エピソード0 『栄光』を汚して
――ふと、思いついた事がある。
この聖杯を使って、"私"がサーヴァントを召喚したとして、どんな英霊が出てくるのか、と。
「元に肉と心、樹に記憶との契約――
洞窟より女神の世界へ、ヴァルトブルクの谷を通り、レガリアよりきよ、女神の賛歌を聞き入れよ――」
この聖杯戦争専用に作った詠唱。
英霊を陥れその力を封印する為に作り上げた。
「乱れ(成れ)。乱れ(成れ)。乱れ(成れ)。乱れ(成れ)。乱れ(成れ)。
繰り返し五度、時の彼方に刻印されし者に問いかける」
私は自らの信じている教えに背いているのだろう。
神を信じ、祈る私にとってはこんな外道の様な事をするべきではないのだろう。
「――告げる。
汝の身は我が元へ、汝の身体は我が歯牙へ。
杯の寄るべは力を破棄し、理はこの賛歌にて湾曲せよ。
誓え、凌辱を。
我は汝を呼び得る者。
汝は我に汚される者」
――でも、それでもなお、勝るのだ。
「七天より言霊を欲望より引き込まれよ、
抑止の輪よりヴェーヌスベルクを経て来たれ、天秤の守り手よ――!」
『栄光』を汚し犯したいと、私の全てが訴えてくるのだ。
「――サーヴァント、セイバー……せい、ばー……? きゃ!?」
一先ず、困惑しているサーヴァントを鎖で縛りあげる。
弱体化しているとはいえ、サーヴァントと言うのは強力な兵器だ。
呼び出されたサーヴァントによってはこの状況ですら油断はできない、即座に此方の首が落とされても不思議ではない。
相手は、白い装束を纏った女性だった。
年齢は、私より少し下だろうか? 日本ではまだ成人してないであろう幼さを何処かに残している。
しかしその視線は、刃の様だ。
「こ、これは……何故こんな召喚を!?」
「……ふう、とりあえずは大丈夫そうね。貴女は、どんなサーヴァントかしら?」
「――質問に答えなさい。何故こんな聖杯を作り出したのですか?」
鋭く睨みつけてくるその視線に背筋が凍りつくような感覚を感じる。
否、実際そうなのだろう、背中から冷や汗がドバドバ出てくる。
少しでも油断すれば目の前の少女は私の首をその手で折るだろう、弱体化されてなおそれが可能な力を感じる。
力、と言うよりは意思だろう、力が弱っていても目の前の悪人を許す事は無いという意思。
「私の欲望、それが全てよ。長く長く長く長く満たされなかった私の欲望、その欲望を満たすチャンスが巡ってきたからよ」
嘘を言う意味は無いだろう。
むしろ下手な嘘は彼女を怒らせるだけだ。
それに本音は本音だ、自分勝手な本音だがそれが全てだ。
「……貴女とて、主の為に祈る人でしょう?」
「あぁ、何となく気がついていたけど……やっぱりそうなのね?」
彼女は私と同じ、主の為に祈る者だ。
そして、同じだというのなら彼女の真名も何となく察する事ができる。
「ジャンヌダルク……救国の英雄……」
知っている、それはそうだ。
最も有名な聖女、オルレアンの乙女、わずか二年の間にフランスを救い、戦場を駆け抜け最後には火刑になった英雄。
「……そこまでの信教があるのなら、貴女もこのよ――う、な――」
ジャンヌの表情が、エーナを見つめて固まった。
驚きと恐怖、城塞とも言えるような心を持った彼女がエーナを見て一瞬固まったのだ。
エーナはジャンヌを見ている、否ジャンヌ以外を見ていない。
光があるのに濁っている、見つめているのに彼女以外の何処かを見ている。
「あぁ、ああ……貴女は、『栄光』ある人、なんですね?」
微笑んでいるのに笑っていない、可愛らしく一見すれば同じくらいの女性だというのにその心は真っ黒に歪んでいる。
何故こんな事になってしまったのか、それはジャンヌの預かり知らぬ所なのだが――
(これは、碌なことにならない……!)
そんな予感だけがひしひしと伝わってくる。
否、何をされるのかは此度の聖杯より与えられた知識が物語っていた。
「んっ! んひぃひひひひひ……!」
必死に口を閉じようと笑い声を押さえる。
しかしがら空きになった腋は一切の防御を許さない、只刺激をあるがままに受け入れてしまう。
「ふ、ふふ、ふふふふ……こんな魔術が役にたつなんて思わなかったわ……♡」
「は、ひぃ、ふひゅ、ひっひゃひゃひゃひゃひゃ……! く、う、やめ、なさ……いひ、ひひひひひ……!」
ジャンヌの体をくすぐっているのは宙に浮かぶ手だ。
分身として作った自分の手を操作する魔術、本来警戒心の高い逃げた動物などを遠くから捕える為の魔術だ。
当然動物を傷付けない様に力の入れ具合を上手く調整できる手を模倣する様にしたのが始まりだ。
複数操作するには相応の集中力が必要だが今私は目の前の『栄光』を汚すために全力だ。
本来のスペック限界すら超えている気がする。
「ああ……あぁ最高……♡ 『栄光』ある貴女がくすぐられてるだけでこんな風に……どう? 情けない? 恥ずかしい? それとも、ちょっと気持ちよくて目覚めちゃいそう?」
「そ、んな、ことはぁひひひひひひひひ……! きもち、よくなんかぁはははははははは……!」
本当に、本当に最高だ。
戦場をかけ、神の声を聴いて、最後には火刑すら受け入れた『栄光』がくすぐられる事で崩壊して行く。
がら空きの腋をくすぐられ、余った手で軽く胸を触る。
くすぐったさの中に快楽を少し混ぜる事で刺激に慣れさせない工夫だ。
「それにしても、この改造令呪の効果は絶大ね……♡」
そう、今ジャンヌは体を動かす事ができない。
令呪、マスターの証でありサーヴァントに対する命令権。
本来は彼女の様な意志の強いサーヴァントには効果が薄い事もあるが改造された令呪はある法則にのみ効果を限定している。
二つの法則が合わさってサーヴァントを縛る。
一つは命令の仕方、特定の身体の部位を晒して動かない様に、と命令する。
二つは命令の内容、聖杯によって与えられた知識によりこの聖杯戦争は戦う事が=くすぐられる事になる、だからサーヴァントにとってくすぐられる事はある種当たり前の事なのだ。
なので今ジャンヌは令呪の拘束が効いている。
腋をくすぐる為に腕を上げて動かない様に、こういう風に令呪を使えば彼女の様なサーヴァントですら拘束する事ができる。
「くっひひぃ、ひっひゃひゃひゃ……! こんな、こと、いつまで、ふふ、んぁっははははははははは……!」
「そりゃあもう、魔力が溜まるまで、よ♡ どの位くすぐられるかはサーヴァントによって変わるから……ジャンヌはどれだけくすぐられるかしらねぇ?」
嘘入ってない、魔力が溜まる速度は個人差がある。
恐らく本人の魔力ステータスに依存しているのかも知れない。
つまり、元のステータスから弱体化されている今の状況では本当にどれだけくすぐられるのかは分からないのだ。
「ふひ、うっひひひひひひひ、あ、あは、いぃひひひひひ……! やめ、なさ……んふぅ!?」
「ふふ、こうやってくすぐってると思うけどぉ……貴女大分くすぐられるのに弱いわね? ほぉら、こうしただけでも直ぐに反応して腋が汗ばんできてるわ♡」
「ひうぅ!? そ、そんな事は……!」
人差し指でジャンヌの腋をつつー、となぞる。
まるで陸に上がった魚の様にびくびくと跳ねる様に痙攣する彼女を見るとこの手の責めに経験も耐性も無いのが良く分かる。
異端審問でもこの様な責めは経験無かったのだろう、アレは楽しむ為の物では無いので当たり前と言えば当たり前だが。
「そんな事は無い? 本当にそうかしら? 随分感じてる様に見えるけど?」
「ん、くふぅ……! う、うぅ、うひ、ひひひひ……! こ、このくらい、なんとも、ない……!」
今にも吹き出して笑いそうになっている彼女のその言葉が強がりでしかないのは素人でも解るだろう。
――と言うより正直な話、私は今思いっきり手加減をしている。
素人一人笑い悶えさせられない程私の責めは甘くない。
では当然次の疑問が出てくる、何故そんな手加減などをしているのかだ。
「ふふふ、それならまだまだ耐えられるわよね♡ どの道耐えるしか選択肢はないんだけど♪」
「あ、くぅ……! ひひ、うひひひひ……! あ、ああっ……! ひ、いひひひひひひ……!」
耐えられる、まだ大丈夫。
そう思って貰わないと困る、その余裕を崩すのが楽しみなのだから。
こんなにくすぐりに対して耐性が無い女はそうそう居ない、じっくり、ゆっくり、確実に墜として無様に笑い悶えて欲しい。
そうするのは一番『栄光』を崩せる、彼女の事をくすぐり犯す事ができる。
「ほらほら、頑張って頑張って? 魔力が溜まるまでの我慢でしょ? そのぐらいなら、耐えられるわよね?」
「ふぐ、んぅぐひひひひひひ……! う、うぅ、うううう……! く、うぅひひはっくくくくく……!!」
私の言葉に反骨心が芽生えたのか耐える事に集中し始める。
口を力いっぱい塞ぎ、体を硬直させ、くすぐられていること以外の事を考えているのだろう。
それが、全く無駄な事だと知らずに必死に耐える姿に、にやにやとした笑顔が止まらない。
何て嫌な顔をしているのだろう/何て羨ましい顔をしているのだろう。
こんな非道な事をこんなにも楽しそうに行う私はきっと外道なのだろう。
神の教えを説くなどおこがましい、私はこんなにも人を汚している。
それなのに、それなのに――。
「く、うひぃ、ひく、うぅぅんうぅぅううううう……! んは、はひひひひひひひ、いぃひいひひひひひひひ……!!」
「結構頑張るのね、そうじゃないと張り合いも無いわ。でもそろそろ指を動かすのも疲れてきちゃったわ……」
「は、うぅひひ、くひゃひゃ、ん、うううう……! そ、それ、なら……一旦、いったん、これを、とめ……」
「疲れちゃったから、少しだけ本気出してくすぐってもいいわよね?」
「――え?」
絶望するその表情が、狂おしい程愛おしい――。
「え、うそ、そんにゃああああひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!? な、なん、なにこぇひぃはははははっはっはっはっはっはっはっ!?」
腋だけをくすぐっているのは変わらない。
しかし指の動きは先ほどとは比べ物に成らない。
子供の児戯にも等しいくすぐり方ではない、本格的に私達が"使っている"くすぐり方に変えた。
その効果は見ての通りだ、あんなに必死に我慢していたのに決壊は一瞬だ。
「あはぁっははははははは!! やめ、わきもうやめぇへへへへへへへへへ!! くす、くすぐったいですか、らぁひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
「知ってるぅ、でもね? これでもこのくすぐり方では序の口、なのよ?♡」
びく、とジャンヌの体が震えたのが解る。
残念だが嘘は付いてない、本当にこの程度は序の口だ。
「はい一旦しゅーりょー♡ 少し休んでから次の段階に行きましょうね?」
「は、あは、はひひ……んぁ、は、はぁ……!」
浮かんでいた手を消す、ぐったりとジャンヌは脱力し力ない呼吸を繰り返す。
本当のくすぐり地獄はこれからなのに、今の状態でこんな風になっちゃうなんて。
本当に、虐めがいがあると股が濡れそうになった。