ワコール社の「ゴールデンプロポーション」理論をつかって、身長からアンダーバスト値を算出する。そして算出したアンダーバスト値を元にカップサイズを推測する、というカップサイズ算出方法がネットで散見される。
身長とアンダーバストは相関しておらず、身長から推定アンダーバストを算出するのは無理がある。そして理想の身長とアンダーバスト比の算出方法は、曖昧な部分が残されている。
私の調査不足かもしれないが、中野廣『年代別体型特徴とビューティフ ル・プロポーション』には、一般大衆の希望像と過去のプロポーション論を参考にしたことが書かれている。しかしゴールデンプロポーションが設定された1979年の一般大衆の希望像と現代の希望像は一致するとは限らないし、過去のプロポーション論とは具体的に何かはわからない。そのうえで微調整がされているが、この調整も何かよくわからないのである。そもそもゴールデンプロポーションは1979年当時のもので、それを更新するためにゴールデンカノンをワコール社は提唱しているわけで、ゴールデンプロポーション理論という古い理論を持ってくること自体が、疑問である。
ところで話は変わる。
ワコール社は1965年、1979年にアンケートを元に理想の3サイズを設定している。また1982,1994年にはワコール社が自己申告/理想体型の調査を行っているようだ。これらと2018年に発表された藤瀬武彦による理想の3サイズ調査を比較してみよう。過去の3サイズと現代に近い時代の3サイズを比較することで、日本人(女性やメーカー)がどのような体型を理想としたかを考えてみよう。まとめると以下のようになる。
1965年における理想の体格値とは身長の増大だろう。また胸囲をやや大きくすることも読み取れる。また1965年理想体型におけるトップバストとアンダーバストの差は13であり、現代の平均値である11cmよりも大きなバストサイズを望んでいることもわかる。
現代における理想の体型とは、痩身である。ウエストやヒップを引き締めることを現代人は1965年の人間以上に考えている。また胸囲の増大も数値上の理想値においては望んでいる。だが実際の写真を見て理想値を設定する場合においては、胸囲の増大は望んでいない。しかし痩身は強く志向している。
痩身には強い関心はあるが、乳房サイズにはさほどこだわりはない。痩身は自尊感情に影響するが、乳房の大きさと自尊心はあまり関係はないということは、牛田聡子『身体像の評価に影響を及ぼす個人差要因 自尊心・独自性欲求』という研究からも読み取れる。
つまり日本人(女性?)は「高身長でボンキュッボン」を志向することから、「痩身」へとどこかでターンをしたわけである。おそらくそれは、自己申告/理想体型の間のWやHに差異が生じ始めた80-90年ごろだと思われる。
参考文献
岸本泰蔵『現代女性の形態美』
玉川長一郎『日本女性のアイデアル・プロポーション〔Ideal propotion〕の示数設定について フアンデーションガーメンツ必要度考究に関連して』
中野廣『年代別体型特徴とビューティフル ・プロポーション』
藤瀬武彦『女子学生における痩せ願望及び理想体型と実測体型との関連について-形態数値の明らかなモデル選択による理想体型の客観的評価の試み-』
牛田聡子『身体像の評価に影響を及ぼす個人差要因 自尊心・独自性欲求』
中村邦子『2014−2016 日本人の人体計測データの分析結果』