「ま……まだ……あきらめ……」
地面に立てた両腕に力が入らない。立ち上がらなくちゃ……いけない……のに。私は再び大地に顔をぶつけた。
敵の勝利宣言と高笑いが鳴り響く中、私はゆっくりと意識を失っていった。
「ん……ここは……」
目を覚ますと、私は床に倒れていなかった。逆に、身体が壁に張り付いていた。
(うっ……)
両腕が真横に伸ばされ、両脚もピタリ閉じたまま真っ直ぐ伸ばされ、紫色に光る輪で拘束されて動けない。私は磔になっていた。
(ぐっ……)
首、手首、足首がキツめの輪っかで十字架に拘束されている。力を入れてもビクともしない。それに、まだ十分体力も回復していない。魔法のコスチュームは汚れて傷だらけだった。
左右に眼球を寄せると、絶望と幾ばくかの安堵が私を襲った。仲間二人が、私の両隣で同じように磔にされている。ぐったりしているけど、生きてる。皆、一様にボロボロだ。
「目が覚めたか」
暗闇の中から敵の幹部、カタメズキーが姿を現す。
「いいざまだな、プリティーガーディアン」
そう。私たち三人は悪と戦う正義の戦士・プリティーガーディアン……。こんなところで悪に屈するわけにはいかない。無駄だと悟りつつも、私は声を振り絞って叫んだ。
「わ、私たちを解放……しなさいっ!」
「まあ、そう焦るな」
彼の勝ち誇った笑みが、私は悔しかった。
「私たちを……どうする気?」
ブルーが弱弱しい声で尋ねた。無理しないで……。
「お前たちには我々の仲間になってもらう」
「ふざけないで。だれがあんたらなんかと……」
「俺だって反吐が出るさ。だがお前らのせいでうちの人材は払底してるんでな。体で返してもらおうというわけだ」
あんたらの仲間になんかなるもんかと問答を繰り返す。すると奴は言った。これから私たちの身体に闇のエネルギーを注ぎ込み、悪の存在に作り替えるのだと。
「なっ……!?」
「そんな……こと……」
逃げようと残った力を手足に込めるが、拘束が強くてダメだ。身動きできない。
奴が指を鳴らすと、大きなスイッチを乗せた台が現れた。
「さあ生まれ変われ。プリガーども!」
「ま……待って!」
「やめて!」
無常にスイッチが入れられ、激しい電撃が私たちを焼き出した。
「あっ……ああ……!」
「うっ……あうぅ……っ!」
全身がビリビリ痺れ、小さな針に皮膚全てを何度も貫かれるような鋭い激痛が走る。磔にされ身動きがとれず、悶えることもかなわない。
「んっ……あ」
痛い。痛い熱い。助けて。それ以外の思考ができない。頭の中が真っ白になっていく。
電撃が止まったのか、身体がダメになったのか、いつしか何も感じなくなった。代わりに、何かドロリとした生暖かい液体……いや、個体……? ゲル状の何かが全身をまさぐっていた。
(な……なに……?)
もはや白目を剥いてぐったりしていることしかできず、何が起きているのか目でとらえることはおろか、拒否の意思を示すことすらできず、私たちは静かに謎の物体が全身を包み、そしてどこからか体内に入り込んでくるのを静かに受け入れることしかできなかった。
(うっ……や、やめ、て……)
体内に入り込んだ物体が蠢く。骨も肉も内蔵もなくなり、体内全てそれにとってかわられてしまったような、例のない気持ち悪い感覚。パンの中のクリームみたいに、均質な「それ」しかないように思えてきてしまう。痛みはなかったけど、今度は感情がグチャグチャにされていく。憎い。敵が。死にたい。ズルい。なんで私たちだけこんな目に。負の感情がとどまることなく溢れ出て、仲間への思いも、抵抗の意思も、正義の心も、急速に遠ざかっていく。
(ダ……メ)
ボロボロの身体、朦朧とする意識、ぼやけていく記憶の中、私は意思を振り絞った。屈してはいけない。私は……プリティー……がー……。
全身が突然くすぐったくなっていく。とても小さな手に四方八方から揉まれているかのようだった。
(あ……)
身をよじることもできない拘束された身が、ますます感覚を敏感にしてしまう。意思を保てない。自分が何者かわからなくなる……。
(わたし……わたし……は……)
内から外から存在を侵され続ける中、私はゆっくりと闇の中に落ちていった。
「……です。素晴らしいできでしょう」
(……?)
気がつくと、目の前が真っ白だった。
(眩しっ……)
咄嗟に目をつむろうとするも、つむれない。手の平をかざし光を遮断することもできない。目が……ううっ……。
(体が……何……)
身体が動かない。私は、自分がまるでマネキンのように直立していることに気づいた。両脚をピタッと閉じて、両手をスカートの前で重ね、背筋を伸ばしてまっすぐ前を見つめている。目が光に慣れてくると、だんだん輪郭が浮かび上がってきた。
(ここは……)
暗い石造りの部屋。絢爛な椅子に、禍々しいオーラを放つ魔女のような怪人が座っている。それに向かって話している人影。
(……あいつは!)
カタメズキー……私たちを打倒し捕らえ、そして……。
(そ……そうだ)
記憶が蘇った。私たちはあいつに磔にされて、そして……拷問のような責めを受け、その後……。体に何か変なものが入ってきて、確か……。
(闇のエネルギー!?)
さっきから全身を覆う嫌な感じ。あいつらと同じ闇の力を感じる。そうだ、言ってた。私たちに闇のエネルギーを注入して仲間にすると。
(ど……どうなったの?)
あれはきっとそうだったに違いない。でも、私は……私だ。生きているし、自分を見失ってない……よね?
私は自分の名前や過去を頭の中で確かめた。正義の戦士、プリティーガーディアン。よし。
(んっ……)
でも、私は指一本動かすことができないまま、敵のボスらしき女と幹部の話を遠巻きに眺めていることしかできなかった。私の身体、一体どうしちゃったの……。拘束されているわけでもなさそうなのに。
(そうだっ、みんなは……)
両隣から人の気配を感じる。しかし、不気味な気配だった。悪の怪人のオーラだけど、どこか妙に懐かしいというか、安心感があるというか……。見張りかと思ったけど、そうじゃないみたい。動く気配がない。マネキンみたい……。
(ま……まさか)
「挨拶だ」
カタメズキーが私たちに振り返って叫んだ。その時、私は状況を理解し、絶望した。
(嘘……でしょ)
まるで時間が止まったかのように動かなかった私の足が、突然滑らかに歩を進めた。これは絶対に私の意思じゃない。足が勝手に動いちゃう。私はボスの前に進み出ると、厚いスカートの裾を両手で軽くつまんでお辞儀した。
「ダーク・プリティーガーディアン・モモです」
(いやあああーっ!)
口が私の心など意に介さず、勝手に服従の言葉を綴り、膝をついた。私は……プリガーは、すでに闇の戦士に改造されてしまっていたのだ。
(あ……あ……嘘……うそよ、こんな……私は……)
脇へ下がって、スカートの前で両手を重ね、またマネキンのように私は硬直した。目の前に、黒いゴスロリのような衣装をまとった女の子が映った。色こそ黒いが、差し色の青いラインと水色の髪が、私に彼女が誰かを教えてくれた。
「ダーク・プリティーガーディアン・ブルーです」
(……青子!)
挨拶と忠誠の誓いを終えたブルーが、私の隣に並び、人形のように静止する。続けて、黒いロリータ衣装によく映える金髪を持った女の子が進み出る。
「ダーク・プリティーガーディアン・オレンジです」
(蜜柑……!)
オレンジも私の隣に。同じ姿勢をとらされ微動だにせず並ぶ様はまるでロボット。カタメズキーが私たちを見て満足げに笑っている。悔しい。闇の手先にされるなんて……!
瞬間、憎悪と憤りがすごい勢いであふれ出し、私は自分を見失いそうになった。
(ダメ……!)
少しでも負の感情を持つと、考えられない勢いで頭の中がそれ一色に染められちゃう。闇のエネルギーを注ぎ込まれたからだろうか。私はほとばしる怒りと屈辱を懸命にこらえた。まだチャンスはある……。だって、私はまだ自分を失っていない。
(体は闇に支配されても……心は支配されないんだからっ)
そう意気込んだものの、身体の支配権を奪われてしまってはどうにもならない。私たちはまるで玩具のように一糸乱れぬ隊列で別室へ移動させられた。廊下の途中の鏡に、自分の姿が映る。黒いゴスロリみたいな、闇の魔法少女衣装。ピンク色のラインが入っている。私は生気のない虚ろな瞳で、お面かと思うような無表情。
(ああ……そんな)
これが……私? 正義の戦士プリガーの……末路だっていうの? ううん、そんなのまだわからない。
己の身体を取り戻すべく、何度も手足を動かそうと試みた。けど、ダメだった。体は私じゃない何かが一方的に、勝手に動かすか動けないだけ。私の意思は遮断されている。体に指示を出すことそのものが封じられていた。私はまるで映画の観客であるかのように、自分の目に映る世界を静かに眺めていることしかできなかった。
(おね……がい。動い……て)
光の力を練ることもできない。私たちはすっかり闇の手先に作り替えられてしまったらしい。薄暗い倉庫で、三人揃って立ち尽くしたままじっとしていると、焦燥感が募る。このまま私は……あいつらのロボットになるの?
そうだ。ブルーとオレンジは……。三人の力を合わせられれば……。いつだってそうやって奇跡を起こしてきた。
(ブルー! オレンジ! 聞こえる……?)
脳内の叫びに返事はこない。そりゃそうだ。私たち、テレパシーとかできないもん。
(うう……どうしよう)
声を出すことはできない。私の口はもはや私のものじゃない。それから体感で結構な時間が流れたけど、奇跡は起こらず、私たちはマネキンであり続けた。
時計もない闇の基地の倉庫。どれくらいの時間が経ったのかわからない。不安が不安を呼ぶ。もしかして二人は、心まで闇に支配されてしまったんじゃ。元の意識を残しているのは、私だけで……。
い、いや! そんなこと、ない! みんな私と同じで、身動きできないだけ……そうだよね? 二人とも……。
「出番だ」
ある日、見知らぬ幹部に呼び出された私たち三人は、元の世界に戻ってきた。闇を広げる、悪の魔法少女として。
(だ……ダメ! やめて!)
懐かしい地上に降り立った私たちは、幹部の命令に従い、黒く染まったステッキから闇の力を放ち、人々を襲った。
(ご……ごめんなさい……! 体が……止められない、の……)
今まで死力を尽くし守ってきた人々を闇で覆い、次々と生気を奪っていく。こんなこと絶対にしたくないのに、身体が勝手に動き続けてしまう。
「よし、次はあっちだ」
「はい」
私たちを打ちのめしたあいつですらない、顔も知らない幹部に忠実な手下として運用される。たとえようもなく悔しい。
(……っダメ!)
でも、悔しさや怒りを感じてしまうと、唯一残されたこの精神も闇に呑まれそうになってしまう。
(こんな……ひどい……)
私が私であるためには、次々町を壊し人を闇に覆う自分の悪行に、何も感じずにいるより仕方なかった。それがますます私を苦しめ、焦らせる。
(な……なんとか、ならないの……)
ブルーもオレンジも、無表情で淡々と人々を襲っている。あの二人が闇の手先に作り替えられてしまったこと、悪事に力を貸していることが私には受け入れがたく、瞳に映る光景全てが私を蝕んだ。しかし、顔を逸らすことはおろか、目をつむることもできない。私は自分が恐ろしい罪を重ねていくのを誰より近い席から静かに眺めていることしかできなかった。
そして、五回目の出撃。私たちの前に、新たな光が現れた。
「待ちなさーい!」
(誰? 逃げて……お願い)
「これ以上、みんなの心を闇で覆うことは……」
(ん? これ、まさか……)
「私たちが許さないんだから!」
三人組の、同世代の少女。彼女たちは私たちが使っていたのと似たパステルカラーのアイテムをかざし、光の柱に包まれた。
(やっぱり……)
彼女たちは、新たな魔法少女だった。助かるかもしれない。みんなを助けて。変身を終え、可愛いヒラヒラの衣装とカラフルな髪に彩られた三人の姿を見た途端、安堵と希望が湧いて出た。同時に、自分たちの居場所がなくなってしまったような、そして……自分たちはもはや完全に闇の存在になってしまったかのような気がして、悲しみと焦燥が募った。
彼女たちは私たちを悪に阿る、闇の魔法少女だと思っているらしかった。
(違うの! 私たち、闇のエネルギーを注ぎこまれて、あいつらの手先に作り替えられてしまったの!)
そう説明したいけど、私は自分の口を開くことができない。代わりに闇の素晴らしさを演説し、彼女たちを勧誘する言葉が紡がれる始末。
(違う~っ!)
自分たちも正義の戦士であり、光の魔法少女なのだと言いたいけど、どうにもならない。
その後何度かにわたって、私たちは新しい魔法少女チームと戦った。彼女たちを傷つけるたび、罪悪感で胸が苦しくなってしまう。さらに、私たちを悪人だと思っている三人から否定の言葉を受けると、理不尽なこの状況への憤りで心が闇に呑まれそうになってしまう。
「あんたたちのような悪い奴らには、絶対負けないんだからーっ」
(だからっ! 違うって! 言ってるでしょーっ!?)
ピンクの子に強い攻撃を当てた時、胸がすくような気分になり、私はもう情緒がグチャグチャだった。
「みんなー! これを使うだもー!」
狸みたいな妖精が投げた灰色のステッキをピンクの子がキャッチ。三人が集まってみんなで握りしめ、私たちに向けてかざした。
「ストーンコレクト!」
鋭く放たれた灰色の光が私を貫いた。
(なにっ……!? これ……)
その瞬間、身体の力がほとんど入らなくなり、私は空中から地面に落ちた。落ちた先は、公園の台座だった。三人の少女の石像が飾られていたけど、今回の戦闘で私たちが壊してしまい、今は何も乗っていない。
(……っ!?)
台座の冷たい感触が私の肌を拒絶する。私はしばらく、台座の上に転がったままだった。おかしい。体が立ち上がらない。いつもなら勝手に立ち上がって戦うのに……。
(……もしかして!?)
私は――立ち上がった。自分でだ。闇の力ではなく、自分の意思で。
「……っ」
衝撃と感動で、私は泣きそうだった。衣装は黒いゴスロリのままだけど、ステッキも黒いままだけど……戻った! 私に戻れたんだ!
「ありっ……」
急ぎピンクの子に声をかけようとしたその時。足が動かないことに気づいた。一瞬、また闇に囚われたのかと思ったけどそうじゃない。足が固い。カチンコチンだ。支配権を奪われたのではなく、物理的に動けない。
視線を下げると、衝撃映像が飛び込んできた。ふんわり広がった黒く厚いスカートが、パキパキ音を立てながら灰色に染まっていく。
「え? え? なにこれ……」
「悪の魔法少女、ダークガーディアン!」
私は思わず両手でステッキを握りしめ、ピンクの魔法少女を見つめた。
「これ以上、あなたたちの好き勝手にはさせない! 封印させてもらうわ!」
「……へ?」
何を言ってるのかわからず、私は茫然としてしまった。それが良くなかった。状況を飲み込んだ時には、もう胸まで灰色に全身が染められ……石に変えられていた。
「ちょっ……待って! 違う! 私は悪の魔法少女じゃない!」
「今更とぼけないで!」
「いやっ、話を聞いて! わた……」
首まで石化し、私は喋れなくなった。
(う、うそ!? やめて! 元に戻ったの! 私、正義の……プリガー……)
手遅れだった。私は自分が洗脳されていた事実を告げることができないまま、あっさりと全身を石にされ、封印されてしまったのだった。
(う……うそー!?)
私はステッキを両手で握りしめ、狼狽えた表情を浮かべたまま、ピクリともできない。これまでも自分の意思で動けなかったけど、まるで事情が違う。操られて闇の手先ではあったにせよ、人間ではあった。でも公園の台座の上で石化封印。これじゃ……ただの石像だ。
(封印を解いて! お願い! 話を聞いて!)
私の叫びはとどくことなく、ピンクの子は飛び上がり、味方の加勢に消えた。
(ど、どうしよう……)
まさかの展開に、私は指一本動かせない石の身の中で、何か手はないかと焦った。
少しすると、ブルーがやられた。離れた場所だったから詳細はわからないけど……どうやら、私と同じく事情を説明できなかったらしい。立像と化したロリータ少女の青子を、青い魔法少女が運んできた。そして、私の隣に並べて飾った。
(桃……子)
(青子!?)
脳内に、懐かしい彼女の声が響く。元に戻ったらしい。よかっ……いや良くない。
(ご、ごめん、気がついたらなんか……もう封印されちゃって……)
(わ、私もだよ……でもよかった。無事で)
(無事……なのかしら)
ジワジワと、状況のヤバさがにじむ。このままじゃ私たち、洗脳された魔法少女だとわかってもらえないまま、ここで石像になってしまう。
(な、なんとか……ならないかな)
(ダメ……全然動けない)
あとはオレンジ……蜜柑にかけるしかない。彼女が封印される前に、ちゃんと事情を話せるか……。もし話せなかったら……。
私たちの願い空しく、オレンジもやられてしまった。やられるのはいいんだけど、その後……案の定、私の隣に最後の石像として置かれてしまった。
(蜜柑……ダメだった?)
(ダメって……何が?)
(私たちが闇の手先じゃないって、あの子たちに説明できた?)
(え!? 伝わってないの!?)
私と青子は、静かに深く絶望した。
「ようやく、ダークガーディアンをやっつけられたわね」
「魔法少女なのに闇の味方をするなんて、とんでもないやつらだっただも」
「でも、油断しないで。これからが本番よ」
「うん、そうだね! 頑張ろう、みんな!」
(待って! 待って待って待って!)
輝かしい勝利を収めた魔法少女たちが変身を解き、制服姿で帰路に就くさまを、私たちは黙って見つめることしかできなかった。心の中では三人揃って大慌てで叫び、呼びかけていたのだけど。
(ねーっ! お願い! 元に戻して!)
(私たち、あなたたちと同じ魔法少女なのーっ)
(話を聞きなさーい!)
しかし、今やただの石像となってしまった私たちの声がとどくことはなく、私たちは公園の台座の上という最悪の場所で石化されたまま、放置されてしまった。
「あっ、新しくなってるー」
「かわいいー」
「すげー」
公園を通る人々は、誰も私たちが人間だと知らない。新しい石像としか認識しない。
(石像じゃないよ! 私たち人間だよ! 助けて!)
ほんの少しでもいい、何か、何かできれば……魔法も出せないし、眉毛一本動かないし、声も出ない……。ただ時間だけが過ぎていく。私たちは必死にここから逃れる方法を考えたけど、三人揃って石にされてしまったのでは、まったく手も足も出なかった。
稀に少しは事情を知っていそうな人が通りがかっても、かえって事態は悪化するばかりだった。
「あ、これ知ってる。最近暴れてた、悪の魔法少女」
「あー、ホントだ」
「なんでそんな奴らの石像飾ってるんだろ」
(違う。私たち、正義の……光の戦士なの……悪の魔法少女なんかじゃない……)
何よりも悲しく、屈辱的だったのは、私たちが悪の魔法少女の石像、或いは成れの果てだと思われること。であれば当然、石にされて封印されるのは「当然の罰」であるし、「危険だから元に戻してはならない」ということになる……。
(お願い……話をきいて。違うの)
(私たち……プリガーなんです……)
(だから……元に戻して。悪い事なんて……しないから)
こうしてプリティーガーディアンは蘇ることなく、悪の魔法少女・ダークガーディアンの三人は、自分たちが壊した石像の代替として、いつまでも公園に飾られ続けたのだった。