登場人物
佐藤結衣(さとう ゆい)- ティア・リリアン役
年齢:21歳/身長:158cm/体型:華奢
性格:活発、親しみやすい、競争心が強い
髪型:セミロングの黒髪
演じるキャラクター:ティア・リリアン(水色・ブルー)
★着ぐるみ着用により驚異的なキャラクター化現象を発揮
田中亜美(たなか あみ)- ティア・ニャミー役
年齢:22歳/身長:163cm/体型:標準
性格:上品、丁寧、分析的
髪型:茶髪のロングヘア(ピンクのゴムで束ねている)
普段は眼鏡着用だが着ぐるみ着用時はコンタクト
演じるキャラクター:ティア・ニャミー(白・ホワイト)
★視力の問題を克服し、上品で優雅な演技を披露
山田美咲(やまだ みさき)- 司会・サポート役
年齢:21歳/身長:160cm/体型:標準
役割:司会進行、演者のサポート
性格:明るく面倒見が良い。観察力が高い
★着ぐるみは苦手だが司会として完璧なサポートを提供
山田香織(やまだ かおり)- 現場責任者
年齢:32歳/身長:164cm/体型:華奢
役割:現場でのイベント運営、全体のサポート
性格:落ち着きのある優しい大人の女性
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2日目の朝 - 新たな自信を胸に
朝の集合場所で、3人は昨日とは明らかに違う表情を見せていた。
初日の緊張と不安は消え、代わりに自信と期待に満ちた笑顔があった。
結衣は昨日より15分早く到着していた。
いつもより髪をきちんと結び、動きやすい大きめの黒いTシャツとスウェットパンツ姿。
大きめのスポーツバッグには、タオルや着替え、そして昨日学んだことを忘れないよう慌てて書き留めたメモが入っている。
「おはよう!」
美咲が元気よく手を振ると、結衣の顔がぱっと明るくなる。
「おはよう!今日もよろしく!」
結衣の声には、昨日にはなかった力強さがあった。
まるで昨日の成功体験が、彼女の中で確かな自信として根づいているかのようだった。
続いて現れた亜美は、結衣と同じくグレーのスウェットパンツに黒いタイトなTシャツ姿。
「昨日はお疲れさまでした」
亜美の挨拶は相変わらず丁寧だが、声には昨日の達成感がにじんでいる。
その口調にも、ティア・ニャミーとしての上品さが少し残っているようだった。
「2人とも、なんか昨日より顔つきが違うね」
美咲が感心したように言う。
確かに、結衣も亜美も昨日の朝よりずっと堂々として見える。
初日の「どうなることやら」という不安な表情から、「今日はもっと上手くできる」という期待に満ちた表情に変わっていた。
「そうかな? でも、なんか楽しみやねん」
結衣が素直に気持ちを表現する。
昨日までの人見知りがちな結衣からは想像できないほど、積極的で前向きな発言だった。
「昨日の子供たちの笑顔が忘れられなくて。今日はもっと喜んでもらいたいなって」
結衣の目には、子供たちの笑顔を思い出している時の優しい光が宿っている。
「私も」
亜美が静かに微笑む。
「昨日はまだ慣れてなくて、思うようにできなかった部分もあったから、今日はもっと上手にティア・ニャミーを演じたいな」
亜美の言葉には、静かだが確実な向上心が込められている。
完璧主義の亜美らしく、昨日の反省点を全て頭の中で整理済みのようだった。
電車の中でも、3人の会話は弾んだ。
昨日の成功体験が、今日への原動力となっている。
「結衣、昨日帰ってから何してた?」
美咲が聞くと、結衣が少し恥ずかしそうに答える。
「実は...ティア・リリアンの動画をいっぱい見て、動きの研究してた」
「え!すごいやん!」
「何回も練習したりしてたから、今日はもっと自然に動けると思う」
亜美も負けじと話す。
「私もコンタクトレンズに完全に慣れたし、ティア・ニャミーの上品な動きをもっと研究したで」
「2人とも本気やね!」
美咲が嬉しそうに笑う。
「私も司会として、昨日より上手にできる自信がある。2人のサポートも完璧にするから!」
電車が滋賀県に入ると、車窓から見える景色も昨日より輝いて見えた。
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会場到着と2日目の環境
2日目の会場は、昨日とは違う住宅展示場だった。
より広いスペースで、ステージも少し大きい。
しかし同時に、遮るものが少なく、太陽光がより直接的に降り注ぐ環境でもあった。
「今日の会場は昨日より広いみたいやね」
亜美が感心するが、同時に炎天下の厳しさも感じ取っている。
山田さんが3人を迎えてくれる。
その表情には昨日の感謝と、今日への期待、そして少しの心配が混じっていた。
「おはようございます!」
「昨日は本当にお疲れさまでした。素晴らしいパフォーマンスで、お客様からもとても好評でしたよ」
山田さんの言葉に、3人の顔がぱっと明るくなる。
昨日の努力が認められた喜びと、今日への期待が膨らむ。
「でも、今日は少し注意が必要です」
山田さんが天気予報を確認しながら、真剣な表情で説明する。
「今日は昨日より気温が高くなる予想です。最高気温が37度を超える可能性があります」
結衣と亜美の表情が少し緊張する。
昨日でさえかなりの暑さだったのに、それ以上となると...
「大丈夫です」
山田さんが安心させるように続ける。
「休憩時間は十分に取りますし、水分補給もこまめに行います。無理は絶対に禁物ですからね!」
山田さんが心配そうに2人を見る。
責任者として、演者の安全を最優先に考えなければならない。
「でも、昨日の経験があるから、今日はもっと上手にできると思います」
結衣が前向きに答える。
その声には迷いがない。
「そうですね。じゃあ準備ができましたら、控えテントの方へご案内しますね」
会場を見回すと、設営スタッフがテントやステージの準備を進めている。
昨日よりも規模が大きく、より本格的なイベント会場の雰囲気がある。
観客席の設営も、昨日より多くの人数を想定している様子だった。
「今日も頑張ろうね」
美咲が2人の肩を軽く叩く。
「うん!」
結衣と亜美が同時に答える。
その声には、昨日の成功に裏付けられた確かな自信があった。
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控えテントでの最終確認
控えテントに到着すると、昨日と同じティア・リリアンとティア・ニャミーの衣装がハンガーに掛けられている。
しかし今日の3人は、昨日のような緊張や戸惑いは全く見せなかった。
衣装を見つめる結衣の目には、昨日とは違う親しみが宿っている。
もはや未知の道具ではなく、自分の一部となる大切なパートナーのような存在に見えているようだった。
「じゃあ、準備を始めましょうか」
山田さんが言うと、結衣と亜美は迷いなく更衣スペースに向かった。
その足取りには、昨日の不安はもうない。
美咲は司会用の台本を確認しながら、2人の変化を実感していた。
『本当に昨日とは別人みたい』
机に置かれた台本には、昨日美咲が書き込んだメモがびっしりと残っている。
アドリブで言った言葉、子供たちの反応、改善点...すべてが今日への糧となっていた。
「では今日の目標を確認しましょう」
山田さんが3人を見回した後、美咲が最初に答える。
「私は、昨日以上に自然な司会を心がけます。2人のサポートも、もっと的確にできるように」
美咲の声には、司会者としての自信と責任感が込められている。
「結衣さんは?」
「昨日の子供たちの笑顔を思い出すと、もっともっと喜んでもらいたくなりました。今日はティア・リリアンとして、もっと自然に、もっと可愛く動きたいです」
結衣の目は輝いている。
昨日の成功体験が、さらなる向上心を掻き立てているようだった。
「亜美さんは?」
「私は、ティア・ニャミーの上品さをもっと表現したいです。昨日はまだ動きが硬かったので、今日はもっと優雅に、でも親しみやすく接したいです」
亜美の言葉には、静かだが強い決意が込められている。
「みんな素晴らしいですね」
山田さんが満足そうに頷く。
「では、心の準備ができたところで、準備を始めましょうか!」
着ぐるみに着替える前、亜美と結衣がテント内の椅子に並んで座り、結衣のスマートフォンの画面を一緒に見つめていた。
「これ見て、この動き可愛くない?」
結衣が画面を亜美の方に向けながら、興奮気味に言う。
スマートフォンには、プロのキャラクターショーの動画が再生されており、ティア・リリアンとティア・ニャミーがステージで息ぴったりの演技を見せている様子が映っている。
「ほんまや、めっちゃ自然で可愛い動き」
亜美が画面に集中しながら答える。
特に、ティア・ニャミーの上品で優雅な手の動きに注目している。
「これ、私たちでもできそうやない? 亜美ちゃん、一緒にやってみよ?」
結衣が提案すると、亜美が少し困った表情を見せる。
「ええ!? そんな急に言われても私出来るかどうか分からんで?」
亜美の声には戸惑いがあったが、同時に挑戦してみたいという気持ちも感じられた。
「大丈夫、私が頑張るから!」
結衣が自信満々に答える。
昨日の成功体験が、彼女を積極的にさせているようだった。
「いや、私も頑張るけど... 結衣みたいに動ける自信は無いからリードしてや?」
亜美が少し不安そうに、でも前向きに答える。
完璧主義の亜美らしく、失敗を恐れる気持ちと挑戦したい気持ちが混在していた。
2人はもう一度動画を巻き戻して、特に印象的な振り付けの部分を注意深く観察した。
結衣は動画の中のティア・リリアンの軽やかなステップに目を輝かせ、亜美はティア・ニャミーの品のある手の動きを研究していた。
「このタイミングで手を上げて...」
「そうそう、それで次は一緒に手を繋いで...」
2人の会話は専門的になっていく。
昨日の初心者とは思えないほど、真剣にキャラクターの研究をしていた。
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更衣スペースでの親密な時間
更衣スペースのカーテンが閉められると、狭い空間に結衣と亜美だけの世界が生まれた。
「亜美ちゃん、昨日より全然緊張してないね」
結衣が私服のTシャツを脱ぎながら言う。
昨日は手が震えていたのに、今日は動作がスムーズだ。
「うん。順序も覚えたし、どのくらい大変かも分かってるからね」
亜美が眼鏡を外し、小さな手鏡でコンタクトレンズの装着を始める。
昨日とは違い、コンタクトレンズの装着も手慣れた様子だ。
右目、左目と順番に装着し、数回瞬きをして位置を確認する。
「コンタクト、もう慣れたん?」
「昨日一日でだいぶ慣れたで。今日はもっと安全に動けると思う」
亜美の表情に不安はない。
視界の不安という最大の懸念が解消されたことで、ティア・ニャミーとしての演技に集中できる自信があった。
2人はベージュ色の全身タイツを手に取る。
昨日は見ただけで恥ずかしくなったこの特殊な下着も、今日は必要な道具として受け入れられている。
まず足から。
つま先を通し、ふくらはぎ、膝、太ももへと順番に引き上げていく。
「この感覚、もう慣れたなあ」
結衣がタイツのフィット感を確認しながら言う。
密着性の高い生地が肌にぴったりと沿い、まるで第二の皮膚のように体を包んでいく。
腰から胸へと続く部分では、体のラインがくっきりと浮かび上がる。
普段着慣れない感覚だが、もう違和感はない。
「私も。昨日は恥ずかしかったけど、今日は全然平気」
亜美も同じように、全身をベージュの生地に包まれていく。
首まで続くファスナーを上げると、顔以外の全身が完全に覆われる。
鏡に映る2人の姿は、もう普通の大学生ではない。
キャラクターになる準備の整った「演者」の姿だった。
続いて、それぞれのキャラクター衣装を着用する。
結衣はティア・リリアンの水色の衣装を手に取る。
エナメル素材の光沢が美しく、フリルの細部まで丁寧に作り込まれている。
袖を通し、背中のファスナーを上げる。
昨日より手際よく、迷いなく着用していく。
「この衣装何回見ても可愛い〜」
結衣が水色のフリルを撫でながら微笑む。
昨日は「似合うかな」という不安があったが、今日は「この衣装が好き」という愛着に変わっている。
亜美はティア・ニャミーの白い衣装を身に着ける。
上品で優雅なデザインの衣装が、亜美の気品のある雰囲気と完璧にマッチしている。
「このティア・ニャミーの衣装も、着るたびに気分が変わるわ。引き締まる!」
亜美が白い衣装の袖を整えながら言う。
衣装を着ることで、自分の中の何かが変化していくのを感じている。
鏡で自分の姿を確認すると、昨日よりもずっと自然に見える。
首から下は完璧なプリティアの姿。
顔だけがまだ人間のままという、不思議な状態だった。
そして、いよいよマスクの装着準備。
「結衣、髪をまとめて」
亜美が手伝う。
結衣の髪をゴムでしっかりと束ね、首の後ろでまとめる。
昨日の経験で、緩く結ぶとマスクの中で乱れることを学んでいる。
「ありがとう。亜美ちゃんも」
今度は結衣が亜美の茶髪をピンクのゴムで結ぶ。
長い髪を一つにまとめ、マスクの中に収まるよう注意深く調整する。
フードを被せ、ファスナーを首元まで閉める。
昨日は少し恥ずかしかったこの姿も、今日は変身のための重要なプロセスとして受け入れている。
更衣スペースからの登場
更衣スペースから出てきた2人を見て、美咲と山田さんが息を呑んだ。
「今日も完璧なプリティアや!」
美咲が興奮する。
昨日も感動したが、今日の2人はもっと自然で、まるで本当にキャラクターが現れたかのような完成度だった。
「似合っていますね。昨日よりもずっと自信があるように見えます」
山田さんも感心している。
「それでは、マスクを被りましょう」
マスク装着 - 完全なる変身の瞬間
まず結衣のティア・リリアンのマスク装着から開始。
結衣は椅子に座り、深呼吸を繰り返す。
昨日のようなパニックはもうない。
代わりに、これから始まる特別な体験への期待があった。
「それでは、被せますね」
山田さんが慎重にマスクを結衣の頭に被せ始める。
マスクが頭を包み込んでいく瞬間、結衣の顔はマスクで圧迫された。
視界は急激に狭くなり、正面の小さなスリットからしか外が見えなくなる。
マスクの内側のスポンジが顔にぴったりと密着し、強い圧迫感が襲う。
鼻が少し押し潰され、口呼吸に切り替わる。
しかし、昨日とは違い、パニックにはならない。
『昨日よりも落ち着いてる』
マスクの中で結衣が思う。
呼吸も昨日より安定し、経験があることの大きさを実感する。
「紐を結びますね」
山田さんがマスクの後頭部で固定紐を結ぶ。
「きつすぎませんか?」
ティア・リリアンが右手を挙げて「大丈夫」を示す。
その動作は昨日よりもずっと自然だった。
鏡に映った自分を見ると、そこには間違いなくティア・リリアンがいた。
『今日はもっと自然に動ける』
マスクの中で結衣が確信する。
続いて亜美のティア・ニャミーのマスク装着。
亜美も椅子に座り、落ち着いた様子でマスクを被せてもらう。
昨日の恐怖はもうない。
コンタクトレンズにも慣れ、マスクの視界確保用スリットから見える光景も昨日より鮮明だ。
『これなら大丈夫』
マスクの中で亜美が安堵する。
マスクの装着が完了すると、2人は自然と立ち上がった。
昨日のようなよろめきや戸惑いはない。
ティア・リリアンが軽やかにステップを踏んでみせる。
昨日よりも明らかに動きが滑らかだ。
ティア・ニャミーも優雅にお辞儀をする。
その動作には昨日以上の品格がある。
「素晴らしいですね。昨日とは別人のようです」
山田さん、美咲も感心している。
「2人とも、本当にプリティアそのものやで!」
ティア・リリアンとティア・ニャミーは、お互いを見つめ合って小さく頷く。
マスクの中で、結衣と亜美の心に確かな自信が芽生えていた。
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着ぐるみに着替えて準備が完了した結衣と亜美は、テント内で本番での動きややり取りを最終確認していた。
美咲が2人の様子を確認していると、ティア・ニャミー(亜美)が山田さんの方に向かって、マスクを指差しながら首を振る仕草をした。
「どうされました?」
山田さんが近づくと、ティア・ニャミーがマスクの後頭部を指差しながら、もう一度固定し直してほしいという仕草をする。
「ああ、マスクの固定が少し緩いかもしれませんね。もう一度調整しましょう」
山田さんがティア・ニャミーのマスクの後頭部で結ばれた紐を解き、今度はかなりキツめに結び直す。
マスクの中で、亜美は顔への圧迫感が明らかに増したことを感じた。
額、頬、顎に当たるスポンジの圧迫がより強くなり、マスクが頭にぴったりと密着している。
『きつくなったけど、この位の方が安定してるかも』
亜美がマスクの中で思う。
確実に固定されたことで、激しく動いてもマスクがずれる心配がなくなった。
山田さんが調整を終えると、ティア・ニャミーは右手で大きく○印を作って「完璧」という意思を示した。
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美咲の心配と観察
美咲がティア・ニャミーの首元を見ると、白いマスクと首の間にはほとんど隙間がなく、呼吸は口元の小さく開いたスリットのみに頼っている状態だった。
「亜美ちゃん、苦しくない?」
美咲が心配そうにティア・ニャミーに聞くと、マスクの中から少しくぐもった声が返ってくる。
「苦しいけど、もう慣れたで。でも、多分リリアンの方が顔小さいから結衣の方が辛いんちゃう?」
ティア・ニャミーの言葉に、ティア・リリアン(結衣)が振り返る。
「そうなんかな? でもうちもけっこう慣れたで! 暑さにはまだ慣れへんけど...」
ティア・リリアンが答えながら、両手で可愛い素振りをして「大丈夫」という演技をする。
その動作は自然で、まるで本物のティア・リリアンそのものだった。
美咲は2人の会話を聞いていて、改めて着ぐるみ演者の大変さを実感した。
可愛いキャラクターの姿の中で、友達が必死に頑張っているのだと思うと、胸が熱くなった。
準備が完了し、本番開始まであと5分という時点で、山田さんが2人の前に立った。
「お二人とも、昨日と比べて本当にキャラクターにも着ぐるみにも慣れていらっしゃいますね」
山田さんが感心しながら言う。
「でも、慣れてしまったからこそ、つい張り切って動いてしまうことがあるんです。そうすると思った以上に体力がなくなってしまって、後半がきつくなることがあります」
山田さんの言葉に、ティア・リリアンとティア・ニャミーが注意深く聞き入る。
「ですから、そこだけは絶対に注意してください。あくまでも普段通り、楽しみながらペース配分は気をつけるようにしてくださいね」
山田さんの注意喚起は的確だった。
マスクの中で結衣は、確かに昨日より自信があって、ついつい張り切って動きたくなっていることに気づいた。
『そうや、調子に乗って無理したらあかんな...』
一方、亜美は一生懸命に完璧な演技をすることばかり考えていたが、山田さんの言葉で冷静さを取り戻した。
『楽しみながら、無理をしすぎないことも大切やね』
「はい!気をつけます!」
ティア・リリアンが山田さんに聞こえるようにしっかりと答える。
「私も、ペース配分に注意します!」
ティア・ニャミーも同様に、はっきりとした声で答えた。
山田さんは2人の返事を聞いて安心したような表情を見せた。
「それでは、楽しんで頑張ってくださいね」
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1回目公演(10:00開始)
テントの入り口付近で、2体のプリティアが並んで待機していた。
外からは既に子供たちの興奮した声が聞こえてくる。
「ママ、本当にプリティア来るの?」
「楽しみだね」
ティア・リリアン(結衣)とティア・ニャミー(亜美)は、お互いを見つめ合った。
マスクの中から聞こえる2人の呼吸音は、まだ緊張のため普段より早くなっている。
「亜美ちゃん、大丈夫?」
結衣がマスクの中から小さく声をかける。
「やっぱり緊張する...でも頑張る!」
亜美も同様に答える。
美咲が最終確認をしながら近づいてくる。
「2人とも準備はいい?今日は昨日より暑くなるから、無理は禁物よ」
ティア・リリアンとティア・ニャミーが小さくうなずく。
その瞬間、美咲がマイクを手に取った。
そしていざ、ステージへ
「みなさん、おはようございます!」
美咲の明るい声が会場に響く。
昨日よりもずっと自然で、司会としての余裕が感じられる。
結衣と亜美は、ゆっくりとテントから歩き出す。
マスクの狭い視界から見える光景に、2人は息を呑んだ。
想像していたよりもずっと多くの親子連れが集まっていた。
小さな子供たちが最前列に座り、その後ろには保護者たちが立っている。
総勢50人ほどの観客が、一斉に2人の方を見つめている。
「わあ!プリティアだ!」
「かわいい!」
子供たちから上がる歓声に、結衣の心臓が跳ね上がった。
マスクの中で自分の激しい鼓動を感じながら、この瞬間の重みを実感する。
『私は今、この子たちにとって本物のティア・リリアンなんや』
大人たちからの拍手、子供たちのキラキラした瞳、そして自分たちに向けられる大勢の視線。
その全てが、結衣の覚悟を決めた瞬間だった。
亜美も同様の心境だった。
マスクの中から見える子供たちの純粋な喜びの表情に、責任の重さと同時に大きな使命感を感じている。
『この子たちを絶対に失望させてはいけない』
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灼熱との戦い
「ティア・リリアンちゃん、みんなにご挨拶して」
美咲の声に導かれ、結衣は軽やかに手を振る。
昨日よりもずっと自然な動きだ。
しかし、朝の時点で気温は既に30度を超えており、マスクの中の環境は想像以上に過酷だった。
自分の吐いた息がマスクの内側で循環し、顔全体に熱気がかかる。
額からじわりと汗が滲み始めているのを感じる。
『昨日より...暑い...』
結衣がマスクの中で思う。
「ティア・ニャミーちゃんも!」
亜美はゆっくりとした上品な動きでお辞儀をする。
コンタクトレンズのおかげで視界は安定しているが、ティア・ニャミーの腰まで届く長い白髪が背中全体を覆っているため、熱がこもりやすい。
『背中めっちゃ暑い...』
亜美がマスクの中で感じる。
髪の毛の重さも昨日より気になる。
音楽に合わせて基本ポーズを取るが、2人とも昨日よりもずっと滑らかに動ける。
「それでは、みんなでプリティア達と遊びましょう!」
美咲の司会で握手会が始まると、子供たちが次々と近づいてくる。
最初にやってきたのは、5歳くらいの女の子だった。
「ティア・リリアン、大好き!」
その子が結衣の手を握った瞬間、結衣の心が温かくなった。
マスクの中で感じる暑さや息苦しさなど、一瞬でどうでもよくなった。
『この子の笑顔のためなら、どんな大変さも乗り越えられる』
結衣がマスクの中で思う。
ティア・リリアンとして、精一杯の愛情を込めて女の子の手を握り返した。
続いて、ティア・ニャミーのもとにも女の子がやってきた。
「ニャミーちゃん、私昨日も来たんだよ!」
その女の子の純粋な言葉に、亜美の心も温かくなった。
マスクの中から見えるその子の輝く瞳は、昨日見た光景そのものだった。
ティア・ニャミーは上品にお辞儀をして、女の子の手を両手で包み込むように握手をした。
その優雅な動作に、女の子は感動したような表情を見せる。
「ニャミーちゃん優しいね」
亜美はマスクの中で微笑んだ。
マスクの視界は狭いが、子供たちの表情がはっきりと見える。
昨日の不安は完全に解消されていた。
しかし、時間が経つにつれて、マスクの中の環境は厳しくなっていく。
朝の10時とはいえ、既に気温は34度に達していた。
結衣のマスクの中では、額から流れる汗が目に入って、瞬きが止まらなくなってきた。
『うぅ、視界がぼやける...』
でも、目の前の子供たちの期待に満ちた表情を見ると、弱音を吐くわけにはいかない。
亜美も同様に、背中を流れる汗の量が尋常ではなくなってきていた。
ティア・ニャミーの長い白髪が背中全体を覆っているため、熱がこもりやすい。
『あかん、背中が燃えるように暑い...』
それでも、目の前の子供たちの笑顔を見ると、頑張ろうという気持ちが湧いてくる。
その横で美咲は2人の状態を常に監視していた。
司会をしながらも、ティア・リリアンとティア・ニャミーの動きに注意を払っている。
「ティア・リリアンちゃんは、今日もとっても元気だね!」
美咲の言葉は、子供たちへの説明でもあり、同時に結衣への気遣いでもあった。
「ティア・ニャミーちゃんも、とっても嬉しそう!」
亜美も美咲の配慮を感じ取り、安心して演技を続けることができた。
握手会が進むにつれて、子供たちの反応はさらに熱を帯びてきた。
「リリアン握手して!」
「ニャミーこっち〜!」
子供たちの無邪気なリクエストに、2人は身振り手振りで応える。
ティア・リリアンは可愛く手を差し出し、ティア・ニャミーは優雅な動きで子供達に駆け寄る。
声は出せないが、全身で表現する2人の演技に、子供たちは大喜びだった。
「すごーい!かわいい!」
保護者の方々も、2人の一生懸命な姿に感動しているようだった。
しかし、45分が経過する頃、結衣に異変が起きた。
急激な立ちくらみに襲われ、一瞬よろめいてしまったのだ。
『あ、やばい...』
マスクの中で結衣が思う。
自分の呼吸音が荒くなっているのが分かる。
美咲は即座にその変化を察知した。
本番も残り10分、最後の力を振り絞る時間だった。
結衣も亜美も、体力的には限界に近づいている。
しかし、子供たちの笑顔を見ると、最後まで頑張ろうという気持ちが湧いてくる。
「みんな、最後にティア・リリアンちゃんとティア・ニャミーちゃんに、大きな拍手をお願いします!」
美咲の司会で、会場全体から温かい拍手が響く。
ティア・リリアンとティア・ニャミーは、手を取り合って深々とお辞儀をした。
その瞬間、2人のマスクの中には、達成感と感動が込み上げていた。
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1回目公演終了
50分間の1回目公演が終了した。
テントに戻ると、ティア・リリアンとティア・ニャミーは椅子に座り込むように腰を下ろす。
2人から立ち上る熱気が目に見えるほどで、衣装からは湯気のようなものが立っている。
「お疲れさまでした!」
美咲が急いで2人に駆け寄る。
「本当に素晴らしかったです。子供たちも大喜びでした」
山田さんも感動している。
マスクが外された瞬間、結衣と亜美の本当の顔が現れた。
汗でびっしょりになり、マスクの跡も深く残っているが、その表情は満足感で輝いている。
「ふぅ、終わった...」
結衣が安堵の表情を見せる。
「本当に大変やったけど、楽しかった」
亜美も同じ気持ちだった。
「2人とも、本当にお疲れさま」
1回目の成功が、2人に確かな自信を与えていた。
この経験が、午後の2回目、3回目への大きな糧となるのだった。
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2回目本番前
1回目の公演が終了し、2回目の準備に向けて、結衣と亜美はトイレに向かった。
「ちょっとトイレ行ってくる」
「私も一緒に行ってくる」
2人が席を立ち、テントを出て行くと、美咲は一人テント内に残された。
山田さんも他のスタッフとの打ち合わせで席を外しており、テント内は静かになった。
美咲は椅子に座りながら、ふと更衣スペースの方に目を向けた。
『2人はあの狭い場所で着替えてるんやな』
何となく気になって、美咲は更衣スペースのカーテンに近づいてみた。
今まで何度も見ているカーテンだが、改めて見ると、その向こうに特別な世界があるような気がしてならない。
カーテンをそっと開けて中を覗くと、更衣スペースの中にはさっきまで結衣と亜美が着ていたティア・リリアンとティア・ニャミーの衣装とマスクが、きれいに整頓されて置いてあった。
『こんな風に置いてあるんや』
美咲は思わず中に足を踏み入れた。
水色のティア・リリアンの衣装と白いティア・ニャミーの衣装が、まるで2人のキャラクターがそこにいるかのように、ハンガーにかけられている。
衣装からは、まだ人のぬくもりが感じられるような気がした。
しかし、美咲がすぐに気づいたのは、更衣スペース内の環境の悪さだった。
『あれ? 全然風が入らない』
更衣スペースの中にはほとんど風が入らず、空調も悪い。
密閉された狭い空間で、空気がこもっている感じがする。
しかも、さっきまで2人がここで汗をかきながら着替えていたため、湿気がこもっている。
『この暑い中、こんなところで着替えるなんて...サーキュレーターとか置けへんかな』
美咲は心配になって、小型のサーキュレーターを設置できる場所がないか、更衣スペース内を見回した。
コンセントの位置、風の流れ、機材の配置。
何とかして2人の環境を改善できないかと、真剣に検討し始めた。
ふと目をマスクの方にやると、ティア・リリアンとティア・ニャミーのマスクが並んで置いてある。
マスクは顔を下向きに置いて、マスクの中を乾かすように配置されていた。
『あ、中の湿気を乾かしてるんや』
美咲はマスクの内側を覗き込んだ。
まだ少し湿っており、汗の匂いもほんのりと感じられる。
内側のスポンジが、さっきまで結衣と亜美の顔に密着していたことを思うと、胸が締め付けられるような気持ちになった。
その瞬間、美咲の心に複雑な感情が湧き上がった。
『また2人は、ここでプリティアに着替えてステージに出ていくんや』
心配と同時に、自分だけが取り残されているような少し寂しさも感じる。
3人で始めたこのアルバイトだが、実際に大変な思いをして子供たちを喜ばせているのは結衣と亜美の2人だ。
自分は司会として参加しているけれど、本当の意味でこの体験を共有できているのだろうか。
美咲は手を伸ばし、ティア・ニャミーのマスクに触れてみた。
思っていたより重く、そして固い。
これを被って、あの狭い視界で、息苦しい状況で、子供たちの前に立つ。
想像するだけで、2人の大変さが身に染みて分かる。
『私も...』
そんな気持ちが一瞬頭をよぎった時だった。
「美咲ちゃん?どうしたん?」
テントの入り口から聞こえてきた結衣の声に、美咲の心臓が跳ね上がった。
更衣スペース内で、ティア・ニャミーのマスクを見つめていた美咲は、まるで秘密を覗いているところを見つかったような気持ちになった。
「美咲? 中におるん?」
亜美の声も続いて聞こえてくる。
2人の足音がテント内に響き、美咲のいる更衣スペースに近づいてくる。
美咲は慌てて立ち上がろうとしたが、狭い更衣スペース内で少しよろめいてしまった。
「あ...な、なんでもない!」
美咲が慌てて答えようとした瞬間、カーテンが開いた。
結衣と亜美が更衣スペースの中にいる美咲を発見し、一瞬、3人とも固まってしまった。
美咲の顔は真っ赤になっている。
まるで禁止区域に入ってしまった子供のような表情だった。
結衣は最初、不思議そうな顔をしていたが、すぐに美咲の表情を読み取った。
「あー! 美咲ちゃんもしかして...」
結衣が小さく呟く。
亜美も美咲の様子を察して、優しい表情になった。
「美咲、もしかして...」
「ち、違う!違うから!」
美咲が慌てて更衣スペースから出ようとするが、結衣と亜美が入り口に立っているため、身動きが取れない。
「ちょっと、環境が悪いなーって思って。サーキュレーターとか置けないかなって」
美咲が必死に説明しようとするが、声が上ずっている。
その様子を見て、結衣も亜美も美咲の本当の気持ちを察していた。
結衣は美咲の表情をじっと見つめた後、いつもの率直さで核心を突いた。
「美咲ちゃんも着てみたくなったんやろ?」
その瞬間、美咲の顔がさらに赤くなった。
図星を指されてしまったような反応だった。
「ち、違うよ!そんなんじゃない!」
美咲が強く否定するが、その必死さがかえって正直な気持ちを物語っている。
亜美が美咲の肩に優しく手を置いた。
「別に恥ずかしいことじゃないで。私だって最初は美咲の司会の方がええなって思ったもん」
「でも、でも私は司会で十分やから!」
美咲がまだ否定しようとする。
結衣は美咲の気持ちを理解しつつも、いつもの関西弁で愛情のこもった冗談を言った。
「でも、代わってあげへんよ? っていうか、私司会できひんし」
結衣が含み笑いを浮かべながら言う。
その表情には、美咲への愛情と、同時に自分たちの役割への誇りも込められていた。
「プリティアになって子供たちの前に出るのって、想像してたより100倍大変やねんで」
結衣が続ける。
「汗だくになるし、息苦しいし、視界は悪いし。でも、その分だけ子供たちの笑顔が見えた時の感動も100倍!」
美咲は結衣の言葉に胸を突かれた。
確かに、自分は司会として楽な立場にいるのかもしれない。
「そ、そんなことないって! 着替えの邪魔してごめんな!」
美咲が慌てて否定し、更衣スペースから出ようとする。
亜美は美咲の複雑な気持ちを理解していた。
3人で始めたアルバイトなのに、実際に着ぐるみを着て大変な思いをしているのは自分たちだけ。
美咲が疎外感を感じるのも無理はない。
亜美は更衣スペース内に整頓されたティア・ニャミーの白い衣装を見つめながら、美咲の心境を察した。
「美咲、気持ち分かるで」
亜美が優しく言う。
その声には、これから再びあの息苦しいマスクを被り、汗だくになりながら子供たちの前に立つ覚悟が込められていた。
「3人で始めたのに、私らだけがなんか特別な体験をしてるみたいで、申し訳ない気持ちもあるし」
亜美が正直な気持ちを吐露する。
「でも、美咲がいてくれるから、私たちは安心して着ぐるみを着ていられるんよ」
結衣が亜美の言葉に深く頷く。
「そうそう!」
結衣が力強く同意する。
「美咲ちゃんの司会があるから、私たちは演技に集中できるねん」
結衣はティア・リリアンの水色の衣装に手を伸ばしながら続ける。
「マスクの中って、本当に視界が悪いねん。子供たちの反応も見えにくいし、会場の雰囲気も全然分からへんし。でも美咲ちゃんの声が聞こえてくると、『ああ、今子供たちが喜んでるんやな』って分かる」
亜美もティア・ニャミーのマスクを手に取りながら、美咲への感謝を込めて話す。
「私らがプリティアになった瞬間から、もう美咲が頼りやねん。司会として、私らをサポートして、子供たちとの橋渡しをしてくれる」
「そうそう!」
結衣が興奮気味に言う。
「私らな、可愛い素振りしてるけど、マスクの中では必死やからさ、会場全体のことなんて見れてへんねん。でも美咲ちゃんがいるから、私は安心してティア・リリアンになりきれるねんで」
美咲の目に涙がにじんできた。
2人の優しさが嬉しい反面、自分だけが楽をしているような気持ちになってしまう。
しかし、亜美は美咲のその表情も読み取っていた。
「美咲、司会が楽してるなんて思わんといてな」
亜美が真剣な表情で言う。
「私たちはマスクの中に隠れてるけど、美咲は素顔で大勢の人の前に立ってる。それってすごく勇気のいることやと思う」
結衣も同感だった。
「私、マスク被ってなかったら、あんなに堂々と子供たちの前で動けへし、顔が隠れてるから恥ずかしくないねん」
亜美は美咲の肩に手を置きながら、これから始まる変身への想いを語った。
「私らが今からするのは、ただの着替えじゃない。人間からプリティアになる、特別な変身やから」
亜美の声には、着ぐるみ演者としての誇りがにじんでいた。
結衣も深く頷く。
「プリティアになった私らを、一番輝かせてくれるのは美咲ちゃんの司会やからね!」
美咲の複雑な表情を見て、亜美は少し申し訳なさそうに微笑んだ。
「でもな、プリティアへの着替えは流石に美咲にも見せられへんで」
亜美が笑顔で言いながら、優しく更衣スペースのカーテンに手をかける。
その手は、これからティア・ニャミーの衣装を着るために少し震えている。
「一応、変身やもんね」
結衣も冗談めかして言うが、その声には着ぐるみ演者としての責任感が込められていた。
「見られながら変身するのちょっと恥ずかしいし」
結衣が茶目っ気たっぷりに付け加える。
そして亜美はカーテンを閉める前に、最後に美咲を見つめた。
「美咲、私らがプリティアになったら、またよろしく頼むね」
その言葉には、これから暑くて息苦しいマスクを被って、汗だくになりながらも子供たちのために頑張る決意が込められていた。
「今度は1回目より、もっと上手にティア・ニャミーを演じたい。でも、それができるのも美咲の司会があってこそ」
結衣も同じ気持ちだった。
「私も、今度はもっと自然にティア・リリアンになりたい。美咲ちゃんと一緒やから、安心して思いっきり演技できる」
亜美がゆっくりとカーテンを閉めようとする。
その瞬間、更衣スペース内は2人だけの神聖な空間になろうとしていた。
「それじゃあ、私らはまたプリティアになってくるから!」
亜美の声には、これから始まる変身への特別な想いが込められている。
カーテンが閉まる瞬間、美咲は2人の表情を見た。
不安と期待、そして子供たちへの愛情が混じった、着ぐるみ演者ならではの複雑な表情だった。
カーテンの向こうでは、すぐに2人の変身が始まるのだろう。
人間からプリティアへ、現実から夢の世界へ。
美咲は、その境界線の外側で、大切な役割を担っているのだと改めて実感した。
カーテンの向こうから聞こえてくる音に耳を澄ませた。
衣擦れの音、ファスナーの音、そして2人の小さな会話。
「今度はもうちょっと紐をきつく結んでもらおか」
「そうやね。1回目、ちょっと緩かった気がする」
「でも美咲ちゃん、なんか寂しそうやったな」
「うん。でも、私たちには美咲が必要やから」
「そうやね。美咲ちゃんの司会、ほんまに上手やもん」
カーテンの向こうから聞こえてくる会話に、美咲の心は温かくなった。
同時に、2人がこれから再び暑くて息苦しいマスクを被って、子供たちのために頑張ることを思うと、胸が痛くなった。
『私も一緒に大変な思いを共有したい』
そんな気持ちと、
『でも確実に司会の方が楽やし、私には着ぐるみは無理だし...』
という現実的な気持ちが混在していた。
「今日は特に暑いから、無理せんといてや!」
美咲がカーテンの向こうに向かって声をかける。
「大丈夫!2人で頑張る!」
結衣の明るい声が返ってくる。
「美咲も司会頑張ってや!」
亜美の声も続く。
美咲は司会用の台本を握りしめた。
確かに自分にも重要な役割がある。
『私は私のやり方で、2人を支えよう』
美咲は決意を新たにし、司会の準備に戻った。
カーテンの向こうからは、2人がティア・リリアンとティア・ニャミーに変身していく音が聞こえ続けていた。
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2回目公演(13:00開始)
午後1時、気温は37度に達していた。
直射日光が容赦なくステージを照らし、アスファルトからの照り返しも強烈だった。
テント内でさえ、35度近い温度になっている。
「次、大丈夫ですか?」
山田さんが心配そうに2人に確認する。
「体調に少しでも異変を感じたら、すぐに合図してください。お客様には私から説明しますから」
ティア・リリアンとティア・ニャミーは力強く頷く。
しかし、マスクの中で結衣と亜美は、すでに危機感を抱いていた。
マスクを被った瞬間から、朝とは全く違う熱気に顔全体が包まれている。
外気温37度の中で、マスク内の温度は40度近くまで上昇していた。
『やばい...ほとんど息ができてない』
結衣がマスクの中で思う。
自分の吐いた息が熱く、それがマスク内で循環して顔中に熱気がかかる。
亜美も同様だった。
『朝よりも明らかにきついわ...』
しかし、子供たちが期待して待っている。
むしろ、お昼ご飯を食べて元気いっぱいの子供たちが、ステージ前に集まっている。
「みなさん、こんにちは!」
美咲が元気よく挨拶するが、自分自身も気温の高さに汗をかいている。
「お昼ご飯は美味しかった?」
「はーい!」
子供たちが元気よく答える。
美咲は、2人の状況を常に監視しながら司会を進める。
朝よりも明らかに過酷な環境だということは、誰の目にも明らかだった。
「それでは、午後もプリティアちゃんたちと一緒に楽しみましょう!」
「プリティアー!」
子供たちの声に応えて、ティア・リリアンとティア・ニャミーがテントから登場する。
しかし、今度はマスクの中の状況が朝とは全く違った。
ステージに上がった瞬間、直射日光がティア・リリアンとティア・ニャミーを直撃した。
結衣は瞬時に体感温度の違いを感じた。
『うわ、暑い!暑すぎる!!』
マスクの中で息を吸うたびに、熱い空気が肺に入ってくる。
額から汗が滝のように流れ、目に入って瞬きが止まらない。
『視界がぼやける』
汗が目に入って、ただでさえ狭いマスクの視界がさらに悪くなる。
亜美はそれ以上に深刻だった。
ティア・ニャミーの腰まで届く長い白髪が、まるで厚いカーペットのように背中を覆っている。
その下で熱がこもり、背中全体がサウナ状態になっていた。
『背中が燃えてる...』
大量の汗が背中から腰、そして胸元まで流れ続ける。
エナメル素材の衣装の内側で汗が滲む感覚は、想像を絶する不快感だった。
『気持ち悪い...でも我慢しなあかん』
それでも、2人は子供たちの前でキャラクターとして振る舞った。
音楽に合わせて基本ポーズを取るが、朝とは明らかに動きが重い。
美咲は即座にその変化に気づいた。
『2人とも、もう限界に近い』
司会として、2人の負担を少しでも軽くする必要がある。
「ティア・リリアンちゃん、子供達が喜んでるよ、順番に握手してあげてね」
美咲が優しく声をかける。
これは子供たちへの説明でもあり、同時に結衣への気遣いでもあった。
「みんなも、プリティアちゃんたちを元気にしてあげてね」
子供たちがそれぞれ声援を送る。
その声に励まされて、結衣は何とかティア・リリアンらしい動きを見せる。
でも、朝のような軽やかな動きは難しい。
息を整えるのが精一杯で、髪の重さが首に堪える。
時間が経つにつれて、2人の動きはさらに散漫になってきた。
ティア・リリアンの手の振り方が、朝に比べて明らかにぎこちない。
普段なら軽やかにできるステップも、今は一歩一歩が重く感じられる。
『あかん、頭がくらくらする』
軽い熱中症の兆候が現れ始めていた。
ティア・ニャミーも同様に、上品なお辞儀をするのがやっとだった。
『立ってるだけで精一杯やわ』
でも、子供たちの笑顔を見ると、何とか頑張れる。
「ティア・ニャミーちゃんも、無理しないでゆっくりでいいからね」
美咲が亜美にも配慮を示す。
しかし、観客席の大人たちは、2人の異変に気づき始めていた。
「あの子たち、大丈夫?」
「すごく息が荒いみたい...」
「こんなに暑いのに、よく頑張ってるわね」
保護者たちがささやき合う声が聞こえてくる。
確かに、ティア・リリアンもティア・ニャミーも、誰が見ても苦しそうに息をしている状態だった。
マスクの呼吸用スリットから、荒い息遣いが聞こえないか心配になる。
肩が激しく上下し、胸元も大きく膨らんだり縮んだりを繰り返している。
それでも必死に、子供たちのためにキャラクターとして振る舞おうとする2人の姿に、大人たちの心は動かされていた。
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過酷な握手会と限界への挑戦
2回目の握手会は、まさに耐久戦だった。
最初に来た女の子が「リリアンちゃん、大丈夫?」と心配そうに聞く。
子供なりに、ティア・リリアンの様子がいつもと違うことを感じ取っているのだ。
結衣はマスクの中で歯を食いしばった。
『この子に心配かけてる』
でも、ティア・リリアンとして笑顔で応えなければならない。
胸に手を当てて「大丈夫よ」のポーズを取るが、その手は汗で滑っている。
隣で亜美も限界と戦っていた。
背中を流れる汗の量が尋常ではない。
下着もベースレイヤーも完全に汗でびしょ濡れになり、気持ち悪さが頂点に達していた。
『吐きそう...』
でも、目の前の男の子が「ニャミーちゃん、きれい」と言ってくれる。
その純粋な言葉に、亜美は何とか持ちこたえた。
10分が経った頃、結衣に深刻な異変が起きた。
握手をしようとしゃがんだ瞬間、立ちくらみがして、バランスを崩しそうになった。
『やば...倒れる』
一瞬、目の前が真っ白になりマスクの中で意識が朦朧とする。
美咲は瞬時にそれを察知した。
『あ!結衣ちゃん限界かも!』
美咲はすぐにリリアンの元に駆け寄り耳元で声をかける。
「大丈夫!?」
結衣は必死に頷いているが、呼吸に合わせて肩が激しく上下している。
美咲はリリアンをテントに引き上げようかと思ったが、握手会ももう少しで終わる。
ここは結衣の頑張りに賭けようと思った。
「もうちょっとで終わりやから、頑張って!」
リリアンは美咲に向かって右手で再度OKサインを作りながら、大きく頷いてみせる。
一方、亜美は苦しい状況でも最後まで頑張り続けた。
体調は限界に近いが、ティア・ニャミーとしての責任感が支えている。
『結衣の分まで頑張らなあかん』
美咲も亜美をフォローする。
しかし観客席では、保護者たちの間に心配の声が広がっていた。
「あの子たち、本当に大丈夫なん?」
「この暑さで...」
「子供たちのために、あそこまで...中の子尊敬するわ」
でも、同時に感動の声も聞こえてくる。
「すごい根性ね」
「プロ意識がすごい」
「子供たちのことを本当に考えてくれてる」
子供たちは、2人の大変さを完全には理解していないかもしれない。
でも、一生懸命自分たちのために頑張ってくれていることは感じ取っている。
「リリアンちゃん可愛い!」
「ニャミーちゃん!」
子供たちからの純粋な応援の声が、2人の最後の力を支えていた。
結衣は意識がもうろうとしながらも、最後の子供たちとの握手を完遂しようと必死だった。
『この子たちの笑顔のために』
亜美も同じ気持ちだった。
体のあちこちが限界を迎えているが、ティア・ニャミーとしての責任を最後まで果たしたい。
『絶対に最後まで』
美咲は2人の状況を見ながら、タイミングを計っていた。
「みなさん、ティア・リリアンちゃんとティア・ニャミーちゃんはそろそろ帰りますね!」
美咲の言葉に、会場全体が静まりかえった。
「最後に、2人に大きな大きな拍手をお願いします!」
その瞬間、会場全体からな拍手が響いた。
子供たちはもちろん、保護者の方々からも心からの拍手が送られる。
「がんばったね!」
「ありがとう!」
「すごかったよ!」
様々な声援が飛び交う中、ティア・リリアンとティア・ニャミーは手を取り合って深々とお辞儀をした。
その瞬間、2人のマスクの中には、達成感と感動が込み上げていた。
限界を超えて頑張った自分たちへの誇りと、温かい拍手を送ってくれる観客への感謝の気持ちでいっぱいだった。
拍手はいつまでも続いた。
多くの大人たちは笑顔で拍手を送っている。
こんなに過酷な環境の中で、子供たちのために最後まで頑張り抜いた2人の姿に、深い感動を覚えていたのだ。
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2回目終了後の深刻な状況
50分間の2回目公演が、ついに終了した。
結衣と亜美は既に限界に達していたものの、最後は何とか復帰して締めのポーズを元気よく行った。
テントに戻ると、ティア・リリアンとティア・ニャミーは椅子に座り込むというより、崩れ落ちるように椅子にもたれかかった。
2人から立ち上る熱気が目に見えるほどで、衣装からは湯気のようなものが立っている。
「お疲れさまでした!」
美咲が急いで2人に駆け寄る。
山田さんも血相を変えて2人の様子を確認する。
「大丈夫ですか?すぐにマスクを外しましょう」
マスクの中から聞こえてくる息遣いが、朝とは全く違っていた。
「はあ!...はあ!...はあ...」
「はあ...はあ...はあ...」
それは呼吸というより、息も絶え絶えという表現がふさわしい音だった。
マスクが外された瞬間、結衣の顔が現れた。
美咲は息を呑んだ。
顔全体が真っ赤に紅潮し、額、頬、顎にマスクの跡が深く刻まれている。
髪は汗でびしょ濡れになって頭に張り付き、まるで汗の雨に打たれたような状態だった。
特に亜美の状態は結衣以上に深刻だった。
「本当に大丈夫ですか? 3回目出れますか?」
山田さんが真剣に尋ねる。
しかし、結衣と亜美は顔を見合わせる。
確かに体力的には限界に近い。
でも、最後の公演を楽しみにしている子供たちもいる。
「大丈夫です。少し休憩すれば回復します」
結衣が決意を示す。
「私も。最後までやりたいです」
亜美も同じ気持ちだった。
2人の決意を見て、美咲も山田さんも、彼女たちの強い意志を尊重することにした。
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3回目公演(15:00開始)
午後3時、2日目最後の公演が始まろうとしていた。
気温は36度。
まだまだ厳しい暑さだが、テント内で待機する2人の意気込みは最高潮に達していた。
「最後やから、今日一番のパフォーマンスをしたいです」
まだ私服姿の結衣が、汗拭きタオルを握りしめながら前向きに言う。
その表情には、2回の公演を乗り越えた自信が宿っていた。
「私も。子供たちに最高の思い出を作ってあげたい」
亜美も同じ気持ちだった。
美咲は2人の変化に感動していた。
朝一番の不安げな表情とは打って変わって、今の2人には確固たる使命感がある。
「よし、今度こそ完璧にいこう!」
美咲も力強く声をかけた。
更衣スペースのカーテンが閉まると、2人の3回目の変身が始まった。
もう手順は完璧に覚えている。
結衣は迷いなく私服を脱ぎ、ベージュ色の全身タイツに袖を通す。
2回目よりもさらにスムーズに、フィット感を確認しながら着用していく。
「もうこの感触にはすっかり慣れたね」
結衣がつぶやく。全身を包む密着感は、最初の異様さから今では安心感に変わっていた。
亜美も同様に、落ち着いて着替えを進める。
「眼鏡のない世界も、だいぶ慣れたわ」
「亜美ちゃん、コンタクトの方が可愛いで? 眼鏡の亜美ちゃんも好きやけど」
「こんな時にやめてよ」
2人がベージュの全身タイツを身にまとった姿は、もうすぐプリティアになる準備が整った演者そのものだった。
首から下は完全にキャラクターの下地、でも顔はまだ人間のまま。
この中間的な状態が、なんとも言えない魅力を醸し出していた。
続いて、ティア・リリアンの水色の衣装とティア・ニャミーの白い衣装が、それぞれの体に纏われていく。
エナメル調の美しい衣装が全身タイツの上に重なると、2人の変身はもう8割方完了だった。
そして最後の工程。
山田さんが慎重にティア・リリアンのマスクを結衣の頭上に持ってくる。
「では、装着しますね」
結衣は深呼吸をした。もう3回目。
慣れたとはいえ、マスクを被る瞬間の緊張感は決して消えることはない。
マスクがゆっくりと結衣の頭に被せられていく。
瞬間、外界との接触が絶たれた。
視界が一気に狭くなり、聞こえる音も変わる。
そして何より、密閉された空間に自分だけが取り残されたような、あの独特の感覚。
『また、この世界に戻ってきた』
結衣は心の中でつぶやいた。
マスクの内側に貼られたスポンジが、額、頬、顎に密着する。
小顔設計のマスクは、結衣の顔に完璧にフィットしていた。
呼吸をすると、自分の温かい吐息がマスクの内側で跳ね返り、顔全体にかかってくる。
この感覚は、決して慣れることはない。
でも、同時にティア・リリアンになるための必要な儀式でもあった。
「位置の調整をお願いしますね」
結衣が両手でマスクを軽く動かし、目の位置とマスクの視界用スリットを合わせていく。
「はい、大丈夫です」
結衣がマスクの中から小さく答える。
その声は既にこもって聞こえる。
続いて、亜美にもティア・ニャミーのマスクが装着される。
亜美もまた、あの密閉感に包まれた瞬間、現実世界から一歩離れた感覚を味わった。
『私は今から、ティア・ニャミーになる』
マスクの中で、亜美は静かに自分に言い聞かせた。
呼吸は口のスリットから行うしかない。鼻呼吸はほぼ不可能だ。
でも、不思議なことに、マスクを被った瞬間から体の動きが変わり始める。
マスクが完全に装着された瞬間、2人に起こった変化は劇的だった。
結衣の体が、自然とティア・リリアンらしい軽やかな動きを見せ始める。
首を少し傾げ、手をひらひらと振る仕草。
これは意識的にやっているのではなく、体が勝手にキャラクターの動きを求めているのだ。
亜美も同様だった。
背筋が自然と伸び、上品で優雅な立ち居振る舞いに変わっていく。
ティア・ニャミーのキャラクターが、亜美の体を通して現れ始めていた。
「準備できましたね」
山田さんが2人に声をかけると、ティア・リリアンは軽やかに手を振り、ティア・ニャミーは優雅にお辞儀をする。
美咲は2人の変身を見ていて、毎回同じ感動を覚えた。
『たった数秒で、完全に別人になる』
マスクを被る前の結衣と亜美はもういない。
そこにいるのは、本物のティア・リリアンとティア・ニャミーだった。
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最後の公演への出陣
テント待機する2人の様子は、朝一番とは全く違っていた。
迷いがなく、堂々としている。
ティア・リリアンは水色の髪を風に揺らしながら、軽やかに体を揺らしている。
しかし、美咲には確実に分かっていた。
あの少し内股気味の立ち方、時々見せる首をかしげる癖、そして左肩が微妙に上がる姿勢の癖。
『間違いなく結衣ちゃんや』
可愛いティア・リリアンの衣装に包まれていても、中にいるのは確実に結衣だった。特に、歩く時に少しつま先から着地する歩き方は、結衣特有のもので、どんなにキャラクターの衣装を着ていても隠せない。
ティア・ニャミーも同様だった。
白い衣装を翻して、品格のある歩き方でステージに向かうその姿は確実にティア・ニャミーなのだが、美咲にはもう一つの真実が見えていた。
背筋をピンと伸ばす立ち姿、歩く時に両手を軽く組む癖、そして時々眼鏡の位置を確認するように顔に手を持っていく仕草。
コンタクトレンズを装着していても、長年眼鏡をかけていた人特有の癖は消えない。
『亜美ちゃんも、ちゃんと分かる』
美咲は不思議な感動を覚えていた。
見た目は完全にプリティアのキャラクターなのに、その動き一つ一つに友達の個性が表れている。
3人で創り上げる最高のパフォーマンス
「今日最後のプリティアショーです!」
美咲の司会にも、特別な感情が込められていた。
この2日間で、3人の絆は確実に深まっている。
「最後だから、ティア・リリアンちゃんとティア・ニャミーちゃんが、みんなと一緒に特別に楽しい時間を過ごしてくれます!」
子供たちが期待に胸を膨らませる。
ティア・リリアンとティア・ニャミーが登場すると、今度は美咲も一緒にステージに上がった。
自然で温かいパフォーマンス
美咲がティア・リリアンの手を取り、ティア・リリアンがティア・ニャミーの手を取って、3人で手をつないだ。
マスクの中で、結衣は美咲の手の温かさを感じていた。
外界との唯一の直接的な接触点だった。
『美咲ちゃんの手、柔らかいな』
美咲は手をつないだ瞬間、確信した。ティア・リリアンの手の大きさ、指の長さ、そして手をつなぐ時の力加減。
これは間違いなく結衣の手だった。
たまに手をつないで歩いていたから、親友の手の感触は絶対に間違えない。
亜美も同様に、結衣の手の感触を通して、友情を実感していた。
ティア・ニャミーの衣装に包まれた亜美の体型も、美咲にははっきりと識別できた。
細身だが女性らしいライン、肩幅の控えめさ、そして何より、緊張した時に無意識に肩が上がる癖。
ティア・ニャミーの白い衣装を通してでも、亜美の体の特徴は確実に見て取れた。
ステージ上のはゆっくりと左右に体を揺らしたり、手を上下に振ったりする、簡単で楽しい動きをしている。
その瞬間、ティア・リリアンとティア・ニャミーが、まるでテレビの中から飛び出してきたかのような完璧な息の合った動きを見せ始めたのだ。
ティア・リリアンは軽やかにくるりと回転し、両手をひらひらと振りながら子供たちに向かって小さくジャンプ。
その愛らしい仕草に、子供たちから歓声が上がる。
ティア・ニャミーは上品に手を胸元に当てながら優雅にお辞儀をし、続いて両手を広げて子供たちを包み込むような温かいポーズ。
白い衣装が風に舞って、まるで天使のような美しさだった。
2人は完璧にシンクロしていた。
ティア・リリアンが右に動けば、ティア・ニャミーは左に。
一方が手を上げれば、もう一方は下に。
まるで長年一緒にパフォーマンスをしてきたプロのコンビのようだった。
「わあ!本物のプリティアだ!」
「すごい!テレビと同じ!」
子供たちの純粋な驚きと喜びの声が会場に響く。
ティア・リリアンとティア・ニャミーは、お互いを見つめ合うと、同時に可愛くウィンクし合うような仕草をした。
その息の合った仕草に、子供たちだけでなく大人たちからも感嘆の声が漏れる。
マスクの中で、結衣は興奮と苦痛が入り混じった特別な状態にあった。
『暑い...息が苦しい...でも、めっちゃ楽しい!』
自分の吐く息でマスクの中は蒸し風呂状態だったが、子供たちの歓声を聞くたびに、すべての苦痛が吹き飛んだ。
亜美との息の合ったパフォーマンスも、不思議なほど自然にできている。
視界は制限されているのに、亜美がどこにいて、どんな動きをしているのかが手に取るようにわかる。
『私たち、本当にプリティアになってるみたい!』
汗が額を流れ、呼吸は苦しいが、この瞬間の幸福感は何物にも代えがたい。
子供たちの純粋な笑顔を見るたびに、結衣の心は愛情で満たされていく。
亜美もまた、同様の感動を味わっていた。
『こんなに暑くて苦しいのに、なんでこんなに楽しいんだろう』
ティア・ニャミーのマスクの中は、結衣と同じように過酷な環境だった。
口のスリットから必死に呼吸をしているが、それでも酸素は足りない。
でも、結衣とのシンクロ率の高さに自分でも驚いていた。
まるでテレパシーでも通じているかのように、お互いの動きが完璧に噛み合っている。
『私ら、本当にティア・ニャミーとティア・リリアンになってるみたい』
マスクの制限された視界の中で見える子供たちの輝く瞳。
その純粋な喜びを見ていると、マスクの中の苦痛なんてどうでもよくなる。
時々、美咲がティア・リリアンにウィンクをしたり、ティア・ニャミーに質問するような仕草をしたりして、まるで本当の友達同士が楽しく遊んでいるような自然な雰囲気を演出した。
そのたびに、2人は完璧にキャラクターとして応え、会場の空気はますます温かくなっていく。
この瞬間、会場にいる誰もが確信していた。
目の前にいるのは、間違いなく本物のティア・リリアンとティア・ニャミーだと。
可愛い仕草、息の合った動き、子供たちへの愛情溢れる対応。
すべてが完璧で、まるでアニメの世界から本当にキャラクターが現れたかのようだった。
マスクの中で汗だくになりながらも、2人は最高のパフォーマンスを続けていた。
暑さも息苦しさも、子供たちの笑顔の前では些細なことでしかない。
『これが、プリティアになりきるってことなんや』
2人は同時に、そんなことを思っていた。
パフォーマンス中、結衣のマスクの中は過酷な状況だった。
自分の吐いた息が顔全体にかかり続け、額や頬には大粒の汗が滲んでいる。
口のスリットから必死に外気を取り込もうとするが、動きながらでは十分な酸素を確保するのは困難だった。
美咲は、ティア・リリアンの肩の上下から、結衣の呼吸の状態を読み取っていた。
いつもより少し早い呼吸、時々見せる深呼吸の仕草、そしてマスクの口元から漏れる、わずかな息遣いの音。
『結衣ちゃん、やっぱり苦しそう』
でも、不思議なことに、その苦しさが愛おしくもあった。
『この苦しさも、ティア・リリアンでいるための代償』
子供たちの笑顔を見るたびに、すべてが報われる気がした。
亜美も同様だった。ティア・ニャミーのマスクは視界が特に制限されており、時々美咲や結衣がどこにいるのかわからなくなることもあった。
美咲は、ティア・ニャミーの首の動きで、亜美が周囲を確認しようとしている様子を察していた。いつもの亜美らしい慎重さで、何度も小さく首を動かして安全を確認している。その動きは、眼鏡をかけていた時の視野確認の癖そのものだった。
でも、手をつないでいる感触で、仲間がそばにいることがわかる。それだけで安心できた。
『見えなくても、感じられる』
マスクの中で、亜美は新しい感覚を身につけていた。
美咲には、2人の疲労度の違いも見て取れた。
ティア・リリアンは比較的元気に動いているが、胸の辺りが時々大きく膨らんで深呼吸をしている。これは結衣が集中した時によく見せる仕草だった。
一方、ティア・ニャミーはより規則的で静かな呼吸を保っているが、時々立ち止まって姿勢を整える。これは亜美が疲れた時の対処法そのものだった。
『2人とも、それぞれのやり方で頑張ってる』
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パフォーマンスの後は、恒例の握手会。
3回目ともなると、2人の対応は完璧だったが、美咲には2人の個性がはっきりと見て取れた。
「ティア・リリアンちゃん、かわいい!」
女の子が目を輝かせると、ティア・リリアンは両手で女の子の小さな手を包み込むようにして握手をする。
この握手の仕方、手を包み込むような優しい方法は、完全に結衣のやり方だった。結衣はいつも、小さい子と接する時にこんな風に手を包んであげる。
マスクの中で結衣は、その子の純粋な喜びを全身で感じ取っていた。そして、いつもの結衣らしく、握手をした後に小さくお辞儀をする。
これもまた、結衣特有の丁寧さの表れだった。
「今日ずっと見てたよ!」
朝から参加している女の子が言うと、ティア・リリアンは特別に両手で握手をする。美咲は見ていて分かった。
あの反応の速さ、子供の言葉に対する敏感な反応は、間違いなく結衣だった。
一方、ティア・ニャミーの対応も完全に亜美らしかった。
「ティア・ニャミー、きれいだった!」
男の子が言うと、ティア・ニャミーは優雅にお辞儀をして感謝を示す。
この深々としたお辞儀、背筋をピンと伸ばした姿勢は、いつもの亜美そのものだった。亜美は礼儀正しく、いつもこんな風に丁寧にお辞儀をする。
視界は制限されているが、子供たちの声の方向はわかる。
声に向かって、精一杯の感謝を表現した。この慎重で丁寧な反応も、完全に亜美の性格を表していた。
美咲は感動した。
『2人とも、キャラクターを演じてても、本当の性格が出てる』
ティア・リリアンとティア・ニャミーという可愛いキャラクターの中に、確実に結衣と亜美がいることが、なんとも言えない愛おしさを感じさせた。
山田さんも、2人の成長ぶりに驚いていたが、同時に彼らの個性も感じ取っていた。
「あの水色のティア・リリアンの子、本当に子供好きなんですね。反応がとても自然で」
「白いティア・ニャミーの方も、とても丁寧で上品な対応をしますね。育ちの良さが感じられます」
母親達の観察は的確だった。
キャラクターを演じていても、演者の本来の性格は隠しきれるものではない。
最後の握手が終わると、2人は再び手を繋いでお辞儀をする。
子供たちからの拍手がいつまでも続いた。
その音が、マスクの中にも温かく響いてくる。
『やり遂げた』
結衣も亜美も、同じことを思っていた。
2日目最後の公演は、完璧な成功で幕を閉じた。
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2日目終了
テントに戻ると、ティア・リリアンとティア・ニャミーは椅子に座って大きく息をついた。
3回の公演を終えて、疲労は確実に頂点に達している。
マスクの中は汗でびっしょりで、呼吸も荒い。
でも、それ以上に大きなな達成感があった。
「本当にお疲れ様でした」
山田さんが急いで2人のもとに駆け寄る。
「マスクを外しますね。今日は本当に素晴らしいパフォーマンスでしたよ!」
山田さんがティア・リリアンのマスク後頭部で結ばれた紐に手をかける。
汗でひどく湿った紐は膨らんでおり、結び目がきつくなっていた。
「ちょっと時間がかかりそうです」
山田さんが苦労しながら紐を解いていく。
その間も、結衣はマスクの中で自分の荒い呼吸音を聞いていた。
美咲はじっと見つめていた。
このティア・リリアンの中に、結衣が入っている。
頭では分かっているのに、まるで魔法が解ける瞬間を見ているような気分だった。
『もうすぐ外の世界に戻れる』
ようやく紐が解けて、マスクがゆっくりと結衣の頭から外される。
瞬間、外気が結衣の顔を包んだ。
「はあ...はあ...」
現れたのは、間違いなく結衣だった。
でも、美咲が知っている普段の結衣とは全く違う顔をしていた。
真っ赤に紅潮し、額、頬、顎にマスクの跡がくっきりと残っている。顔中に汗の粒が浮いており、髪の毛は汗でぺったりと頭に貼り付いている。
フードは首元から胸元に垂れ下がり、首から上だけが人間に戻った結衣の姿は、まさに「キャラクターと演者の境界線」を物語っていた。
美咲は思わず息を呑んだ。
『いつもの結衣ちゃんや...』
可愛いティア・リリアンの中に、こんなに汗だくになって頑張っていた結衣がいたのかと思うと、胸が熱くなった。
「ふうう...」
結衣が外気に触れた瞬間、安堵の表情を見せる。
その表情、声、すべてが間違いなくいつもの結衣だった。
でも、マスクの跡が残る顔は、まるで勲章のようにも見えた。
その表情には確かな充実感が宿っている。
目は疲れているが、その奥に確かな達成感が輝いている。
これは、ティア・リリアンを演じ切った結衣だけが見せることのできる特別な表情だった。
「やり切った...」
結衣の声には、これまでにない満足感が込められていた。
髪は汗で濡れているが、昨日のような消耗感はない。
むしろ、爽やかな疲労感といった様子だ。
美咲は確信した。
『この子が、さっきまでのティア・リリアンやったんや』
続いてティア・ニャミーのマスクも外される。
美咲は固唾を呑んで見守った。
本当に亜美が出てくるのか、まるで手品を見ているような気分だった。
マスクがゆっくりと持ち上げられ、中から現れたのは——
間違いなく亜美だった。
亜美の顔も同様に紅潮し、汗だくになっていた。
でも、その表情には亜美らしい冷静さと満足感が同時に宿っていた。
コンタクトレンズがずれていないか心配になって、目を何度かパチパチとする。
この仕草も、完全に亜美らしかった。
長年眼鏡をかけていた人特有の、目の周りを気にする癖。
フードが胸元に垂れ下がった亜美の姿も、首から下は完全にティア・ニャミーでありながら、顔だけが汗だくの大学生という、不思議で何とも言えない光景だった。
美咲は深く感動していた。
『本当に亜美ちゃんやったんやな』
上品で優雅なティア・ニャミーの中に、こんなに必死に頑張っていた亜美がいたのか。
その事実が、なんとも愛おしく感じられた。
「最後のパフォーマンス、最高だったね」
亜美が穏やかに微笑む。
その笑顔も、声のトーンも、話し方も、すべてがいつもの亜美そのものだった。
でも、その笑顔には、この3回の公演すべてをやり遂げた達成感が確実に表れている。
眼鏡をかけ直す手は少し震えているが、それは疲労よりも感動によるもののようだった。
コンタクトレンズから眼鏡に戻った瞬間、亜美は再び普通の大学生に戻ったような感覚を覚えた。
でも、心の中には確実にティア・ニャミーの経験が刻まれている。
美咲は2人を交互に見つめた。
さっきまで完璧なプリティアだった2人が、今は汗だくの大学生に戻っている。
でも、その変化の過程を見ていたからこそ、2人の頑張りがより一層愛おしく感じられた。
『この子たちが、あの可愛いプリティアやったんや』
美咲は2人の状態を見て、改めて着ぐるみ演者の過酷さと同時に、その達成感の大きさを実感していた。
「2人とも、本当にお疲れさまでした!」
美咲が感動で涙ぐんでいる。
「最後のパフォーマンス、感動したよ。子供たちも保護者の方も、みんな感動してた」
美咲の声は震えている。
友達の成長を間近で見ていて、自分のことのように嬉しい。
山田さんも興奮している。
「今日のパフォーマンスは、昨日を遥かに超えていました。本当にプロの演者のようでした」
「ありがとうございます」
結衣と亜美が疲れた中にも嬉しそうに答える。
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衣装を脱ぐ過程での実感
2人は更衣スペースで衣装を脱ぎ始める。
美咲は、カーテンの隙間から聞こえてくる音で、2人の違いを感じ取っていた。
まず、エナメルの衣装から解放される瞬間。
体にかかっていた重さがふっと軽くなる。
「重かったんやな、この衣装」
結衣の声が聞こえてくる。
その関西弁のイントネーション、息の使い方、すべてが確実に結衣だった。
マスクを被っていた時は声が聞こえなかったが、今は間違いなく結衣の声だ。
水色の美しい衣装を脱いでいく音、全身タイツのファスナーを下ろす音。そして時々聞こえる、結衣の安堵の吐息。
「やっと普通の体になった感じ」
亜美の声も続く。
こちらも間違いなく亜美の声だった。
少し疲れているが、満足感に満ちている。
全身タイツも汗で変色しているが、昨日ほどひどくはない。
体力的に余裕があったからか、効率的に動けていたようだ。
美咲は、カーテンの向こうで2人が着替えている様子を想像していた。
『あの可愛いプリティアの中身は、やっぱり結衣ちゃんと亜美ちゃんやったんや』
ティア・リリアンの水色の衣装の中には結衣の体があり、ティア・ニャミーの白い衣装の中には亜美の体があった。
当たり前のことなのに、改めて実感すると不思議な感動がある。
そして、私服に着替える瞬間。
更衣スペースから出てきた2人の姿を見て、美咲は改めて驚いた。
朝着ていたTシャツとスウェットパンツに身を包んだ結衣と亜美。
普通の女子大生に戻った2人だった。
でも、美咲には分かっていた。
この2人が、ついさっきまで子供たちを夢中にさせていたティア・リリアンとティア・ニャミーだったのだということが。
結衣の髪の毛はまだ汗で湿っており、タオルで拭いてもなかなか乾かない状態だった。
普段の結衣よりも顔が少し赤く、疲れた様子だが、その目には確実に達成感が宿っている。
「不思議やね」
結衣がつぶやく。
いつもの結衣の話し方、いつもの関西弁。
でも、その声にはティア・リリアンを演じ切った自信が感じられた。
「何が?」
「こうして普通の服着てると、さっきまでティア・リリアンやったのが夢みたい」
亜美も同様だった。
いつもはきちんと整えられた髪も汗で一部が額に張り付いている。眼鏡をかけ直した瞬間、完全にいつもの亜美に戻ったが、その表情には今日の経験が刻まれていた。
「うん、分かる」
亜美も同感だった。
この冷静で知的な話し方も、完全にいつもの亜美だった。
美咲は2人を見つめながら思った。
『この普通の女子大生2人が、あんなに可愛いプリティアになってたなんて』
結衣は普段通りの少し恥ずかしがり屋な表情を見せているが、今日はどこか違う。
自信に満ちている。
亜美も、いつもの眼鏡をかけた知的な女子大生だが、その表情には特別な輝きがある。
2人とも、確実に成長していた。
そして、その成長の過程を見ていた美咲は、友達の新しい一面を発見できたことに深い感動を覚えていた。
更衣スペースの鏡に映る2人の顔。
髪はまだ少し乱れているし、マスクの跡も残っている。
でも、その表情には確かな自信がある。
昨日の朝の不安そうな表情とは全く違う。
「私ら、なんか変わったかも」
結衣がしみじみと言う。
「そうやね。昨日の自分らとは別人みたいやわ」
亜美も感慨深げに答える。
2人の顔に残るマスクの跡は、まるで勲章のようだった。
それは、過酷な条件の中で子供たちのために頑張った証拠。
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更衣スペースから出てきた2人を見て、美咲は改めて感動した。
疲労感はあるが、その表情は明るく生き生きとしている。
何より、確かな自信に満ちている。
結衣の髪の毛はまだ汗で湿っており、タオルで拭いてもなかなか乾かない状態だった。
Tシャツに着替えているが、まだ首元に汗の跡が残っている。
顔にはまだマスクの跡がうっすらと残り、少し疲れた表情を見せていたが、それ以上に満足感に満ちていた。
亜美も同様で、いつもはきちんと整えられた髪も汗で一部が額に張り付いている。
でも、その疲れた表情の中にも、やり遂げたという確固たる達成感が宿っていた。
「2人とも、本当にすごかったよ」
美咲が心から言う。
「美咲ちゃんのサポートがあったから」
結衣が感謝を示す。
「うん、美咲の司会がなかったら、ここまでできてへんよ」
亜美も同感だった。
山田さんからの最高の評価
「最後の息の合ったパフォーマンス、あれは本当に素晴らしかったですよ」
山田さんが続ける。
「お二人の成長ぶりには本当に驚かされます。2日間でここまで成長するとは思いませんでした」
その言葉が、2人の努力を証明していた。
着ぐるみの中での過酷な体験を乗り越えて、ここまで到達したのだ。
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帰りの支度をしながら、3人は今日一日の手応えを語り合う。
電車の中で、3人は今日一日の出来事を振り返っていた。
「今日は昨日とは全然違ったね」
美咲が感慨深げに言う。
「何が一番違ったか分かる?」
結衣が考えながら答える。
「余裕、かな。昨日は必死だったけど、今日は子供たちの表情をちゃんと見ることができた」
「技術的にも精神的にも、なんか昨日とは別人みたい」
亜美も振り返る。
「明日で最後か〜...」
結衣がしみじみと言う。
「最後だからこそ、今まで以上のパフォーマンスをしたいね!」
美咲が前向きに答える。
「3日間の集大成にしよう」
亜美が決意を示す。
「明日も頑張ろう!」
「最高の締めくくりにしよう!」
「子供たちに最高の思い出を!」
電車の窓に映る3人の顔には、2日間で培った自信と、明日への期待が輝いていた。
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着ぐるみの中で見つけたもの~
家に帰った結衣は、シャワーを浴びながら今日の出来事を振り返っていた。
マスクの跡はまだ顔に残っている。鏡を見ると、額や頬にうっすらと線が入っている。
『これが、ティア・リリアンだった証拠』
不思議と、その跡が愛おしく感じられた。
亜美も同様に眼鏡をかけた時、いつもより少し違和感がある。
それは、長時間コンタクトレンズをつけていた影響もあるが、何より「ティア・ニャミーの時間」からの切り替えがまだ完全ではないからだった。
一方、美咲は家に帰ってからも、今日見た光景が頭から離れなかった。
『あの可愛いティア・リリアンとティア・ニャミーの中に、本当に結衣ちゃんと亜美ちゃんが入ってたんやな』
美咲は今日一日を振り返って、改めて感動していた。
朝、テントで着替えを始めた時の2人。
普通の女子大生だった結衣と亜美が、全身タイツを着て、衣装を身にまとい、そして最後にマスクを被ってキャラクターに変身する過程。
そして、ステージでのパフォーマンス中、確実に2人だと分かる仕草や癖。
最後に、マスクを外して再び人間に戻る瞬間。
『全部本当やったんや』
可愛いキャラクターの中に実在する友達がいるという事実。
それが、美咲にとってこの上ない感動だった。
明日は最終日。きっと、もっと特別な一日になるだろう。
『明日が最後か』
3人とも、同じことを思っていた。
着ぐるみの中は確かに過酷だった。息苦しく、暑く、視界も制限される。でも、その中で得られる特別な体験は、他では絶対に味わうことができない。
子供たちの純粋な笑顔と仲間との深い絆。
そして、普通の女子大生では決して経験できない「変身」の喜び。
そして何より、愛する友達が可愛いキャラクターになる瞬間を見守ることができた美咲の特別な体験。
明日は3日目、そして最終日。
きっと、さらに素晴らしい一日になるだろう。
━━ つづく ━━