箱詰倶楽部の軟体薬 その①
■ あらすじ:箱詰めプレイ愛好家が集まる『箱詰倶楽部』。そこでは会員のために日々新しい技術や詰め方を模索している。そして今回倶楽部の社長がどこからともなく調達してきたのは――『軟体になれる薬』。かなりの軟体になれる薬を、元々軟体である倶楽部の受付嬢・真藤馬しずなが服用するとどうなってしまうのか。いつもながら、社長に押し切られ、箱詰めされることになるしずななのでした。
■ 久しぶりの箱詰倶楽部シリーズを書きます!0w0クワッ! 箱のサイズは個々に合わせて調整されていますが、箱詰めにおいて軟体であるに越したことはないですからね! こんな薬があったらいいよね、というお話ーw-ウム
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箱詰めプレイを楽しむ愛好者が集まる会員制の愛好会『箱詰倶楽部』。
一人では安全に楽しむことが難しい箱詰めプレイを楽しめる場所として、自身も箱詰め愛好者である社長が創設した。
そんな倶楽部にはとんでもない技術を持つ技術者・技技名や、もはや異能レベルの的確な診断と処置を行う医者・雷麗寺など、箱詰めプレイに関すること以外でも活躍できそうな高度な人材が集まっている。
箱詰めされる側の人材も豊富であり、成人済みにも関わらず、子供並みに小柄なテスター・千城野チカ、極めて高い軟体性能を持つ受付嬢・真藤馬しずななどは、その体格や性質を買われ、特に多くの箱詰めプレイや試験に参加している。
箱詰めプレイを追求していく者としては、これ以上ない環境が整っているのだった。
そんな倶楽部では、会員たちを満足させるために新たな技術や箱詰め方法を日々模索している。
「と、いうわけでじゃじゃーん! 『軟体になる薬』~!」
倶楽部の中でも重要な役職にある者たちが集う会議の中、社長はものすごく楽し気にその薬瓶を机の上に置く。
私は思わず目頭を抑えつつ、手を挙げて発言許可を求めた。
「はい、しずなちゃん。何かしら?」
「ええと……すみません。違法薬物の使用はさすがにアウトではないかと」
「大丈夫、違法じゃないわ。ちょっと変わった成分なだけで、体に害はないから」
大丈夫とだけ言われて、はいそうですかと納得できるわけがない。
とはいえ、法律的な話をしても仕方がない。社長はよくわからないコネクションを持っているので、本来なら問題ありそうなものを倶楽部に多々導入しているからだ。
「……そもそも、軟体薬ってどういうことですか?」
「よくぞ聞いてくれました! この薬はね、一粒飲むと数時間、体がものすごく柔らかくなるの! そう、しずなちゃんみたいに!」
びしり、と人差し指で私を指す社長。隣に座っていた雷麗寺さんがその手をそっと下ろさせていた。人を指さすなということだろう。これは雷麗寺さんが正しい。
「私みたいに……ですか。それ、需要あるんですか?」
「もちろんよ! ほら、箱詰めされたい子の中には、ただ箱詰めにされるんじゃなくて、かなり複雑で厳しい体勢で箱詰めされたい子もいるじゃない? でも、体が硬い子にはどうしても無理とかもあるから……」
「まあ、確かにそういうご意見はあることは確認していますが……」
私の仕事には受付業務の他に、会員の方からの連絡を処理することも含まれている。
その中で、体が硬くてワンサイズ大きな箱にしなくちゃいけなかったのが残念だった、というような意見があることは確かにあった。
「しかし、それで軟体薬を作ってしまうとは……技技名さん、科学だけじゃなくて、化学の知識もあったんですか?」
雷麗寺さんとは逆側の社長の隣に座っている、女性らしからぬ大柄な女性――技術班の技技名さんにそう問うと、彼女はいつもの豪快な声で笑った。
「はっはっはっ! 科学を極めると、化学も必然的に関わってくるからね! 当然ある程度の知識はあるさ! まあ、今回の薬は作ってないけど!」
「そうですか……って、作ってないんですか」
あまりにさらりというせいで、ツッコミが遅れてしまった。
「普通の薬ならともかく、飲むだけで人の体を柔らかく出来る薬なんて、作れるわけないじゃないか! はっはっはっ!」
豪快に笑ってるけど、そうだとすると疑問が生まれる。
「……じゃあそれ、誰が作ったんですか?」
「それはね……秘密! 大丈夫! 信頼できる人だし、安全性は担保されてるから!」
社長はにこやかな笑みで言い切った。
まあ、社長が変な伝手を持っているのはわかっていたことだし、変人でも人を見る目はある人だから、あまり気にしない方がよさそうだ。
信頼できる研究所、とかじゃなく、人って言っている時点で、技技名さんや雷麗寺さんのような外れ値であることは予想できるし。
「はぁ、まあ、わかりました。薬の出所に関しては気にしないことにします。……それで、その軟体薬のテストを行うわけですね?」
私は手元の端末を操作して、職員のスケジュールを呼び出す。
「体が硬いことで悩んでいるのは……」
「ああ、そのテスト自体はもう終わってるのよ。私自身で試したから」
そう社長は言いながら、掌をこちらに向けて指先を机に着けた――かと思うと、本来なら曲がらないレベルで手首が柔軟に曲がり、私たち側に見えていた手のひらが机にぴったりとついてしまった。
「おお! 素晴らしいねっ!」
技技名さんも初見だったのか、目を輝かせて喜んでいた。
雷麗寺さんにはすでに見せていたのだろう。雷麗寺さんはいつも通り微笑んでいるだけで無言だった。
「ふっふっふっ。これで私もしずなちゃんと同程度の軟体を手に入れられたというわけね。おかげで、詰められる箱のサイズを少し小さくすることが出来るようになって、詰められ感も大幅アップしたのよ!」
そういえば、最近社長が詰められているスーツケースのサイズがわずかに小さくなっていたような気がする。
「そうだったんですね。気のせいかと思ってました」
「しずなちゃんはもうちょっと私に興味持ってくれてもいいと思う」
社長はそう唇を尖らせた。別に塩対応しているつもりはないのだけど。
私がなんと弁明したものか考えていると、隣に座っていたチカちゃんが恐る恐る手を挙げて発言する。
「えっと……社長、それじゃあ、これから何をするんでしょうか……?」
確かにそうだ。すでに試験も済んでいるなら、会員向けに提供してもいいはず。
その告知のためにメールを作成したりホームページを弄ったりすればいいのだろうか。
私がそう考えていると、社長はいい笑顔で私を見た。
この感覚、何度味わってきたかわからない。
嫌な予感というものが、ひしひしと感じられた。
「私みたいな、普通の人が飲んで軟体になれるのはよくわかったから……元々軟体なしずなちゃんみたいな人が飲んだらどうなるのか! 試してみたくって! お願いしずなちゃん! 実験に協力して欲しいの!」
「お断りします」
私は間髪入れずにそう答えた。
ただ――最終的には色々丸め込まれてしまうであろうことも、この時点で確信していた。
「……私って、社長に甘いんでしょうか」
私は実験に参加するべく、いつもの実験を行う部屋にやって来ていた。
そこは様々な機材が置かれている部屋であり、普段なら技技名さんの実験が行われる部屋だ。
今回はそれほど大規模な実験ではないはずなのだけど、部屋にはなぜか大量の箱が並べられている。
普段私が箱詰めされるときに入るサイズの箱よりも、小さいものが何段階かに分けて並べられていた。
軟体化した私が、どれくらい小さな箱まで入れるようになるかを試すみたいだ。
「ふふふ。しずなちゃんが飲むと一体どれほどまで柔らかくなってしまうのかしら……楽しみだわ」
ニコニコと笑顔を浮かべながら、社長は私にその軟体薬を手渡してくる。
見た目は普通の錠剤っぽい。飲むための水も渡された。
「安全性については保障するけれど、柔らかくなりすぎた時に勢いがついてしまうかもしれないから……座って飲んだ方がいいかもしれないわ」
雷麗寺さんがそう忠告してくれる。彼女がすぐ近くに控えてくれているというのは、とてもいい安心材料だった。
「わかりました」
私はその場に正座する。
ちなみに、すでに私は裸になっていた。正直、恥ずかしいのだけど、軟体化した状態がよく見えるようにするためと言われては断れない。
この実験を見ているのは、社長を始めとしたいつもの面々だから、そこまで恥ずかしがる必要もないというのもあるけれど。
「それじゃあ……いきます」
私はそう告げて、その軟体薬を口の中に放り込む。
水で一気に流し込み、一息を吐いた。
「……どれくらいで効果が出るものなんですか?」
「即効性だから、みるみるうちに柔らかくなっているはずよ」
社長がそんなことをいうので、私は試しに片手を自分の顔の前に翳し、人差し指から小指までをもう片方の手で掴んで、本来なら曲がらない方向に曲げてみた。
私は元々体が柔らかいので、普通なら折れているくらい曲げても平気なのだけど――私の四本の指が根本から折れ曲がり、手の甲と指の背がピタリと接してしまった。
「きゃっ!?」
私は思わず悲鳴を上げて、指を元に戻す。何事もなかったかのように私の指は動いた。指が折れたわけではない。
一瞬ではあったけれど、体が柔らかいことが特徴の私ですらありえない体の柔らかさが発揮されて、正直びっくりしてしまっていた。
「なにいまの! すごい! すごいわ!」
「いやぁ、効果覿面だね! ちょっと気持ち悪いくらいに!」
社長と技技名さんがやんややんやと騒ぐ中、雷麗寺さんは冷静に私に近づいて来て、私の手を取って指の状態を確認し始めた。
「…………うん、大丈夫ね。神経も筋肉も皮も問題なさそう」
「んっ……!」
雷麗寺さんの手が私の手を摩った際、妙に気持ちいい感覚がそこから走った。
私は自分自身の手をじっと見つめる。
「…………?」
「さあ、しずなちゃん! 前屈してみてちょうだい!」
「いいですけど……」
私は座った体勢から、両足をまっすぐ横に伸ばし――そして、ぺたんと体を前に倒した。
ちゃんと勢いがつかないように注意していたから、特に問題なく、体が床にぺたりと密着する。
「ひゃっ」
胸が床に触れて押し潰された。私の上半身は完全に床と密着し、私は両手をまっすぐ前に伸ばしてみた。
「わお……さすがしずなちゃん」
社長がそう呟く。
けれど、私にとってはそこまで驚くことでもなかった。
だってこれくらいは、普段でも出来るからだ。
「……これだと、普段と変化がわかりにくいのでは?」
私はそういいながら、顔を社長たちの方に向ける。
その際、私は違和感に気付いた。
「ん……? これって……」
「どうしたのしずなちゃ――きゃあっ!?」
私が『それ』をしてみたところ、社長が社長らしからぬ声をあげた。
「うわぉ!」
「あらら……これは……」
技技名さんと雷麗寺さんも驚きの声をあげる。
それもまあ無理もない。
私はいま、顔を天井に向けている。背中に自分の髪の毛が触れているのがわかる。
つまり、私の首が九十度後ろに折れ曲がっているような状態にあるわけだ。
首が折れてぶら下がっている人形みたいな状態であるので、お化けをみたような社長の反応も納得できてしまう。
「……い、痛いとか、苦しいとか、ないの?」
「それは……別にないですね」
社長の問いに答えていると、雷麗寺さんがぶつぶつ呟いているのが聞こえてきた。
「おかしいわね……ここまで折れ曲がったら、普通は……」
確かに、首なんてもっとも重要な神経やら管が無数にあるはずだし、ここまで曲がるはずのない方向に曲がっていたら、何かしら支障が起きてもおかしくない。
でも、私はどういうわけか平気だった。
「……ここまでとは恐れ入るわね……あ、ちなみに私の場合はそこまで出来ないわ。ほら」
社長がそう言って首を後ろに倒して見せる。それでも結構仰け反れているような気がするけれど、後頭部が背中に着くような、とんでもない軟体になれているわけではないようだ。
見た目のインパクトに引いていた社長だったけれど、すぐに順応した様子で、ノリノリになって宣言する。
「それじゃあ、その超軟体力を、箱詰めに活かしてもらいましょー!」
立ち上がった私は、用意された小さめの箱の前に立つ。
普段なら絶対入れないような、小さなサイズの箱だけど――今の私には、十分入れそうな予感しかしなかった。
つづく