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無数の夜の煙

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MTGを終え、角ちゃんとHinakoさんのライブへ、vacantまで。壁際のベンチに座り、開演時間。会場がゆっくり暗くなっていくのを見ていた。お隣のお姉様が咳を我慢しているのがわかって、私も扁桃炎明けだったので、持っていたプロポリスの飴を咄嗟に渡す。「辛いかもしれませんが、喉にとっても効きます。」彼女はぱくりと食べて「おいしいです」と言ってくださった。細野さんのグッズのトートを持った可愛らしい方。角ちゃんの音色は安心する。空間における周波数のコントロールが驚異的に細やかで、衣擦れや人々の呼吸音・こどもの声・外の気配・スピーカーの特性まで、無意識の領域で自由自在に操れることが本当に素晴らしい。角ちゃんの起こす空間は心配が何一つなくて、安心して預けることができる。そして楽しく野蛮な一面もあり、対してHinakoさんのつむぐ夢のコード進行は深く地底に雲を張るように重く美しい。二人でセーノで鳴らしたカセットテープに録音された電話の声が、愛しくて、帰宅してから思い出して涙が出た。しばらく角ちゃんとメッセージのやり取りをしている中で、カセットテープの声がさ、と打っている途中で涙が溢れた。私たちが出会える事はなんて奇跡的なんだろう。いつでも会えるなんて嘘だ。会えることは本当にすごい事なんだ。風の冷たいvacantの外で話していた。そしたら隣の席にいたお姉様が声をかけてくださり、飴のお返しに、と、自作の猫のクッキーをくださった。「私が作りました、多分美味しいです」と言って、そのまま立ち去ってしまわれた。早足の後ろ姿に向かって「ありがとう!はじめましてのかた!」と声をかけたけれど聞こえていたかはわからなかった。家に帰って、すぐに食べた。蜂蜜と、紅芋と、ココアのクッキー、ガリリとかたくてとっても美味しかった。ここのところ食べた甘味の中で一番美味しかった。本当に美味しいけれど、その美味しさの中には、今日会えたことの喜びの味も含まれていてひときわ美味しかった。はじめましての細野さんのトートのお姉様。クッキーをありがとう。やさしい気持ち、おいしいを交換するよろこび。そんな小さなやり取りをぜんぶ包んでいた角ちゃんとHinakoさんの音楽、パフォーマンス。vacantのほわりとした明るみ。スタッフさまの穏やかな顔と運営。代々木八幡からしばらく歩きながら余韻に浸っていた。考え事をしながら東京の街を、どこへいくでもなく歩く時間は私にとってとても大切な時間だ。歩けたらいい。点滅する信号機と過ぎ去っていく車。真っ暗がない。歩ける都会の夜。星が「いちおうででます」程度に光っていて、波照間で見る同じ星とは思えない。濁った夜空。コンビニの眩しさ。時間を見るアイフォンも眼球を突き破る眩しさ。

遠くの衛星、私が今何を考えているか知っている?

Ichiko Aoba PATREON 4 favs
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POSTEDNov 11, 2025
ARCHIVEDJun 10, 2026