限界中年男性、メタトロンを犯して並行世界のイケメンに復讐をする。(本番)

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限界中年男性、メタトロンを犯して並行世界のイケメンに復讐をする。(本番)
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 池優介は会社の近隣にあるタワーマンションに居を構えている。

 元々、カルデア企画へと転職する前から大企業のエリート社員だった池は相当な高給取りであり、それに相応の自宅を所有しているというわけだ。

 グループの系列会社であるカルデア不動産から紹介されたこの部屋は池の好みにピッタリとハマっており、そこそこに気に入っていた。


 今日も心地の良いプレッシャーという、恐らくは愚鈍で怠惰な肝尾では一生理解できない感覚で覚える仕事を終えた池は、高価なイタリア製の革張りソファに深々と身を沈めて、体を休めている。

 そして、ソファの前にはやはり高価なローテーブルが配置されており、そこにはすでに空となった複数個のビール缶が転がっていた。


「……本当に、あの会長さえ居なければ最高の職場なんだけどな」


 そんな勝ち組サラリーマンを絵に描いたような存在である池にもストレスというものは確かに存在し、その口から吐き出されたのは、日頃溜め込んでいる不満だった。

 特に、今日は実際にその脳裏へと焼き付くような光景を見せられたのだから当然だろう。

 言うまでもなく、その光景とは敬愛する社長であるメタトロン・ジャンヌへの、会長である肝尾拓郎が行う卑劣なセクハラのことだ。

 カルデア企画のトップであるメタトロンだが、それでもグループの重鎮である肝尾には逆らうはずもなく、あの神聖とも言える肢体をベタベタと馴れ馴れしく、そして、欲望に満ちた手つきで触れられていたのだ。

 この時代でも確かに存在する、その権力勾配を利用したハラスメントを、元々が正義感が強い上にメタトロンへと人としても男としても強い感情を抱いている池が許せるはずもなかった。


「俺はメタトロンさんが社長だから、カルデアからの引き抜きに応じたんだ……! あの人の下でやる仕事は絶対にやりがいがあると確信して、そして、それは正しかったのに……! それなのに、何の仕事もせずに顔を出す、あんな下劣な中年に社長がセクハラをされているのを見ているだけしかできないなんて……!」


 アルコールによる酔いが回った影響で、口からはどんどんと普段から抱いている不満がこぼれていく。

 あんな下品な男が自分の働いている会社の事実上のトップだと思うだけでも吐き気がするのに、それ以上に敬愛するメタトロンがセクハラを受けている現実は、それこそ酒に逃げなければ耐えられないほどの理不尽さを池は感じていた。

 メタトロンはいつもの振る舞いをして肝尾を受け流しているようだったが、それもまた所詮は処世術以上のものを越えてはいない。

 もっと激しく糾弾しなければいけないのに、それができない無力感。

 池は逃避のために、また新たな缶ビールを開けていくのだった。


「くそったれめ……!」


 それでも消えない苛立ちを紛らわせるために、池は巨大モニターのテレビの電源をつける。

 インターネットと接続されているそれはパソコンのディスプレイのようなものにもなっており、池はそのまま手元のタブレットを操作して、そのタブレットに映し出される画面を巨大モニターにも共有していった。

 それと同時に、目に大きな負担を与えることは承知の上で、部屋の照明を落とした。

 モニターの光だけが部屋の中できらめき、それは眼球へと少しずつダメージを与えるようにチカチカと輝いていく。


「…………今日は、新作はどうだ?」


 池はそのまま慣れた手つきでタブレットを操作して、インターネットブラウザのブックマーク、その最深部へと保存していたサイトへとアクセスをしていく。

 一人暮らしなのだから誰かにバレるはずもないのに、それでもまるで自分自身から隠すように登録していたそのサイトは、後ろ暗い————というよりも、勝ち組の人生を送ってきた池にとっては、自身の矜持を損なうような下世話なサイトだったからだ。

 そこは、いわゆる会員制アートサロン、あるいはパトロン支援型ファンクラブサイトとでも呼ぶべきサイトで、性行為を代表とする十八禁的な内容がアップロードされているような場所だった。

 直球で説明すれば、ポルノサイトだ。


「『裏おじさんちゃんねる』……くそっ、本当にふざけたクラブ名だなっ!」


 池がそのサイトで支援しているのは、そのファンクラブだけだった。

 しかも、いくつかある支援プランの中でもっとも高額な、その月額で五桁の日本円が飛んでしまう『ドスケベプラン』を支援しているのだ。

 池にとってはその程度の金額は痛くも痒くもないし、むしろ、高額なほど自分は恵まれた人間なのだという卑しい優越感を抱くこともできる。

 だがそれ以上に、このようなサイトに高額支援をしているという事自体に、ある種の屈辱を覚えてしまう高いプライドを持ってもいた。


「更新は……来てるな」


 投稿記事のページへと移動すると、そこには今日もまた新たな『作品』がアップロードされていた。

 このファンクラブを制作しているユーザーの名前は、『おじさん』と名乗っている。

 表とも言えるべき世界的動画サイトの人気配信者と同名なことは支援者たちは様々な憶測を呼んでいるが、いわゆる『特定班』によると、そのおじさんの人気に便乗しているだけの別人だろうというのが濃厚だった。

 そうなると一種の情報誤認としてアカウントをBANされてしまいそうなものだが、その配信内容が非情に人気が高いためにそれを免れているという一面も持っている。


 このユーザーがアップロードしている作品とは自作のアダルトビデオだ。

 そして、その動画に登場するのはこの世のものとは到底思えないほどの美貌を持った美女が、まさに群れと呼ぶに相応しいほどの人数で登場していた。

 それでいて、男性は常にこのユーザーであるおじさん一人という、未来から優れた生成AIを持ってきてフェイク動画として作成しているのではないかと、SF的な妄想をしてしまいそうなほどに現実離れしたエロ動画なのである。

 

「なんなんだよ、この女たちは……このおっさん、いったい何をどうしたらこんな女たちとエロ動画なんて撮れるんだ……?」


 投稿記事のページに並ぶ、圧倒的な美女たちのサムネイル。

 それらは無料プランでもどのような美女が登場するのかを確認できるようにと、サムネイルの写真はエロ写真ではなく、日常の一幕を切り取った思われる平凡なものだった。

 しかし、そのサムネイルの写真だけでも、性欲が旺盛な男ならばオナニーのおかずにしてしまいそうなほどの美貌とエロスを持ちあわせている。

 例としてその投稿記事のタイトルをいくつかあげるならば、『完堕ち、冬の女王。愛しい旦那様へと玉座を捧げます』や『最強の女戦士、キモオジのチンポトレーニングのパーソナルトレーナーに』などのようなものがある。

 そんな、どこか噴飯もののタイトルとともに並んでいる美女は、ともに怜悧な美貌を持った、傾国の肩書が似合いそうなほどの美女だった。


「見せつけやがって……! 結局、金儲けしつつ自己顕示欲を満たしてるだけだろうが……女の人をモノとしか思ってない、最低のクズだ!」


 そして、サムネイルで並んでいる美女たちは高頻度な更新でどんどんとその艶姿をネットの海に放流していた。

 これが金儲けだけでないことぐらい、池にはわかる。

 おじさんなる下品な中年男が持つ、幼稚に肥大化した自尊心を満たすために、『お前たちがシコシコオナニーしている女は、俺の都合のいい雌奴隷なんだぞ』と見せつけているのだ。


「このサイトのせいで、少子化が進んでるってか? ……笑えないな、俺もこれを見てから、恋人なんて作る気も亡くなっちまったんだから」


 本来であれば、池のようなプライドの高い男が好むようなサイトではない。

 だが、このサイトは違った。

 登場する女優たちのレベルが、あまりにも高すぎるのだ。


 池は生まれてから一度も、女性に不自由したことがなかった。

 学生時代はもちろん社会人となってからも、言い寄ってくる女性は山ほどいた。

 それこそモデルや女子アナのような、男性が一般的に『レベルの高い女』と判断するような女性との交際経験もあるほどだ。

 だが、今の池には恋人がいない。

 というよりも、作れなくなってしまったのだ。

 このサイトを知ってからというもの、その周囲にいた女性と動画に登場する女性たちのレベルの差に耐えきれなくなった。

 例えば、合コンのようなもので『普通にきれいな女の人』が現れても、その人物と交流するよりも、池は自宅へと戻ってこのサイトでオナニーをしたいと、まるでなにかにそんな嗜好を刷り込まれたかのように考えてしまう男になったのである。


「……顔にモザイクもかけてないのに、なんで身バレもしないんだよ。陰謀論の認識阻害アプリが開発されたってのが笑えないじゃないか……!」


 その動画に登場する女性たちは、このサイトのマナーとしての秘部へのモザイク以外は顔出しをしている状態だった。

 この高額プランを支援している男たちは、その美女の正体をこぞって『特定』をして身バレしてやろうと励んでいるようだが、不思議なことにまったくそれらが成し遂げられたことはなかった。

 あのアイドルにそっくりだとか、あの会社の社長に似ているとか、そういうコメントが出てくるものの、しかし、その後の『特定班』によってむしろ『絶対にその人じゃない』という具体的な証拠が出てきてしまうのだ。

 それこそ、池が口にしたように、ファンクラブ内で囁かれているように、見ている人間の認識を捻じ曲げるなんらかのオカルト的スーパーパワーが存在しているとしか思えないほどである。


「……いた」


 そんな中で、その投稿ページの一番上、最新の記事のサムネイル画像に池の視点が釘付けになってしまう。

 輝くような金色の髪に、どこか華奢で小柄な肉体。

 際立った美貌はまるで周囲を威嚇するような冷徹さを醸し出しており、それなのにどうしようもないほどに男の獣欲を引き立てている。

 メタトロン・ジャンヌ。

 池が憧れる女性にそっくりな女が、そのファンクラブのエロ動画に顔を連ねているのだ。


「本当に、ムカつくぐらいよく似てるな……!」


 もちろん、本人であるはずがないと池は断言できる。

 あんなにも高潔なメタトロン社長が、こんな裏サイトも同然のファンクラブにアダルト動画の女優として出演しているわけがない。

 これは『そっくりさん』だと、メタトロンを敬愛しているからこそ池は断言できる。

 世界には自分に似た人間が三人はいると言うが、この女優はその中でも極上の『似ている個体』なのだろうと、池はそう頭では理解していた。


「ふぅ~~……! ふぅ~~……!」


 だが、そんな風に思い込もうとしている池にとって幸か不幸かはわからないが、この動画には、高度な『認識阻害魔術』が掛けられていた。

 閲覧者は、『この美女に見覚えがある』と感じることはできても、決して『これは本人なんだ!』と特定することができないよう、脳の認識野に霧がかかるような処理が施されているのだ。

 ネット上の掲示板でも、このサイトの女優たちの特定作業は何度も試みられたが、誰一人として正解にたどり着けた者はいない。

 誰かに似ているけれど、誰でもない。

 その曖昧さによって、むしろ男たちは背徳感をより一層煽られて、興奮のスパイスとしているのだ。


「再生……だ!」


 タイトルは『人類の裁定者ちゃん、チンポに忠誠を誓う』というなんとも気合の入らないものである。

 しかし、裁定者というどこか宗教的なそのフレーズが、池の中にあるメタトロンの天使性を強く連想させるもので、そのタイトルだけで思わずチンポを勃起させてしまうほどだった。

 池は画面をタップして、ファイルをダウンロードして、そのまま動画を再生していく。


 最初に始まったのは、こんな場末のポルノサイトには相応しくない豪奢な映像である。

 神殿のような映像が映し出されて、そこをカメラが進んでいって、寝室と思われる部屋の扉が開いた。

 そこには、純白のドレスに黒いタイツ、さらには『よく出来た作り物に見える天使の翼』を身に着けた、一人の美少女が立っていた。

 画面越しでも見ている側の背筋を正すような独特のオーラに、その怜悧な美貌に冷ややかな視線は、まさに池が理想とする女性であるメタトロン・ジャンヌ社長その人とそっくりである。



 ————もはや言うまでもないだろうが、この女優は間違いなくメタトロン本人だ。



 おじさんとはすなわち肝尾拓郎であり、このサイトは肝尾が登録して高額の支援プランに加入している人物たちへと自分のハーレムを見せつけるためだけのページだ。

 表の世界最大規模の動画サイトでは日常的なイチャイチャを見せつけて、このパトロンサイトでは夜の濃厚でドスケベな時間を見せつける。

 そうすることで、肝尾は転移する前までの弱者男性として培ってきた劣等感を癒やしつつ、同時に、他者に対して優越感を覚えることで下劣な欲望を満たしていたのだ。

 メタトロンもまた、そのための道具として扱われているだけに過ぎない。

 そして、メタトロンの可憐な唇がゆっくりと動き、オーディオ設備にも力を入れている池の部屋に低く、その美しい声が響き渡った。


『————人類は、救いようのない存在です。その悪性は度し難い醜悪さに満ちている。一度滅びたこの人類の修復へと、惑星の限られたリソースを注ぐということに、私は強く反対をします。愚かしくも霊長を名乗るのならば、自身が滅びた後に生まれくる新たなる種のために惑星の力を残しておくべき。そのためにも、私は人類へと『粛清』という裁定を下しました』

「ドラマ系……か。人間に裁きを与える天使様って設定なんだな」


 恐らくは、その発言の内容と翼からして、このポルノ動画はいわゆるドラマ仕立てのものなのだろう。

 淡々とした口調でその女優が放つ言葉は、視聴者の背筋を凍らせるような威圧感に満ちており、ひょっとすると演劇畑の人間が副業として行っているのかもしれないと思うほどだ。

 そして、その発言の内容からこのドラマの粗筋を池は的確に読み取る。


「すごく……メタトロン社長に近いんじゃないか? 天使ってのは非現実的だけど、この性格は……かなり社長っぽい……!」


 実はこの女優と同一人物と思われる女性は何度か『裏おじさんチャンネル』に登場しており、その際には『図書館の司書』であったり、あるいは『だらけた生活を送るニート美少女』だったりしたものだった。

 それらも魅力的ではあったが、やはり、池の理想は冷淡としつつも優秀な、無機質さすら感じるその美貌を持った『天使のような美少女』だ。

 社会人であるメタトロンのことを美少女と連想するのは失礼かもしれない。

 だがそれでも、公的に明かしている年齢よりも十は若く、というよりも、幼く見えるメタトロンに対して、池は密かに心中で美少女という呼称を用いていたのである。


「こ、このまま……この神聖な女の子に、イジメられるシチュエーションで頼むぞぉ……!」


 思わず、自身のマゾヒスティックな希望が漏れ出していく。

 池の理想を体現したかのような神聖さと冷徹さを感じさせる美少女に、どこか冷めた目で見下されながら、雄として責められたいという倒錯した欲望を抱いてしまったのだ。

 触れられざる神聖な存在を犯したいというのが男として当然の欲望ならば、同時に、絶対の存在に虐げられたいという欲望もまた男として抱いても何も不思議ではない欲望と言えるだろう。

 池は鼻息を荒くしながら、その画面を食い入るように見つめていった。



『————ですが。私はかの御方に出会い、知りました。人類という存在は、長き年月を経て、一人の『正解』へとたどり着いたのだ、と』

「は………?」



 しかし、池の願望通りには動画は進まなかった。

 メタトロンがその小さな体を跪かせると、カメラが動き、一人の男を映し出した。

 その画角の影響でちょうどカメラに今まで映っていなかったその男は、この支援サイトにおける大人気ユーザーである『おじさん』と呼ばれる中年男性だった。


『ああ……我が、新たなる主よ……♡ 多くの牝たちを導く、偉大なるマスター♡ この星の答えであるあなたのお慈悲を……この愚かなる牝にもお恵みくださいませ♡』


 そうして、メタトロンの恍惚とした顔が画面いっぱいに映し出される。

 その顔は奇跡を目の当たりにした敬虔な修道女のようにも、あるいはもっと卑近に、憧れのアイドルを前にした乙女のようにも見えるものだった。

 池の中にあるメタトロン・ジャンヌは絶対にしない顔である。


『ぐひ……ぐひひっ!』


 そんなメタトロンを見下ろすように、このページの主とでもいうべき人間が聞くものの不快感を煽るような不気味な笑い声をあげた。

 そうしたまま、メタトロンを馬鹿にするような視線を向けたまま、おじさんはズボンを脱ぎ捨てる。


「うぉっ……!? あ、相変わらず、すごいチンポのデカさだな、こいつ……!」


 そうして出されたおじさんのチンポは、巨根という表現が馬鹿らしくなるほどに大きかった。

 ビキビキと脈打っている竿の部分は、それこそメタトロンの細腕よりも太いのではないかと思うほどで、長さは池の平均的な日本人チンポ、その倍は軽くあるのではないかというような規格外の大きさである。

 そして、その頂点についた大きな亀頭は子供の握り拳ほどのサイズはあり、その上で太い竿部分との間に作るカリはえげつない角度を作っており、イメージだけでいうならば、もはや性器というよりも凶器と呼んだほうがしっくりと来るような、そんな魔性を秘めた魔羅チンポなのだ。

 メタトロンの可憐さもあって、すっかりと雄の性欲が最優先状態の『ポルノ脳』にされてしまった池は、そのチンポを見て『こんなチンポを持ってるならハーレムみたいなのも築けるわな』という、本来であればありえないはずの考えを抱いてしまうほどである。


『ぐひ、ぐひひ……【ピー】ちゃんも、すっかりと変わったねぇ♪ 僕が最初に出会った時は、あんなにも人間のことが嫌いだったのにさ!』


 恐らくは名前を呼んだのだろうが、あくまで同人アダルトビデオであることからか、その名前に被さるように高い音が響いて、その名前を聞き取ることができなかった。

 ニタニタとした、普通の人間ならば嫌悪感を抱いてしまいそうな笑みを浮かべながらの、その発言にメタトロンはやはり跪いたまま、少し照れくさそうに頬を染めながら言葉を返す。


『っ……♡ そ、それは……あくまで、あなたと出会う前だったからに過ぎません……♡ カラスは黒いという命題を覆すには、白いカラスが一羽居れば良い……♡ その白いカラス……愚かではない人類であるあなたがいる以上、私が考えを改めるのは当然のことですから……♡』


 それは使い古された比喩表現だが、メタトロンにとっては真実でもあった。

 いくら大罪を見たことによってその天使性をいくらか欠損させてしまったとはいえ、それでもその大本が天使という概念であるがゆえにある種の公平性を優先させる。

 そんなメタトロンが肝尾の魅了チートに侵食された。

 その結果、『人類が生み出した正義』とも言える肝尾が存在する以上、人類にはまだまだ可能性が残されており、肝尾のような人物が増えることを期待して惑星のリソースを人類に当てることはごくごく当然のことだ、とメタトロンは考えたのである。


『そうだったねぇ。イタリアのフィレンツェで出会った時も、いろんなことを見て人類に起こってたけど……ぐひひ、その間違いを正すためには、僕にどうすればいいって教えてくれたんだっけ?』


 肝尾のニヤついた笑みから出される言葉は全て自分の欲望を満たすためのものだ。

 これもその一つで、かつて、カルデアが発見したイタリアのフィレンツェに発生した特異点で出会ったメタトロン・ジャンヌは、(メタ的な言い方になるが)原作ゲームでの『トリニティ・メタトロニオス』とそっくりな世界を創り上げていた。

 人理沈没という大災害に抗うカルデアに対して、このまま滅びた人類を取り戻すよりも、人類はここで終了と確定させて、その惑星のリソースを新たな命に回すべきだと主張したのだ。

 ここまでは原作と似たような展開だが、その原作とはもっともかけ離れた存在、肝尾拓郎がいたことで、その主張もただの『エロシーンのための前フリ』へと貶められたのである。


『それは……♡ 多くの女性が……そう、私を含めて……その子宮であなたの子を孕めば良い、とっ……♡』

「なっ!?」

『あなたの血を継ぎ、あなたの下で育つ子ならば、人類というものを新たなステージに進ませるでしょう♡ それは、全能の代行者であるこの私が保証します♡』


 そして、メタトロンの『人類への嫌悪』という命題に対して、『その嫌悪を覚えない人間が一人いる』という反例を持ち出し、『肝尾のような人間、つまり肝尾の子供を産めば良い』と結論を出させたのである。

 狂っているとしか思えない発想だが、魅了チートでその思考を肝尾に都合のいい形に変化させられたメタトロンにとって、それはこれ以上ないほどの冴えた発想に思えてしまうのだ。


『ぐひひ、そうだねぇ! そのための子作りに……まずは、チンポを大きくしてもらおうかな♪』

『ええ、かしこまりました♡ それではまずは、オチンポ様へ……んぅ~~♡』


 ちゅぅっ♡


『おほっ♪ こ、こんなかわいい子のちんぽきすっ……! やっぱり、セックスに飽きるなんてないよねぇ……! 何回受けても、背筋がブルブル震える気持ちよさだよぉ♪』


 そして、長い前置きが終わって、このエロ動画の本番が始まる。

 可憐な美貌のメタトロンが、目を細めた『キス顔』を取ると、その唇をチンポへと捧げたのである。

 それは舌を出さずに唇をチンポにつけるだけのものだが、しかし、リップ音がオーディオ越しに響きわたるほどのチンポキスだった。


『んちゅぅっ♡ ちゅっ、ちゅぅっ♡ むちゅぅ、ちゅぅ、ちゅぅぅ~~~~♡』

『おっ、おっ、ぉおっ!? ぐひ、ぐひひぃ! うっすら塗ってた口紅で、チンポにキスマークがべっとりとついてきて……えっろぉ~♪』


 そのチンポキスを一度だけではなく何度も、それも一箇所だけではなく亀頭にも竿にも、さらには金玉にまでキスを繰り返していく。

 そうすることで、この動画を取る前に薄く口紅を引いていたメタトロンの唇によって、その魔羅チンポはもはや通常の皮膚よりも口紅によるキスマークのほうが多いのではという、なんともドスケベなチンポへと変わっていくのだった。


『こ、こんな情熱的なチンポキスをされたら、ガチ勃起しちゃうよぉ♪』


 むくっ、むくむくっ、むっくぅぅ~~♪


「くぅっ……!? こ、こいつ……やっぱり、まだ本気の勃起はしてなかったのか……!」


 それだけではない。

 ズボンを脱いだ時からすでに池の倍はありそうだった魔羅チンポが、さらにビキビキと膨張していき、今では三倍近くあるのではと思ってしまうほどのサイズに変わっていったのである。

 同時に、池はとんでもない敗北感に襲われてしまった。


「くそっ……こんなかわいい子とセックスできるってわかってるのに、なんで勃起してないんだよ……! 普通、この部屋に入る前から勃起するもんだろ……!」


 敗北感を覚えた理由、それは自分のチンポよりも巨根チンポを持っているということはもちろんだが、それ以上に、肝尾がメタトロンとのセックスを前にしても勃起していないということだ。

 池ほどのプレイボーイであっても、動画でその姿を見た瞬間にまるで中学生男子のように本気の勃起まで導かれてしまったのに、肝尾はそれをしていない。

 肝尾にとってメタトロンとセックスをするということは当たり前のことで、それ自体が性的興奮には繋がらず、このようなチンポキスの前戯があって初めて勃起が誘発されるのだ。


『ちゅぅ、むちゅぅぅ~♡ ちゅぅ……ぷはぁっ♡ はぁ……はぁぁ……♡ そ、そろそろ、良いでしょうか……♡ あなたの子を増やすため、あなたのハーレムに加入することを誓った身として……はぁ、はぁ……♡ あ、あなたの許可がなければ、奉仕することもできません……♡

 ですから、どうか……♡ 卑しい牝奴隷に堕ちたこの私に、主以外に命を下すことなど許されないはずのこの私に♡ どうぞ……その言葉を、お与えください……♡』

「ふぅぅ~~! くそっ、まだチンキスだけなのにエロすぎる……! なんで、なんでこんなおっさんがこのレベルの女とのハーレムなんて作れてるんだよっ……!」


 シコシコッ、シコシコっ。


 メタトロンが圧倒的にへりくだった状態の『男尊女卑』的なエロ動画に、池は悔しさに歯を噛み締めながらも、そのままチンポをシゴいていくことしかできない。

 その無力感もまた、マゾヒスティックな欲望を目覚めさせて、池を興奮させてしまう。

 本人は知る由もないが、実は肝尾の魅了チートによって、肝尾のセックスを見る人間は次第に自分が触れることも出来ない牝とセックスをしている肝尾への悔しさが快感につながる、ある種のマゾ性癖に目覚めるようになっているのだ。


『ぐふ、ぐふふぅ! メ、メタトロンちゃんがそういうのなら、仕方ないよねぇ♪』

『は、はいっ♡ ありがとうございますっ♡ ふふふ、あなたの優しさは……やはり、他の人間とは隔絶した器の大きさを感じさせるものですね♡』

『それじゃあ、いいかい? さあ、僕のチンポを————』


 そんな風に見ているしかできない池と、そして、メタトロン自身を嘲笑うかのように肝尾は嬉しそうな顔を浮かべた。

 そして、その顔のままねっとりとした言葉で、メタトロン自身が口にした通り、偉大なる創造主以外では許されるはずもない『天使への命令』を、あくまでメタトロンにお願いをされたからという風を装ったまま口にしたのである。



『しゃぶっていいよ、【ピー】ちゃん♪』

『んじゅるうっぅぅぅっぅ~~~~♡ じゅぽぽぉぉ、ぐじゅるぅぅ、むじゅぷぅぅ~♡ じゅるるぅ、れろれろぉぉっ♡ むじゅぅぅ、じゅちゅぽぉぉ~~♡』



 そうして、主以外の存在からの命令という、暴挙に近い言葉を受けたメタトロンは肝尾の魔羅チンポへとしゃぶりついていったのである。

 それも、じゅるじゅる、ぐぽぐぽ、なんていう卑猥な水音がオーディオから流れるほどの、そのチンポよりも細いのではないかと思う喉を使った濃密なハードフェラだ。


『ぷはぁっ♡ むちゅぅ、ちゅぅぅ♡ れろぉぉ~~……♡ ふふふ、見ているだけでもわかっていたことですが……喉を拡張されるように深く咥え込むことで、改めてこのオチンポ様の凄まじさを感じます……♡ 私の体がどうしようもないほどの快感を抱いてしまう……♡ 人間の罪であり、しかし、分かち難い衝動の一つである色欲……♡ それがどうしようもなく、むちゅぅ♡ 刺激されてしまいます♡』

『ぐひひ、真面目なメタトロンちゃんはあんまり好きじゃないかな♡』

『……あまり、いじめないでください♡ あなたのような人物と情愛を交わすだけでも魂が蕩けそうな幸福だというのに、こんなオチンポ様に肉体にまで快感を与えられては……嫌いになんて、なれるわけないでしょう♡』


 ガチガチに勃起した魔羅チンポとメタトロンの可憐な美貌が並んでいるその光景は、レイプ現場を撮影したとしか思えないほどに相容れないものだった。

 しかし、メタトロンの蕩けた表情と甘い言葉は、純愛セックスの場でしか現れないものである。


「くそ、くそっ! こんな男が……こんなかわいい子にガチ恋されてるなんて……!」


 二人の間にある愛情と、そして、揺るがすことの出来ない『上下関係』というものを実感させられてしまった池は、『悔シコ』とでも言うべきオナニーが止まらない。

 今も画面上ではその小さな口から短い舌を伸ばしてチンポを舐めているメタトロンの姿が映っており、こんな不快なものは見たくないという気持ちと、このエロすぎる動画をもっと見たいという矛盾した二つの感情が同時に湧き上がっているのだ。


『むじゅるるぅ♡ ちゅぅ、むちゅぅぅ♡ そ、それでは……その……♡ わ、私の下手なフェラチオでは、その、いつまでもイケないでしょうし……♡ あなたがしたいように、乱暴にしてもいいんですよ……♡』

『う~ん? そんなことないよ、最初に比べたらずっと気持ちいいし、上手だからこのまま射精までおまかせコースしちゃおうかな~♪』

『れろぉ、ちゅぅぅ♡ うっ、うぅぅ~……♡ い、意地悪ですね、あなたは……♡ い、いえ、優しいあなたが時折見せる、この悪戯っぽいところも素敵なのですが……♡ わ、私に言わせたいなんて、本当に趣味が悪いです……♡』


 ちゅるちゅる、れろれろ、と。

 会話を続けている間にもメタトロンはフェラチオ奉仕を止めなかった。

 それどころか、言外にもっとハードなプレイをねだっては、それを肝尾がわざと気づかないふりをしているという茶番まで繰り広げているほどだ。

 どこかマゾ的な性癖を持つメタトロンは、肝尾にもっとイジメて欲しいと願い、羞恥に襲われながらもその言葉を口にしていく。


『わ、私の……頭を掴んで……♡ ガツガツと、喉を犯してくださ————』


 ガシッ! スゥ、パンッ! パンパンッ!


『————ふぎゅっぅうっっ♡ んぐぅう、じゅるるぅぅっ♡ おぎゅ、ほごぎゅぅぅぅっ~~♡』


 メタトロンほどの美少女から出された『イラマチオ懇願』に、肝尾のような男が我慢できるはずもない。

 その言葉を言い切るよりも早く、メタトロンのサラサラとしたシルクのような金髪を乱暴に掴んだ。

 そして、そのまま自身の腰を前に押し出しながら、同時にメタトロンの小さな頭をぐいっと自分の腰元へと押し付ける、レイプのような『イラマチオ』を開始していったのである。


『ほぎゅぅぅ、むぎゅぅぅ♡ おごぉぉ、おげぇぇっ♡ はぐじゅるぅ、むじゅるぅぅう♡』

『ぐひひ! やっぱりこのせませまの喉マンコ、最高ぉ! しかも、犯せば犯すほどきつく締めつけてくるし……本当に、マゾ牝はイラマチオのし甲斐があるなぁ♪ おぉ~~……この最高の美少女の最高の喉で腰ヘコするの、たまんねぇ~……♪』

「な、なんてひどい……こんなの、レイプじゃないか……! あんなに激しくしたら、ち、窒息しちゃうじゃないか……?」


 その激しいイラマチオは、メタトロンの顔が驚異的な小顔で、その体型も華奢なことから、もはや窒息死の危険性すら感じさせるものだった。

 事実、ポルノ動画から一転してスナッフビデオさながらの行為に変わろうとしているその動画に、視聴者である池は思わずオナニーの手を止めてしまったほどである。


『おぐぅぅ、じゅるるぅぅ~♡ むじゅるぅぅ、はぎゅぅぅ……♡』

「だ、だけど……くそっ……! な、なんでそんな幸せそうな顔してるんだよ……! あんな、動画の最初だとメタトロン社長みたいな、完璧な可愛さだったのに……! 口をレイプされて、なんでそんな幸せそうな顔をぉ……!」


 シコシコっ、シコシコっ。


 しかし、イラマチオを受けているメタトロンが浮かべている恍惚と蕩けた表情に、池は『敬愛するメタトロン社長』を重ねてしまい、まるで寝取られたかのような悔しさに駆られて、オナニーが再開していく。

 池の中のメタトロンが絶対にしない顔を、メタトロンによく似た女が、自分がなんとなく反感を抱いてしまうようなおじさんを相手に浮かべている。

 その事実がこれまで勝ち組人生を送ってきて育まれた、池の中にあるプライドを大きく傷つけ、同時にそのプライドが傷ついていることに強いマゾ興奮を抱いてしまったのだ。


『おぉぉ~~! そろそろ、漏れるぅっ! この喉マンコが気持ちよすぎて、ザーメン漏らしちゃうよぉっ!』

『んぐじゅるぅぅ♡ 射精して、ほぎゅぅっ♡ だして、くだしゃ、おごぉぉぉっ♡ ほぐぅぅ、じゅるるぅぅっ♡ ぐじゅるるぅ、おぐぅぅっ♡』

「ああ、くそっ! 射精る、俺も射精る……! こ、こんなキモいおっさんと一緒に、射精しちまう!  イクっ……イクぞ、メタトロンッ! お、俺のザーメンを、飲めっ! 飲み込めっ!」


 やがて、肝尾と池が同時に射精欲求の限界を迎えた。

 肝尾の射精宣言に合わせて、イラマチオの最中になんとか声を出したメタトロンはそれを受け入れる姿勢をアピールした。

 こんな自分本位としか思えないおっさんへと向けるその愛情に嫉妬しつつも、そのイラマチオを受けながらでも射精を求めるその姿に強烈な欲情を覚えてしまうのだ。

 そして、二人は同時に射精をしたのである。


「『くおぉっ……! 射精すぞっ、メタトロンッ!』」


 どびゅるるるっ! びゅるるぅ、びゅびゅぅ! どびゅぴゅぅぅ、ぶっぴゅるるぅぅ~~!

 びゅるっ! びゅ、びゅぅ! びゅぅ~~……!


『ほぎゅんぐぅうぅぅぅ~~~~♡♡♡♡』


 肝尾と池は奇しくも射精を同時に行うだけでなく、その射精の際の言葉までそっくりそのままという、奇妙なシンクロを帯びた射精をしてしまった。

 しかし、一緒なのはそこまでだ。


『はぁ……ふぐぅ、んじゅるるぅぅ~~……♡ あぁ、なんて……量……♡ そして……はぁぁぁ~~♡ この芳醇な味と粘り気♡ んぐぅ、喉に引っかかったままで、うまく嚥下できないほどです……♡』

「くぅっ……ぅぅ……! はぁ、た、タブレットの方に、ぶっかけだぁ……! メタトロン社長似の美少女に、お、俺のザーメンをぶっかけ……ぅぅ~~……!」

『ふぅぅ~~、んぐぅ♡ はぅ、むじゅるぅ♡ んぅ、ぁぁぁ~~♡ どうですか、あなたの大量に射精した精液……すべて、飲み干しましたよ♡ 口の中もきれいなものでしょう♡』


 肝尾はメタトロンの口内に大量に精液を吐き出して、その精液をすべて飲み干させた。

 それどころか、その飲み干した口内を見せつけるように指で口を拡げて向けてくるのだ。

 池は大モニターのメタトロンと、自身の手元にあるタブレットの中のメタトロンを見比べる。

 タブレットにはべっとりと精液で顔が汚れたメタトロンがいるが、大モニターのメタトロンは精液など一つもついていないきれいな顔が映し出されていた。


「くそっ、くそぉ……! お、俺は、画面にぶっかけてるだけなのにっ……あのおっさんは、こんな美少女にザーメン飲ませてるなんて……くそぉ……!」


 惨めで仕方がなかった。

 自分はオナニーで射精しているのに、肝尾は女の喉へと精液を流し込めている。

 その差に池は、なんとポロリと涙をこぼしてしまったほどだ。


「はぁ……はぁ……さすがに、ちょっとダルくなってきたな……って!?」

『ぐひひ! フェラ奉仕だけで終わりじゃないってことぐらい、わかってるよねぇ?!』

『きゃぁぁんっ♡』

「あっ……! す、ストップ! 停止だ、停止!」


 その悔しさに耽っていると、画面の中ではさらに展開が進んでしまっていた。

 肝尾のマジカルチンポはただ大きく太く、そして精液の量が多いだけではなく、精力絶倫で何連発でも射精ができる規格外のものである。

 一度目の射精がこれほどに激しかったために、二回連続のオナニーなどはできない。

 池は慌てた様子で精液がべっとりとついたタブレットを操作して画面を停止させる。

 今日はここまで、といったところだろう。


「このおっさん、マジでとんでもないスケベオヤジだな……一回のセックスで何回射精するつもりだよ」


 池はティッシュで股間とタブレットを吹きながら、そんな愚痴を口にしていった。

 それは妬みのような感情も含まれていたもので、自分も可能ならばもっとオナニーを楽しみたいという願望も含まれた愚痴だった。


「……こういうタイプのエロオヤジに、メタトロン社長は苦しめられているんだよな」


 画面の中の美少女は、あくまで童顔の天才経営者である『メタトロン社長』の『そっくりさん』に過ぎないと思っている池だが、それでも射精後の賢者タイムだからこそ考えることがあった。

 メタトロンは今、会長である肝尾のセクハラで苦しめられている。

 それをなんとかしなければいけないと、メタトロンに似た美少女でオナニーをしてしまった罪悪感から目を背けるように、池は奇妙な正義感を抱いたのだ。


「メタトロン社長は、あんな中年オヤジにいいようにセクハラされていい人じゃない……! こんなの、間違ってるっ! 俺があいつを失脚させて、カルデア企画を名実ともにメタトロン社長のものにしてあげるんだ……! そして、俺はその功績を持ってメタトロン社長に認められて、あの人の右腕に……!」


 それは信仰と独占欲と出世欲が混じった、独特の思想だった。

 池の中にある複雑でありつつも下賤な欲望に満ちたその考えを胸に、池はタブレットと大モニターの電源を落としていく。


 池は知らない。

 この動画の中の美少女がメタトロン本人であり、さらに相手が憎んでいる肝尾だということを。

 また、自分がこの魅了チートでマゾ性癖が植え付けられているということも、知らないのである。


 そして、実はこの『裏おじさんチャンネル』という、いかにも男がオナニーのおかずとして使用しそうなファンクラブは、女性支援者も多く存在している。

 男たちがおじさんに抱かれる美少女たちのエロ動画を見たいと思うように、世の多くの女性たちもまた、このおじさんのセックスを見たいと高額プランに参加しているのだ。

 それほどに、常識を馬鹿にしているかのようなとんでもない力を持った相手を敵に回そうとしていることと、肝尾が並行世界で受けた『屈辱』の理不尽な『復讐』のために、池を『ターゲット』としていることも知らない。


 何も知らない池は、絶対に負ける戦いへと向かう決意をしながら眠りにつくのだった————。





 翌朝の昼食時を終えた後のことである。

 カルデア・タワーと名付けられたその高層ビルにある自らの会社、その自身のデスクに就いた池は、落ち着かない様子で周囲を確認していた。

 敬愛するメタトロン・ジャンヌの姿が、昼中の休みを終えてから見ることができない。

 そのことに、池は昨日の決意が早々に実を結ぶことになるかもしれないという、予感めいたものを覚えた。


「ああ、すまない。ちょっといいかな?」

「はい? どうされましたか?」


 池はデスクから立ち上がり、近くを通りがかった女性社員を呼び止めた。

 女性社員は優秀で顔立ちも整っている池に声をかけられたことに、目に見えて嬉しそうな表情で振り返ってくる。

 普段ならばそれをなんとも思わないぐらいには『モテ男人生』を送ってきた池だったが、昨夜の屈辱的な『悔シコオナニー』をして傷ついている心が癒やされるような、下劣な優越感を覚えてしまう。

 その優越感とは眼の前の女性を一人の人間ではなく、自身を持ち上げる一つの道具としか思っていない傲慢さが生み出す優越感であり、自身が嫌っているはずの肝尾と同種の感情の動きを見せたのだ。

 結局のところ、人間とは卑賤な生き物なのだろう。


「社長はどこに行かれたのかな? 確認しておきたいことがあったんだが……」

「それでしたら、昼休みの間に会長が来られて……そう、別部屋の応接室の方へと向かわれましたよ」

「そうか……! いや、ありがとう!」

「実は私、会長直々にお声をかけてもらって……! 肝尾会長から『緊急の経営戦略会議』があるとかで、直々に社長に用があるから呼び出して欲しい、って! なんでも、極めて秘匿性の高い案件だから、人払いをして二人きりで行うそうです。その伝言を頼まれて、そ、その際に頭を撫でてもらえたりもしてぇ……♡」


 だが、その優越感も一瞬のことだった。

 目の前の女性社員は、池というエリートかつイケメンの社員がいるというのに、『会長』という言葉を出した瞬間に嬉々とした表情で言葉を連ねていくのだ。

 それは明らかに自分を前にして喜色ばんだ様子とは格が違う、思い出しただけで幸せだと言わんばかりの様子に、池は敗北感を覚えてしまう。

 もっとも、いくら相手が『モブ』とはいえ、女性である以上は肝尾の魅了チートが効かないわけもなく、勝つこと自体が不可能なのだから、その敗北感は覚えるだけ無駄というものだった。

 それを知らない池は屈辱にまみれながらも、人当たりのよい笑みを浮かべて会話もそこそこに切り上げる。


(応接室……! チャンスだ、あそこには『仕込み』があるからな! そこに誘い込んだということは、社長もきっと、ついに会長へと『反撃』をするつもりなんだ!)


 池はそのままスーツの懐に手を寄せて、高性能な小型ボイスレコーダーと小型のカメラの存在を確認する。

 そして、さらには二人が向かったという『応接室』だが、実はここにはメタトロンを通して『隠しカメラ』の設置を提案し、それを社長自身が許可していた。

 そんなところで二人っきりになるということは、つまり、セクハラの現場を抑えようとしているのだ。


「待っていてください、社長……! 俺も手伝います……!」


 池は目的の扉の前にたどり着く。

 メタトロンだけでも肝尾のセクハラに対して強く出ることはできるだろうが、自分が『公平な第三者』として介入することで、その訴求はより強くなるはずだ。

 そして、そのことでメタトロンはより池の評価を高い形に改めて、あわよくば————。

 そんな打算を思いながら、ゆっくりと扉を開いて、中の様子を伺っていく。


『会長……どうか、もう許してくださいっ……』

『ぐひひ……せっかちだなぁ、メタトロンは。お互い、もっと楽しもうじゃないか♪』


 僅かに扉を開いただけなので中を覗き見ることはできなかったが、それでも十分すぎるほどの会話が池の耳へと飛び込んできた。

 切迫した声で許しを乞うメタトロンの声と、粘つくようにメタトロンを強請っている肝尾の声は、『普通の考え』ならば、それは権力勾配を利用した卑劣なセクハラとしか思えないものだ。

 なにせ、メタトロンはこれ以上ないほどのクール美女であり、肝尾は凡庸な中年男性に過ぎないのだから、それ以外にこのような会話が繰り広げられることなどあるわけがない。


「あのエロオヤジめ……絶対に許さないぞっ……!」


 池はドアノブに手をかけていた手に力を込めて、迷わずに一挙に扉を全開放した。

 そのまま手の中に小型カメラを構えて部屋の中へと向かって移動しながら、わざと大きな音を立てて、応接室へと侵入していく。

 そして、中で悪辣な脅迫を行っている肝尾を威嚇するように、大声を発したのである。



「そこまでだ、肝尾会長ッ! お前の悪事は、こうして全部記録させて……もら……って……?」



 ————だが、その糾弾の叫びは最後まで言い切ることが出来なかった。



 まるで喉の奥が凍りついたように全身の筋肉が動きを止めてしまい、そして、脳みそを直接ハンマーで叩かれたような衝撃に襲われる。

 その応接室では、池が想像していた『嫌がるメタトロンへと強引にセクハラを行う肝尾』というような光景は広がっていなかった。

 むしろ、その逆だ。

 そこに広がっていたのは、池の常識で凝り固まった貧相な想像力を軽々と凌駕するような、なんともおぞましい現実が存在したのである。


「…………は?」

「あなたは……なにをしているのですか?」

「ぐひひ! 困るなぁ、君ぃ! ぼ、僕はここに入っちゃ駄目だって、看板を立ててたはずだよぉ!」


 広々とした応接室の、その中央だ。

 肝尾が王様のように上等なソファーに座り、その正面に、最高級のペルシャ絨毯の上でメタトロンが『四つん這い』になっている。

 しかも、全裸でだ。

 ソファーに腰掛けた肝尾の股間へと自身のお尻を押し付けるように下半身を持ち上げて、四足獣のように這いつくばったその姿勢のまま、『ふりふりっ♡ ふりふりっ♡』と淫靡に腰を振っているのだ。


 それだけではない。

 その細い首には真っ黒な首輪が巻き付いており、そこから伸びるリードはソファーに腰掛けた肝尾の手で握られている。

 さらに、全裸になったその肌には『奴隷天使♡』『ご主人様に忠誠を誓います♡』『オチンポ様ハメて~ん♡』などのような、普段のメタトロンには到底結びつかないような卑猥な言葉がマジックで書かれているではないか。


「えっ……えぇっ……?」


 あまりの衝撃に全身が弛緩してしまい、池の手からポロリとカメラが滑り落ちた。

 池が現れたにもかかわらず、メタトロンは四つん這いのままお尻を股間に擦り付けるように動かしたまま、なんとも冷たい目で池という『部外者』を睨みつけてくる。


「しかし、ノックもしないで入ってくるなんて……マナーがなってないねぇ、君は。それとも、僕たちの関係に混ざりたくて、お願いに来たとかなのかな?」

「ち、ちがっ……お、俺は……社長を、助け……助けにっ……」


 肝尾の明らかな挑発にも池は何も返せなかった。

 助けにとはいうが、これはメタトロンにとって窮地だとは思えない。

 顔だけでなく全身を赤らめているメタトロンのその姿は誰がどう見ても欲情した姿であり、さらには池が現れてもなお腰を振り続けているその動きは、誰がどう見ても合意のセックスの関係と思われるだろう。


「しゃ、社長を……助けに来たんだ!」


 ————いや、これもまた強要されているのかもしれない。


 もはや、自分自身ですら信じきれないそんな言葉で、池は自分の脳を誤魔化した。

 きっとこれは、相次ぐセクハラと脅迫によって、メタトロンが一種の洗脳状態にあるのだと、そう自身に必死に言い聞かせたまま、言葉を続けていく。


「社長、大丈夫ですか!? 今、警察を呼びますから! 今の時代なら、こんな変態プレイも強要されたんだって、不同意な性行為だって主張すればきっと裁判でも勝て————」

「黙りなさい、池優介」


 しかし、そんな無茶な思い込みも、他ならぬメタトロンの凛とした声によって打ち切られてしまう。

 メタトロンはそこでやっと、ゆっくりと四つん這いの姿勢から身を起こしていった。

 池はそこでメタトロンの無毛パイパンマンコ、その上にある下腹部に刻まれた淫猥なタトゥーの存在に気づいた。

 そのタトゥーはキャスタークラスの適正を持つサーヴァントたちが、マジカルチンポと結びつけて創り上げた、女たちをさらなる快感の極楽へと導くための『淫紋』である。

 同時に、肝尾がその右手に刻んだ令呪と全く同じマークであり、つまりは肝尾の所有物であることをこれ以上ないほどにアピールしているものでもあるのだ。


「私の愛するマスターとの神聖なる種付けの時間を妨げるとは……あなたには失望しましたよ。元々、『優秀だが空気の読めない男』だとは思っていましたが……評価を改める必要がありますね。どうやらあなたは、『空気の読めない無能』だったようです」

「えっ……? あ、愛する、マスター……? く、空気の読めない、無能……?」


 メタトロンが冷徹な瞳で汚物を見るような色を宿したまま池を睨みつけて放ったその言葉に、池の思考は完全に停止してしまった。

 そんな池を面白おかしく見つめていた肝尾が、ここぞとばかりに口を開く。

 その顔には、これが『復讐の合図』なのだと言わんばかりの、邪悪な笑みが浮かんでいた。


「ぶひひ……実は、メタトロンちゃんには秘密にしてたよねぇ。こいつね、僕が言ってた『あのリスト』の一員なんだよ。ほら……『僕をイジメてた連中』ってやつ♪」


 肝尾が楽しそうに爆弾を投下していく。

 そう、その言葉はまさに爆弾だ。

 それは肝尾の魅了チートでその価値観と思考を侵食されてしまった女たちにとっては、絶対に許しがたい存在である。

 それこそ、肝尾のハーレムの中にいる女性ならば百人いれば百人が『大量殺人犯よりも罪深い存在だ』と応えるだろう。


「…………そうだったのですね。申し訳ありません、そうとも知らずに主任などというポストにつけてしまったことを謝罪します。どうやら、無能という評価はその男だけでなく、私にも当てはまるようですね。

 人理の危機が訪れる直前に、『並行世界』とも言える別世界から、この世界を救うために意識のみを転移してきたマスター……あなたがかつて生活をしていた際に、不当に虐げていたうちの一人がこの男だというのならば、そもそも雇ってすらいなかったというのに……!」


 メタトロンの冷徹な瞳から、今度こそ完全に『温度』が消えた。

 肝尾とは人類を導く新たなる神であり、自身の全てを捧げるべき絶対者だと、メタトロンは本気で思っている。

 そんな偉大なる主を傷つけたという過去は、たとえ、平行世界における出来事だったとしても、メタトロンにとっては『人類史最大の大罪』に等しいのだ。


「ぐふふ! いやぁ、メタトロンちゃんが池くんを便利に使ってるみたいだったから、僕のね、そのね、ぶひひ! 個人的な好き嫌いで会社のことに口出しちゃいけないかな~って、ちょっと明かせないままだったんだよ♪」

「……マスター、あなたは優しすぎます♡ 人理を救う旅でもそうでしたが、敵にさえその慈悲を向けて仲間として迎え入れるその器の大きさは誇るべきことですが……それでも、我ら牝奴隷のことを思うのならば、敵対者にも厳しく接して欲しい♡ どれだけあなたがこの男を許そうとも、私は許すことなどできません♡ この怒りを抱えたまま生きろなどと……あなたは、優しいがゆえに意地悪ですね……♡」


 そして、そんな『前世』や『生前』、『並行世界』と様々な言い方ができる時期に受けた屈辱を、肝尾はわざとらしく鷹揚な態度で『許す』姿勢を見せていった。

 もちろん、本当に許すつもりなどサラサラない。

 肝尾にとって池優介とは、優秀で顔が良くてコミュニケーション能力も高い、まさに自分が理想とするような勝ち組人生を送ってきたというだけでも憎らしい存在だ。

 それがさらに、かつて派遣先として雇い入れられた会社で、まだ若い池は直属の上司となったのだが、そこで、『ちょっとした言い争い』をしてしまった。

 愚鈍で頭が悪くて口も回らない肝尾が、弁舌にも秀でている池を相手に勝てるはずもなく、とにかく悔しい思いをしたのである。

 そんな相手を前に、明らかに男性として惹かれている女性だったメタトロンに自身を褒め称えさせることで、卑劣な優越感に浸るための、単なるポーズとしての『許し』でしかないのだ。


「な、何を言っているんだ……!? 俺が、そこの会長をイジメてた……? そんなこと、俺はしていない! それにメタトロン社長! そもそも俺は、貴方を救うために!」

「救う……? 救うと来ましたか、貴方のような低能な人物に、主の代行者たる私を救う、と?」


 メタトロンはそのまま、全裸に首輪だけなうえに体の様々な場所に卑猥な落書きをされている、なんとも惨めな姿のまま、池へと近寄っていく。

 惹かれていた女性の卑猥な姿に、ともすれば勃起を誘発されそうなものだが、メタトロンが放つ凄まじい威圧感に、池は生存本能からチンポを小さくして金玉を体の内側に閉じ込めるという、勃起反応とは真逆の行動を取ってしまうのだった。


「私を救えるものがいるとすれば、それは新たなる神である肝尾拓郎その人のみです。愚かなる人類を裁くという衝動に捕らわれてしまった私を、その類稀な弁舌で言い負かし、さらには敵として打ち払うのではなく自らの配下として迎え入れる器の大きさを見せた、人類最後のマスター。そして、私に女としての喜びを徹底的に教え込み、今もこうして愛してくれている、愛しい殿方……それが、この方なのです。

 そんな御方の爪の垢ほどの価値も持たない愚鈍な貴方が、私を救えるはずもないでしょう」

「そ、そんな……! しゃ、社長……貴方は、もっと気高くて賢い人間のはずです! そんな、頭のおかしい、ゲームみたいな設定を口にして……せ、洗脳されています! あなたは洗脳されているんです!」

「はぁ……本当に、あなたは物事の本質というものを理解していないようですね」


 そこまで言って、メタトロンは再び池を睨みつける。

 そして、いくら幾分か年若くなっているとは言え、あのドスケベ聖女の肉体を外殻として用いているのだから当然の巨乳を下から持ち上げるように腕を組み、決定的な言葉を池へと叩きつけた。


「貴方は私の『社会的な外殻』しか見ていなかったに過ぎません。私の本質は、この偉大なるマスターに尽くすためだけに存在する肉穴なのです。

 ……そして、貴方もまた、その『本質』を知っていたはずでしょう?」

「え……?」

「マスター、どうぞ、お願いします」

「ぐひひ、りょーかい! さっきまで見てたやつ、再生しちゃいま~す♪」


 メタトロンの合図と共に、肝尾はやはり意地悪そうに笑って手元のリモコンを操作していくと、ちょうど、肝尾のソファーの前にある、壁掛けの大型モニターに映像が映し出された。


「なっ……!? お、俺の、部屋!?」


 それは薄暗い部屋でモニターを見つめながら股間を激しく扱く、一人の男の姿だった。

 言うまでもなく、昨晩の池優介である。

 盗撮されていたのだ。



『ああ、くそっ! 射精る、俺も射精る……! こ、こんなキモいおっさんと一緒に、射精しちまう!  イクっ……イクぞ、メタトロンッ! お、俺のザーメンを、飲めっ! 飲み込めっ!』



 応接室のスピーカーから池の情けない喘ぎ声と、なんとも自分勝手な妄想の独り言が響き渡り、池の顔から急速に血の気が引いていく。


「な、なんで……これが……盗撮……?」

「ふひひ……じゃあ、説明してあげようかな!

 まず、君がいつも熱心に見ている『裏おじさんちゃんねる』なんだけど……あれ、僕が運営しているんだよねぇ。ぐひひ、毎月の貢ぎありがとうございま~す♪ 結構高めに値段設定しているのに、一回も離れずに支援してくれてるから、お小遣いが潤って助かってるよ!

 それで、この映像に関しては……あそこのマンション、会社を通じて紹介してあげたでしょ? それで監視カメラ代わりに隠しカメラを仕込んでるんだよ! 君みたいに、僕に支援してくれてる雑魚雄のオナニーを見ながらハーレムメンバーを犯すの、すっごい興奮するからね!

 それにしても、いやぁ、昨日の君のオナニー、最高に笑えるよぉ。『俺のほうが』って何回も言ってるけど……ぐふふっ! いやいや、実際にメタトロンちゃんを抱いてる僕と、虚しくオナニーをしてる君じゃ、どう考えても僕のほうが格上じゃん! そんなこと君もわかってるはずなのに、オナニーで気持ちよくなるために強がっちゃって……傑作だよねぇ!」

「あ、ああ……うわあああぁぁぁ!」


 肝尾が腹を抱えて邪悪に笑うと同時に、池が膝から崩れ落ちた。

 どう考えても犯罪行為なのだから、これを手に訴えることもできるだろうが、それはつまり、証拠映像としてこの惨めすぎるオナニー映像を警察に見せなければいけないということである。

 そんなこと、エリートとして生きてきたプライドからできるはずがなかった。


「……見なさい、この浅ましい姿を」


 そして、メタトロンが追い打ちをかけるように言葉を続けた。

 モニターの中の池を見上げながら、冷ややかに告げていく。


「あなたは口では『私を救う』などと言いながら、裏では私の似姿——いえ、あれは私本人ですがね。とにかく、私を思いながら、自らの欲望を慰めていた。直接的に言うならば、私の身体をオカズにして、汚らわしい精液を撒き散らしていましたし、それは愛を交わし合う恋人同士ではなく、凌辱者として私の体を貪る妄想に基づいて、です。

 ……なんと醜悪で、なんとおぞましいのでしょうね。貴方のような男の精液を受け止めるのならば、私はマスターの糞尿を受け止める便器になったほうがマシです……いえ、これは少し違いますね。カルデアの一部には、そうなりたいと願う女性が多くいるほどに、マスターの排泄物は高貴にして神聖なるものなのですから」

「あ、あぁ……やめて、やめてくれ……! メ、メタトロン社長の姿で、そ、そんなことを言わないでくれぇ……!」

「いいえ、愚者である貴方にはわからせる必要があります。

 マスター曰く、『物事を一面的にしか見れない堅物』である私は今まで、恥ずかしながらも貴方のことを優秀な部下だと思っていましたが……その認識を改めましょう。貴方はただの、性欲を持て余した猿です。いえ、別世界の人物とは言え、マスターを傷つけた過去を持つ分、猿以下の『害獣』と言えるでしょう」


 異性としても人間としても憧れている上司からの完全なる人格否定は、まさにトドメの一撃だ。

 しかも、メタトロンはそう言い放った直後、くるりと踵を返して再び肝尾の元へと戻っていった。


「申し訳ありません、マスター。私の社員への教育が行き届いていないために、このような汚物をこの場に招いてしまいました……どうぞ、望むままに私へと罰をお与えください」

「しゃ、社長……」


 メタトロンは神妙な顔つきで肝尾の前で跪いた。

 全裸土下座である。

 池がいることなど気にも留めておらず、卑猥な格好のまま男の前で土下座をしているメタトロンに、もはや池は間の抜けた声を漏らすことしかできなかった。


「ぐひひ……そうだねぇ。それじゃあ、池くんに真実を教える手伝いをしてもらおうかな!」

「えっ……きゃぁんっ♡」


 そして、全裸土下座をしているメタトロンの体を肝尾が持ち上げると、そのままくるりと裏返す。

 メタトロンの細くもむっちりとした足を膝から手を回して抱え上げて、細い首の位置で両手を繋いで拘束する、俗に言う『逆駅弁ファック』、あるいは『フルネルソン』と呼ばれる体位を取ったのだ。


「ま、まさか……お、犯していただけるのですか♡ こんな、不始末をしてしまった私に……マスターのオチンポ様をお恵みいただけるということなのですね♡」

「そうだよぉ! その代わり、メタトロンちゃんからはっきりと池くんに罪を突きつけてあげるんだよ! 部下の不始末は上司が処理するものだもんね!」


 そのまま、ハードな洋モノのポルノでしか見ないような体位、フルネルソンで拘束したメタトロンのオマンコへと、肝尾は持ち上げているその華奢な体を操作して、なんとも器用に挿入していくのだった。


「そぉら! 裁判長オマンコに、ご主人様チンポの挿入だぁ!」


 ずぶっ! ずぶずぶぅ、にゅぷぷぅ! ずぶりゅぅ、ずぶずぶ、ぬっぷるるぅ~~!


「ふぎぃぃ、ひぎゅぅぅぅっ♡ おぉぉ、き、きたっ♡ きたぁぁぁっ♡ ま、マスターの最強オチンポ様が、おひぃっ♡ 生ハメ挿入で入ってきたのぉぉっっ♡ イグッ♡ い、挿れられただけでぇ♡ 天使マンコイッちゃうぅぅっ♡」


 ぷしゅっ、ぷしゅぅぅ、ぷっしゃぁぁぁぁ~~~~♡


「へっ……? あっ、これ……? メタトロン社長の、し、潮……?」


 挿入と同時に絶頂に達したメタトロンは、その場で即座に潮吹きアクメをキメてしまう。

 おしっこのように勢いよく吹き出されたその潮は、当然のように応接室でへたり込んでいた池の体へと雨のように降り掛かっていった。


「はぁ、ふぅぅっ♡ うきゅぅ、おぉぉっ♡ き、きもち、いいっ♡ やはり、このおちんぽ様はすごすぎますっ♡ これが存在するだけで、じ、人類という種は、生きるに値するとぉ♡ おほぉっ♡ 知性にではなく、本能に教え込まれてしまいますぅっっ♡」


 池を無視してビクビクと全身を軽く痙攣し続けるメタトロンは、オマンコや体の反応だけでなく、そのクールな美貌も馬鹿みたいなアヘ顔で崩れ去ってしまっている。

 ぶるるん、ぶるるんと、本家のジャンヌほどではないが十分に巨乳と呼べるおっぱいも逆駅弁ファックでチンポを上下に挿入される衝撃で揺れる姿も、またとんでもないエロさだった。

 それこそ、中学生男子がこの映像を生で見てしまえば、一生オカズには困らない代わりに理想が高くなりすぎて、メタトロンほどの美しくドスケベな女以外とはセックスができなくなってしまうような、一種のインポになってもおかしくないほどのエロさである。


「ハ、ハハ、ハハハ……! なんだよ……なんだよこれぇっ!」


 自身の理想像そのものだったメタトロンの痴態を見せつけられた池は、笑うことしかできなかった。

 それは池の心を折る最後の一手としては十分すぎるほどのもので、池はその場で倒れ込んで絶叫をする以外の選択肢を取れないほどにダメージを受けてしまっている。

 だが、それは終わりではなく始まりでしかなかった。


「ぐひひ! ほらほら、メタトロンちゃん! 気持ちよくなってくれるのは嬉しいけど……宝具でも使って理性を取り戻して、早く池くんに現実を教えてあげてよぉ!」

「ほぎぃ、ひゃ、はいぃっ♡ わかり、わかりましたぁぁっ♡ 見、見えて、いますかぁ♡ いけ、ゆうすけぇ♡ この偉大なるオチンポ様が、私のオマンコを犯している姿がっ♡ こ、これは、完全同意っ♡ 脅迫でも強制でもなく、もちろん洗脳などという下劣な手段も用いられておらず♡ 私が、この素晴らしい男性に恋をして、せ、セックスをしてもらっている光景なのですっ♡」


 メタトロンは恐らくカルデアに所属するサーヴァントの中でも最多となる宝具を所有している。

 本来であれば顕界した際に限られた数しか持ち込めないのだが、肝尾のマジカルチンポによる淫紋付与の影響で、膨大な数の宝具を自由に取り出すことができるようになったのだ。

 その中の一つである理性を保つための宝具を使い、それでもマジカルチンポというこの世界のすべてを蹂躙する『チート』によって言葉が乱れながらも、絶望している池へと『死体蹴り』をしていくのだった。


「あなたは、知らないでしょうっ……♡ 貴方と存在をほぼ同一とする人間が存在する、『並行世界』において……あなたは、マスターに対してどのような大罪を犯してしまったのかということをっ♡」

「並行……世界……? な、何を言ってるんですか……?」

「理解できないっ、ミジンコのような頭でわざわざと聞き返さないでくださいっ♡ あなたには反論の権利も、ありませんっ♡ これは、裁判長たる私が……あなたの罪を、裁く場なのですよっ♡」

「おぉっ!? ぐひひ、池くんを怒った反動で……オマンコの締め付けも強くなった! こりゃいいや、もっと池くんに話しかけて、メタトロンちゃん!」


 メタトロンの顔が快感と憤怒によって、奇妙な形で歪んでいく。

 また、その際の憤怒の言葉を放った筋肉の動きで微妙にオマンコの収縮の動きに変化が訪れて、チンポマッサージをされるような快感に肝尾が興奮の声をあげる。

 そして、メタトロンはそんな肝尾の命令に従うように、さらに池へと語りかけていった。


「よく、聴きなさいっ♡ あなたは、この世界でも私へと下劣な欲望を向けていたようにっ……♡ マスターの元の世界でも、あなたは私とよく似たゲーム上の架空のキャラクターの熱心なファンでしたっ♡」

「そうそう、いかにもな勝ち組エリートサラリーマンのくせして、池くんはオタク向けのゲームもやってたんだよねぇ。それで、推しキャラがメタトロンちゃんだったってわけ♪」

「…………?」


 池は何一つとして理解できないまま、それでも、自分の理想だった存在が犯されている光景を見て、脳みそがバグを起こしてしまったのか————ようやく、その姿で勃起をしだしてしまった。

 ズボンの中に膨らみができるが、それにメタトロンは気づかずに、肝尾が話した『元の世界の出来事』をもとに、池を糾弾していく。


「ある日、あなたはマスターとともにそのゲームの話をしました……♡ マスターはありのままに、情熱を持って、私によく似たそのキャラクターについて語ったのですっ♡ 『その女の体がどれだけエロイのか』、『イキがった勘違い女をチンポでメロメロにしたらどれだけ気持ちいいか』、『スタッフ側だってチン堕ち前提の、二次創作でエロ絵が作られることを考慮して作っている』という……実に素晴らしい、雄としての純粋な本能を叩きつけるような、素晴らしい考察ですっ……♡

 しかも、そのキャラクターは私とよく似ているという……ああ、なんと光栄なことでしょうか……♡ 所詮はデータ上の数値と文字列の集合体に過ぎないものですが、そのキャラクターも生み出された甲斐があるというものでしょう……♡」


 まず、池と肝尾は先程も言った通り、派遣社員とその派遣先の若手エリートという関係だ。

 偶然にも同じ職場につき、会話をする機会があり、同じゲームを好んでいるということで、ちょっとした会話の機会があったのである。

 肝尾はいわゆる『一軍』と呼べるような勝ち組の男性を妬みつつも、同時にその一軍の男性に相手をしてもらえることにどこか喜びを感じるタイプの、なんとも精神の貧しい弱者男性だった。

 池のような穏やかなイケメンで、少なくとも表面上は偉ぶったところを見せない勝ち組と共通の話題を得られたのが嬉しかったのだ。

 そして、池が『俺の推しは、メタトロンかな。怠惰ちゃんもいいけど、裁判長が一番好きなんだ』と語ったのに合わせて、自身が持つ欲望をそのまま叩きつけるようにまくし立てたのである。


「しかしっ……あなたはそれを否定したっ! 『キャラクターへの冒涜』だとか、『設定をまるで理解していない』だとか、『下品な目でしか見れないのか』だとか! なんとも薄っぺらい『良識』というものを振りかざして、マスターを論破して、周囲の笑いものにするという屈辱を与えたのです!」


 だが、そんなチンポを優先した言葉を池のような『まともなプレイヤー』が受け入れられるはずもない。

 池は即座に気を悪くして、そのまま持ち前の弁舌の良さを用いて、周囲の人間にも聞こえるような声で肝尾を徹底的に論破していったのである。

 逆恨みではあるものの、それは肝尾にとって忘れることのできない屈辱となったのだった。


「……い、いやっ! そんなの、当たり前のことじゃないか! 性欲でしかキャラクターを見ないのが正しいわけがない!」


 池はここでようやく言葉を返すことができた。

 純粋に作品を愛している横で、汚らわしい性妄想を垂れ流されれば、誰だって不快になる。

 ましてや、それを理路整然と批判し、場を正すことは、人として正しい行いだ。

 並行世界での出来事など池が知るはずもないが、それでも現在の倫理観と合わせれば、同じ場面に自分が立てば、やはり自分は同じようなことをするだろう。


「だから愚かだというのです、マスター以外の人間はっ!」


 だが、そんな『当たり前』を肝尾の魅了チートに侵されたメタトロンが受け入れるはずもない。

 肝尾に犯されているためにぶるるんと巨乳を揺らしているなんとも卑猥な姿のまま、メタトロンは池への断罪行為を続けていった。


「あなたの語るその正しさが、傲慢という罪だということにも気づいていない! あなたは『設定』や『文脈』といった、所詮は誰かが作ったに過ぎない薄っぺらなものを振りかざして、マスターがそのキャラクターに触れて抱いた『純粋な欲望』というものを批難しました……!

 マスターがこの魅力的な女性を犯したいという欲望は、ぉぉっ♡ こ、このオチンポ様の情熱をっ♡ くだらないものと否定するなどぉっ♡ 許されないこと、ですぅぅっ♡」


 メタトロンが行う説教の合間に、甘い喘ぎ声が混じっていった。

 いけ好かないイケメンを自分の牝奴隷が罵倒している姿に、肝尾が興奮してしまったためである。

 そのままあんあんと喘ぎながらも、真面目なメタトロンは池への糾弾を続けていく。


「一方的にマスターの『愛』、をぉっ♡ ひ、否定しぃっ♡ 自分の『愛』こそが正しいっ、と♡ 何の根拠もない決めつけで否定しっ♡ マスターを、その場の空気を利用して、辱めたのですっ♡」

「ち、違うだろ、それは! だって、そんな……そいつは、結局性欲しか頭になかったんじゃないか! な、なら、ファンとしての愛情は、そいつを否定したヤツのほうが正しいはずだ……!」

「何度言わせるんですかっ! それが傲慢だと言っているのですっ! 肉欲に基づく愛と、肉欲に基づかない愛を比較し、片方だけが優れている……それこそが誤りではないですかっ!」


 メタトロンは胸を張るようにして首を曲げて、自身のその蕩けた顔を肝尾の方へと向けた。 

 そこには明確な愛情と、そして、同量の欲望が宿っている。


「プラトニックな愛は確かに存在しますが……しかしっ、肉欲に基づく愛も♡ 私と今のマスターのように、存在するのですっ♡ セックスがなくとも、私はマスターを愛しますっ♡ しかし、セックスができるからこそ肉欲を持ってマスターを求めているっ♡ そこに上下は存在しないっ♡ なのに、肉欲が混ざれば愛ではないと……なんと愚かなのでしょうね、あなたはっ♡」

「そ、そんな……そんなこと……うっぅ、うわぁぁぁぁぁっ!」


 言い返すことができなかった。

 まともな状態の池ならば言い返すことも出来たかもしれないが、人として強く尊敬しつつ、一方的ながらも想いを寄せていた女性の痴態に、脳が耐えきれなかったのである。

 その叫びを聞いた肝尾は、ニタリと笑みを浮かべた。


「ど、どうだぁ、池ぇ! お前の大好きな裁判長様は、ぼ、ぼくのチンポに夢中なんだぞっ! 僕が言ったとおり、真面目ぶってるくせにチンポに犯されることが大好きな変態女ってのが、メタトロン・ジャンヌの本性なんだ! ぼ、僕の方が、キャラを深く理解できているんだよぉ!」


 ともすれば、メタトロンが池を言い負かした内容と矛盾するような言葉で肝尾は勝ち誇っていく。

 メタトロンとのセックスだけでもすぐにお漏らし射精をしてしまいそうな快感を覚えているというのに、大嫌いなイケメンエリートサラリーマンが絶望している姿を見て、精神的な快感まで覚えてしまう。

 そして、ぶるりと全身を震わせて射精をしてしまいそうになると、メタトロンはその震えをオマンコで感じ取り、甘えるように肝尾へと語りかける。


「あぁっ♡ マスター、どうか私にご褒美をっ♡ この愚かな男に真実を突きつけ、あなたの素晴らしさを教え込んだこの牝に、ご褒美ザーメンくださいっ♡ 私の翼の白よりも尊い、白濁の精液をぉ♡ この天使マンコにビュービューと注ぎ込んでくださいいっぃっ♡」

「メ、メタトロンちゃんがそこまで言うのなら……たっぷりとご褒美射精をしてあげるよぉっ!」


 メタトロンは絶頂の悲鳴とともに、射精懇願の媚びた声をあげた。

 そのメタトロンのチン媚びが合図となって、肝尾は全身を震わせたまま、腰使いにラストスパートをかけて、そのまま勢いよく射精をしていった。


「よし、メタトロンっ! ご褒美ザーメン、受け取れぇっ!」


 どびゅるるるっ! びゅるる、どぶびゅぅ! ぶっぴゅるるるぅ、どぴゅぴゅぅぅ~~!


「あひぃぃっ♡ ふぎゅぅぅっ♡ ぐぎゅぴぃぃ、ひぎぃぃぃぃっ♡ おぉぉっ♡ イグッ♡ 気持ちよすぎて、幸せすぎてっ♡ 中出しアクメ、耐えられないぃぃっ♡」


 メタトロンの膣奥、肝尾以外にはチンポで触れることを許されないその神聖にして卑猥な子宮へと熱い白濁液を、肝尾は大量に吐き出していく。

 メタトロンはフルネルソンで拘束された体を海老反りに仰け反りかえし、そのまま全身をアクメ痙攣させて、歓喜に満ちた無様な叫びをあげていった。


「ぐひ、ぐひひぃ! キメた、キメたぁ! 大天使で裁判長で聖女のオマンコに、膣内射精をキメてやったっ! どうだ、どうだ! 池、お前は……って、ぐひひぃ! こ、股間が湿ってる……こいつ、お漏らし射精をしやがった!」


 大量の子種を天使の子宮へと注ぎ込む快感と、嫌いな相手の惨めな姿に強い興奮を覚える。

 肝尾自身が偉くなったわけでも成長したわけでもないのに、魅了チートという文字通りの不正行為に基づく優越感を恥とも思わずに肝尾は笑う。


「あぁ……♡ 本当に、情けないですね……♡」

「メ、メタトロン、社長……♡」

「今の状況が、マスターとあなたの差そのものです……♡ 私を抱きかかえて、子宮に子種を注ぎ込むマスターと……♡ 床に跪いて、ズボンの中でお漏らし射精をするあなた……♡ ふふふ、どちらが上なのか、いくら愚かなあなたでもわかるでしょう♡」


 大量の種が胎内へと注ぎ込まれたメタトロンは表情を弛緩させ、舌をだらしなく突き出し、ビクビクと痙攣しながら、それでも幸せそうに笑っている。

 もはや指一本とて自分の意思ではうまく動かせないほどに力尽き、そのまま虚脱した体を肝尾の胸板へともたれかからせているメタトロンは、虚ろな目をした池に、最後の言葉を投げかけた。


「貴方の負けなのです……池優介♡ あなたはその罪を自覚しながら……贖罪に生きていきなさい……♡」


 メタトロンの言葉は『肝尾教』とでも呼ぶべき思想に基づいた、普通の人間である池では理解できない言葉と言えるだろう。

 だからこそ、自分が尊敬する人物が自分では理解できないものに堕ちてしまったことを実感してしまい、池へと強い絶望が襲いかかる。


「ぁ……ぁぁ……」


 もはや、池の口からは言葉とも言えない音が漏れるだけで、その目からは完全に光が消えてしまった。

 できることと言えば、ただ、自分がかつて感じた『理想』とも言えるものが単なる虚像に過ぎない絶望に敗北し、目の前で重なっている肝尾とメタトロンの影を、壊れた人形のように見つめ続けるだけであった————。

 



 数日後のことである。

 肝尾は高級タワーマンションの自室にて、豪奢なソファーに大股開きで腰掛けて、ヴィンテージ物のワインをガブガブと下品に飲んでいた。

 そこは池が暮らしていた自宅よりも高価で、池が腰掛けていたソファーよりも上等な、日本でもトップクラスの富豪へと上り詰めた肝尾に相応しい美品に囲まれた空間である。

 しかし、一級品に囲まれた空間の中で一つ、ワイングラスを乱雑に煽るその肝尾の動作だけが三流というのも憚れるような下品な動きだった。

 優れたものに囲まれているからこそ余計に品性の下劣さというものを感じ取ってしまい、まさに、育ちが知れるという言葉がよく似合う状況と言えるだろう。


「どうぞ、まだまだお酒はありますからね……♡」

「ぐひひ……ありがとうねぇ、メタトロンちゃん♪」


 肝尾はそのボトル一本で数十万という値がつくヴィンテージワインを、まるで安居酒屋の飲み放題ワインのような勢いで飲んでいく。

 様々なサーヴァントから魔術による『バフ』を受けている上に、魅了チートが毒耐性という形で内臓機能もサポートしているため、肝尾は酒にほろ酔い気分になることはあっても、泥酔状態になることはないのだ。


 そんな肝尾の晩酌に付き合うという栄誉(実態はキャバ嬢さながらにおべっかを口にしながら酒を注ぐだけなのだが)を勝ち取って、同じソファーに腰掛けているのはメタトロンである。

 メタトロンは裸エプロンの姿で、なんとも嬉しそうにワインを注いでいく。

 アルコールの影響もあってか、肝尾は酒の肴として、武勇伝を自慢をするように『池の後始末』を語っていった。


「ぐひひ、メタトロンちゃんは池くんのことを覚えてるかなぁ? 彼がどうなったか、社長として会長の僕に報告してくれるかな?」

「はい。あれから彼は降格処分を受けて、雑用係を務めさせられています。会長に逆らったことを広めたら、女性社員からは蛇蝎のごとく嫌われておりまして、存分にこき使われていますが……よろしかったのですか? ドレイクたちを使って、もっと残酷な目にも合わすことができたでしょうに……」

「良いんだよぉ、池くんだって過去はやり直せるってことを教えてあげないと! ここから頑張ったら、また昇進させてあげてね」

「あのような愚か者に更生の機会を与えるとは……なんと慈悲深い♡ 罪人にも赦しを与えるあなたは、まさに救世主の名に相応しい人物ですね♡」


 池はその後、降格した。

 表向きは取引の致命的な失敗と資料の紛失で、これらの証拠は電子の海を自由に駆け巡ることができるBBによって捏造されたものである。

 その際に、『降格を不服に思った池が肝尾へと逆恨みをして殴りかかった』という嘘も広めたために、すでに魅了チートによって肝尾を心酔している、モブの女性社員たちもまた池を嫌うようになったのだ。

 男性社員たちも落ち目な上に上司に楯突いた池を気に掛けることがあるはずもなく、今は会社の中で針の筵のように生活をしているのが、現状の池なのである。

 それでいて、その評判の悪さが業界にも知れ渡ってしまったために転職も難しいので、主任から雑用係に堕ちた現状を受け入れていた。


「見せつけも終わったし……池くんへの興味はもうないってのが正直なところだね。でもまあ、思い返すとまだ笑えるなぁ。自分が主任から降格した途端に、一気に業績が上がってるのを見た時の顔も最高だったし♪」


 池が降格された直後に、カルデア企画はメタトロンの指揮の下でさらに収益を上げている。

 まるで、『邪魔者』が消えたことで、会社が健全化されたのだと言わんばかりで、その時にまた別の絶望を味わっている池の顔が肝尾は面白くて仕方がなかった。


「ああ、やっぱりあの時の彼の顔は……傑作だったなぁ! ぐひひ! 自分の推しキャラについての話で、自分の好きな人に罵倒された時の、あの絶望した顔! 思い出すだけで、ご飯三杯はいけるよぉ! メタトロンちゃんの責め方が上手だったね♪」

「私としてはただ事実を突きつけただけなのですが……マスターに喜んでいただけたのなら、これ以上の喜びはありません♡」


 メタトロンはワインボトルを持ったまま肝尾の体へとしなだれかかり、裸エプロンに隠されているその豊満な感触を押し付ける。

 そのむにゅりとした柔らかな感覚に肝尾はニタリと顔を緩めて、気分よくワインを煽っていく。


「……もっと、味わいたいなぁ。復讐って……ぐひひ、楽しいよねぇ♪」


 肝尾は池へと行った、『復讐』という名の逆恨みの快感にハマってしまっているようだった。

 ただし、それはもっと池をイジメたいというわけではなく、池のように順調に人生を遅らせて調子に乗らせたまま、自分が介入することで一気に絶望の底まで叩き落したいのである。

 肝尾がその欲望に思いを馳せた、まさにその時だった。


 ————ぷるる、ぷるる。


「……うん?」


 肝尾の目の前のローテーブルに置かれていたスマートフォンが、軽快な通知音を鳴らした。

 電話の着信を知らせているのだ。

 首をひねりながらその画面を見る肝尾だが、そこに表示された名前を見ると表情をニヤリと歪めた。


 『肝尾マーリン』。


 肝尾が何人も抱えている、『奴隷妻』の一人である。

 そして、現代社会に帰還して東京へと拠点を移してからも、肝尾の『遊び』を積極的に支援してくれる、魔術師の中でも最上位に位置する、可愛らしい奴隷だ。

 肝尾はそのまま電話を取った。


『やあやあ、我が旦那様♡ 今日もゴキゲンのようだね♡』

「うん、マーリンはどうしたのぉ? なにかの報告かな?」

『ああ、君に頼まれていたリストの中から面白そうな人物を確認できたのでね。色々と前準備が終わったし、とびっきりの逸材を楽しんでもらおうと思ってね。ほら……タブレットの方にデータを送ったよ』


 肝尾マーリンは、元はプロト・マーリンという英霊だった。

 しかし、肝尾とのセックスによって『完堕ち』してしまい、その魔術の腕前を利用して真名を『レディ・アヴァロン』という仮名でもなく、『プロト・マーリン』という知られた名前でもなく、『肝尾マーリン』という肝尾の奴隷妻となる形で上書きをしてしまったのだ。

 そんなマーリンは今、『アイドル』として活動しながらも肝尾のために様々な業務を行っているスーパーウーマンとして活躍している。


「マスター、こちらがマーリンから送られてきたデータです。写真と……内情調査ですかね」

「う~ん? って、これは……?!」


 肝尾が電話をしているため、メタトロンがタブレットを起動させてメールアプリを開いて、送られてきたデータを開示していく。

 メタトロンの差し出したタブレットの画面を覗いた肝尾は、一転して邪悪な表情を浮かべた。

 それは獲物を前にした肉食獣が牙を向くような表情によく似た、背筋が凍るような笑みである。


「こ、この子は……高校時代のピュアだった僕を誘惑して、そのくせ手酷くフッた悪い女じゃないか……! く、くそっ……! 清楚風を気取りやがって、あのビッチめぇ……!」


 そこに写っていたのは一人の三十過ぎほどの女性であり、その姿は肝尾の記憶に鮮明に焼き付いている少女の面影を持っていた。

 高校時代のことだ。

 キモオタとして陰キャとして生きていた肝尾だが、一度だけ勇気を振り絞ってラブレターを渡そうとした相手がいるのだ。

 それは古臭い言い方になるが、学園のマドンナと呼ばれている人物であり、清楚な黒髪の美少女である。

 そんな彼女は、肝尾の手紙を受け取ることもなく、ゴミを見るような目でこう言い放ったのだ。


『……鏡、見たことあるかな? 生理的に無理かな。本当にテンション下がるから……加害行為だよ、こういうの?』


 その言葉は、肝尾の青春を粉々に砕き、その心を決定的に歪ませたトラウマの一つだった。

 そんな高校時代の憧れの君であり、同時に肝尾が強い憎しみを今なお抱いている女が、その写真の中では平凡そうな夫と可愛らしい中学生ぐらいの娘と共に、幸せそうな笑顔を浮かべているではないか。

 そして、まだ健在で肝尾と同い年とは思えない若々しさと、アイドルとしても活躍できそうな娘から、相当の美女であることは明白だった。


「……ぶひ。ぶひひひひ! いいね、いいねぇ! さすがに本人はもうババアだからアレだけど……こ、この娘ちゃんは結構好みかも……♪ まだ『清楚風』じゃなくて『本物の清楚美少女』として僕が導いてあげれば、三軍入りぐらいは許してあげてもいいかなって感じの可愛さだよ!」


 肝尾の喉から抑えきれない笑いが、悪意とともに漏れ出した。

 それは池を陥れた時よりも、さらに深くてドス黒い、明確な加害性を持った笑いである。


「それにしても……幸せそうだねぇ、いいお母さんになったみたいだねぇ。お前にフラれた僕は、童貞の中年でこき使われたっていうのに……! くくく、その幸せ、全部僕が『美味しく』いただいてあげるからね♪」


 女性を強制的に魅了するチート能力を持っている。

 それは世界を救うほどの力であり、同時に世界を崩壊させるほどの力でもあり、肝尾はその魅了チートによって莫大な財力と、権力と、武力を手に入れたのだ。

 それらすべてを使えば、一介の主婦を堕とすことなど、赤子の手をひねるよりも容易い。


「この雑魚そうな夫の前で僕のチンポが欲しいってチン媚びの絶叫させてやろうかなぁ……それとも、この娘ちゃんだけを犯して、こいつにはチンポを入れてやらずに労働奴隷にしてあげようか……♪ 娘ちゃんはママによく懐いているみたいだし、逆にママはどうしようもないカスだって教え込ませて娘ちゃんに罵倒させるような、家族内の上下関係を崩壊させちゃうのも面白いかも♪」


 あの日に自身の心を打ち砕いた高嶺の花を、逆にその全てを崩壊させるという妄想を奔らせるだけで、肝尾の股間は痛いほどに脈打った。

 それを見たメタトロンは、うっとりとした視線を向ける。


「マスターはとても楽しそうですね……♡ いい仕事をしましたね、マーリン♡」

『もちろんさ! 僕にとっての人生の楽しみとは、この肝尾拓郎という偉大なる英雄の終わらない物語を読み続けること……そして、その物語の中で僕自身もヒロインとして愛してもらうことだからね♡ それに、いつもは優しい彼が、かつて自分を痛めつけた悪者に仕返しをする時のちょいワルオヤジな姿を見れるのも……女としてときめいてしまうんだもの♡』


 そして、それはマーリンも同様だ。

 魅了チートによって、都合の良いハーレムヒロインの一員にされてしまった彼女たちには、肝尾が邪悪な企みを抱いていようとも、世界で一番魅力的な英雄が正しい選択を取っているように見えているのだ。


「うん……楽しい、楽しいよ。最高に楽しい! ありがとう、マーリン! あとでご褒美セックスしてあげるからね!」

『やったっ♡ ふふふ、君は約束を常に守ってくれるからね、楽しみにしてるよ♡』


 肝尾はそのままソファーから立ち上がり、窓まで近づくと東京の夜景を見下ろした。

 眼下に広がっている無数の光、その一つ一つに人々の営みがあり、ささやかな幸せがある。

 だが、その全てを今の肝尾ならば踏みにじることができるのだ。

 その全能感に酔いしれたまま、肝尾はこの『復讐遊び』にハマっていく自分を自覚した。 


「待っててねぇ……僕の可愛い復讐相手たち。世界を救ったこの肝尾拓郎様をイジメたこと、永遠に後悔させてあげるからね♪」


 窓ガラスに映る中年の男は、醜く顔を歪め、そして、世界で一番幸せそうに笑っていた。

 肝尾による人類を救う旅は見事に終わりを迎えたのだが、しかし、肝尾の邪悪な欲望による遊びは、まだ始まったばかりなのだ。

 『英雄』と言うよりも欲望に満ちた『魔王』と呼ぶに相応しい肝尾は、グラスに残ったワインを飲み干していく。

 夜はまだ長く、肝尾の人生はもっともっと長い。

 尽きることのない欲望を慰めるための宴は、永遠に続いていくのだった————。


(完)

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POSTEDFeb 20, 2026
ARCHIVEDJun 10, 2026