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【三匹の蜘蛛を払いても……】【2069文字】
【第21話選択肢より】
https://abnormal-create.fanbox.cc/posts/10208462
【選択肢】
・彼女の後方支援に回り、他二人のサキュモスが来ないか、様子を見る。
(目の前の一体はイサネに任せればいい)
ならばと、リットは彼女の手薄になる後方を警戒することに全力を使った。
幸い、今ここに来たばかりのサキュモスたちに罠を張る余裕はなかった。
目の前の敵も、まだ隠れており見えてはいない。
しかし、イサネは天からの目があるかのように、迷うことなく隠れている標的の位置を割り出した。
リットにもある程度は分かる。
それは他の二体にもいえること。
巧妙に気配を消しているが、場所はおよそ特定した。
集中をそちら二体に使っているからだ。
かわりに、もう一体のことは思考からも排除する。
(右側、左側の建物の裏。こちらの警戒には気が付いていない)
耳に集中する。人と音とは明らかに異なる歩行音。
蜘蛛のサキュモスならではの多足歩行の足音はどこまで気配を消しても、わずかに残る。
その音を聞き逃さないようにした。
「かぁはぁ!」
イサネの向かった方向から轟音とともに、そんな苦しむような、あるいは衝撃を受けたような声が聞こえた。
「これで、おわり」
「あらまぁ……♡やられちゃったかな~♡」
そんな声が聞こえたところで闇が動いた。
イサネがサキュモスに止めを刺そうとしているところだった。彼女の視界の陰から闇色に体表面を偽装したサキュモスが現れた。
「ざんねん♡まだ、やられ……」
「二刀剣術『旋嵐』」
「一槍雷術『雷轟衝』」
リットの剣風がイサネを狙う糸を払いのけた。
そして、仲間の援護を確信したサキュモスはイサネの槍の落下槍術に貫かれた。
まさしく、雷のような一撃。
頭部から足までを貫く一撃だ。
痛みも苦痛もなく、怪我もない。だが、その一撃は誰がどう見ても甚大なる被害を想起させるものだった。
「ざんねん、だったわ……♡ふふ……♡」
サキュモスの一体が霧散した。
復活するには相当に時間がかかるはず。しかし、多くの市民が捕まったことから、早くに復活してくるのは確実。それでも数日はかかると思われる。
だが、今日、こいつらをどうにかできなければ、国そのものが滅ぶ。
「あと、二匹……」
イサネの目は次の標的を見ていた。
もう場所が割れた二匹のサキュモスが、無駄だと考え隠密の闇を解き、攻撃の予備動作に入った。
だがリットは、次の攻撃に関しても予想がついていた。
その予備動作から、腕二本を交差して打ち出す糸の網だ。
攻撃力ではイサネには圧倒的に及ばない。先の一匹を狩る瞬間そう理解したリット。
だが、支援に関しては彼女よりはリットのほうが早く動ける。
「さぁ、二人……♡」「いらっしゃ……♡」
二匹のサキュモスの言葉が言い終わる前に……。
二刀剣術……。
「旋嵐・爆」
高速の二刀剣術が周囲から迫る二匹の蜘蛛の網を打ち払った。
ぶわっと広がる強烈な風の刃。本来なら、それで淫気で出来た糸を霧散させる。だが、この『旋嵐・爆』は敵を吹き飛ばすことを主軸に置いている。
大型のサキュモスでさえ一瞬足を止めさせる風圧で、糸は反射される如く、彼女たち自身に絡みつく。
「なぁ……!」「このぉ……!」
サキュモス自身から出た糸である。当然すぐに払われる。
だが、その一瞬の隙をイサネは見逃さなかった。
「逃がさない」
スッと、息を吸い込む。彼女の体の奥底で轟雷の息吹が吹きあがった。
「一槍雷術『雷爆閃』」
一瞬の突きだ。槍一本。ただ打ち出された一撃の槍によってサキュモスたちの体を雷電の爆裂が駆け抜けた。
俊足の突きから放たれる雷の閃光。
当然、見えるはずはない。
「え……」「あ……」
二人のサキュモスも近くしたのだろう。
一瞬で自身の淫気が刈り取られる光景を。
霧散して消える。
「あぁ、これは無理だ」
リットは改めて思う。
『滅弓』が広範囲ならば、彼女は直線状のすべてを突き通す怪物だと。
「イサネ」
「……なに?」
いぶかしげにこちらを見るイサネへ単刀直入に疑問をぶつけた。
「おまえ、実力を隠していたな」
「……」
無言は回答だ。
これだけの実力者がいれば、リットが知らないはずがなかった。
「どこの出身だ?」
「私の生まれ故郷はここだよ」
「ということは、育った場所は違うと……」
「別に……お前に関係ない話だ」
「まて……まだ聞きたいことは……「あら?お取込み中だった?ふふ♡」」
視界がより暗くなったかのようなゾッとする感覚。
声を掛けられるまで、リットもイサネも背後の気配に気が付かなった。
とっさに飛びのく。
「初めまして、人間さん♡」
20メイルはあろうかとう巨体。
先のサキュモスと同じ形態の体つきだが、彼女の複数の足の間に垂れるように複乳が付いていた。
蜘蛛の女王。
上半身を覆うのは絹のごとき薄いドレスだった。下半身は腹足を生やした蜘蛛の体。
ドロッと常に垂れている複乳から漏れだす糸は、あっという間に彼女の足元を糸粘液で覆っていった。
(どうする……!!どうする……⁉)
その巨体にも関わらず、まったく音がしなかった。それどころか気配すらも。
あり得ないと思いながらも、彼女の能力かと疑う。
(いや、まずい⁉)
これだけ気配を消すことに長けているのなら、今の隙に罠を張ってあるのではないかと……。
【選択肢】
・イサネの手を引き急制動をかける。【第34話へ】
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・より遠く、後方へ下がる。【第30話へ】
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