ようやくこの時が来た。
長い間バイト代を貯め、そして迎えた夏休み。周りの友達はみんなで旅行に行ったりしているけど、私は今から刑務所に向かう。
――快楽刑。
あらゆる犯罪に対する厳罰化が求められる今、この国に導入された新たな刑罰だ。
この刑は屈辱や羞恥を与えると同時に、犯罪抑止のための見せしめとしても機能している。
しかし、時折現れる私のようなどうしようもない被虐願望を持った人間は、自分もああなってみたいと思ってしまうのだ。そんな人たちがわざと捕まるために犯罪を起こさないようにとして作られたのが、体験快楽刑制度。決して安くないお金を払って、刑罰を受けに行く。普通の人間には考えられない行為だが、私は普通じゃない。
この願望を抱え始めたのは小学校高学年の頃だ。
社会科見学で訪れた快楽刑務所。男子は男子刑務所へ、女子は女子刑務所へと別れて入ったその中で見た、通常では考えられないような倒錯した光景。
壁に並べられながら秘所を責め立てられ、涙を流しながら悲鳴のような嬌声を上げる女たち。
クラスのみんなはこんなの絶対嫌だと言っていたけれど、私の胸は静かに高鳴っていた。
そして今、ようやく二十歳を迎えた今年、長期休暇を利用して快楽刑を受けに行くのだ。
明日からは毎日嫌と言うほどイかされるというのに、昨日は何度も自分を慰め、結局あまり眠ることはできなかった。
今も心臓は高鳴っている。街外れに佇む無機質な箱。これが快楽刑務所。
「えっと……す、すみません」
高い柵に囲われた建物のインターホンを鳴らし、声を上ずらせながら何とか会話をこなす。
「はい、……あ、快楽刑体験の方ですか?」
「は、はいっ、天野美咲です」
「はい、天野さん。今正門開きますので、正面入り口からどうぞ」
自動ドアをくぐり、エントランスのような場所に出る。
そこに立っていた、制服を着た女の人。温和な笑みを浮かべているが、胸元の印を見ると一級執行官だということがわかる。何百人の囚人を担当し、何千万回もイかせてきた人。
「緊張してます?」
「あ、いや、一級なんだなって……」
そう言うと女の人は妖艶な笑みを浮かべ「よく知ってるね」と揶揄うように言う。
「本来は三種快楽刑の担当なんですけどね。今は試験期間ですからね」
三種快楽刑の囚人は執行官資格の試験の際には実技試験のために呼び出されたりもすると聞いたことがある。
「だから、一か月ほど私たちはフリーなの」
三種快楽刑の囚人には複数人の一級執行官が付く。それが全員一か月暇を持て余している。
私の体験期間も今から一か月間だ。
「嫌なら断っても構いません」
心臓があり得ないほど高鳴る。通常では絶対経験できない三種快楽刑。
「や、やります……」
「いいんですか? 風が吹いただけでイっちゃうほど敏感になった状態で私たちに24時間責められるんですよ。気絶もできません。食事も睡眠も必要ないようにしちゃいます。それでもいいんですか?」
彼女が言葉を紡ぐたびに、私の心臓が跳ね上がる。
「はい……」
小さな声で、ようやく言葉を発す。
それを聞いた女の人は満足そうにうなずくと、とても嗜虐的な笑みを浮かべる。
「予約済み。ってことは、書類も提出済みだよね。……じゃあ、服、脱いで」
「はい……」
人が来るかもしれないエントランスで、私が人間である証の服を一枚づつ脱いでいく。
スカートと上着を脱ぎ、下着姿になる。そしてブラジャーを外し、ショーツも脱ぐ。生まれたままの姿になった私を女の人はじっと眺める。
恥ずかしさのあまり顔から火が出そうだ。目線を落としながら身を隠したくなる。
「隠しちゃダメ。美咲ちゃんはもう囚人なんだから」
言われた通りに腕を下げて全てを晒す。
もう服は着れない。生まれたままの姿を晒しながら、これからの一か月間を過ごすのだ。
「びしょびしょ……そんなに期待してるの?」
「は、はいっ……期待してます……」
私がそう答えると女の人は微笑みながら、私の首にずっしりと重たい金属製の首輪を嵌める。
「私は夏美。よろしくね」
温厚な印象はそのままに、絶対に逆らえないと本当的に感じてしまうような重圧を感じる笑顔。
そして首輪に繋いだ鎖を引かれ、施設の奥へと連れていかれる。
「まずは下準備。何するかわかる?」
「拘束……ですか?」
「それだけ?」
通常の体験ならそれだけのはずだ。だけど、今回は違う。
「乳首と……クリトリスに、ピ、ピアス……」
「正解。ちゃんと元に戻るから安心してね。それとも、戻さなくてもいい?」
「……っ! 戻して欲しい……です」
そんなことを言いながら、心の中ではどこか期待している私もいる。
自分が壊れていく感覚が堪らなく気持ちよかったりするのだろうか。
女の人……夏美さんはクスッと笑うと、「じゃあ始めようか」と扉を開ける。
無機質で、清潔な部屋の中で手錠と足枷が音を鳴らしている。この中で私がどうなるか、考えただけでも絶頂してしまいそうだ。
「じゃあ、ここに乗ろうか」
「……はいっ」
夏美さんが指さしたのは、分娩台のような形をした椅子。
裸のままそのに腰掛けると、すぐに両手首と両足首に金属製の枷が装着される。
冷たく硬い感触が肌に直接伝わってきて、否応なしに興奮させられてしまう。
両腕は頭上で交差させられ、脚はM字開脚の姿勢で固定される。その他にも体中にベルトを装着され、もはや身じろぎひとつとれないほど厳重に締め付けられる。
「もう動けないよ。どれだけ泣きさけぼうと、美咲ちゃんの意志では絶対にやめられない。……あれ、もうこんなに濡らしちゃってる」
そう言いながら夏美さんの指先が私の陰核に触れる。
軽く撫でられただけなのに快楽が全身を駆けまわり、腰が大きく跳ね上がってしまう。
「変態。普通は考えないよ。自ら快楽刑を受けようなんて」
そう言いながら夏美さんは小さな器具を取り出す。それはまるで注射器のような見た目をしていて、中にはピンク色の液体が入っていた。
その針がゆっくりと近づいてくる。思わず目を閉じて全身を強張らせる。
「大丈夫だよ。ちょっとチクッとするだけだから」
優しい声とは裏腹に容赦なく針がクリトリスに突き立てられる。それはほんの一瞬のことだった。
すぐに何かが埋め込まれた感触があり、次第に熱を持ってくる。その熱さに思わず身を捩りたくなる衝動に襲われるが体は全く動かない。
「これ、二級以下だと使えないんだよ。危ないから。これ入れられちゃったらクリちゃんずっと勃起したままで、感度もどんどん高くなっちゃうの」
夏美さんは満足げな表情を浮かべてそう言うと、再び同じ器具を取り出して今度は乳首へと刺す。またしても痛みと共に埋め込まれていく。しばらく待っていると徐々に感覚が鋭敏になっていく気がする。
「じゃん、期待してたんでしょ」
差し出されたのはピアッサー。銀色に輝くそれを見て背筋が凍る思いがした。
これから自分がどうなってしまうのか想像するだけで恐ろしい反面胸が高鳴っていく。そんな心情を見透かしたかのように笑みを浮かべる夏美さんの姿があった。
彼女はまず右胸へと狙いをつけた。消毒液で清潔にした後慎重に針を通していく。
一瞬だけ鋭い痛みを感じたもののそれもすぐに消えていった。
続けて左側にも同様の処置を行う。
そして最後に残された三つ目の突起にも当然狙いが定められる。
「動いちゃだめだよ。痛くしないらか」
呼吸を整えて待ち構える。ゆっくりと押し込まれてくる感触の後、刹那、焼けるような熱い刺激が走った。
「っああ!!!」
情けない声を上げてしまう。
「ほら、見て」
目の前に鏡が運ばれ、自分の姿を見るよう促される。
そこあったのは信じられないほど淫らな女の姿。両乳首と陰核にリングを通され、そんな状況でも股間を濡らして悦んでいる私は変態以外の何者でもない。
その光景を目にして、もう引き返せないところまで来てしまったのだと改めて理解する。
「じゃあ、執行室行こっか」
「はっ、はい……」
もう逃げられない。今から一か月間の地獄がスタートするのだ。
そして高速椅子ごと私は動き出し、三種刑執行室というプレートが掲げられている部屋の中まで運ばれる。
「あっ、ようこそ美咲ちゃん。これからよろしくね」
「……っ!」
部屋には複数人の女性がいた。
いずれも一級の執行官。
彼女らの瞳には好奇と嗜虐の色が宿っていた。
胸が高鳴り、声すら出ない。
「うわ、すごい垂れちゃってる。ほんとに変態だ」
一人の執行官が私の太腿を撫でる。他の人々もまた次々に私の周りに寄ってくる。
「これ、見たことあるかな? 学校とかで見てる人もいると思うんだけど」
「……っ!!」
その言葉と共に画面に映し出された異様な光景。
それは三種快楽刑の執行映像だった。
無数の執行官に囲まれ、狂ったように喘ぎ悶える女性。
身体中に電極を貼られ、様々な道具を使われて徹底的に絶頂させられるその姿が私に重なり、思わず体を震わせてしまう。
「美咲ちゃんもすぐこうなるよ」
「ふふっ……苦しそうだよね」
耳元で囁かれる言葉。体中が熱くなる。
そのまま意識を失ってしまいそうな程に蕩けていくのがわかった。
既に両手両足首だけでなく、体中の関節部分全てにベルトが巻かれていて全く動かせなく、大事なところに穴もあけられている。最早どうすることもできない。私にできるのはただ受け入れることだけ。
たとえそれがどんなものであろうとも。
二人の執行官が私の顔を覗き込む。
その瞳は愉悦に染まりきっており、私はごくりとつばを飲み込む。
「では……三種快楽刑の執行を開始します」
その言葉と共に、執行官たちの表情が変わる。今までの愉悦に満ちた表情ではなく、ただ囚人に苦痛を与える執行官としての冷酷な表情に。
次の瞬間、彼女たちの指先が伸びてきた。
それが胸の頂点とクリトリスに触れた瞬間、脳内で火花が散るような錯覚に陥るほどの激感が迸る。
否、錯覚なんかじゃない。彼女たちの嵌めた手袋が実際に電気を流しているのだ。
「っっぅぅううぁ!!」
「イっちゃった」
夏美さんが冷たい声で優しく囁く。しかしその言葉とは裏腹に彼女は一切手加減してくれない。むしろより強い力で握りつぶすかのように陰核を摘ままれる。それは荒々しい手つきでありながら、今の私の異様に敏感になったクリトリスに合わせて適切な快楽を与えるための刺激だった。
私は簡単に絶頂を迎え、同時に潮を吹いてしまう。
腰を逃がしたい。体を跳ねさせたいのに、拘束されてそれは叶わない。
絶頂直後、ここからが本番といった様子で彼女たちは続けざまに責め立てる。二本の指を使って敏感な突起を上下左右に擦られ、濡れ細ったナカにも指が入れられる。
さっきの注射の影響で敏感になった私の体は少し擦られるだけで絶頂と同様の快楽が全身を駆け巡る。
それは絶頂が続いているに等しい。そんな状況で私は執拗に責められ続ける。
「あ゛あ゛ああああああっ!!!!」
「うるさいな……」
私の口元にディルドのようなものが近づけられる。喉奥を犯し、声と呼吸を奪うペニスギャグ。それを無理やりねじ込まれた途端、声にならない悲鳴が喉の奥で暴れる。
「んんぅうう!!」
「ほら、鼻で息して」
苦しさで頭を真っ白にしながら夏美さんの言葉に必死に従う。すると今度は優しい声音で褒められた。その優しさとは裏腹に彼女の指先はは容赦なく陰核と膣内への刺激を与え続けていた。
更に追い打ちをかけるように新たな道具が取り出される。小瓶の中には何やら粘つく液体が滴り落ちていた。その正体を悟った時にはもう遅い。
「感度上昇効果のある媚薬。これを塗ると敏感になりすぎて日常生活すら遅れなくなるの。だから、何回も塗ってあげる」
一級執行官は薬物の特殊な用法での使用も許可されているという。それが例えばさっきの注射であったり、この媚薬との併用であったりするのだ。
執行官の人が手袋の上にさらに手袋を重ねてから触るような代物が、私の素肌に塗られていく。
「んんん――っ!!」
その瞬間、今まで感じたことの無い強烈な痺れと灼熱にも似た疼きが全身を覆い尽くし、息をするだけで全身が痙攣してしまう。。
何もかもおかしくなってしまいそうな快楽の奔流。こんな状態では服を着ることすらままならないだろう。
それよりも今はとにかく辛い。痒くて熱くてたまらない感覚が全身を包み込み思考回路すら溶かしていくようだった。そしてそんな状態の体を執行官たちは執拗に弄り回す。
特に乳首やクリトリスの周りを何度も往復させるように擦り、時には引っ掻くように先端を刺激されたりし、その度にに反射的に腰がが跳ね上がる。
「とりあえず気絶させちゃおっかな」
「んぐぅぅうう!!!!!」
一瞬で絶頂させられる。無理やり押し上げられるような、深い絶頂。だけど責めは一瞬たりとも緩まることはない。
いやだ、いやだいやだいやだ、もう辛い、ちょっと触られるだけでもこんなにしんどいのに――。
「っ!! んん――!!!!!」
元々敏感だったのに絶頂直後でさらに敏感になった局部を触られるのは、まるで神経そのものを撫でまわされているようだ。
そんな状態で声すら出せず、腰を跳ね上げて体を反らすことすらできず、私にできるのはただビクビクと体を震わせて声にならない唸り声をあげるだけ。
息ができない。視界が白みだし意識が遠くなっていく。それでもなお彼女たちは責めを続ける。
視界が真っ黒になる、もう一度全身に稲妻が走るような衝撃が走ったと思った直後に、私はぼんやりと目を覚ます。
「何分経ったと思う? ……あ、喋れないか。一分。それだけだよ。寝てる間にお薬飲ませたから、もう気絶できないよ。発狂もできないし、寝ることもできない。でも大丈夫、ちゃんと生きてられるから」
夏美さんが一人で話す。
私は今全身のベルトに鎖を付けられ、空中に吊られている。
「三交代制なんだよね。これも、私たちが八時間ずつ、一秒の休憩もなく美咲ちゃんを責め続ける」
「ん゛んぅぅう!!」
背中を弓なりに逸らし、乳首とクリトリスのピアスに繋がれた紐を限界まで引っ張られている。体を少し動かしただけでそれらが千切れそうな感覚が迸るだろう。
そんな中、限界まで引き延ばされた乳首とクリトリスを左右からブラシが挟み込む。そして回転を始める。
「んぐぅううっ!!!!!」
すでに触れられただけで絶頂するような感度になっていた私はブラシが動き出したと同時に絶頂する。
だけど止まってくれない。
さらに回転が早くなり、視界が真っ白になり腰がガクガクと痙攣する。
だけど体を揺らすと乳首やクリトリスが引っ張られて激痛が走るから我慢するしかない。
「苦しいね。でもあと七時間はずっとこのままだから」
「ん゛ん゛――っ!!!!」
絶頂が終わる前に次の波が訪れる。
息をすることさえままならないほどの快楽地獄。
今のままでも一秒だって耐えられないほど辛いのに、夏美さんは私の足元に機械を持ってくる。
箱から突き出した棒と、その先端に取り付けられた巨大なディルド。それがどのように動くかは容易に想像できた。そしてその想像通り、棒は私の下腹部へと狙いを定めて突き進んでいく。
「そういえば、美咲ちゃん処女だったよね」
ディルドが秘裂を抉じ開ける。これまでの比ではないほどの激感が全身を襲う。
凄まじい質量を持った異物が体内へと侵入してきたのだ。
確実に子宮口に達しているであろう長さと指なんかとは比べ物にならないほどの太さ。これを体内に入れるだなんて考えることもできないようなそれを、私の体は簡単に飲み込んでしまう。
そしてそのまま容赦なくディルドはピストン運動を開始する。
「ふぅぅう゛、ん゛う゛ぅぅぅ!!!」
暴れ回るように乱暴な抽挿。その度に膣がひっくり返ってしまうような感覚と内臓が押し上げられるような感覚に襲われる。
そんな状況でも私は愛液を飛び散らせ、床へと大きな染みを作っていく。
もちろん責めはそれだけじゃない。
乳首も、クリトリスも変わらず責め続けられている。
「んんっ!! ん゛う゛――っ!!」
「辛い? 苦しいよね。でも美咲ちゃんがこうなりたいって言ってたんだよ」
「んん゛ぅうう!!」
そんなことはわかっている。だけど苦しい。イった後もずっと責められ続けるのも、絶頂直後の震えすら我慢しないといけないのも、どうしようもなく辛い。
だけど心の中で悦んでいる自分も居る。
どうしようもない変態の自分がいる。
「せっかくなら楽しんでね。ま、そんな余裕ないだろうけど」
その言葉に恐怖を覚えながらも、私は夏美さんの言葉一つ一つに興奮していた。
その反応を楽しんでいるのか、夏美さんは嗜虐的な笑みを浮かべると私の耳元で囁いた。
「ごゆっくり。変態さん」
そう言うと彼女は何やらリモコンの様なもののスイッチを押す。すると乳首とクリトリスのバイブ、それにピストン運動を繰り返すディルドからどろりとした液体が吐き出される。
「んぅっ!! ん゛ん゛っっぅぅううう!!!!!」
熱を帯びる体。さっきと同じ媚薬だが、感覚が違う。どろどろとしたその液体の中にザラザラとした感覚も含まれているのだ。
そのザラザラとした細かい粒子の一つ一つがブラシの回転やディルドの運動に合わせて私の敏感な部分を駆け巡る。それは刺激の数が無数になったようで、私は絶頂のインターバルをさらに狭めることとなった。
体を吊られ、乳首とクリトリスをブラシで磨かれ、膣をディルドに蹂躙される。乳首とクリトリスのピアスを引っ張られ、身じろぎでもすれば激痛が走り、ディルドギャグによって声も出せず息すらままならない。そんな責めを通常の何十倍も敏感な体で受け止める。
息もできないほどの過剰な快楽、それは刑罰にふさわしい苦痛だった。
「お、時間だ。それじゃ、引継ぎしよっかな」
夏美さんがリモコンを操作すると、私の乳首とクリトリスに埋め込まれた何かが小さく震えた。
「ん゛ふ゛ぅぅうううう!!!!! ん゛!!! んん゛っっっ!!!!!」
瞬間、体が絶頂する。
過程となる快楽を無視した強制的な絶頂。それも深く、脳髄まで犯されるような絶頂。
それと同時にディルドとブラシの刺激も止まり、私の体を支えるベルトが緩む。
次々と拘束が緩んでいくが、私は指一本たりとも自由に動かすことはできない。痙攣し続ける全身は脳の命令をさっぱり受け付けないのだ。
「ん゛!!!! っっっっ――――――!!!!!!!!!」
「強制絶頂装置だよ。言ったでしょ? 一秒たりとも休憩させないって」
強制絶頂装置だなんて言葉、聞いたことすらない。
涙も潮も汗も、全てを絞り出す勢いで私は絶頂し続ける。意識が今にも途切れそうなのに、快楽と苦痛を何よりも明瞭に感じ取ってしまう。当然気絶なんてさせてくれない。
「はい、じゃあね美咲ちゃん。ばいばい。また明日」
「ん゛ん゛っ!!!!!!!」
そう言って笑う夏美さんを見送り、代わりに別の執行官が部屋へと入ってくる。夏美さんと同様に、彼女も嗜虐的な笑みを浮かべている。
今度は分娩台のような椅子に拘束され、再び痙攣すらできないほど拘束される。
当然その間強制絶頂装置は止まらない。
八時間。彼女たちが八時間ずつ、責めに責めを重ねる。
私にとってこれが来月までの日常になる。それを改めて実感した瞬間だった。
「結衣です。よろしくね、美咲さん」
結衣の名乗った女の人は部屋に入って早々私の口枷を外した。
「あ〝っ……!! っっっ―――!!!!!」
ただし、強制絶頂装置はまだ止まっていない。私は久々に自由になった口の感覚を確かめることもできず、絶頂に悶える。
「もうイくの嫌?」
「や゛だっ、いやですっっ!!!!!!!」
必死になって、なんとか言葉を話す。
結衣さんはその言葉を聞くと満足そうにリモコンを操作し、強制絶頂装置を止めてくれた。
「そっか、嫌か……」
そう言いながら結衣さんの指先は私の陰核へと近づく。
「ひゃっ!!!」
軽く触れられただけで全身を震わせてしまう。私の体はすでに取り返しのつかないところまで来てしまっているのだ。
「イきそうになったらちゃんと言ってね」
「はっ、はいっ」
結衣さんの指先がクリトリスの先端を捏ねるように動く。
「イっ……イきますっ!」
「だーめ」
「っ……っっぅ……!」
私が絶頂を迎えようとする寸前、私を責め立てていた指が止まる。
「イかせないよ、これでもプロだからね」
彼女の指先が再び私の一番弱い箇所へ伸びてくる。そしてまたしても焦らすように責め始めた。
「イっ……イくっ……」
「我慢して」
「っっ……!! っ、むり、イきますっ」
「ダメ」
「っぁっ!!」
それは、初めのうちは甘い快楽だった。先程までの機械による地獄のような絶頂地獄とは違い、声も出せて執行官とコミニケーションもとれる。
「イっ、きますっ」
「ダメ」
五秒ほどのインターバルで再び責めが始まる。
「イくっ……」
「だめだよー」
頂点ギリギリで取り上げられる快楽の波。
さっきまであれほど嫌だったその瞬間をいつの間にか私は待ち望んでいた。
「あっ……イっちゃ……イかっ……イかせてくださいっ!!」
そう訴えるけれど聞き届けてもらえず、何度も何度も寸止めを食らう。悶々とした快楽は蓄積され、体がはち切れそうになる。
「っ、っつぅう……」
「あ、今黙ってイこうとしたでしょ」
私の頭の中を見透かしたかのように結衣さんは話す。寸止めも私が声を出していた時と変わらず、限界ギリギリのところで止められる。
「いいのかなー、私に逆らって」
「っ、すみませんっ」
「いい子。私のこと飽きさせないでね。飽きたら強制絶頂装置つけて放置だから」
少し前の地獄を思い出す。あれほど終わってくれと願っていた絶頂地獄。
あれだけは嫌だ。あれをずっとだなんて、考えただけで狂ってしまいそうだ。
だから私は逆らえない。必死に結衣さんを楽しませなければならない。
「自分からこんなことになりに来たって、美咲ちゃんって本当に変態なんだ。私なら絶対嫌なのに」
「あ゛ああああ゛っ!! イきますっ」
「はい、ストップ」
「っ―――!!」
私は結衣さんの発言にいちいち興奮してしまい、余計に快楽を体に溜め込んでしまう。
何度も、数えることすら馬鹿馬鹿しくなるほど寸止めは繰り返される。
狂ったように絶頂し続けたさっきまでの感覚なんて吹き飛び、ただ絶頂したいと、頭の中がそれだけに埋め尽くされていく。
「イきたいね……うん、五秒耐えられたらイかせてあげるよ。ちゃんと数えてね」
「は、はいっ」
ようやく見えた希望。だけどそれがどれだけ困難であるかも自分の体で理解していた。
「い゛、ちっ……に……っ、さっ、あっ、イきますっっ」
「がまんがまん、いつまで経ってもイけないよー」
三秒すらも耐えられないこの状況。これからクリトリスが鈍感になるなんてことは有り得ない。むしろどんどん敏感になっていくばかりだ。
それなのに私は、期待して毎回必死に数を数える。
「はい、ざんねーん」
「ん゛ん゛っっ!!! イ゛きたぃ……イかせてくださいっ!!」
「だから、五秒耐えれたらイかせてあげるって言ってるじゃん」
「っ、あっ……ああっ……」
結衣さんはにんまりとした表情で私を見下ろす。
私より年上の彼女は必死に絶頂しようとしたり、必死に我慢したりする私を楽しんでいるように見える。
「にっ……イきますっ!! イきますっっ!!」
「だーめ」
「っ! っぅぅ!! っっぁっ……!! イかせて、イか゛せ゛て゛っっ!!!!」
「そんなにー。あ、そうだ。特別に三秒耐えたらイかせてあげてもいいよ」
「はいっ……!」
「じゃあ行くよ」
指がクリトリスの側面をなぞり始める。ただ単調に刺激するだけじゃなくて、強弱やリズムを変えたりして私の感覚を狂わせる。
私からすればただただ気持ちよくて、ただただ苦しい。
イきたい、絶頂したいだけなのに、それすらも叶わない。
「いちっ……、に゛っ……!! さっ……!! さ゛ん゛――!」
三秒。ようやくイける。
——だけど、あと一歩が届かない。後一瞬でも触ってもらえれば、それだけでイけるのに。
「な゛んでっ、さんびょうっっ、がまんしたじゃん!!」
二十歳にもなって、みっともなく涙を流しながら懇願する。
「イきそうなときは教えてって言ったじゃん。だからダメ」
「っ、ぅう、っ……」
結衣さんは私の陰核を触る指の数を増やす。さっきまで人差し指だけだったのが、今度は二本の指で扱くようにクリトリスを刺激する。
ただでさえ我慢なんてできっこないのに、そんなことをされたら我慢なんてできるわけがない。
「に゛っ……に゛ぃっ……!! っあああっイっ……!!」
「はいダメ。また最初からだよ」
「に゛ぃ……いっ……!! イっくっ!! イ゛きますっっ!!」
「惜しい、ざんねんでした」
「っ……にっ……!! っっ……!!」
クリトリスの根本から先端まで何度も何度も往復され、その度に甘く切ない疼きが広がっていく。
「い゛っ、ち……、にっ、——イっ、イきますっっ」
今度こそ、三秒。
だけど絶頂の寸前で必ず刺激が止まる。息が止まり、全身が硬直する。それでも刺激は与えてもらえない。
「ちゃんと三まで数えないと。はい、やり直し」
「な゛んでっ、むりじゃんっっ!! ……そんなのっっ」
「だって、初めからイかせる気なんて無いんだもん。美咲ちゃんが何をしようと、美咲ちゃんは八時間寸止めし続けるの。わかった?」
頭の中がぐちゃぐちゃになっていくのがわかる。
涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃになった顔を見られることも気にせず、私は叫ぶ。
「イかせて、イ゛か゛せてよっっ……!!!」
「だーめ、話聞いてた?」
「っ!! イ゛くっ!! っあ゛あっ!!」
クリトリスから頭の先まで、脳天を貫かれるような電流が流れる。だけどイけない。一番欲しい刺激だけがもらえない。
「ほら、三まで数えて?」
「いっ!! っい゛っ!! に゛っっ!! イくっっ!!」
「すとっぷー」
「っ……っぁ゛あ゛あっ!! イけない、イ゛け゛ない゛っ!!」
意味なんかなくても数を数え、イきそうになったら宣言する。すでに私はまともに物を考えることすらできなくなっていた。
「い゛っ……に゛っっ……!! っああ゛っっ!! イ゛く゛っっ!!」
「はい残念」
「い゛っ……イ゛くっっ……!! イきますっっ!!」
「ざんねーん」
どれだけ泣いても、どれだけみっともなく懇願しても寸止め地獄は続く。
辛い。絶対にイけないのに、体は快楽を飲み込んでしまう。
絶頂を求める心は際限なく加速していく。頭がおかしくなる。イきたいという一心で力一杯体を動かしても、動かせるのはせいぜい指先だけ。
イきたい。イきたい。イきたい。
それ以外何も考えられない。
「うん、お疲れさまー」
ようやく交代の時間が来たようだ。
私は乳首とクリトリスにローターを取り付けられ、それによって延々と寸止めされ続けていた。
「ひどい有様だなぁ……いつものことだけどさ、君一般人でしょ?」
新たな執行官が入ってきた。涙と唾液と汗でべとべとの私を見下ろしながら楽しそうに呟いた。
そして耳元に顔を寄せて囁いた。
「難儀な子も居るもんだね、ほんと」
「い゛き゛たいっ……イ゛きたいっ……!!」
「そういわれてもなぁ……どうしよっかなぁ」
「イ゛か゛せてっ!! イ゛か゛せてくださいっ!! お願いしますっ……!! イ゛き゛たいっ……!!」
泣き叫びながら、媚びるように懇願する。プライドや尊厳なんてそこには存在しなかった。
イきたい。イきたい。イきたい。もうそれだけしか考えられない。
彼女はニヤニヤと笑いながら私を眺めている。
「じゃあねぇ……じゃあ私のこと先輩って呼んでよ。そうしたら考えてあげる」
そう言われた瞬間、考えるより先に言葉が溢れ出ていた。
「せ゛ん゛ぱいっ!!」
「可愛いねぇ……」
「おねがいしますっ……せんぱいっ、イ゛か゛せてくださいっ……イ゛か゛せて……!!」
「いいよ。ただし二つ条件がある。一つはここで私が何をしていたかは誰にも言わないこと。二つはカメラで君の姿を取らせてほしい」
「っ……! わかりましたっ……わ゛かり゛ましたからぁっ!!」
快楽刑を受けている囚人の姿は撮影され、売りに出され政府の財源となっている。だけど体験の場合は違う。本来ならカメラなんて付けたら違法だ。ただし、それも私の許可があれば話は別。
「んー、いい子。じゃあイかせてあげる」
「っ―――!!!!」
「——四時間後から四時間ずっと強制絶頂措置を付けてあげよう。それはではあと四時間寸止めね」
「い゛や゛ぁっっ!! い゛や゛ぁあ゛あ゛あっっ!! い゛き゛たいっ!! イ゛き゛たいっっ!!」
裏切られたというのに、相手を罵ることができるような判断力は残っていない。頭がどうにかなってしまいそうだ。
私は頭を振って、声を荒げる。
「っ゛……! っ゛――!」
何をしてもこの寸止め地獄からは逃れられない。執行官の言葉は絶対に覆らない。それはこれまでの十六時間で嫌と言うほど理解させられていた。私はただただ与えられる快楽に耐えることしかできない。
真紀さんはソファーに座って泣きわめく私をじっと見つめている。
それだけではなく、執行官のスカートの中に手を突っ込んで中をまさぐりだした。
私をじっと見つめ、黙々と快楽に浸る。
「あっ……ん…。……っ、ふぅ……」
真紀さんが一回果てた。だけど私は当然絶頂できない。機械は私の絶頂を検知し、的確にローターの動きを止める。
もし自分が絶頂できたらどれだけ幸せだろうか。
「……っ……。ん……」
真紀さんはぼんやりと宙を見つめる。絶頂後の微睡みに浸っているのだろう。
私は拘束されて動かない体を暴れさせ、涙と鼻水を垂れ流し、声を荒げる。どれだけ惨めな姿だろうと、私は必死に真紀さんに助けを求める。このままじゃおかしくなってしまう。
「あっ……んっ……、っっ……」
「イ゛か゛せてっ……!! イ゛か゛せてよぉっ!! ね゛え゛っ……!!」
どれだけ叫んでも無駄なことぐらい、本当はわかっている。
真紀さんにとってはは私が絶頂しようがしまいがどちらでも良い。私が苦しんで泣き叫ぶ姿を見て、彼女はただ楽しみたいだけなのだ。
何をしても意味がない。いつになったら終わるのかわからない。只々苦しくて、辛くて、終わりなんてこないんじゃないかと思えて気が遠くなる。
結局私がどれだけ泣き叫んでも無視され、どれだけ体を捩っても拘束は緩まない。真紀さんはそんな私を見て歪な劣情を抱く。
家号のような時を過ごし、そして遂に四時間が経った。
強制絶頂装置がつけられる。
「あ゛あ゛あ゛っ!! イ゛く゛っ!! イ゛っ……!!」
「やっぱり、美咲ちゃんはかわいいね」
十二時間も我慢させられ続けて、ようやく迎える絶頂。
それは甘く、激しく、鮮烈だった。
私を包み込んだそれは一瞬にして全身を支配した。
苦しみすら甘美なものに感じる。苦しみ抜いた後だからこそ、絶頂は余計に甘く感じる。
快楽と多幸感に包まれる。それはまるで夢のように心地よく、甘美なものだった。
「あ゛……イ゛……っっ……!! っ!! っ――!!」
またイく。さっきみたいにじっくり焦らされることはなく、私の意思も感情も一切関係なく連続して絶頂に導かれる。まるで溺れているかのように息ができず、必死にもがいても抜け出せない。
「あっ……ああ゛っ!! イ゛きますっっ!! っっ……!!」
イってるのに、イく。訳が分からない感覚。
甘美な感覚は一瞬にして突き抜け、あまりの快楽は苦痛に変わる。
イく、イく、イく。連続して絶頂する。否、もはやそれらに切れ目なんかなく、一つの連続とした、延々と続く絶頂となった。
気持ちいい。死ぬほど気持ちいいのに苦しい。息ができないほど苦しいのに気持ちいい。
「あ゛あ゛あ゛っ……!! っ……!! っ!!」
どれだけ叫んでも終わらない。何度でもイき続ける。
その私の姿を見て真紀さんはまたしても自慰に耽っていた。真紀さんの指がスカートの中で激しく動く。その度に真紀さんの体が小さく震える。
私の強制的で苦しさの伴う絶頂。それに反して真紀さんの絶頂はただただ甘く、ゆったりと快楽に浸るもの。
どちらが好ましいのか、そんなことは火を見るよりも明らかだ。
だけど私も今まさに絶頂に導かれている。辛いはずなのにどこか幸福な感覚。その矛盾は私の思考能力を徐々に失わせていく。
「あ゛っ……っ…! イ゛く゛っ……!! っっ……!! イ゛……!!」
意識を失いそうになるのを何度も繰り返すが、気絶なんてことは有り得ない。
気づけば真紀さんは三回絶頂し、自慰行為を終えていた。
私が何千回と絶頂した時間で、たった三回。
不平等だ。
人としての尊厳すら奪われて、ただの玩具として扱われている。そう思うと胸の奥底が少しずつ満たされていくのを感じた。
「もう゛、や゛だ゛っっっ!!!! ごめんなさいっ、ごめんなさぃぃぃ!!!!!!!」
これが終わったとしても、まだ三十日の内の一日が終わっただけ。
泣こうと叫ぼうと、私の地獄は変わらない。
「ん゛ぅぅうううううっっ!!!!!!」
いやだいやだいやだ、もう嫌だ。
イくの辛い。イった後辛い。
しんどいの、嫌なの、だから――。
だけど、誰も開放してくれない。
体を吊られ、乳首とクリトリスをブラシで磨かれ、膣をディルドに蹂躙される。乳首とクリトリスのピアスは常に引っ張られ、身じろぎでもすれば激痛が走り、ディルドギャグによって声も出せず息すらままならない。
この三十日間で一番辛かった、一日目の拘束。
それを一日目の何十倍も敏感になった体で、それも強制絶頂装置を常に稼働させた状態で受けている。
もう何日経っただろう。ここに誰か来る日は来るのだろうか。
「快楽刑体験って、本気で信じてた? これは犯罪者予備軍をあぶりだすための制度。美咲ちゃん、もう一生出れないよ」
執行官、夏美さんの最後の言葉はそれだった。
その言葉を聞いて、私は――。
どうしようもなく、興奮してしまった。
涙を流しながら、もう嫌だと、イきたくないと懇願しながら、私は興奮していた。
確かに、そんな変態が世の中に出て来て言い訳がない。お似合いの結末だ。
そうして、今こうして地獄を味わっている。
この先もずっと、きっと、永遠に。