■ ある悩みを抱えたヒロインが、彼氏にお願いして自分を抑え込んでもらうお話です。拘束・SM・調教の要素を含みます。今回の話はリアル路線なので、極端なファンタジー要素は出てきません。
■ 今回でこのお話は終わりです! でも奈留ちゃんのキャラは気に入ったので、またいずれ続きを書きたいと思います。もっと激しいSMプレイに興じ、恥ずかしがる彼女を書きたいですね(ΦωΦ)フフフ…最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!
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暴力的な衝動を抑え込むために拘束される、という力技は結果的には上手く行った。
私は三也を殴らずに済んだし、三也も私に殴られるかもしれないという警戒をせず、気持ち良さの追求を存分に出来た。
とてもいい結果になった、のは間違いないのだけど。
ただ、それはそれとして――こっちが動けないことをいいことに好き勝手やってくれた三也には、言いたいことが山ほどあった。
「三也の変態っ、変態っ、変態っ」
ポカポカと三也の背中を殴る私。
彼はそんな私の拳を甘んじて受け入れていた。
「あいたた……ごめんごめん。つい……調子に乗っちゃって……」
平身低頭。ひたすら謝ることしかしない三也だったけど、それは彼の優しさを示している。
そもそも拘束してイチャイチャしよう、という提案自体は私からしたわけで。
三也はそれを存分に活用し、私と絡んだわけだ。文句を言うのは本来筋違いであるし、それは私自身、自覚している。
それでも、本当はもっと穏やかに、ちょっと激しくイチャイチャするくらいを考えていた。
まさか気を失っている間に裸に剥かれて、その状態でセックスまですることになるとは思ってもいなかった。
だから、三也の背中を叩くくらいは許してほしいと思う。
それに叩くといっても、猫がじゃれつく程度の力加減に抑えている。鍛えている三也には大したダメージにはならず、彼は私の拳を甘んじて受け入れていた。
その彼が、私に向かって告げる。
「でも……奈留ちゃんも結構気持ちよかったでしょ?」
そう指摘された私は、顔から火が出るような恥ずかしさを覚えた。
「う、ううう、うるさいっ!」
ぽかん、とひときわ強く三也の背中を引っ叩いてしまった。
三也はびくっと身体を震わせたものの、想定していたよりは痛くなかったのか、にこやかな笑みを浮かべる。
「うん……奈留ちゃんが恥ずかしい思いをした甲斐はあったみたいだよ。いまくらいなら、全然痛くないや」
そもそも今回の拘束プレイをした目的は、その状態で恥ずかしさに慣れることだ。
拘束された状態でイチャイチャする恥ずかしさに慣れて、ゆくゆくは拘束なしでも普通にイチャイチャ出来るようにする――そういう目的があって、拘束という手段を取った。
つまり、そういう意味でも、今回のことはとてもいい具合に結果が出たことになる。
「…………」
それ自体は私自身も喜ぶべきことではあったけれど――やっぱりとんでもなく恥ずかしい思いをさせられたという事実は変わらない。
私は無言のまま、三也の背中を広げた手のひらでバシバシと叩いた。
間違いなく、効果はあった。いまだって三也にそのことを指摘されて恥ずかしく感じて彼の背中をべしべし叩いてはいるけれど、それはその程度で抑えられているという紛れもない証拠だ。
いままでだったら、恥ずかしさのあまり何もわからなくなって、握った拳を彼の背中に叩き込んでいたはずだ。
でも、いまそうはなっていない。
恥ずかしさを感じつつも、衝動の成魚はできているという事実が、今回の目論見の成就を表している。
とはいえ――だからといっていきなり恥ずかしさがすべてなくなるわけではないし、衝動も急に全てはなくならない。
私は恥ずかしく感じた分、三也の背中をバシバシと叩くのだった。
こうして、私は暴力的な衝動を克服することが出来た――と、言い切ることは出来なかった。
一応、ちゃんと効果自体はあったのだ。
私の暴力的衝動は、今回のことをする前よりはずいぶんマシにはなった。
後日、デートで手を繋いだり、夜景の綺麗なロマンチックなところでキスしたり、普通のカップルのようなことは出来るようになったのだから、それは間違いない。
でも、恥ずかしさが頂点に達すると手が出てしまう悪癖が完全に消えたわけじゃなかった。
その日、私と三也は普通の恋人らしい、雰囲気のある大人なデートを経て、ホテルでしようとした。
もう部屋を暗くする必要もないだろう、と明るいまま事に及んだのが良くなかった。
ベッドに押し倒され、よく見える体を三也に褒めまくられた結果――私は本能を解き放ってしまい、三也のアゴを思い切り殴りあげてしまった。
いわゆるアッパーカットというものが、綺麗な軌跡を描いて炸裂した。
下手に落ち着いていた分、三也も備えていなかったらしく、めちゃくちゃ綺麗にアッパーカットが決まってしまい、三也をノックアウトしてしまった。
「ごごご、ごめん! 三也! だ、だだ、大丈夫?」
私は久しぶりに三也を盛大に殴ってしまい、大いに動揺して三也を揺さぶる。
目を回していた三也は、暫くして起き上がった。
とても痛そうに顔を顰めながら頭を振っていたけれど、どうにか無事のようだった。
「……あいたたた……うん、まあ、大丈夫だよ。つぅ……油断してたな……いたた……」
「ごめんなさい……ひ、冷やした方がいいわね」
応急処置にしかならないけれど、ハンカチを濡らして三也に渡す。
それで顎を抑えつつ、三也は私の心配をしてくれた。
「奈留ちゃんの方も、手、大丈夫?」
「……私は、平気。うん、ちょっと赤くなったくらいで……痛みとか痺れはないわ」
別に特別鍛えているわけではないのに、私の体は無駄に頑丈なのである。
それにしても、私の性分に関しては三也も承知していることとはいえ、殴られた直後だというのに私の心配をしてくれる辺り、三也は本当に出来た人間だ。
暴力系ヒロインの私にはもったいないくらいに。
そんなことを考えて落ち込んでいると、三也はニッコリと笑う。
「僕もちょっと調子に乗りすぎたよ。いくら少し改善されたとはいえ、ちゃんと配慮するべきだったね」
「み、三也は悪くないでしょ。悪いのはどう考えても私だし……」
私は小さく縮こまりつつ三也に謝り、そして――用意していた荷物を彼の前に示す。
「奈留ちゃん?」
「そ、その……殴っちゃってからじゃ、意味ないかもだけどっ」
私はバッグのファスナーを開けて、その中の物を三也に見せる。
バッグの中には、ぎっしりと拘束のための道具が詰め込まれていた。
それを見た三也の目がかすかに見開かれるのを見て、私は慌てて弁明する。
「その、やっぱり不安だったからっ。ダメそうだったら、またこれを使ってもらおうと思って……っ。その、これを使いたいってわけじゃ、なくってぇ……っ」
自分で言いながら、恥ずかしさのゲージがあがっていくのを感じる。
さりげなく三也が距離を取ったのは、当然の対応だった。
「……なるほど。それにしては……なんだか、拘束具以外のものも入ってない?」
三也の指摘に、私はびくりと肩を震わせた。
そうなのだ。前回使ったのは、アームバインダーと足枷と首輪だけ。
身体の自由を奪い、暴力を震えないようにするためのものばかりだった。
今回私が持ってきた道具は拘束具だけではなく、ローターとかバイブとか、『そういう趣向のもの』も含まれている。
それを用意したのは、単に私の身体を拘束することだけが目的じゃない。
「……えっと、その……これを使うことになるとしたら、お仕置きになる時かなって、思って……そういうのも、用意しておこうかなぁって……」
我ながらめちゃくちゃな話だった。後から理由として付け足したのは明らかで、それは三也にも伝わってしまっていた。
私が拘束されることに――SMプレイにハマってしまったということは、明らかだったから無理もない。
三也はそんな私の様子を見て、なんとも言い難い、表現が難しい顔をする。
「……全く……奈留ちゃんは仕方ないなぁ」
その言葉には呆れのニュアンスも込められていたけれど。
愛しい相手に対する、甘い含みもある声だった。
三也が私の差し出した大量のグッズの中から、ボールギャグという名前の口枷を手に取り、私に翳して見せる。
私は自分の心臓がドクンドクンと激しく高鳴るのを感じていた。
「せっかく用意してくれたんだし……使わないともったいないよね。ああ、いや……違うか」
三也は私の目をまっすぐ見て、不敵な笑みを浮かべていた。
「人を殴る悪い子には、たっぷりお仕置きしてあげなきゃね?」
そう耳元で囁かれ、私は羞恥心が一気に頂点に達し――今度の一撃は予想していたらしい三也に軽々受け止められる。
「全く、もう……たくさん、お仕置きしてあげるよ、奈留ちゃん♡」
そういう三也の声は楽しそうに弾んでいて――私はどんなお仕置きをされてしまうのだろうと、心臓がドキドキするのを感じた。
そしてそれと同時に。
私はあそこが疼くのを自覚するのだった。
おわり