no preview
DESCRIPTION
サキュモスハンター【39】【遠き地に祈りを捧げ……】(2024文字)
【第38話より】
https://abnormal-create.fanbox.cc/posts/9577870
「うぅ……、ぅぅ……ひどいよぉ」
「ぁぁ……、ほんとに……」
メグルはギルドから出た。
自分でもわかる。
今、魂が抜けたような顔をしているだろう。
ユイナに搾られて、3日後、ギルドマスターに呼び出され、大目玉を食らった。
ちなみにユイナは、あの後すぐに一回お叱り(今日以上の)をもらっているらしく、本日は二度目だった。
まあ、よくよく事情を聞けば、知らぬ中なら同情の余地なしなのだが……。
「まぁ、ボ、ぼくも、この通り元に戻ったし……」
平然を貫こうとしたが、当然のように失敗した。
それはそうだ。
あんなことがあれば、平然を貫けるわけがなかった。
横に立つユイナも、モジモジとしていた。
気にしているらしい。
「ほ、ほんと、ごめんなさい……わた、し、ぁ、ぁぁ、あんな、こと……♡」
やかんを熱して蒸気が吹きそうなほどに、顔が赤くなっていく。
その前にイリスに敗北した後にもしているらしいが、メグルにはほとんど記憶が無かった。いや、残ってはいるが、夢の中の情景のようにおぼろげなのだ。
だが、昨日の事は鮮明に覚えている。
知っている中だからこそ気まずいのだ。
「お~い、二人とも~」
そこにリマの声が聞こえてきた。
傍の家に身体を傾け、腕組みしていた。
そして、一言。
「イチャつくなら、見えないところでしような」
「い、いちゃついてなんかいません‼」
ユイナがリマの言葉を音速のごとく否定する。
うん、それはそれで傷付く。
昨日のことは、『淫気発情』のせいだったのか……うん、そうだったんだよな。
自分の中にある淡い恋心を、スッと胸の内にしまい込んだ。
ハンターを続けるうえで、恋と愛は最大限抑えた方がいい。少なくともサキュモスに間を引き裂かれないほどの強さを持ってからのほうが……。
「ちょっちょ……」
「え、なに……」
ユイナがリマに連れられていく。
「えぇ‼……そんな、覚えてない……いや、おぼえぇ……ごにょごにょ……」
「なら、次は……」
「ん、ん、うん……わかった……でも……♡ごにょごにょ……」
何やら密談をしている。
うん。聞かなかったことにしよう。
それが、たとえ二人の女性を同時に抱けることだったとしても……。
正直、昨日の勢いで、二人相手にすれば、流石のメグルも持たない。
何がと言われれば、いろいろと、としか答えられないだろう。
まあ、誰も聞いてこないことなのだが。
「どいて――!!どいてどいて――!!」
「うお!」
そんな三人がギルド前で話していると、一人のハンターが大急ぎでギルド本部へ走りこんでいった。
開いた扉を閉めることもなく、叫んだ。
「メル・セクシアが襲われた――!!」
「な‼」
「なに‼どういうことだ‼」
「おい、詳しく‼」
ハンターギルド内にいたハンターたちが駆け寄る。
メグルたちも中に戻った。
「メル・セクシアがサキュモスの大侵攻を受けたらしい。現在ゼンメル・カイメルの精鋭が援軍に向かったらしい。だが、この情報も二日前の物だ」
「メル・セクシアならかなりの距離がある。ハンターの全力でも二日が最短」
「なら、もしかして、もう……」
「いや、まだ何とかなるかも……」
「すぐにギルドマスターに報告だ」
「はい!」
一気にギルド内が騒がしくなった。
メル・セクシアはメグルたちがいるこの街アクレイアからまっすぐ南に位置する街だ。
だが、一番距離のある街でもある。
海に面した街であり、もっともサキュモスの襲撃が少ない街としても有名だった。
「もしかして、森でパイラウネ以外のサキュモスと接敵がなかったのは……」
ユイナが確信的な予想を口にする。
「あの森のサキュモス全員で奇襲なら、メル・セクシアはもう……」
メル・セクシアから北東に位置するゼンメル・カイメルは優秀なハンターが多数在籍した街だ。そこの精鋭が増援に向かったのならば……。距離的にも十分に間に合う。半日も要しない距離だ。
「どうか……無事で……」
ユイナが天を仰ぎ、手を組んで祈る。
メグルもリマも天を見た。
燦燦と降り注ぐ太陽の光のように、彼らに加護があらんことを。
***
メル・セクシアへ精鋭ハンター10名の派遣が決まった。
「また、よろしくね、メグル」
「よろしく、メグル」
メグルは左右からユイナとリマにそう言われた。
襲撃の報告から翌日。
ハンターたちの派遣が決まった。
だが、超一流のハンターは、街の護衛があった。
故に、二軍相当に該当する精鋭ハンターたちが召集されることになった。
二軍と言っても二つ名持ちのハンターばかりだった。
滅弓のユイナ。
重剣のリマ。
死神、アゼスト・ラドル。
天翔烈火、リブ・ランダール。
天皇姫、レメリア。
メグルの知っている限りの二つ名持ちはこの五人だ。
他の3名については詳しくは知らなかった。
そして、パイラウネとの戦闘を機にメグルへも二つ名が与えられた。
『皇閃』の二つ名が。
「メグル」
「メグル」
二人から声を掛けられ、手に持った一皇を握りしめた。
他の七人が門より出ていく。
それに続くように、メグルたちも門を出た。
昇る朝日が照らす先に地獄が待ち受けるとも知らずに……。
***
次巻【サキュモスハンター 侵攻編】へ
https://abnormal-create.fanbox.cc/posts/9614125