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1話 部長への罰
「……ただいま」
玄関を開けた瞬間、じっとりとした空気が肌にまとわりついた。
白石雫(24歳)はごくごく普通の会社に通うOLである。ただ、ひとつ、彼女には不思議な魔法をつかえるという点を除いては…。
冷房を切っていた部屋は、まるで自分の鬱屈を吸い取って膨らませたみたいに、重く、湿っている。
靴を脱ぎながら、ふと鏡に映った自分の顔に目が止まった。
赤く浮いた吹き出物。頬の乾いた皮膚。
触れるとヒリつくような感覚。
その瞬間、脳裏に蘇る。
「うちの部署は見た目に気を遣わない子が多いよなぁ。最近の若い子は肌も管理できないのかぁ~?」
昼休み、給湯室で飛んできたあの声。
沼田部長の、あのニヤついた口元。
その横で愛想笑いする女子社員たちの、あからさまな目線。
(……死ねばいいのに)
雫は何も言い返さなかった。いや、言い返す必要なんてないのだ。
あの力があれば…。
雫は静かに笑う。
しかしながら、その思いとは裏腹に...。
ズキッ
「う…。」
便秘で腹の下のほうに鈍く詰まる感覚があった。
身体も気分も重くて、何もかもが不快だ。
「……付き合ってもらおうかな。あの糞部長に…」
雫はリビングに向かいながら、小さく指を鳴らす。
すると、わずか数秒の後、空間の一角が淡くゆらぎ、手のひらサイズのスーツ姿の人影が、ぽたりと落ちてきた。
雫は好きなもの好きな空間に好きなサイズで呼び寄せる力があるであった。ただし、そこに呼び出されたものは、本物と同じ記憶を持った精巧なコピーであるため、実害はない。
ぽたり、と手のひらに落ちた小さなスーツ姿の男は、きょろきょろと周囲を見渡した。
「……なんだここは。え?なんだこれ、どこだよ……?」
足元をふらつかせながら立ち上がると、顔をしかめ、雫を見上げた。
「……ああ、なんだお前か。ははっ、今日はやけに見下ろしてくるじゃねえか。ま、たまにはそのぐらいの気概があってもいいかもな?」
自分がわずか10cmの存在になっているとは、まだ気づいていない。
それどころか、いつもの調子でしゃべっている。
「しかしお前さあ、最近ほんとひどい顔してんな。化粧で隠せてないぞ?体調悪いのか?女ってのはな、そういうとこに気を遣えないとな――」
雫は黙っていた。
代わりに、靴下を1枚手に取り、ゆっくりと丸めながら、椅子の前に腰を下ろした。
「……ほんと、変わらないね。どれだけ小さくなっても、その口だけは動くんだ。」
「は?何言って――うわっ……」
雫の手が、ふいに持ち上がる。
その手には、湿気を含んだ脱ぎたての靴下が収まっていた。
「え……ちょ、ちょっと待て、おい雫?なにすんだよ!?おい!おまえ、ふざけ……っ!」
言葉が、湿った生地の中に吸い込まれていった。
「ふふっ」
雫は躊躇することなく、手に持った靴下を下ろしていき、その中にゆっくりと足を入れていった。
靴下の中では、沼田部長の声がくぐもって響いていた。
「おいッ!なんだこれ、くっせぇ……おい雫、ここから出せッ!冗談じゃ済まねえぞこれは!お、おい、待て待てなんだこのでかいものは…。」
入れた足先に感じる微かな動き。
小さな存在が、靴下の中で這いずり、もがいている。
けれどそれは、くすぐったくもなければ、痛くもない。
ただ……妙に心地よかった。
「まさかっ。これは足の臭いなのか?おまえなぁ……どんな育ち方したら、こんな臭い足になるんだよ!?干物かよ!なあッ!くっそ、うわっ、湿って……うぇぇ!」
雫は黙ったまま、ゆっくりと靴下を脱ぐ。
床の上で丸められた布の中から、沼田のコピーが転がり出た。
髪は乱れ、スーツも皺だらけ。
だが、顔にはあの忌々しい説教顔が、しっかりと貼りついていた。
「……最悪だ、ほんとに……俺を誰だと思ってんだよ、部長だぞ!?今すぐ元に――」
雫は机の上にそっと彼を摘み上げて置いた。
「うちの部長は、そんなに偉いんですか?」
「は?あたりまえだろ。お前らみたいな使えない女社員が、誰の指導で育ってきたと思ってるんだ。
――っていうか、近いって!臭いんだよ、マジで!その口のニオイ、歯磨きしてんのか!?あん?」
雫の眉がピクリと動いた。
(……まだ、足りないんだね)
次の瞬間。
雫が指を鳴らすと、机の上の沼田の身体がしゅっと音を立て、さらに縮んだ。
「な、なっ!?なんだ……えっ、うそ……っ!」
沼田のコピーは、親指サイズにまで小さくなっていた。
雫は無言で、机の端に置いていた空のペットボトルを手に取った。
乾いた音を立てて、キャップを開ける。
「お、おい……まさかそれ……やめろって……や、やめろ、やめろぉおおおおおおおおおっ――!!」
彼の絶叫は、すぐにボトルの中に吸い込まれた。
カツン、と小さな音が響く。
中で暴れる音が、プラスチック越しに伝わってくる。
「ねえ部長……。私の肌荒れの原因って、なんだと思います?最近、便秘なんですよ」
ボトルの口にキャップを戻し、きっちりと閉めた。
「でも、今夜はスッキリしそうな気がします」
雫はペットボトルを棚の一角に立てかけた。
30分後…。
カチリ。
一度閉めたキャップが、ゆっくりと外される。
「……ん?」
ペットボトルの中で小さくなった沼田は、汗ばんだ顔で上を見上げた。
蓋の向こうには、相変わらず無表情でこちらを見下ろす雫の姿があった。
「……何だよ。今さら反省したのか?」
相変わらずの態度だった。
上司として当然、自分を敬うべきだ――そんな思考がまだどこかに残っているのだろう。
「ねえ部長」
「ん?」
「私、最近便秘なんですよ。」
「は……さっきも聞いたが、なんなんだよ?」
雫の口元が、うっすらと笑みに歪んだ。
それは照れでも、喜びでもない。
ただ、これからの行為に対する、確かな予感からくる愉悦だった。
「お、おい?なんだその顔……やめろ、やめろよ?おい雫、おまえ、何を――」
「せっかくだから、部長にも苦しさをおすそ分けしようと思って。……ほら、上司って、部下の悩みに寄り添うべきですよね?」
そう言って、雫は静かに腰を下ろし、
スカートの中に手を伸ばした。
するすると、ショーツが太ももを滑り降りる音が、やけに鮮明に響いた。
「や、やめろ!!やめろ雫!!ふざけるなっ!!おい!おい!!」
沼田の叫び声は、ペットボトルの中に反響するだけであった。
ペットボトルの口―キャップ部分から見える外の景気がだんだんと薄暗くなってくる。その向こう、肌の色をした何かが、重力に逆らうように迫ってくる。いや、自分のいるこのペットボトルが上空にあがっていっているのだ。
「おまえッ!俺を誰だと思ってる!!こんな……ッ、バカじゃねえのかッ!!」
雫は、その姿をじっと見下ろしていた。
「……はぁ。救いようがないわね。でも……だからこそ、いいのよね。」
ゆっくりと体を傾け、ペットボトルの口に、自らの肛門をぴたりと密着させた。
その瞬間――沼田の表情が、心底凍りついた。
「や……やめろ……」
沼田の顔は真っ青だった。
すでにその目は、上から迫るものが何なのかを、知っていた。
「お願いだから、やめてくれ……俺は部長なんだぞ、こんな――」
「謝ったら、やめてあげますよ?」
雫の声は、まるで笑顔の接客のように柔らかかった。
だがその目は、まったく笑っていない。
「……は?」
「ごめんなさいって。雫さんにひどいこと言ってごめんなさいって言えば、許してあげます。」
沼田の口が歪んだ。
「はっ、バカにしてんのか……!何がごめんなさいだ。俺が部下に頭を下げるわけ――」
ブボッ……。
低く、湿った音が、ペットボトルの中を満たした。
「ぐぅッ……!う、うっ……くっ……!」
あまりの狭さに逃げ場はない。
ガスはそのまま、空間のすべてに染み込み、沼田の肺を包む。
「ほらぁ……ちゃんと謝らないから、苦しいですよ?」
「っ……ふざけんなよ……なんだよこの女……気が狂って――」
プスッ……ブゥ……。
今度は、わずかにタイミングをずらした連続の音。
スカし気味だが、却って広がりやすい臭気が、ペットボトル内を巡る。
「ぐあっ……ぅおぇ……やめろッ……おい……っ!」
「謝らないんですね?」
雫は、少しだけ腰を浮かせ、さらに角度を調整した。
「……じゃあ、もう一回。」
ブゥウゥ……。
長く、湿った音が響いた。
ボトルの内壁が薄く曇る。
沼田の姿が見えなくなりつつあるほど、濃密なガスが満ちていく。
「う……うああああああああっ!!!たす……けっ……ぐぅうぅ……!!」
「謝ればいいだけなのに。……本当に、救いようがない人ですね」
雫は、肛門をぴたりとボトルの口にあてがったまま、目を細めた。
「でも……私、そういうくだらない意地を潰すの、結構好きなんですよ」
「わ、わかったっ……謝る……っ!」
咳き込みながら、沼田はボトルの中で膝をついた。
すでに何度も浴びせられた放屁の残り香が、まだ空間を支配している。
「ご、ごめんっ……雫……お前のこと、バカにして……ほんとに……すまんっ……」
その声は震えていたが、どこか適当だった。
口だけの言葉、というのは――すぐにわかる。
「……」
雫は無言で腰を少し浮かせると、深く息を吸った。
そして。
「ふんっ」
ブオオォ……ッ!!!
過去最大の音が、ボトルの中で炸裂した。
「あぎゃああああああああ」
容赦のない音とともに、熱く粘ったガスが、濃密に封じ込められる。
沼田はその場で転げ、涙と涎をこぼしながらのたうち回る。
「態度って、ものがあるでしょう?」
雫の声が、ゆっくりと低くなる。
「土下座しなさいよ。その狭いボトルの底で、額をこすりつけて――ねえ、ちゃんと。」
沼田は、ガスの中で這いながら、ペットボトルの底に顔をこすりつけた。
空気を求めて口を開いた瞬間、また臭気が流れ込む。
それでも、彼は服で鼻水を拭いながら、つぶやいた。
「ご、ごめんなさい……本当に、もう二度と、馬鹿にしません……だから……お願い、やめて……」
雫はボトルを持ち上げ、
その土下座をする姿を、下から覗き込むようにじっと見つめた。
「……はぁ……はぁ……」
その小さな、人とも言えない存在が、プライドを捨てて命乞いをするその姿を、ボトル越しに舐めるように観察する。
下着の奥、股間が熱を帯びて、ぬるりとした感触がにじむ。
「ふふ……そう、それよ……もっと、もっと惨めに……。
ねぇ、沼田部長。今、どんな気持ちですか?」
彼の震える声が返ってくるたびに、雫は、指で自分の太ももをゆっくりなぞった。
(すごい……なんで……こんなに気持ちいいの……)
ボトルを胸に抱きながら、雫は深く息を吐いた。
「ありがとう、部長。便秘って……ストレスと関係してるんですよね。でも、今ので……だいぶスッキリしました。お通じ、来そうです。 本当に――ありがとう」
沼田の表情が、かすかにほころぶ。
「そ、そうか……よかった。ならもう、俺は帰ってもいいよな?もういいだろ?な?」
だが。雫は、その言葉に答えない。
ただゆっくりと、またあの姿勢に戻っていく。
両脚を開き、腰を落とし――
ペットボトルの口に、再び肛門をあてがう。
雫の顔は、穏やかに微笑んでいた。
けれどその目だけは、いまだにボトルの中の元上司を見下ろしていた。
(帰れると思ったの?……ふふ、かわいい)
(……え?)
ボトルの中で土下座していた沼田は、
ふと雫の様子に違和感を覚えた。
彼女は、さっきまでとは違う姿勢を取り始めていた。
体の向きを正し、腰を深く沈めるように、ゆっくりと――。
(……なんだ?)
「お、おい……なにしてんだ……?なあ……?」
その時、ぴたりと、彼の背筋に何かが走った。
(……まさか)
「や、やめろッ……やめてくれッ……謝る!!謝るからああああああああああああああああああああッ!!!!!」
必死に叫ぶ。
だが、もう彼の声は、何の意味も持たなかった。
上を見上げた。
ペットボトルの口いっぱいに、
巨大な肉の襞が、ひくひくとうごめいていた。
「い……いやだ……やめて……たすけて……っ!!」
肛門が、僅かに開いた。
ぷす、ぷす…
その奥、黒ずんだ塊が、ゆっくりと顔を出しては引っ込んでいた。
それはまるで、部長の恐怖を楽しんでいるかのような、雫の意思すら宿しているような、悪意の影だった。
「や……だ……っ!そんなの、ありえねぇ!!くるなあああああああああああああああああああああああッ!!!!!」
雫の声が、やけに明るく響く。
「ん……もうちょっと……。ねえ部長……準備、できてます?」
部長は、ボトルの中で狂ったように暴れた。
吐き気と恐怖と、全身の筋肉が痙攣し、呼吸すらうまくできない。
ぶしゅっ、ぶすっ‥‥
肛門が、さらに開く。
ついに、茶褐色の固形物が輪郭を伴って現れた。
「やめてぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええッ!!!」
その悲鳴が響いた、ほんの一瞬あとだった。
「――あっ」
雫の、少し間抜けで、でもどこか恍惚とした声。
そして。
ブジュ……ッ! ブボボ……ボブリッ……ボポッ……ブリリリリィ……!
湿った、濁った、地響きのような音が、
ペットボトル全体を震わせながら、響き渡った。
悪臭。
圧力。
重力。
絶望。
全てが、一気に降ってきた。
沼田の視界が、茶色く染まり始めた。
「――っく……ふぅぅ……」
尻の奥から解き放たれた重圧が、雫の体を震わせる。
部長に乗せた最後のひとかたまりが、
ぷるん、と鈍い音を立ててペットボトルの奥へと転がり落ちた。
「はぁ……はあ……やば……っ……ふふ……」
じんわりとにじむ汗。
股間にはまだ、しっとりと濡れた感触が残っている。
全身から抜けていくような脱力感が、心地よい快便の余韻を支配していた。
手元のペットボトルが、
少しだけ重くなっているのがわかる。
「……あ」
雫はボトルを持ち上げ、
視界の真正面にまでゆっくりと持ってくる。
「……うわ、くさっ……」
ほんの少しだけ顔をしかめる。
顔を近づけたわけでもないのに、ペットボトルの口から染み出した臭気が、あの部長の発言よりもはるかに暴力的だった。
中を覗く。
茶色に満たされた液体と、幾層にも折り重なった塊。
ところどころに、
スーツの切れ端のような繊維や、眼鏡のフレームがねじ曲がった残骸が張り付いている。
だが――人の形はもう、どこにもなかった。
「……あんなにうるさかった部長が、私のうんこで、つぶされて消えてなくなった。」
そう口にした瞬間、全身にゾクッとした震えが走る。
その感触に突き動かされるように、雫はペットボトルを机の上にそっと置いた。
そして――
そのまま、椅子に深く腰をかけると、スカートをたくし上げ、下着をずらす。
「……ふふ……ほんと、クソみたいな男だったけど……最後はちゃんと、クソになれたんだね……。」
その言葉が自分の口から出た瞬間、雫の身体がビクリと震えた。股間に指を添える。
もうすでに濡れていた場所を、そっとなぞる。
「ふふ……あんなに偉そうだったくせに……」
ボトルの中をじっと見つめながら、雫はもう片方の手で、自分の胸を優しく撫でた。
「口だけは偉そうで……最後まで謝れなかったくせに……結局……私の排泄物に押し潰されて、無になったのよ……」
指先がクリトリスに触れた瞬間、腰がくいっと跳ねる。
「たまんない……ほんとに、たまんない……っ……」
視線は終始、ボトルに注がれていた。
中で濁った塊が少し揺れただけで、雫の中の快感が大きく波打つ。
「ねぇ、部長……今どんな気持ち?」
ボトルを机の上に置き、顔を近づける。
指の動きは徐々に速くなり、湿った音が部屋に微かに響く。
「あなたの成れの果てが、私の便に押しつぶされているの。――最高……本当に、最高……っ……」
腰が跳ね、息が詰まり、体が突っ張る。
そして。
「あっ……あ……ッ、……く……ぅッ……♡」
全身がビクビクと震え、雫はその場で小さく身体を丸めながら、息を荒げてボトルを見つめ続けた。
「……ふふっ……ありがと、部長。おかげで、便秘も心もスッキリよ。」
彼女の視線の先、机の上では、目をそむけたくなるような濁った茶色い液体だけが、静かにゆれていた。