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大学3年になり、陸上部の主将に選ばれた俺は、間違いなく大学生活というものを部活に捧げていた。
高校でも陸上部だった俺は、入部してから必死で練習をし続け、タイムは部内の誰にも負けないレベルまで到達していた。そんな自分が主将に選ばれるのはほとんど既定路線で、部を率いる立場となった俺は、一つの達成感を覚えていた。
…主将という立場は自分の自尊心をくすぐるもので。次第に俺は、なかなか成績が伸びない部員、練習量が少ない部員を、厳しい目で捉えるようになった。
「おい、そこ休憩しすぎだ!早くランニング再開しろ!」
「は、はいっ…!!」
特に、この春入部してきた1年生の部員の中には、元々素質がある者もいれば、明らかに実力が足りていない者もいた。うちの陸上部は男女混合で練習を行うため、その主将である俺は、男女両方に対して練習の指示を出して、束ねて、時に叱責して部の雰囲気を作り上げていく必要があった。
5月頃になると、俺が厳しい言葉をかける1年生は次第に固定化されていった。1年生女子の3, 4人はあまり実力が無く、練習でも根性がない。正直陸上部に打ち込んでいるようには到底思えず、どこか心が浮ついているように見えた。
「はあっ、はあっ……」
「疲れた~」
「休憩しない…?」
「お前らっ、ダラダラ走るなっ!あと2周残ってるんだから走れっ!」
「ひっ…わ、分かりましたっ…!」
正直、この1年生たちを心の中で見下していた。実力も、部活に対する姿勢も、自分とはあまりにレベルが違いすぎて、少し腹が立ってもいた。自分レベルの競技者が、この女子たちの指導に何故時間を割かなければいけないのかと思っていた。それ故、部活中に過度にキツイ言葉を投げかけることもしばしばあった。
それで女子たちが落ち込もうが、知ったことではなかった。俺は女子たちに向かってある種高飛車な態度を取り続け、その行為を間違っているとは全く思わなかった。
今日も主将として部員たちを鼓舞する言葉を立派に投げかけ、俺は一人暮らししているアパートに帰るのだった。
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その夜。俺はまた性懲りもなく、大学から支給されたノートPCでサイトを巡っていた。
そのサイトはどれも、"サイズフェチ"と呼ばれる性癖に関連するものだった。
陸上部の主将である自分が、絶対に人には言えない趣味嗜好。自分で気づいたときには、巨大な女子が好きだった。自分が小さくなる想像をすることで、異様なほどに興奮した。理由は分からない。大きな女の子を見上げたり、踏みつぶされたり、握られたり、そんなシチュエーションに何故興奮するのか、自分でもよく分からなかった。
昼間、30人を超える部員たちに対して、特に1年生の女子に対して偉そうな言葉を投げかけている身として、こんな趣味は誰にも言うことができない。
「…サイズフェチ体験エステ……?」
ある日。色んなサイズフェチ系サイトを巡っている最中、そんな情報が飛び込んできた。
「縮小機を使ったサービスってことか…?」
思い返せば、1年くらい前に世界で発明された人体縮小機は、サイズフェチ界隈で大変な騒ぎになったのを覚えている。人の身体を、自由な縮尺で縮めることができるという衝撃的な発明。人間が小さくなるなんて現実的に不可能だと思っていた界隈の人間は、これで長年の夢が叶う、と歓喜したものだった。…しかし現実、こんな機械が一般用に普及するわけがない。こんなものが広がれば、簡単に犯罪し放題になってしまう。人を縮小してしまえば証拠が残らなくなるし、逆に小さくなることで実行可能になる犯罪だってたくさん考えられる。…サイズフェチ界隈の希望に反して、人体縮小機は医療用や介護用など、限定された商用的な使い方のみで普及していった。
その商用的な使い方の範囲が、最近になってある程度広がってきたことは知っていた。しかし、縮小機を使った風俗、というサイズフェチの人間が夢見るようなサービスは、今まで一切出てこなかった。そんな許可は当然国や自治体から降りなかったのだろう。それも当然だ。そんな体格差で行う風俗が許されれば、やはり犯罪に悪用されたり、そうでなくても事故が多発しかねない。
そんな背景もあって、縮小機を使ったそういうサービスが出てくることは、正直諦めていた。
しかし、このサイズフェチ体験エステというのは…
「"あなたは縮小機で身体を小さくし、透明なプラスチックの箱に入ってもらうだけです。その箱は、女の子の自宅に置かれてしまうのです。何十倍、何百倍の巨体をもった女の子が自分の家で自由に生活する姿を、あなたは特等席で見ることができます"…」
ホームページには、そんな説明文が書かれていた。"何十倍、何百倍の巨体をもった女の子"という言葉に、思わず股間が反応してしまう。
さらに、同じサイトの採用情報のページを見ると。
「"Hなことを一切せずに、リッチにお金を稼ぎませんか?あなたは自分の部屋に、小さな人間が入ったプラスチックの箱を置くだけです。そこで自分の生活を見せてあげるだけで、小人たちは喜んでくれるでしょう。アプリで登録さえすれば、あとはマッチングするのを待つだけ。すぐに小さな人間入りの箱が自宅宛てに配送され、あなたはそれを家に置くだけで良いのです!"…」
小さくなった状態で女の子の部屋に運ばれ、アプリに登録している女の子の巨大な生活姿を眺める、というサービス。身体的な接触は一切なく、あくまでリアルな生活の様子を小人視点で見ることができる、というものだった。
風俗のサービスっぽいオプションもいくつかあるようで、
「"箱の上に座る"、"箱の周りを踏みつけ"、"脱衣"、"トイレ"…」
その文字の並びを目に入れるたび、鼓動が早くなってくる。身体的接触が一切無いとはいえ、サイズフェチである自分にとってはあまりにも魅力的なサービスだった。…このレベルのサービスであれば縮小機を使っても良い、と自治体は判断したのだろう。
しかし、そのサービス料金はなかなかのものだった。
「一番安いコースで、一晩10万円…か……」
どうやら夕方に女の子の家に配達され、次の日の朝まで滞在するコースが基本らしい。それが、最低料金10万円。バイトをせずに部活に打ち込み、親からの少ない仕送りで生活している身からすれば、さすがに手が届かない金額だった。確かに、まだまだ製造費が高くて普及していない縮小機を使ったサービスなのだから、これくらい高額なのは妥当ではある。いや、でも、こんな夢のようなサービス…。
「……無理だ」
バイトでもしなければ、こんな金額貯まるはずがない。部活の主将となった今、部活を休んでバイトするなんて、メンツが立たなさすぎる。ものすごく体験してみたいけど、さすがに現実的じゃない。
俺は自分の欲望に無理やり蓋をして、その日は眠りについたのだった。
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「私、サイズフェチ体験エステっていうバイトのアプリに登録したんだよねー」
次の日の部活の休憩時間。部室の裏で、部員の女子たちが話している内容が偶然聞こえてしまった。"サイズフェチ"という単語に反応した俺は、隠れて、その女子たちの様子を覗き見る。…話していたのは、俺がいつも厳しい言葉を投げかけている、実力のない1年生女子たちだった。
「何それ?」
「なんか登録してマッチングしたら、あの、縮小機?ってやつで小さくなった男の人が自宅に送られてくるんだって」
「なにそれ、こわー」
「でもその男の人が入った箱を家に置いて生活するだけで、これくらい貰えるらしいよ」
「…え、やば!なんでこんな金額貰えるの?怖くない?」
「小さくなるのが好きな人がいるらしいよ?多分そういう人にとって、ちょっとした風俗みたいなものなんじゃない?」
「小さくなるのが好きって、…きもっ…」
「それって部屋で着替えてるとことか見られちゃうんじゃないの?」
「そうだね、でもどうせ二度と会わない人だから別にいいかなって。ちっちゃい人に見られたって気にならないし…それに、こんなにバイト代貰えるし」
そう言って、自分が登録したアプリの画面を見せている女子は、1年の鳴海優香。…正直、部活の中では目立たない存在で、女子としても地味な印象だった。普通の黒髪のセミロングで、目立つ女子グループにいるわけでもない。陸上の成績は良くなくて、体力が無いのでいつも練習中にへばっている。正直な所、俺はこの鳴海と言う1年のことなど眼中にも無かった。部活に打ち込んでいる身として、主将として、実力の無い女子なんて存在を気にしてもいなかった。
しかし、その鳴海が、昨日ウェブサイトで見つけたサイズフェチ体験エステに登録しているという話を、偶然耳にして。
「っ………」
自分の鼓動が、異常に早くなっているのを感じた。
(…いやいや、あんな地味な、実力も無いやつだぞ……)
30人を超える部のいわば頂点の役職に立っている俺と、釣り合うような存在ではない。…しかし。サイズフェチ系のサービスに、知っている人間が登録しているという事実は、俺の性的嗜好を異様なまでにくすぐり、興奮させていた。
今あそこに立っている鳴海の、巨大な姿。それを、サービス料金を払えば見ることができるのだ。自分が数センチサイズになって、鳴海の巨大な脚、手、顔、それらを従える巨体が生活するところを観察できるのだ。
鳴海は地味な見た目だが、よく見ればスタイルだけは良い。陸上のユニフォームからは白くむっちりとした太ももが露わになり、胸のあたりはきつそうに生地がぴっちりと広がり、そのふくよかさを主張している。…今までは、そんな無駄な体つきをしているから足も遅いんだ、とむしろ腹が立っていたのに。今、突然、鳴海の身体にやけに目が行ってしまう自分がいた。
(っ……駄目だ、練習に戻らないと)
もう休憩が終わってしまう。こんな所で盗み聞きをしていることがバレては、主将としてのメンツが立たない。…俺はざわざわ、ドキドキする心臓を抑えながら、練習再開の集合場所に向かうのだった。
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あれから1週間が経ち。
その間、毎日陸上部の練習があった。
が、俺は練習に全く集中できていなかった。
「いち、にっ、いち、にっ…」
「はあっ、はあっ…」
「ファイトー、あと3周っ!」
「っ………」
練習中、気づけば鳴海の姿を目で追ってしまっているのだ。グラウンドをランニングしている鳴海の身体を、数センチサイズで見上げた時の光景を無意識に想像してしまう。あんなトロくて陸上センスが無いやつを、現に今へろへろになりながら走っている鳴海を、目で追ってしまっている事実がもうありえない。自分が恥ずかしい、というか情けない。…しかし、10万円を出せばあの身体を見上げることができるというリアルな事実が、嫌でも俺の頭を甘美な想像に向かわせた。
そんな状態で1週間も鳴海の姿を陸上部で見続けてしまえば。
もう、歯止めは効かなくなっていた。
(練習しなきゃいけないのに……)
翌日、俺は陸上部の練習をさぼり、日雇いのバイトをしてしまっていた。主将である自分が仮病で休み、その間バイトをしているなんて、もし明るみに出たら今まで築いてきた信頼は崩れてしまうだろう。…しかし、そんなリスクを負ってでも、自分のサイズフェチ的な欲望に抗うことが出来なくなっていた。
サイズフェチ体験エステの存在を知っただけなら大丈夫だった。10万という金額にしり込みして、一度完全に諦めたはずだった。…しかし。自分が知っている女子がそこに登録しているという事実を知ってしまってから、気持ちが抑えられなくなってしまった。
なにせ、毎日その姿を見ているのだ。走る度に揺れるむちむちの太もも、無駄にふくよかな胸。地面を踏みしめる運動靴に、風になびく黒髪。走った後に水分補給を行う唇や、そこから吐き出される乱れた息。その全てが大容量となって自分の目の前に現れる想像を毎日してしまえば、この興奮を心の中で押さえることなどできなくなって。
結局俺はその日から、インフルエンザと偽って、丸一週間部活を休んだ。そしてその間、毎日日雇いのバイトに通い詰め、必死の思いで10万円を稼いだのだった。
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そして、10万円を稼ぎ終わった次の日。
今日も本来は、朝10時から夕方の17時までみっちり部活の練習が予定されている。しかし、俺はその日起きてから気が気ではなく、当然のように部活を仮病で休み、自分の家で悶々としていた。
今日、この10万円を使って、サイズフェチ体験エステの基本コースに行く。指名は…もちろん、鳴海だった。先ほどアプリ上で検索して、「Narumi」という登録名を何とか見つけたのだ。マスクをした状態の顔しかプロフィールには映っていなかったが、間違いなく同じ部活の1年女子の、鳴海だった。
料金を払ったら、その日の昼15時に、エステの本部を訪れる必要がある。そこにはエステの店員がいて、その場で縮小機を使って身体を縮めるらしい。そのままプラスチックのケースに入れられ、それを指名した女の子の自宅へ配達するのだ。
どれくらい小さくなれば、知り合いの顔かどうか判別できなくなるのか、それも調査済みだった。2センチの大きさまで小さくなれば、鳴海は部長の俺であることには気づかない。
今日、俺は小さくなって、鳴海の家に入る。その事実が、あまりにもドキドキして、興奮して、ソファに座ったまま悶々としていたら、既に14時になっていた。
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「それでは、こちらの部屋で服を脱いで、お待ちください。しばらくすると、縮小機の効果で身体が縮み、お客様が指定した2センチの姿となることができます。縮小機には睡眠導入の効果もあり、お客様は眠った状態で女の子の家に運ばれ、ちょうど到着したタイミングで目が覚めることになります」
昼15時ぴったりにエステの本部を訪れた俺は、マスクと帽子を深くかぶった女性店員に一通り説明を受けた後、電話ボックスのような縦長の個室に入り、全ての服を脱いだ。
縮小するのだから当たり前なのだが、裸の状態で鳴海の家に入ることになるのだ。そう考えると自然と鼓動が早くなってくる。
「それでは、縮小機を作動させますね」
個室の外から聞こえてくる店員の声と共に、
ウィーーーーン……
低い音が個室全体に響き渡る。…それにしても、何という技術なのだろうか。人の身体を自在に縮小させるなんて。しかしその技術のおかげで、長年の夢が叶うのだ。
「ん……ぐぅっ………」
少したってから、少しづつ頭が重くなっていくのを感じ始めた。鈍い頭痛と共に、全身に倦怠感が現れる。これが、縮小の予兆なのか。人生で味わったことのない体験に、不安な気持ちも入り混じってくる。何だか、ちょっとづつ意識が遠のいていくような。
「……………」
自分の意識が薄れていくのをはっきりと意識で感じ取る、奇妙な感覚。
ああ、俺は今から縮小するんだ。
期待と不安の両方が混ざった感情で、どこか快感を覚えながら、意識は遠のいていった。
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次に目が覚めたとき。俺は、固い地面の上で仰向けになって倒れていた。
「………?」
一瞬、自分が何をしていたか忘れてしまい、ここが何なのか分からなくなる。…しかし数秒遅れて、自分がエステの本部で身体を縮小してもらったことを思いだす。
「……ここは……プラスチックの、箱……?」
ほとんど真っ暗な空間。今自分が横たわっている床は固くて、明らかにフローリングやコンクリートの素材ではない。事前に説明に聞いていた、プラスチックの箱なのだと理解する。
周りを見渡せば、そこは直方体の形をした無機質な箱で。まるで昆虫やハムスターを入れるケージのように、天井に簡素な蓋が付いているのが見える。その蓋の取っ手は外側に設置されていて、決して内側から開けることは出来なさそうだった。…内側に取っ手があったとしても、10メートル以上もありそうな天井に手が届くわけがないのだが。
(これ、箱が何かに入れられているのか…?)
周りがプラスチックの箱であることは何となく分かったが、その周りも何か茶色い壁で覆われていて、ほとんど光が入ってきていない。僅かに、天井に1本の光の筋が入っているくらい。
…直感的に、それは段ボールであるように見えた。事前説明では、この箱を指名した女の子の家に配達すると言っていた。恐らく、2センチとなった俺を入れたプラスチックの箱を、段ボールに詰めて配達したのだ。
いまこの空間は静かで、何も揺れなどを感じない。恐らく配達はすでに終わっていて、扉の前に置き配されているような状態なのだろう。そして、段ボールの外から光が漏れているということはまだ少なくとも夕方。今日の部活は17時まであるから、鳴海が部活終わりで帰ってくるまでもう少しかかるだろう。
「っ…………」
さっきから、心臓のバクバクと、股間の膨張が止まらない。だって。あと少ししたら、あの鳴海が、ほぼ100倍もの大巨人となって、帰ってくるのだ。俺を親指だけで覆い潰せるような巨大な足が、アパートの廊下を踏みしめて、揺らして、帰ってくる。その振動がこの箱を襲うのを想像しただけで、激しく興奮させられる。しかも、その後に、この箱ごと持ち上げられて。俺からすれば20畳ほどの大広間ほどの広さのある空間を、巨大な手がやすやすと持ち上げて、家の中に連れ去ってしまう。そして、途方もない広さを持つ、鳴海の一人暮らしの部屋の中へ、一晩中入り込んでしまうのだ。
ズンッ!!ズンッ!!
「っっっ……!!」ビクッ!!
突然、激しい揺れと、恐ろしい爆音となって鳴り響く、巨人の足音。
バクバクバクバクッ…!!!
心臓の音は最高潮に高鳴り、自分の息が興奮で浅くなるのを感じる。
ドンッ!!…ドンッ!!……
「ひぃっ…!!」
巨大な音が近づいてくるたび、プラスチックの箱は数十センチほど浮かび上がっては地面に叩きつけられる。普通サイズの人間からすればほとんど分からない動きだが、その中にいる2センチの小人からすれば、恐ろしい空間の揺れ動きだった。
ドンッ!!…ドンッ!!……
さらに、さらに近づいてくる足音。もしこれが、鳴海のものだったら。
ああ、このまま持ち上げられて、連れ去られてっ…!!
ズンッ……ズンッ……
しかし、最大音量まで到達した足音は、少しづつ遠ざかっていき。
ガチャッ………
遠くの方で、扉が開く音が聞こえた。
…どうやら、同じ階に住む別の人間だったらしい。
「っ……はあ………」
こんなこと…誰かが帰ってくるたびにここまで緊張して、興奮していたら、身が持たない。既に股間はパンパンに膨張しており、心臓の鼓動は収まる気配が無い。
早く、帰ってきて欲しい。切実に、そう思った。
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ガコンッ!!!!
「っっっ!!!!???」
ものすごい揺れと音に襲われ、慌てて跳ね起きた。
ぐらぐらっ…!!
「やっ…なっ……!!あぶなっ…!!」
自分がいつの間にか寝てしまっていた事実さえすぐに脳から吹き飛び、不自然に激しく揺れ続ける箱空間に蹂躙される俺は床にへたり込み、立つことが出来なくなる。
ぐらっ……
ガチャガチャッ…!!
(持ち上げられたっ……帰ってきたっ……!!)
明らかに。この箱を持ち上げたのは、アパートに帰ってきた鳴海に決まっていて。この大広間のような広さを誇る箱をやすやすと持ち上げ、家のドアに鍵を差し込んでいる巨大な鳴海の姿が頭の中に映し出される。
今まさに、このプラスチックの箱を覆う段ボールの側面に、俺の身長の何倍、何十倍も大きな手のひらが添えられていて。そんな巨大な手を操る鳴海の身長は、俺からみれば高層ビルのような途方もない大きさになっているはず。
ドクッ、ドクッ、ドクッ……!!!
心の準備もできていないまま突然その時がやってきて、心拍数が跳ね上がって止まない。
気づけば段ボールの天井部分から差し込んでいた光は無くなっていて、既に日が落ちていることが伺えた。恐らく、部活終わりに部員同士でご飯でも食べに行って、それから帰ってきたのだろう。
ガチャッ……
バタバタッ……
扉が開け放たれる音。鳴海が家の中に入りながら、履いていた靴を脱ぐ音。その爆音が響くたびに、ぐらぁっ…!!!と床が20度、30度と傾き、
「うわあぁぁっっ!!」
どたんっ……
床をずり落ちた俺は壁に正面衝突し、思い切り側頭部と肩を痛めてしまう。
ズンッ!!ズンッ!!ズンッ!!
そんな箱の中の状況にお構いなく、未だ見えざる巨人は重低音の足音を響かせながら、恐らく家の廊下を歩いていく。その歩行の衝撃に何度も何度も振り回されながらも、自分がこの巨人の家の奥に連れ込まれているという事実に、たまらなくドキドキする。
そして、
ゴトンッ…!!!
「ぴぎゃっ!!!」
やや乱暴に、箱全体がどこかに置かれる。巨人の歩行から解放されるも、置かれた衝撃で全身を床に打ち付けられ、鈍い痛みがじわぁっと広がる。
「ぐ……う………」
ズンッ…!!ズンッ…!!
ドサッ……ガタンッ……
ギシィィッ……
その後もやまない、巨人の歩行音、生活音。何気なく踏み出された足が、フローリングの床をギシィィッ…と大きく軋ませる音にさえ興奮する。その踏み出された足は、この箱の空間にギリギリ入るかどうか、というくらい巨大でたくましいはず。さらに、部活のバッグを床に投げ捨てる巨大な音や、何か引き出しを開けて片付けるような音。多種多様な生活音がせわしなく鳴り響き、その生々しい音の数々が、一人の女子大生のプライベートから生み出されているのだ。この時点で、聞いてはいけない音を盗み聞きしている気分になってくる。
…しかし、これは盗み聞きではなく。鳴海は、この箱の中に人間が入っていることを知っている。恐らく既に何回かやっているのだろう、特に箱の存在を気にせず、まずは自分の片付けを優先してラフに生活をしているのだ。
これから、この段ボールを開封される。外の景色が飛び込んでくる。そこは果てしなく広い女子の部屋で、箱の前には、鳴海の巨体がそびえ立っているはず。ここ最近、ずっと部活中に目で追っていた、鳴海の豊満な肉体が、現れる。
「はあっ、はあっ、……」
その瞬間は、思ったよりも早く訪れた。
ガタッ……
バリバリバリッ!!!
「きゃあっっ!!??」
あまりの爆音が鳴り響き、思わず絶叫してしまう。何かを引き剥がすようなおぞましい音。段ボールに貼られたガムテープを、バリバリと剥がしている。耳を塞いで怯えていると、すぐにその音は止み。
バリッ……
「あ………」
段ボールの天井部分が開け放たれ。人工的なまばゆい光がいっぱいに降ってくる。ずっと暗闇に慣れていた瞳はその明るさに対応できず、その先にある景色が良く見えない。まぶしさに目を細め、しかし空を見上げ続けていると。
ベリベリベリッッ!!!
「うわああっっ!!??」
ダンボールの側面部分に亀裂が入っていく。元々縦に切れ目が入っていたようで、やすやすと段ボールの壁が破られていく。まばゆい光がそこら中からあふれ始める。まるでケーキの箱のように、横からパカッと開封できる形状になっているようで。人間が入ったプラスチックの箱を持ち上げずに済む工夫なのか、俺が入っている箱はそのままに、ダンボールだけが取り払われていく。
巨人に空間を侵略されているような、恐ろしくも興奮する光景。やがて段ボールの亀裂がそこら中に入り、そこから一気に、
バリバリバリッ!!!
…………
段ボールが全て取り払われ。まぶしさに眩んでいた目が、周囲の環境に慣れて。
ようやく、プラスチックの箱を取り囲む景色を、視認する。
ズンッ………!!!
「「…………」」
そこには。
視界いっぱいに広がる、陸上用の短パンと、建物のようにぶっといむちむちの太ももが、そびえ立っていた。
「あ………あああ………」
ドクドクドクッ……!!!
言葉を失った。視界のほとんどが、短パンの黒色と、純白で薄い肌色の太ももの色で、埋め尽くされていた。うちの部員なら誰もが履いている、あまりに見慣れた短パン。それが、一軒家ほどの大きさとなって鎮座している。そんな巨大すぎる短パンを履いている存在が目の前にいるということが、信じられない。俺一人では持ち上げられないような重い生地の短パンを容易に股と腰で履いてしまい、そこから巨大な塔のような極太の太ももを思い切り曝け出していて。
女子部員の太ももだって、見慣れているはずの光景。一緒に練習していれば、その恰好は当たり前のものとして脳にインプットされ、しかも1年生の目立たない地味な女子の太ももなんて、見ようともしていなかったのに。
むちぃぃっ……♡♡
興味の無かったはずの鳴海の太ももは、今や俺の視界を埋め尽くしてその豊満さを主張していて。実力がないとはいえ、陸上の練習で付いた筋肉で程よく引き締まり、しかし女性らしさが残されたむっちりえっちな美脚。この至近距離で見ても綺麗な表面の内ももは特に白さが増していて、その中で挟まれる妄想が勝手に頭の中を支配し始め、意識せずとも股間が硬くなる。
ただ、目の前に立たれているだけなのに。こんなにもエッチで魅惑的な光景が、日常生活にあるだろうか。今までは興味も無かったはずなのに。鳴海の何気ない部活終わりの短パンと太ももに、ありえない程目を奪われている。
「「…今日もノーマルコース、か」」
上の方から聞こえてくる音に反応し、やっとそちらを見上げる。
「…な……るみ……」
確かに、天高くそびえ立つ巨人の顔は、あの鳴海そのものだった。黒髪のセミロングで、特に派手さも無く、しかし顔が整っていないわけでもなくて。段ボールの中に一緒に入っていた紙を読んでいる鳴海の顔は、何故か、何故かいつもよりも、魅力的に見えるのだ。
(なんで……あいつだぞ……)
後輩の顔を視認すると、さすがに部長としての理性が顔を出し始める。体力が無くて、根性が無くて、いつも1年生の女子数人で固まって雑談しているようなやつで。別に部員として何も認めるところなどないのに。
その理性が、鳴海の巨大な姿によってすぐに打ち壊される。
この巨大さでそびえる鳴海の、圧倒的なボリュームの黒髪、紙を掴んでいる巨大な手、俺の身体よりも大きいはずの瞳、鼻、唇。その手前にこんもりと主張する、陸上用のタンクトップの生地に包まれた豊満おっぱい。ただただ大きい、巨大というだけで、重度のサイズフェチである俺の目に、鳴海の全てが魅力的な姿となって飛び込んでくるのだ。
大きいだけで、美しい。取るに足らなかった存在が、暴力的なほどエッチで魅惑的な存在に変わる。どこにでもある陸上女子の太ももが、決して手が届かない女神美脚になる。地味な顔立ちが、可愛く、美しく見える。
「「特にオプションも無しかな…楽で助かる~」」
恐らく今日のサイズフェチ体験エステとしてのコース、オプションが紙には書かれているようで。お金が無くてノーマルコースのオプション無ししか頼めなかったため、鳴海がやるべきサービス、オプションはほとんど無に等しいのだ。
ホームページに書かれていたような、『"箱の上に座る"、"箱の周りを踏みつけ"、"脱衣"、"トイレ"…』などのオプションが。
「「んしょ……」」
と、突然。巨大な鳴海が、タンクトップの裾を掴むと、
するするするっ……
「っっ!!!??」
何気ない動作のまま、たくし上げていく。オプションを付けていないことを分かっていた俺は、突然始まった大迫力の脱衣にうろたえる。綺麗な色白のお腹が顔を出し、一度も見たことが無かった鳴海のおへそが露わになって。どういう意図なのか、これはサービスなのか、とにかく胸が異常に高鳴り始める。
しかし、
「「……あ、そっか…オプション無いんだった」」
広いお腹が披露された所で、タンクトップのたくし上げはそこで止まり。
「「ごめんね、着替えるから隠すね」」
パサッ……
そう言った鳴海は、同じ机の上に置かれていたタオルを、俺が入っているプラスチックの箱にかけたのだった。
「…………」
心を翻弄された俺は、しばし呆然として、視界いっぱいに広がるタオル生地を見つめ続ける。
ズンッ!!
……スルスルッ……パサッ……
あまりに生殺しな寸止めと、巨大な着替えの音。
「はあっ、はあっ……!!」
パンパンに膨れ上がった股間は、もはや抑えきれない。
「うううっ……!!」
ノーマルコースを選んだ小人は、箱の中で自慰行為をすることは許可されていた。
ドンッ、ドンッ……
スルッ……ズンッ……
1年生の後輩の着替えの音を聞きながら、興奮を抑えきれずに自慰行為を行う部長。その事実を少しでも俯瞰して見たら、強烈な自己嫌悪に陥りそうで。
俺は何も考えないようにしながら、着替え中の鳴海が落とす巨大な影を感じながら、着替えの音と振動に包まれながら、
一人で静かに果てたのだった。
---続く---