を抱えてよろよろと身を起こしながら、レオは黒く染まった瞳を息子たちの股ぐらにそそり立つ剛直へと向ける。

 そのどれもが、この火照りを鎮め満たすために差し出されるべきだというのに、母の求めに応じようとする様子も見せない。

(も、もう、耐えられ、ん……っ♡)

 膨れ上がった腹を肉床にこすりつけるようにしながら、レオは最も近くに立つ息子へと向けて這う。その力強く屈強な脚に縋りつき、開くこともできぬ獅子の顎で卑しく収縮を続ける雌穴で肉棒を咥えこもうとするが、黒い雫を垂らす気筒へと口先が触れるかどうかの間際で、それも阻まれてしまう。

「――っ!? ――っっ!」

 絶えず愛液と精液に塗れ続けその臭いを吸い湿った獅子のタテガミを、背後から鷲掴みにされる。

 微かな痛みと当惑の中で、それでも今のレオには眼の前の肉棒以外に見えるものなど何もなかった。

 鼻先に感じる雄の芳香に一層の熱が込み上げて、耳の穴から、両胸から、前後の穴から、こみ上げるよだれのように愛液が溢れ出す。

 舌も残らぬ、かつて口であった肉穴をくぱくぱと蠢かせながら必死に身を捩るレオを、しかし背後に立ちそのタテガミを鷲掴みにする息子が、性の昂りを欠いた無造作な手つきで引き戻し、孕み腹を突き出すような形でのけぞらせる。

(ちんぽ……っ♡ は、はやぐ……ッ♡ はやぐ、つっごんで、ぐれぇッ♡♡)

 全身の肉が、ただそれだけを望んでいた。それ以外の何も望めぬものへと、レオは堕とされ作り替えられていた。

 恐れも不安も、終わることのない快感を貪り続けることへの疑問すらも、もはや忘れていた。

 だが今となって、その恍惚の時間が有限であったと突きつけられる。産み落とした我が子たちに貪られ続けた末に、ついにレオは喰らい尽くされていた。

 ――ぷしゅうっ。

 今やレオの体で唯一、肉棒へと奉仕する以外の機能を残した器官――、穢れた異形の仔を産み落とすための雌穴から、灰色に濁り羊水にもなりきらぬ温かな液体が溢れ出す。

 育ちきった赤仔をついに産み落とすときの、充足感に満ちた悦びもなく、内に宿したものがただ空虚に流れ落ちる喪失感を伴って、足元に響くばしゃばしゃという水音とともに湯気が立ち昇る。

(あ゙……?)

 膨れ上がった腹の奥からは、弱々しい鼓動の一つすらも感じることができなかった。

 もはや一滴の水も残らぬ革袋へと無為に吸い付くような、そんな感覚だけが腹の奥に残っている。

 命とさえ言えぬ“なりかけ”が、それでもなお己を形作ろうともがき、レオに残る全てをかき集め、無意味に消費してゆく。

 そしてその末に、最初の脈動すらも刻むことの出来ぬままに、こぼれ落ちた。

(お゙おおお゙お゙……っ♡)

 自らの重みすらも支えられぬほどに緩んだ子宮が、臓腑を押しやりながら股ぐらへと向けて降りてゆく。

 熟れ爛れた女陰が狂ったような痙攣を繰り返した末に、糸が切れたかの如く弛緩し、黒紫の粘膜が裏返り雄膣がずり落ちて露出する。

 タールじみて黒くどろりとした怪物の子種が、今やレオの内を満たすそれが、垂れ下がった産道から溢れ、溢れ、肉床の上にびちゃんと叩きつけられてゆく。

(――ッ♡ ――♡♡)

 レオの体から、筋肉の張りが失われる。タテガミを鷲掴みにされてぶら下げられながら、膨れ上がった腹が休息に凹み、その中身が股ぐらの裏返った雌穴から溢れ出して止まらない。

 醜く作り替えられながらも輪郭のみは保っていたはずの獅子頭が形を失い、瞳は窪み、鼻面は潰れ、穴の空いた風船の如く萎んでゆく。

 その最中で、レオはただ己がなすすべもなくこぼれ落ちてゆくことのみを感じていた。

 形を失った泥とも肉ともつかぬ自身が、ずるり、ごぽりと音を立てて溢れ出し、肉床の上でとぐろを巻いて打ち捨てられてゆく。

 声を上げることも、身動ぎの一つをすることもできない。全ての近くが急速に失われ、自らの形すらもわからなくなってゆく中で、分かるのはただ己がそこにいるという、それだけだった。

(――♡)

 レオは形を失いながら、なおも抗うかのように垂れ下がる四肢の内側にへばりつくが、萎み潰れた胴体へとその手足ごと凹み飲み込まれてゆく。

 濡れた手袋から無造作に手を引き抜いてゆくように、指の一つ一つが内側へと向けて裏返り、やがてはぱつんと音を立てて潰れた胴体からまろび出る。

(……、……っ)

 なにも見えず、何も聞こえない。ただレオの魂を宿すだけの泥の塊が、中身を失って揺れるのみの潰れた皮の下に打ち捨てられている。

 とぐろを巻いたそれがゆっくりと溶け合い、境目を失いながら蕩け、肉床の上に平たく広がってゆく。

 異形の無頭獅子たちは、足元に捨て置かれた母の成れの果てを一瞥することもなく踏み躙りながら、中身を失った肉襦袢こそを取り合うように引き合い、争い始めていた。

(……っ♡)

 そのうちの一匹が、肉床にへばりつくレオの前に屈み、無造作に手を伸ばす。

 不定形の泥の塊となった己をごつごつとした手で弄られ、掻き混ぜられながら、何かを探られてゆく。

 他のすべての感覚を失ってもなお、己の内に浮かび上がる手のひらの形と、その愛撫とも呼べぬ無造作な動きがもたらす快感がレオを責め立てる。

 ……やがて、蕩けた肉塊となったレオの中に埋もれた唯一の固形物を、その手が掴み取った。

 レオに残る最後の血肉をかき集め、それでもなお胎児にすら至ることの出来なかった、小さな肉片。

 異形の獅子は、末の弟であるそれを口へと運び、ちゅぽんと音を立てて一呑みにすると、乱雑に掻き混ぜられたレオに背を向け、去ってゆく。

(ま、まて……っ)

 引き止めるために声を上げることも、手を伸ばすことも、身震いの一つをすることすら、もはやできない。

 なに一つも感じることのできぬ狂おしい静寂だけが残り、打ち捨てられたレオを包んでいた。

 遅々と、形を失った己が薄く広がってゆく。無音の暗闇の中で、永遠にも感じるほどの一秒を重ねながら、恐怖に叫ぶことも、涙を流し嗚咽することもできない。

 故にレオは、暗闇の中に不意に浮かび上がった悍ましい光景を前にして、何よりも先に安堵を感じていた。

(――っ)

 黒紫の触手が、肉床に広がる泥の塊に触れていた。触手の先端が泥と混ざり合いながら、レオを吸い上げていた。

 視覚を皮切りにして、匂いが、味が、音が、どこかかつてとは違う不穏さを伴って、再びレオのものとなってゆく。

 肉床を凹ませて、薄く拡がった己を窪みに集めながら、細胞の一つに至るまで丹念に染め上げ穢し尽くした蕩けるような甘みを、じっくりと吸い上げてゆく。

 触手の先端を用いて舐るように、最後の一雫までをも平らげ、その味わい深さに目を細め、余韻に浸る。

 ……視界の端で、獲物の血肉をこね回して作った眷属たちが、せっかくきれいに残した皮を乱暴に取り合い、破りかねぬ有り様を晒していた。

(……っ、……?)

 レオは、己の頭に浮かぶ思考の違和感に小さな疑問を抱くが、それよりも先に考えるべき楽しみを放り出すほどではなかった。

 ……己の一部となった新しいおもちゃで、どう遊ぶか。それを思うだけで、尽きぬほどの劣情が湧き上がって、止まらない。



☓☓☓




 形を失って自身そのものが滑り落ちてゆくとき。そしてそれを、より大きな何かの一部として取り込まれ、一つとなってゆくとき。

 レオはその際に味わった感覚の、真逆を今まさに味わっていた。眼の前の光景への違和感など消し飛ぶような感情の奔流が少しずつ遠ざかっていき、か細く叫ぶ己の心の声が再び聞こえるようになってゆく。

 少しずつぼやけてゆく視界の中に、丹念に繕われた肉襦袢が見える。胸元に大きく空いた穴へと差し込まれた触手の先端から、空っぽのその中へと黒くどろりとしたヘドロが流し込まれ、その虚を満たそうとしていた。

(お゙……っ、あ゙……)

 プレゼントの箱から楽しみにしていたおもちゃを取り出す子どものような、肉汁の滴る赤身の肉に火が通るのを眼の前で待ちわびるような、娼婦の待つ寝台へと乗り上げるその瞬間のような、打ち負かした相手を踏み躙り唾を吐きかけて辱める暗い高揚のような、先程まで己のものとして感じていたはずの想いが、怪物の内を満たす悍ましい悪意の奔流として、己の中にあるもう一つの人格であるかのように感じられた。

 少しずつ、足の先から人としての触覚が戻って来るのに伴って、怪物との間に生じた境がよりはっきりとしてゆく。

 ぼやけた視界がついに暗闇へと包まれる間際、肉襦袢へと流し込まれたヘドロが波打ち、逞しい筋肉の隆起を刻む人体の模造品へと変じてゆく様が見えた。

(なん、だ……っ!? どうなって、いる……っ!?)

 欲望に蕩け染め上げられていない思考が、頭の奥によぎる。

 どくん、どくんと、胸の奥に久しく感じていなかった力強い鼓動が生じる。

 床を覆う腐肉の生温かさと弾力が、気色悪く不快なものとして、かつて正しく感じていたときと同様に伝わってくる。

「――ごッ、おお、ぉ、ぼ……ッ!?」

 喉の奥から、ドロリとした吐瀉物が溢れ出して、水気を帯びた呻き声とともに吐き出される。

 耳の奥に詰まった泥水が流れ出してゆくぞわりとした感覚の中でそれを聞きながら、やがて紫色の妖しい薄明かりを放つ天井が、ぼんやりと目に映るようになっていた。

「――かっ、はぁ……ッ、あぁ、ぁ……ッ」

 喉に残る残留物に呼吸を遮られる息苦しさに、目尻から生理的な涙が溢れる。

 湿度に満ちた重く生ぬるい空気が喉を抜け、胸が大きく上下に揺れる。

 快楽へと置き換えられ失っていた感覚が、人としての体で味わう五感が、再びレオのものとなっていた。

「はぁ……っ、はぁ……っ」

 荒い呼吸を繰り返すレオを、巨大な一つ目が覗き込みながら、その胸元から触手を抜き放った。

 胸元からぶちゅり、ちゅぷりと水音が響く。肉襦袢を縦に割く胸の大穴がひとりでに閉じ、黒紫色の肉で形作られた胸筋を覆い隠してゆく様が、巨大な瞳に映り込んでいる。

 体中に形作られていた雌穴は跡形もなく消え去り、顎には今しがた生え揃ったばかりの如く白い牙が並び、張り詰めた胸板には薄桃色の乳首が浮かんでいた。

「――ッ!」

 レオがこの肉の牢獄へと足を踏み入れ怪物と対峙したときの、穢れ染め上げられる以前の姿が再現されながら、しかしただその縦に割れた瞳だけが、繕われた表皮の下が何に満たされているかを示すように、黒紫に染まっている。

 何にも支配されぬ、ただ己の心のままの思考を許された頭でそれを理解し、獅子の鼻面に険しいシワを刻み、唸るように叫んだ。

「……なんの、つもりだッ」

 渦巻く激情に呼応して、胸の奥から発せられる偽りの鼓動が高鳴る。性感とは違う、怒りと憤りからの熱が繕われた肌を火照らせ、強く握った拳がわなわなと震えた。

 敗北し、辱められ、穢され、全てを奪われ、悍ましい禁忌の中に組み込まれ己さえも失うまで弄ばれた末に、レオはただ見た目だけを新品のように繕われて放り出されていた。

 理解し難いほどの悪意がその行為の中に滲んでいる。あれほどの所業を経てなお、未だ満足できぬと、まだレオを弄びたいと、怪物がその行いで示している。

 一つの命としての尊厳さえも踏み躙られようとすることへの、存在そのものをかけた怒りがレオを満たしていた。

 ……一つ目の怪物は、その姿をただ見つめる。巨大なまぶたを細め、嘲るようにその目つきで笑み、愉快そうに揺れる。

「……っ」

 快楽と恭順によって覆われ、蕩けた頭で自覚することもできぬときも、この怒りは絶えず胸の奥に封じられていた気さえした。

 その激情が、再び戦うための力を手にしたレオを突き動かす。

 体は活力に満ち、望んだままに動いた。全身の筋肉の隆起が張り詰める。引き絞られた弓がついに放たれるが如き素早さで身を起こし、かつて敗北を喫した怪物を相手に、一糸も纏わぬ徒手のまま臨戦態勢をとる。

 その勇ましい姿を前に、中に浮かぶ球体は無数の触手をしならせて、招くような仕草を見せる。

 その反応をこそを求め期待していたかの如く物言わず嗤いながら、先程までレオの胸元へと差し込まれていた触手で、肉床を撫でた。 

 ……ぼこりと、煮えたぎるように肉床が波打ち、レオの前に隆起が生じる。

 レオはそれをまだ見ぬ攻撃の予兆と受け取り、咄嗟に後方へと跳んで距離を取るが、怪物の目的は他にあった。

「どこまで――っ」

 その光景を目にして、レオは沸き立つ怒りのままに叫ぶ。

「どこまで、我を愚弄するつもりかッッ!」

 盛り上がった肉床の内からせり上がるように、鈍く光る鉄製の柄が姿を表す。肉床の纏う粘液を滴らせて、使い込まれた刀身が露出する。

 それはレオが怪物へと捕らわれる中で取り落とし、肉床の中へと呑み込まれ奪われた剣であった。

 かつて敗北した相手に徒手空拳で挑もうとするレオへと差し出された、餞別に他ならない。

「……」

 レオは黒く穢された獅子の瞳で怪物を睨みつけながら、差し出された剣へと歩み寄り、怒りに震える手を柄へと伸ばす。

 この侮りを隠さぬ申し出を蹴り、徒手空拳のまま挑むことは、単なる蛮勇でしかなかった。

 屈辱を呑み込みながら、喉元にチリチリと焼けるような感覚が広がり、苦く酸っぱい味が舌に滲む。

 それでも、手のひらの内に感じる冷ややかな鉄の感触と慣れ親しんだ剣の重さは、怒りに震えるレオを落ち着かせる。

 ――ひゅん。

 刀身に滴る穢れた粘液を払うように剣を振るうと、心地よい風切り音が響き渡る。

 渦巻く激情が、ただ一つの目的へと向けて収束し、研ぎ澄まされてゆくのを感じる。

 使い込まれた剣が、かつてなく手に馴染む気がした。自らの体の一部とさえ感じられるほどに一体となった剣へと、変わり果てた体の内で今も変わらず奮い猛る意志を込め、その切っ先を怪物へと向ける。

「……我が剣が、必ずや貴様を討ち滅ぼそうッ!」

 迸る怒りをも御して、ただその胸に刻んだ決意を澄んだ声で宣言すると同時に、レオは剣を両手で構え、怪物へと向けて踏み込んだ。

 揺らめく複数の触手が、レオの突進を阻もうと攻撃の予備動作を見せるが、敗北を喫した最初の戦いでその動きは幾度も観察している。

「甘い……っ!」

 突進の勢いを殺さぬ最小限の動きで身をかわし、避けきれぬものは切り払い、レオは怪物の大目玉へと剣を突き立てるべく迫る。

 刺し違えることさえ厭わぬ無謀な攻めであったが、怪物が身を引いてその攻めをいなすことはありえぬと、レオには分かっていた。

 一度はその穢れた肉の内へと取り込まれ、悪意に満ちた思考の一部と呑まれたからこその、確信があった。

 ――ぶしゅう。

 切り払われた触手から、黒紫の粘液が血液のように吹き上がり飛び散る。

 生ぬるく不快な水気を張り詰めた肌で受け止めながら、間髪入れることなく下方から迫りくる次の触手を躱し、跳躍する。

「はあああぁぁッッ!」

 己の存在も、尊厳も、全てをただこの一振りにかける。高く振り上げた剣に、その気迫を込めて巨大な目玉へと向けて振り下ろす。

 たとえ次なる触手の攻撃によって身を刺し貫かれようと、この一閃を鈍らせることはできない。

 ――ざしゅうっ!

 放たれた刃が鋭く肉を裂く幾度となく味わった感触。

「な――ッ!?」

 だが、その一撃が捉えたのは、いやらしく笑む一つ目ではなかった。

 黒紫の影が、獲物へと飛びかかる猛獣の素早さで暗がりから躍り出てレオの前に立ちはだかり、怪物へと届き得たはずの一撃をその身で受ける。

『――ッ、――ッ』

 非生物じみた断末魔が肉に覆われた洞窟の内に響く。黒紫色の肉で出来た屈強な体がレオを捕えるべく密着し、太い腕で抱え込むようにしながら諸共に崩れ落ち、どろりとした粘液を噴き上げて震えながらもレオを拘束し続ける。

「おのれ……ッ」

 それは、繰り返される凌辱のなかで産まされた異形の仔の一匹であった。父たる怪物に命じられるがまま、その身を挺してレオの攻撃を阻む盾となる。

 レオが腕に力を込め、その異形の体へと深く突き立てた剣を動かすたびに、断末魔の嘶きは細く弱々しくなってゆくが、それでも完全に事切れるまでその膂力はレオを捕らえ続け、無様な絡み合いを演じさせる。

 その間にも、ひたひたと肉床を踏みしめる音が暗がりの奥から響き、レオへと迫りつつあった。

『――ッ、――ッ』

 再びの敗北が目前に迫っている。一瞬ごとに強くなる予感に突き動かされながらもがくレオへと、重なり合う無数の足音が迫っていた。

 ぐしゅり、ぐちゃり。黒紫の組織で再現された内臓を剣でかき混ぜるようにしながら、徐々にか細く消え入る断末魔がついに潰えるその瞬間とほとんど同時に、背後から迫る手が、レオのタテガミへと触れた。

「はな、せ――ッ!」

 腕に、脚に、背中に、生ぬるく水ぽい表皮に包まれた手が触れる。地に付した体を強引に引かれ、肉床の上へと仰向けに押さえつけられながら、自身を取り囲み覗き込む無頭の獅子たちの姿にレオは絶句する。

「やめ……っ」

 脳裏に刻みつけられた凌辱の記憶が脳裏によぎる。冷や汗の浮かぶ肌へと、固く熱り立つ肉棒をこすりつけられる。

 子どもの腕ほどもある剛直、その同じに見えて微妙に異なる形を、レオは肌触りだけで感じ分けられるほどに、知っていた。

「あ、あぁ……っ」

 腕から力が抜ける。剣が再び手のひらから滑り落ちる。股を割り開かれ、身動きも取れぬままに両足を抱えられ、熱く硬い雄の杭が内股を撫でるさまに腰が抜ける。

 くちゅ。じゅちゅ。

 濃い先走りを絶えず滴らせる亀頭を、引き締まった尻の割れ目へと擦り付けられて、淫らな水音が聞こえてくる。

 表面上は、雄を知らずただ排泄のための器官としてしか使われていなかった頃と同様の、きゅうと縮み上がった形に繕われた肛門は、しかし脈打つ肉棒の熱と硬さを感じるだけで緩み、尻の奥にじんとした熱が込み上げてくる。

 そして――。

「は……ッ、は……ッ」

 レオは黒く染まった目を見開いて、己の股ぐらを凝視する。

 ……周りを取り囲む異形の獅子たちのものとは比べられずとも、それなりの大きさを持つそれが、奪われ、失われていたはずの自身の一部が、魂にまで刻まれた快楽の記憶に昂って、熱り勃っていた。

「はぁ……ッ、は――ッ!?」

 ――ぬぷり。

 溢れ出す先走りを塗りたくられ潤滑を帯びた肛門が、抵抗の一つすらもせぬままに突きつけられた雄へと屈服し、黒々とした亀頭を招き入れてしまう。

 ただ快楽を得るためだけの生ける雌穴として感じていたものとは比べ物にもならぬ淡い快楽であったが、それでもレオの内に刻まれた雌を引きずり出すには十分に過ぎた。

「あああ……っ」

 何度も、何度も、数え切れぬほどに自身の内側で感じ続けてきた剛直の形が、真新しく繕われたばかりの雄を知らぬ直腸へと刻みつけられてゆく。

 溢れ続ける先走りを腸壁へと塗りたくられ、S字にくねった行き止まりを正すためのピストン運動が、ぐちゅん、ずちゅんと音を立ててレオを射抜いてゆく。

「やめ゙ッ、えっ、ああっ、あ……ッ、ひぎ……っ!」

 嫌だ。せっかく、自分を取り戻したというのに。正しい、本来の姿を。王であり、戦士であり、雄である己を取り戻したというのに。

 また負けてしまう。また折れてしまう。また受け入れてしまう。……また、雌になってしまう。

 ――ごちゅり。

「は、ひいぃ……ッ♡」

 雄の侵入を阻むくねりが正される降伏の音が、腹の奥から全身へと伝う。甘く狂おしい痺れがゾクゾクと背筋を伝い、蕩け艶めいた悲鳴を上げてしまう。

 ぱちゅ、ぬちゅうっ、じゅんっ、ずちゅん。肌と肌をぶつかり合う音が響く。

 脈打つ肉棒に臍の裏を小突き上げられるたびに、肛門がきゅうきゅうと収縮し、火照った腸壁が震え上がる。

 獅子の眉間に深く刻まれていたシワが解きほぐされ、険しく固まっていた表情がだらしなく緩んでいく。

「やっ♡ や、らぁ……っ♡ めす、なりだぐ、にゃい……っ♡♡」

 素早さを増すピストンを受けるたびに、喉の奥から甘い声が溢れ出し、はち切れんばかりに膨れ上がった肉棒がぶるんぶるんと揺れて先走りを散らす。

 深く突き挿れられた肉棒がビクビクと震え、絶頂が目前に迫っていることをレオへと伝える。

 どろりと濃厚な精液の熱に臓腑を温められる充足感への期待が胸の内に込み上げて、気づけばレオは我が子の腰へと脚を絡め、自ら尻を押し付け始めていた。

「はぁ……っ♡ あはぁ……っ♡♡」

 ごりゅうううう。レオの最も深くへと精を吐き出すべく、ひときわ強く腰を打ち付けられる。肌と肌が吸い付きあうように密着し、膨れ上がった剛直がその根本までをレオの内へ収めていた。

 体の最も奥で、雄に抱かれることでしか触れてはもらうことのできぬ丹田の芯で、肉棒の熱と硬さを感じる。

 何よりも強くレオを魅了した力強い雄の猛りが、レオを穿っていた。

 ぴしぴしと、己そのものへと亀裂が入ってゆくような感覚が走る。

 貶められ堕落し果てる以前の姿へとレオを保っていた、型そのものが崩れ去りつつあった。

「~~~ッッ♡♡♡」

 ――ごびゅるうううううううっ!

 最奥へと放たれた、タールのように濃厚な黒紫の精液が、レオの腸内を満たしてゆく。

 精液で満たされ、水風船のごとく膨らんだ腸壁から、その熱がじわりと拡がってゆく。

 喘ぎ声を垂れ流すばかりのだらしなく開いた顎に、無様な笑みが浮かぶ。

 引き締まった腹筋が内側からの圧迫によって歪み、歪な丸みを帯びる。

 その何もかもに、満たされた悦びを感じ恍惚に蕩けるレオを、ついに決定的に打ち砕き快楽に敗北した淫肉へと叩き落とすべく、無頭の獅子がレオの股ぐらへと手を伸ばす。

「――ンンッ、ひぃっ、ん……ッ♡」

 ぐちゅりと、粘液の弾ける音が響く。痛いほどに膨れ上がった肉棒が、ぬめりとした手のひらの内に握り込まれ、奪い去られていたはずの雄としての快感が、背筋を駆け上る。

 くちゅ、にちゅ、じゅちゅう。両生類の表皮にも似た、粘液を帯びる滑らかな手のひらで肉棒を扱き上げあれながら、レオはその快楽に全身を痙攣させ、言葉も忘れて悶え狂いながら尻の穴を収縮させ、深く突き挿れられた剛直を締め上げる。

 我を忘れるほどの快楽の坩堝の中ですら与えてもらうことの出来なかった、肉棒で味わう雄の快感。

 それが狂おしくレオを責め立てて、求め続けた絶頂へと、抗うすべもなくレオを導いてゆく。

「お゙ッ♡ おひっ♡♡ ひんぽ、イく……っ♡♡ イくイくイくイグゥ……ッ♡♡♡」

 くちゅくちゅくちゅくちゅくちゅ。

 手の動きが激しさを増す。我が子の手のひらからぬめりと分泌される粘液と、自身の肉棒から溢れる先走りが混ざり合いながら泡立ち、飛び散るほどに激しく扱き上げられる。

 剛直で串刺しにされるように縫い止められた腰を、不格好にカクカクと痙攣させて自ら快楽を貪る痴態を演じながら、その屈辱すら快楽に茹だった頭からは滑り落ちてゆく。

 重たい何かが肉棒の根本に熱く蟠って、閉じた門を抉じ開けようと圧迫しながら煮えたぎっている。

 無数の蟻が体表を這うような痺れが、股ぐらからその周りへ、そして体中へと拡がってゆく。

 いよいよ狂ったように全身を揺さぶりながら、レオはついにその背を大きく反らし、弓のようにしならせながら動きを止め、無様に蕩け果てた表情で中を仰ぎ、白目を剥いた。

「――ッッ♡♡♡」

 ――びゅくうううっ!

 レオの中へと注がれたものと同じ、タールのように黒くドロリとした精液が、弧を描いて飛ぶ。

 自らの緩み蕩けた獅子の顔でそれを受け止め、呆けたような笑みを浮かべたまま、レオは強張った体を少しずつ弛緩させていった。

 正面からレオへと肉棒を挿入し続けている一匹が、その蕩け顔を覗き込むように背を曲げ、頭を欠いた異形の獅子の顔が目前へと迫っている。

 粘液を滴らせる、舌というよりも触手を思わせる形のそれが、半開きのまま火照る吐息を漏らし続けるレオの顎へと滑り込み、口腔の内を舐られながら、腸内を満たす精液を掻き混ぜられるように、ゆるく腰の動きが再開する。

「んっ♡ じゅっ、ふぅ、ん……っ♡♡」

 もはや、抵抗しようなどという思いは欠片も残っていなかった。束の間取り戻した本来の己を、レオは法悦の中で捨て去る。

 ……これでいい。これがいい。これ以上の幸せなどない。レオが恭順を示すのに合わせて拘束を解かれた腕で息子の逞しい体を抱きしめ、さらなる行為をせがむ。

(もっと、もっと、もっと――)




―――――――――――




「――はッ!?」

 まるで先程までの光景が白昼夢であったかの如く、気づけばレオは肉床に突き立てられた剣の前に立ち尽くし、宙に鎮座する一つ目の怪物と対峙していた。

 肉と肉がぶつかり合う音と、己の口から漏れ出る甘く蕩けた嬌声が頭蓋の内に残響するのを感じながら、しかしレオは己の演じた二度目の敗北の記憶を振り払うようにして、眼の前に差し出された剣へと手を伸ばす。

「……っ」

 冷たく重い鉄の感触。使い込み手に馴染んだ柄の形。しかし、それはレオの重ねた鍛錬と戦闘の記憶以上に、あの淫らで屈辱的な白昼夢の始まりを脳裏によぎらせる。

(迷うな……っ)

 レオは、自身へと言い聞かせるように胸の内で叫び、剣を抜き放つ。刀身を滴る粘液を払うための一閃は、拭い去れぬ不吉の予感と迷いによって剣筋を鈍らせているが、それでも立ち向かう他に選択肢などなかった。

 この怪物に打ち勝つとができなければ、あの白昼夢の中で味わった辱めが現実のものとなってしまう。

 レオは暗がりに潜む異形の無頭獅子たちに注意を払いつつ剣を構え、不安を振り切るように駆けた。




「んん……ッ、じゅる……っ、ふ……!」

 足元には、闇に潜んでいた無頭の獅子たちの大部分が、亡骸となって転がっていた。

 致命傷を受けても戦闘を続ける異形の生命力を踏まえ、一撃で命を奪うべく膂力を尽くした大振りによって、その大部分を斃したレオであったが、防御を顧みぬ攻めによって生じた隙が、あと一歩のところでレオの敗北を決定づける。

 残る二体の無頭獅子が、背後からはレオを羽交い締めにしつつ脈打つ雄の竿を尻の割れ目に擦り付け、正面からは淡い色合いの乳首を抓り弄ばれつつ、太い触手のような舌で口腔へと差し込まれ舐られる。

「やめ、んん……ッ、あ、うぅ、ん……ッ」

 体の奥底に抑え込み続けていた熱が、前後からの刺激を糧にして燃え上がってゆく。太ももの間に差し込まれた剛直に玉袋を擦り上げられながら、込み上げる疼きに息が上がり、股ぐらへと血液が流れ込む。

 膨れ上がった肉棒をゴツゴツとした腹筋で扱かれながら、痛みを感じぬ絶妙な力加減で弄ばれる乳首にむず痒く狂おしい火照りが広がる。

 背後からあてがわれた雄竿の、ごつごつとした血管の隆起が肛門の上を通り過ぎるたびに、怯え縮み上がったそこがきゅんと収縮し、足腰から力が抜けていく。

 弾力に満ちた強靭な体に挟まれる胴体をぬめりとした手のひらで撫で下ろされ、脱力した太ももを抱え込むようにして体を持ち上げられる。

 するりと手のひらから滑り落ちた剣が肉床の上に落ち、その内へと沈んでゆく様を目の端に映しながら、前後から突きつけられた剛直が、尻の割れ目と縮み上がった玉袋をそれぞれに亀頭でなぞり、濡れそぼった肛門へとあてがわれるのを感じた。

「む、むり……ッ、むり、だ……っ!」

 力強く成長した我が子に抱えられて、萎縮しきった背中を震わせながら、レオは懇願するように悲鳴を上げる。

 一本ですら子供の腕ほどもある剛直をまとめて受け入れることなど、できるわけがない。

 レオは駄々をこねるように首を振るい、前後からの拘束から逃れようと身を捩る。

「やめ、む――ッ、んんんッ、るぅ……ッ♡♡」

 覇気を失った懇願の言葉を繰り返すばかりの口へと、再び太い舌をねじ込まれて塞がれながら、色づいた吐息が漏れ出てしまう。

 ぐちゅり、ごちゅりと、口腔の内で舌がうねり回りながらレオを責め立て、甘い刺激はぐったりと持ち上げられた体に一層の脱力をもたらした。

「ンンンン゙――ッ♡♡♡」

 雄を知らぬはずの無垢の肛門が、押し合うように重なる二つの亀頭によって痛みもなく拡げられ、シワもなくなるほどに引き伸ばされた肛門の周囲にドーナツ型の肉のたるみを作った。

 濡れそぼった直腸に滴る残留物、白昼夢の中で注がれたタールの如き濃厚な精液が楕円に拡がった肛門の隙間から漏れ出て、二対の剛直を伝う。

「ンン゙ッ♡♡ る、じゅ……ッ♡♡ ――ッ♡♡」

 背後からレオを羽交い締めにする腕の力が緩む。自重によって下降してゆく胴体が、重ね合わされた肉棒により深く抉られてゆく。

 その感覚から逃れるように、レオは眼の前の太く屈強な首へと両腕をまわして、しがみついた。

「はあぁ……ッ♡♡」

 重ね合わされた顎が離れ、うねる舌との間に唾液が糸を引く。

 強く、力の限りに我が子の屈強な体を抱きしめ、しがみつきながら、レオは自然と悍ましい奇形の無頭へと頬を寄せる形となっていた。

 閉じることも忘れた顎から、甘く色づいた吐息が浅く早くこぼれ続ける。蕩けるような熱と圧倒的な存在感が尻の奥を満たし、言葉さえも失ってしまう。

 さながら母へとしがみつく子猿の如き無様な姿は、レオに残された最後の抵抗だった。

 だがそれも、次の敗北を一瞬遅らせたにすぎない。

「オ゙――ッッ♡♡」

 ばちゅん。深く、抉るような突き上げが、二本の肉棒によってぎちぎちと張り詰めた直腸を震わせ、S字のくねりを射抜かれる。

「~~っっ♡♡」

 臓腑を圧迫される感覚によって押し出されるようにして、大きく開いた顎の奥からかすれた吐息が漏れ出た。

 我が子の屈強な首へとしがみついていた腕から力が抜け、前後を黒紫の胴体に挟まれてレオの体がゆるゆると下降してゆく。

 ずぷり、ずず。S字結腸は一撃の突き上げで音を上げ、その抵抗を正されながらせめぎ合う剛直を深くへと招き入れていた。

 拡がりきってだらしのない楕円に変形した肛門が、腸壁から溢れる分泌液をしとしとと剛直に伝わせる。

 脱力した両腕をだらりと垂らし、呆けた顔で天を仰ぐレオを、息子たちの異形の顔が覗き込むように見下ろし、舌先から滴るどろりとした唾液で蕩け果てた獅子の顔を濡らしていた。

 そして、脈打つ雄竿を擦り合わせながら突き上げる次のピストンが、抵抗を失い投げ出されたレオの体へと叩きつけられる。

「お゙ッ♡ ごぉお゙ッ♡♡ ――ッ♡ ッッッ♡♡♡」

 二本の剛直が互い違いにレオを突き上げては引いてゆく。

 ばちゅん、ごちゅんと、前後から別々の角度で腹の奥を繰り返し掻き混ぜられ、脱力した体は叩きつけるような衝撃に翻弄されて揺れるばかりだった。

 言葉を紡ぐ余裕すらもなく、開いたままの顎から壊れたように間の抜けた喘ぎ声を漏らしながら、ピストンの一つ一つに己を打ち砕き、壊されてゆく。

(ごわ、れ……ッ♡♡)

 激しさを増すピストンに晒され、腹筋の間に挟まれた自身の雄からぴゅるぴゅると潮を吹きながら、薄れゆく意識の中でレオは悲鳴を上げる。

(また、めすに――ッ♡♡♡)

 ――ごぽおおおおおおおおおおおおっ!

 蕩け果てた頭をよぎる屈服の言葉すらもが、腹の奥へと放たれた精液の狂おしいほどの勢いに掻き消され、霧散してゆく。

(あ、あ、あ……♡)





―――――――――――




「――っ」

 レオは再び、そこにいた。繰り返す敗北と辱めが全て夢であったかのように、肉床に突き立てられた剣の前に。

「……」

 押し黙り、呆けたかの如く立ち尽くすレオを、怪物がただ愉快げに見つめ続ける。

 暗がりの奥に潜む異形の無頭獅子たちの気配は一層に強く、ふてぶてしいまでにはっきりと感じられ、その欲望に満ちた息遣いさえも聞こえてくるような気がした。

「は……っ、は……っ」

 この行為に意味があるのか。それさえも疑問に感じながら眼の前の剣へと伸ばす手は不安に震え、肉床から剣を引き抜く動作すら、ぎこちなく鈍っていた。

 刃にへばりつく粘液を滴らせるままにしながら、冷ややかな鉄の感触を唯一の拠り所とするかの如く強くその柄を握りしめ、迷いと不安に足を引かれながら、精細を欠いた動きで怪物へと向かう。

(まだ、だ……っ)

 どうすれば良いか、分からなかった。最初から、勝ち目すらなかったのかもしれない。

(まだ、負けていない……!)

 それでも、抗わねばならない。その意志が潰えぬ限り、本当の敗北ではない。



「~~っっっ♡♡」

 声にもならぬ悲鳴が、肉に包まれた洞窟のうちに響き渡る。拭い去れぬ不安に毒され、冷静さを失ったまま戦いへ望んだレオに勝ち目はなく、一匹を仕留めることすらもないままに組み伏せられ、休む間もなく凌辱の限りを尽くされる結果が待ち受けていた。

 両手のうちには常に肉棒を握らされ、体位を変えながら輪姦され続けた肛門は緩みきって、ピストンを受けるたびにぶぴゅりと精液を垂れ流す。

 かつてレオの体中に創り上げられた雌穴を同時に犯していた異形たちは、口と肛門の二つだけとなった穴を取り合うように、以前にも増して荒々しく腰を振るい、レオを責め立てる。

「ごっ、え゙ぇ、げぇ……っ♡♡」

 胃も、腸も、体の内のあらゆる隙間が精液に満たされていた。喉に肉棒の形を浮かび上がるほどに深く、暴力的なイラマチオに晒されながら、肉棒を引き抜かれるたびに精液を吐きこぼす。

 快楽とも苦痛とも分からない、どちらもが混ざり合う坩堝の中で、自分自身までもが溶けてゆく。

 だがそれでも、不安と恐れを呑み込んで、すがりつくように剣を握りしめ、半ば諦めながら無為な抗いを続けるその瞬間よりは、ずっと心地よかった。




―――――――――――




 これが、何度目だろうか。何度敗北を重ねたか、何度屈服し、何度絶頂し、何度快楽を受け入れて雌へと堕ちたか、数える気にもならなかった。

 積み重なった迷いと諦めが、剣へと伸ばす手を押し留めるほどに重くのしかかっている。

「……っ」

 両の足が、前に進むことを拒んでいる。敗れ、辱めるために抗い続けることに疲れ、怯え、動かない。

 レオは金縛りにでもあったかのように体を強張らせ、乱暴に掴み上げられた手形や繰り返し腰を打ち付けられた赤みが残る肌に冷や汗を浮かべる。

 抗い続ける理由ではなく、怯え竦んだ足を後退させる理由を、形だけはかつてと同じに整えられた脳髄に思い浮かべる。

「……」

 怪物が、レオの決断を待ち続けていた。まだ見ぬ形の敗北と崩壊の瞬間を求めて、巨大な一つ目をレオへと向けていた。

 その悍ましい愉悦から逃げるように、レオは後退りする。

「あぁ……っ」

 踏み出すのに比べて、あまりにも軽い一歩。そして、引き返すことの出来ぬ一歩だった。

「……!」

 レオは踵を返し、怪物に、そして自らの拠り所である剣へと背を向けて、走り出す。

 暗闇に潜む異形たちが、その瞬間を待っていたかのようにレオを追い、ひたひたという足跡が幾重にも重なってレオへと迫っていた。

 そして、波打つように震える肉床に足を取られながらの逃走は、長引くこともなく幕を引く。

「はぁ……っ、あ……っ」

 ぬめりとした手のひらから触れる体温を感じるだけで、体に熱が込み上げた。

 あれほど丹念に繕われながらも、すでにだらしなく縦に割れるまで使い込まれてしまった尻の穴が、ヒクヒクと震える。

 肉床に伏して、繰り返された敗北の数を物語る雌穴を晒しながら、魂に焼き付いた期待と高揚が甘く全身を染め上げてゆく。

「あ……っ♡」

 熱く震える剛直が、緩みきった菊紋を割り開こうと押し当てられる。

 それだけで、レオは己であることを手放し雌へと堕ちていた。



―――――――――――



 逃げる意味は、なかった。気づけばまた同じ場所に引き戻され、変わらず眼の前に突き立てられた剣を見つめながら立ち尽くしている。

 進むことも戻ることも諦め、呆然とう呆け面を浮かべ続けた末に、レオはやがて震える手を再び剣へと伸ばした。

 手のひらに感じる鉄の感触には、もはや微塵の頼もしさも感じることができなかった。

 ただこの淫獄から開放してくれることを願いながら、その切っ先を待ち受ける敵にではなく、己へと向けることを選ぶ。

 鋭く冷たい剣先が肌へと触れる感触は、間違いなくレオに死を予感させた。その通りのことが起こってくれるならば、それこそが救いだった。

「……っ」

 躊躇うこともなく、ただ解放だけを求めて、自らの胸を刺し貫く。汗の滲む肌を裂く淡い痛みが最初に走り、その先に期待したものは、訪れない。

「ああ、ぁ……っ?」

 胸に空いた穴を中心にして、膨れ上がった革袋が弾ける瞬間のように、レオの肌に裂け目が走る。

 怪物や異形の我が子たちと同じ、ぬめり濡れた黒紫の中身が露となる。

 胸を貫く剣を捻り、傷を広げようと力を加えたところで、黒紫の泥のようなものが溢れ、刃を伝い滴るばかりで、諦めの末に願った開放がもたらされることはなかった。

「なん、で……」

 瑞々しい生きた肌そのものの見た目を維持しながら、作り物のように破れ裂けた皮が、レオの体から剥がれ、めくれ上がってゆく。

 暗がりから響く足音が、呆然とうずくまるレオへと迫り、擦り切れた古着のような有り様の肌へと黒紫の手が伸ばされた。

 衣服を引き剥がしてゆくかのように、果実が皮を剥かれてゆくように、ずるりと、自らの成り果てた本当の姿を晒されてゆく。

「――っ、ぐ……!」

 タテガミを鷲掴みにされて強く引かれながら、顔の奥からみちみちと肉の裂けるような音が痛みもなく生じる。

 獅子の頭骨の形を維持したまま、それを覆う毛皮だけが不格好に引き伸ばされて歪にズレてゆく。

 その末に、ずりゅんと、熟れた葡萄が皮から剥がれこぼれ落ちるようにして、粘液を糸引かせる無毛の獅子の顔がまろび出る。

 胸を刺し貫く剣が、痛みもなくずずずと滑るように抜け落ちて、肉床へと沈む。

 引き剥がされた肌皮を弄ぶ異形たちと同然の、変わり果てた姿を晒しながら、レオは灰色に濁る涙を流して、天を仰いだ。




―――――――――――

 


「……我が剣が、必ずや貴様を討ち滅ぼそうッ!」

 いつか己が高らかに口にした宣言を、レオは暗がりに潜み、機を伺いながら聞いていた。

 凛々しく、気高く、疑念と諦めに毒される前の力強い声が、洞窟の中に響いている。

 己がただ定められた台本通りの人形遊びを演じるだけの玩具であることすら知らぬ、愚かしい無垢さに吐き気を覚えるほどの憤りを感じるとともに、その無垢を己の剛直で穢したいという抗えないほどの衝動があった。

 己の身も顧みず、剣を携えて仇敵へと突進するその姿を追って、レオは暗がりから、その黒紫の異形の姿を晒し、駆け出した。



「あ゙っ♡ もっと、もっど、ひんぽぉ……っ♡♡」

 黒く濁る精液に全身を彩られた己が、わざとらしいほどに甘い猫撫で声で媚びながら、レオのちんぽを求めて腰を振っていた。

 柔らかく、熱く、弾力に溢れ、それでいてきゅうきゅうときつく締め上げる肉襞の手応えに、腰の動きが止まらない。

「んおぉおおお゙っっ♡♡♡」

 激しい突き上げに眼の前の己の体が大きく反って胸を突き出すと、薄く張り詰めた素肌に残る無数の古傷とそれを繕った跡と、その下の黒紫の肉が透けて見える。

(次は、また……っ)

 恨めしくそれを見ながら、レオはいよいよ腰の動きを早め、嬌声を上げ続ける己を壊そうとするかのように責め立てながら、その胸元へと爪を立てる。

 幾度も引き剥がされ、酷使され、繕い直されてきた薄皮が弾けるように裂けて、内に潜みレオを演じていた異形の姿を晒していた。

(おれ、が……っ、オレ、ヲ……!)

 欲望と怒りと嫉妬と、わけの分からぬ感情と衝動の奔流に、支離滅裂な言葉の羅列を繰り返しながら、レオはタールのように濁る精液を、己の中へと吐き出した。




―――――――――――


「……我が剣が、必ずや貴様を討ち滅ぼそう……っ♡♡」

 己の姿を取り戻した達成感に胸を躍らせながら、レオは肉床に突き立てられた剣ではなく、股ぐらからそそり勃つ肉棒こそを誇るように腰を突き出して宣言する。

 暗がりの奥から浴びせられる、突き刺すような熱い視線に体が火照っていた。

 その、レオが『己』であるときにしか感じることの出来ぬ、性の饗宴の主役たる悦び。いくらか擦り切れ、薄くもろくなった皮の下で、変わり果てた体がその悦びに震えている。

 ただ敗北し、組み伏せられるために、我が子達の欲望を一身に受け止めて快楽の中へ蕩けるために、レオは突き立てられた剣に一瞥することもなく、無手のまま足を踏み出した。



―――――――――――



「あ、あぁ、ふぅ……っ♡」

 意識の断絶を経て打ち捨てられた剣の前に立ち戻ってもなお、体の火照りは冷めやらなかった。

 大股を開き、ぱっくりと立てに割れたケツまんこへと指を突き入れて夢中で掻き回しながら、もう一方の手でちんぽを扱く。

 ああだが、これだけでは足りない。前のように、全身で欲望を受け止めたい。

 そう願いながら玉袋の裏を人差し指でなぞると、蟻の戸渡りに一筋の割れ目が浮かび上がってゆくのを感じた。

 肉の蕩けてゆく狂おしい熱が、体の奥へと向かって上がってくる。

 ……そうだ、もっと。体中で。穴という穴で、ちんぽを貪らなくては。

 そのために、ここにいる。『レオ』とは、そのための玩具なのだから。



―――――――――――



「――ッ♡ ――ッ♡♡」

 耳の穴も、臍も、ちんぽへと奉仕するための雌穴へと再び作り替えられていた。

 かつてと同じ姿に繕われていたはずのレオは、今や人型の雌穴として扱われていたときと同然の姿へ逆行しつつある。

 ……それ以下にすら、成り果てようとしていた。



―――――――――――


 肉床に突き立てられたままの剣は、今や刃こぼれし錆びを浮かせて放置されている。

「んッ♡ じゅっ♡♡ じゅぶるッ♡」

 その褪せた刃を背に、レオは剛直へと跨って腰を振りながら、眼の前に突きつけられた肉棒へと夢中でしゃぶりついていた。

 ……足りない。足りない。

 脆く引き伸ばされた肌に亀裂が入り、黒紫の肉が露出していることも気にせぬまま、貪り続ける。

 目を覚ますたびに、人としての、『レオ』としての姿を保つことへの未練が薄れてゆく。

 この肉襦袢を、ただ我が子たちの欲望を集めるための目印としか認識できなくなってゆく。

 差し出された魔羅を扱き上げ奉仕する手の甲を一瞥すれば、 薄く引き伸ばされ張り詰めた肌の下に、一皮剥くまでもなく黒紫の肉が透けている。

 怪物によって孕まされ産み落とした我が子達と同じ、異形の生物と成り果てた自分の姿が。

「あ゙ッ♡ いぐッ♡♡ まだイぐうぅぅッ♡♡♡」

 いつからか、頭の中に絶えず声が聞こえるようになっていた。

 ……足りない。もっと。

 食べることも、眠ることも必要のなくなった体に唯一残る、尽きることのない肉欲への渇望が、聞こえてくる。

(もっと、もっと……っ)

 レオは頭の中で響き続ける合唱へと加わるように、同じ言葉を胸の内で繰り返す。

 そうすると、絡み合う体とともに心までもが蕩けてゆくような気がして、たまらなく心地よかった。



―――――――――――



 気持ちいい。気持ちいい。突き入れたちんぽをきゅうきゅうと締め上げられる快感も、熱く火照って疼き続ける尻の穴を突き上げられる悦びも、同時に感じる。

 力強い腕に組み伏せられ支配される隷属の悦びも、震える体を組み伏せ腰を打ち付ける高揚も、どちらもが同時に湧き上がる。

 隔てるものは、もうなにもない。もっと、もっとと、さらなる快楽を求める声だけが、従うべき唯一のものだった。

 くたびれ色褪せた獅子頭の下で、黒く染まった瞳が天を仰ぎ、揺れていた。



―――――――――――




 ……剣に手を伸ばすべきなのかもしれない。それが『レオ』のやるべきことだと、そんな意識があった。

 そうする理由も、そうする意味もわからないまま、取り戻した意識の中に書き加えられた義務を惰性のままに実行しようとするが、それもすぐに諦めざるえなくなる。

 眼の前に突き立てられているのは、剣の形をしているだけの赤茶色い錆の塊のみだった。

 その光景になにか、一抹の寂しさのようなものを感じなくもなかったが、すでに意識は外を向いている。

 ……ぎちぎちと己を締め上げ、決められた形へと無理矢理に押し留められているかのような、窮屈さに。

 少し動くだけでも張り裂けそうなほどに劣化し、薄く脆くなってしまった肌の上を、黒紫の組織が網目のように締め上げて、補強していた。

 太ももの筋肉の隆起はぎちぎちと網目に締め付けられて、艶めかしく震えている。

 肩から両腕にかけては、わざとらしいまでの光沢を放つ黒紫の膜で覆われ、体を締め上げる網目と合わせて、卑猥なコスチュームを形作っていた。

「……っ♡」

 まるで、雄の欲望を惹き付けるための格好だった。それを思うだけで期待に熱が込み上げる。

 体は自然と、『レオ』の果たすべきふたつ目の役目を受け入れ、自らそれを求めて動いた。

 ヒクヒクと震える尻の穴へと、つぷりと指先を差し込み音を立てて掻き回しながら、膨れ上がった肉棒を扱き上げる。

 粘液が糸を引き弾けるような卑猥な音は、まるで呼びかけのように暗がりへと響いていた。



―――――――――――



「――っ、――っ」

 思うように言葉が出ない。自分が何者で、何を目的にして、なにをしようとしているのか、意識が途切れるたびにそれが入れ替わり、己とその他を隔てる境が曖昧になってゆく。

 曖昧になった自分の一部が、大きななにかの中へと溶けていって、二度と取り戻せなくなってゆく。

 失ったものの代わりに流れ込んだ、誰かの、なにかが、自分の一部になってゆく。

 ……思い出せ。思い出せ。なんのために、己を取り戻した。なんのために、ここに立っている。

「わ、我が、我が……?」

 薄く脆く劣化しはじめた肌の上を網目のごとく黒紫の丈夫な組織が張り巡らされて、今となっては容易く破れてしまうレオの姿を、淫らに彩りながら補強していた。

 抜け落ちたものを探すように言葉をつまらせながら、レオは周囲へと視線を向ける。

 肉床の上に打ち捨てられている、朽ち、折れた、錆の塊。

 もはやこちらに対して興味を抱いている様子もなく、意識さえも向けぬままよそ見をしている、巨大な一つ目。

 ……暗がりに身を隠すことすらせず、先走りを垂らす剛直を震わせながら、号令を待つ無頭の獅子たち。

「……わ、わが、ざこまんこを……っ♡♡ はやく、ちんぽ、はやぐ……っ♡♡♡」

 脈打つ肉棒を視界に入れた瞬間、レオは己の願望を思い出す。

 たどたどしくそれを言語化しながら、網目の食い込む太ももを抱えて、大きく股を開いた。

 押し固め、締付け、崩れぬように支えられながら、なんとか形を整えられていただけの己が、容易く崩れ去ってゆく。

「あ、あぁ……っ♡♡」

 両の耳の穴から頭の奥までを、触れられたわけでもないのに奇妙な熱が貫いている。

 丸みを帯びた獅子の耳が震え、粘膜のように汁気を帯びた内耳がヒクヒクと収縮して、愛液を分泌する。

 人の体の作りを真似ただけの、意味も必要もない再現が形を失い、体の中で溶けてゆくのを感じる。

『――ッ、――ッ』

 無頭の獅子たちが、剛直を揺らしながら近づくほどに、レオは本当の自分を取り戻してゆくようだった。

 淫らな知識以外の全てを忘れた脳みそが、蕩けて形を失い、もっと必要なものへと、耳の穴から突き入れてもらった肉棒を締め上げるための淫ら肉へと戻ってゆく。

 臍の奥に熱が込み上げて、固く割れた腹筋が太竿を締め上げるための形へと歪んでゆく。

「はあぁ……っ♡♡」

 鼻先に突きつけられた肉棒から発せられる、香しい雄の芳香に鼻をヒクヒクと震わせて呆けづらを浮かべながら、レオは平たい舌を伸ばして、亀頭から滴る先走りを受け止める。

 ぴちゃ、ぴちゃ。その塩辛い味わいを、丹念に舌の上で転がしながら、何よりも愛しい肉棒へと頬ずりをした。

 この肉棒の主が何をしてほしいか、自分に何を望んでいるのか、それが手に取るように伝わってくる。

「ん、はあぁ、むぅ……っ♡♡」

 獅子の顎を大きく開いて肉棒へとしゃぶりつきながら、太竿に浮かび上がる血管を舌でなぞってゆく。

 顎に並ぶ牙は剛直の圧迫ですら歪み潰れる、柔らかな飾りと化し、奉仕の刺激を増すため以外の役割を失っていた。

 その柔らかな突起で肉棒をかき回すように擦ってやると、興奮に満ちた熱い震えが顎の内に生じて、溢れて止まらなぬほどの先走りが喉へと流れ込んでくる。

 レオは必死でそれを嚥下しながら、自身の肉棒から滴る先走りで濡れ快感に縮こまる玉袋の下を指先で撫でる。

 そこにも、肉棒を受け入れるための雌孔が形を取り戻しつつあるのが感じ取れた。

 早くそこで雄を受け止めたい。その思いに表情を歪め悦に浸るレオの意識を、無体な妄想から眼の前の奉仕へ引き戻そうとするかのように、喉奥を衝撃に貫かれる。

「お゙ォ、ごォ……ッ♡♡」

 喉奥から突き上げられた肉棒が、頭蓋の内側へと達して、淫肉を掻き混ぜられていた。脳髄を直接犯される感覚に悶えながら、その快感にいっそうに昂ってゆく。

 強く押し付けられた股ぐらによって鼻面が豚のように平たく潰れ、激しい突き上げに頭蓋が歪んで、タテガミに包まれた頭頂部に隆起が浮かぶ。

 骨格の制約を受けることすらもなく、レオの体は柔軟に変形して肉棒へと奉仕するようになっていた。

 ピストンを受けるたびに、かろうじて保たれていた己が崩れていく。

 ――ごぽおおおおっ。

「~~~~っっ♡♡」

 頭の中に精液が流れ込む。潰れた鼻面からどろりとしたそれが溢れ出して、顎を伝う。

 レオの獅子頭はどれほどに荒々しく激しい腰使いも快楽として受け止め、潰れては元の形へと戻ってを繰り返すが、かつてよりもいくらか褪せた毛皮に、小さく裂け目が浮かびつつあった。

「は、んあ……っ♡ ちんぽぉ、もっと……っ♡♡」

 だが、もはやそんなことはどうでもいい。レオが小さく腰を浮かせると、示し合わせたように黒紫の体がその下へと滑り込み、脈打つ肉棒が天を指す。

 ゆっくりと腰を落とし、愛液の滴る肛門でその魔羅を呑み込んでいきながら、レオはまるで鳴き声のようにその言葉を繰り返した。

 意識が途切れ、意味もない繰り返しを重ねるたびに、どうでもいいものから順に忘れていった。今口にしている言葉は、レオの最も中心に残り続けるものにほかならない。

「おぉ、ひぃ……っ♡ けつ……っ♡ けつまんこ……っ♡♡ こわれりゅ……っ♡♡♡」

 ばちゅん、ばちゅん。濡れた肌がぶつかり合う音を響かせながら、剛直がその根本までを一気にレオの内へと突き入れ、蕩けた肉を割り開きながら奥を穿つ。

 己の姿すら曖昧になりつつある今も、尻の奥で感じる肉棒の硬さを忘れたことはなかった。

「いいィっ♡♡ すご、締ま、るぅ……っ♡♡」

 それに加えて、肉棒を締め上げる肛門と、その奥に形成された雄膣の感触を、レオは自身で味わっているかのように感じられた。

 溢れ続ける欲望、擦れ合う肌、弾力ある肉の手応え、全てが同時にある。

 幾度となく繰り返し、蕩け合う内に、レオの持っていたものの多くが、自らの産み落とした異形たちの中にも溶け込んでいた。

 もはや自他の境目もなく、同じ狂奔の中で快楽を求め続ける一つの生き物のように、レオは我が子たちとともに淫れてゆく。

「オ゙オ゙ォォッ♡♡ おひッ♡♡ いっ、ぎぃいいんッ♡♡」

 ごぽりごぽりと、尻の奥へと流れ込んでくる精液が自分自身の一部となってゆく。

 我が子達に比べれば小ぶりな肉棒から、黒紫の精液が溢れ止まらない。

「おぎぃいっ♡♡」

 レオは絶頂の感覚に体を強張らせ、胸を突き出すようにして背を反らした。

 胸板は小刻みに震え、張り詰めた肌が悲鳴を上げるようにぶちぶちと音を立てながら開いてしまう。

 我が子達と同じ黒紫の肉体を露出させながら、レオは引きつるような笑みを浮かべ、脱力のままに体を伏す。

「ひ……っ♡ いぃ……っ♡♡」

 尻の穴からぬぽんと音を立てて肉棒が抜け、肉棒へと奉仕するために分厚く膨れる形へ変じた肛門から、とろとろと精がしたたる。

 ……とろけた自分が、一緒に流れ出ていくかのようだった。

 溶けて、混ざって、形を失って、震え上がり蠢く尻の孔から、ぶちゅる、ぶちゃあと気泡の弾ける音を伴って、もはや必要もなくなった自分の一部がまた一つ。

「おおっ、ん……っ♡♡」

 伏した顔に、肉棒を突きつけられる。二本の肉棒で顎を捏ね回されながら、両の耳にも突き挿れられて。

 休む暇はなく、休みたいとも思わなかった。黒く染まった瞳を上に向け、半ばを上まぶたの上に隠しながら、レオは至福の笑みを浮かべる。

 他に必要なものはなにもなかった。




―――――――――――




 肉床が波打つ。巨大な隆起が形成されて、球体を形成しながら浮き上がり、やがて滑らかな黒紫の玉となり、真横に走る裂け目が開いて巨大な一つ目となる。

 その怪物は冷ややかに、もはやなんの表情もなく、眼の前の光景を瞳に映す。

「――っ♡♡ ――ッ♡」

 色褪せ、破れ、穴の空いた獅子頭の被り物は、粘液に滑る無毛の獅子の顔からずり落ちそうになっていた。

 もはや繕う余地もなく残ったそれを身に着けて、レオは言葉も忘れながら、それでも快楽を求めて腰を振っている。

 一つ目の怪物が姿を消している間も、誰に見られることもないままに、レオは我が子達とまぐわいつづけていた。

 もはや、それ以外の全てを忘れてしまっただろう姿に、これ以上の余興を演じられる余地は残されていない。

 怪物は、まぐわい絡み合う獣たちへと、その触手をするすると伸ばし、それらを回収することにした。

「――っ」

 ぱちゅん、と打ち付けた腰が、触れ合った肌が、境目を失って混ざり合う。

 形を失い、黒紫の泥のように蕩け混ざり合ってゆきながら、差し伸べられた触手の先へと引き寄せられるように流れ、吸い上げられてゆく。

 やがてその怪物さえも、肉床の中へと沈むように消えてゆき、色褪せ腐ちかけた獅子頭の被り物だけが、そこに残されていた。









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POSTEDNov 22, 2024
ARCHIVEDJun 10, 2026