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ショーダウンⅡ 『24:公開お仕置きショー』

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#24 公開お仕置きショー 「っっはっ!? ちょ、痛っ! な、何すんのよ!!」  頬を何度か軽く叩かれて微睡から覚醒へとシフトさせられた紅葉は、自分の頬を手の裏で叩いてきた犯人である鈴音に鋭い睨み目を向ける。 「やっと起きた? ったく……いつまで寝てるつもり? 私が起こさなきゃ……あんた、閉店まで眠りこけそうな勢いだったわよ?」  その様に不機嫌そうに言葉を返すと鈴音は紅葉の睨み目を見下ろすように顔を覆い被せて来る。  目を醒ました瞬間に見えていた眩しいスポットライトの光が彼女のジト目顔によって遮られた事により、紅葉はそこで自分が寝姿勢にされている事に気付く。そして同時に手足が自分の意思では曲げたり動かしたりが出来ない状態にされている事も不自由な感覚で悟らされてしまう。 「私を……拘束したのは……あんた?」  手足を振って動かしてみようと試みるが、その手足は数センチ左右に動かすだけですぐに何かに強く引っ張られるような感覚を受け、それ以上動かす事を阻まれてしまう。その引っ張っているモノが枷に付属した金属製の太い金具であり、手足はその枷が装着され金具によって台に固定されているのだとすぐに察する事が出来る。 「そっ♥ ちなみに……服を脱がせたのも私♪ 最初は裸に剥いてやろうかとも思ってたんだけど……流石にお客さんの前で裸体を晒させるのは可哀そうってお嬢が言ったから、下着姿までで許してやったわ♥ お嬢に感謝する事ね……」  紅葉はそう言われて、頭を可能な限り起こして自身の上半身・下半身の姿を確認してみる。  まず視界に入った上半身の格好は……さっきまで着ていた筈のディーラー服を剥ぎ取られ、インナーとして兼着していた紺色のタンクトップ型ソフトブラ(胸元までしか丈が無いタンクトップ型のブラジャー)のみの格好を強いられている姿だった。  辛うじてスポーツブラの体裁を取っている下着であったため、ジムなどに着ていく丈の短いタンクトップだと言えば誤魔化す事も出来るだろうが……しかし、このブラの下には当然のことながら下着やインナーなどを着ている訳ではない。それが自分では理解できているからか……紅葉からすれば裸の一歩手前という認識にしかそれが感じられず、肌を限界まで隠さず晒してしまっているという羞恥を存分に味わってしまう。  それだけであればまだ……我慢も出来たかもしれないが、紅葉の視線の延長線上にある下半身の部位は更に彼女を羞恥の渦に飲み込むような格好を強いられていた。 『ちょ、ちょっっ!! 下はTバックしか穿かされてないじゃないっ!!』  下半身は確かに下着は脱がされず穿かされた状態を維持されているが……しかし、その下着は紅葉自身が穿いていたブラとお揃いの色の大胆なTバックだった。  彼女自身……緩い下着を着けるのを嫌う傾向が強く、普段からこのような肌に食い込むような下着を好んで穿いていたのだが……それは、このような観衆の前で晒す事を想定した格好ではない為布面積が小さく、股はおろか大事な部分でさえも見せてしまいそうで余計に羞恥の感情を煽る事となる。  普段ジムなどに通ってある程度身体の線を絞っている紅葉は、身体のラインを晒す事には何の抵抗も無いと思っていたが……股間やら胸の谷間やら脇腹やら臍やらが丸出しになっているこの格好は流石に恥ずかしいという感情に火をつけてしまう。いくら、隙なく日焼けサロンで小麦色に焼いてる自慢のボディを沢山の人間に見せつけてやろう……と、さえ思っていた、彼女でも……この不本意に行き過ぎた露出を強要される事には耐え難いモノが有り、許容できる範疇を遥かに超えた恥ずかしさを彼女にもたらしていた。 「ふ、ふざけんじゃないわよ! 私にこんな……露出狂みたいな格好をさせて客達の見世物にするつもりね? それがあんた達の言う罰ってヤツ? だとしたら低俗過ぎて呆れるわ!」  小麦色の肌がスポットライトの光に照らされ張りの良い肌を主張するように輝いて見えている。彼女自慢の金髪のポニーテールは寝かせる姿勢を取るのに邪魔になったのか、リボンを解かれただの長い乱れ髪へと姿を変えている。その金髪を左右に気怠そうに振って紅葉は強気な目で鈴音を睨んでいる。 「見世物にするってのは……勿論その通りだけど、でも“これが”罰だって決めつけてるんなら……それはとんだ誤解よ?」 「な、なんですって?」 「肌を露出させるだけの罰だったら、少し恥ずかしいのを我慢すればいいだけの優しい罰になっちゃう……。でも、これから私が施す罰はそれよりも何倍も恥ずかしい思いをする事になるし、同時に苦しい思いもする事になる究極の罰よ♪」 「何倍も……恥ずかしい思いを……する?」 「そっ♥ だって……これからあんたはお客さん達の前で、はしたなく笑い狂う姿を晒す事になるんですもの♪ 人の目がある事も憚らず、この可愛らしい顔が情けない笑いに歪まされる♥ 涎を垂らし、涙をボロボロ零しながらジタバタと暴れて笑い狂ってるあんたの姿……そんな姿をお客さん全員に見て貰うのよ? ほら、想像しただけでも……恥ずかしくて胸の奥がザワついてくるでしょ?」 「うぐっ! くっ!!」  重量感のあるX字型の黒い金属製の台……。その台の形に合わせる様に、紅葉の身体もX字に手足を無防備に上げさせられていたり広げさせられていたりしている。  手は頭上遥か上の方まで引っ張り上げられていて、斜め上の拘束台の端に固定して設置してある革製の手枷にしっかりと拘束されて腕を降ろせないよう施されてある。  脚は股間を無防備に晒させる様に肩幅に開かされ、台の柱に沿うように脚をしっかり伸ばされ……コチラも台の端に固定されてあった革製の枷に足首を拘束され身動きを出来ないよう封じられてしまっている。  足は当然というように履いていたハイヒールは脱がされ、そしてくるぶしまでしか覆っていなかったレースの靴下もしっかり脱がされ裸足の格好を強制されている。  靴も靴下も無い裸足の格好にされ足首を拘束されて自由を奪われている紅葉だが、唯一その足には鈴音に施されたであろう追加の拘束が施されてあり……紅葉はその拘束を先程から感じていた足指の違和感で知る事となってしまう。 『……っ!? 足裏が何か突っ張るなって思ってたら……なにアレ? 足の指に……紐みたいな物が巻き付けられてる??』  紅葉の素足の足指にはそれぞれの指に細い紐が結び付けられている。親指から小指に至るまで……その指の関節に食い込むように紐はしっかりと結び付けられ、そして、全ての紐が足首を拘束している枷の金具へと繋がれている…… 『くっ! あの紐のせいで足の指が上手く動かせない! アレが指を引っ張ってるせいで……足全体が反ってるような形を強いられてる……。うぅ……! こ、これじゃあ……まるで……』  紅葉がそこまで自身の足の状況を確認すると、彼女の思考を読んだかのように鈴音が彼女の耳元に口を近づけコショコショと細い声でそれの説明を始める。 『足の拘束に気付いたぁ? あんな風に足裏を反らすように拘束されたら……もう逃げられないって嫌でも分かるでしょ? あんたの足裏は……あの紐に引っ張られて限界まで反らされている状態よ♥ だから、ほら……ちょっと風が揺らいだだけでも……敏感に感じ取れちゃうでしょ? 皮膚の薄い箇所は……神経がそれだけ近くを走ってるから感じやすくなるの♥ 刺激とかを……ね♪』 「ひっ!? ちょ、耳元で囁かないでっ!! 気色悪いっっ!!」  耳奥に息と共に入れられる鈴音の囁き声が寒気を生み、紅葉は身体をビクンと反応させてしまう。顔を振ってその声から逃げようと試みるが、鈴音はそんな抵抗を試みる紅葉の頭を上からガシリと力で押さえつけ、彼女がこれ以上頭を振れないよう強制させる。そして抵抗できなくした紅葉の耳に再び口をキスする距離まで近づけ、また同じ声量の細い囁き声を耳奥へと送り込んでいった。 『ねぇ? 想像してみて? ほら……あんたの足……今……裸足でしょ?』  頭を振って囁きから逃げようとする紅葉だが、鈴音の力は見た目とは裏腹に強く……台に押さえつけられた頭はピクリとも動かせない。鈴音は抵抗できない紅葉の耳にワザとらしく吐息を混ぜつつ妖艶な言葉を紡ぎ聞かせていく。 『あんな風に……触って下さい♥ って言わんばかりに晒された足裏を見たらさ……あんたならどう思う?』  鈴音の妖艶な低い声が紅葉の耳奥に反響して伝わり、その声が脳に響くたびにビクリビクリと勝手に腰が反応してしまう。 『触ったらどんな反応するか……見たくなるわよねぇ? 指の先で……コショコショ~って……刺激してあげたらどんな声を出して悶えるか……見てみたくなっちゃうわよねぇ?』 「ひっ!? や、やめ……言わないでっ!!」 『実際に今……足裏が反っている感覚を味わっているから想像出来るでしょ? もしも今……自分の敏感になってる足の裏に……細くてしなやかな指がソワソワ~って撫でるような触り方をして来たら……どんな刺激を感じてしまうか……。硬い爪先が土踏まずの肌をカリカリって引っ掻いて来たらどんなに狂おしいこそばゆさを感じるか……想像……できるわよね?』 「あっっうぅぅっっ!! や、だ……やめ……」 『とっても痒くて……ジッとしていられなく程ムズムズして……でも、その刺激をあんたは拒否できない。指に好き勝手触られても、どんなに嫌がっても足の裏は指が這い回るのを拒絶できない……』 「はひっ!? ひっ! やだ……やだ……もうヤダ!!」 『あんたはね……その……と~~~ってもくすぐったい刺激を受け続けて……やがて“笑いたくて仕方がない”って感情に苛まれるようになる……』 「……くぅぅぅ! うぅぅ……」 『くすぐったい……くすぐったい……くすぐったい……! でも、笑いたくない……! クールを気取ってきたディーラである自分が今更人前で笑う顔を見せるなど……言語道断! そんな恥ずかしい顔を晒すなんて考えられない……。人前で自分の意思と関係なく無様に笑うなんて……そんな羞恥……プライドが許さないっ! って……思うでしょうけど、その考えは蓄積される笑いの圧力にすぐに負けを認めさせられる事になるわ♥』 「うぅ……うぅ……」 『あんたはね……笑うの♥ お客さんが沢山見てる前で……ゲラゲラって無様に笑うのよ? 皆が嘲笑の眼差しで見てる中……あんたは顔を真っ赤に熟れさせながら大爆笑……子供の様に笑って悶えて苦しむのよ♥』  鈴音はそこまで囁くと最後にクスリと小さな笑いを浮かべ口を耳から離し、押さえていた彼女の頭を解放してあげた。すると、今まで我慢していたものを解放するかのように紅葉は頭を激しく左右に振り乱し、鈴音の言葉を頭の中から消そうと試み始める。 「どう? 少しは想像出来た? これから自分がどんな罰を受ける事になるのか……その詳細な映像を……」  しばらく頭を振った紅葉は、その仕草をやめた後ハァハァと息を切らせて鈴音の憎たらしい顔を強く睨み上げる。そして、強気を維持し直す為に自分を鼓舞する言葉を彼女に告げる。 「ば、馬鹿にすんじゃないわよ! 私が……そんな無様な姿……晒すとでも思ってる? 私はあんた達の思い通りになんてならないわ! こんな馬鹿みたいな制裁……すぐに無駄だって思い知らせてやるっ!!」  精一杯の強がりを鈴音にぶつける紅葉だが、先程意識させられた“足裏に指が這い回っている”という想像がまだ頭の隅で刺激を想像しまっていて無意識に足を嫌がらせようと動かしてしまう。 『くっ!? 何これっ! 足に意識を向けると……勝手に足裏がムズムズし出してじれったくなるっ! 指が這い回る想像するだけで……寒気が……』  鈴音は、紅葉の苦悶する表情を楽しそうに観察しながらゆっくりと顔を上げて店全体を見渡すそぶりを見せる。店は既に門の様に厳つい入口の扉を開き、バニー達が総出で店内へ客を迎え入れている。  入店してきた客はそれぞれルーレットに腰を落ちつけたり、お気に入りのスロット台にコインを投入したり、カードゲームのあるテーブルへ向かったりと様々な初動を見せるが……しかし、今日はステージ上で何かしら特別なショーの準備が行われているようだと察すると、ポツリポツリとステージの手前の観覧スペースへ集まる様に歩を進める客も見られ始めた。 「フフ♥ お客さんも集まってきたみたいだし……そろそろ私も本番の準備でもしてこよっかな♪」  鈴音は集まってきた客達を尻目にその様に紅葉に言葉を残して、ステージの奥にあるカーテンに区切られた袖へと去って行った。  その様子を見ていた智恵理はつけていた腕時計に視線を落とし頃合いの時間になったなと判断すると、近くの小さな丸テーブルの上に置いてあったマイクを手に取りそのスイッチをオンにした。  スピーカーからは軽いハウリング音が不快な音を立てるが、その音が鳴りやむ頃には騒然としていたステージ周りからザワつきが消えマイクを持つ智恵理へと視線が注がれるようになった。  智恵理は観覧スペースがある程度静まり返ったのを見計らいつつ、折り畳んであった司会進行用のカンペ紙を開いて自身の声をマイクに乗せ始める。 「『え~~、ご来店の皆様に本日の特別ショー開催のご案内をお知らせいたします♪ 本日は、予定にあった“当店人気ナンバーワンディーラー紅葉嬢による華麗なるマジックショー”を中止とさせて頂きまして、代わりに“イカサマディーラー紅葉嬢への公開お仕置きショー”を開催したいと思います♥ とても楽しいショーとなる事をお約束いたしますので、お時間お暇のある方は是非中央ステージ前へとお越しくださ~い♪』」  智恵理がその様にマイクに声を入れると、その声は拡声され店の四方に設置された大型のスピーカーから出力された。  その呼び声を聞いた客達は、一体何が行われるんだ? と興味津々にステージへと集まって来て……すぐにステージ手前は客の集団で埋め尽くされる事となった。 『くっ……は、恥ずかしいっ!! こんな格好……客に見せる事になるなんて、恥ずかしくて気が狂ってしまいそう! せめて……顔を隠したい! 目だけでも良いから……隠して貰いたい……』  集まってきた客がザワザワと自分の拘束された身体を見て意見を交わしている様子を見てしまうと……体中が視線の熱を感じてしまっているようで無性にムズ痒く感じジッとして居られなくなってしまう。  顔は熱いタオルを掛けられたかのように熱を帯び頬は勝手に真っ赤に染め上げられてしまう。  沢山の目に見られていると想像すると、余計に恥ずかしさが膨れ上がり……羞恥の炎が紅葉の身体中を焦がして熱を持たせてしまう。  ただ拘束されているだけなら、まだその視線から耐えられたかもしれないが……紅葉の足は客側に向けて晒されている。  足指を紐で引っ張られ、足裏を見せつける様に足全体を反った姿を客に見せてしまっているのだ……これでは、私の足の裏をじっくり見て! と言っているかのようで……紅葉にはその無言のアピールを行っている自分が恥ずかしくて堪らない。  普段……足の裏を人に見られるなど無縁であった紅葉にとってはこの、足裏の突っ張った皮膚や骨ばっている箇所……土踏まずの窪み、肌の細かな筋や皺……更には薄っすらと浮き出た血管の青筋に至るまで……その全てを晒され見世物にされているようで、彼女は耐え難い羞恥の感情を体内で燃やし尽くす事となっていた。 『やだ! 見ないで! 恥ずかしいから……見ないでっ!!』  必死に足を客の視線から逃がそうとジタバタさせるが……当然その動きは枷によって制御されてしまう。足裏を隠そうと土踏まずから足先を曲げて丸めてしまおうと考えを過らせるが、そもそも足指が反対側に引っ張られていて肌が緊張を強いられる程に反り返されているのだから、足裏を曲げて隠す……などという行為も行えない。  紅葉の足裏は……どう足搔いても客に見せつけるよう晒されている状態をキープされ、どんなに抵抗しようともその状況は何一つ変えられない……それがもどかしく感じるが、紅葉はそれを受け入れるしかない。どんなに恥ずかしいと思ていても、足裏を見られ続けなくてはならないのだ……彼女は……。 「『さて、この台に寝かされて拘束されている紅葉嬢と……そっちの椅子に拘束されている牡丹嬢……。彼女達は大胆にもお客様の前でイカサマをしてしまい、それがバレ……怒りを買われてしまいました! 本日はそのイカサマに対する罰を皆様の前で執り行い、その罪を皆様の目の前で償って貰おう……という趣旨のショーとなります♪ あぁ、ちなみに! 罰と言っても“痛い事”をする訳ではございませんので……皆様は安心の上ご観覧を楽しんでいって下さいね♥』」  拘束椅子に座らされている牡丹の方も紅葉同様に睡眠状態から覚醒し、周りの雰囲気や紅葉の状況を見て……自分が意識を失ってから勝負の行方がどうなったのかを察する事となった。  そして、自分も……紅葉同様に下着姿に剥かれ拘束されている状態である事を鑑みるに、綾香達とは立場が逆転しこれからの時間は自分達が仕置きを受ける順番になってしまったのだろう……と冷静に判断してしまう。 『あぁ……そうですか……。あれほど精巧な装置を使っても……紅葉様は負けてしまわれたのですね。あの方々に……』  片眼を開き、斜めに垂れた前髪の隙間から視線をマイクを手に持つバニー姿の智恵理に移してフゥと溜息を零す。 『彼女は……藤咲……智恵理? あのバニー服を着ているという事は……彼女はやはり変装して潜入していたのですね? そして彼女の助けを借りて……綾香様や麗華様は紅葉様から勝利をもぎ取った……と。そんな感じでしょう……』  腕は万歳の格好……足は素足に剥かれた格好で拘束されているという自覚を持ちながらも、牡丹は頭の中で冷静な分析を続ける。 『しかし、いつからこのカジノに潜入していたのでしょう? 全く気が付きませんでした……っというか、警戒すらしていませんでしたっけ……。なにせ、コチラにはカジノ全体が不正の手伝いをしてくれるっていう自信がありましたし……負けるなんて事考えてもいなかったのですから……』  牡丹も紅葉同様に麗華達一味の情報を受け取っていた。しかしながら、智恵理が変装をして身近なバニーに成りすまして潜入しているという事には意識を向けていなかった。ただの保険屋がその様なスパイの様な真似事をしても大した情報など得られず無駄に終わる……と、タカを括っていた節があったのだから……警戒しなかったのも仕方のない事だった。  しかし、ずっと違和感だけは感じていた。  本来シフトに入っていた筈の紅葉の専属補助役である文乃が姿を見せず、代わりに新人のバニーが傍についていた事……  いつまで経っても姿を見せない麗華一味の最後の仲間である藤咲智恵理の謎……  そして、先に罰すると提示しておきながらも何の抵抗もせずにあっさりと身を預けて来た綾香の素直さ……  それら全ての違和感は、立場が逆転したからこそ明らかに敵の術中であった事を悟る事が出来るが……しかし、牡丹自身も綾香をくすぐって虐めるという行為に熱を向けてしまっていた為、違和感を危機感に変換出来ず欲望の赴くままに行動を起こしてしまっていた。  まさか自分が……あの拘束された綾香や負け濃厚の流れが組まれた麗華達に逆転されるなど……想像すら出来ていなかったのだ。  だから、今でもこの状態は夢の続きではないだろうか? と、疑ってしまう……  この状況は現実ではなく、まだ自分は意識を手放して眠りこけているのではないか? と、考え直したくなってしまう。  しかしその願望はすぐに自ら否定しなくてはならなくなる。 『いいえ、そもそも……私が“眠らされていた”という事が事実なら……これが夢であろうがそうでなかろうが、敵の術中である事は間違いないと言える……。あの時、新人バニーと位置を入れ替わろうとした……あのすれ違いざま……あの瞬間に顔に何かを吹きつけられて、その香りを吸ってしまった私は甘い香りと舌の痺れを知覚すると共に意識が遠ざかった……』  自身の覚えていた最後の光景を思い出し、牡丹は悔しそうに唇を噛む。  あの時の彼女は綾香の足裏を早く見て触りたいと……責め欲に意識が急かされていた。気持ちが急いていた事で、椅子の下へ潜った瞬間……彼女の足裏を再び見れて歓喜の感情が高まり、それにしか視界が捉えなくなってしまっていた。  恐らくその隙を突かれ……変装した智恵理に睡眠薬を吹きかけられてしまったのだろう……。すれ違い様の彼女の手の動きは覚えていないが、プシュッという何かを散布する音と顔に向かって放たれる霧状の気体の飛沫だけは映像と音として記憶に残っている。  あの時……一瞬でも新人のバニーへ意識を向けていたなら……アレを顔に直撃させられるのを防げたかもしれないというのに……  自業自得とは言え、責め欲が昂った自身の節操のなさに今更ながら後悔を覚える。  そして、自分のミスが紅葉の敗北を招いたのだと悟ると……何とも申し訳が立たない気持ちで一杯になってしまう。 『う、うぅ……紅葉様……申し訳ありません。私が……しっかり考えて行動しなかったが為に……このような……ッっ!?』  牡丹はその様に心の中で謝罪の言葉を述べていたが、その最中に椅子の下で拘束されていた自身の足裏に強烈な違和感を感じて思わずビクリと身体を震わせてしまう。 『ひっ!? な、なんですか? あ、足裏に……何か……細いモノが触れた??』  素足に剥かれた裸足の足裏に棒のような何かが触れ、下から上にツツツと撫でるような感触を味わった。牡丹はその刺激に足をバタつかせて抵抗を試みるが、しかし足首を拘束している手錠型の枷がしっかりと噛みついていて牡丹の抵抗を許してはくれない。  仕方がないから足指をジタバタと動かして不快感を行動で示してみるが、足裏への刺激は間を開けて定期的に与えられ……増々牡丹の身体にじれったさを植え付けて来る。 「『さて! では、ここからはショーの趣向を説明させて頂きます! ルールは簡単です、これからこちらの椅子に座っている牡丹さんには“彼女”と向かい合って“にらめっこ”をして頂きます♪』」  牡丹は足裏に感じた違和感を必死に振り払おうと足先を左右に動かすが、一定間隔で焦らすように刺激してくる撫で上げから逃れる事は出来ない。逃げられないのは分かっているが牡丹にとってこの刺激は耐え難い嫌悪感を植え付けると共に、身体を震わせてしまう程の寒気を催してしまう為無駄だと分かっていても足をバタつかせる動きを続けてしまう。  牡丹は堪らずに目を閉じて声を出すのを我慢しようと試みるが……触られた瞬間の刺激があまりに背筋をザワつかせてしまい、触られる度に上半身をピクリピクリと小刻みに反応させてしまう。 『くっ! だ、誰かが……私の足裏を……指で撫でてるっ!! 私が抵抗できないのを良い事に……焦らすように触って、くすぐったさを植え付けようとしてるっ!!』  牡丹は椅子の下に何者かが居る事を察し、増々閉じた口に力を込めて声が出そうになるのを我慢する。しかしどうしても唇は勝手に開こうと力んでしまうし、肩も腰も脚も寒気を我慢するように震える仕草が自分の力では止められない。  牡丹は自覚したくはなかったが、足裏を触られるその刺激が“くすぐったくてじれったい”と思っている自分が居ると自覚せざるを得ない状況にまで追い込まれてしまっていた。 『駄目です! こんな事で……笑ってはなりません! 私は……反省をしないといけない立場なのです! このような小癪なくすぐりなんかに意識を奪われてなるものですか! 私は笑わないっ! 絶対に……笑ってはならないっ!!』  無防備な足の裏の中心を上下にコソコソ……コソコソ……と指先で弄んで笑わそうとしてくる卑怯な椅子下の人間に、牡丹は片目を強く瞑り……もう片方の目を強く細めて睨みを利かす。しかし、椅子下の誰かは彼女のそんな睨み目など見えている筈もなく、あくまでマイペースに……自分の存在を示すように牡丹の足裏を撫でてこそばゆくさせ続ける。 『くふっ!? だ、だめ! 笑わない! 私は……この程度では笑わない!! くすぐったくなんて……ない!』  そんな笑いを我慢する彼女の目の前には、今しがた智恵理から紹介されたツインテールの可愛らしい女の子が手を後ろで組んで刺激を我慢する牡丹を興味深そうに見上げながら立っていた。  彼女は牡丹がビクつく様子を面白そうに見つつ、ニンマリと企むような笑みを浮かべて顔を少し斜めに傾ける仕草を取る。 『こ、この子は……確か……綾香様のパートナーのっ!? 宮古……夏姫っ!?』  童顔で華奢な体躯でありながら髪は茶色のツインテールという……鈴音ほどではないにしても一見子供の様にも見える姿をした彼女の容姿だが、夏姫は立派な成人女性であり綾香とも身体を預け合う仲でもあり、イリュージョンショーの大事な相方でもある。  彼女はその見た目に見合わない大胆な大人のダンスをショーの合間に披露する事も多く、綾香のショーに彩りを添えている。しかもそれだけに留まらず、彼女は女優顔負けの演技力も兼ね備えているため綾香のイリュージョンの演出面にも深く寄与していて彼女自身のファンも多い。  そんな彼女は、今回の騒動では何も聞かされず拉致され敵の人質的な扱いを受けていた筈だったのだが…… 「はじめまして♥ 貴女が牡丹さん……ですね? ショー終わりで疲れていた私の事を無理やり拉致してココに連れてきてくれた……」  いつの間にやら彼女を拘束していた部屋は特定され、そして制圧され彼女は解放されていた。  牡丹は、その一部始終を知らされていない為……何故彼女がこの場に居るのかすらも理解出来ていない。 『くっ! 夏姫……様も……私の知らない間に解放されたという事ですか……。でしたら、何から何まで我々の計画は破綻したという事……うっくっっ!?』  時折与えられる足裏への刺激に声を出すまいと必死に我慢する牡丹。彼女は、思考を邪魔される刺激に負けないよう歯を食いしばりながらも自分達の計画が全て破綻していたという事実に思考を寄せる。すると、悪戯っぽい笑みを浮かべた夏姫が苦い顔を作っている牡丹に世間話にもならないどうでも良い会話を投げかけて来る。 「この椅子……どうですかぁ? 座り心地……良いでしょ♥ お尻のクッションも拘っているようですし、背中も思わずぶつけても痛くならないように念入りにクッションが挟まれているんです♪ 身体中がフカフカした感触を感じられて……ずっと座っていても疲れないんですよね~♪」  自分が先程まで座らされていた椅子の事を褒める様な言葉で表現する夏姫だが、その愛らしい目は牡丹の引き攣る表情を見逃すまいと下からジッと観察している。  そして、笑みを浮かべた口を急に真顔に戻して、小さな声で続きを零す。 「座るだけなら……疲れなくて心地良いだけの最高の椅子なのですがぁ~~♥ でもぉ……この椅子に座らされるとぉ……隠せなくなっちゃうんですよねぇ? 大事な……部・分・が♥」  媚びるような声から突然低い威圧するような声に変わり、牡丹は足裏の刺激とは全く別の寒気をゾクリと背筋に走らせてしまう。  彼女の言う“大事な部分”というのが何処の事を指すのか……それが分からない彼女ではなかったから、余計にそこに意識が向いてしまって額に不安の冷や汗が滲み出てしまう。 「『さて、この牡丹嬢の前に現われた謎の美少女……彼女が牡丹嬢とこれから“にらめっこ”をすることになるのですが、皆様はにらめっこという遊びのルールはご存じですよね?』」  普段、本心の感情を人に悟られないよう一定の笑顔で包み隠して心の内を読まれないよう気を配っている牡丹だが……既に開始されいている足裏への妖しい刺激と、智恵理のルール説明を聞いてその表情に焦りが浮かんでしまう。 「『皆さんも子供の頃にお友達と遊んだ経験があるのではないでしょうか? にらめっこし~ましょ♪ 笑ったら負けよ~あっぷっぷ♪ なんて囃子言葉を告げて……。そして、言葉を発さずお互いの顔を見合って……歌の通り“先に笑ったら負け”というルールで遊んだと思いますが、今回もルールはそれと同じです♥』」  智恵理の説明をそこまで聞くと不意に定期的に送られてきていた足裏への刺激が不意に止まる。  椅子に潜っていた人物が飽きて刺激をやめてくれたのか、それとも一時的に止めてくれているだけなのかは判断に困るところだが、その椅子からは人が出て来た気配を感じられなかった事を鑑みるに……まだこの後にその人物が何かを仕掛けて来るであろう事は簡単に予測がついてしまう。  誰かが居る事は確実だが……その姿は観客には見えていない。なにせ……椅子の脚にはあの分厚い鉄板が四方を囲んでいて、外からは人が潜んでいても気付かない仕様になっているのだ。だから、観客からはただ下着姿に剥かれた牡丹が椅子に万歳の格好で拘束されていて、時折何かを我慢するような顔を見せている……という風にしか映っていない筈だ。まさか、椅子の下に誰かが潜んでいようとは……誰も考えないのである。 「『これから、この美女が牡丹嬢とにらめっこして彼女を笑わせようとします。もしもそのにらめっこで先にこの美女が笑ってしまったら……牡丹嬢の勝ちという事でこの拘束された二人は解放されますが、もしも“我慢できずに”笑ってしまったら~~? 今度はコッチの紅葉嬢の方に“この方”がお仕置きを……』」  智恵理の司会進行具合に応じて今度は舞台裏の袖付近で待機していた鈴音が赤いカーテンの袖からステージへと姿を現す。その姿を見た紅葉と牡丹は驚愕に目を見開いてしまい……同時に正面で腕を組んで成り行きをぼんやり見ていた麗華も、司会である智恵理でさえも何故か驚愕に言葉を止めてしまう。  その驚愕は彼女の衣装に原因があった。  鈴音は先程までのお人形さんの様なヒラヒラした服ではなく、SM嬢を彷彿とさせる際どい衣装に着替えて登場したのだ。  子供の様見た目だった顔には蝶のマスクが付けられ目元を隠した状態にし、口元には真っ赤なリップを強調するように厚く塗り……背の低さは高さのある黒いハイヒールを履いて背丈を若干高く見せてカバーしている。太い三つ編みだった髪は全て結び目を解いて遊ばせるようにバラつかせ、幼かった胸も寄せて上げてを努力し見違えるほど女性らしい胸元を作り出しそれを開けた襟元の谷間で見せつけている。衣装は黒を基調にライトの光を反射するラメがそこかしこに散らして配置されていて、上は……横腹・臍・胸の谷間・そして背中に至るまでそれぞれ大胆に見せる切り込みが入れられている。下も同様……股下を際どい角度で抉る様な食い込み気味の黒いハイレグ型パンツを身につけ、脚には目の広い網タイツを穿かされてあり細い脚線美を強調している。  とてもあの、人形のような可憐で生意気そうなお子様……とは思えない変身っぷりに麗華や智恵理は驚愕と共に心の中でツッコミを入れざるを得なくなってしまう。 『誰? 彼女……ダレ??』っと……。  そのあまりの豹変ぶりを見た紅葉も同時に驚愕し、目を丸く見開いてしまう。そして同じく…… 「ダレ? あんた……一体誰よ??」っと、こちらは心の中ではなく実際に声に出してツッコミを入れてしまう。 「『えっ、えっと……ゴホン! 失礼しました! もしも牡丹嬢が笑ってしまったら、このお仕置き……セクシー? レディ……?? が、コチラの……身動きが取れなくなっている紅葉嬢にお仕置きをするという流れです……』」  まさかこのような大人びた変身を遂げてステージに上がって来るとは想像しておらず、智恵理も司会進行を忘れ驚いてしまうが……鈴音が『なに失礼な驚き方してんのよ!』と言いたげな睨みを向けた事からハッと我に返り渡されたいて台本通りの言葉を再び読み上げ始める事となった。  この台本は麗華が書き上げた台本であった筈なのだが……鈴音を紹介する文章である“こちょこちょチルドレン”という言葉が何度も横線で消され、上には“お仕置きセクシーレディ”という言葉が強調して書き加えられていた。  智恵理はその汚く書かれたセクシーレディの部分を言い辛そうに疑問符を添えて表現すると、それを聞いた鈴音は腰に手を当てて“それが私の事だ”と主張するように胸を張った。 「『牡丹嬢がにらめっこに負けて笑ってしまったら、コチラの紅葉嬢にも笑顔のお裾分け……という事で、罰として、お仕置きレディ? の超絶技巧による“強制・笑わせの刑”を受けて頂きます』」  鈴音はハイヒールをコツコツとワザとらしく鳴らしながら、万歳の格好で寝かされている紅葉の真横に腰かけて脚を組んで座って見せる。  そして、彼女の無防備に晒されたワキを狙うように右手を掲げて指をコチョコチョと動かして見せた。 「『笑ってしまった罰は連帯責任で相方にも笑って貰う……っというルールですので、紅葉嬢にはお仕置きレディーによって笑いを強制しようとする刺激が送り込まれる事となります♥ その刺激というのは、この拘束からも分かると思いますが……』」  鈴音は智恵理の言葉の進み具合に合わせて、コチョコチョ動かしていた手を今度は人差し指一本の形に変え……それをそのまま眼下で万歳の格好を強いられている紅葉の“腋”へと降ろしていく。  そして、その人差し指を腋の窪み部分へと着地させると……そこで円を描くような動きをさせ彼女に堪え難い刺激を送り込んでいく。 「にゃはっっ!? ひゃいぃぃぃっっ!?!? ちょ、ぅはっっっ!!!」  突然ワキに想像を絶するような掻痒感を受け、紅葉は悲鳴を上げて身体をビクつかせてしまう。  その反応を嬉しそうに眺めた鈴音は、やり過ぎては楽しみが減ってしまうと言わんばかりに指をすぐに腋から離し刺激をそれ以上加えないようにする。 「『今見て頂いた通り……拘束されて身動きが取れない紅葉嬢の身体を、このセクシーレディさんが手で“コチョコチョ”っとくすぐって無理やり笑わせようとします♥』」  鈴音はすぐにまた手をくすぐる格好に形を変え、そして紅葉の身体中をくすぐるフリをして宙を大きく右往左往させて見せる。  その手の動きに紅葉は、触られたワキに残っている感触を思い出しつつ「ヒィィ」と顔を引き攣らせ情けない悲鳴を上げてしまう。 「『紅葉嬢がそのくすぐり攻撃に耐えて笑わずに居る事が出来れば……それ以上の罰は行使されませんが、もしも彼女までも笑ってしまったなら……これも連帯責任の罰として~~~♥』」  今度は夏姫の方が智恵理の煽り言葉を聞いてニンマリ笑みを浮かべる。そして、両手を斜め上に掲げて椅子に万歳の格好で座らされている牡丹のワキに触れる寸前までその手を近づける。  その手は腋の肌には触れなかったが、指を動かす度に露わになっている腋の肌に空気が動く僅かなざわめきが感じられてしまう。  牡丹はその僅かな刺激を敏感に感じ取り、コチラも口端をヒクヒクと引き攣らせてたじろぐ仕草を取ってしまう。 『くっ! 紅葉様が笑ってしまったら……私まで……この人の手にくすぐられるという事ですか……。それは絶対に避けたい! そんな事で私が無様に笑わされるなど……考えたくもない!!』  牡丹は自分がくすぐりによって笑ってしまっている自分の姿を想像したくないと思っている。今までは自分の感情や思惑を隠す為に敢えて自ら形ばかりの笑顔を浮かべていたが、くすぐりで無理やり笑わされればそんな隠すための笑顔など浮かべる余裕もなく不本意な笑いを吐き出す事になってしまう。  人前で声を出して笑うなど……そんなはしたない行為……したいとは望まない。ましてやこんなに大勢の観客がいる前で……自分の意思とは無関係の無様な笑いを見られるなんて……考えただけでも気が遠くなる程の屈辱感を味わうのは必至だ。  そんな自分を……こんな所で晒したくない。  自分のアイデンティティである、余裕ある朗らかな笑顔を浮かべたまま……何事もなくこの場を乗り切ってしまいたい……  そうは思っているが……先程、試しにと言わんばかりに撫でられた指の感触が……今でも足裏に耐え難いムズ痒さの幻触を思い出させてしまい、こそばゆさに身を捩りたくなる衝動に駆られてしまっている。  椅子の下には……きっと綾香が潜んでいるに違いない。彼女だけがフロアに姿を見せていないし、しばし声すらも聞いていない。  恐らく、自分に復讐をする為に椅子の下に潜って邪魔をする気なのだ……  にらめっこという……子供染みた遊びを出来レースに変えるべく……足裏のスペースに待機しているのだ。  先程の足裏への刺激は、彼女なりの挨拶だったのだろう。自分はここに居ていつでも足裏をくすぐって笑わせる事が出来るぞ……と、言葉でなく態度でそれを知らせて来たのだろう……それが分かるから余計に笑ってやりたくないと思えてしまう。 『ま、負けませんっ!! 絶対……笑ってなんか……あげません!! こんなもの……意地でも我慢して差し上げますッっ!!』  牡丹は決意を込める目で夏姫を睨みつける。  夏姫はその睨みを見てクスリと笑みを零し、くすぐるフリをさせていた手をゆっくり下げていく。 「『さぁさ♥ ルールも罰も説明した事ですし……早速今宵のショーを開催するといたしましょう♪ 果たして牡丹嬢はこの美女とのにらめっこに勝つ事が出来るのか? それとも……負けて無様な笑い顔を皆さんの前で晒してしまう事になるのか? 皆様はどうぞ……これは楽しいショーだと思いながらお酒を片手に観覧をお楽しみくださいませ』」  智恵理がその様に開催を宣言すると、夏姫はステージの観客に向かって深いお辞儀をして見せる。  それに対して観客たちは、まだこのショーの意図するところが読めていない様子でまばらに拍手を返して来る。  拍手をある程度浴びた夏姫はお辞儀の姿勢から頭を上げて、ニコリと笑みを零す。  そして、子供の様に大袈裟にクルリと身を翻すと、牡丹の睨み目を下から見上げ……今度はニヤリと口元をいやらしく釣り上げさせてみせる。  その企み顔に……牡丹は思わずギクリと奥歯に力がこもった。  智恵理はその様子を遠目に見ながら、マイクに口を近づけ……  そして、夏姫と同じ笑みを浮かべながら……無情にも開始の合図をマイクに乗せるのだった。
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POSTEDApr 29, 2025
ARCHIVEDJun 10, 2026