ケースの中には、土も木切れも入っていない。代わりにそこにいたのは、5ミリメートルほどにまで縮小してしまった、数人の男性たちだった。
彼らは縮小病に罹患し、トレセン学園の敷地内を彷徨っていたところを、カレンチャンに見つかり保護という名目で捕獲された哀れな小人たちである。
部屋の扉が開き、この部屋の主であるカレンチャンが帰ってきた。
「ふぅーっ、今日のトレーニングもいっぱいいっぱい走っちゃったっ! カレン、汗だくだぁ……」
彼女はパタパタと手で顔を扇ぎながら、部屋の中央に立つ。その美しい銀色の髪は汗で首筋に張り付き、トレセン学園の指定ジャージは内側から滲み出る熱気でしっとりと湿っていた。
ウマ娘の運動量は人間の比ではない。
当然、それに伴う発汗量や代謝も桁違いであり、今の彼女の身体からは、香水の甘い匂いの中に、野生の獣を思わせる強烈なメスの匂いが立ち昇っていた。
カレンチャンはそのまま真っ直ぐに、小人たちの入ったケースへと近づいた。
「ただいま、小人さんたち。お留守番、ちゃんとできてたかな?」
巨大な顔がケースの外から覗き込む。彼女にとっては何気ない笑顔でも、ケースの中の小人たちにとっては、空を覆う巨大な悪魔の微笑みに他ならなかった。彼らは恐怖に顔を引きつらせ、ケースの隅へと後ずさる。
「あーあ、逃げなくてもいいのに。カレン、今日はすっごく疲れたから、キミたちに癒やしてもらおうと思ってたのにな」
彼女はケースの蓋を開けると、怯えて固まる小人の中から、適当に一人を親指と人差し指で摘み上げた。
「ひぃっ!や、やめてくれ!離してっ!」
「ふふっ、元気いっぱいでカワイイねっ。じゃあ、まずはキミからカレンのこと、もーっと深く知ってもらおーっと!」
カレンチャンは小人を摘んだまま、自身が履いていたランニングシューズの片方を脱いだ。
その瞬間、部屋の甘い香りを切り裂くように、むわっとした強烈な湿気と匂いが漂った。何十キロという距離を猛スピードで駆け抜けたウマ娘の足元。それは熱気と汗によって極限まで蒸れ上がり、一種の発酵臭すら帯びた強烈な空間と化していた。
「じゃあ、カレンの靴の中をお掃除してねっ♡いってらっしゃーい!」
「えっ?あ、うわぁぁぁぁっ!!」
抵抗する間もなく、小人は脱ぎたての靴の奥深く、つま先の暗闇へと放り込まれた。
ポスッ、という鈍い音と共に、小人は汗をたっぷりと吸い込んだ中敷きの上に落下した。
そこは、彼にとって完全なる地獄だった。
「げっ、ぐぅっ……!な、なんだこの匂い……!!」
周囲の壁からは、まだ生暖かい熱気が放射されている。
そして何より、空気が重い。人間サイズの靴の中という空間は、5ミリの彼にとっては巨大なドーム球場のようなものだが、そこは高濃度のウマ娘の足の匂いで満たされていた。
酸っぱく、そしてツンと鼻を突く強烈な刺激臭。汗と皮脂が混ざり合い、密閉空間で熟成されたその匂いは、もはや「悪臭」という言葉では生ぬるい、物理的な暴力、あるいは致死性の毒ガスに等しかった。
「おぇっ……!げほっ、ごほっ……!!」
息をするたびに、粘り気のある悪臭が肺の奥深くまで侵入してくる。酸素が足りない。匂いの濃度が濃すぎて、呼吸器系が悲鳴を上げているのだ。
さらに、上空から巨大な影が降り注ぐ。
カレンチャンが、丸めた靴下を靴の入り口にねじ込み、完全に蓋をしたのだ。
「カレンの匂い、逃さないようにしっかり蓋しちゃおっと。ぜーんぶ吸い込んでねっ♡」
外からの明るく可愛い声が、靴を震わせて響く。
靴の中は完全な暗闇となり、換気は一切遮断された。温度と湿度が急激に上昇していく。
「たす、けて……出、だしてくれ……っ!!」
小人は発狂したように靴の内側の壁を叩くが、分厚い生地はビクともしない。強烈な匂いに脳が麻痺し、視界がチカチカと明滅し始める。
「あ……あぁ……っ、息が……」
数分も経たないうちに、小人の抵抗は止んだ。高濃度の悪臭と酸欠によって神経を破壊され、彼は泡を吹いて完全に絶命したのだ。
靴の中から一切の動きの気配が消えたことを確認すると、カレンチャンは蓋にしていた靴下を引き抜き、靴を逆さにして中身を手のひらの上に転がした。
「あーあ、もう動かなくなっちゃった。カレンの匂い、そんなにキツかったかなぁ?」
彼女は、ピクリとも動かなくなった小人の死骸をゴミ箱へと無造作に弾き捨てた。そこに罪悪感など微塵もない。壊れたおもちゃを捨てるのと何ら変わらない動作だった。
「さて、次は誰にしようかな〜」
再びケースの中を覗き込む。残った小人たちは、先ほどの仲間の末路を知る由もなかったが、本能的な恐怖で泣き叫んでいた。
カレンチャンは今度は、二人の小人を同時に摘み上げた。
「キミたちは、もっとカレンの近くに連れてってあげるねっ!」
彼女はジャージのジッパーを下ろし、汗ばんだ自身の身体を露出させた。激しい運動の直後であり、彼女の白く滑らかな肌には、玉の汗がびっしりと浮かんでいる。
「ほーら、カレンの特等席だよっ♡」
彼女は一人の小人を、右の脇の下の窪みへと押し込んだ。
「うわっ!?ぐぇっ!」
「そして、もう一人は……ここっ♡」
もう一人は、豊満な胸の谷間、その最も深く汗が溜まっている部分へとねじ込まれた。
「んーっ、ぎゅーっ!!」
カレンチャンが腕を閉じ、胸を寄せる。
脇の下と胸の谷間。どちらも、極小の人間にとっては逃げ場の無い完全な密閉空間となった。
「がっ……!い、息……!」
脇の下に挟まれた小人を襲ったのは、むせ返るような強烈なフェロモンと汗の匂いだった。カレンチャンが普段使っている高級な香水の甘い香りと、ウマ娘特有の濃密な体臭が混ざり合い、化学変化を起こしたような強烈な芳香。それは人間にとっては刺激が強すぎる「猛毒の媚薬」のようだった。
壁のように迫る巨大な肌は熱く燃えるようで、小人の全身を汗の海に沈めていく。毛穴から発せられる熱気と匂いが、直接脳を揺さぶる。
「あははっ、くすぐったーい♡もっとカレンの汗、舐めてもいいんだよ?」
カレンチャンがわざと腕を擦り合わせるように動かす。その摩擦だけで小人の骨は軋み、同時にさらに濃厚な匂いが絞り出される。
「ひぎぃっ……!……匂いが、濃すぎ、る……っ」
甘すぎる匂いは、やがて強烈な吐き気へと変わる。鼻の粘膜が焼け焦げるような感覚。彼はその致死量のフェロモンに脳の処理が追いつかず、白目を剥いて痙攣を始め、やがて完全に動かなくなった。
一方、胸の谷間に挟まれた小人もまた、同様の地獄を味わっていた。
巨大な二つの肉球に左右から完全にプレスされ、肺が押し潰されて呼吸すらままならない。そこに、谷間に溜まっていた熱い汗が滝のように流れ込んでくる。
汗の海で溺れかけながら、彼はカレンチャンの体臭の直撃を受けていた。心臓の鼓動が巨大な重低音として響き渡り、彼女の体温と匂いが逃げ場のない空間で飽和していく。
「カレンの胸の中、あったかくて幸せでしょ?ずっとそこで、カレンの一部になっちゃえ♡」
無慈悲な圧迫と、限界を超えた匂いの濃度。小人が苦悶の声を上げてもがく中、カレンチャンは自身の発した言葉と、谷間の中で必死に蠢く微小な命の感触に、ゾクゾクとするような加虐的な興奮を覚えていた。
(……このまま、もっとギューッてしたら、どうなっちゃうのかな?)
甘く狂気じみた好奇心が、彼女の脳を支配する。彼女は小人の悲鳴を聞き流しながら、意図的に、ゆっくりと、そして確実に、両腕にウマ娘の規格外の筋力を込めていった。
「もっと、もーっとカレンのこと感じてねっ……ギューーーッ♡」
極上の愛情表現を装った、完全なる殺意。極小の人間が耐えられるはずのない、万力のような圧力が両側から迫る。
「あ……あぎゃぁぁぁっ……!!」
小人の全身の骨がメキメキと砕ける微かな振動が、胸の柔らかな肉を通してカレンチャンに伝わる。彼女はその命がすり潰される感触をたっぷりと味わうように、さらに意地悪く力を込め、完全に胸の谷間を密着させた。
その瞬間、微かにプチュッという水風船が割れるような、ひどく生々しい音が響いた。
「……あッ!」
カレンチャンは、わざとらしく大げさに声を上げ、ポンと自分の頭に手を当てた。
「いっけなーい、カレンったら、またドジしちゃったぁ」
不思議そうに、しかしその実、口角をこれ以上ないほどに吊り上げながら腕の力を緩め、谷間を覗き込む。
そこにあったのは、もはや人間の形を留めていない、白く滑らかな肌にこびりついた赤いシミと化した肉片だった。過剰な圧力により、あっけなく圧死してしまったのだ。
「あーあ……カレン、つい『うっかり』力入れすぎちゃったみたい。ごめんねっ?」
そこには罪悪感など一欠片も存在しない。全く心がこもっていない、白々しい謝罪の言葉が降ってくる。
「匂いで優しく癒やしてあげるつもりだったのにぃ、こんなに簡単にペチャンコになっちゃうなんて……ホントに弱すぎだなぁ。でも、潰れる時の感触、ちょっとクセになっちゃうかも……♡」
カレンチャンはクスクスと狂気じみた笑い声を漏らしながら、脇の下でショック死した小人と、谷間に張り付いた赤い肉片をティッシュで拭き取り、またしてもゴミ箱へと捨てた。
「みんな弱すぎだなぁ……カレンのカワイイ、全部受け止めきれないなんて。……あ、でも、まだ二人残ってるよねっ」
彼女の視線は、ケースの中で抱き合って震える最後の二人の小人に向けられた。
「そういえば、もう片方の靴のお手入れがまだだったなぁ」
彼女は履いたままだったもう片方のランニングシューズを脱ぐと、ケースから残りの二人を同時につまみ出した。
「……あ、そうだ!いいこと思いついちゃった♡」
彼女は履いたままだったもう片方のランニングシューズを脱ぐと、ケースから残りの二人を同時につまみ出した。恐怖で顔を引きつらせ、必死に何かを訴えようとする小人たちの声など、彼女の耳には届かない。
カレンチャンは、脱ぎたての熱を帯びた自分の左足を持ち上げ、その美しい形の良い足指をグワッと広げた。
「キミたちにはね、もっと直接カレンの匂いを消してほしいの」
「ひっ!?や、やめ……!」
「ここが、一番匂いが溜まる場所だからね。しっかり頼んだよ?」
「カレンの足の指の間、すっごく蒸れてるから、残さず吸い取ってね」
彼女は、抵抗する一人の小人を親指と人差し指の間に、もう一人を薬指と小指の間に、それぞれ無慈悲にねじ込んだ。
「うぐあああっ!!」
「あがっ!?く、くさっ……!!」
小人たちの悲鳴が上がる。ウマ娘の強靭な足指の力で挟み込まれた彼らを襲ったのは、指の間の湿った皮膚から直接発せられる、強烈極まりない発酵臭だった。汗と皮脂、そして雑菌が繁殖した、ツンと鼻を突く酸っぱい刺激臭。それが至近距離から鼻腔を直撃し、脳を揺さぶる。
「んふふ、くすぐったい♡ちゃんと挟まっててね?少しでも動いたらそのまま潰しちゃうから」
「ほらほら、カレンの汗、すごく美味しいでしょ?どんどん吸っていいんだよ」
カレンチャンは楽しそうに足指を動かし、さらに強く彼らを挟み込む。小人たちの身体は、彼女の指の肉に深く食い込み、逃げることなど不可能だった。
「それじゃあ、靴下履いちゃうね♪」
彼女は、先ほど脱ぎ捨てたばかりの、汗で湿った靴下を手に取った。
「これでカレンの匂い、いっぱい吸えるでしょ?良かったね♡」
カレンチャンは、小人たちを足指に挟んだまま、その上から強引に靴下を履き始めた。
巨大な布の塊が、彼らの視界を覆い隠す。
ズズズッ……!
伸縮性のある靴下の生地が、足全体に密着していく。小人たちは、カレンチャンの指の肉と、汗臭い布地の間に完全に閉じ込められた。
四方八方からの圧迫感。そして、靴下というフィルターを通すことで、熱気と湿気が逃げ場を失い、匂いの濃度はさらに跳ね上がった。
さらにカレンチャンは、靴下を履いた足を、脱いだばかりのランニングシューズへと突っ込んだ。
トントン、とつま先を床に打ち付け、しっかりと奥まで足を押し込む。
「んー、ちょっとキツイかな?でも、これで完璧な密室の完成♡」
「カレンの靴と靴下に挟まれて、キミたちも幸せだよね。カレンの匂い、全部味わえるんだから」
小人たちにとって、それは二重の檻だった。靴という分厚い壁と、靴下という布の壁。外部からの光も空気も完全に遮断された、高温多湿の悪臭地獄。
「それじゃあ、5分間、しっかり消臭お願いね♪カレンはちょっと休憩してようっと」
カレンチャンはベッドに腰を下ろし、スマホをいじり始めた。
その足元では、今まさに二つの小さな命が、想像を絶する苦しみに喘いでいることなど、彼女は気にも留めていない。
靴の中の5分間は、小人たちにとって永遠にも等しい時間だった。
「あ……がっ、はあ……っ!」
酸素が薄れ、代わりに濃厚なカレンチャンの体臭が肺を満たしていく。指の間の皮膚は熱く、じっとりとした汗が絶え間なく彼らの体に染み込んでくる。
「たす、けて……おねがい、ゆるし……て……」
「もう、むり、だ……においが、のうに……」
意識が朦朧とし、視界が暗転していく。強烈すぎるフェロモンと悪臭が、彼らの生命力を確実に削り取っていった。
「……ん、そろそろかな?」
5分のアラームが鳴り、カレンチャンはスマホを置いた。
「さーて、カレンの足、ちゃんと匂い消えたかな?」
左足の靴を脱ぎ、続いてゆっくりと靴下を脱いだ。
解放された足指の間から、熱気と共に強烈な匂いが立ち上る。
そこには、カレンチャンの汗と脂にまみれ、白目を剥いてピクリとも動かなくなった二人の小人が挟まっていた。
「あれれ?もう動かないの?根性ないなぁ」
カレンチャンは、指に挟まった二人を、汚いものでもつまむように親指と人差し指で摘み出した。
そして、彼らを自分の鼻先に近づけ、クンクンと匂いを嗅いだ。
「……うーん」
彼女の眉間に皺が寄る。
「全然、消えてないじゃん。むしろ、汗を吸って変な匂いになってるし」
「消臭剤になってくれると思ったのに、がっかり」
不満げな声。彼女にとって、彼らは消臭剤としての役割を果たせなかった、ただの不良品だった。
「……キミたち、カレンの役に立てなかったね」
彼女の声から、甘い響きが消えた。
「カレンの足、綺麗にできなかった悪い子には……お仕置きが必要だよね?」
カレンチャンは立ち上がり、二人をフローリングの床の上にポイッと放り投げた。
そして、裸足のまま、ゆっくりと足を振り上げた。
「カレンの足の裏で、よーく反省してね」
ドォォォォンッ!!!
何の躊躇もなく、全力で振り下ろされたカレンチャンの踵が、床の上の二人を直撃した。
小さな悲鳴すら上げる暇はなかった。ウマ娘の脚力による、文字通りの圧殺。
二つの小さな体は、一瞬にして原形を留めない赤い肉塊と化し、床にへばりついた。
「…あ、足の裏が汚れちゃった」
カレンチャンは、自分の足の裏に付着した赤い汚れを、床に擦り付けるようにして拭った。
「あーあ、結局、今日の小人さんはみんなハズレだったな。次はもっと頑丈で、カレンの匂いがいっぱい好きな子だといいのに」
「お兄ちゃんなら、カレンの匂いでも喜んでくれるかな?」
彼女は、床の惨状をティッシュで雑に拭き取ると、それをゴミ箱へ投げ捨てた。
「さーて、汗かいたし、シャワー浴びてこようっと♪」
何事もなかったかのように、カレンチャンは鼻歌を歌いながらバスルームへと消えていった。
部屋には、彼女の甘い香水の残香と、微かに漂う鉄錆のような血の匂いだけが、静かに残された。