Skebのご依頼で書いた奴です。
支援者様限定で公開させていただきます
***
10月31日、23時01分。
漏瑚との戦闘を終えた宿儺の前に現れたのは裏梅だけではなかった。
夜の闇に負けぬほど輝かしい金髪をなびかせる女はバイクに跨り、こちらを睥睨している。不遜な態度であるがそれを可能とするだけの力量があることは一目見ただけで察した。
彼女はゴーグルを外すなりニッと口の端を歪め、
「初めましてだね、呪いの王。いきなりでなんだが――どんな女がタイプだい?」
「貴様、何を……!」
怒りの形相を浮かべる裏梅を手で制し、後ろに下がるよう命じる。その気配が遠ざかっていくのを感じながら、改めて女を睨めつけた。
器――虎杖の脳内に彼女の情報はない。だが只物ではないことだけは明らかだ。
彼女はフッと鼻で笑うとバイクから降り、宿儺の前へと降り立ってくる。仮にも歴代最強の術師を相手にしているにもかかわらずこのふてぶてしさ。度胸があると言うべきか、あるいは単なる馬鹿か。
(試してみるか)
スッと右手を掲げ、目の前の女へ狙いを定める。
「『解』」
不可視の斬撃によって女の身体は見事両断――されたはずだった。
「急に斬りかかるとはムードがないね。そんなに待ちきれないのかい?」
けれども彼女の身体には傷ひとつなく、背後のビルが一刀両断されているというのに怯えるどころか驚く素振りもない。どころかケロッとした様子で軽口を叩いてくる。
間違いない。本物だ。
それを感じ取ると同時、宿儺は自然と笑んでいた。
面白い。五条悟以外にも自分を楽しませてくれそうな相手がいたとは予想外だ。
「――名前は?」
「おっと、そういえば自己紹介がまだだったね。九十九由基――特級術師さ」
互いに構えを取り、視線を交わす。静寂が場を包み込む中、二人の術師は距離を縮めた。
拳と拳が触れ合うほどの距離に至ったところで、九十九の拳が放たれた。
「――ッ!」
瞬間、かつてないほどの衝撃。宿儺の身体は大きく吹き飛ばされ、ビルを数棟なぎ倒してようやく制止する。
九十九の術式――『星の怒り』は仮想の質量を付与する。
地球そのもので殴りつけられるような打撃は呪いの王にも有効であった――が、
「やはり一筋縄ではいかないか」
九十九の腕もまた宿儺の術式により手首から先が千切れかかっていた。せめて切断されていなかったのが幸いか、と苦笑交じりに反転術式で治療。回復を待たずして、ビル影から宿儺が姿を現す。
当然と言うべきかあちらも反転術式によって傷の修復は終えている。
「上出来だ。来い、女」
「九十九由基!」
地面が爆ぜるほど強く大地を踏み抜き、一息に距離を詰めて拳の雨を放つ。対する宿儺も仕掛けるがお互い決定打には至らない。
いずれも直撃すれば致命傷となるギリギリの中、知らずのうちに笑みを零す。
(特級というのは伊達ではないようだな)
呪霊同様、呪術師のレベルもピンキリだ。その中でも彼女は極上と言えよう。
優れた術式のみならず徒手格闘のレベルも極めて高い。
否、徒手格闘を主として闘うからこそここまで術式を極めることができたとも言えるだろう。
「だが柔いな」
九十九の術式は自身には適用されない。
それはすなわち、彼女自身の強度までは底上げできないということを意味する。呪力強化によって今はなんとか持ちこたえているがすでに綻びつつあり、身体に無数の傷が刻まれていく。
「~~~~~~~~~~~ッ!」
反転術式を使う暇さえ与えぬ猛攻に、九十九はたまらず臍を嚙んだ。
これでまだ完全に受肉したわけではないというのだからたまったモノじゃない。
――が、
「鳳輪!」
これまで気配を消していた式神の一撃が宿儺の顔面を打ち据えた。
九十九の術式によって相応の質量を付与された一撃は呪いの王さえもぐらつかせ、たたらを踏んだところに彼女の膝蹴りが炸裂する。
「ごはっ!」
トドメとばかりに鉄槌打ちを食らわせ、大きく距離を取る。一気に仕留めたかったが深追いは禁物だ。
反転術式も万能ではない。先ほどのように薄皮一枚でも繋がっていればまだ回復ができるが完全に欠損してしまっては意味をなさなくなる。
鳳輪を鞭のようにしならせ、呼吸を整える九十九――その眼前にて、宿儺がゆるりと身を起こした。
「容赦がないな。小僧がどうなっても構わんのか?」
「必要な犠牲だよ。君を放置している方が危険……だろ?」
五条悟と違い、九十九由基は虎杖の生死に頓着しない。
現在彼の中には十五本の宿儺の指が収められている。ならばここで完全に潰しておけば後の始末が楽だ。
なるほど、と独り言ちる宿儺はコキコキと首を鳴らし、掌印を結ぶ。
それに呼応するが如く九十九もまた掌印を結び、
「「領域展開!」」
互いの身体を中心に展開された領域が押し合いをはじめ、重複し打ち消し合う。
完全呪肉体の宿儺であれば圧倒していただろうが現段階ではほぼ互角――。
その軍配はどちらにも上がることはない。
「ッ!」
互いの領域が弾け、砕けた瞬間九十九は宿儺めがけて駆け出していた。
領域が解除されたことによりお互いの術式は焼き切れている。これは九十九にとってはまたとない好機であった。
「鳳輪!」
式神が宿儺の身体に纏わりつき、その動きを封じる。
術式が付与されていないため押し潰すことはできないが、逆に両断されることもない。
「殴り合いが望みなら付き合ってやろう!」
お互いに術式を失った状態での徒手格闘。
呪力を込めた拳が、蹴りが、互いの身体にめり込んでいく。
当然、反転術式も使えない。純粋な殴り合いの勝負だが、それこそ九十九の望むところであった。
「その首へし折ってやる!」
渾身の力で放たれたハイキックが宿儺のこめかみに炸裂する。脳を揺らされぐらついたのを見逃さず後頭部を掴み、飛びかかる勢いのまま膝蹴りを叩き込んだ。
対する宿儺も痛烈なボディブローを九十九の脇腹へと捻じ込む。衝撃で肉が捻じれ、内臓のいくつかが弾けた。
けれども構わない。攻め手を緩めるどころかさらに過激さを増す女の攻撃に、呪いの王は哄笑を上げた。
「ずいぶん泥臭い戦いが好みのようだな、特級術師!」
「男も戦いも、泥臭いのが上等ってね!」
目にも止まらぬ攻防の中、強者たちはある予感を覚えていた。
――術式が回復しつつある。
九十九にとってそれはある種のデッドラインだ。先に術式を回復されたら打つ手がなくなる。
だが一方で、術式が戻れば勝ち目が戻る。
徒手格闘ではお互いを殺しきれないのがわかっているからこそ、どちらの術式が先に回復するかが鍵だ。
「おぉぉおおッ!」
九十九の拳が宿儺の顎を撃ち抜き、宿儺の蹴りが九十九の腹部に突き刺さった。
悶絶するような痛苦の中、先に顔を上げたのは――宿儺である。
「ゔっ!」
喉輪を掴まれ呻きを上げる九十九。足をバタつかせるが宿儺の身体にダメージは与えられない。
「よくやった。褒めてやる――だが、終わりだ」
九十九の身体に傷が刻まれていき、ついに大量の血が噴き出した。それを浴びる宿儺は勝ち誇った目を向けるがしかし、眼前の九十九は笑みを形作ったままである。
(まさか――ッ!)
違和に気づいた時にはもう遅い。
背後から忍び寄っていた鳳輪の一撃が宿儺の身体を打ち据え、その身体を大きく吹き飛ばした。
「ふぅ……危うく殺されるところだったね」
術式が回復したのはほぼ同時。九十九はあえてブラフをかけ、隙を作ったのである。
とはいえ今のような不意打ちは二度とは通用しまい。反転術式も戻ってしまったため、また千日手に逆戻りだ。
「さぁ、また――泥臭くいこうか」
掌印を結び、領域を展開させる――それは宿儺も同じであったが結果は違った。
宿儺の領域は極めて稀な閉じない領域である。
先ほど九十九とは互角であったが、それは『必殺必中』の条件を与えていたからだ。
しかし今は必殺を抜き、必中の効果のみを領域に与えている。加えて術式の効果にも変更を加えた。
本来ならば領域の条件を変更することなど不可能である。けれども宿儺はその卓越した技量により、それらを可能とした。
結果――必殺を抜いた領域の展開速度は飛躍的に上昇し、領域同士の押し合いにおいて極めて大きなアドバンテージを獲得する。
「――領域展開」
ついに御厨子が現れた瞬間、九十九は戦慄した。
あまりにも悍ましい様相に本能からの忌避感を覚える。いっそこのまま逃げることができたならばどれだけいいことだろう。
だが、その逃げ場があるということさえ宿儺にとっては術式効果の向上に役立てている。その効果範囲は約200メートルという、あまりにも規格外な規模だ。
加えて九十九は領域展開の影響により術式が焼き切れている。呪力によるガードこそできるが絶望的な状況には変わりがなかった。
「そう怯えるな。何も怖がることはない」
宿儺の声はどこか優しげですらあった。
――そう。
本来の御厨子であれば、九十九はとうの昔に粉微塵にされている。本来の効果は生物に対する無限の斬撃であるが今は違う。
否、むしろそこまで効果を削ってようやく領域の押し合いに持ち込めたというべきだろう。その点では九十九の目論見はあながち間違っていたわけではない。
「ッ!」
宿儺の後ろに鎮座する御厨子から一筋の閃光が奔る。
一切の予備動作なく放たれた光速の一撃が九十九の脇腹を掠めた。
「ッ!?!?!?!?!?」
直後、九十九の全身からぶわっと脂汗が噴き出す。身体がバラバラになりそうな衝撃と熱が脳を揺らす中、今にも千切れそうな意識を必死に繋ぎ止め現状を確認する。
(今の、は……ッ!?)
光線が掠めたにもかかわらず脇腹には傷ひとつなく、出血さえも起こっていない。なのにジクジクと激しい疼きと熱ばかりが蓄積され、気を抜いたら一瞬で意識を持っていかれそうになった。
その感覚には、覚えがある。
「イった、のか……?」
信じられないが、それは絶頂の感覚と酷似していた。否、厳密に言えばそれを何千倍にも濃縮したような強烈さである。
身体が熱く火照り、膝がガクガク震えて視界がぼやける。ズボンに広がっていくシミは小水ではなく潮によるモノだ。
「どうした? 具合が悪そうだな」
こちらを見つめる宿儺はニヤニヤと底意地の悪い笑みを浮かべていた。
宿儺の術式は大別すれば『斬撃』に分類される。今回は領域の押し合いに勝つべくいくつかの“縛り”を設けた。
一つ目は斬撃の可視化。光速で放たれるそれを回避できるかは別としてその余地を相手に与えた。
二つ目は対象の指定。本来の御厨子は生物、非生物問わず無差別の斬撃を加えるが今回は女性のみを対象とした。
三つめは術式の解釈。彼はそれを相手の快楽中枢を“焼き切る”ことと定義した。当然、相手を絶頂させること自体は“攻撃”とは認識されない。
女性にのみ有効な可視化された非殺傷性の絶頂光線――ただし、出力は御厨子本来のまま。直撃すればあっという間に快楽中枢を焼き切られ、再起不能に陥るであろう。
「随分と、悪趣味な……ッ!」
毒づく九十九であるが足元がふらつき、涙に潤んだ瞳は揺れている。
小動物が精一杯に威嚇しているような健気な姿に宿儺はニィッと口角を吊り上げた。
「せいぜい足掻け。早々に終わってくれるなよ?」
再び彼が掌印を結ぶと同時、視界を覆い尽くすほど膨大な絶頂光線が九十九めがけて放たれた――。
***
――同時刻。
釘崎野薔薇は渋谷の街を駆けていた。
(ったく、どこにいんのよ!)
戦局は極めて混沌としている。
至る所で戦いが勃発し、下手に近づけばこちらまで巻き添えを喰らいかねない。
誰でもいいから味方と合流するのがベターなのだが釘崎自身索敵能力がそこまで高いわけでもないため、ひとまず手近にある大きな呪力の元に向かっている最中であった。
裏路地を抜け、大通りに出た彼女を迎えたのは真人が放った改造人間たちである。もはや人の名残さえなくしてしまった彼らは釘崎の姿を見るや、肉食獣さながらの勢いで駆けだす。
「いい加減うざったいんだよッ!」
愛用の金槌と釘を構え、改造人間たちめがけ疾駆する。
激突寸前で跳躍し、中空へ釘をばら撒いた。
「死んぎゃぴッ!?」
直後、背後の建物を貫通してきた光線が彼女の脳天に命中した。
自信たっぷりのドヤ顔は一瞬のうちに惨めなアヘ顔へと変化し、潮と鼻血を噴き散らかしてビクッと身体を仰け反らせる。仰け反り過ぎたせいで背骨が完全にへし折れ、尻と後頭部がピタリと引っ付く。
完全に白目を剥いた彼女は、続けざまに放たれた無数の光線の接近にすら気づくことができなかった。
「ぎゃぱぱぎゃばッ♡☆♡☆♡☆♡☆ おぎょぎょッ♡☆♡☆ ぎょへっへぇえええええええええええええええええええええええええええええええええッ♡☆♡☆♡☆♡☆」
格子状の光線に全身を貫かれ、馬鹿のような断末魔を上げる。過剰な快感を与えられた心臓は停止し、血液が一気に沸騰した。ショーツを貫通する勢いで潮が噴き上がり、陰核と乳頭が通常の五倍ほどにまで膨れ上がる。
彼女がこれまで経験した何よりも強烈な快感が全身を暴れまわり、文字通り細胞を沸騰させた。
「ぶぎゃッ♡」
如何なる原理であろうか。
絶頂光線に貫かれた釘崎の身体は水風船のごとく四散し、跡形もなく消し飛んだ。唯一残された愛液まみれのショーツのみがひら、ひらと改造人間の頭上へ舞い落ちる。
彼女の死因は絶頂死。人外の法悦を与えられたことによるデスアクメ。
お涙頂戴の走馬灯を見る暇さえなく、釘崎野薔薇は絶命した。
そしてその犠牲者は彼女のみではない。
「ぴぎゅぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ♡♡♡♡♡♡」
かつて釘崎野薔薇が憧れ慕った沙織もまた、絶頂光線の餌食となった。
縛りを加えたことによって範囲の拡大された御厨子は彼女のいるビルさえも呑みこんだ。
「おほッ♡ お゛ッ♡ う゛ほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ♡♡♡♡♡♡♡♡」
気品の欠片もない嬌声を響かせた沙織は全身をピーンッと突っ張り、天井に潮を叩きつけた末に破裂した。最後に感じたのが苦痛ではなく快感であったことだけが唯一の救いかもしれない。
彼女に続けてオフィスにいた女たちも次々と破裂していく。けたたましい嬌声を上げた末に盛大な破裂音を響かせる様はさながら愉快なオーケストラだ。
御厨子から放たれる絶頂光線は呪術師のみならず一般人にまでその被害を及ぼす。これでも本来の性能を考えれば“まだ”マシな被害と言えた。
「お゛っぎょぉへえぇえええええええええええええええええええッ♡♡♡♡」
「ん゛に゛ゃぴぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ♡♡♡♡」
「あ゛ばぎゃばばッ♡♡♡♡ ほっひょぉおおおおおおおおおおッ♡♡♡♡」
光線に貫かれ、次々と破裂していく女たち。
すさまじい快楽によって脳が一瞬のうちに焼き切られ、忘我の絶頂に導かれながら逝く。
それは一般人のみならず呪術師も同様であった。
「ひ、ひぃッ! あ、掠っ――ほびょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ♡♡♡♡」
「い、いやぁッ! こんな死に方――う゛ほッ♡♡♡♡ う゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ッ♡♡♡♡」
「だすげでぇッ! だすげべぎゃばばばばあっばばばばばばあばッ♡♡♡♡」
およそ人のモノとは思えぬ断末魔を上げ、惨めに泣き喚きながら逝きくたばる。
相対していた呪霊たちは目の前で弾けていく女たちを見てゲラゲラと哄笑を上げ、血だまりを舐め啜った。
ただでさえ反応するのが難しい速度である上に、建物を貫通してくるため出所を掴みづらい。簡易領域でも展開できれば多少は抵抗ができたであろうが因習蔓延る呪術界において半ば門外不出とされている技術を習得している者たちは極めて少なく、多くの呪術師たちが無惨な末路を迎えた。
それは、歴戦の呪術師であっても変わらない。
「――あ」
家入硝子。
夏油と五条の同期であり、反転術式の扱いにおいては他の追随を許さぬ天才。
後方にて負傷者の手当てに当たっていた彼女もまた、光線の餌食となった。
――ただ。
生来の呪力量の差であろうか。直撃してすぐに破裂することはない。
「硝子さ――あ゛ッ♡♡♡♡ ん゛ぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッぐぅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううッ♡♡♡♡ お゛ほッ♡♡♡♡ ほッ♡♡♡♡ お゛っぎゃッ♡♡♡♡」
彼女に治療されている最中であった新田明は死にかけのセミよろしく施術台の上で転げまわり、身体中の水分全てを出さんばかりの潮を撒き散らして爆発四散としたというのに。
当の硝子は返り血を浴びてなお、ぼんやりとどこかを眺めていた。咥えていた煙草がぽろりと零れ、ジュッと地面に焼け跡を残す。
直後、地面を穿つほどの勢いで放たれた潮が煙草の火を消した。
「ぽへッ☆」
気だるげな目が無様な白目へと変化したのも束の間、追い打ちとばかりに無数の光線が彼女の五体を斬り刻む。
反転術式など行使する時間さえなく、彼女の脳は一瞬で融解した。
「びゅっぶぅううううううううううううううううううううううッ♡♡♡♡ ぶっ♡☆♡☆ ぶっしゃぁああああああああああああああああああああああああああああああッ♡♡♡♡」
惨めに腰をカクつかせ、ブシャブシャと潮を撒き散らす硝子。制御を失った四肢は勝手に暴れ始め、ガニ股と呼ぶことさえ烏滸がましい無様なポーズを晒しながら快感を訴えるように地団太を踏む。
狂ったように髪を掻き毟り、涙と鼻水を垂れ流して悶え喘ぐ。
未だ生き汚く原型を留める彼女に痺れを切らしたが如く、極大の光線が彼女の身体を包み込んだ。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆」
悲鳴など上げる余地さえない。
絶頂に次ぐ絶頂により、彼女はすべての感覚を忘却の彼方へ追いやった。
やがて光線が止んだ時すでに彼女の姿はそこになく、四散した衣服と大きな血だまりが広がっていた。
そして、施術室の壁――ちょうど彼女の正面側に、奇妙なシミが残されている。
ガニ股のまま両手でピースサインを形作っているそれはどこか硝子に似ていた。
後日施術室が解体される際、どこからか女の悲鳴が聞こえたという噂が工事業者の間で囁かれることになるがそれはまた別のお話――。
***
「ねぇ、ちょっと! 何アレ!?」
家入硝子が無様な死に様を遂げたのとほぼ同時刻。
呪術高専、京都校の面々は宙に奔る無数の光線を目撃した。
アレも誰かの術式だろうか。いや、それにしては規模が大きすぎる。
そんな考察の余地さえ惜しいとばかりに歌姫と三輪はそれぞれ簡易領域を展開させた。回避するのは難しいが簡易領域による中和ならば多少は持ちこたえることができる。
――が、
「んぎっひッ♡☆♡☆」
矢継ぎ早に放たれてくる光線によって簡易領域は瞬く間に削られていき、ついに三輪の脚を光線が掠めた。
末端部分であったにもかかわらず彼女はただそれだけで絶頂を覚え、その場に膝をついてしまう。
「三輪!」
簡易領域の展開には相当の集中力を必要とする。絶頂によって脳を揺らされた彼女は簡易領域を解いてしまい、無防備な姿を晒してしまった。
しかし彼女の背後にいた西宮がその首根っこを掴み、愛用の箒に跨って宙を舞う。その場にとどまっているよりは幾分賢明な判断だったであろう。
しかし“高速”が“光速”に勝てる道理はなく、回避することさえできないまま光線に穿たれる。
「ぎょぱッ♡」
かわいさを身上とする西宮の口からかわいさからは遠くかけ離れた呻きが漏れた。
白目を剥き、大きく口を開いた間抜け面を晒した西宮の正中線を切り裂くように光線が透過する。
「あひぃぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ♡☆♡☆」
歯を食いしばり、口端から泡を吹きながら絶叫する。箒に深く腰を落として股座を執拗に擦りつけ、栓の壊れた蛇口のように潮を撒き散らした。
その拍子に抱えていた三輪を取りこぼしてしまうが当人は気づく素振りさえ見せない。
「ちゅぴぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいんッ♡☆♡☆」
ゲームの効果音じみた甲高い嬌声。
それが西宮が残した最後の言葉であった。
盛大な肉花火が打ち上がり、千切れ剥がれた顔の皮がひらひらと宙を舞う。それは見る者全員腹を抱えて笑い出してしまうような、アホの極みとでも呼ぶべき惨めなアヘ顔であった。
「あぎょッ♡☆♡☆ ぴょほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ♡☆♡☆」
箒から落下し、宙に投げ出された三輪もまた光線の餌食となった。脳天から股間まで一直線に貫かれた彼女はピンッと気をつけの姿勢を取ったかと思うと次の瞬間にはみっともないガニ股を晒し、最期のアクメと共に潮花火を打ち上げる。
「ふんぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎッ♡☆♡☆ べへえぇえええええええええええええええええええええええええッ♡☆♡☆」
獣の唸り声じみた嬌声を響かせた後、パンッと小気味よく弾け飛んだ。
呆気に取られる歌姫たちの眼前にべちゃべちゃと汚らしい音を立てて肉片が落ちていき、雨のように血潮が降り注ぐ。
後悔と無力感に打ちひしがれる歌姫とは対照的に、真依は普段の気丈さすらなくすほどにただただ怯えていた。歌姫や三輪と違い、彼女は領域対策を何一つ習得していない。仮に歌姫が制御を誤れば自分も三輪の二の舞になるであろう。
「ヒッ!?」
あまりの恐怖からか失禁に至り、ただ茫然としている真依であったが眼前に落ちてきた肉片を前にギョッと目を見開いた。
扁平な形をしたそれは、三輪の舌であった。それがビチビチと陸に打ち上げられた魚のように地面の上を跳ねまわっている。
あまりにも悪趣味で、あまりにも現実離れした光景。人外の法悦を与えられた結果、彼女の身体は全身の細胞で快楽を享受していた。
「真依!」
歌姫から声をかけられ、ハッと我に返る。だが彼女もすでに限界は近い。
簡易領域は見る見るうちに削られ、呪力量も目に見えて減っていく。けれども最後に残った教え子を守ろうとする彼女の姿は真依の目にはひどく眩しく映った。
乱れ、崩れかけていた心が均衡を取り戻していく。もう自分たちは助からない。けれども彼女の生徒であったことを心の底から誇りに思う。
だからせめて感謝を伝えねば。頬を引き攣らせながらも精一杯の笑顔を作り、自分は貴女に出会えてよかったと――。
「ぴぎょあばばッ♡☆♡☆」
「へ?」
しかし、口を開くよりも先に簡易領域の方が先に消えた。
頭を光線に貫かれた歌姫は馬鹿のような雄たけびを上げ、母乳を撒き散らしてイき狂う。瞳は完全に裏返り、大きく開いた口から舌をだらりと垂らした無様な顔を教え子に晒した。
「ほぎょッ♡☆♡☆ ギョッ♡☆♡☆ ギョぎょぉおおおおおおおおおッ♡☆♡☆」
続けて三本の光線に頭蓋を貫かれた彼女はバタバタと四肢をバタつかせ、股間を掻き毟りながら絶頂した。指の隙間から大量の潮を飛沫かせ、滂沱の涙を流してよがり狂う。
ついにその動きが止んだと思った時、彼女の耳と鼻から煙が上がった。脳味噌を完全に焼き切られ、両手をだらんと垂らしたガニ股の姿勢のまま硬直する。
何かの冗談だろう――と真依が震える指先で触れた直後、
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡☆♡☆」
限界寸前まで膨張した水風船のごとく、勢いよく破裂した。
美しい顔も。均整の取れた四肢も。全てが肉片と成り果て辺りに飛び散る。
唯一形を保ったままであった子宮だけは真依の眼前に転がり落ち、本気汁をぶしゃぶしゃと噴き出しのたうっていた。“それ”が恩師の成れの果てであると理解するよりも横薙ぎの光線が真依の首を払った。
「――ぴひょッ♡」
絶望する余地など与えられない。忘我の絶頂へと一瞬で導かれ、思考がまっさらに漂白される。
「おりょろろろろろろッ♡☆♡☆ きゅひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ♡☆♡☆」
これまでの犠牲者同様、真依もイく狂った末に破裂した。
けれども一点を貫かれたのではなく横から薙がれたせいか、胴体のみが破裂して頭部が宙へと打ち上がる。
「あぎひゃッ♡☆♡☆ あひゃッ♡☆♡☆ アヒャヒャヒャヒャッ♡☆♡☆」
そんな状態でも彼女はイき続けていた。絶えず送り込まれる膨大な快感を処理しようとフル稼働する脳によって強制的な絶頂地獄を味わわされる。
普通の人間であればショック死していてもおかしくない状態であるが今の彼女を支配しているのはとてつもない多幸感と充足感であり、痛みは一切感じていない。それは他の犠牲者たちも同様と言える。
さながら全身の細胞すべてがアクメをするような快感は、およそ人が耐えられるモノではなかった。
「あっぴょッ♡☆♡☆」
ほどなくして、生首も同様に弾け飛んだ。より正確に言うのであれば顔の上半分。
残された下顎は未だ喘ぐようにカクカクと動き、舌がべろべろと宙を掻く。それはさながら悪趣味なB級映画の一場面であり、仮に劇場公開されたならばたちまち場内は笑いの渦に包まれたであろう。
禪院家の恥。真希の出涸らし。
そう呼ばれ続けた彼女は死してなおも人からの嘲笑を集めるのだった――。
***
(……真依?)
血を分けた双子だからだろう。
真希だけは真依に起こった異変を肌で感じていた。
(……死んだのか)
呪術師の家系に生まれた以上、こうなることは予期できた。
しかし覚悟はできていなかった。
彼女はなんだかんだ自分よりも世渡りが上手であるし、頼りになる仲間たちもいる。だからきっと大丈夫だろうと心のどこかで思っていた。
けれども現実は残酷だ。片割れの死に涙が溢れ、身体がぶるぶると怒りに震える。
真希も継承ではない。漏瑚と会敵し、燃やされ、全身に重度の火傷を負っている。
本来なら立ち上がることさえ不可能だったはずだが、妹を失った悲しみはそれを凌駕した。震える身体に喝を入れ、よろめきながらも立ち上がる。
「……ッ!」
彼女の目には強い怒りと決意が滲んでいた。壁に手を突き、足を引きずりながらも前に進む。
この状況で何ができるかはわからない。だが、進み続けることが遺された者の使命であると考えた。
「あ゛ッ☆」
そんな決意など知ったことかとばかりに、無常なる一撃が彼女を貫く。
ちょうど手を突いていた壁を貫通してきた光線はものの見事に彼女の陰核を穿ち、続けて乳頭を狙い撃った。
「お゛っほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ♡☆♡☆」
ゴリラもかくやの嬌声を上げた真希は身体の痛みさえも忘れ、腰をヘコへコ激しく揺すって雄たけびを上げた。寄り目がちになり、唇を尖らせる彼女の乳頭と陰核は異常なまでの勃起を見せる。
絶頂光線にピンポイントで撃たれたからであろう。平時の五倍ほどは膨らんだそれらは服の上からでもわかるほどにハッキリと屹立し、陰核に至ってはショーツを突き破り逸物のような姿を晒す。
無論、宿儺が狙ってやったわけではない。ただ彼女の運がとことん悪かった結果起こった悲劇――もとい喜劇だ。
「ゔぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ッ♡☆♡☆ やっべッ♡☆♡☆ ほッ♡☆♡☆ ほぉ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~んッ♡☆♡☆」
彼女はほとんど呪力を持たない代わりに他の人間に比べると幾分頑強だ。本来ならとうに爆発四散していてもおかしくはないのだが未だ原型を留めており、それが更なる悲劇を生む。
「ぎゃひッ♡☆♡☆ ひっぎゅぅ゛う゛う゛う゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ッ♡☆♡☆」
立て続けに放たれた光線が執拗に陰核と乳頭を刺し貫く。ただでさえ女にとっては急所とでも呼ぶべき場所であるのに強烈な絶頂光線に晒されればもはやひとたまりもない。
脳内でバチバチと火花が弾け、ついには鼻血さえも噴き出す。無駄に頑丈であったのが災いし、死ぬことはおろか気絶することさえ許されない。
「おぎょぎゃぎゅぎょごごごごごごっごおごごごごごごがおがががッ♡☆♡☆」
意味のある言葉を発することさえできなくなった彼女はその場でひっくり返り、後頭部を強かに地面に撃ちつけた。けれども快感は薄れるどころかますます強まっていくばかりであり、ついにはブリッジのような体勢のまま口から泡を吹いてのたうち回る。
幾重もの絶頂光線にやられた乳首と乳頭は膨張し、陰核さながらの姿となってぶるんぶるんと暴れまわる。元々豊満であったバストも大きく肥大化し、メートル越えの爆乳がばるんばるんと揺れ跳ねた。
「何アレキモあじゃぱッ♡☆♡☆」
その様をたまたま目撃した呪詛師――菅田真奈美が一瞬で肉花火に化したにもかかわらず、真希は今なおイき続けている。人間失格のオホ声を上げ、カサカサとゴキブリのように四肢をバタつかせながら爆乳と逸物さながらの陰核と乳頭を振り乱す。
妹同様ギネス級の無様を晒す真希であったが、本番はここからだ。
「あっぎゃッ♡☆♡☆ がぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ♡☆♡☆」
いくら頑丈とはいえ流石に限度がある。
追い打ちの一撃によって限界を迎えた彼女の全細胞は沸騰――その結果、その身体が激しく燃え盛り始めた。
「あぎゃぢぢぢぢぃいいいいいいいいいいいいいいいいいッ♡☆♡☆ イぎぴちぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ♡☆♡☆」
漏瑚に燃やされた時以上に派手な炎。身体を炎に包まれ、酸欠に苛まれながらもその苦しささえ快楽に変換されていく。
身体全てが比喩表現なく燃えるように熱く、身体の芯から熱が込み上げてくる。なまじ頑丈であったせいで絶頂時の何億倍にも及ぶ快感に苛まれることとなった。
「ぽひぇぇ……ッ☆」
その姿を例えるならばまさしく線香花火。
一瞬の輝きを見せた彼女は程なくして消し炭となり、一切の痕跡を残すことなく消えていく。
――否。彼女の最期を捉えている者はいた。
術式の対象外であったため無事であった民間人の男はその一部始終を動画に収めており、それは後にネットの海へばら撒かれそのあまりの無様さとキモさ、淫猥さに一部界隈から熱狂的な指示を受けることになる。
なお、真依の最期も別の男によって撮影され時を同じくしてネットにばらまかれたことにより、奇しくも禪院姉妹がネットの玩具兼ズリネタとして消費されることになるのだがそれはまた別のお話――。
***
――この時点で渋谷にいた女たちのほとんどが死亡した。いずれも惨めな最期を迎え、人として完全に終わっている醜態を晒した。
とはいえ彼女らのほとんどは一般人や有象無象の呪術師。領域対策を学んでいる者や卓越したフィジカルを持ち得る者ならば問題ない。
……などということは特になく、
「ッ♡♡♡♡」
如何なる強者でも不意を突かれれば手の打ちようがない。
背後から放たれた極大の絶頂光線に頭蓋を撃ち抜かれた冥冥はその場でビクッと身体を震わせ、沈黙した。ほんの数秒ほどの出来事であったが彼女の顔からは余裕が消え失せ、全身から力が抜けていく。
「姉様!」
咄嗟に憂憂が彼女の身体に布をかぶせ、術式を起動させる。
その光景を撮影していた者もいたが少なくとも彼女の痴態が晒されることはなかった。
「姉様! ご無事ですか!」
一方、術式によって事前にマーキングしておいたクアラルンプールのホテルに到着した憂憂は血相を変えて冥冥に詰め寄った。普段の理知的な表情はどこへやら、ポカンと口を開けている彼女はヒッと口を引き攣らせ、
「ンひぃぇやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ♡☆♡☆」
この世のモノとは思えぬ絶叫を上げ、ベッドの上にひっくり返った。
ガリガリと頭を掻き毟り、ジタバタと脚を暴れさせて潮と小便を撒き散らす。仰け反り過ぎて身体の関節が外れ、骨が折れるボキボキという音がスウィートルームに木霊する。
「姉様! 姉様!」
憂憂はひたすら声をかけ続けるが効果はない。
いつも頼もしい姿を見せてくれる姉は恥も外聞もかなぐり捨てたみっともない断末魔を響かせ、
「ぎゅぴッ♡☆♡☆」
バウンッとベッドのスプリングに合わせて飛び上がり、ベッド脇にべちゃっと倒れ込むなり動かなくなった。慌てて抱き起こした憂憂の目に映りこんできたのは至上の快楽を味わい、滂沱の涙を流す姉の顔。
理性はおろか知性も捨てただらしのないアヘ顔を晒す彼女の鼻から、何やらどろりとしたモノが溢れだした。
黄土色をしたそれは鼻水ではなく、融解した脳味噌だ。えへ、えへと心地よさげな呻きを上げるに合わせてぶぴゅぶぴゅと鼻から溢れだしてくる。
やがて完全に脳味噌が出尽くすと、それまでの無様顔が嘘のように冥冥の顔はスン……ッと無表情になった。端から見れば正気に戻ったように思われるだろうが彼女はもう絶命している。
「ねえ、さま……?」
戸惑いがちに触れる。反応はない。
温かであった身体が冷えていき、汗が引いていく。
彼女の命が終わったことを悟った憂憂は絶望の表情を浮かべながらも、股間をいきり立たせていた。
大好きな姉。何よりも大切だった姉。自分を教え導いてくれた偉大な姉。
彼女の喪失は自己の喪失に等しい。がくりと膝をついた憂憂は、やがて彼女の肌へ手を振れる。
「姉様……」
返事はない。だが、彼女の身体はまだ柔らかであった。
もはや正常な判断などできるはずもなくなったしまって憂憂が一線を越えてしまうのもまた道理である。ズボンを脱ぎ捨て、逸物を晒した彼はくぱくぱと開閉を繰り返す割れ目に挿入した。
「あ、あぁ……ッ!」
彼女は死んだ。けれどその肉体は今なお男を求めて蠢き貪る。
文字通り脳味噌空っぽの肉オナホに成り果てた冥冥を相手に、憂憂は涙ながらに腰を振る。
それは歪であるが確かなる姉弟愛を感じさせる交わりであった。
――そして冥冥が命を終えたのとほぼ同時。
「ヒュッ♡」
領域の只中にあった裏梅もまた、絶頂光線に撃たれていた。
宿儺の懐刀であった彼女は領域の範囲についてもキチンと把握はしている。故に今回も十分な距離を取っていたのだが、宿儺が領域の範囲を変更したことが完全に裏目に出てしまった。
胸を貫かれた彼女は一瞬で絶頂に導かれ自らの失策を悟ると同時、簡易領域を展開しようとしたが快楽で茹った脳は上手く働かない。
「ぷぎゃぎゃッ♡☆♡☆」
結果、縦横無尽に奔る絶頂光線によって身体を滅茶苦茶に切り裂かれた。
宿儺が本来の術式を使っていれば今頃輪切りにされていたに違いない。けれども今回は様子が違った。
「あ、あぁ……あ゛あ゛ッ、あ゛ッ♡☆♡☆」
輪切りにされた部分から途轍もない快感が伝わってくる。いっそこのまま素直に輪切りにされていれば楽だったであろうがそんな生易しいことは許されない。
「あ゛ゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔッ♡☆♡☆」
身体を引き攣らせ、目を白黒させる裏梅。
彼女の実力は特級に位置するが、だからといってこの快感に抗えるわけがない。
「ぎゅぎゅぐぅううううううううううううううううううううううううッ♡☆♡☆」
おそらく無意識であろう。
身体の内で暴れる快感を収めようと術式を展開し、彼女の身体が霜に覆われていく。
なるほど。それは確かに有効な手段であった。
凍結――それは言ってしまえば分子の停止を意味する。今まさに沸騰しようとしている細胞を抑え込む手段としては最適といっても過言ではない。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡☆♡☆」
結果としてそれは成功だった。
全身が凍結していくにつれ快感が引いていく。身体の芯で暴れていた熱が冷やされていき、徐々に思考も落ち着いていく。
後数分もすれば彼女は何事もなく戦線に復帰できていただろう。
が、
「あ゛ッ♡」
一筋の閃光が心の臓を貫いた瞬間、彼女の時間は止まった。
凍結が進行していき、ついには完全なる氷像と成り果てる。
全身の細胞――血液や内臓さえも完全に凍った。
しかし唯一生身であった脳は快感を受信してしまっている。その行き場が例え、脆く儚い氷の身体であるとしても絶頂のシグナルを出さずにはいられない。
「――ッ☆」
氷の身体にひび割れが入ったのも束の間、裏梅の身体は跡形もなく爆散した。他の者たちが醜く汚い肉花火と化したのを考えれば氷雪を舞い散らせる彼女の最期は幾分儚く、美しいものであったと言えるかもしれない。
もっとも生身である脳味噌だけは剥き出しの状態で打ち上げられ、そのまま地面にべちゃりと着地する。未だ快楽の信号を出し続けているそれはビクビクと蠢いていたが、続けて放たれた光線によって完全にトドメを刺され飛び散った。
これで渋谷の女たちはほぼ全滅――後に残るは九十九由基のみである。
「おぉッ!」
宿儺との戦闘開始から十分が経過して、彼女はなお致命傷を避けていた。
領域の押し合いに負けたものの簡易領域を展開して凌ぎ、領域が回復してからは鳳輪を中心とした戦術に組み替えた。御厨子の効果は強力であるが無生物には有効であるため術式を付与した鳳輪ならば対抗は可能だ。
実質的な二対一であるからこそ宿儺の猛攻にも耐えることができている。
「中々だぞ、女。ここまで粘るとは正直驚きだ」
対する宿儺も負けてはいない。鳳輪の一撃は確かに驚異的だが当たりさえしなければどうということはなく、九十九自身は簡易領域の展開で手いっぱいのため自ら攻めてくることはない。
正直、彼女が特級と呼ばれるのも納得の強さであった。五条悟とはまた別ベクトルの強者である。
「……とはいえ、少し飽いたな」
「おや、そうかい? なら終わらせてあげるよ!」
鳳輪が唸りを上げて宿儺の元へ強襲する。仮に直撃したならば首と胴体が泣き別れになっていただろう。
が、攻撃パターンをとうに見切っていた宿儺はその場で跳躍すると鳳輪を力任せに殴りつける。地面にめり込み動きが止まったのを見逃さず、連撃を叩き込み完全にトドメを刺した。
「さて――次はどうする?」
これにより、九十九は攻撃手段を失った。後はじわじわと嬲り殺しにするのみ。
だが、宿儺はひとつだけ大きな勘違いをしている。
それは彼女が術死の中でも飛びきり“イカレている”ことだ。
「ッ!?」
脱兎のごとく駆けだしてきた九十九に思わず目を剥く。
簡易領域は展開したままであるが着実に削られていく。ただの斬撃ならば呪力で防御もできるし反転術式で回復もできるが快感には適用されない。
(それがわからぬ馬鹿ではあるまいに!)
口端を歪ませるのと同時、脇腹に衝撃が走る。術式によって質量を付与された一撃により宿儺の身体は大きく吹き飛び、建物にめり込んだ。
回復をする間もなく飛び込んできた九十九の蹴りが顔面に炸裂する。しかし咄嗟に足首を掴み、そのまま力任せに振り抜いて地面にたたきつけた。
顔面から激突した九十九は呻き声すらあげずに唇を舐め、身体を捻って回避を選択。
「お゛ぅ゛ッ♡」
しかし簡易領域が綻んだ結果、光線が脚を掠めた。
その絶頂は彼女が想定するよりもはるかに重く、深い。
(しま……ッ! 呪力が……ッ)
簡易領域の展開には相当の集中力を要する。絶頂で火照った脳ではまともに呪力を練ることさえできない。
回避を試みようとするもここはすでに宿儺の領域内だ。必中の効果が付与された術式は無慈悲にも彼女の身体を穿ち貫く。
「お゛っごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ♡☆♡☆」
駆けだそうとしていた彼女はもんどりうって倒れ、顔面から勢いよくスライディングした。尻を高く掲げたままの無様な姿勢のまま潮を噴きだす姿を前に、宿儺の口から哄笑が上がる。
それでも彼女は立ち上がろうとしていたが――
「頭が高いぞ。ひれ伏せ」
「ッ♡☆♡☆」
頭を踏みつけられ、そのままの姿勢でジタバタともがき苦しむ。そうしている間にも光線は彼女の身体を貫いていき、とてつもないほどの快楽を強制的に与えてきた。
やがて完全に動きが止まった時、彼女は完全に失神していた。強烈な絶頂によって脳味噌をやられ、呪力を練ることができなくなったがために反転術式も使えない。
否、仮に使えたとしても快楽は治癒できないので意味はない。最後に残しておいたはずの自爆技すら、この状況では使用することさえもできなかった。
「それなりには楽しめたな……まぁ聞こえてはいないか」
宿儺はかつてないほどに高揚していた。
自分に比肩するほどの術師を見る機会などそうそうない。
こちらが万全の状態ではなかったとはいえこれまで戦ってきた者たちの中では上澄みの部類だ。
しかし彼女は敗北した。ならばやることは決まっている。
「起きろ、女」
「ぐへげッ♡☆♡☆ おぼっ、ぶぇええええッ♡☆♡☆」
腹部を蹴り上げられ、九十九の意識は一気に覚醒した。それと同時蓄積されていた快感が押し寄せてきて脳を焼く。
悶える間もなく宿儺に抱き上げられ、衣服を剥ぎ取られた。鋭敏化した肌は風が撫でる感覚だけでも容易くイってしまう。
そんな彼女を前に、宿儺は口端を不敵に歪めた。
「今からちょっとしたゲームをしよう。なに、単純だ。お前が絶頂する度、手足を一本ずつ斬り落とす」
「な゛、は……ぁ゛ッ♡」
「おいおい。まだ始まってもいないのにイくな。少しは我慢してみせろ」
それが到底無理なことを宿儺自身も理解していた。
要は自分を辱めたいのだ。その狙いを読み取った九十九は精一杯の強がりを見せ、ふんと鼻を鳴らしてみせる。
「まぁいい。せいぜい楽しませろよ」
そう呟き、怒張した逸物を彼女の中へ埋没させた。
彼女の意志はともかく、身体はすでに男の身体へ恭順を示している。肉襞は挿入と同時に蠢いて逸物へと絡みつき、射精をねだるように蠕動を繰り返した。
「ハハッ。なんだ、もうイったのか?」
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡」
仮に口を開いたならば嬌声が溢れ出していただろう。
ビクビクと悶える九十九をよそに宿儺はフンッと鼻を鳴らし、彼女の右腕へ触れる。
「お゛ッ♡」
直後、その腕がミリ単位の肉片へと分解された。
本来なら痛みで絶叫していてもおかしくはないが今の彼女はあらゆる感覚が快楽へ変換されてしまう。
「ふぎッ♡ イ゛ッ、ぎッ♡」
そのため、腕を斬られただけでもイってしまった。流石にこれは予想外であったのかさしもの宿儺もはぁ、とため息をつく。
「耐えろと言ったのが聞こえなかったか?」
続いて右足も粉微塵にされた。
にもかかわらず感じるのは激痛ではなく途轍もない快感であり、彼女はもう逃れることのできない絶頂の渦へと呑み込まれてしまっている。
「あ゛ッ♡ あ゛ッ♡ あ゛ーッ♡ あ゛ーッ♡」
もう強がりを口にすることさえできない。されるがままに弄ばれ、惨めに泣き叫ぶことしか許されない。
「も゛ッ♡ やべッ♡ お゛ッ♡」
ついには命乞いさえ始めた彼女に宿儺は完全に興味を失った様子でため息をつき、左腕を消し飛ばした。性懲りもなくイったのを見て左足も同様に斬り刻む。
――と、ここまで来ると嗜虐心がくすぐられた。次は何をしてやろうかと邪な考えが浮かび、それが最悪の結果となって出力される。
「……へぁ?」
宿儺の指が九十九の胸に触れた。より正確に言うのであれば乳頭に。
彼が何を考えているのか理解した瞬間、ゾッと怖気が込み上げてきた。
「や――ぴぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆」
右の乳頭をピンと指で弾かれ――粉微塵にされる。
痛いはずなのに。苦しいはずなのに。気持ちよくて仕方がない。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ひゃぁああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ッ♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆」
左の乳頭も。陰核さえも。
欠損していく感覚が心地よくてたまらない。
身体を削られていく度快感が強まってきて、涙と汗が止まらず湧き出てくる。
身体がバラバラになりそうな快感に支配され、汗ばんだ肢体が勝手に弾む。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ♡☆♡☆ イ゛ぐイ゛ぐイ゛ぐイ゛イ゛ぐイ゛イ゛ぐイ゛ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ♡☆♡☆」
胎の中に灼熱を注がれるとたちまち絶頂し、舌を突き出し身体を仰け反らせた。
もはや数え切れぬほどの絶頂を重ねているが彼女の身体はもう完全に制御を失っている。
四肢を奪われ、陰核と乳頭を削り取られてなお絶頂するその姿は淫売の極みだ。快楽の奴隷へと成り果てた彼女に射精を果たした宿儺は満足げに息を吐くとその身体を持ち上げ、天高く放り投げる。
無論、肉芋虫状態の彼女がここから助かる道理はない。
「ぐぎゅべッ♡☆♡☆」
べちゃっと汚らしい音を立てて着地した彼女はそれでもなお生きていた。地面に潮だまりが広がっていき、くぐもった呻きが漏れる。
ここまで来るともうこの先はない。始末しようと手を伸ばすが――当の彼女は生き汚くも這って逃げようとしていた。
涙を湛えた瞳には怯えが広がり、歯をガチガチと打ち合わせて身体を震わせている。
特級呪術師としての矜持などもう何の意味もない。彼女に残されているのはただただ純然なる恐怖のみ。
自らを虐げる圧倒的な強者への畏怖。彼女の心は完全に折られていた。
無理もない。常人ならば発狂するほどの快楽を立て続けに味わわされたのだ。いくら精強な呪術師といえど――否、精強であるからこそその自負が打ち砕かれた時のショックは計り知れない。
「ひっぐッ♡ お゛ッ♡ お゛あ゛ゔッ♡」
そんな彼女の事情など知ったことかと手を掲げる宿儺。
死の予兆を感じ取った九十九は涙を流しながらも逃げようと試みるがすでに遅い。
「――ッ♡」
一ミクロンほどの隙間も空けずに放たれた無数の絶頂光線が彼女を打ち据えた。
まるで時間が止まったかのように静かになるが――
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆」
およそこの世のモノとは思えぬ絶叫を上げ、九十九は激しく地面の上を暴れ回った。
自らが広げた潮だまりの上を転げまわり、血飛沫と潮を噴き上げながらイき狂う。表情は完全に崩れきり、滂沱の涙を流しながらひたすらよがる。
それは普段の彼女からはあまりにもかけ離れた痴態であったがそれを自覚したとてもはやどうしようもなかった。
「ぎょッ♡☆♡☆」
しばし暴れまわった後ビクッと身体を跳ね上げ、エビのように身体を仰け反らせたままピタリと制止する。ブシャッと鼻から溶けた脳味噌が噴水のように噴き上がり、食いしばった歯が無惨な音を立てて砕け散った。
「ぷぇ……ッ♡☆♡☆」
笑いを堪えきれない宿儺の前で彼女は気の抜けた声を漏らし、
「イ゛ん゛ん゛ん゛ん゛ぎゅぅうぅうぅぅぉぉぉぉぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ッ♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆♡☆」
喉が張り裂けるほどの断末魔を残し、景気よく破裂した。
細胞の一片さえも残さぬ爆死に、宿儺はたまらず腹を抱えて笑った。
女の末路としてこれほど惨めなこともあるまい。今後百年くらいはこのネタを擦って笑えそうだ。
「む」
ふと、酩酊にも似た感覚を覚える。どうやら時間切れのようだ。
「――悔い改めろよ、小僧」
これはお前のせいなのだぞ、と。呪いの言葉を吐き捨てて意識の底へ沈んでいく。
「う、おぇぇッ!」
意識を取り戻すと同時、虎杖はその場で嘔吐した。
宿儺の中で眠っていた時からずっとこの惨劇を眺めていた。自らの不慮のせいで大勢の犠牲者を出してしまった。
どれだけ後悔しようとももはや取り戻せない。死んだ人間は返ってこない。
「オェッ! げぇ、げぇええ……ッ」
胃の中が空っぽになっても胃液だけは込み上げてくる。瞼に焼きついた九十九の死に様が目から離れない。
あんな死に方があっていいものか。
人として――女としての尊厳を踏みにじられた末の死。
そしてきっと、それは彼女だけではない。渋谷にいたすべての女たちが同様の死を遂げたはずだ。
ただ即死するよりももっと救いがない。その事実が一層虎杖の心を苛んでいく。
――しかし、彼の逸物は今なお屹立していた。嫌悪感に塗れ、無力感に打ちひしがれながらも男としての本能は彼女らの散り様に反応してしまう。
後に渋谷に居合わせた男たちによって女たちが如何なる死に様を遂げたのかがネットに流されることになるが、それはまだ誰も知らない――。