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DESCRIPTION
重厚な内装が施された館の一室。
館主が用いる執務用の机に向かい、一人の男が古びた装丁の魔導書を読み耽っている。
火傷と傷で醜く爛れた顔をしてはいるが、その鋭い眼光には並々ならぬ知性と意志の強さが窺える。
高位の魔法使いらしく威厳を正した衣装に身を包み、胸元には複雑怪奇な文様が一面に彫刻された不可思議な材質の胸飾りを身につけている。
魔法の素養を持つものであれば、そこから発せられる異様な圧力のようなものを感じとることができるだろう。
その力はおそらくは、胸飾りの中央に嵌め込まれている宝玉から発せられている。
その持ち手が館の主であることを示す、宝玉だ。
凝集した白い輝きが宝玉の内に妖しく蠢いている。
男は……蜍没は、ふと何ごとかに気がつくと、視線を魔導書から外し、窓の方に向けた。
立ち上がり窓のすぐ側まで近寄る。
霧がかった薄暗い空の下、外に広がる狭間の森の遠くで確かに雷光が走った。
二度、三度と。
それを見取って、普段よりも一層険しい表情を浮かべると、蜍没は踵を返して慌ただしく部屋を後にした。
[newpage]
森の中で、旅装束に身を包んだ人物が何頭かのゴブリンに囲まれていた。
クラウストラムに仕える4人のしもべの筆頭格、アデラである。
アデラが片腕を掲げ、その掌から雷撃を発すると、その直撃を浴びたゴブリンが文字通り霧散した。
恐るべき威力である。
(まったく、もう)
館に起こった何らかの急変を察知し急ぎ戻ってみれば、この有様である。
こんな様子ではおちおち館を留守にすることもできない。
続けて、雷撃を放つ。
また一体のゴブリンが消滅し、さらに3撃目が最後のゴブリンを直撃した。
(……?)
アデラは困惑した。
奇妙なことが起こった。
雷撃が直撃したにも関わらず、そのゴブリンは未だ形を保っている。
大地に倒れ小刻みに痙攣してはいるが、その体には傷が生じた様子もない。
(どういうこと?)
ゴブリンごときの低級な障魔が、自分の雷撃に耐えるなどということは考えられない。
不審を感じながらアデラはゴブリンに歩み寄った。
その横に立ち、片足でゴブリンの腹を踏みつける。
「生きている……」
足下のゴブリンは、傷ひとつ追った様子もなかった。
それどころか。
「……フッ…ンフー」
あろうことかそのゴブリンは身じろぎをしながらよがり声をあげた。
股間のモノを屹立させ、その先から濃厚な精を垂れ流している。
アデラに踏みつけられて、興奮しているのだ。
なんという、下劣な生き物だろうか。
「おぞましい……」
アデラは端正な顔をしかめ、低劣な障魔の顔面を思い切り踏みつけた。
「グギャッ!」
潰れた声で悲鳴を上げ、顔を押さえてのたうち回るゴブリンを尻目に、アデラはその場を離れ先を急いだ。
こんなものに構っている場合ではない。
しばらくその場でのたうっていたゴブリンだが、じきに痛みは収まっていった。
その心のどこか片隅で疑問が浮かんだ。
アデラは一体何をあんなに急いでいたのだろう。
だがそんなことを愚かな[[rb:自分 > ゴブリン]]が気にする必要はない。
それよりももっと大事なことがある。
それはアデラが、踏みつけにした醜い生き物の体の内側で悶えるものの存在に、ほんの少しも気がつく様子がなかったということだった。
アデラがかつて語った言葉が、ゴブリンの脳裏に浮かんだ。
彼女は言った。
エマのことを、娘のように思っていると。
アデラさえも騙しおおせたということに満足し、うっとりと腑抜けた表情でのそりと立ち上がる。
「ゲヒッ……グヒヒヒ」
ゴブリンに身をやつした少女は自分を包みこみ、嫐り、そして固く護り続ける醜悪な身体を愛おしそうに抱きすくめ、歓喜に身をよじった。