(なんだ… 眠ってたのか…)
とある夕刻… 僕は気づいたら自室のベットで寝ていて、尿意で起きてしまった… そして、ベットから立ち上がると
(おしっこ…)
などと思いながら、トイレへと向かった。
ガチャッ…
自室から廊下に出ると、窓からはオレンジ色の光だけが差し込み、光の差し込み以外は真っ暗な空間だけが広がっていて… なんだか、いつもの廊下とは雰囲気が違く、物凄く不気味だった…。 僕はそんな暗い廊下を歩いてると
(うん? 麻里とシロ姉さん…?)
トイレの方から麻里とシロ姉さんの声がしたのだか… ただ事ではない雰囲気だった…。 何故なら、今まで聞いたことない麻里の泣き声が、トイレから響いてきて
「ジロねぇざぁんがぁ! ぎをひげなぁがらってでぇ!」
「何よそれ~、自慢なの~? もっと自分の立ち位置考えなよ~」
麻里の泣きじゃくる声と、シロ姉さんがいつも発するフワフワとした口調… 僕は何事かと思い、トイレに走って入り、洗面台の方へ視線を向けると… 一瞬目を疑った…。 シロ姉さんは水を目一杯浸した大きな桶に、麻里の頭を両手で力強くで沈み込ませていた!! 僕はそんな異様な光景に
「え…?」
と、だけしか言葉を発せなかった…。 水桶に沈み込まれた麻里は苦しそうに両手をブンブンとシロ姉さんを攻撃し、そのシロ姉さんは麻里の攻撃をものともせず鬼のような形相で麻里の頭を沈めている… その光景はまるで… 題名は忘れたが、過激な映画の拷問だか尋問シーンで似たような事をやっていたのを思い出した… そんなシーンを… 現実でシロ姉さんと麻里の2人が再現していた!! 僕は怯えた声で
「し、シロ姉さん… い、一体、な、何をしてるんですか!?」
そう言った。 すると、シロ姉さんは僕に顔を上げ、笑顔で
「ああ~、ヨシ君~」
何ていつもと変わらぬ微笑みで言いながら、麻里の頭を離した…。 すると、麻里は凄まじい勢いで顔を水から浮上させ
「ヴゥッハァ!! オエェェェ!! ゲホッゲホォォ!!」
苦しい表情で水を吐き、咳をしながら空気を吸った…。 僕はシロ姉さんのした、同じ人間同士がやる事ではない残酷な行為に… いや違う… もう1人いた… そう… あの子… いや、あいつも栗宮さんに同じ事をしていた…! 僕は怯えて怒りながら、何故シロ姉さんが麻里にこんな事をしたのかと問おうとしたが、シロ姉さんが先に
「ねぇ~、ヨシ君聞いてよ~。 麻里ちゃんってね~、ヨシ君と一緒にトイレ入ってお尻見せたり~、ヨシ君と一緒になってお風呂入ったり~、ヨシ君に小股を見せたりしてね~、色んな誘惑して、私からヨシ君を奪おうとするんだよ~」
まるで、自分に悪意は全然ないような言い方だった… これが、サイコパスと言うやつなのか…? 等と思うと水桶に顔を押し付けられてた麻里は、シロ姉さんを睨みながら
「ひどいよね、ヨッシー…。 自分に全然魅力がないからさぁ… こんな方法でしか友達の1人作れないんだよ!」
そんな挑発にシロ姉さんは麻里の方へ向き、右手を上げ
___パチィン!
と、頬を強くビンタし、乾いた痛そうな音がトイレ内に響き渡った… あのシロ姉さんが… 暴力なんか無縁であろうシロ姉さんが… 仲の良い麻里をビンタした…。 そして、シロ姉さんは麻里にこう言い
「麻里ちゃんさぁ~… そうゆう態度取る事で、自分は私と対等なんだと思ってるの~?」
そう言った直後、シロ姉さんは麻里の頭と髪の毛を乱暴に鷲掴みにして
「調子乗ってんじゃねぇよ!! 友達なんか1人もいないくせして!! 昼休みもずーっと1人で過ごすあんたが!! ブスでコミュ障でキモオタのあんたが!! 何で風間君と付き合えると思えるの!? 何で私の命令に逆らえると思ってるの!? 何にも持ってないあんたを、風間君が好きだと…! 本気で思ってるわけ!? …そうだよね? ヨシ君?」
シロ姉さんが僕に振り向いた時、その顔はシロ姉さんじゃなく… あの女の顔だった…。 僕は恐怖で後ずさりながら
「な、な、何だ… 何が起こって…」
怯えて言ったその時だった… 麻里がこんな言葉を口にし
「じゃあさ… 何でも持ってるあんたが、風間君に声を掛けても、彼が何も反応ないのは何で…? ねぇ、何で? プッフフフ…」
すると、シロ姉さんの体を乗っ取ったあの女はトイレの方へ歩き、掃除用具が入った個室から、デッキブラシを持ち出し、先ほどの場所へ戻って来た。 次の瞬間、あの女はモップを頭上に掲げ、麻里の頭に狙いを定め…! 僕は怯えて足が動かず… だが僕は
「や! やめて…!」
なんて情けない声を上げたが、あの女は凄まじい力でモップを振り下ろし、麻里の脳天に直撃しetc
______ガバッ!
僕は飛び起きた… 辺りを見渡すと、ここは暗闇の自室… 先ほどのトイレではなく、僕はベットの上だった。 今までの光景が悪夢であったのに ホッ としながら
(夢… かーーー、なんて夢を見ちゃったんだ…)
そう思いながらベッドから立ち上がり、溜息を突きながら
(はぁ… 夢ならもっと良い夢を見せてくれよ… 雨宿りしたあのボロ小屋の続きとかさぁ…)
何て思いながらベットから起き、暗闇の中、机に置いてあったスマホの電源を入れると、時刻は午後10:45分… 体感的に深夜かと思ったが、そうでもなかった。 僕はスマホを置くと、尿意のためトイレへと向かった…。 僕は、月夜に照らされた廊下を歩きながら
(にしても… 変で、嫌な夢だったな…。 シロ姉さんと麻里が… 何で僕はあんな夢を見たんだ?)
トイレに入った僕は電気を付け、小便器に放尿を開始した… 尿の放物線をボーッと見ながら、これまでの流れを回想した。
僕と麻里がずぶ濡れで帰り、麻里と一緒に風呂に入って、僕が上がった直後に、シロ姉さんと加奈子お婆ちゃんが帰ってきた。 その後、夕食になり、シロ姉さんと加奈子お婆ちゃんは世間的な事を話していたが、僕と麻里はただ黙ってご飯を食べていた。 麻里は時折僕の顔をジーッと見ていたが、僕が視線を合わせると、顔を赤くしながら視線を下に反らした。 今、僕はこんな事を思った…
(そういえば、僕って… シロ姉さんと麻里と… もう、性行為寸前までの事は… してるんだよな…)
僕はこの状況になるまで、のほほんと考えてる脳みそを横に振り
(そうだよ! もう、そこまでの関係まで行ったんだよ! てか、これじゃあ… 今までと同じ事を繰り返すだけじゃん…!! あーもう!)
急に危機感と不安な感情が湧いた… 過去に起こってきた異性トラブルが、今の状況と若干一致するのだ…。 が、楽観的な感情の方がまだ強かったのか
(いや、でも… シロ姉さんと麻里だったら… 何となくだけど、大人の対応みたいな… そんな大きな事態にはならない気がする…。 少なくとも、学校と同じ事は絶対に起きないと思うけど…)
楽観的な考えから、Hな考えが頭に浮かびあがり
(それで、シロ姉さんと麻里が… 僕との関係を内密にできるのなら… 2人同時にしたって…)
また頭を横にブンブンと振った。
(そーゆー考えがダメなんだって! 僕からトラブルを引き起こしてどうする!?)
頭を冷静にさせ、とっくに尿を出し切った性器をしまい、水を流すと
(とりあえず、夏休みも終盤に差し掛かったし… お世話をしてくれた3人と気持ちよくサヨナラしたいなら、もう色々と自重しないと…。 2人とのHな関係は、これで終わりにしなきゃ…!)
そう思いながら手を洗い、トイレを出た。 だが、その考えに至るにはもう遅いんじゃないかと… いや、まだ間に合うか… そんな一抹の不安を考えながら自室に戻った僕だった
・・・
・・・・・・
それから数日後、その一抹の不安とやらは的中してしまった… あの悪夢の後から、シロ姉さんと麻里の様子はおかしくなった。 最初にそう感じ取ったのは麻里で、仕切りに僕に近づいては笑顔を飛ばし… 笑顔と言えば言葉通りなのだが、笑顔と言うにはどこか妖艶な感じで… そんな表情をしながら、何かと僕の体に触れてくるというスキンシップが異様に多くなった… この施設に来た当初の麻里からは考えられない行動だ…。 シロ姉さんはそんな僕らを見て、笑顔だっだがどこか苦々しい表情を垣間見せながら
「麻里ちゃんとヨシ君、最近ちょっと近くな~い? まあ、仲良くするのは悪い事じゃないけど~…」
そんな言葉が発せられた次の日だろうか…? シロ姉さんは今まで履きもしなかったミニスカートを身に着け、上半身はYシャツ半袖を着だし、第二ボタンをわざと留めずに胸元を露出するような格好になった…。 そんな服装の変わりように、麻里と加奈子おばあさんは疑問の声を発すると、シロ姉さんは暑そうにしながら
「あ~… やっぱ夏って薄着しなきゃ暑くて~。 ズボンと短パンだと蒸れちゃってさ~」
そんな服装をした翌日から、シロ姉さんは僕に近づくと、わざとパンツが見えるようにしゃがんだり、上半身を曲げて巨乳の胸元を無意識に… いや見せつけるようになった。 ただ、僕にとってはすごく目の保養になり、とてもありがたい光景だった… それだけで済めばよかったのだが、麻里が問題だった。
その問題の一つにこんな事があった。 僕が自室で宿題をしてる時、麻里とシロ姉さんが半ば強引に遊びに来たのだ… 机で英単語の宿題をしていると、僕の右隣にはシロ姉さんがいて、上半身を70~90度に曲げながらこう言い
「わぁ~、今の小学生は、もう英単語やってるんだね~! 私の頃はABCくらいしかやらなかったのに~」
シロ姉さんの反応に、僕はとりあえず
「あ、そうだったんですか…」
と言うと、僕はシロ姉さんの重力でダラーンとした巨乳の谷間に視線が行ってしまい、集中出来ずにいた。 …まあ、それで終わればいいのだが、麻里も僕の左隣にいるのだ… そんな僕らの姿を見た麻里は不機嫌そうに
「シロお姉ちゃん… ちゃんと胸しまいなよ… だらしがないと言うか、見られてるんだよ…」
そう言われたシロ姉さんも不機嫌そうに
「うん? だらしないって何が~? 胸がちょっと見えるだけな気にしないよ~」
と言って、そのままの態勢を続けた…。 麻里はもう一層不機嫌になりながら
「大体さぁ… ボタンちゃんと留めなよ? 何で二段も開けてるわけ?」
「しょうがないじゃない、私オッパイ大きいんだし… 全部閉めたら胸が苦しいんだもん~」
「だったら大きいTシャツ着ればいいじゃない、何で急にYシャツ何て着だしたの?」
「このYシャツ高校の頃来てたやつでね~、卒業してから一度も来てなくて、捨てるのはもったいないし~、今着たらいいかなと思って~」
「何で今になってそんなもの着るわけ… バカじゃない…」
麻里がそう小さな声で言ったが、シロ姉さんにはしっかり聞こえたみたいで、カチンときたのか、少しだけ声を荒げながら
「麻里ちゃん~。 どんな服着てようが、私の勝手だよね? 何であなたにゴチャゴチャと言われないといけないわけ~?」
麻里は少し怖気づきながら反論し
「だって… さっきから、その態勢何よ…! 普通に、椅子に座ればいいじゃない」
「椅子って… この部屋にはヨシ君の分しかないじゃない~。 地面に座れって言うの~?」
「だったら普通に立てば…! もういい! 好きにすれば!」
麻里はそう言い残してドアを乱暴に開け出てった… シロ姉さんは、そんな麻里の出てく姿を見ながら
「何よ… 勝手に怒って出てっ行って…」
すると、シロ姉さんは僕に振り返り、両肘を机に乗せ、胸の谷間を見せながら笑顔で
「変な麻里ちゃんだね… ウフフ…」
と、微笑みかけた。 普段通りのシロ姉さんなら、麻里を追いかけて理由を問うだろうが… いや、絶対そうするとは言えないが、そういう配慮ができる女性なのだ。 なんだか、今のシロ姉さんは恋敵を排除して喜んでるような… そんな印象が強く感じたのだった。
そんな険悪な2人の雰囲気は畑作業の組み分けにまで現れた…。 事の発端は畑作業で二人一組になり、施設付近の畑作業か、遠くにある畑作業かを分担して作業する日の事であった… 今日の午前中の居間にて、僕と麻里はペアで遠くにある畑作業を担当する日だったのだが、そのペア分けにシロ姉さんがこう言った。
「あれ~? 今日はどうして麻里ちゃんとヨシ君が一緒なの~? ヨシ君と組むのは、あたしのはずだけど~?」
その問いに、麻里は疑問顔になりながら
「うん? だって、今日はあそこの畑、虫とかを取り除いたりもするから、シロ姉ちゃんは加奈子おばちゃんと作業でしょ? なんも間違ってはないはずだけど…」
そう… 本来であれば今日は僕とシロ姉さんが組む日なのは間違っていない… だが、実はシロ姉さん、虫が結構苦手で、特に芋虫系の虫が大の苦手なのだ…。 畑で育った野菜・果物を食べようとする虫は大体、大柄な芋虫・毛虫なので、今日は僕と麻里がそれを払いのける作業をしにペアになったのだが… シロ姉さんは少し不満そうで
「あ、あのね! 私もさあ~、そんなわがままも言ってられないと思ってさ~、やっぱしetc」
シロ姉さんは、私だけ特別扱いも良くないから、色んな畑作業も克服しなきゃ~、なんて言い、組み分けの変更を僕らに迫った。 すると、麻里は
「別にいいよ。 今日は私とヨッシーが向こうの畑に行くから、シロ姉ちゃんは加奈子おばさんと一緒にペア組んで」
「い、いや~、でもでも~etc」
「いいって、私はヨッシーとetc」
こんな応酬が2度3度続いた時だった… 麻里は少しキレだし
「もう! いい加減にして! シロ姉ちゃんはヨッシーとペアになりたいから言ってんでしょ! わがままだからとか! 特別扱いだらかとか! そんなの全然関係ないんでしょ!?」
シロ姉さんはショックを受けたような… 本質を突かれたような… 二重の表情になり
「何よ! その言い方…! 別に私はさぁ!etc」
シロ姉さんが大きな声で反論しようとしたその時、台所にいた加奈子お婆さんが駆け付けると
「何々ー?! 2人共大きな声出してどうーしたんだい?!」
口喧嘩寸前の2人はシュンッと黙った… もちろん、こんな喧嘩は僕が施設に来てからは一度もない… そんな気まずい雰囲気の中、僕達はそれぞれの畑に向かったのだった。
先ほどの口喧嘩で、僕は恐怖した… あの夜の悪夢を見始めてから、2人がおかしくなったことを… あの夢はもしかして、ただの悪夢じゃなくて、予知夢であったのか!? と… こんな行動がエスカレートし、やがてはあの悪夢みたいに…! そう考えてしまった僕は軽い疑心暗鬼になり
(過去のトラブルと流れがまったく一緒だ…! シロ姉さんと麻里なら大丈夫と思ってたけど、全然ダメだった… いや、そもそも何で大丈夫と思ったんだ…?! 過去にトラブルになった女の子達も両者同様、とても良い子達だっただろ? どんなに聖人的な女性でも、本質的な欲求は何も変わりはしない…! 当たり前の話だ!)
そんな事を思った僕は今日1日… なるべく、シロ姉さんと麻里との接触を避け、会話も適当に相槌を打つだけに徹した。
・・・
そして、その夜… 僕はベットに入り
(もうあの日の事を… いや… あの日の事だけじゃない! 繰り返しちゃいけないんだ! シロ姉さんと麻里とは… これからもずっと、仲良く暮らしていってほしいから…)
今まで積み重ねられた苦い経験から、その結論に至り、この日をもって僕は2人とはようやく距離を置いたのだった。
・・・
・・・・・・
そして、2人から距離を置くと決意してから数日が経った… もちろん、今もそれは続いており… いや、できるだけ顔を合わせないようにしている… と言った方がいいかもしれない。 この施設でルールに則って暮らしながら、2人にまったく会わずに生活すると言うのは不可能なので、朝食を食べたら外出し、昼食を食べに戻ってはまた外出し、夕食を食べに戻ってきたら自室に引きこもる… という生活を現在に至るまで続けている。 2人から話しかけられても、なるべく丁寧な言葉であしらっては離れたりを繰り返していた…。 そしてある日、加奈子お婆ちゃんにもダメ元で畑作業の組み分けを、やんわりとできるだけお婆ちゃんと組みたいとお願いした結果、笑顔になったが少し心配した表情で
「それは全然良いんだけど…。 別に、あの子達が嫌いになったとか、嫌なことされたとか… そーゆー事じゃないんでしょ?」
そう言われ僕は顔を横に振った… それだけなのだが、加奈子お婆さんはすべてを知ったような口ぶりで
「そーかー… よし! それなら、明日からの組み分けは、私と風間君、真白ちゃんと麻里ちゃんで固定しちゃおうか?」
その提案に僕は感謝しながら
「はい… ありがとうございます」
そう言うと、加奈子お婆ちゃんは笑いながら
「実はね… また近々、鶏小屋の大掃除をする予定なのよー! 義典君はこの間してもらったから、麻里ちゃんか白ちゃんにでも頼もうかなと思ったけど… ヨシ君がそう言ったなら、喜んでまた引き受けてくれるって事だよね! ガハハハ!」
そう、大笑いをしながらながら了承してもらえた…。 鶏小屋の作業をまたする事となってしまったのは億劫だが、2人と少し距離を取れるなら… それでもかまわないと思ってしまった僕だった…。
そして、今日の昼頃… 畑作業がない今日…。 そんな日、僕はいつもどこで過ごしてるかと言うと、川遊びした清流から、もう少し離れた先にある、ハイキングコースの東屋にいた。 ここは2人から距離を取るには申し分ない場所で、屋根があり、椅子と机があり、部屋よりも涼しく、喉が渇いても水場があるので、嵐でもない限り大体ここで日中を過ごしている。 正直に言ってここ… クーラーが壊れた部屋よりも断然に快適だった! 唯一の欠点はトイレが無い事だが… まあ、人通りが皆無なのもあって… 言わなくてもわかるだろう。 ここで何をしているのかというと、宿題をしたり、本を読んだり、ゲームをしたり… だが、溜まった夏休みの宿題を一気に片付ける方が多いかもしれない。 今現在は、自由研究紙を下書きしたものをペン入れをしている最中だった。 僕は一休みしようと、スマホを出し時計を見ると
(もう12時か… 昼食にしよ…。 手も疲れたし、お腹も空いたし…)
僕は自然豊かな環境で、小鳥がさえずる中、自分で作ったおにぎりを頬張っていた。 もちろん昼食もここで過ごすことは、加奈子お婆さんには伝えてはいるが、2人には伝えていない… 最初の頃はいちいち施設に帰って昼食を食べに行ってたが、最近は帰らずにおにぎりを食べて過ごす事が多い。 食べ終わると、僕はまたスマホ取り出し、ネットニュースを見てみると、小学校の始業式の映像が話題になっていた… 僕はそれを見て
(そうか… 僕の学校は9月1日が始業式だけど、地域によっては今日が始業式の学校もあるんだっけ…)
それと同時に僕はふと、こんな事を思った…。
(そういえば… 僕がこの施設に帰る日が8月31日だから… 僕がこの施設にいるの、あと1週間くらいしかないじゃん…)
と、僕はしみじみと思った…。 夏休みが始まる1週間前… 父親は僕に夏休み全日をこの施設で過ごしてくれと言われた時、僕はひどく困惑し、もちろん大いに反対した。 だが、父も母も大仕事で夏休み期間はどうしても家には帰れないとの事で、僕に決定権はなく、強制的にこの施設で過ごす事となった。 こうして、学校が終業式になり、コンビニすらない辺境のド田舎で夏休みを過ごさなければいけない絶望を感じながら車に乗ったのだ…。
だが、少し矛盾してるかもしれないが、あの時… ほんの微かなドキドキとワクワクが心の中にあったのだ。 夏休み初日の早朝に車に乗り込み、運転する父親に不満をダラダラと言いつつも
(今年の夏はいつもとちょっと違う… 忘れられない夏になるのでは…?)
そんな事を微かに思った… 映画スタンドバイミーやグーニーズみたいな、仲間達と夢と希望と冒険に満ち溢れた夏休みが待っているのでは!? と…。
(まあ… 望んだ状況とは全く違うけど、確かに忘れられない夏になったな…)
そして今現在、夢と希望と冒険に満ち溢れた体験はない… たぶん、これからもないだろう。 本当に夏休み期間だけ、麻里・シロ姉さん・加奈子おばあちゃんの3人と、ここで過ごすだけであった。 しかし、3人とも僕をプールに連れてってくれたり、キャンプに連れてってくれたり、川に遊びに行ったり… ただ施設で過ごさせるってわけではなく、退屈させないよう数々の思い出を作らせてもらった…。 それにちょっとHな体験も…。 ここに来た当初は、僕は緊張でろくにご飯も食べれなかったが、今では家族の食事と同等の感覚で食べることができる… これは僕だけの慣れではなく、3人のサポートがあったからこそだ…。 そして、僕はこんな事を思ってしまった…
(本当に… シロ姉さんと麻里は… このままの関係でいいのかな…?)
そして、こんな事を同時に思ってしまった。
(別に僕はあの2人が嫌いになったわけじゃない… むしろ逆だ…。 仮に、シロ姉さんと麻里… どっちを取るかと言ったら…)
僕はHな妄想モードに入ってしまった… シロ姉さんの裸… 麻里の裸を脳内に浮かべながら
(やっぱり… おっぱいの大きいシロ姉さん… だよな…。 でも、麻里だって魅力がないわけじゃない…! 正直どっちも… て、できないかな? シロ姉さんのオッパイと、麻里の美貌… そんな2人が僕と同時にsex… なんて事になったら…!)
なんて思うと、僕はよこしまな考えに頭を横に振った。
(いや! このままでいいんだって! 距離を取るって決めただろ! 恋愛感情はもう捨てろ! 下手に好きになって手を出したりなんかしたら… 結局またトラブルが起こって…! 今も今までも、そんな事の繰り返しだったじゃないか…!)
僕はよこしまな考えは止め、深呼吸して頭を冷静にし
(バカな考えはやめよう…。 さて… 自由研究のペン入れ始めるか… まだまだ下書きのところあるし…)
そう思い、僕は自由研究の作成に取り組んだのだった…。
・・・
あれから数時間が経過し… 空の陽が傾いた頃
「よし! 今日もいっぱい終えることができたぞ!」
今日の成果は、自由研究を完成させ、算数の分厚いドリルを終わらせ、4つの読書感想文を終わらせる事ができた。 面倒な宿題が次々減っていく達成感に僕は満足気で
(後は漢字の書き取りドリルと、英単語のドリルと、理科のドリルがあるけど… この調子で頑張れば、あと2日くらいで終わらせることができるな! …さて、今何時だ?)
僕はスマホを取り出し、今の時刻を確認すると
(もう5時半か… 帰らないと…。 周りも暗くなってきたし…)
いつもはこの時間の30分前には帰っていたのだが、集中して取り組んでいたため、時間の感覚がなかった… なので、僕は急いでバッグに自由研究の用紙を丸めて入れ、夏休みのドリルを放り込み、この場を後にした。
…森を抜け農道に出ると、空は夕焼けに染まり、赤とんぼが無数に飛び、ヒグラシの声が辺りに響いて、気温も東屋とそう変わらなく…。
(もう秋なんだな… それもそうか… 僕がここにいる期間はもう1週間くらいだからな…)
そう思いながら歩いていた… 東京ならまだ夏真っ盛りだが、標高の高いこの地域は、もうすっかり秋の気温だ。 そんな事をしみじみと思いながら帰った僕だった。
・・・
僕は施設に帰ると、玄関のカギを閉め、靴を脱ぎ自室へ向かった… 居間には誰もいなく、その隣の台所には調理をする音が聞こえた… たぶん、シロ姉さんか加奈子お婆ちゃんだろう。 僕は何故か忍び足をするように施設の廊下を歩き、自室へ向かった… だが、自室の戸の前に立ったその時だった…。
(え…? 麻里と… シロ姉さん…?)
誰もいないはずの僕の自室から、2人の声がした… 何してるのかな?と不審に思いながら、戸を開けると、やはり2人がいた…。 2人は僕の机にある宿題や本など開いては、何か色々と和やかに話し合って、僕が戸を開けた音に気づくと、両者僕の方へ振り向いた… 最初に口を開いたのはシロ姉さんで
「あ! ヨシ君おかえり~、今日も遅かったね~」
微笑みながら言うと、次に麻里が微笑みながら
「今日もゆっくり過ごせた?」
と優しく言った…。 最近はよくこんな感じで話しかけられる… 2人から距離を置いた初日辺りは『今日、施設にずっといなかったけど何処で何してたの?』としつこく聞かれ、僕はその度に軽くあしらっていたためか、もうその言葉は言わなくなった。 僕は2人の問いに
「はい… 充実に過ごせましたよ」
とだけ言った。 すると、シロ姉さんは僕のバッグに丸めて入れてた自由研究の用紙に目が行くと
「うん~? あ、それって~、麻里ちゃんが言ってた自由研究ってやつ~? 進捗はどう?」
そう言われたので、僕は自由研究の用紙に視線を移しながら
「ああ、これですか? おかげさまで、今日完成しました…」
すると、麻里は不思議そうな顔で
「また、お外でやってたの…? 前にも言ったけど、何で外でする必要があるの? ここでやればいいのに…」
麻里の問いに僕は『それは2人と距離を置きたかったからですよ』なんて口が裂けても言いはしない。 なので、別の理由である
「ああ、ここのクーラー… 前に壊れてるって言いましたよね? この部屋で過ごしてるとすっごく暑くて…。 なので、涼しい外で作成したんです。 その他の宿題と一緒に…」
そう言いながら、僕は東屋でやってきた宿題を机に置いた。 シロ姉さんは少し申し訳なさそうに、クーラを見ながら
「ああ~… ごめんね~… 私もここのクーラは何とかしてあげたいと思ってるんだけど、修理する知識はないし~、買い替えようとすると~… お金が…」
最後辺りで小さく呟くと、麻里は
「でも、加奈子おばちゃんも言ったけど、クーラーが壊れてるんだったら私達の部屋を使えばいんじゃない。 私の部屋だったらいつだっていいよ」
それに呼応してシロ姉さんも
「そうだよ! 遠慮してわざわざお外に行かなくたって、私の部屋とかも使っていいんだよ~? 1人になりたいんだったら~、私は麻里ちゃんの部屋に行くし~、お金でも盗まない限り、基本何してもOKだから~」
すると、麻里は意地悪そうに笑いながら
「タンス漁ってブラジャー見るのはOKなの?」
なんて言った途端、シロ姉さんの軽いゲンコツが麻里の頭に命中し いててて なんて笑いながら言うと
「でもさ… あの東屋なら、夏でも涼しいし、人も来ないし、虫もそんないないし、宿題とか作業するのにはうってつけだよね」
シロ姉さんはちょっと心配した表情で
「確かに~… でもあそこって、施設からは遠いいし、できればもっと近場の所はないかな~、て思っちゃうんだよね~」
麻里も心配しながら
「そうだよね…。 人里離れた森の中だから、何かあったりでもしたら、何もできないし…。 まあ、何もないとは思うけど…」
シロ姉さんは続けて心配した顔で
「私もね~、午後は3回くらい様子見に来たんだけど~… 四六時中見てるわけにもいかないし~…」
(え!?)
僕は2人の会話を聞いて、驚いてしまった。 2人は僕が東屋で過ごしてたことは随分前から知ってたみたいで、シロ姉さんは東屋まで歩いて僕の様子を逐一確認しに行ってたみたいだ…! ここから東屋は決して近くはない… 僕はそんなシロ姉さんの行為に申し訳ない気持ちになりながら
(じゃあ、そこまで足を伸ばしたなら… 何で声を掛けるとかしなかったんだ…? あ、そっか… 僕が2人を避けてること… もう感づいてるってことなのか…?)
麻里は僕のやってきた宿題を手にし、パラパラとめくりながら
「でもさ… 人は色んな考えとやり方があるし、強制しちゃいけないよね」
優しくそう言ながら宿題を机に置いた。 シロ姉さんも同感はしていたが、心配した表情を隠せず…
「そうだよね~。 でもやっぱ~、1人だけでどこか遠くに行ったりするのは、ちょっと心配になっちゃうな~…」
そう言った。 僕は申し訳ない気持ちになる一方、こんな事を思ってしまった。
(2人は僕が避けていることを知っている… てことは、つまり… 良い方向に事が運んだと言っていいのでは? 今までは両者が僕を巡って険悪な雰囲気なるから、僕が両者から距離を置いてたけど、その必要がなくなった… じゃあもう、あんな辺ぴな場所で過ごす必要はないと言う事か…?)
僕はそんな事を思うと、安心感と同時に大きな喪失感が心を包んだ…。 そして、僕は部屋にいる2人に
「確かに… 最近は涼しくなってきたし、部屋で宿題してもいいかもしれませんね…。 いちいちあそこに行くのも面倒だし、トイレもありませんし…」
そう言うと、2人は僕の発言に同感し笑いだした…。
…で、話はそれで終わりなんだが、2人は僕をジーッと見つめて部屋から出ようとしなかった。 そんな2人に僕は頭に?マークを浮かべながら
「どうしました? まだ何か…」
そう問うと、麻里はシロ姉さんの手を引いて、僕から少し下がった所で両者 ストンッ と硬い床に正座した。 そんな行動に僕は頭に?マークを増やしながら
「あ、あの…???」
と言うと、麻里が申し訳なさそうに重く口を開き
「聞きたい事は色々あるんだけど… まずは私達から謝罪させてね…」
すると、シロ姉さんも申し訳ない、悲しい表情をしながら
「うん…」
とだけ言った…。 あまりの重たい雰囲気と言葉に、僕は2人から何の被害を被ったかを考えてみたが、まったく見当が無い…。 すると、麻里がシロ姉さんを肘で軽く ガシッ て押すと思い口を開き
「あのさ… あの雨の日、あの小屋の事、覚えてる…? いや覚えてるよね…。 ごめん… 私、あの時つい、勘違いしちゃって、悪乗りしちゃって… ヨシ君に無理やり… キス… しようとして…!」
そう言うと、シロ姉さんは悲痛な表情をしながら涙を浮かべ
「ごめんなさい…! 怖かったよね…! もうあんな事…! 絶対にしないから…! 私…! あの時私、どうにかしてた…!」
そう涙声で言い終えると、シロ姉さんは固い床におでこを付けた… グスッグスッ と泣く音が部屋に響いた、数秒後… 次に麻里が申し訳なさそうに
「私も… 洗濯物と手伝ってる時と、一緒にお風呂入った時… 変態なんて言って、ごめんなさい…」
そう言うと、麻里も頭を下げ
「ひどいよね… 考えてみたら、原因は全部、私にあるのに… あんなこと言って… 本当にごめんなさい!」
僕は土下座した2人を、困惑した表情で見下ろしながら
「え!? いや! ちょっと待って! あの事はもう…! って言うか! 2人ともあの時の事を喋り合って…!」
僕は頭を横にブンブンと振った… 今言う事はそこじゃない! 僕は続けて
「あの! 頭を上げてください! あの時の事はもう、全然気にしてませんから! それに、麻里はともかく… シロ姉さんが謝る必要は全然ないのに…。 と、とにかく! そんな事で気に病む必要は、まーったく! ありませんから!」
そう言うと2人は顔をゆっくりと上げた… シロ姉さんは涙がポロポロ落ちていて、麻里も少し涙目だった。 僕は苦笑しながら続けて
「もう… 突然何かと思ったら… そんなこと別にetc」
そう言うと、2人は涙を拭き、麻里が僕に向き直しこう言った。
「じゃあ、今度は私達から聞くね… 最近ヨッシーは…」
僕は急な質問に呑気に
「はい? 何でしょう…?」
麻里は静かにこう言った。
「どうして私達を避けるの?」
…その質問をされた時、僕は瞬時に答える事ができなかった。 と言うより、どう答えればいいのかと迷ってしまった…。 あの悪夢の事を説明するか? 僕のこれまでの苦い女難を説明するか? ただ、それを説明したとしても… 2人を避けていい理由にはならないと思ったからだ…。 そんな事を思い沈黙し10秒後… シロ姉さんが悲しむ表情で
「どうして今日、こんな謝罪をしたかと言うとね… ヨシ君が私達を避け始めたのって… あの日からなんだよね…」
麻里はシロ姉さんにこう言い
「私、言ったじゃん… その事はたぶん気にしてないって… でも、原因は他にあるって事だよね…」
シロ姉さんはまた悲しそうな顔で
「ねえ… どうして私達を避けるのか教えてくれる…? 私達、ヨシ君に何か嫌われるような事… しちゃったかな…? どんな些細な事でもいいから…! 遠慮なく、話してくれると嬉しいな…」
麻里も困惑と悲しい表情をしながら
「ごめんね… 私達も、前から嫌われた原因をずーっと話し合ってたんだけど、さっき言ったことくらいしか見つからなくて…」
僕は2人の話を聞き、長い沈黙から口を開いくと、平然を装いながら嘘を言い
「別に、避けてなんかいませんよ。 現にこうして3人で話し合ってるじゃないですか…。 僕も、たまには1人になりたいなぁ… 何て思う時もあったり、たまたま偶然が重なってetc」
なんて言いかけたところで、麻里がちょっとだけ大きな声で
「たまたま…? 偶然…? 嘘つかないで!」
怒ったように言った。 シロ姉さんも悲しい表情は変わらず僕に
「本当の事… 話してほしいな」
僕の嘘が簡単に見破られたことに、うろたえながら
「う、嘘じゃあ…」
麻里は僕に詰め寄るように
「最近だよね… ずーっと東屋に籠もりだしたのさ… お昼も食べに来なくなって…。 前はさ… クーラーが壊れた部屋でどんなに暑くなろうと関係なく、宿題とかゲームとかスマホとか見てたじゃない…。 なんで、いきなり… あの東屋に籠もりだしたの?」
次にシロ姉さんが口を開き、ポロポロと涙を流しながら
「数日前の事になるけど… 私ね、実は… ヨシ君が加奈子さんに畑作業の組み分け、私達とは組みたくないって会話… 偶然聞いちゃったんだ…。 私、それを聞いて、ほんとに悲しくなっちゃって…」
その言葉を聞いた時、僕は深くうろたえながら
(え!? あの時の会話、聞かれてたのか…!?)
僕はともかく、釈明の言葉を口にしようとしたが…
「そ… それは…」
その言葉がまったく出てこなかった… 僕は、シロ姉さんが涙をポロポロと流す姿を見つめるだけだった… すると、麻里が真剣な眼差しで僕を見つめ
「ねえ! 私達を避けた本当の理由ってなんなの?」
シロ姉さんも涙目で僕を見つめ
「本当の事… 教えてほしいな…」
2人の口調に押され追い詰められた僕は、次に発しなきゃいけない言葉を考えた…。
(もうこうなったら… あの時みたいに… 2人をきっぱり拒絶するか? 栗宮さん時みたいに…)
僕はこの時、女難トラブルでしでかしてしまった過去を思い出した…。 栗宮さん… その子を心配して、よかれと思った行動が、僕にとっても栗宮さんにとっても最悪な結末になってしまったあの過去を…。 あの不甲斐なさでできた汚点を、ようやく忘れる事ができたのに… また思い出してしまうとは…
(何でこんな所で… また同じ過ちを繰り返してんだよ…! 僕は… あの時から、何も学んでないじゃないか…!)
そう思うと、僕はほっぺにタラリと涙を流してしまった… 僕は両者に背を向けて… その涙は次々と僕の頬を落ち、やがてぐずった声で
「ごめんなさい… 全部… 僕のせいです… 僕はバカで… 変態で…」
男のくせにメソメソ泣きながら、情けない声を出してしまった… 学校でも親の前でも泣いたことのないのに、こんな姿を身近に接してきた2人には見せたくなかった…。 この涙は、この状況から来る涙じゃなく、つい最近起きた大きな過ちを選択してしまった、僕の不甲斐なさと情けなさで来る涙でもあった… 誰に対して? 栗宮さんに決まってる…。 すると、麻里は心配しながら
「ヨッシー? 泣いてるの?」
と言うと、シロ姉さんが立ち上がり、僕のそばに駆け寄ると肩を持ち
「え!? ヨシ君?! どうしたの?!」
僕は両手で顔を隠しながら
「もう…! 繰り返したくなかったから…! シロ姉さんと、麻里はぁ…! ごれがばぼぉ…! いっじょにぃ!」
泣きじゃくって言葉にならない声を出すと、シロ姉さんは慌てながら
「ごめんねごめんね~! 別に攻めてるわけじゃないから~! 無理に話さなくてもいいよ! とりあえず~… ちょっと休憩しよう! ね…?」
麻里も慌てながら
「と、ともかく、腰掛けよ…」
…泣きじゃくる僕は、2人にベットへと誘導され、僕は両者の真ん中に座り、その右のシロ姉さんは頭を撫でてくれて、左の麻里は背中を撫でてくれた。 数分後… ようやく落ち着きを取り戻した僕は、静かに語る事を決意した。
「じゃあ、本当の事を言います… どうして2人を避けたのか… その理由も…」
すると、シロ姉さんは優しく微笑みながら
「大丈夫よ~、いっぱい話してスッキリしよ」
麻里も優しい口調で微笑みながら
「また… 泣いちゃってもいいからね」
こうして、僕はこれまで受けてきた女難を静かに語り始めた…。
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母「あんたは本当に女難に見舞われねー… 私のお父さんそっくり」
父「モテ過ぎるのも考え物だな… ハハハ」
両親は僕が女難トラブルに巻き込まれると、必ずかけられる言葉がこれだ… 思えば、僕が生を受けてから、こんなトラブルの連続であった。 女難… 意味としては男性が女性に関することで災いを受ける事だそうだが、僕の場合… 女難とは言っても、必ずしも異性トラブルかと聞かれればそうでもない… そこに男が関与し攻撃してくる時だって度々あった。
そんな僕が最初に女難を意識し始めたのは、幼稚園年長の頃だった…。 両親が三鷹市郊外に引っ越し、この地域の幼稚園に転入した頃、僕の身にある事件が立て続けに起こった…。 転入当初は、特にトラブルも喧嘩もなく、平和に健やかに通園していたのだが… ある時を境から、作った工作品が無くなる、着替えや帽子等が無くなる、ハンカチが無くなる、バッチが無くなる、筆箱が無くなると言った物の紛失が目立つようになった… 無くしたとか落としたとかそんな感じではなく、机や棚に置いてあった物が自我を持ったように何処かへ消えるのだ…。 だが、元々僕もよく物を無くしたり落としたりするアホの子なので、親や先生にその被害を言っても
母「あんたまた無くしたの!? その無くし癖いい加減直してよー!」
先生「あらー、また無くしちゃったのー? どこかに落としちゃったのかなー?」
てな感じで、物が無くしたり落としたりすると僕が原因と決めつけられる事もよくあった…。 だが、そんな被害があっても、優しい女の子達や女性の先生がなにかとフォローしてくれたりで、実生活ではさほど困らなかったが、身の回りの道具が無くなる被害は止むことはなかった… 時には描いて貼りだされた絵に「しね」と落書きされる事もあって… そんな被害は3ヵ月に渡って続き、この物が勝手に無くなる被害と落書きは、先生達も次第に問題視し始めた。 そして、それらの嫌がらせは、ある日突然、急に終わりを告げたのだった。
あれは水曜日の夕方… 母親が幼稚園に迎えに来ると、僕は下駄箱の扉を開け、靴を履こうとしたが… そこに入ってあるはずの靴が無かった。 それを母親に伝えると、二手になって玄関付近をくまなく探したが、靴は一向に見つからない… 2人で探し続けてるうちに時間が経ち、他の親子達が続々と帰って行くと、僕と母親だけが幼稚園に残された…。 靴の捜索に複数の先生・園長までも加勢し、幼稚園内のありとあらゆる場所をくまなく探したが、それでも見つかる気配は一向になかった。 とうとう幼稚園閉園時間まで見つけることはできなく、そんなイライラした母は僕に怒りをぶつけ
「もう! あんたさぁ! あの靴幾らしたと思ってるの!? 他の小物ならともかく…! 何で靴まで無くしちゃうわけ!?」
母親が怒るのも無理はない… 当時、僕は裸足で遊ぶといった行動をよく取り、そうなると高確率で裸足のまま家に帰ってしまう事がよくあって、それが原因で靴を無くしてしまうと言った事が度々あった。 しかも、今日履いてきた靴は、母親が百貨店で奮発して買ってくれた高価な靴でもあったのだ…。 そんな母親に園長は
「まあまあ、お母さん落ち着いて! とりあえず、今日は帰ってゆっくり休みましょう。 靴が幼稚園内にあるのなら、明後日くらいには必ずポロッとでてきますよ」
その日は仕方なく裸足で帰る事となったが、木曜・金曜と過ぎても、靴が出てくる事は一切無かった…。
そして、土曜日の昼頃… この日は幼稚園も両親の仕事も休みで、近所のレストランで家族揃ってランチを食べ、帰路についていた…。 その、歩道横には小さく臭く汚いドブ川が流れていて、僕達はそのドブ川の流れに沿って歩いていた… 僕はドブ川の水面を眺めながら歩いてると、そのドブ川の終着地点で、ある物を見つけたのだ… それが…
「おかーさーん! 僕の靴がここに浮いてるよー!」
僕がそう言うと、両親はその靴を眺め、しかめっ面で話し始め
母「え!? 絶対そうよ! だってあれ! 私がetc」
父「いやいや違うだろ… あの靴はもっとetc… そもそも何でここにetc…」
両親は僕の浮いた靴を見ながら、いや違う、いや絶対そう、等と議論したその数十分後、父親が長い木の棒を持って柵を越え、その靴を器用にドブ川から引き上げた。 母親は顔を歪ませながら悪臭を放つ靴に手を触れ、靴ベロの裏地を確認すると… なんと、その靴には僕の名前が書いてあった! そして、このドブ川… 少し上流には、幼稚園のすぐ隣を流れている川なのだ!
そんな事があった2日後の月曜日の朝… 母親は怒りを抑えながら早速、幼稚園にこの事を電話で伝えると、先生達は素早く対応してくれた。 幼稚園の玄関には高画質の防犯カメラが複数設置されており、僕の靴をドブ川にぶん投げた犯人はあっけなく特定されたのだ…。
その2日後の水曜日… 僕と母親は、園の相談室みたいな所で、靴をドブ川に投げ捨てた犯人とその両親、園長等がこの部屋に集まった。 犯人の正体は僕と同じクラスである亮太君と言う男の子で、クラスのリーダー的な存在だが、僕との接点は特になく恨みも買った覚えもない… なので、本当に亮太君が犯人なのかと逆に僕が疑ってしまった。 だが、犯人の両親はこれでもかと言うくらい悲痛で申し訳ない表情をしており、亮太君に至ってはもう泣きべそ状態だった。 なんと、園長によると靴だけではなく、僕の身の回りの持ち物が無くなったのもすべて亮太君の仕業だと説明し、園長は続けてその亮太君に優しく、何故このような事をしちゃったのかな? 何て優しく言うと、亮太君は泣きながら物凄く言いづらそうに
「風間君は… 僕から、綾乃先生を盗った…」
と聞いた時、僕の頭には?マークが浮かんだ… 綾乃先生とは僕のクラスの副教諭?的な立場の人で、若くとても可愛い容姿をした女性で、亮太君は特にこの人に特別な感情を持ってたみたいで、常に親しくなろうと接する姿を見てきた…。 僕にとっては幼稚園に転入した際、慣れない環境で親切丁寧に気を配ってくれた優しい先生だったが、普段から何かとベタベタイチャイチャ触って関わって来るような… そんな一面もある変な先生だった。 だが、その裏で亮太君の攻撃的な嫉妬に晒されていたとは、まったく思わなかったし、もちろん僕はこの先生に対しては副教諭の立場として見てるだけで、それ以上の感情は一つもなく、亮太君の嫌がらせも僕にとっては、何の関係もないとばっちり以外なかった。
そして、最後に亮太君とその両親は僕らに、深い謝罪、靴の弁償、二度とこのような嫌がらせはしないと言う誓約をした形で、この事件は幕を閉じたのだった。
これが、僕が女難を意識させる、最初の出来事だったと言えよう…。
・・・
・・・・・・
あのトラブルから数か月後…。 ある日、とある女の子に告白された… 僕はその子に恋愛感情は持ってなかったが、性格も容姿も当たり障りの無い良い子だったので、友達の延長感覚で了承してしまった…。 ちなみにその子は僕と同い年で、一緒のマンションに住み、一緒の幼稚園に通い、常に一緒に遊んでいる、真紀ちゃんと言う子だ… 恋人になった後は一緒にデートゴッコだ夫婦ゴッコなんかしたりして、僕はやりたくはなかったのだが、キスなんかもしたりする仲になった…。
だが、問題はここからだった… 告白されてから1週間後、2人でマンションすぐ下の公園にて、またデートゴッコと称し遊んでいて、キスなんかを嫌々していると、そこに美菜ちゃんと言う女の子が現れた… 美菜ちゃんと言う子も僕達と同い年で、一緒のマンションに住み、同じ幼稚園に通い、真紀ちゃんの大親友でもあり、この子とも常に一緒に遊んでいた。 だが今、その美菜ちゃんは怒りの表情で真紀ちゃんに詰め寄り、こう言った…。
「聞いたよ! あんた…! 風間君と付き合ってるの!?」
真紀ちゃんは平然としながら
「うん、だから何? 私が誰と付き合おうが勝手でしょ? 確かにあんたetc」
真紀ちゃんは続けて何かを言おうとしたが、美菜ちゃんは更に怒り狂いながら
「はぁ!? 何であんたが…!? 何であんたがそんなに偉そうなのよ!!」
そうして始まったのは、女同士の壮絶な殴り合い・蹴り合い・取っ組み合い・言い合いだった… 普段テレビで見るような格闘技ではなく、ルールもレフェリーも無い壮絶な喧嘩… あまりの激しい戦いにぶりに、僕は困惑しながら突っ立ってジーッと見ている事しかできなかった。 …その壮絶な喧嘩は数分間続いた後ようやく終わり、2人共アザだらけになり、服が破けては砂で汚れ、そんな状態でお互い絶交宣言し、僕を放置して泣きながら家へと帰っていったのだ…。 それと同時に、理不尽かもしれないが、僕は真紀ちゃんへの恋心はすっかり冷めてしまった… 何かのマンガで『女同士の殴り合いほど男の情熱を冷ますものは無い』なんて言葉を、まさにその通りだとこの時思った。
その後日、僕の母親を含めたマンションのママ友間で、2人の喧嘩は大いに問題と話題になったらしく、その日の夕食は早速その事を母親が話すと、僕に
「大体あんた! その場にいたのに、何で2人を止めなかったの!?」
僕が理由を言うと、母親は彼女達がした喧嘩の理由を、苦笑を交えて話した…。 あの2人は僕がこのマンションに引っ越す前から住んでいて、赤ん坊の頃から唯一無二の大親友だった… そこに、このマンションに引っ越して来た僕が2人の間に入ってしまった事が、大本の原因だと母親は断言した。 事の発端はこうだ… 僕と一緒につるむ内に密かに恋心を抱いてしまった美菜ちゃんは、度々その事を真紀ちゃんに相談していたらしい…。 そしてなんと、その真紀ちゃんに何の心境があったのかはわからないが、真紀ちゃんは美菜ちゃんになんの相談もなく僕に告白し、僕は何の事情を知らぬまま、その告白をOKしてしまったのだ! それが、あの喧嘩の真相だった…。 母親は苦笑しながら続けて
「その母親達さぁ… 娘が帰ってきたと思ったら、服も破れて泥だらけ、傷も何カ所も出来てて… しかも、泣いて帰ってきて! もう、心臓が飛び上がるくらい心配したみたいでさぁ…!」
それから数日後… 僕は真紀ちゃんから何となく距離を取り、2人の仲もあの喧嘩依頼仲良くなる事は一切なかった。
その数か月後に、僕は母の勧めで都心の私立小学校に受験させられ、それに見事合格すると、卒園式の数日後に両親は三鷹駅駅近のタワマンに引っ越したのだった… それ以来真紀ちゃんや美菜ちゃんともすっかり音信不通となってしまった。
だが… これらの女難は、僕が今まで受けた内のほんの一例である。 告白を丁寧に断ってしまったら逆恨みで変な噂を流されたり、容姿の醜い子からストーキングを受けたりする等…。 そして、男の子からは恋敵と称され殴られ蹴られるイジメは日常的に受ける事もあった…。 しかし、男は暴力だけかと思いきや、同じ男同士なのに告白されたり、強引に体を触られたり、突然の口づけ等… 思い出してあげたらきりがないし、思い出したくもない…。 今の今まで、ちょっとした本を書けるんじゃないかと思うくらい、様々な女難の厄災を受けてきたのだ…
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
そして、つらい女難と共に時は過ぎ去り… 僕は小学5年生になっていた… この歳になると流石に同年代は恋愛・お付き合いと言った関係に対して、TPOと言ったルールを意識し始める頃みたいで、前みたいな女難トラブルは無くなったとは言い切れないが、ずいぶん減ったと思う。 これから先は、無難で平和な日常がようやく送れると思いながら、日常を過ごしていた…。
そして、これは… 僕がやすらぎの里に行く、夏休み前… 6月初旬から7月初旬に掛けての出来事だった…。
応慶義塾大学付属初等舎…。 ここが現在僕が通ってる小学校である。 都心にありながら広大な土地に大学から幼稚園まで設置され、日本各地から優秀な者達が集められるのはもちろん、政財界のお坊ちゃま・お嬢様が通う、日本で一番有名な私立学校である… と、母親が説明してくれた。 僕はその5年3組のクラスに所属していて… その金曜日、帰りのHRにて
生徒「きりーつ! れい!」
生徒「「「「「「ありがとうございましたー!」」」」」」
お局と小姑がミックスしたような女担任の長々とした説教と注意事項を聞き、僕ら3組生徒はようやく教室から解放された… その生徒が続々と廊下に出ると、他クラスの友達であろう生徒が待機していて、合流すると途中までの駅や家までの帰路を共にした。 そして、僕も廊下を出て、ある女の子と待ち合わせをしており、その子を探している時だった…。
「おーい! 風間!」
後ろから元気な男の子の声がした… 僕はその声に振り向くと、2人組の男子が教室を出るのを待っていた。 僕を呼んだ者はこの学校唯一の友達である、5年2組の島田陽一と、その隣にいる人物は… 名の知らぬ生徒だ… いわゆる友達の友達ってやつだろう…。 僕は立ち止まると、島田は陽気な顔で
「待ってたぞ、一緒に帰ろうぜ!」
と誘われた。 ただ、僕はこの日… 帰る前にとある女生徒に用があったのだ… その子の名は栗宮智里(くりみやちさと)、5年1組に所属する生徒だ… 今日の帰りに、お互い借り合ったゲームを返し合うと約束したのだが、その姿が見つからない…。 僕は一応、2人にその事を伝えると、島田は興味なさそうに探し始め
「ふーん… ここにいないなら、忘れて帰ってるんじゃね? 1組のホームルームはとっくに終わってんだし」
すると、島田の連れの人は栗宮さんと同じ1組に所属するようで、こんな事を言い
「え、栗宮さん? その子、ホームルームが終わった途端、理科の先生から直々呼び出し食らってさ… あんま和やか雰囲気じゃなかったけど… 職員室か裏校庭にいるんじゃない?」
と、教えてくれた。 理科の先生は職員室よりも裏校庭にいる事の方が多いため、そう思った僕は早速2人に、裏校庭を見に行こうと伝えると、めんどくさい顔一つせず陽気に了承してくれた。 その裏校庭に向かう途中の廊下で、2人は賑やかにしゃべり合っていた… その時、島田は僕に話を振ってきて
「それでさ、ゲームって何借りたの? マリオ? ゼルダ?」
僕は随分昔に発売された、PS3のシヴィライゼーションレボリューションというストラテジー系ゲームソフトと答えると、案の定2人組は苦笑しながら
「お前、ほんっとそーゆー謎ゲー好きだよなぁ… なあ、知ってるか? その、シビライなんちゃらってゲーム?」
島田に話を振られた連れ人は、頭に?マークを浮かべながら
「うーーん… 聞いたことがあるような、ないような… やったことはないなぁ」
このゲームは超マイナーソフトと言うわけではないが、日本の子供達の認知度は極度に低い…。 なので、ゲームの会話がそこで終了すると、2人は自分達が所属するクラスメートの話題になり、あいつは変態とか、あいつは頭が良い、あいつはバカすぎ、等で盛り上がった…。 僕はそんな会話にあまり興味なく黙って聞いていたが、島田の連れ人が僕に恐る恐るこんな事を質問した… それは
「それでさ… 風間君… クラスの噂で聞いたんだけど… 今週の土曜日に、あの芦田愛菜さんからデートに誘われたって本当なの!?」
島田がそれを聞くと、ビビり驚きながら
「はぁ?! ええぇぇぇぇぇぇ!? あの学校でも日本でも超の付くほどの有名人じゃん!! お前どうやってetc」
と、言いかけた所で僕は軽く呆れながら
「そっちなわけないだろ… 5年1組の足田愛菜の方だよ…」
島田は安堵しつつ
「あ… なんだー、そっちの方の足田かよ… って!? そっちもそっちですごくないか!?」
安堵したり驚いたり忙しい島田だった… 連れ人は興味津々で僕に
「それでさ!? 君はどうなの!?」
僕は頭を?マークにしながら
「どうなのって… 何が?」
連れ人は何言ってんだよみたいな顔しながら
「足田さんの事、好きか嫌いか? 付き合うか付き合わないか? に決まってんじゃん!?」
僕はまた軽く呆れながら
「いや… 好きか嫌いか何て言われても、わかんないよ… まだろくに話したこともないのに…。 それに、デートとして誘われたんじゃなくて… 近場でお茶会みたいなイベントやるみたいで、そこに僕も誘われたってだけだから…」
連れ人はまだ興味津々になりながら
「いやだって!? 足田さんの方から誘われたんでしょ!? これ絶対脈あるって!」
興奮気味に話す連れ人に、島田は冷静にニヤけながら
「いや… 風間の言ってることも一理あるな! だってあの足田さんだぞ…? 男の2~3人キープしてたって、おかしな話じゃなないぜ?」
連れ人は首を傾げながら
「うーん… でも、足田さんって… そーゆー浮ついた噂って、まったくないんだよねー…。 だから、十中八九とは言えないけど、かなりの確率で片思いだと思うけどなー」
僕は困惑しながら
「僕は別に…! 足田さんの事、好きでも嫌いでもないし…。 あと、何て言うか… 高嶺の花過ぎると言うか…」
島田はわかったような表情で、ウンウンなんて頷くと
「やっぱそうだよなー… お前みたいな平凡な男に、あの足田さんと付き合うのは気が重すぎるよなー! わかるわかる…。 まあ、度量ある俺ならそんな事まったくないけどな!」
謎の自信に満ち溢れながら言うと、連れ人も笑いながら
「超絶美人で超名門家系の足田さんか… 容姿平凡気の合う庶民同士の栗宮さんか… 確かに迷うところだねー」
島田も笑いながら
「あ、そういやお前… 最近、栗宮さんともやったら仲良いって噂だぞー? ほんで、栗宮さんとの関係は、最近どうなんだよ!?」
僕は2人の言った異に呆れながら
「だからさー、その子とも、そんな関係じゃないっていつも言ってるだろ…。 クラスの女子とかもそうだけど、何で僕が女子と仲良くするだけで… あ、着いた」
そんな会話をしてるうちに、いつのまにか校舎を出て、裏校庭に着いていた… 裏校庭と呼ばれているが、みんなが思うような校庭ではなく、芝生とレンガ道で整備された小さな広場である。 校舎を出て向かい側には、学校の生徒・理科関係の先生方が管理・育成してる大きな植物園・生物園の施設があり、僕らが理科の授業などで度々出入りする場所でもある…。 僕らはその生物園に足を運ぶと、連れ人が指をさし
「あ! 栗宮さんいたよ! あと、横峯さんと安藤さんも一緒みたい…」
と言い、僕はその方角を見ると、栗宮さんと女生徒2人と、この施設群を管理する内の1人である理科の先生の前に並んでいた。 が、様子がおかしい… 島田はもそう思ったのか、連れ人に
「うん…? 何か、叱られてるっぽいぞ? 確かあの2人も、お前と一緒の1組だったよな?」
連れ人は困った顔をしながら
「うん。 あの3人… 何やらかしたんだろ?」
島田はバツの悪い顔をしながら
「いやでも、まいったなー…! あの先生怒らせるとメッチャクチャ長い説教が始まるんだよなー…」
島田がそう言うと、連れ人も同意しながら
「あ、わかるわかる…。 俺もうっかり理科の宿題忘れちゃってさぁ、昼休み丸々説教タイム食らったもん…」
そして、島田はまバツの悪い顔のまま話し続け
「俺も先週さぁ! 昼休みに友達とここで野球してたら、生物園の植木鉢割っちゃってさー…! 昼休みと放課後にメッチャクチャ長い説教食らって、しかも親にも連絡されてよぉ…。 あの理科の教師は、怒らせたらダメな教師№3に入ると思ってる」
あの理科の先生が面倒な人物なのは僕も同意した… 提出物の忘れ物や、何かをやらかしてしまうと怒鳴りはしないが、ブツブツブツブツと終わらない説教が始まるのである… でも、こんな所で野球をする島田達にも問題があると思うが…。 そんな事思いながら、女の子3人が説教を終わるのを待っていたが、かれこれ10分が経過した… 説教はまだまだ続きそうで、2人が退屈そうに待っている状況に僕は
「じゃあ、今日はもう帰ろうかな…。 ゲームを返すのは、また来週の月曜くらいしようって、メールすればいいと思うし」
島田もそれに同意し
「そうだな…。 時間的に言って、まだまだ説教は続くんじゃないか? 今日は帰って、忘れずにその事を連絡しとけばいいと思うぜ」
連れ人も苦笑しながら
「確かに、今日は帰っていいんじゃない? 説教が終わった後会うのも、何か気まずいし…。 ハハハ、それにしても… あの3人何をしでかしたんだか…」
そうして、僕達3人は帰路に就く事となった…。 僕達は校門を出て、駅まで歩きながら話し合い、上り線と下り線で別れると、すぐさま僕は先ほど話した内容をメールで栗宮さんに送ったのだった…。
・・・
メールを送ってから数時間後、現時刻は午後9時… 僕は夕食と風呂を済ませ、自室のベットで寝転びながら、スマホでニコニコ動画を ボォーッ と見ていた…。 すると、栗宮さんからの返事が今届いたのだ… 開くと内容は『すみません… 学校にゲームを持ち込むのはいけないから、日曜日の午後2時に、私の家で返し合いませんか?』と… そして、この続きの文章に『ついでにこの日… 風間君に大事なことを言わなければいけません』との文章が付け足してあった! 僕はこの文章に少しドキッとしながら
「え…? え!?」
何て言いながらベットから体を起こした… そして、僕はドキドキしながら『いいよ』とだけ返信すると、すぐに了承の短いメールが送られてきた。 僕はもう一度最初に送られたメールを読むと、スマホを置き
(大事なことを言わなければいけない…? 何だそれは…? ま、まさか…!! 告白!? いやいや! こんな突然してくるわけないだろ!)
そう思った数時間後… 例のメールが送られてから深夜なったが… 僕は寝ようとしても眠れなかった… 先ほど送られたメールが気になって気になって仕方がなかった…! ドキドキと鼓動を響かせながら、こんな事をゴチャゴチャと考え
(大事なことって… 告白か!? いやいやいや! まだそうと決まったわけじゃ…! いやでも文章的に言って、告白と言う解釈でほぼ間違ってないと見ていいし…。 でも、だとしたら! 僕は栗宮さんのこと好きってわけじゃないし…/// あ、でも嫌いでもないんだけどさぁ…/// いや、だからと言ってetc///)
この手の告白は入学してからも何度か経験したが、する側の緊張と勇気はもちろん、受け取る側もそれなりの緊張と気を遣うのだ… やはり、何度経験しても慣れるものではない。 僕はこの告白に緊張と思考を巡らせ、深夜になっても深い眠りを妨げられたまま、朝日を迎えてしまった。
・・・
土曜日の朝9時過ぎ… 昨日のメール内容でろくに眠れなかった僕は電車に乗って、学校すぐ近くにある、都心の広い公園を歩いていた。 だが、僕は来たくて来たわけじゃなく、ここで会うと約束した女の子がいたのだ… その子と会うため、その公園をウロチョロ歩いてると、少し高くなった陵丘の東屋から
「あ! 足田さん! 風間君来たよ! 風間くーん! こっちこっちーー!」
とある女の子から呼ばれると、僕は階段を上がり、その東屋に入った… 内部のテーブルと椅子は5人の女の子達に占領されていて… そのうちのリーダー格である、足田愛菜と言う女の子が僕の顔を見ると、ニコリと笑いながら
「ああ! おはよう風間君! 来てくれてありがとう! ここまで来るのに迷わなかった?」
僕はありきたりな言葉で答えると、足田さんは笑顔を崩さず
「じゃあ、風間君はこっちに座って! 一緒にお菓子を食べましょう!」
僕はリーダー格である足田さんに誘導され、その隣に座ると、取り巻きであろう女の子が僕に微笑みながら、高そうなお菓子を色々差し出され
「ケーキにクッキー、何でも好きなの食べてね! あ! この水筒は温かいコーヒーだから、これも好きに飲んでいいからね!」
たくさんのお菓子を目の前で広げられ、僕はありきたりな感謝の言葉を口にし、上級裕福層でかつ学園カースト頂点でもある、お嬢様方5名と僕、計6人のお茶会が始まった。
お茶会が始まると、5人の彼女達はお菓子をつまみながら賑やかなおしゃべりを始めた… 学校や勉強の事はもちろん、習い事、塾、クラスメートの事、最近の恋愛事情など多岐にわたったが、どの話題も頂点カースト女子+裕福層に相応しいハイグレードな会話で、庶民層+低カーストな僕はただお菓子を頬張りながら黙って聞く事しかできなかった。 …あれから30分位が経過し、僕は結構な値が張るであろう生クリームケーキを食べながら
(僕、さっきから全然会話できてないな… でも急に会話を振られたら… それはそれで困るけどさ…。 実は足田さんに、この手のお誘いを何回か誘われて、その度に断ってきたから、流石に1回くらいは行かなきゃと思って来たけど…。 足田さんはこんな僕を、何でこんな場違いな所に呼んだんだ? 昨日の帰りに2人が、足田さんは僕の事を好きだと噂してたけど… 本当にそうなのか? 今の所そんな兆候、全然ないけど…)
そんな事をグズグズ考えていた。 そして、隣に座ってる足田さんを僕はマジマジと見つめてしまい。
(それにしても… 本当に綺麗で可愛い子だな… 誘われた時、ちょっとだけ話して別れただけだから、こーやって近くでマジマジ見ると… ほんとに…)
学年一の美少女と言う称号は伊達じゃない… しかも、足田さんという女の子は学年でもトップクラスの学業成績を固持し、それでいて類まれな容姿にも恵まれ、最近はモデルとしても活動している…。 それだけではない、この子の姉も同じ学校に通っていて2人とも似たような超優秀生徒…。 そして、両親は学園のOBでもあり、しかも、母親は国会の大臣に就任する現職の政治家、父親はベンチャー企業の役員、その祖父母・親類達も負けないくらいの公共・民間企業の重役に就いている、正にスーパーエリート一族なのだ…! と、島田から聞いた。 そんな足田さんが、学園で平凡以下の僕を好きだなんて言う噂は、本当に噂でしかないんじゃないかと… 足田さんの経歴を思うと、本当にそれを再確認できる。
過去の女難で、色んな女の子達に言い寄られてきたが、足田さんみたいな本当に頭が良く、美人な子は寄ってきたりはしなかったし、危害を加えてくることもなかった。
(いや… そもそもさ…)
僕は足田さんの取り巻きの女の子達を見ながら、こう思った。
(そもそも、この子達も1組で… 容姿も学業も家柄も、足田さんレベルではないにしろ、それ相応の子達って事だ… この子達ですら、僕にとってはすっごい高嶺の花なわけで…)
ちなみに1組と呼ばれるクラスは、僕と島田が所属する2組3組とは違い、受験や試験等でトップクラスの成績保持者が所属し、学費免除の特待生を何十人も受け入れるような超秀才が集まるクラスだ… なので授業内容・時間、教員の質も他クラスとは大分違う。 このクラスの子達は、他クラスの子達に対して、差別してるってわけじゃないと思うが、一緒に遊んだりつるんだりすることは極端に少ないのだ。 なので、僕は劣等感と言うか、落ち込んだ気持ちになりながら
(そういえば、仲良くしてる栗宮さんも1組所属だし… ゲームがきっかけで仲良くなったけど、もし僕が栗宮さんに恋愛感情を向けたら… また話は違うんじゃないか? 昨日の夜、返信されたメールにドキドキしたけど、好きですとはどこにも書いてなかったし… いや、別に栗宮さんの事が好きってわけじゃないけど… もし、そうゆう感情を持ってしまって、拒絶されるのは… ちょっと残念だな…)
僕はこの女の子達をもう一度見渡してみると、ある人物に気が付いた… それは
(あれ…? そういえば… あの2人って…)
足田さんの隣に座ってた女の子2人… どこかで見覚えがあった…。 次の瞬間、どこで会ったのかを思い出し
(あ! そうそう! あのポニーテールの子と、お嬢様ヘアーの2人… 裏校庭で栗宮さんと一緒に理科の先生に怒られてた2人じゃないか?! 名前は何て言ったっけ…)
そんな事を思いながら、その2人の顔をジーッと観察すると、その様子を足田さんに見られてしまい、その事を問われてしまった。 僕はあたふたしながら、その2人に昨日の裏校庭の事について尋ねると… やはり、見間違えではなく、そのポニーテールの子はドキッと苦笑しながら
「あー…! 昨日のあの場、見られちゃったんだ…。 私と安藤さんと栗宮さんってね、同じ1組の生物係なんだ。 そこで、ちょっと… 色々やらかしちゃってさ… それで、理科の先生に長ーい説教を喰らいましてー、エヘヘ…」
と言うと、お嬢様ヘアーの子も苦笑した。 すると、足田さんは僕に、どうしてあの場にいたのかと問われ、僕はあの時の経緯を簡単に説明し、足田さんは興味がありそうに
「ふーん… 栗宮さんから借りたゲームを返しにねぇ… 風間君はゲームが好きなの?」
と、聞かれたので、ありきたりな返事をすると、足田さんは続けて
「へぇー… じゃあ、風間君は栗宮さんから、どんなゲームを借りたの?」
そして、僕は島田達に言ったように、シヴィライゼーションレボリューションなんて答えると、案の定5人は頭に?マークを浮かべた。 足田さんは苦笑しながら
「ごめんなさい… わからないな。 私達って、ゲームとかの知識はさっぱりなくて…」
僕も苦笑しながら、ですよねー何て相槌を打った… 足田さんは自身から一番端っこで座ってた子に、こんな事を話し
「あ! そういえば、中田さんはゲームに結構詳しいよね? その、知ってる? シビライゼーションってゲーム…」
中田さんと言う子は苦笑しながら
「ううん、知らないなぁ…。 いやさ… 私がゲームに詳しいのは、有名人のゲーム実況動画を見てるってだけで、実際にやってるわけじゃないから…」
ゲームの話題がそこで終わると、周りはシーンと静かになった。 僕はゲーム実況動画と聞き、この場を盛り上げようと、この5人組の女の子に好きなyoutuberは誰ですか?なんて聞くと、足田さんはちょっと申し訳ない表情で
「youtubeかぁ… 昔はよく見てたけど…。 中田ちゃんはHIKAKINとか、さっき言った狩野さんのゲーム実況動画見るの好きだけど、私達はあんまり見ないよねぇ…」
話しを聞くと、この子達の主流はyoutubeやniconicoではなく、陽キャ御用達のInstagramやtiktokと言った動画投稿サイトが主流みたいだった… もちろん僕は、それらのsnsを聞いたことがあるだけで、使ってもいないし、使う気も起きないし、有名人も知らない。 僕は心で苦笑しながら
(そもそも… 僕がyoutubeとniconicoで見てる物と言ったら、淫夢、ゆっくり実況、チートバグ、クッキー☆、ずんだもん… くらいしかないじゃないか…。 この子達にそんなジャンル話したって… 知るわけがないし、仮に知ってたとしても、盛り上がる様なものでもないし…)
そうして、また女の子達は自分達の会話に花を咲かせると、僕はそれをお菓子を方張りながら黙って聞いていたのだった。
・・・
ガタンッ ゴトンッ…
現在午後2時、僕は電車に乗って帰っていた…。 彼女達のお茶会は結構早めに終わり、5人ともこれから塾・家庭教師・習い事と言った様々な予定があったからだ。 塾に行く子は帰り際に苦笑しながら「はぁー! 今日も夜まで勉強だー!」と言っていたのを聞き、僕は呑気に車窓を眺めながら
(すごいなぁ…。 今日は土曜日なのに、塾に家庭教師に習い事… やっぱりあの子達は何の努力せず1組に入れたわけじゃないんだな…)
そう思った…。 僕は今日のお茶会を思い返して
(それにしても… 今日の僕は、足田さんにとって、どう見えたのかな?)
そんな事を思った次の瞬間、失笑してしまった… 何故なら、僕は続けてこう思い
(つまんない男… とでも思われたんだんだろうな… 何の会話も弾まなかったし…。 だって、僕はオタク趣味の陰キャで、足田さんは上位クラスの陽キャ… 話をしても聞いても、趣味も性格もまったく合う事はなかったし…。 もう今後、お呼ばれすることはないだろうな…)
僕は失笑するだけで、不思議と残念な気持ちにはならなかった… 何故なら僕は今日、足田さんと初めて親密になる場で会話をした結果、興味も相性もまったくの不釣り合いで、好意的な気持ちにはなれなかった。 同じ人間同士というだけで中身は別の生物と言ってもいい… 例え付き合う事は出来たとしても、そう長くは続かない気がする…。 でも、確かにあの子は頭脳明晰・類まれな美人であって、僕にとっては付き合えたら付き合おうかな… そんな感覚の子だった。 なんて、偉そうに足田さんを総評したが、恐らく足田さんも今日の僕を見て、僕に対する思いを180度変えただろう。
僕と足田さんとの関係は、今日で終わったと感じ、先ほどの茶会を思い出すのをやめた…。 そして、僕は明日の予定を確認すると
(そうそう、明日は午後2時辺りに栗宮さんの家に行って、ゲームを返す約束をしたんだよな…)
そんな事を思ったら僕は急に緊張してきた… 実を言うと、栗宮さんとは学校で交流はあるものの、その子の実家に行くのは初めてである…。 またまた実を言うと、僕は生まれてこの方、親戚以外の家に上がると言ったイベントは初めてで、しかも、女の子の家・部屋に入るとなれば緊張と少しの興奮でいっぱいだった…。 僕はスマホを出し、例のメールをもう一度確認すると、最後の文である『ついでにこの日は、風間君に大事なことを言わなければいけません…』と書かれた文章を見て… 僕は顔を赤くしながら
(大事な事… 大事な事って一体何だんだ!? この流れで言ったら、一つしかないんじゃないか!? 告白… ちょっと待て待て! 僕は栗宮さんの事嫌いではないけど… でもでも、恋愛感情の好きかと言ったら微妙なラインになる! OKという答えは出来ないし、かと言って断るのも… 正直なところ、良い友人関係でいたかったというのが正直な感想であってーー… あー! もう! どうしたらいいんだー!?)
実を言うと、今日のお茶会もこのメールが気になって仕方がなかった…。 そんな感じで、昨日の夜と同じように… いろーんな考えを巡らせながら帰路に就いた僕だった。
・・・
・・・・・・
ガタンッ… ゴトンッ…
足田さんが主宰したお茶会から翌日、日曜日の午後1時半… 僕は昨日と同じく、上りの電車に乗っていた。 だが… 昨日とは違い、心は妙にソワソワしていた… 何故なら
(何か気まずいと言うか、緊張するな… メールの事だってあるし。 栗宮さんって、どんな家に住んでるんだろう?)
前にも説明したが、僕は親戚以外の家に遊びに行くと言ったイベントを生まれてこの方したことがない… しかも女の子の家… しかも、告白されるかもしれないと言う状況… なので、妙なソワソワ・ドキドキは通常より4倍高鳴っている気がした…。
(応慶の1組だから… やっぱ、あの子も結構なお嬢様なのかな…? マンションに住んでるって言ってたけど、やっぱり5LDKクラスの広い高級マンションでetc)
なんて、ある事無い事妄想してると、三鷹駅から2駅通過したところある荻窪駅に着くと、そこに降り立った。 駅を出るとスマホを取り出し、伝えられた住所とマンション名と号室をGoogle地図で検索し、確認しながら歩く事20分… 栗宮さんの住んでるマンションに辿り着いた…。
(え…? ここ… だよな? 間違いないけど…)
古い年季の入ってる外観を除けば、どこにでもあるような普通のマンション…。 僕はもっとこう、豪華なマンションを想像したが
(結構庶民派と言うか… 僕と同じ… いや、僕が住んでるとこより…)
僕は頭を横に振り
(いやいや! そもそも私立学校の生徒だからって、全員が豪邸に住んでるって言うのは、ちょっとした偏見ってやつだろ! いや、それは今どうでもいい…)
そんな事を思いながら、そのマンションの玄関に入り、エレベーターで3階に上がって少し歩くと、305号室が栗宮さんの実家である。 僕はドキドキしながら、インターホンを鳴らすと
『はーい… どちら様ー?』
妙に色っぽいお姉さんの声が聞こえた…! ドキッ としながら表札を確認したが、確かに栗宮と書いてあった…。
(母親… にしては、妙に若々しい声だけど…)
そんな事を思いながら、インターホンの相手に栗宮智里さんを尋ねて来た事を伝えると『あ、はーい』と言われ、その数十秒後…
カチャッ
と、扉が開き、中からペラペラTシャツとペラペラ短パンだけを着込んだ、ボサボサ長髪のお姉さんかお母さんらしき人が出てきた… その女性は眠そうな顔で僕を見下ろし
「どうぞ…」
ボソッと言いながら、僕を招き入れた。 僕はその人を見ながら
(この人が母親… なのかな? いや、妙に若いし… 風体も母親って感じじゃあないし… お姉さんとなると歳が離れすぎてる気がするし…)
なんて思いながら、僕は愛想よく
「お、おじゃましまーす…」
ぺこりと頭を下げて家の中へと入った…。 家の中はさほど広くなく、室内全体が昼にも関わらず妙に薄暗い… 廊下・玄関は物がゴチャゴチャと置かれていて片付けられてないが、汚いと言った感じはない…。 だが、どことなく空気が悪く、女の人特有の甘い香りが漂った… と言うと聞こえはいいが、何とも表現しがたい臭いが充満していた。 僕は玄関で靴を脱ぎ、廊下を歩くと、先に歩いていたお姉さんが、栗宮さんがいるであろう部屋を開け
「智里ちゃん、お客さん来たよー」
とだけ言って、さっさと自室に入って行ってしまった。 僕はその部屋に入ると、とりあえず
「こんにちわー」
とだけ言いうと、机の椅子に座ってた栗宮さんは少し緊張気味で
「あ、こんにちわー…」
と言った。 いつもは学校でしか見ない栗宮さん… いつも見る制服姿とは違い… 髪の毛は寝癖が立っていて、よれた灰色のワンピース姿はなんとも言い難い雰囲気だった…。 そんな事を思いながら、僕は扉を閉め、適当な位置に座ると、部屋全体を簡単に見渡した… そして
(えー、すごいなぁ…! もっとこう… 女の子っぽい部屋を想像してたけど…!)
まず、そう思ったのは栗宮さんの大きな机には、女の子とはまったく不釣り合いの、どでかいPCモニター・キーボード・マウスが置かれ、その横の床には真新しいどでかいタワー本体が置かれていて、素人目でもかなりの高性能機だとわかる。 壁には英検準2級合格の額縁が飾られていて…! わかる人にはわかると思うが、応慶でやる小学5年の英語授業だけで到底受かるようなものじゃない… 流石、1組に所属するだけの事はある! 壁際の巨大な本棚にはかなりコアなゲーム雑誌・PC雑誌が置かれ、その隣にはジャンルを問わずに大小のPCソフトがズラーッと並べられている! 更にその隣の戸棚には、ゲーム機… 任天堂、Sony、マイクロソフト、セガ、その他ゲーム会社の家庭用ゲーム機が、最新機から初代まですべて揃えられいて、そのソフトの数は僕と父さんが所有してる数より遥かに超えているだろう…! しかも、ニンテンドースイッチに関しては段ボール箱に4機も無造作に置かれているが、これは一体? なぜ4機も持ってるんだ…? 初めて出会った時から、相当のゲーマーだなと思ったが、まさかここまでとは…! 僕はこの光景を目の当たりにし思わず
「す、すごい…! えっと! このPCとか、ゲームってさ! 全部自分のお小遣いで買ったの!?」
栗宮さんは頭を横に振り
「えーっとね… パソコンはお姉ちゃんのお下がり。 ゲームは… お小遣いで買ったものもあるけど、大体貰い物か、お父さんかお爺ちゃんに買ってもらったり… あと、近所のゲーム屋とネットとかで、安いのを買ったりもするかな…」
「パソコンはお下がりなんだ…。 いいなぁ、僕もPCゲームは興味あるんだけど、敷居が高くて…」
「そうだよねぇ… 安いのでも、子供が手を出せる値段じゃないから…」
僕は栗宮さんのPCタワーに近づき、しゃがみ込み
「この高そうな本体を、タダでもらえたんだ… 羨ましいなぁ…」
「さっきも言ったけど、これはお姉ちゃんのお下がりなんだ… 十年くらい前のね…。 だから、スペック的には今のゲームだとちょっと厳しくて…」
「お姉ちゃんって、さっき僕を案内してくれた人?」
「うん、その人がそう」
「あ… てっきりお母さんかなと思ったけど、お姉ちゃんだったんだ…。 でも、随分年の離れたお姉ちゃんなんだね」
「ああ… あの人は、いやお姉ちゃんは、お父さんが再婚したお母さんの娘さんなんだ… だから、歳が離れてるの…」
「ああ… そうだったんだ…」
ちょっとした会話のつもりだったが、あまり触れられたくないポイントを言ってしまったようだ… 僕は慌てて話題を変え
「あ、そうそう! 借りたゲーム返すよ! シヴィライゼーションレボリューション、面白かったよ」
と言いながら、僕は鞄からそのゲームを出した… そして、僕は続けて
「本当は金曜日に返す予定だったんだけど、栗宮さん裏校庭でちょっと野暮用があったみたいだから… 来週の月曜日にって思ったんだけど…」
栗宮さんは申し訳ない顔で
「ああ、ごめんなさい… せっかくの休日に、こんな所まで呼び出しちゃって…」
僕は笑顔で
「いいよいいよ、どうせ休日はいつも暇だし…」
何て答えると、栗宮さんは申し訳なさそうな顔で… だが、すごく緊張した顔立ちになり
「風間君… メールの後に『大事なことを言わなければいけません…』って覚えてる?」
僕は、胸が ドキッ! と高鳴り、来た…! なんて思い、緊張しながら
「うん、見たよ… あれ、何だったの?」
平然を装いながら言うと、栗宮さんはすごく言いづらそうな口ぶりで
「風間君… えっと… 私… 私さぁ…」
「うん…」
僕の鼓動は ドクン… ドクン… と、高鳴るスピードが速くなった…。
(やっぱりこれは… 栗宮さんからの告白… なのか!? もし、告白だったら… どう答えれば!?)
このメールが届いた金曜の夜から、今この場に至るまで… 栗宮さんの告白にどう答えようかと、必死に自分自身と問答し思索したが、結局答えは出なかった。 何故なら、僕にとって栗宮さんは大切な友達ではあるが、恋人になるかまでは微妙なラインがあった… 別に栗宮さんに不満があるわけではないが、友達と恋人という関係は、全く違うのはよく知っている…。 この告白にyesかno… 仮にだ… yesを選んだとして、今後も友達のようには接する事ができるが、恋人として見られるのか? キスとかもする関係になるわけだが… 栗宮さんとそうゆう事ができるのかは… 正直答えかねる。 noを選んだとして… 今後会ったりするのは… 気まず過ぎる…。 あらゆる事態を想定して、どう返答・行動したって、友達のような関係が続くとは思えなかった…。
(これも女難の一つでもあるのかな… 栗宮さんとの離れ離れになってしまうのか!? こんな事なら栗宮さんが男だったらよかったのに…! どう答えれば…!?)
そんな事を思った瞬間、栗宮さんは席を離れ、本棚をガサゴソ漁ると、僕が貸したゲームを差し出された… それは、PS3のスーパーロボット大戦Z… 栗宮さんは悲痛な表情で
「ごめんなさい! 風間君のソフト… うっかり壊しちゃったの…!!」
…その言葉を聞いた時、僕はポカーンとした表情で
「…え?」
と答えると、栗宮さんは引き続き悲痛な表情で
「本当にごめんなさい!! 壊した時、弁償して新しいのを買おうと思ったけど… 先にお姉ちゃんに相談してね… まずは謝ろうって… それで、風間君の話を聞いてから決めようねって…」
僕はポカーンとした表情をしながら、貸したゲームソフトを手渡されたが、ぱっと見どこも壊れてる個所は無い… 僕はどこが壊れてるの? と言おうとしたが、ソフトを縦にすると、角辺りが割れていることに気づいた…。
「あー… 確かにちょっと割れてるね。 え? 大事な話って… これだったの?」
栗宮さんは申し訳ない表情で、ゆっくり頷いた。 僕は今までの重い思い込みから解放され、急に笑いが溢れてしまい
「な、なんだー…! そんな事だったのかー…! 大事な話って言うから、僕はてっきり…!」
「え、えと… てっきり、て… 何だと思ったの?」
僕は慌てて頭を横に振り
「いや! なんでもない…」
栗宮さんは再び申し訳ない表情で
「ごめん… 借りたもの壊しちゃうなんて… 絶対こんな事しちゃいけないのに…」
僕は少し笑いながら
「いや、そんなに気にしないで… これ、GEOのワゴンセールで買った、激安中古ソフトで… それに、もうやる予定もないし… 弁償なんかしなくたっていいよいいよ!」
「ほんとに… ごめん」
僕はケースが割れたゲームをバッグの上に載せた。 僕は栗宮さんに
「そんなことより、このスパロボどうだった? 栗宮さん、戦略ゲームが好きって聞いたから、こうゆうのも好きかなと思って貸してみたけど…」
栗宮さんは少し笑顔になりながら
「うん… 楽しかったよ。 元ネタはガンダムとエヴァしかわからなかったけど…」
僕達は自分たちが借り合ったゲームの感想を軽く話し合い、それが終わると、僕は時計を見て
「そういえば… もう、やることは済んだけど… これから、どうしよっか?」
栗宮さんは考え込みながら…
「そう、だね… 私はこの後、何も予定ないし…。 風間君はどうする?」
「そうだな… 僕も帰ったってすることないし…。 じゃあ、もうちょっとお話でもして… ゆっくりしようかな」
そう言うと、栗宮さんは笑顔で
「うん! あ! じゃあさあ! 何か飲み物とか持ってきた方がいいよね! 何飲む?」
「ああ、ありがとう。 何でもいいけど… お茶とかでお願い」
「うん、じゃあ早速持ってくるね!」
そう言うと、栗宮さんはウキウキしながら台所へと向かい、その数分後… お盆に大きなグラス2つに、氷入った冷えたお茶を差し出された。 僕達はそれを飲みながら和やかに談笑したのだった… 談笑は多岐にわたり、学校行事・今月発売するゲーム・めんどくさい係など様々な事を話していると、ふと話題は金曜日の裏校庭での話になった…。 栗宮さんは不思議そうな顔をして、私がどうして裏校庭にいるとわかったの? と、問われると、僕は1組の子から聞いたと伝え、栗宮さんは納得しながら難しい顔をした。 僕は続けて、あの場で何があったの? と、何気なく聞いたが…
(あ、そうだった… 昨日のお茶会でそれ聞いたっけ… 確か、3人で何かやらかしてしまって、それで理科の先生に怒られたって言ってたな…)
その事を今急に思い出したが、時すでに遅し… 栗宮さんは少し困惑した表情で語った。
「ああ、それね…。 私、1組の生物係なんだ。 朝と昼と放課後にウサギさんのエサやりと小屋の清掃が担当でね、理科の先生に怒られた前日が、私の担当だったの。 だけど、その日の朝と昼の当番をうっかり忘れちゃって、昼食終わった後に理科の先生に呼び出されて… ちょっと怒られちゃったんだ…」
「え? じゃあ、2回続けて理科の先生に怒られてたの? 大変だったねー…」
「ううん、私が悪いの… うっかり忘れたのは私だから…」
「まあ、うっかり忘れちゃうことは誰でもあるから…」
「うん… この時はしっかりしなさいって怒られただけで… 放課後はしっかり頼んだよって言われたんだけど…」
「そうなんだ…。 うん? もしかして、放課後も忘れちゃったの?!」
「うーん… 結果的にそうなっちゃったと言うか…」
そう言うと、栗宮さんはちょっと顔を赤くしながら困惑した表情を見せた…。 僕は頭に?マークを浮かべながら
「結果的に…? どういう事?」
「うーん… ちょ、ちょっと汚いけど… 放課後は行ったんだよ! 裏校庭に…。 で、ウサギ小屋に着いて、早速エサやりと掃除を取り掛かろうと思ったんだけど… この時、すっごいお腹が痛くなっちゃって、慌てて近場のトイレに駆け込んじゃったんだ… で、結構長く籠もっててさぁ…」
「ああ… ドバァーッ!って出てくる感じじゃなくて、籠もらなきゃいけないタイプの…?」
栗宮さんは顔を赤くしながら頷き、僕はこう言い
「そっか…。 それで、ついうっかり忘れちゃったんだ…」
すると、栗宮さんは頭を横に振り
「ううん! 忘れてないよ! 続きがあるの…。 それでね、結構長くトイレに籠もってたらさぁ… 一緒のクラスの生物係だった横峯さんと安藤さんが、やってきてね『ウサギ小屋のエサやりと清掃は私達がやっといたから、栗宮さんは帰っても大丈夫だよ』て聞いてね… それを聞いて、私帰ったんだけど…」
「横峯さんと安藤さん…? ああ、あのポニーテールの子と、お嬢様ヘアーの子でしょ?」
「うん…。 えっと、その2人知ってるの?」
「いや、名前だけ知ってるだけ… あの、足田さんと常に一緒にいる、あの子達でしょ?」
「うん…」
(と言うか、昨日その子達と会ってきたんだけどね…)
僕はそう思うと
「ふーん… あの子達が、栗宮さんの仕事を代わりに手伝ってくれたんだ…。 いや、ちょっと待てよ…?」
栗宮さんは戸惑いながら、頭を横に振り
「確かに私… 横峯さん達から、そう聞いたんだけど… 横峯さん達… 何もやってなかったの… エサやりも掃除も何も… チェックリストにすら記入してなかったんだ…。 それで、次の日の他のクラスの係が、その事を理科の先生に報告してね… その帰りに私1人が呼ばれたんだけど… さっきの事を説明したら、横峯さんと安藤さんも呼ばれてね…」
なるほど… つまり、僕達が裏校庭に来たのは、その辺りか… なんて思っていると、栗宮さんは困惑した表情で話し続け
「横峯さんと安藤さんが呼ばれたんだけど、先生が私の言った事は本当か? て、2人に聞いたの… そしたら…」
僕は話をここまで聞いて嫌な予感しかしなかった…。
「2人はね… そんな事言った覚えはないって… 言ったの」
やはり、こんな展開か… と思ってしまった。 僕も話された状況に困惑しながら
「ええぇ… どうゆう事なんだ?」
「おかしいよね! 私がトイレに籠もってる時、確かに2人からそう言われたんだよ! でも… 横峯さんと安藤さんはそんな事一言も言ってないって… 私… もう意味が分からなくて…」
僕は数十秒考えこみ
「どちらかが… 勘違いしちゃったのかな…? トイレに籠もってる時、その声の人は、本当に横峯さんと安藤さんだったのかな?」
「…状況的に他の人と勘違いしたとは考えにくいけど、そうだったのかな?」
「えぇーっと… 栗宮さんの言った通りなら、全然悪くないどころか、被害者だよ! やっぱ、説教は長かったの?」
栗宮さんは申し訳なさと困惑が混じった表情をしながら
「うん… 動物の命に関してとか、仕事に関してとか、いっぱい説教されちゃったね… 1時間くらい…」
「そりゃ… 大変だったね。 横峯さんと安藤さんは、その後何かあったりした?」
「うん、2人ともカンカンに怒ってた…。 横峯さんは大事な用事があったみたいでさ… 説教が終わった後に、後ろから蹴られちゃった… アハハ…」
「蹴られた!?」
「あ、いや! その、ちょっと軽く蹴られちゃっただけだから! コツンってね…」
「えっと、ケガとかは…」
栗宮さんは無理して笑顔を作りながら
「してないしてない! その辺は何も心配しなくていいよ!」
「そうなんだ…」
(まあ確かに… 栗宮さんの言った事がまったくの嘘っぱちだったら、横峯さんの怒りもわかるが、何も蹴らなくたって… うん? いや待てよ? 何かおかしいぞ?! 確か…)
僕は昨日、横峯さんと安藤さんから裏校庭での出来事をじかに聞いた言葉を思い出した… 『安藤さんと栗宮さんと私ってね、同じ1組の生物係なんだ。 そこで、ちょっと… やらかしちゃってさ… それで、理科の先生に長ーい説教を喰らいましてー、エヘヘ…』と言っていたのを思い出した。
(おかしいな…? 栗宮さん言った通りなら、3人でやらかしちゃった… 何て笑いながら言わないだろ? ブツブツ腹を立てながら、栗宮さんの勘違いに巻き込まれた… て、愚痴るのが普通なはずだ。 横峯さんと安藤さんは嘘を付いてるのか? それとも…)
僕は、お互いの主張がまったく嚙み合ってない事に不安を覚えた…。 すると、栗宮さんは暗く悲痛な表情で、目に涙を浮かべながら
「私ね… いっつも、こんな失敗ばっかりなんだ…。 どうしてかなぁ… 自分が嫌になるよ…」
そう言って、栗宮さんは机に突っ伏してシクシク泣き始めた。 僕は考察するのを止め、慌てて慰める言葉を掛け
「いやいや! 失敗は誰にでもあるから… それを糧に次につなげれば… いいんじゃない?! 僕も小さい時は、かなりのドジな子でさぁ! それで、母親からはetc」
「…」
そんなありきたりな励ましを言ったが、栗宮さんはうんともすんとも言わなかった…。 僕はその場で何もせず座ったままでいるしかなかった… が、その数分後、何とかこの場を盛り上げようと
「あ、そういえばさ! 向こうにあるニンテンドースイッチって、何で4機もあるの? もしかして… これも、全部買ってもらったの!?」
栗宮さんは頭を上げると、こっとを向き
「ああ… これはね、自分で買ったものもあるけど、故障したやつをもらったり、ジャンク品を安く買ったりしたから… そんなに出費はないかな…」
僕はスイッチが入った箱に移動してしゃがみ込み、汚れたスイッチを手に取りながら
「ふーん… 故障したやつもあるんだ…。 でも、そんなのを貰ったってプレイできなくちゃ意味なくない? 売っても大したお金にはならないし、そんなのを4つも集める理由って…」
「ああ、故障したやつは全部修理したよ」
「全部修理かぁ… 僕のスイッチもジョイコンが両方壊れちゃって、保証期間が過ぎてから2回も有償修理してさぁ… お父さんに大事ににしないからだって、結構怒られて…」
「あー、かわいそう… ジョイコンってほんっと壊れやすいからねー…。 でも、私は全部自分で修理したから、そんなにお金は掛からなかったけど…」
僕はその発言を聞いて驚きながら
「え…? 故障したやつ、全部自分で修理したの!? 誰にも頼らずに!? 全部ちゃんと動くの!?」
栗宮さんは当然じゃない、みたいな顔をしながら
「う、うん… 全部1人でやったし、全部ちゃんと動くよ? あ、流石に必要なパーツとかは買ったけどね…。 カスタマー修理って結構高いから…」
「すごい! ゲームって、自分で修理できるもんなんだ…!」
僕は今までこの手の精密機器は、専門家だけが修理できると思い込んでいて、栗宮さんみたいな女の子が修理できるなんて頭の片隅にも思わなかった…。 すると、栗宮さんは椅子からスクッと立つと、スイッチの箱に移動ししゃがみ込んだ… しゃがみ込んだ時、栗宮さんはスカートで、真っ白なパンツが見えてしまい、僕はドキッとしながら、なるべく目線を下に下げないようした…。 そんな事も知らず、栗宮さんはスイッチを次々手に取りながら
「あとね…! 4つともただ持ってるわけじゃないんだよ! これは、普通にオンラインとかでプレイするやつで… これとこれは、改造用のやつ! …もう一つは予備かな」
僕はパンツに興奮しつつ
「ああ、改造って… いわゆる公式が許可してるMODってやつ? あれ? でも、スイッチのMODってそんなに充実してたっけ?」
「MOD… 似たようなものだけど、ちょっと違うかも…。 任天堂はそうゆうシステム受け入れてないから…」
「そうだよね… そしたら、改造ってどうやってやってるの…?」
すると、栗宮さんはCFW導入だRCMツールだHEKATEだとか、プログラム用語なのかITツールなのか、聞いたことも無い専門用語が次々と飛び出し… 僕は終始チンプンカンプンだった。 その説明が終わると、僕はそれらを導入したら具体的に何ができるのかを聞いてみた。
「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドってゲームって知ってる? 武器の耐久値を無限にしたり、スタミナを無限にしたりして、遊んだりしてるよ」
僕は驚きながら
「え…? ブレスオブザワイルドでチートって… それ結構ガチな改造じゃない!?」
ゼルダの伝説シリーズでもある、ブレスオブザワイルドと言うソフトは、実は僕も所持しており、もちろん全クリしている。 だが、栗宮さんの言ったようなチートコードを導入するのは普通の人ではまず無理だ…。 僕も過去にネットでそんなチートコードがあると聞き、色々調べて実行しようとしてみたのだが… てっきり、スカイリムのMODみたいな簡単なものだと勘違いしていて、結局できなかった。 技術的にできたとしても、スイッチが故障・破損しても自己責任という警告文を見てしまい、やるわけにはいかなかった…。 何故なら、普段僕が使ってるスイッチは、お父さんの所有物でもあり、ちょくちょく自分のソフトを入れては遊んでいるのだ… もし、こんな事を試して故障でもしたら、怒られるどころでは済まない。 この手の改造はネットだと幾らでも聞けるが、僕の周りでその改造をして成功していた人がいて、しかもその人が同級生の女の子だなんて信じられなかった… 栗宮さんは自慢気に続けて
「あとね! スプラトゥーンのチートコードなんかもあって、それも試しに導入してみたんだ! そしたら、一瞬で領域を自分のカラーにしちゃってさぁ! もう無双状態でさ! ウフフフ」
スプラトゥーンと言うゲームはやったことはないが、どうゆうゲームかは知っている… なので、僕はまた驚きちょっと引きながら…
「え… それって… 結構、黒に近い改造なんじゃ…」
「あ! でも! オンラインでは絶対やらないからね! そこらへんは弁えてるから!」
僕はこの後、改造ゼルダと言うものをやってみたいとお願いしてみたが、栗宮さんはちょっと難色を示した。 理由を聞くとアプデ回避やらスペック上の問題や故障等と言った、バニラ状態のように必ずしもやりたい放題できるわけでもないらしい…。
だが、PCゲームはまた別みたいで、栗宮さんは僕にスカイリムをプレイさせてくれた… 机の椅子、いわゆるゲーミングチェアに座ってスカイリムを起動すると、とあるセーブデータをプレイさせてくれた… 感想は
(おおぉ…)
だった…。 この改造大好き栗宮さんのスカイリムである… 原形がわからないほどMODが追加され、まったくの別ゲーと化しており、見たこともない城塞都市、見たこともない武器、見たこともない鎧、見たこともないテクスチャー、見たこともない味方(美男子)… 突っ込みたい個所は山々とあるのだが、僕が注目したのは
「あれ? これ、字幕と音声が全部英語だけど… いつもこれでプレイしてるの!?」
栗宮さんは当たり前じゃん、何て表情をしながら
「うん… MOD入れると、どうしても英語化は避けられないよ。 しかも、これは海外の人が作った大型MODクエストだから、ほぼ全部英語だね…」
「つまり… 言ってる事と書いてある事を全部理解してゲームを進めてるわけ!? すごいなぁ! あそっか… 栗宮さん、英検準2持ってんだもんね… このくらいの英語だったら、大したことなかったりするの?」
栗宮さんは頭を横に振りながら
「ううん! 私も全部が全部理解してるわけじゃないよ。 英語圏のスラング用語なんかはよくわからなくて、結構スマホで調べて、ようやく進める程度だから…」
「それでも十分すごいよ…。 僕なんか英語を見ただけで、もうやめたくなっちゃうもん…」
「なら、私1回クリアしたし、わかんない所があったら教えてあげるね」
「うん、ちょっとプレイしてみるね…」
僕はキャラを操作しゲーム内のステージを見渡してみた… どこまでも続く石畳の道、丸い城塞都市の中央には壮麗な白い塔… 僕もスカイリムをプレイしており、DLCもやり込んだが、こんなステージは見たことも聞いたこともない… が、どこかで見覚えがあるのだ…。 僕はこの感覚を栗宮さんに
「それにしても… ここってどこなの? スカイリムにこんなステージあったっけ? あと、この城塞都市… 何かのゲームで見覚えがあるんだよね…」
「これは大型MODだから、原作にはないよ。 あと、風間君はオブリビオンってゲーム知ってる?」
「ああ、そっか! 何か見覚えがあると思ったらオブリビオンの帝都か! 確か、オブリビオンとスカイリムって同じ世界観なんだよね… で、これは何のクエストなの?」
「これはね、サルモールが大軍勢を率いてタムリエルに侵攻してきて、首都のシロディールまで迫って来て、それを防衛して撃退するっていうクエスト、なかなか面白かったよ」
「へぇー、MODってチートとか美少女作るだけじゃないんだ…」
そこから僕は栗宮さんの翻訳で、司令官から色々な準備クエストを通過すると、いよいよ大平原での合戦シーンとなった。 帝国軍・サルモール軍の大軍勢が平原で大衝突するシーンは壮大で、僕の操作するキャラも一帝国兵士としてサルモール軍と戦ったのだが… 自キャラの装備してる剣と鎧はいわゆるチートMODで、戦国無双並みに敵兵を薙ぎ払い無傷で進んで行くと、敵軍の司令官が現れ、そいつを倒すとあっさりクリアしてしまった。
…その数十分後、僕は栗宮さんにあるゲームを勧められ、TVモニターにPS2を繋ぐと、『ガチャろく』と言う、僕でさえ知らないような謎ゲーすごろくソフトをプレイすることになった… が、これが意外に面白い…。 Sony版マリオパーティとでも言った方がいいか? ターンが終わると数々のミニゲームがあり、NPCを相手に栗宮さんと味方になったり敵になったり… 白熱したバトルは大いに盛り上がった…。 やはり、先ほどまでやっていたMOD洋ゲーと言うジャンルは、1人で黙々と楽しむものであって、複数人で遊ぶものではないな… と、思いながら遊んだ僕だった。
・・・
長く白熱したすごろくゲームが終了し、僕はふと時計を見ると、時刻は5時半を回ろうとする頃… 僕は慌てながら
「あ! もうこんな時間か…! じゃあ、僕そろそろ家に帰らないと… 6時が門限だから…」
そう言ながら立ち上がった… 本当はこんな長居する予定はなかったのだが、趣味が合う者同士で様々なゲームを語りやっていたら、あっという間にこんな時間まで滞在してしまった。 すると、栗宮さんも立ち上がり、窓の外を眺めた… 僕も窓の外を眺めると、空はオレンジ色の夕焼けだが残り、太陽はすでに沈んだ後だった… あと4~5分もしない内に外は真っ暗になる空で、それを栗宮さんは心配したのか… 僕に
「外真っ暗だけど大丈夫? 駅まで送ってあげようか?」
僕は部屋の片隅にやった肩掛けバッグを手に取りながら
「いいよいいよ! 来た道を戻るだけだから」
僕は肩掛けバッグを肩にかけようとすると パタン と、栗宮さんに貸したスパロボソフトが落っこちた… 僕はそれを拾うと、無意識にもう一度壊れてる個所を見てしまった… ソフトケースの角がちょっと割れているのは変わらない…。 その様子を見た栗宮さんは申し訳ない表情で
「そのソフト… ほんとにゴメンね…」
そう言い、僕は笑顔で
「さっきも言ったけど、そんなに気にしなくたっていいよ… ぶっちゃけて言うと、そーゆートラブルも想定して貸してるから…」
「だとしても、壊したくはなかったな…」
栗宮さんは変わらず申し訳なさそうに言った…。 そんなに申し訳なく思うなら、何故このような粗相をしてしまったのか… 僕はちょっと興味が湧いてしまい
「ぱっと見、足で踏んずけちゃったような壊れ方だけど…。 そんな感じかな?」
なんて聞いてみると、栗宮さんは違うとばかり頭を横にブンブン振り
「ううん! 人の借り物を、そんな風に扱わないよ!」
強く否定された… なので、僕は
「じゃあ… これはどーゆー風に壊しちゃったの?」
「あ…」
そう言うと、栗宮さんの表情は少し固まった… 僕は頭に?マークを浮かべながら
「どうしたの?」
と言うと、栗宮さんは困惑した表情でゆっくり語りだし
「あのね… さっき話した… 私が裏校庭で説教が終わった後、最後に蹴られたって言ってたでしょ…?」
「え? うん…」
「その時の蹴りが、ランドセルに当たってね… バキッ! て、嫌な音がしてさ… 家に帰って確認したら、入れてたゲームソフトが割れてたの…」
「いや、ちょっと待って… それって…!」
僕はずっとこの蹴りに関して勘違いしていた… さっきまで思い描いていた想像では、足のつま先でコツンと蹴られた姿を想像をしていたが、実際の話では暴行に相当するような強い蹴りである! しかも、ランドセルに入れていたゲームソフトのケースが割れるほどの強い蹴り、思いっきり前に倒れる栗宮さんの姿を想像してしまった…。 なので、僕はびっくりしながら
「がっつり暴力じゃん!? その事、先生に言ったの…!?」
栗宮さんはオドオドしながら、頭を横に振り
「いや… 言っては無いけど…」
「それは、言った方がいいんじゃないかな…。 ゲームソフトどころか、大怪我してた可能性だって…!」
「ケガはしてないよ… ちょっと、擦りむいちゃっただけ…」
それを聞いた僕は次の言葉を発しようとしたが、間髪いれずに栗宮さんはしゃべり続け
「それにさ! さっきも言ったけど、あれは私が悪いの…! 私の勘違いで横峯さんと安藤さんを巻き込んじゃったから…」
「でもそれって、違うんじゃないの? だって確かにあの時、トイレで横峯さんと安藤さんの声を聞いたんでしょ? なのに…」
「ううん、それは… それはもういいの…。 本当の事はもう誰にもわかんないし、今更それを解明してもさ…。 実を言うと、蹴られた事が問題じゃないの… このせいで、風間君から借りたゲームを壊しちゃって… 私、それがずっと申し訳なくってさ… 本当にどうしようかって迷って… でも、風間君は許してくれて…」
「そう… なんだ…」
まあ、栗宮さんがそう言うなら、僕があーだーこーだ騒いだって仕方がない…。 ただ、僕は一連の話で栗宮さんの身に不安を感じた… 横峯さんと安藤さんにイジメられてるんじゃないかと…。 正直、僕も女難の関係を含めて、この手のイジメは1度や2度ではない…。 僕は心配しながら栗宮さんに誘導され、部屋を出ると、廊下を歩き、栗宮さんは苦笑しながら僕に
「やっぱさ、学校でゲームの貸し借りはやめにしようよ。 こーゆートラブルもあるし… そもそも、学校にゲームを持ち込むこと自体、いけない事だからさ…」
「そうだね… ばれて没収でもされちゃったら、元も子もないもんね」
「だから、この日みたいな休日に貸し借りしようよ。 それなら、誰にも邪魔しないし…」
「うん、でも… 学校で貸し借りした方が楽でよかったけど… その方が良いね」
僕はそう言いながら玄関に着くと、靴を履き、扉を開け、通路へと出た… 栗宮さんも靴を履き、玄関で扉を抑えながら笑顔で
「じゃあ、また遊びに来て! またゲームいっぱいしようね!」
「うん、お邪魔しました。 じゃあ、また明日学校で」
「うん! さよならー!」
栗宮さんはにこやかにそう言って、扉を閉めようとした… その時、右のお隣さんの扉が開く音が聞こえ、栗宮さんが扉を完全に閉めると同時に、僕と同い年の女の子が廊下に現れ、扉を閉めた。 僕は女の子の方角にあるエレベーターへと歩き、その子にお辞儀をした瞬間… 何とその女の子は
「あら? 風間君じゃん!」
「え…? えぇ!?」
その子から声を掛けられたと同時に、僕の名前を知っていた… 当然、僕はこの子に見覚えはまったく無い… なので、通常の2倍程びっくりしてしまった。 その子はそんな事も知らずに
「てか、風間君… 栗宮さんの家から出てきたように見えたけど… 何をしてたの?」
何てペラペラ喋ってきて、同じ学校の生徒であるのはわかったが、同じクラスの子でない事ははっきりしていた… 僕は動揺と申し訳なさそうな顔をしながら
「え? えと、あの… どちら様ですか?」
何て言うと、女の子は苦笑しながら
「ちょっとー! ほら! 昨日、足田さんとお茶会した、三浦だよ! 三浦久美子! 忘れないでよー」
「三浦さん…? あ! あ、そうだった! ごめん… 僕、人の顔を覚えるのは得意じゃなくて…」
今この瞬間ようやく思い出した… 三浦さんは1組に所属する足田さんの取り巻きの1人で、この子も昨日のお茶会に参加していた。 三浦さんも他の取り巻き達と引けを取らない美少女なのだが、それ以外に外見的な特徴は無く、すっかり忘れてしまっていた。 その三浦さんは興味津々に
「まあ、それはいいんだけど、風間君さっき… 栗宮さんの家から出てきたよね?」
そう言われたので、僕は栗宮さんの家に来た経緯を簡単に説明すると
「へぇー… ゲームを返しに行ったついでに、一緒にゲームをして楽しんでたんだ… ふぅーん…」
三浦さんは真顔で考えを巡らせていたようだが、次は僕が質問し
「そういえば、三浦さんもこのマンションに住んでたんだ。 やっぱ、栗宮さんとも結構顔合わせたりするの?」
何て言うと、三浦さんは苦笑しながら頭を横に振り
「え…? ううん! ここはただの勉強部屋! 私、実家は中野区だから」
僕は言っている意味と状況がよくわからなく…
「え…? 勉強部屋…? いや… 勉強部屋って、普通自分の家の部屋がそうじゃないの? ここは、部屋と言うより立派なマンションであって…」
すると、三浦さんはこんな事を言い。
「ああ… ここはね、家庭教師を来させるために両親が契約したの。 お母さんって自分の家に他人を招き入れるのがすごく嫌な人でさ…。 あと、漫画とか本とかテレビとか、そんな誘惑を断つためって理由もあるみたいだけど… 今時、何でもスマホでできる時代に、そんな意味ないんだけどね! アハハ…」
最後に苦笑すると、僕は真顔で
「へぇー… そうだったんだー…」
子の勉強部屋に賃貸を借りる親なんて聞いた事が無い… が、三浦さんは応慶の1組… 両親のそれなりの富豪か高給取りで、ここの賃料何てはした金なんだろう… そう思うと、あまり驚きはしなかった。 そして、僕は三浦さんに
「じゃあ、僕は帰るね…。 三浦さんも買い物とで外出したの?」
「ううん、私はただ外の空気吸いに出ただけ…。 じゃあね、風間君」
「うん… じゃあ、また明日学校で…」
とは言っても顔を合わせる機会はなさそうだが、とりあえずそんな挨拶を言った僕だった。 すると、三浦さんは笑顔で僕に手を振り、エレベーターに乗るまでジーっと見送られた。
マンションを出て駅まで歩いていた僕は気分が良かった… 昨日のお茶会なんかよりも遥かに楽しかったからだ。 趣味が合う者同士、ゲームをしたり色々喋ったり… 最初は緊張していたが、時間が経つにつれそんな症状は何処か遠くへ飛んでしまった。 やはり、人付き合いというものは、気の合う人、気の合わない人… がいるのは、当たり前のことなんだなと、今日気づいた僕だった…。 そこで、僕はふと栗宮さんとの初めての出会いを思い出した…。
…あれは1年前の冬頃、当時小学4年生だった僕は校外学習と言う名で、とある博物館に来ていた。 長く興味のない学芸員の講義からようやく解放されると、展示品を見て回ったのだが、国宝の壺やら掛け軸やら流し見しても何一つ心に響く物はなく、気が付くと僕は博物館入口のベンチに座り、anno1800と言うCS版ソフトに入ってた大きく分厚い説明書を読んでいた…。 これはRTSと呼ばれるジャンルのゲームで、買って来たのは父親だった… 父親は早速プレイしてみた所、システムがお気に召さなかったようで、すぐ飽きてしまった。 僕も暇つぶしでプレイしたところ、父親とは逆にこのゲームどはまりしてしまった。 今ではこれが愛読書のようなもので、町が発展するような様々な鉱山資源・農産物・工場・牧場を確認しては、あれこれと思考するのが楽しく、暇な時は大体これを眺めるのが日課であった…。 すると、そこに
「あ、anno1800だ」
そんな女の子の声が右横から聞こえ、僕は驚いて振り向くと、その女の子が説明書を覗き込んでいた… その子が栗宮さんだったのだ。 僕は応慶の生徒で、しかも女の子という点が僕を2倍びっくりさせた…! 何故そうなったかと言うと、僕以外の応慶生徒はゲームと言う娯楽をあまりしなく… していたとしても所謂マリオ・ゼルダ・スプラと言った国民的ソフトしかプレイしないからだ… 僕はその子にこう言い
「このゲーム知ってるの?」
何とこの子は、このゲームをただ知ってると言うだけじゃなく、歴代のannoシリーズを英語版問わず、すべてプレイし網羅していた…! それだけではなく、トロピコ、シティーズスカイライン、シヴィライゼーションと言う、学校では僕しかプレイしてないであろうマニアックなゲームをことごとく知っていた! そんなマニアックゲーマー同士が出会い、会話が弾まないわけがなかった。
そこから栗宮さんとの関係が始まったのだ… 学校生活でも例外はなく、ゲームの話で大いに盛り上がらない時は無かった。 栗宮さんの性格はオドオドした暗さを除けば、尖った性格は無く、一緒にいても普通に楽しめる相手で、学校で島田に続く2人目の友達… しかも、唯一の異性友達だった。 それは現在に至るまで続いている…。
僕はふと栗宮さんからのメールを思い出し、あの文面が告白文だと勘違いしてしまい、そんな僕自身を歩きながら軽く失笑してしまった…。 あの時、栗宮さんと恋人同士になると言う事に関しては若干の抵抗感があった… が、しかし… 今日の栗宮さんの笑顔と仕草を隣で見た僕は、正直に言うと
(栗宮さんと恋人… か…。 うん、そんなに悪くないかも…。 いやいや! 何を思ってるんだ僕は///)
そんな事を思いながら、顔を赤くし駅まで歩いた僕だった。
・・・
・・・・・・
翌日、月曜日の長い昼休み… 僕は朝に一緒に登校した島田との約束で裏校庭へと足を運んでいた。 すると、3人掛けのベンチに島田と例の連れ人(水着姿)が座っているのを見つけ、その場へ向かった… 向かう途中に島田は両手でスマホを持ち、連れ人もそのスマホを覗き込みながら、2人で怪しくニヤニヤと笑っていた…。 2人は僕がすぐ近くに来るまで気づかず、僕の合図でようやく気付くと、僕らはベンチに座ったのだった…。 すると、島田は興味津々でこんな事を聞いてきた… それは
「なあ! 土曜日に、足田さんのお茶会に行ったんだろ!? どうだった!?」
やはり、その話題を振ってきた。 僕は適当に
「まあ、うん…。 行って来て、お菓子とか食べて… そのくらいかな…」
なんて言うと、島田は… そんな事はわかってんだよ!俺の知りたい事はそこじゃない!と、書いたような表情をしながら
「いやさぁ… ほら! もっと、何かあっただろ!?」
そう言われたが、僕は考えながら
「いやぁ… 別に… これと言ったトラブルなく終わったけど…」
島田は足田さんとのお茶会で何かがあったと思ってるようで、こう続けて
「いや、もっと具体的に説明してくれよ!? 色々話したんだろ!? 足田さんと、あんな事やこんな事をさ! それを聞きたいんだよ!」
僕は面倒くさかったが、興味津々の島田に土曜日のお茶会について事細かく語る事になってしまった…。 足田メンバーと僕ではまったく話題も興味も合わなかった事、ただ洋菓子を食べてながら女の子達の話を聞くだけで終わった事、僕から話を振っても全然続かなかったこと… それを島田に一通り伝えると、考えながらコクコクと頷き
「なるほどなるほど… 趣味がまったく合わくて、何を話をしてもまったく続かなくて盛り上がらない…。 なるほどねぇ… つまり、戦況はボコボコで終わってしまったと…」
にやけながら言った島田に、僕はためため息をつきながら
「そう… そんな感じだよ…」
島田はにやけた表情から、真面目な表情になりながら
「いや、それでもさ! 流石に連絡先とかは交換し合ったんだろ?」
と、また続けて話を振ってきたが、もちろんそんな事はしていない… 言えば教えてくれたのだろうか? それとも、足田さん自身がその必要が無いと思われたのか… それはわからないが、そんな事を島田達に伝えた所、腕を組み深刻な顔つきになった…。 僕はそんな2人を見て、自分の事でもないのに、何をそんな思い詰めてるんだと思った瞬間、島田は僕の肩に手を置き
「うん… まあ、ご愁傷様!」
と言った… 僕はポカーンとしながら
「え? いや… 何だよ?」
と言うと、島田は励ますように… だが、笑いをこらえながら
「まあさ… もう、足田の事は諦めろ! それに、お前はイケメンなんだし、足田さんと同じくらい美人で可愛くて、趣味も性格もゲームジャンルも、ぴったり合う女の子探してさぁ、その子と付き合えばいいじゃん! な!」
島田は何か勘違いしてるようで、僕は
「へ…? 付き合う…? 何を言って… 何で、僕が足田さんを好きな前提で話をしてるんだよ?」
すると、次に島田は同情と小バカをミックスしたような表情で
「実は俺さぁ、風間がうまく立ち回れるてんのかなって、土曜日は1日中心配してたんだぞ…? で! 終わって話聞いたら、案の定… 予想よりもダメな結末だったわー…」
連れ人も苦笑で
「うん、足田さんはこの学園のアイドルでもあって、超の付く上級国民… 僕ら庶民とは、感覚っていうのが違うんだろうね…。 単にイケメンってだけじゃあ、お近づきにはなれないって事だねー…」
すると、島田は僕に苦笑しながら説教し始め
「あと! お前さぁ! あの足田一族の娘で、ミス応慶だぞ!? 付き合う付き合わないの関係は別として… お茶会であの服装はダメだろ! 何だよあれ! あの服装が許されるのは男同士の遊びか、カーチャンとスーパーで買い物に行く時だけだぞ!」
連れ人も頷き苦笑しながら
「僕も人の事偉そうに言えないけど… やっぱ、そうゆう人と会うのなら、ふさわしい服装ってあるよね…」
両者にそう言われた僕は頭に?マークを浮かべ
「いや… 別に、たかが同級生の集まりに、って!」
僕はしゃべってる最中にこんな事を突っ込みたくなった
「いやちょっと待って! そもそも、島田達はあの場にいなかっただろ! 何で服装なんか知って…」
言い終える前に島田は「ああ、そうか…」何て言いながらスマホを操作し、僕にスマホの画面を見せてきた… それは…
「あ、これって… 土曜日のお茶会…? あ、最後にこんな写真撮ったな…」
そこには僕を中心に、足田メンバーが可愛く笑顔で映っていた…。 改めて客観的にみると、足田メンバーは学園上位カーストに相応しく、今日のために選び抜いたであろう可愛いく小綺麗な私服を身にまとっていた。 対する僕はヨレたTシャツに短パンと言う適当な格好… 確かに両者の言う通り、同級生の茶会だからと言って適当に着飾って向かったのは間違っていたかもしれない。 しかし、この写真はお茶会終盤で撮ったやつだが… 僕は驚きながら
「いやいや! 何でこの写真を島田が持ってるんだよ! 足田さんと親しいなんて言ってなかっただろ!」
すると、島田はヤレヤレなんて顔をしながら
「お前も遅れてるなぁ… インスタだよ。 Instagram、足田のな」
島田の話を聞き、僕は納得しながら
「インスタ… あ、確かそんなのもやってるとは聞いたな… じゃあ、写真はそこから取ってきたやつか…。 じゃあその… 足田さんのインスタのフォロワーってのも結構いるの?」
島田は得意げに
「それは、人によって変わるから俺からは何とも… けど、足田は応慶生徒の秀才でエリート一族、しかも美少女でモデルもやってるときたら、当然少なくはないぞ?」
僕は少々困惑しながら
「そうなんだ…。 ただ、写真に撮って保存するだけなら良かったんだけど… こーやってネットにあげるなら、一言言ってほしかったな…」
連れ人は確かに何て顔をしながら
「まあ、個人情報を載せてるわけじゃないし、これくらいはいんじゃない? ほんと、最近の女の子は撮影=インスタかティクトックにupだからねぇ…」
僕はこれ以上、足田さんとの関係をウダウダ話してるのもアレなので、2人にこう総括し
「まあ、足田さんが僕に飽きたのなら、それはそれでいいよ。 そもそも、このお茶会自体、何度も何度も誘われて断り続けるのも失礼だと思ったから、行っただけであって…」
すると、両者は納得したのか
島田「へー、そうなのか…?」
連れ人「そうみたいだね… 本人が興味ないのに僕達があれこれ騒いだ所で…」
連れ人がそう言った後、数分の静寂になった…。 すると、島田は何か思いついたように
「あ… そうそう! 話は変わるけど、昨日の昼、お前に連絡したの知ってるか? んで、今日まで連絡寄こさないのは何かあったの?」
そう聞かれた僕は
「え? 昼に連絡…? あ! 確か電話入ってたね! ゴメン、返すのすっかり忘れてた… で、何の用だったの?」
僕はこの時間帯、栗宮さんの家に向かう途中の電車内で、島田から電話が鳴ったのに気づかなかった。 駅降りた直後に電話が来ていた事に気づいたのだが、その時は栗宮さんの例のメールを告白文だと勘違いしていて、そればかり気になってしまい、連絡を返すどころではなかった… それからは、なんやかんやですっかり返し忘れてしまったのである…。 すると、島田は
「まあ、大した用事じゃなないけど… 昨日、俺の友達と学園周辺で遊ぶことになってさ、お前も誘おうと思って電話しただけだから…」
そう聞いた僕は昨日の事を少し話し
「あー、そうなんだ…。 でも、どっちみち行けなかったな。 昨日、栗宮さんの家に用があったから」
すると、両者の顔色は変わった…。 連れ人は先ほどまで興味なさそうに手を頭の後ろに組んでいたが、栗宮さん名前を出した途端こちらを向いた… 島田はやはりと言うか、興味津々にこんな事を聞き
「栗宮さんの… 家に? えっと、何をしに…?」
僕は昨日の事を正直に話し
「ほら、金曜日に栗宮さんからゲーム返し損ねたでしょ。 それを返しにお邪魔したんだ… その後はゲームをして遊んだりして、そんなとこかな」
そんな事を言った途端、島田はまた勝手な青春を思い描いてるようで… 勘ぐりながらニヤけ
「ふぅーん… 栗宮さんの家に直接行って… 2人でゲームをしたと…」
すると、連れ人は勘ぐる島田をおかしく笑うように
「おいおい、家に行っただけって言ってるだろ…。 まあ当然、君以外にも他の人がいたんでしょ?」
当然そんな人物はいない… なので、僕は正直に栗宮さんの部屋で楽しく過ごしたと言うと、島田は更にニヤけながら
「なぁー、お前さ… 足田さんとか栗宮さんとの間には何の関係はない、て言ったよな? あれ、嘘か?」
連れ人もにやけながら
「2人以外誰もいない栗宮さんの部屋で休日をねぇ…。 いやー… 何もなかったと言うのは、ちょっと信じ難い状況ではあるねぇ…」
勝手な想像を膨らませる2人に僕は
「いやいや…! だから! ゲームを返しに行ったけど、そのまま帰るのもあれだから、ちょっと遊んで帰っただけのことで! 何もしてないから! しかも、お姉さんとか家にいたし… やましいことなんか、するわけ…」
この時ばかりは連れ人も勘ぐりながら
「でも普通はさ… お互いゲームを返し合って、軽く雑談したらバイバイっていうのが友達同士の流れじゃない? でも、そのまま自室に案内されるってのは、よっぽどの関係じゃないと、そうはならないんじゃない? 特に男女関係なら尚更…」
島田は更ににやけながら
「そうだよな! いくら姉がいるとしても部屋にはいなかったんだろ? キスくらいはできる状況なわけで…」
「す、するはずがないだろ! 何でお前達は、いつもピンクな関係に話をもってetc」
そんな事を言ってる最中、連れ人は人の気配を感じ取り、突然そっぽを向くと
「あ… 噂をすれば栗宮さんがこっちに来た…」
僕は思わぬ知り合いにを口にされ、思わず
「え?」
と、言ってしまった。 連れ人が言った通り、確かに栗宮さんがこちらへと歩いてきた… ただ、栗宮さんはこちらへ歩いて来ると言うか、近づいてくるような形で、何かを探しているようだった…。 そんな栗宮さんに島田はニヤけた表情で
「あのー! 栗宮さーん! ちょっといいですかー!?」
なんて声を掛けると、栗宮さんは頭に?マークを浮かべながら近づいてきた… そして、島田は先ほど話題にしていた、昨日僕を栗宮さんの部屋に案内したのは本当かと尋ねると、栗宮さんは顔を赤くしながら「うん」とだけ答え頷き、島田はバカ面をしながら
「ヒュー!」
なんて声を出した… 僕は呆れ果てると、連れ人は不意に島田のスマホで時刻を確認し、真面目な顔で
「て言うか、栗宮さんはここで何してるの? 5時限目の体育はプールだから昼休み中に着替えないとまずいよ? あと20分で昼休みが終わりだから…」
島田はケタケタ笑いながら
「あそっか、だからお前水着だったのか!」
その発言に連れ人は突っ込み
「当たり前だろ! 浦安の小鉄じゃないんだから!」
すると、栗宮さんは少し慌てて困ったような顔で
「うん、知ってるよ…。 あの… ねえ? 3人とも、この辺りに水着が入ったバッグ見なかった?」
僕は頭を?マークにしながら
「え? 水着?」
と言うと、島田・連れ人も頭に?マークを浮かべ、島田は少々混乱しながら
「水着って… スクール水着入れるバッグの事?」
そう聞かれると、栗宮さんは小さく頷いた… 連れ人は苦笑しながら
「いやいや… 何でこんな所を探すわけ? 誰かが放り投げでもしない限りありえないと思うけど…」
そう言うと、僕は昨日から感じた嫌な予感頭にが頭をよぎった… 僕は栗宮さんに
「そもそも水着って、教室に入ったら、ロッカーとかに放り込んでおしまいだよね? それが無くなったってこと?」
島田は真顔で考えながら
「そうだよな… なら教室のどっかにあるはずだぞ? 絶対にこんな所には無いと思うけど…」
連れ人も考えながら
「勘違いでロッカー以外のどこかに置いちゃったとかない? 歩き回ったりするバッグなら別だけど…」
栗宮さんは落ち着きなく、辺りをキョロキョロ見渡しながら
「そのね、私の水着バッグと体操着が最近… 何故か消火箱に入ってたり、トイレにあったり、校庭にあったりして…」
そんな事を呟いた…。 僕はちょっとした胸騒ぎを感じ取りながら
「え… つまり、どうゆうこと?」
そんな事を言った瞬間だった、栗宮さんは
「あ、ごめんね! じゃあ、私… もう1回教室を探してくるね!」
そう言って栗宮さんは校舎へと走って行った… 僕達はその後姿を見ながら
島田「何だったんだ?」
連れ人「さあ、わからん…」
僕は昨日と今日に続き、嫌な予感が頭から離れなかった…。 栗宮さんの身を心配した僕は… 栗宮さんには余計なお世話と思われるかもしれないが、同じ1組である連れ人に、昨日から気になってた嫌な予感と言うやつを事を尋ねてみた… すると、連れ人は目を丸くしながら
「え!? 栗宮さんがイジメられてるって!?」
そう言うと、島田も少し心配しながら連れ人の方を見た… しかし、連れ人は
「栗宮さんが、イジメられてる? いや、そんな事されてる雰囲気は全然ないよ… 敵を作る様な子でもないからね。 でも、あの子はいつも1人でいる事が多くて、クラスのみんなとも溶け込めてないし、友達も君以外いないみたいで… でも、それをイジメって言うのは、違うと思うけど…」
すると、島田は僕に
「何でそんな事が気になったんだ? 昨日、何か相談されたのか?」
そう聞かれたので、僕は昨日… 栗宮さんの部屋で聞いた生物係の出来事を、2人に話してみた… もちろん、内密にと言う約束付きで… すべてを説明した後、島田は横峯さんと安藤さんと言う女の子は名前だけは知っているだけで、聞き終えた後も特に感想は無かった… しかし、同じ1組である連れ人は驚きの表情をし
「ええ!? あの、横峯さんと安藤さんが、栗宮さんにそんな事したの!?」
僕は困惑しながら頷きながら
「そんな事があったみたいでさ… 普段から何かされてるんじゃないかなと思って… それが心配で、ちょっと相談という聞いてみたんだけど…」
連れ人は困惑と驚いた表情で続けながら
「いやさ… 横峯さんと安藤さんってね… 横峯さんはクラスの学級委員で、安藤さんに至っては副学級委員でさ…。 2人ともクラスのまとめ役って感じで、みんなにすごく優しくして支持されてて、先生からも評判は良いし… 何が言いたいのかというと、そんな事するような人達とは到底思えないっていうか…」
1組に所属する連れ人は困惑しながらそう言った… だが、確かに僕は栗宮さんの口からそう聞いたのだ。 すると、島田は考え込みながら
「わかんないぜー… 表の顔は超の付くほど優等生だけど、裏じゃ弱い奴をいじめて悦に浸ってるとか… 物語じゃ定番だからなー」
連れ人は苦笑しながら
「それは物語でしょ…。 でも、その2人が栗宮さんをイジメてたとしたら、何で栗宮さんなのかな? まあ、イジメに理由なんてないだろうけど…」
すると、島田は昨日から僕が思ってた事を口にした… それは
「そのさ… 裏校庭の植物園で栗宮さんがウンコしてた時、本当にその声が横峯さんと安藤さんだったのか? その状況だと違う人だった可能性もあるわけだ…。 ドア開けながらウンコしてたならともかく…」
そうなのだ… それが証明できなければイジメかどうかなんて判断できないし、あの場の出来事は栗宮さんの過失なんて事もあり得る。 そして、連れ人は同じクラスのためか、栗宮さんの素顔を僕よりもよく知ってるみたいで
「うーん… あの子って頭は良いけど、結構なドジッ子のおっちょこちょいでさぁ… それで先生とかクラスメートに怒られたりする場面が結構あるんだよ。 だから、裏校庭の出来事もそれの流れだとしたら… まあ、流石に蹴りはやりすぎだけど…」
島田は苦笑しながら
「うん? あ! 栗宮さんって思い出したけど、あの子だよな!? 英語のテスト満点だったけど、名前書き忘れて0点取っちゃったって言う…!」
連れ人も苦笑しながら
「そうそう! その子! この間の校外学習なんか、資料館のトイレにリュック忘れて、気づいたのがバスに乗って走ってた時でさ、もう大変だったよ…!」
島田もおかしく笑いながら
「あ! それ前に聞いたわ!」
連れ人は冷静になり
「まあ、そんな子だからさ… たまーにバカにされたりする事があるけれど、それを栗宮さんがイジメと思うなら、イジメの内に入っちゃうんだけど…」
島田は真面目な顔になりながら…
「でも、それくらいなら誰にだってあるんじゃないか…? 俺なんか、そんなのしょっちゅうだし…。 それに、うちのクラスの女子なんか派閥みたいの作ってさぁ… 表じゃあ、お互い良い顔してるけど、裏じゃあ悪口だとか… 色々やってるぜ」
連れ人も苦笑しながら
「うちのクラスも似たようなもんだよ… 特に足田メンバー何かは同じクラスどころか、他クラスからも、違う学年からも標的にされてたりするからねぇ…。 あ、でも、栗宮さんはそうゆう派閥とは無縁なはずなんだけど…」
正直… 僕のクラスの女子も、全員が仲良しこよしではなく、それなりの軋轢と言うものはある… ただ、それをイジメと言うのは、またベクトル的に違う… 栗宮さんの場合はもっとこう… 正真正銘のイジメの被害者と言うか…。
連れ人「しっかし… 水着を効率的に見つけたとしても、その後は着替えなくちゃいけないし… 授業に間に合うのかな? 理由を話して、体育を休ませてもらうしかないような…」
島田「でも、あの体育教師だぞ… 理科の先生よりうるさいし怖いし、忘れ物したとか、少し遅れるだけで、物凄く怒る人だぞ…」
連れ人「そうだよね… 休業証明書なんて持ってないだろうに… 一緒に探したほうがよかったかな?」
島田「いや、どう考えても教室以外の場所にないだろ…。 誰か隠したりしてたら話は別だけど…」
連れ人「あの子もおっちょこちょいだからね… また教室探し回って、それで見つかればいいけど…」
実は僕の学校、他の学校はわからないが… すべての授業を休むには休業証明書と言う紙切れが必要なのだ。 特に体育なんかは風邪か体調不良等で何らかの事情で休まざる得ない場合は、家を出る前に親からその休業証明書にサインと理由を書かなければいけない… なので、その紙が無くて体調不良で休みます、と言うのは原則上できない。 できるとしても、サボりと欠席扱いになるため当然成績にもひびく…。
まあ、それはともかく… 僕は連れ人が言った、栗宮さんがクラスでドジッ子扱いされてることを今初めて知った… 同じ1組に所属する連れ人であれば、決めつけってわけでもないだろう…。 だが、昨日1日… 僕は栗宮さんと一緒に過ごし
(本当にそうなのか…? あの栗宮さんが…?)
あらゆるゲームの情報を網羅し、英検準2級の資格を持ち、ローカライズされてない洋ゲーも何の問題なくプレイし、ニンテンドースイッチだって自分1人で修理する技術を持っている… そんな栗宮さんが、クラスではドジッ子認定されてるなんて、僕には到底思えなかった。 すると、島田はスマホを取り出し時計を見ると
「授業開始8分前か… なら、もう少しだけ… て!! そんな暇なかったわ!!」
島田は最後に目を大きく開けながら大きな声を出しし、僕と連れ人はその声にビックリした! 理由を聞くと、島田は
「いやさ! 次の授業は理科の授業で、始まる前に授業で使う実験道具を教室に持ってかなきゃいけねんだよ! 俺、理科係だからさ! いやー! 今思い出してよかったー!」
そう聞き、僕らは納得した… うちの学校は時間厳守が基本でもあって、島田の言った、授業で使う道具を用具室から持ち出し、時間内に教室に持っていくのも生徒の役目である… もし、忘れでもしたら… まあ、そこまで言わなくてもわかるだろう… なので、島田はベンチから立ち上がると
「じゃあな! また下校時間で会おうぜ!」
と言うと
僕「あ、うん…」
連れ人「あ、そか。 じゃあ、バイバイ」
島田は校舎へ駆け出して行った。 …そこに残された僕達なんだが
僕「…」
連れ人「…」
特に何か会話することもなく、ボーっと座っていた。 僕らは島田と言う共通の友達がいなくなってしまった事で、しばらく気まずい空気が流れた。 なので、そんな時間が5分程度流れると、僕は
「じゃあ、授業が始まるから… そろそろ行こっか…」
すると、連れ人も
「うん、そうだね…」
と言って立ち上がり、僕らは校舎の方へ歩いて行った。 すると、その途中… 連れ人は妙な事を僕に聞いて来た。
「ねえ? 足田さん達とお茶会に行ってさ… 本当に、君の言った通りに終わったんだよね?」
そう聞いて来たので、僕は
「うん? 大体その通りだけど… それが何か…?」
すると、連れ人は
「あ、いや… ごめん! ただ確認しただけ! じゃあ、行こうか」
僕は頭に?マークを浮かべながら
「う、うん…」
と言った…。 学校へ戻る途中も僕らは会話は無く… だが、連れ人は考え込みながら、こんな事を小言でボソボソと
「ボソボソいや… じゃあ、何であの人達はボソボソ…」
なんて、僕に聞こえるか聞こえない程度の独り言をボソボソと言いながら歩いていて、少々気味が悪かった…。
・・・
翌日の放課後… 先週の算数テストで赤点を取ってしまった僕は、放課後に補習と追加テストを受けさせられ、2時間後にようやく学校から解放されたのだった…。 僕は1人で下駄箱から靴を取り出し、土足スペースで靴を履いていると、僕の数メートルあたりで急いで靴を履いている者がいた… 島田だった。 この時間まで残ってる理由はわからなかったが… 僕は島田に近づき、一緒に下校しようと誘ったが
「悪い! 今日はちょっと用事があってさ! 急いで行かなきゃいけなくて! じゃあな!」
「え? あ、うん… じゃあ…」
そう言うと、島田は靴を履き、玄関から早歩きで学校を出ると、正門口から右に逸れ、西口門の方へ向かって行った…。 島田と僕は普段から正門口を通って帰路に着くのだが、本当に用事があるみたいだ…。 僕は学校から出て正門口へと歩こうとしたが
(あ! そうだ… 国語のノートがもうそろそろ、書くページが無くなるんだよな… お金も少し持ってるし、忘れないうちに買っておくか…)
そう思った僕は、いつもの帰路から引き返し、島田の同じ方向の西口門に向かう事にした… 西口門は正門口の大通り沿いとは違い、閑静な住宅街の小道である… その閑静な小道の一角に文房具屋さんがあり、そこには学校で必要となるありとあらゆる用具が揃っているのだ。 僕は西口門の通りを歩いていると、20~30メートル先に島田が僕に気づかず早歩きで歩いていた… そして、西口通りにあるでかいプール施設の横を通ると
(そういえば、今日のプールは寒かったな…)
なんて、思いながら歩いていた。 そして、プール施設の出入り口には、2人の女の子が座っていた… 同級生みたいだが、その子達は僕を見ると
「あ、風間くーん! バイバーイ!」
「またねー…」
そう言われたので、僕も手を振った… 手を振りながら
(えと… 誰だ…? あの子達…?)
何て思った数秒後…
(いやいや! 誰って! この間お茶会した、三浦さんと田中さんだろ…! 本当に僕って忘れっぽいんだから…)
そんな事を思いながら、プールの角を曲がった… ここを曲がった先にあるのが西口門、先ほど島田もここを曲がったのを見たが… 僕は困惑した。
(あれ… 島田はどこ行ったんだ…?)
ここからまっすぐ50M先に西口門が見えるのだが、島田の姿が突如消えた… ルーラでもしない限りありえない… プールを曲がった先には教会が建っているが…
(この教会に用があったのか? でも、教会と島田なんて、水と油くらい合わない… まあいいや、文房具屋さんに行こ…)
なんて思い歩いてると、プール施設と教会が建つ間の空間… 雑木林が無造作に生え散らかっているこの空間に、スマホが落ちていた… 僕はスマホに近づき
(うん? こんな所にスマホ落ちてるぞ…。 業者さんの落とし物か…?)
何てスマホを手に取ると… それは、島田の使っていたスマホだった! 間違いない… 背面はXperiaシリーズのandroidで、そこにポケモンのシールが貼っているのは、島田の携帯以外ありえない。
(え??? こんな所に… 何で島田のスマホが?)
僕はスマホが落ちた地点をよく調べると、雑木林の地面には子供1人通れるくらいの小さな穴と言うか空間があった…。 僕はその空間を見て
(ハイハイすれば通れそうだけど… まさか! 島田はここを通って行ったのか!? 何のために…?!)
僕はそんな事をあれこれ考え
(とりあえず、島田がこの先にいるのなら… このスマホは届けないとな…)
そう思った僕は、四つん這いになり、小さな空間をハイハイして進んで行った… スマホを届けなきゃという責任感と、島田は一体ここで何をしているのかという好奇心が湧いたからだ。
数分後… スマホが落ちた地点から数メートル進んだところで、僕はプールの汚くボロイ外壁を見ながら
(しっかし、プールの外壁はボロボロだな… ひび割れて崩れてる個所もあるし… 地震とか大丈夫なのか?)
そういえば昔、校長が朝礼でこんな事を言っていた… このプール施設は戦後すぐに造られた施設で、見える位置からは外壁を改装して綺麗に見えるが、見えない位置と内装はほったらかしのままなので、非常にもろく壊れやすい箇所が多数あります… なので大切に使うようにと、校長自ら生徒達に釘を刺すように言われたのを覚えている。 恐らく基礎部分も当時のままなんじゃ… とは言っても、このプールは学園の建物の中でも比較的新しい方なのだ。 この学校の創建が明治時代中期まで遡るため、その間に建てられた古ーい建造物が今だに多く残って使われている。 この隣に建ってる教会なんかも、詳しくは知らないが相当古い時代に建てられたものらしく、有形文化財にも指定されていて…。 そんな事を考えてると教会は通り過ぎ、次は多目的ホールの窓一つない壁へと差し掛かって、狭い雑木林が生い茂る路地をひたすら進ん行ったのだった…。 そして、プールの角を曲がった所で、探していた島田を見つけた… 見つけたのだが…
(え…? 島田は何をやって…? まさかあの場所で、あの態勢は…!)
島田は地面に四つん這いになって、プールの… 半地下と呼べばいいだろうか? そこに設置された窓をジーっと覗き込んでいた… もっと脚色すると、実は島田の覗いてる窓は… 女子更衣室の隣に設置されたシャワー室の窓であって… つまり島田は…! もう、説明しなくてもわかるだろう…。 僕は呆れた顔で島田に近づくと、島田は僕に気づき、目をこれでもかと見開きながら驚愕し、小さな声で
「か! 風間!? お! お前ここで何して!?」
と言った… 僕も小さな声で言いながら、腰を下ろし
「お前こそ何してんだよ…? 覗きか?」
何て言うと、島田は物凄くバツの悪い顔で
「いや、これは… その… その…」
とだけ言い淀み、黙りこくった…。 まあ、そうだろう… 立場が逆だったら、僕もそうなってただろう…。 僕は小さな声で島田に説教し
「なあ… こうゆう事、いつからやってたんだ?」
「あ… いつから… と、聞かれても…」
てな感じで、続けて言い淀む… 僕は
「今日からやめなよ…。 こんなことが僕以外の誰かにバレたら… 転校しなきゃいけないレベルの大騒ぎだぞ?」
島田はその通りです… と言わんばかりの表情で
「ああ… そうなんだけどさ…」
すると、島田は続けて
「あ! でも! 今、覗いてたのはだな! 覗きというか何と言うか… 何か… すごいスキャンダルと言うか…!」
訳の分からない事を言う島田に僕は
「は…? スキャンダル…? いや、その… 意味わかんないんだが…?」
すると、島田は僕に強く迫るように
「いいからちょっと覗いてみろって! お前にも絶対関係あるから!」
「はぁ…?」
そんな事を言われ、僕はますます意味が分からかった…。 すると、島田は僕の頭と肩掴み、力づくで地面に無理やり押し付けると、僕は小さな声で抵抗しながら
「な! やめろ! 何でお前と共犯にならなくちゃ行けないんだよ!」
何て言うと島田は小さな声で
「だから! お前の思ってるような光景じゃねえって! いいから覗いてみろ!」
僕は無理やりのぞき穴を覗く事になってしまった! 小さな長方形を横にした、汚い窓は、白く濃いスモークがかかっており、その左角真ん中辺りに小さな穴が開いていた… 先ほど島田が覗き込んでいた穴だ… この窓は僕がいる地点は地面すれすれに設置されているが、更衣室にいる人達は天井上部に設置されているように見える、不思議な窓である… 僕はその穴を覗くと
(え…?)
心の中の第一声がこれだった… 確かに島田の言った通り、女子更衣室の隣にあるシャワー室内は僕の想像するエッチな光景ではなかった。 シャワー室にいたのは、足田・横峯・安藤・栗宮さんの4人…
(え…? 足田と横峯と安藤は… 栗宮さんに何をして…)
足田・横峯・安藤に囲まれるように、栗宮さんは女の子座りをしていた… 全身びしょ濡れの裸で…!! 誰がどう見ても、決して仲良く遊んでる光景ではない…。
横峯「栗宮さーん、聞いてますかー?」
安藤「さっきから何で黙ってるの?」
足田「ねぇ? 人が質問してきたら答えるのが常識でしょ?」
栗宮「…」
栗宮さんはただ黙って座っていた… 僕が覗くまで、この3人に色々とやられて随分時間が経ってるようだ。 すると、足田は覗き穴の視界から消えると、また現れ、しかも両手には大きな桶を持っていて、それを栗宮さんの頭上から
ザパァーン!!
と、水を掛けた! そして、桶を安藤さんに渡して、安藤さんは桶に水を入れ行った…。
足田「栗宮さーん? 目は覚めた?」
横峯「プフフフ! 目が覚めたって何? 最初から起きてたでしょ?」
安藤「目を開けながら寝てたとか? この状況で? プッハハハハ!」
と、3人は悪辣に笑った…。 6月前半と言えど、今の気候は水道水を体全身に浴びられるような時期じゃない… その証拠に栗宮さんは震えていた。 寒さの震えなのかはわからないが、栗宮さんは小さな声で
「私が… 誰と恋したって… あなた達には、関係ないじゃん…」
3人にはその言葉を聞くと、深いため息をつき
横峯「あのさ、何度説明すればわかるの? あんたが誰と恋したって一向に構わない。 でもね… 風間君に言い寄るのだけはやめろって言ってんの!」
安藤「あのねー、栗宮さん…。 学校のクラスってのわね、カーストって言うのがあるの。 大体の人はね、その身分に合わせて友達とか恋人を選んで付き合わなきゃいけないの! まあ… あなた普段から1人ぼっちだから、そうゆう感覚ってわからないんでしょうけど…」
横峯「男の子と仲良くなりたいんだったら、別に風間君じゃなくてもいいじゃない…。 他にいくらだっているでしょ? 松本とかさ…」
安藤「アハハハ! あのキモオタのチー牛!? いっつも1人で休み時間にスマホいじってウマ娘とかやってるし、あれは流石に! …いや、あれもゲームとか好きそうだし、結構お似合いのカップルかもね! ウフフフ!」
足田「栗宮さん? 私、去年の冬頃からずーーっと風間君に言い寄るなって警告してるんだけど… 何で言う事聞けないのかな? 今までずっと我慢してたけどさ、そろそろ手を引いてもらいたいんだよねー…」
横峯、安藤の小バカにした口調とは違い、足田の口調は違った… その言葉に対し、栗宮さんはせせら笑いながら
「だって、あなたの必死な姿見てると、すっごく笑えるもん…」
すると、足田さんはまた覗き穴の視界から消え、水がたっぷり入った大きな桶を持って現れ、また頭上からぶっかけると思いきや、ドスンと栗宮さんの真ん前に置いた。 そして、足田は栗宮さんの髪の毛を乱暴に力強く掴み
バシャン!!
頭を水に沈み込ませた! 栗宮さんは苦しさで両手をバタつかせながら、足田さんを攻撃したが、足田さんはものともせず鬼のような形相をしながら
「ねぇー!? 何であなたは! 自分の立ち位置ってのを把握できないの!? ねぇ!? どうして!? どうしてって聞いてるんだけど!?」
その後も30秒間は栗宮さんを水責めにしていた…。 その様子を傍観していた2人は、流石にまずいと思ってるのか、仕切りに困惑した顔をしながら耳元で囁き合っていた。 そして、栗宮さんはようやく顔を水から解放されると
「ヴゥッハァ!! オエェェェ!! ゲホッゲホォォ!!」
苦しい表情で水を吐き、咳をしながら空気を吸った… そして、栗宮さんは足田の顔を睨みながら
「あんたって自分に全然魅力がないから…! こんな方法でしか友達を作れないんだね!」
___パチィン!
足田は栗宮さんの頬を強くビンタし、その乾いた音がシャワー室全体に響いた… 学園でも優秀かつ聖女と噂されている華奢で美人の足田さんが、栗宮さんの頬をビンタした… すると、足田さんは
「あんたってさ… そうゆう態度取る事で、自分は私と対等なんだとでも思ってるの?」
栗宮さんは何も言わなかった… すると、足田は栗宮さんの髪の毛を再び鷲掴みにして
「調子乗ってんじゃねぇよ!! 友達なんか1人もいないくせして!! 昼休みもずーっと1人で過ごすあんたが!! ブスでコミュ障でキモオタのあんたが!! 何で風間君と付き合えると思えるの!? 何で私の命令に逆らえると思ってるの!? 何にも持ってないあんたを、風間君が好きだと…! 本気で思ってるわけ!?」
まるで、今までの不平不満を爆発させたかのような… いや、違う… 自分の思い通りにならない状況が続いて、その積もりに積もった苛立ちを栗宮さんにぶつけてた…。 そして、ありったけの怒声を上げ終えると、栗宮さんはなんと笑いながら
「じゃあさ… 何でも持ってるあなたが、風間君にいくら声を掛けても、見向きもしないのは何で…? ねぇ、何で? プッフフフ…」
すると、足田さんはスクッと立ち上がり、すぐ後ろに立て掛けてあったデッキブラシを手に持った…! 僕は足田が栗宮さんに何をしでかすかすぐにわかったが、この状況だと為す術もなかった…! 僕は「やめろ!」とも言う事ができず、ヒヤヒヤしながら覗いていると
「やめなよ!!」
そう大声を出し、足田を制止したのは横峯だった… 横峯は続けて
「それで何をするつもりなの? それでぶっ叩くつもりなの?!」
強い口調でそう言われた足田はピタリと体を止めた… そして、足田さんは舌打ちし、モップを力強く放り投げた。 横峯さんは足田さんを落ち着かせるように
「そんなんで叩いて、ケガでもさせて、そのケガをこの子の両親が見たら… どうなるかわかってるでしょ? 少しは落ち着こうよ…」
その言葉に安藤さんも協調するように
「そ、そうだよ…! いくら何でも暴力はダメだよ…! やるんならもっと傷の残らないような… 例えば、えっと…」
すると、足田さんはその場で少し深呼吸をし、冷静になったのか
「もういいわ、帰りましょう…」
と言った。 すると、2人の取り巻きも呼応するように同意し、バッグを持ち、帰りの準備をし始めた… 横峯はそこら辺に掛かってたであろう汚い雑巾を、栗宮さんの頭に投げつけ、冷たく
「はい… 帰る前に、それで体を綺麗に拭いてってね」
と言い、3人一緒にシャワー室から出ようとすると、足田さんは裸で残った栗宮さんに向かって
「栗宮さん? わかってると思うけど… これで終わり、何て思わないでよ?」
そう言い放ちフンッと言うようにシャワー室から出てった… すると、最後に安藤が2人に聞こえないようこんな事を言い
「煽ったあなたも、悪いんだからね… そんなに自信があるなら、風間君に告白すればいいじゃない…! そうしないのは、それが成功しないと思ってるからでしょ? ふん」
そう言い残すと、最後は裸の栗宮さんだけが残ったのだ…。
・・・
僕と島田は、女同士のあまりにも陰湿なイジメ現場を見たためか、帰り道はずっと黙って歩いていた…。 僕にとって衝撃だった事実が2つある… あの清楚で美人で優秀で思いやりのある足田さんが、栗宮さんにあんなひどいイジメをしていたこと… いや、してきた事…。 もう一つが、足田さんが僕の事をあんなにも好きだったと言う事が今にわかった事…。
(でも変だよ… この前のお茶会行った時、足田は普通というか… 僕が好きだって兆候はまったく見せなかったのに…。 それに、栗宮さん… 僕が知らない場所で、足田からいっぱいひどい仕打ちを受けてたのかな…? 栗宮さんがプールから出てきたら、何かフォローしなきゃと思ったけど…! 状況が状況で…。 そして、生物園での出来事はやはり! このイジメの一環だったって事になるわけだ!)
そんな事を考えながら、歩いて帰っていた…。 そして、賑やかな通りに出ると駅前まで着くのに数十分… 僕は先ほど考えていたことを島田に相談してみた… すると、島田は
「ああ… 健一(連れ人)からも聞いたんだけど、足田ってさ… 先生達の評判はすこぶる良いけど… 女子からの評判は最悪なんだよ。 何でかって言うと、足田は付き合う友達も自分で決めるような奴でさ、取り巻き見ればわかると思うけど、容姿とか性格とか家柄とか… そうゆう上位連中だけしかつるまないんだよ。 それだけじゃなくて、仲の良い友達同士何かも無理やり引き剝がしたりしるもんだから、それで喧嘩になったりとかしてさ…。 見かけは優等生だけど、中身はかなりの性悪女だって言うのは、学園じゃ有名な話だぜ…」
そんな噂は初めて聞いた…! そうは言っても、僕は1組の人達とは足田と取り巻き以外としか交流が無いため、当然と言えば当然だが…
「じゃあ、栗宮さんをイジメるのは… やっぱり…」
「それの一環だろうな… お前に言い寄る恋敵を排除してるんだよ」
「そんな事したって…! 僕は足田の事なんかこれっぽっちも…!」
しかも、今日は足田の裏の本性を見てしまい、もう奴を好きになる感情はどこにもなかった…。 島田は困惑した表情をしながら
「俺もさ、シャワー室の光景見るまでは、嫉妬深い女子が広めた噂話だと、ずっと思ってたんだけど…」
「それでさ… 栗宮さん、今後どうすればいいと思う? このままじゃあ、栗宮さんは、ずーっと足田に…!」
「わからん… どう対応すればいいのか…。 なあ、失望させて悪いけど、足田っていわゆる上級国民なのは知ってるだろ? しかも、母親に至っては国会議員の大臣で学校のPTA役員ときてる…! 何が言いたいのかわかるだろ? 俺達が先生にさっき見た事を告げ口したくらいじゃあ、取り合ってくれるかどうか…。 何か徹底的な証拠でもなきゃ…! でも、シャワー室での件は… 言うと逆に俺らが…」
徹底的な証拠などと言っても、僕達はプロの探偵ってわけでもない… というか、証拠なんか出しても、その証拠すらもみ消さるほどの力を足田と母親が持ってるとしたら…? 僕の通ってる学校は上級の政財界層や芸能層… その他あらゆる既得権益層の子息が集まる… だから、こんな不正やスキャンダルは隠蔽だ根回しだ… そんな類の噂も嫌というほど耳にするのだ…。 僕らは島田の言った言葉を最後に黙って駅まで歩いたのだった…。
…そして駅に着くと、最後に島田がこんな事を言ってきた。
「それでさ…! ほら… 俺があそこで覗いてた事… もちろん、秘密にしてくれるよな?!」
その言葉に対し僕は
「わかってるよ…。 でもさ、本当にもうやめとけよ? バレたのが僕だったからよかったものの… 僕以外の生徒と先生だったら… どうなってたことか…」
島田は一安心した表情をしながら
「俺さ、もう覗きはやめるよ。 見つかった時のリスクがあまりにもデカすぎるからな… それに、お前にバレたし…。 他のクラスメートにバレるのも、時間の問題だっただろうしな…」
「うん、じゃあそうしろよ…。 きっぱりやめろよ」
「うん、ありがとな…。 あとさ、今日シャワー室で見た事… あれも、今は俺達だけの秘密って事にしとこうぜ… ほら、場所が場所だけに… だろ? でも! 栗宮さんをこのまま放っておくわけじゃないぞ? 何か解決策を考えてさ…」
それは先ほど僕も考えていた。
「そうだね、このままにはしておけねいよ。 でも、どうしようっか?」
「それは… 今じゃなくて、おいおい考えていく事にしようぜ」
「うん、そうだね…」
「いやー、今日は大変なものを… うん、待てよ? そういえばお前… どうやって俺があそこにいるって知ったんだよ!? 入るとき見渡したけど、誰1人いなかったぞ!?」
僕は、あ!そうだった!なんて顔をしながら、ポケットから島田のスマホを出しながら
「ほら… これで、島田があそこにいるってのわかったんだ。 教会とプールの間に落ちてたぞ」
すると、島田は驚いた顔をしながら
「あれ!? 何でお前が俺の携帯を…!? あれ? あれ!?」
そんな事を言いながら、ポケットをガサゴソと漁り始めた… どうやら、自分のスマホを落とした事に今気づいたみたいだ。 すると、島田が驚きと感謝の表情で
「あ! ありがとな! 拾ってくれて! でも、落としたら気づいたはずだけど…」
そんなこんなで、僕達は上り線と下り線で別れた。 …僕は電車の窓をボーっと見ながら
(そういえば、あのプールって… 応慶の小・中・高・大の女学生が、クラブ活動とか部活だとかで、結構の頻度で使われるんだよな… すると、島田はそんな人達の裸を…)
そんな事を思った瞬間、スケベ心が疼き、チンチンが少しピクンと動いた…。 僕は頭を横に振り
(いやいや! 島田と同じ事をしようなんて考えるな! 絶対に!)
ただ… そんな事、今どうでもよかった。 僕は足田と栗宮さんのとの今後をどうしようかと、家に帰り、夕飯を食べ、ベットに潜るまでずーっと考えていたのだった…。
・・・
翌日の朝… 僕は島田と学校へ登校し、いつも通り靴箱を開けると…
(うん…? これは…)
上履きの上に置かれていたA6サイズ位の封筒… 僕はそれを取ると『風間君へ』とだけ、綺麗な字で書かれていた…。
(うん… これは、ラブレターってやつだけど… え? まさか…!? この送り主って…!)
自慢ではないが、この手のラブレターが置かれたことは、1度や2度ではない… が、昨日の事もあり、このラブレターの送り主は、あいつか… あの子かのどちらかだった。 そして、僕はドキドキしながら封筒を開くと
(栗宮さん…)
この手紙の送り主はこの子だった…。 内容をサラッと読み要約すると、僕の事がずっと好きだったみたいで、放課後に体育館裏倉庫まで来てください… との内容だった。 ボーっと手紙を読んで、今後の事を考えてると… 忍び足でやってきた島田が僕の手紙を奪い取り!
「ちょ! おい! 返せよ!」
「何だよお前ー! まーたラブレターなんか貰ったのかよー! えーと、何々ー!?」
島田はあくどくニヤニヤ笑いながら、僕の手紙を勝手に読んだ…! そして、手紙の送り主を確認した時
「あ… これ、栗宮さんからじゃん…」
そう言いながら、急に真顔になった島田だった… 僕に手紙を返すと、島田は心配しながら
「なあ? その誘い… どうするんだ?」
「わかんない… でも、昼休み中には決めようと思う…」
「ああ、そうか…。 あ、じゃあ昼休みに、またいつもの場所にいるから… そこでな!」
「うん…」
そんな言葉を最後に僕らはそれぞれの教室へと入って行った…。
・・・
そして、昼食を食べ終えた後、僕・島田・連れ人の3人はいつものベンチで座っていた。 だが、この日は呑気にバカ話で盛り上がることはなく、当然話題は例のラブレターの件で、2人は僕に
島田「でさ… 決めたのかよ? 栗宮さんの事」
連れ人「いやー… 難しいねー、仮に君達が恋人になった所で、足田さんのイジメが止むとは… 到底思えないよねー…」
僕は悩みながら「うぅーん…」としか、答える事ができなかった…。 僕がここへ遅れて来ると、島田は連れ人に僕と栗宮さんと足田の関係をさらっと説明した後だった… だが、流石に昨日のシャワー室での話はせず、ふんわりと足田さん達が栗宮さんのイジメ現場を目撃したと言っただけだった。 僕はここに来るまで、朝礼も授業中も昼食もその事ばかり考えていて、ここに来た時点でも頭を抱えて悩んで考えていた…。 すると、連れ人はこんな事を言い
「この間さあ… 横峯さんが栗宮さんを蹴ったって話したじゃん? だから僕、ある程度は君と足田さん絡みなんじゃないかって、予想してたんだよね…」
すると、島田は妙案を思い出したのか
「あ! じゃあさ! 秘密裏に付き合うってのはどうよ!? 学校ではお互い何の接点も無いクラスメート演じてさ、休日はイチャイチャラブラブすりゃあいいんじゃね!?」
連れ人は考えながら
「でもそれは… バレた時が怖くない? 世間って意外に狭いし…。 あと、僕もそうだけどさ、1組にいる子で休日に塾とか習い事に通ってない子なんて、1人もいないよ? 栗宮さんも休日は塾とか習い事とか、いっぱい通ってるよーみたいな事言ってたし…。 やっぱさ! 学校で堂々とイチャラブ青春したいよね!」
島田は頭を抱えながら
「うぅーん、そうだよなー…。 この学校の生徒で、休日をフルで遊べる奴なんて、俺と風間以外いないんじゃないかー?」
確かにそうだ… あの日の日曜日はたまたま栗宮さんの都合が良かっただけで、あの子も何かと休日は塾等に通っている。 だが、僕は両者の話を聞いていたが、ちょっと待ってほしい… どうして、僕が栗宮さんを大好きな前提で話を進めているのか? 僕はただ、栗宮さんとこのままずーっと仲良く友達として付き合いたいだけで、恋人になろうなんて一寸たりとも思っていない。 僕は足田の栗宮さんに対するイジメを止めてほしいだけで、それ以下でもそれ以上も何も望んでいない… そんな事を島田と連れ人に話すと
連れ人「でも、足田さんって厄介な子でさー… 恵まれた子だけど、結構嫉妬深い性格でね。 例え、君がその事を足田さんに正直に言ったとしてもー…」
島田「無駄だと思うなー…。 風間は俺のクラスでも女子に大人気だし… お前が女の子と親しく話してるだけで、噂になる程だからな…。 お前に話した事なかったけど… 栗宮さんとお前って、学園では結構な噂になってるんだぞ?」
連れ人「うん… 僕のクラスもそんな感じだよ…。 3組の超イケメンって言えば君の事だし、そんな君が栗宮さんと仲良くしてて噂になってさ…」
島田「しかも、お前… 他の女子と関りを避けてるだろ? んで、栗宮さんとだけ仲良くするもんだから、それが余計目立つんだよ」
(確かに… 今まで女難で苦労して、異性とは避けてきたから… そうゆう風に見られるのは当然の事だ…)
僕は2人の話を黙って聞いていた… そして、2人の話を聞いた瞬間… ある考えを思いついた… いや、思いついたのではなく… もしかしたら、最初っから考えていたのかもしれない…。 僕は2人に真面目な顔で、その思いついた計画を事を口にし、実行しようとした… そして、この計画は少なからず2人の協力が必要だった。
…その計画のすべてを、2人に話すと
連れ人「確かに… そうなれば… 栗宮さんは足田さんからのイジメは無くなるだろうけど… でも… それでも、まだイジメが続いたら…! いや… それはそれで、また別問題か…。 でも、もうちょっと優しい解決策は無いもんかねー…?」
島田「解決策ってよりかは、特効薬みたいな感じだな…」
僕は島田と連れ人と… それと、栗宮さんも入るかもしれない。 そんな人達に僕は申し訳ない顔をしながら
「それしか思いつかなくて… 頼めるかな…?」
なんて言うと、島田は困惑した表情で
「うぅーん… そんな事する俺達って、何か… すっごく感じ悪くね? 例え人助けだったとしても…」
連れ人も困惑した表情で
「確かにそうだよね… 間接的に足田さんと同じ事してるような気が…」
流石に2人は難色を示した… 僕は申し訳なさそうに
「そ、そうだよね! 巻き込むような事言ってゴメン…。 これは、僕と足田と栗宮さんだけの問題だよね」
すると、島田は今までにない真剣な顔をしながら
「でも、俺達はともかく! お前はそれでいいのか!? 恋人になるならないは別にして、栗宮さんとはすごく仲良いんだろ? こんな事したら、もう二度と…」
僕の計画を否定するように言った… 確かにそうだ… 栗宮さんは島田に次ぐ学校で唯一の友達でもある。 足田さえいなかったら、こんな事で悩まず2人仲良く学園生活を楽しめたのに… そんな事を思うと、今更ながら僕は足田に憎しみを募らせた…! だが、足田は決して僕を攻撃してるわけではないのは確かなのだ…。 過去に起きた女難トラブルだって、そんな単純に解決できるような問題ではなかった… かと言って、このような状況も放って置く事もできなかった。 すると、連れ人は僕の行動にやや賛同しながら
「足田さんは取り巻き以外にも、協力者が山程いるんだ… その気になれば足田さんは栗宮さんを学校に来れないほど貶める事だって…。 君らの話が本当だったら… このままだと最悪、事件にまで発展しちゃうかもしれないね…」
島田は不機嫌な顔をしながら
「でも、それじゃあ…! 風間が考えた計画が成功したとしても、足田の肩を持つようなもんじゃん! なんか、気に食わねぇよ」
連れ人はちょっと楽観的に考えながら
「でも、告白はそうしたとしても… 後々誤解を解くっていう手もあるし…。 足田さんが風間君を諦めたその時に、また仲良くしていくって言う手も… なきにしもあらずなのかなー… なんて…」
島田「それはともかく… やっぱ、栗宮さんのラブレターを俺達が面白おかしく広めるなんて… やっぱ良い事じゃないよな」
連れ人「そうだねー… いくら人助けと入っても…」
やはり、両者はその事を気にしているようだった… それもそうだ… これは僕と足田と栗宮さんの問題である。 僕は1人で実行するしかないと決めたその時… 島田は自身の膝を叩き、決意したような顔で
「しょうがね! お前と栗宮さんが、それで有意義な学園生活に戻れるなら、喜んで悪役になってやろうじゃんか!」
流石、島田である… 学校で友達が極端に少ない僕にとって、唯一友達と呼ばれような人物… いつも惰性で一緒にいるわけではないのだ…。 すると、連れ人も
「うん、そうだね…。 あ、でも…! 流石に僕からばらすような真似はできない…。 だから! 僕は誰かから聞いたってスタンスでやらせてもらうよ。 足田と、その取り巻き達にもしっかり聞こえるように話すから!」
僕はそんな2人に対し感謝の気持ちを込めて
「ありがとう… 本当に…」
僕は追加で命令するのもあれかなと思いつつも、続けてこう言い
「じゃあさ、昼休みはもうすぐ終わるし、時間が無いから早めに行動しよう! 今日はこれで解散って事で…!」
僕がそう言うと、2人は早速行動に移ってくれた。 そこに1人になった僕も立ち上がり、その辺をうろつきながら、今後の展開… 栗宮さんの告白された際の返し言葉を必死に考えていた…。
・・・
そして、すべての授業が終わり、ホームルームが終わると、生徒達が続々下校して行く… 栗宮さんが告白時間に指定した、放課後と言う時間帯になった。 いつもなら、このままランドセルをしょって下校するのだが、今日は違う… 僕はランドセルを机に置いたまま、教室を出ると、廊下を歩き、下駄箱に向かった… そして、意を決して靴を履くと、栗宮さんの指定した体育館裏倉庫へと歩いて行った。
体育館裏倉庫とは言葉通り、体育館の裏にある大きな倉庫がある場所である。 体育祭・文化祭で使う看板・設備等はほとんどここにしまわれていて、そのイベントが無い限り、人の姿はまったく無いと言っていい場所だった。 だが、今日は違う… 今日は恐らく… そんな事を考えてると、体育館裏倉庫に着いた。
そこには僕よりも早く栗宮さんがいた… だが、栗宮さんから数メートル離れた場所に数人の聴衆が木陰や体育館や倉庫の壁等に隠れ立っていた… まあ、そうだろう… 何故ならこの聴衆は僕が呼びよせたのだから… 島田や連れ人に頼んで…。
(け、結構な聴衆が… 集まったんだな…)
自分がこの学園で、女子生徒全員からどんな目で見られているのか… それがよくわかる…。 ぱっと見、聴衆に男子の姿はなく、ほとんどが噂好きと色恋沙汰が好きな女子で、そこにはやはり… 足田とその取り巻き達が木の陰で隠れて見ていた。
そして、遂に告白タイムがやって来た…! 僕は栗宮さんと対面すると、栗宮さんはこの日の為だろう、ボサッとした髪を少しだけクリップで整え、少しだけ化粧もしているようだった… それで物凄く可愛くなったわけじゃないが、意外に整った顔をしていたんだなと… そんな事を思った僕だった。 そんな栗宮さんはすごく緊張した口調で僕の名前を呼び
「風間君… 来てくれて、ありがとね…」
愛の告白が今始まろうとしていた… 決して自慢じゃないが、このような状況は初めてではない。 強気・弱気な女の子も関係なく、この時ばかりは物凄い緊張と覚悟を持って僕を呼び出し、僕の事を好きですと喋るのは、どの女の子も変わらない。 だが、この日の僕は栗宮さんに対し
「うん、それで何の用だったかな?」
そう、何も知らなそうに淡々と答えた… この状況でこんな事を言うバカはいない。 僕はわざとこう答えたのだ… すると、栗宮さんは遂に緊張と震えた声で
「風間君… あなたの事が… 初めて会った時から… ずっと好きでした…! 私と付き合ってください!」
そう言って、深々と頭を下げた…。 正直に言うと… 僕は栗宮さんの事は好きだが、好きのベクトルが違う… お友達として仲良くしたいだけで、恋人になりたいかと聞かれたら… それは違う。 なので、お断りをしなければいけなかった… だが、今まで考えていた事は、断るのを前提にこれからもずっとお友達でいる関係を続ける事が出来ないかなと考えていたが… 考えれば考えるほど、そんな事は不可能だと思うようになった… 何故なら僕がそうだし、そうゆう感覚は島田も連れ人も足田だって同じなんじゃないかと… 虫が良い関係はこの子だって望んでないはずだ…。
(いや… それはもう、どうだっていい…)
この状況… もう普通の断り方じゃ、栗宮さんを足田のイジメから離すことはできない。 なので、この瞬間… 僕は心を悪魔に変えて
「栗宮さんが、僕の事が好き? え? ちょっと待って、何かの冗談だよね?」
そう、嘲笑うように言い放った…。 すると、栗宮さんは頭を上げ目を見開きながら
「え?」
とだけ言った… そして、その表情は、ショック、失望、失恋… そんな感情がシェイクしたような顔で僕を見つめた。 それでも、僕は続けて
「正直に言うと、今まで君を見てきて、何かこう… 可愛いとか美人とか、そう思った事が一度もないんだよね!」
続けて嘲笑うと、栗宮さんは硬直しながら
「そう… だった… の…?」
と言った。 僕は続けて
「この際だから、もうはっきり言うけど… 僕はちょっと珍しいゲームをするってだけで、別にゲームオタクってわけじゃないんだ。 なのに栗宮さん、聞いてもすらもないゲームのウンチクをアレだこれだ長話して… 正直うざかったんだ」
「え…」
「もうさ、今日から僕に距離取ってくれる? 正直君と一緒にいると女子に変な噂流されてさ… 足田さんみたいな美少女ならともかく、君みたいなのと… そうゆう噂されるの、今までずっと不快だったんだよね。 そうゆう事だから… じゃあ」
そう言い放って、僕はツカツカと歩いて元来た道を戻って行った…。 後ろを振り向いたわけじゃないが、栗宮さんはボーっと突っ立ったまんまでボソボソと
「ごめんなさい… ごめんなさい… ごめんなさい…」
3回言った辺りから、悲痛な泣き声に変わった… もちろん、それは僕の耳にも深く届き、逃げるようにこの場を早々と去ってのだった…。
…それから僕は体育館裏倉庫から程近い、裏校庭にある生物園の隣にある男子トイレの個室に入り、和式便器の水溜まりを眺めながら、ひどい自己嫌悪に陥っていた。 いくら栗宮さんのためとはいえ、あんな言葉を言ってしまった… しかも、勇気をもって告白して来た女の子に対してだ…。 もしかしたら、ああすればよかったか? こうすればよかったか? 何て今更あれこれ思案してしまったが、もうすでに何もかもが遅かった。 一つだけわかる事は、あんな事を言ってしまったら、栗宮さんと顔を合わせてしゃべり合う事はもう2度と無いだろうと言う事…。
…僕はまたしばらく放心と自己嫌悪でその個室に籠もってると、このトイレの男子トイレと女子トイレの真ん中にある、障がい者トイレの方から、女の子達の明るい笑い声が響いた。 その女の子達は数人で一緒に障がい者トイレに入ってったらしく、しかも、この公衆トイレは天井が解放されてるため、耳が良ければ女子トイレからのオシッコ等の音が聞けるほど、耳に響き渡るトイレなのだ…。 だが、障がい者トイレに入って来た女の子達は
横峯「プッハハハハハ! まさか! あんな盛大に振られるなんて思ってもみなかったよ!」
あいつらだった… 足田とその取り巻き… こやつらは栗宮さんの失恋を嘲笑いながら
安藤「だから言ったじゃん! キモオタのブスで低カーストの栗宮さんが、風間君と付き合えるわけがないって!」
横峯「てかさ、風間君が栗宮さんをあんな風に思ってたのなら… 今までのシメは必要なかったんじゃないの?」
安藤「そうだよ。 実は私、最初からね… 放置しても大丈夫なんじゃない?と思ってたんだ。 今までやってきた事は無駄骨だったんじゃない?」
足田「…」
だが、よく声を聞いてみると、大きな笑い声を上げていたのは横峯と安藤だけで、他の3人はそんな笑ってはいなかったようだ。
中田「でもさ… 断るんだろうなって事は若干わかってたけど、断り方ってのがあるよね…」
三浦「そうだよね…。 風間君って優しい性格かと思ったけど… 案外結構、冷酷な人だったんだね…」
横峯「あ! それとさ! 風間君振るときにこんな事言ってたよね! 噂されるんなら栗宮じゃなくて、足田さんとされたいって! よかったじゃん! 風間君はあなたの事好きだったんだよ!」
安藤「聞いた聞いた! あれすっごい意外だったよね! よかったね! 足田さん!」
三浦「い、意外って…」
三浦がそう言うと、足田は数秒の沈黙の後
「…ねえ? 何か変じゃない? 風間君の言った通りなら、何で私に一つも興味を示さないの?」
安藤「あ… 確かに…」
足田「それと、あんなに仲良かった風間君と栗宮さんが、何で告白であんな手酷く断ったの? 何か突っかからない…?」
横峯「確かに… あの2人って結構仲良かったよね? 例え恋愛関係になりたくなくても… 普通はもっとさあ…」
三浦「仲良くなってからどん底に突き落とす… え? 風間君って、そうゆうサイコパスなのかなの?」
中田「それとも…! 私達のイジメが風間君にバレて! それを感じ取った風間君が…!」
安藤「何そのつまんなそうな少女漫画の展開は…! 私達が栗宮さんをシメてたのは、トイレとか、更衣室とか、この間のシャワー室とか… 絶対バレないような場所でしょ? あ… でも、栗宮さんの口からそう聞いたら…! え!? まずくない!?」
横峯「それは平気だと思う…。 2人が誰かにちくったとしても、証拠なんてないしね… ケガの後でもあったら話は別だけど…」
安藤「例えそうだったとして… こーんなまどろっこしい方法なんてするかな?」
横峯「もういんじゃない? これで、私達が栗宮さんと関わる理由はもうないんだからさ…」
三浦「それもそうだね…」
安藤「あ… あの… 足田さん? さっきからずっと座ってるけど… オシッコなんだよね?」
横峯「うん? クンクン… くっさ! ウンコならウンコって言ってよ!」
足田「うるさいわね!」
そんなやり取りを最後に、トイレから出て行った…。 足田達の話を盗み聞く事ができて、僕はほんの少し安心したのだ… もう、あの取り巻きが栗宮さんに何かするって事はもうなくなったからだ…。 僕は大きな後悔と小さな安心を抱きながら家路に着いたのだった。
・・・
・・・・・・
それから2週間くらいが経ち… 僕と栗宮さんはあれ以来、メールも電話も学校で話す事もなくなってしまった。 階段や廊下ですれ違っても僕は目を逸らし… 栗宮さんも悲しい表情をしながら目を逸らす… お互いこんな生活が続いたが、時折連れ人に栗宮さんの近況を聞くと、特に変わった様子はないとの事だった…。 だが、足田さんからのイジメが続いてるかどうかまではわからなかった… たぶん止んでるんだと思うが…。
しかし、この結末で良かったかと聞かれるとそうでもなかった… あの告白以来、僕の学校生活は家と学校を往復するだけの気だるいものとなり、栗宮さんとの何気ない会話は自身の学校生活を大きく充実させていたものだったと、今更気づくのだった! そして、そんなある日の昼休み… この日は僕と島田と連れ人123の5人で裏校庭のベンチで屯し喋っていた… すると、島田が自慢げに
「etcそれで遂に! 今週の日曜にな! 親に内緒で遂に買ったんだよ! じゃじゃーん! 自分だけのタブレット! その名もファーフェイaシリーズ357! 25000円! お小遣いを貯めて、やっと買ったんだよー!」
と言いながら、使い古されたであろうボロいタブレットを見せつけて来た… 僕らはそれを聞き、ブツを見た瞬間
連れ人2「えww 中華製のタブレットww しかもファーフェイってww」
連れ人3「25000円ってww やっすww ボロボロだけどそれってもしかして中古品?ww」
連れ人「いやあのー、自分だけのタブレットって…。 今の時代、しかもうちの学校でスマホだタブレットだ持ってない生徒なんて見たことないぞ…? てか、タブレットなら学校用のがあるし…」
何て評価されても、島田は続けて自慢気に
「お前ら話聞いてたか? 俺だけのタブレットって言ったろ? どーせ、お前らのスマホは親にがっちりペアレントコントロール入れられてるんだろ? 俺のは違うぜ? ネットのどこでもアクセスできる本物のタブレットさ!」
すると、連れ人3人はバカにした表情から一変し
連れ人「え…? まじで…?」
連れ人2「どこでもアクセスって事は… つまり…」
連れ人3「エッチなサイトも… ゴクリ…」
羨望の眼差しで見ながら言うと、連れ人達は興奮しながら触らせて!操作させて!ちょっと貸して!と鼻息を荒くしながら島田のタブレットに手を伸ばしたが、島田は自慢気に紹介したタブレットをポッケにしまい
「だーめ! これは俺の宝物だ! ほしかったらお前らもアキバに行ってジャンク屋漁れよ! 中華系がおすすめだぜ!」
連れ人「どうせお前、そん中にエロ画像と動画が満載なんだろ…?」
連れ人3「エ… エロ動画が満載… ゴクリッ」
島田「ああ! そうだよ! ぶっちゃけそれ目当てで買ったようなもんだしー!」
連れ人2「ハハハ! だと思ったよ! …ねえ? この後放課後、ちょっとだけでいいからetc」
(まあ、プールのシャワー室覗くよりは… よっぽど健全で合法ではあるが…)
何てバカな事を心で思った。 4人はこの後もバカな会話を繰り広げていて、僕はその様子を失笑を交えながら見ていた。 島田はこの学校唯一の友達で、庶民階層同士でもあるためか、何かと気が合う所も多く、一緒に行動していて楽しいっちゃ楽しいし、親友である事に変わりはないのだが… 正直に言って、栗宮さんのような知的好奇心を刺激し合うような会話は一切できなかった。 島田のような気が合う所もあり、なおかつお互いの趣味が合って、性格も合って、価値観も合って… そんな合う合う同士だったのが、栗宮さんでもあったのに… 僕はその子を… 冷たく突き放してしまったのだ…。
・・・
・・・・・・
そして、梅雨の開けた7月中旬の金曜日… 世間は1週間後に夏休みを控えていた。 そして、僕は相変わらず家と学校の往復、島田達の繰り出す何一つ興味のない話題、つまらない授業… その何も満たされない日常が耐えられなくなっていた。
そして遂に! とある金曜の午後9時… 気づくと僕は栗宮さんに謝罪のメール文を書いていた。 正直、僕がこんな事できる権利は全くなかったが、それでも栗宮さんとお話がしたかった… 告白以前にしていた何気ないゲーム・アニメ・学校の話題をまた再開したかった…。 その仲を回復するために謝罪文の作成をし、誠意を込めて今まで語らなかった真実を書き綴った… 僕の何気ない行動で、栗宮さんが足田さん達にイジメられていて、その現場を目撃してた事(流石にシャワー室を覗いた事は書けなかったが…)。 僕が栗宮さんの指定した告白場所に、わざと足田さん等の聴衆を集めた事。 あんなひどい告白の断りを言ってしまった事… これらすべての行いを謝罪し、これからは足田さんからのイジメが始まったとしても一緒に対処していこうと… そんな事をメールに打つと、結構な長文になってしまった…。 そして僕はその長文を何度も確認しておかしい所・誤字脱字が無いかをチェックすると、メールを打ち始めた40分後にようやくこの誠意のこもった謝罪文を送ったのだった… が、しかし!
(え…? あれ…? な、何でだ?!)
メールの送信ができなかった…。
(いや! おかしい! 告白の2日前は全然トラブルなく返信できたし! メールアドレスもいじってないし…!)
その後も僕は電波の不調かなと思いつつ、時間を分けて10回くらい送ってはみたが、すべて送る事はできなかった… そして、居間にあるWi-Fi機器経由でも何度か送ってはみたが、すべて送る事はできなかった。 この時、僕は悟った… 送る事ができないのではなく、栗宮さんのスマホから僕のメールが遮断されたんだと… 僕は部屋に戻ると、告白後の自己嫌悪が襲い掛かり、ベットで寝転みながら
(そうだよな… そうだよ… 何考えてんだ僕… 告白してきた相手を… あんな酷い断りを言ったのに… 今後もメールしようなんて、思うわけがないだろ!)
そう後悔しながら、スマホで疲れた目を休めようと目を閉じたが、深く眠れないまま朝を迎えてしまった…。
・・・
そして、翌日の土曜日の午前10時、僕は上り電車に乗っていた… 栗宮さんの自宅に直接向かうためだった! 僕はまだ諦めていなかった… メールがダメなら、直接謝罪の言葉を口にしようと…。 だが、そうは簡単に思っても、いざ実行してみると、僕の心は… 初めて栗宮さんの家に踏み入る時の緊張よりも、また違う緊張が渦巻いていて
(でも、どの道… こうゆう謝罪はメールじゃなくて直接口にしないとダメなんだよな…)
電話をすればいいじゃん、と思われるかもしれないが、実は僕と栗宮さんは家族以外の電話を取るのが苦手で、電話番号を登録し合ってないのだ…。 島田ともそんな感じで連絡し合ってるのだが、島田は僕と同じような感覚はなく、たまに電話を掛けてくる時もある…。 なので、栗宮さんとの通信手段はメール以外ないのである。
僕はそんな事を思いながら、駅から降りると、この前栗宮さんに送られたメールを元に、再びそのマンションに向かった。 そのマンションに無事に着くと、僕はマンションに入り、エレベーターに乗り、栗宮さんの住んでる階に降りて歩くと、目的地の号室へと辿り着いた。
(そういえば、この隣が足田メンバーの取り巻き… 三浦が住んでるんだっけ… だから、なるべくメールで場所とかを指定したかったけど… いや! もう関係ない! 僕は足田と、その取り巻きと戦うために来たのだから!)
そう奮い立たせながら、インターホンを押した…。
ピンポーン…
軽快な電子音が鳴って数十秒が経ったが、誰も扉を開ける気配がない… 今日は土曜日だから出掛けているのだろうか…? それとも…
(あんなひどい断り方をして… それを、栗宮さんがお姉さんに伝えてたとしたら… 2人はインターコム越しで、今更どの面下げて会いに来たの!? 何て思われてるのかもしれないな… いや、そうだろ)
そんな事を思うと弱気になったが、僕は頭を横に振り
(いや! そうだとしても! 今日はその誤解を解くために謝罪と真実を伝えに来たんだ! 冷たい目で見られたとしても、ここで退くわけには…!)
そう思い奮い立たせ、もう1度インターコムを押したが…
ピンポーン…
誰も出なかった… と言うか、誰も出る気配がない…。
(本当に出掛けてるのかな… そうだよな… 今日は土曜日だし、突然の来訪だし… なら、買い物って線もあるか…?)
その後も20分後… 40分後… 1時間後… を目途に、栗宮さんのマンション周辺を徘徊しながら訪ねてみたが、一向に出る気配がない…。 仕方ないので僕は一旦帰路に着き、午後にまた再訪し、午前に来訪した時と同じようにインターホンを押したのだが… やはり出る気配がない。
(どうしたのかな…? 日帰りと泊りがけで出掛けてるのかな…?)
そんな事を思いながら、今日は諦め帰路に着いたのだった。
…そして、翌日の日曜日。 また昨日と同じように午前と午後にわけて訪ねてはみたが、それでも一向に出る気配がなかった…。 そして、太陽が夕日に変わる頃、僕はドア前で
(何でいないんだろう? 土曜日曜で泊まりに行って、夜遅くに帰って来るのかな…? では、しょうがない… また、来週か再来週に訪問して… いやダメだ! 来週からは夏休みが始まる…! その初日に、僕は両親の都合で山梨のド田舎で、夏休みが終わるまで預けられなきゃいけないんだ! そうなったら、夏休みの終わりまで会えない事になる!)
そうは思っても、栗宮さんが家にいないのだから仕方がない…。 僕は残念と疲れた表情で帰路に着き、今後の出方を考えていた。
・・・
そして、翌日… 月曜の昼休み。 僕は昼食が終わるとすぐに教室を出て、廊下を歩いていた… 栗宮さんに会うために1組へ向かっていたのだ。
(メールは送れない… 家にもいない… 夏休みが始まったら会えない… ならしょうがない! 1組に乗り込んで、直接話すしかない!)
そう決意しながら廊下を歩き、渡り廊下を歩き、1組がある別棟の校舎に入って行った… 僕や島田が所属する2組3組とは違い、1組は新校舎にある。 そして、僕は1組教室の目の前まで着くと、急に緊張しだしてしまった…。
(やっぱ1組って… 何となくだけど、雰囲気が違うんだよなぁ…)
前にも説明したと思うが、1組は政財界のお坊ちゃまやお嬢様と言う人達だけじゃなく、その中でも受験や試験で成績上位者しか在籍を許されない、言わばエリート中のエリート集団なのだ…。 その教室を恐る恐る覗いてみると、まあ… エリートとは言っても休み時間の過ごし方は僕のクラスと変わらないようで… 本を読んだり、喋ったり、寝ていたり… みんな思い思いに過ごしている。 僕は一通り1組の教室を見渡してみたが…
(あれ…? 栗宮さんの姿が見当たらない…。 病欠か? それともトイレか…?)
そんな事を思いながら見渡していると、不意に後ろから
足田「あれ? 風間君じゃない! どうしたの?」
横峯「やっほー! 風間君!」
その声を聞いた時、思いっきり引きつった顔をしたと思う… 足田と横峯だった… 寄りによって1番で会いたくない連中に声を掛けられてしまった。 僕は引きつった顔を戻しながら振り向くと、そこには2人が立っていて、足田は屈託のない微笑みで
「風間君がここに来るなんて珍しいね! 誰か探してるの?」
何て聞かれ、僕は急にどもってしまい
「あ、あ、ああー…」
なんて声を出してしまった…。 だが、足田に話す事なんて何一つなく、栗宮さんと会うのも、絶対ではないがこ奴らに知られたくはなかった…。 そして、僕は思わずこんな嘘を付き
「あ、会わなきゃいけない人がいたんだけど、名前を忘れちゃって…! 男の人なんだけど… いないみたいだから、もう行くよ。 じゃあね」
とりあえず… 最近いつも島田と一緒にいる、連れ人を探しに来たという設定で足田に嘘を付いた。 そう嘘を言い、背中を向けて、立ち去ろうとしたその瞬間、横峯が
「あー… てっきり、栗宮さんに会いに来たのかと思った」
そして、足田は興味も無さそうな口調で
「でも、あの子転校したじゃない」
そんな言葉を聞いた時、足が自然とピタリと… 止まってしまった。 あまりに衝撃な言葉に、僕は頭が混乱してしまい…
(栗宮さんが… 転校? え、転校って何だ?)
いや、転校と言う言葉は知っている… だが何故転校したのか…? 思わず僕はこの2人に、放心しながらその事を聞いてみると、足田は考え込みながら
「うん、2週間前にね… 担任の先生から急に、栗宮さんは諸事情で転校しました、って、それだけ伝えられたの…。 いや本当に! それだけしか聞かなかったのよ…! 何の前触れもなく、突然転校しちゃって…」
横峯も首を傾げながら
「ほんっとに何の前触れもなかったよね… 何処に転校して、何処に引っ越したかもわからないし…。 こーゆーのってさ、数週間前に告示して、みんなで寄せ書きしたり、お別れ会みたいのやったり… って言うのが普通じゃない?」
足田さんは残念そうな表情で
「残念だったよね… 風間君、栗宮さんと仲良しだったのに…」
2人は栗宮さんに、あんな非道な事をしていたくせに… しゃあしゃあとそんな言葉を言い放った。 そして、遂に僕は2人の言葉に鬱憤が爆発し、足田の首襟を掴んだ! 僕は大声で怒鳴りながら、まさか告白後もあんな非道なイジメを続けていたのか!! お前らは!! っと不意な怒声に、足田は驚きたじろきながら!
…………なんて事はなく、僕にそんな事をする度胸も根性もなかった。 僕は愛想笑いで2人に別れを告げると
足田「あ! そうだった! 実はね、近いうちにまたお茶会を開こうとetc」
僕は足田の誘いを適当に受け流し、放心と考え込みながら廊下を歩き、裏校庭に出ると、いつもの場所で島田達に合流した。 そして、僕は同じクラスの連れ人に、栗宮さんの転校の詳細を聞いたが、ほぼ足田と横峯の言った事と変わらなかった… 本当に突然転校してしまったみたいだ…。 続けて僕は、告白後の栗宮さんの様子を聞いてみたが、特に変わった様子もなかったと… イジメに関しても聞いてみたが、それはわからないと言われた… 確かに、連れ人は女子のいざこざに全く興味がなさそうだし、足田達も大胆にクラスメートの面前でする事はないだろう…。
こうして、また一つ… 僕の人生に女難と言う災厄が訪れ、それに何とか対応しようとした結果… 学校で唯一の親友を失う、最悪な結果になってしまったのだ。 僕はその事を今だ引きづったまま、夏休みを迎えてしまった。
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僕の自室にて… 今まで苦しめられた女難の人生を2人に語り終えた。 複数の女の子達が僕に好意を持ち、言い寄り合ったその瞬間、その友達・知人・又は他人同士が憎き恋敵に変り、お互い排除しようと争ったりするのはいつも通りの流れなのだ…。 それだけではない… 僕自身もどこぞの男に恋敵に認定されてしまい、悲惨なイジメを受けたり… あるいは同性からも言い寄られて無理やりキスや、体の一部を触られたり…。 そうして、なんやかんやで最後には誰1人幸せとは逆の結末を迎えてしまい、最悪な形でフェードアウトしてしまうのだ…。 話の途中、加奈子お婆さんが夕食の時間よと伝えに僕の部屋を訪れたが、シロ姉さんが対応し、また元の位置へと座って聞いた。
すべてを話し終えた後、僕は何故だがスッキリした感覚になった… 今まで誰にも話せなかった… いや、両親には話したが、お前はほんっとにモテて羨ましいなー、なんて苦笑しながら言われるだけなのだ… まあ、流石にイジメだ性被害は重く受け止めていたが…。 この話をしたのは、両親以外にこの2人が初めてだ… 2人はしばらく黙っていて、僕は反応を伺った…。 すると、シロ姉さんは横に体を向け、なんと僕の首と頭に手を回し!
(!!??)
巨乳の真ん中に頭を埋められた…! そして、シロ姉さんは僕の頭を撫でながら
「よしよし~… 怖かったね~、辛かったね~」
と、優しい声で言ってくれた…。 その声を聞いた瞬間、目の琴線が緩み、涙が再び溢れた… 僕の心に何かが触れたのだ…。 まあ、それもあるのだが… あのシロ姉さんの巨乳が僕の顔に密着した時、スケベ心も同時に触れてしまい、チンチンが勃起して短パンが盛り上がる感覚に少し焦ってしまった…。 それともう一つ、巨乳の発する甘い体臭は、突如郷愁感に浸らせ
(そうだよ… 僕は小さい頃、シロ姉さんのこの香りが大好きだったんだ…)
そんな3つの思いをかみしめながら、しばらくシロ姉さんの柔らかい巨乳に頭を埋めていた… 麻里もこの事は何も言わず、黙って僕の背中を撫でるだけだった。
・・・
あれから数十分後… 僕はシロ姉さんの巨乳を存分に堪能した後、おしゃべりタイムと言うわけではないが
シロ姉さん「全然関係ないけどさ… ヨシ君が通ってる学校って、あの応慶だったの!?」
と聞かれ、僕は「ええ… そうですけど…」とだけ答えた。 この反応はシロ姉さんだけではない… 親戚や知り合いに私立の何処に通ってるかと聞かれ答えると、大抵こうゆう反応をされるのだ… 僕自身は日本中にある私立学校の一つとしか考えてなかったのだが、この反応を見ると僕の学校が如何に有名な学校なのかを身に染みてわかるのだ。 そして、麻里が驚きながら
麻里「まあ、人違いだとは思うけど… あんたの言ったアシダってさ… 超有名人の、あの人ではないんだよね?」
シロ姉さん「ううん! あの人は学年も歳も全然違うし! ヨシ君の言ってる足田さんって同級生だから…」
僕は全然違いますよと言った。 まあ、足田もモデルか何かをやっていて、そこそこの有名人らしく、俳優だ芸能活動にも積極的に活動してるみたいだが… そこら辺は鳴かず飛ばずみたいだ。 そして、シロ姉さんは悲しい顔をしながら
「でも、足田ちゃんと栗宮ちゃんのいざこざは… もうちょっと何とかならなかったのかなー…」
すると、麻里は冷静に
「無理じゃない…? 栗宮さんが足田さんにイジメられてた現場は、たまたまヨッシーが女子更衣室を覗いてたからでしょ? それじゃあ、あんま身動きはできないよね…」
女子更衣室ではなくシャワー室である… それと… 覗いてたと言う点では間違っていないが、先ほど話した通り、僕の場合は少し状況が違う… と思う…。 その事を麻里に訂正しながら言うと、シロ姉さんは足田に非難しながら
「でも! いくらヨシ君の事が好きだからって… 足田ちゃんのやった事は絶対に許される事じゃないよ~…! そして、あの子は何の咎めもなく、今も普通に学校生活を送ってるんでしょ~?」
そう言った。 麻里も足田を非難しながら
「表の顔は優等生、裏じゃコソコソ弱い者いじめね…。 足田ほどひどくはないけど、私のクラスにも似たような奴がいるわ…」
非難と半ば諦めながら言ったのだった。 僕は今まで長々と話してしまったが、シロ姉さんは要件をまとめ出し
「まあ、つまり~… 今まで仲良くしてきた女の子達が、ヨシ君に恋して、それで喧嘩になったり、険悪なムードになったりしたのを間近で見てきたから~、私達がそうなるんじゃなかと心配して~… それで、顔を合わせないようにしてきた…。 そうゆう事かな~?」
麻里は少々な不満で
「そんなとこでしょうね… でもさ、ヨッシーが付き合って来た女の子達の行動が、私達にも起こるかもしないってー… それはちょっと早計じゃないの?」
確かにそれもある… 僕は続けて、2人から距離を取るに至った、あの悪夢の夢と、2人が僕を巡って少し喧嘩になった事を話した。 麻里は悪夢の話を聞くと困惑しながら
「え… 私が… シロお姉ちゃんに頭を掴まれて… 水責めに…?」
シロ姉さんは麻里以上に困惑しながら
「それで、私がデッキブラシを持って~、麻里ちゃんの頭に~… わ、私って、そんな怖いイメージあった~?」
僕は慌てて謝罪すると、麻里は苦笑しながら
「いやでも、夢は夢じゃない…。 まあ確かに、そこいらのホラー映画よりかは、ちょっと怖いかもしれないけど…」
シロ姉さんは同情しながら
「まあ、確かにー… そんな怖い夢見ちゃったらー… 警戒しちゃうのもわからなくはないけど~」
ただ、それだけではない…。 2人が僕を巡って口喧嘩になったり険悪なムードになった事を聞いてみたが… 何故か、この時の2人は若干口を濁したような感じで
シロ姉さん「そ、そりゃあ…! 一緒に住んでることもあれば、口喧嘩の一つや二つ… よくあることだよ? 確かに、ヨシ君がここに来てからは~、そうゆう事はなるべく控えてきたからね~」
麻里「そう、だよね…。 私達って色々な食い違いとか、意見の相違とか… そうゆうの、結構ある者同士だからさ… だからと言って! 仲が悪くなってるとか、そうゆうわけじゃないからね?」
シロ姉さん「そうそう! 他の女の子達みたいに、ヨシ君を巡って絶縁になったり… 悪夢みたいな事になるのは、絶対にないから~… そこら辺は全然安心していいからね~」
麻里「た、確かに、ヨッシーの事は好きと言えば好きだよ。 でも… シロ姉ちゃんと奪い合いになって関係悪くしてでも付き合いたいと言われたら… そこまでではないよ!? そこら辺はあんまり自惚れないでね!」
シロ姉さん「いくら好きな人にいっぱい恋敵がいても~… その人達を排除するだけが恋愛ってわけじゃないと思うんだ~…。 その人が他の人と付き合って~、その人の幸せそうな人生を見守るのも~、それもそれで一種の恋だと、私は思うな…。 あ、これはちょっと持論だったかな? アハハハハ…」
僕は2人の口調にあまり釈然としないまま
「そうだったんですね」
と言った。 そして、数十分後… なんやかんやと話し合って、ようやく僕ら3人は遅めの夕食を取った。 加奈子お婆さんはすでに食べ終わったようで、僕ら3人いつも通りに和やかな雰囲気で食卓を囲んだ。 そして、僕はご飯を食べながら、部屋で話し合った事をもう一度思い返してみた… シロ姉さんと麻里が今後、この2人が僕を巡って険悪になるムードはもう無いと言えるのは確かだった…。 だが、僕に対する2人好意に関しては今だ解決していない… その事をご飯を食べながら考えた結果、いや… もう答えはぼんやりと浮かんでいるのだ…。
(そうだよね… もう、チャラチャラした関係は断ち切らないと… 僕は…)
そう、身を引き締めながら思い、一つの決断に至ったのだった。
・・・
・・・・・・
その決断を伝える日は、僕の思わぬ場所と状況で起こってしまった…。 それは、翌日午前中の施設から遠くにある畑作業にて… この日は僕と麻里でペアを組み、長い畑作業の内のひと作業を終えると
ガラガラガラ!
と、戸を引き、例のボロ小屋に入って少しばかりの休憩をした。 現在午前10時半、炎天下の中で畑作業をしていた僕らは汗びっしょりになっていて、土間の上にある畳に座ると、氷の入った水筒をガブガブと飲んだ。 そして、麻里は氷の入った水筒を飲み終えると
「プハーッ! あっつー…! 休憩しないと絶対熱中症と日射病になるわ!」
何て言いながら上着を脱ぐと、畳に寝転んだ…。 だが、その数十秒後…
「でも… この小屋もあっつー… こんな日は施設の畑で作業したかったなー…」
確かに、麻里の言う通りここも暑い…。 このボロ小屋にはクーラと言った便利な家電は無く、窓を開けても風は少ししか入らないし、室温は外とそんなに変わらない気がする… 直射日光を直接避けられるというメリット以外は何もない。 施設横の畑なら、クーラが回った居間でゆっくり休憩できるのだが…。 すると、麻里は起き上がり
「はぁ… 暑いから、水でも浴びよっかなー」
そんな事を言いながら、小屋に設置された洗面台に目を向けた… 僕はその言葉に首を傾げ
「水を浴びる…? ああ… 確かに頭を濡らせば多少は違うよね…」
麻里は暑がりながら頭を横に振り、洗面台まで歩くと
「いや、体全体が暑いのよ… だから、服を全部脱いで… 外にあるホースをここに繋げて、ここで水浴びをするの。 もちろん、窓とか全部閉めて」
麻里は水をジャーッと意味もなく出しては閉めた。 この時、僕は一瞬、聞き間違えたのかと思い
「え…? 今… 服を全部脱ぐって言った?」
すると、麻里は当たり前じゃないと言わんばかりに
「そうよ… 服のまま水浴びするわけにはいかないでしょ? シロ姉さんも結構よくやるし。 まあ、加奈子お婆さんは… 絶対しないし、逆に止める立場だけどね…。 でも、これがすっごくさっぱりするのよー」
恥ずかしがらずに堂々と言ったのだ! それを聞いた僕は、少しの困惑と興奮が心を駆け巡り
「そ、そうなの!? ま…まあ、麻里が僕を気にしなきゃ… やってもいいけど…」
そんな事を言った時だった… 麻里は振り向きながら
「ううん、ヨッシーだって暑いでしょ? だから、一緒に水浴びしましょ! それにあんた、畑でフラフラだったし…」
フラフラとは少し誇張してるが、確かに畑作業中はすんごく暑がりながら作業してたのは確かだ… ただ、今それはどうでもよかった。 僕は麻里からの突然の誘いに
「え… 一緒に!?」
正直に言うと、困惑と言うよりかは嬉しかった… 麻里の裸が堂々と拝めるからだ…。 そんな僕はスケベ心を悟られないように、まあ… 暑いししょうがないよね… 何て顔をしながらその事を了承しようとした… だが、その瞬間… 麻里は僕の横に座り、僕の顔をしっかり見つめ
「でもね、その前にさ… 私、今までずーっと聞いておきたかった… いや、前から言わなきゃいけないなとは、思ってたんだけどね…」
そう、真剣な顔で言った… だが、どことなく真剣な顔とは別に… うまい語彙が出てこないが、妖艶じみたと言えばいいのだろうか? 僕はそんな問いに
「う… うん… 何かな…?」
そう言った…。 これはたぶん… 昨日の事もあってか、麻里は僕に何が言いたいのかを容易に把握できた。 その麻里は僕の目をしっかり見つめながら
「単刀直入に言うね… 私とシロお姉ちゃん… どっちを選ぶの?」
やはり、そう来たか…。 だが、僕はこの問いを答える前に、麻里に問わなければいけない事が1つと… やっておかなきゃいけない事が1つほどあったのだ…。 問わなければいけない事と言うのは…
「その前にさ、一つ確認させて…」
「何…?」
「知ってて当然だと思うけど、僕って夏休みの間だけここに居候させてもらってるだけで、最終日は東京に帰らなきゃいけないんだ…」
「うん、知ってるわよ…。 それを込みで言ってるのよ」
「だよね… 今ここで僕と付き合いが成立したとして… 夏休みが終わったらどうするの? ほぼ、メールだけの付き合いになっちゃうけど…」
「うん… 私もそれ、ずっと考えてたんだ…。 加奈子おばさんから聞いたけど、ヨッシーって三鷹に住んでるんでしょ? だとすれば、中央線でほぼ1本じゃない。 流石に毎週は会い行けないけど、月に3回くらいは… 会いに行けなくもないかなー… なんて…」
「月3で行けるの!? えと、それは… 日帰りでだよね? 往復の電車賃とかも計算に入れた?」
「あー… えとー… 土日でお泊りとかはー… ダメかな…?」
「お泊り… こればかりは改めて両親に聞いてみないと…。 たぶん、ダメと思った方がいいね。 まあ、僕は全然構わないんだけどね…」
「じゃあ、ヨッシーはこっちに来れる? うちはいつだってOKだから!」
「そうなると… 三鷹からここまで往復の電車賃はいくら掛かるのかな? 子供料金だから… 多少安いにしても手痛い出費だし…。 いや! そもそも、両親は許してくれるのかな? これから中学受験とか始まるだろうから、毎週土日は塾とかに行かされると計算して… 月3どころか、月1さえもかなり厳しいんじゃないかなー…? しかも、1人で遠くにお泊まりかぁ… この施設だからとは言っても、両親は許可してくれるのかなぁ… いや、たぶんこれもetc」
僕は思考を巡らせながらそんな事をブツブツと呟いた… その時、何故かわからないが、麻里は突然怒りだし
「もう! あんたは好きな子より! 両親の意見と、交通費の方が大事なの!?」
突然の怒鳴り声を上げられ僕はびっくりし、怒った声でなだめながら
「仕方ないだろ! 僕達は子供なんだから! そんな煽るように怒ったって、無理な事は無理だよ…」
すると、麻里は申し訳なさそうに
「…ごめん」
と言った…。 まあ、麻里の言い分もよくわかる… 僕だって同じ気持ちなのだから…。 だが、経済的な理由と、子供としての活動範囲… こればかりはどうしようもない。
そして、やっておかなきゃいけないもう一つと言うのが… これは、麻里には言えない重要事項なのだ…。 それはというと、シロ姉さんの事だ… 正直な話、シロ姉さんは僕をどう思っているのだろうか…?
(口には決して出せないけど、僕は… 麻里よりもシロ姉さんが好きなんだ…! そして、シロ姉さんも僕の事が好き… それはお互い確認しなくたってわかる…。 問題と言うのが…)
シロ姉さんと僕は、大人と子供… お互い決して、恋愛関係に発展して言い年齢ではないのだ。
(性別が逆だったら大問題なわけで… いや、同じ事か…。 つまり、問題と言うのは…)
今この瞬間… 麻里の告白を断った後に、僕がシロ姉さんに告白したとしよう… お互いが好きであっても上記の問題で断られる可能性は十分にありえるのだ! まあ、何が言いたいのかと言うと… 単刀直入に言って、麻里をキープしたいのだ… 別にこれは、やましい考えとかではなくて! 正直に言うと、僕はシロ姉さんが大好きだ… 同じように麻里の事も好きでもある…。 だから…
(そうだよ…! シロ姉さんと僕との年齢的な問題は… 前からどうしようかと思ってたのに…! そして、僕が勇気なくグズグズしてるせいで、順序が逆になってしまって…! あーもう! この根性なしが…!)
そんな事を後悔した表情で思っていると、麻里は僕の顔を覗き込み、何か勘ぐったような表情をしながら
「ねえ、ヨッシーってさ… 真白お姉ちゃんに、まだ思い伝えてないの?」
「え…? あ… その…」
そんな質問に、思わず僕はどもってしまった… すると、麻里は僕を軽く睨みながら
「ねえ? まさかとは思うけど… シロ姉さんに告白して振られたら、次は私に行こう… そんな事、思ってないでしょうね?」
「え…?」
僕はこの言葉を聞き、驚愕した! 麻里は超能力者なのかと! そう、心の中で驚きながら、慌てて
「そそ! そんなことないよ! 僕もそんな事されたら気分悪いし…!」
「その顔… ま、まさか図星だったの?!」
そういえばそうだった… 夏休み始まりから麻里と暮らしを共にした時… 最初会った頃は不愛想で人付き合いが苦手な子なのかなと思ってたけど、とんでもない…! 冷静沈着で頭が良く、美人でおしゃべり上手で、先ほどのように勘が鋭い! シロ姉さんからも、お友達がいっぱいで社交的… なんて評価されていて、最初は疑ったがそれを頷けるほどの人格を持っている事に最近気づいた。 観念した僕はこの時、自身の立てた見苦しい告白計画をきれいさっぱり白紙にする事を決めた。
(まいったよ。 この子は何でもお見通しか…)
そう諦めながら思った…。 すると、麻里は四つん這いになって、僕の顔に更に近づき
「ねえ… 私達がこうやって顔を合わせられる日って… あともうわずかなんでしょ? さっき水浴びって言ったけど… ヨッシーが答えてくれたら… 水浴びなんかより、いっぱい良い事してあげるから…」
麻里は僕に対する思い… その、せき止められた感情が溢れるように、妖艶な表情で… だが、切羽詰まってるようにも聞こえたのだった…。 対する僕は、いっぱい良い事してあげるから…の言葉が頭から離れず、四つん這いになった麻里のお尻、胸、顔、吐息、を値踏みするように見回した… シロ姉さんのようなプロモーションではないにしろ、同い年の程良く発達した体は、良い事以上に良い事ができそうだった… 告白に答えれば、あの体を思いのままにできるぞ! 行け、行くんだ!! と、僕のスケベ心は叫んで命令し暴れていた…! だが!!
(僕のスケベ心よ沈まれ! たかが、そんな良い事をするためだけに、好きと嘘を付くのか!? いいわけないだろ!! 僕はもう心に決めた人がいるんだ! 昨日の夜… 僕は食卓で、誰に思いを告げるのかを!)
そう思い、僕はスケベ心をこの場一時的に殺した…。 そして、冷静になった僕は遂に… 僕に告白した何人の女の子達と同じように、ありきたりな丁寧なお断りを伝えたのだった… 残念だった… この言葉を言った時、もう麻里との恋愛関係は断ち切ったと言っても同然だった。 すると、麻里は
「…」
しばらく悲しそうな瞳で僕を見つめ、目を離すと、自然に座り、ガクッと肩を落としながら視線を床に落とした… その数十秒後、畳の上に両手を広げながら寝転び、大いに苦笑しながら
「はぁーー…! 振られちゃったー! ショックーー! 行けると思ったんだけどなーー!」
何度も経験してきた告白のお断り… だが、今回は何故か僕も残念な気持ちが強く、どんな顔をすればいいかわからない顔をしながら
「ごめん…」
とだけ答えた…。 すると、麻里はそのままの態勢で、少し笑いながら
「はぁ… やっぱオッパイだよねー! アハハハ…! でも、あんたさぁ… シロ姉さんが好きって言ったって、子供と大人じゃないの… あの人、天然でドジだけど、常識外れってわけじゃないからね…。 私の言いたい事、わかるでしょ…?」
麻里もそんな事情はよくわかってるみたいだ…。 その通りである… 前からその事はずっと考えていた… そうゆう世間体と法律は頭で理解できていても… 好きな人は好きなのだ… そうとくれば当然、あんなことやこんなことをしたいと願い… 僕はそんな邪な考えに苦笑しながら、麻里にこんな事を言ってみた…。
「アハハ… そうだよね。 それで、振られたって… おかしな事じゃないよね…。 そうなったら、どうすればいいかな?」
なんて、情けなないと思いながら相談してみたが
「さあ… それはヨッシー達の問題でしょ? 私には関係ないわ…」
なんて、冷笑されてしまった…。 いや、この状況でこんな事を相談するタイミングではないだろうと今思った…。 その言葉を最後に、僕らは数分間黙ると、麻里は起き上がり
「あー! もう! ほんっとに暑い!」
突如そんな事を言い出し、シャツを脱ぎ始め上半身スポブラ姿になった! 僕は驚きながら麻里の姿を見ていると、麻里もそんな僕を見て… そして、こんな事を言い放ち
「ヨッシー! 私、今から水浴びるから! さあ、出てってちょうだい!」
「え、え!? いや! 僕もまだちょっと休憩etc」
…僕は四の五の言う事もできず、ボロ小屋から追い出されてしまった。 そして、麻里は外の水道に付いてたホースを外すと手に持ち
「じゃあ、すぐに終わるからそこで待ってて! 隙間から覗かないでよ!」
そう、言い放つと バタンッ! カチッ! と、戸を閉め鍵を掛けられ、他の窓も同じように全部閉められてしまった…。 そして、中から衣服を脱ぐ音が聞こえると、ジャー! と水の音だけが聞こえた…。 僕はヤレヤレなんて思いながら、小屋壁の日陰で腰を落とし、麻里の水浴びが終わるのを待ちながら、これからの僕とシロ姉さんの関係を改めて考えたのだった…。
その数十分後… 麻里は戸を開けると、体は汗拭きタオルで拭き取ったみたいだが、髪の毛のツインテールは水滴がポタポタと肩に落ちていて、爽快な顔で
「おまたせ! 終わったから入っていいよ! あ! ヨッシーも水浴びすれば? 私、外で待ってるから!」
顔は爽快と書いていたが、目は少し赤く充血していた…。 僕はその表情に戸惑いながら
「うん… あ、いや、やっぱいいや…」
そう、言ったのだった。