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続・勘違いで見える物

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skeb様にて大分前に書いた「勘違いで見えるもの」(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6481051)の続編をリクエスト頂きました。

懐かしい作品で、当時の雰囲気と少し違うかもしれませんが良ければお楽しみください。


── ── ── ──


「はぁ・・・疲れた・・・12月だってのに暑すぎるのよ」


私は靴を脱ぐために手にした袋を床に起きながらそうつぶやく。

一度座らないとお腹やなんやらがつっかえてそのままだと脱げないから。

いや脱げるけど、脱いだ靴拾うのに結局座るから一緒なのよね。

・・・二上のあの告白から2年近く。

私は未だに痩せられずに・・・それどころま益々太っていた。


「ふぅー・・・!ひぃー・・・!」


自分の部屋に上がるのにも苦労する体。

階段を軋ませながら歩けば足を持ち上げる度にお腹にぶつかる。

全身の脂肪が揺れるのを感じながら、私はゆさゆさ体を横に揺らしながらなんとか自分の部屋にたどり着く。

これだけで汗が更に吹き出すのを感じながら、私は制服を全て脱ぐ。

外気に触れて湯気みたいに見える汗にい見慣れた感覚を覚えながら、私は部屋着も着ないで手にしたビニール袋を持ってベッドに腰掛ける。

座るだけでベッドがかなり沈み込むし、なんなら最近ますます軋むようになった気もするけど・・・多分気のせいよ。


「はぁ・・・ふぅ・・・!全く・・・あの女!!」


早速ビニール袋からチョコクロワッサンを出してかぶりつく。


「何が『最近ダイエット成功しちゃった!』よ!私がこうなったのはあいつのせいなのに!!」


思い出すだけでもイライラする。

私には相変わらずあいつの正しい姿が、周りのみんなには昔見てたあの太い姿が見える。

しかも徐々に太くしてたみたいで周りの子はみんな150kg超えでも『二上が居るし』で安心してる。

でも最近ダイエットをしてるんだと繰り返し言ってたし、多分大学に向けて『3年の三学期でダイエットして急に痩せた』っていう理由付けをしてるらしい。


「ふん・・・私が痩せればあいつより可愛いんだから!!」


新しく封を開けたメロンパンをかじりながら私はつぶやく。

そう・・・今はまだ痩せてないけど、痩せればあいつなんかより私の方がよっぽど美人なんだから。

精々高校生の間ぐらいはあいつに華を持たせてやったっていい。

ちょっと前まであんなに痩せてたんだし、すぐに痩せられるに決まってる。


「そうよ。あいつの能力が効かないならすぐにだって・・・大学に入れば痩せられるわ」


クラスメイト達なんてみんなXXXLサイズじゃないと入らないのに私はまだXXLで収まってる。

なら、まだ大丈夫。

今でこそ買い食いが当たり前になってるけど、あくまでも周りに合わせてやってるだけだし。

大学に入ればそれこそダイエットする時間なんていくらでもある。


「すぐに痩せて見返してやるんだから」


私はコロッケサンドを食べ終えると、散らばった6個の包み紙をゴミ箱に捨ててからシャワーを浴びに行くのだった。



『卒業生代表、坂上さん』

「はい!!」


目の前で呼ばれた女子が教壇に上がっていく。

歩くのも辛そうな程ゆっくりとした動きで階段を登る彼女は、それだけで息も絶え絶えになってる。

目の前で台本通りの事を喋る坂上さんを見ながら、私は自分の腹に手を当てた。


【ブニィィィイイ!!】


ちょっと手を押し当てるだけでどこまでも沈んでいくかのような感覚。

今にも弾け飛びそうなブレザー(XXXLなのに・・・)のボタンと、大きくなった胸で押し出されてるけどなんとか飾り立てした胸元の造花。

私はお腹から手を離すと、二上の方を見る。

大半が椅子からお尻が飛び出てる中、一人だけきっちり座ってすまし顔してる二上。

今すぐにでもその横っ面を叩いてやりたいけど、そうも行かない。


「・・・まぁいいわ。今日であいつともお別れだもの」


そうすればちょっと頑張ればすぐに痩せるはず。

あいつのせいで食べ物が多いはずなのに少なく見えているのが原因だもの。

それに大学入学に合わせて一人暮らしをするんだし、いくらでも食事内容なんて自分で決められるんだもの。

すぐに痩せるに決まってるわ。


「・・・そうよ。私は痩せられる。

 他の子とは違うんだから」


呼吸音が混ざる坂上さんの話を聞きながら、私は大学生になった私の事を思い浮かべるのだった。



「うわぁ・・・凄いデブ」

「顔は可愛いのにね・・・」


そんな声が聞こえる。

ソッチのほうを見ればブスが二人こっちを見ながら──本人達はひそひそ話のつもりで話をしている。

大学に入学してから数日後、新入生用のオリエンテーションを終えて施設巡りがてら大学の食堂を見てみようと思って来たらこれだ。


「あれって新入生でしょ?やっぱご飯気になるんだろうなぁ」

「そりゃあの体型ならそれが一番でしょ」


クスクスと笑いながらそう話すブス。

確かに気になってきたわけだけど、それはあくまでも場所確認の一環だし、私だっていつもなにか食べてるわけじゃない。


「・・・顔が醜いやつは心も醜いわけね」


私はそいつらに聞こえないようにそうつぶやくと、横に併設されてる売店も見に行く。

お菓子類やおにぎりみたいな軽食とカップ麺がずらっと並ぶ食品エリアと、教科書なんかが置いてある本屋もどきが一緒にあるのは大学っぽいのかもしれない。


「ふぅ・・・ふぅ・・・教科書の注文をしたいんですけど・・・」

「あ、ああ・・・どれが必要かわかる?」

「とりあえず必修のヤツを・・・」


私はそう言ってさっき貰った分厚いシラバスの冊子に書いてあった授業の教科書を注文する。

選択科目は・・・まぁ今度でいいわ。


「はいよ。しかし偉いね・・・すぐに来る子はなかなか居ないよ」

「・・・どうも」


さっき私を見てドン引きしてた店員の男はそう言って注文書を渡してくれる。

今に見てなさい・・・絶対痩せてさっきの奴らと合わせてその鼻あかしてあげるわ!!


「それじゃあコレおまけ。今キャンペーンでそこの食品の割引券配ってるからあげるね。期間限定だから早めに使ったほうが良いよ」

「・・・ありがとうございます」


人が折角決意をしたのに・・・

・・・まぁさっきの事に免じて早速使ってあげるわ。

ダイエットなんて明日からすればいいんだから。

私はそう考えながら貰ったチケットで何が買えるのかを吟味するのだった。



「・・・はぁ」


私は目の前にある紙を見ながらため息をつく。

健康診断結果と書かれた紙に書いてあるのはレントゲンの結果やら血糖値やらと・・・そして体重。

あの時は決意がブレるからとなるべく聞かないようにしてた結果が目の前にあるとすごくげんなりする。


「・・・185kg」


体重が書かれた部分が嫌でも目に入る。


「身長157cm、胸囲137cm、腹囲144cm、臀囲159cm・・・」


もう少しで身長に並びそうな腹もそうだけど、既に身長よりも大きいお尻もでかすぎて嫌になる。


「・・・でもいいわ!明日からゴールデンウィークだもの」


そう、明日からほぼ1週間丸々休み。

なら明日から本気を出せばすぐにだって痩せていくはず。


「そうよ、ちょっと本気出せばすぐに痩せるわ」


だから、今日で最後。

このお菓子を食べるのも今日で最後にする。


「最後にこれ楽しんで、明日からに備えて寝なきゃね・・・!」


私はアソートセットになってるチョコ詰め合わせの袋を開けると、用意してあった2Lのコーラと一緒に最後のお菓子を楽しむのだった。



「・・・ふぅ、やっぱりアイスは良いわね」


夏休みに入った私は部屋から一歩も出ずに居た。

正確には買い物なんかでは出るけど、それ以外では出ようとも思わなかった。


「年々暑くなってるわよね・・・」


今日も最高気温が35℃を超えるらしい。

こんな中で運動すればすぐに熱中症で倒れるのは間違いないわ。


「それに課題もいくつか出てるし・・・夏休みは長いんだから涼しい日に運動すればいいだけよね」


私ならすぐに痩せられるもの。

後期の開始も9月中旬らしいし、9月に入れば涼しくなるはず。

そうすればそこからダイエットを始めたって十分間に合うはず。


「ゴールデンウィークは短すぎて全然運動出来なかったものね」


なんだかんだで1週間じゃ全然足りない。

そもそも急に太って筋肉も足りてないんだから無理したってしょうがないわ。

それに買っておいたお菓子の予備が出てきた上に賞味期限が近いだなんてずるいわよ・・・

途中季節外れの大雨で結局なにも出来ないまま終わっちゃったし・・・


「大学の間にみんなを見返せれば十分。社会人になるときに痩せてればいいわけだし・・・まだまだイケるわ」


それに本気だせばすぐなんだから。

だから今のうちに夏っぽい事しておかなきゃ。


「もう一本アイス食べようっと・・・今度かき氷も食べたいわね」


少し太った気もするけど、これだけ暑いんだから2本ぐらい食べたって良いわよね。

私はそう思いながらもう一本アイスを取りに冷凍庫まで歩くのだった。



「ふぅ・・・なんでこう冬って動きたくなくなるのかしらね」


私はこたつに入りながらそうつぶやく。

今年は特に寒いらしく、これを買わなかったら本当にやばかったわ。


「夏はあんなに暑かったのに・・・秋は秋らしい秋もないまま終わったし・・・」


結局夏休みの間は涼しくならなかったし、涼しくなったと思ったら今度は急激に寒くなるなんて・・・


「12月で雪がこんなに降るなんてね・・・電車が動かないなんて本格的にまずいでしょ・・・」


こんな状況で運動なんか出来るわけもない。

冬休みに入ったら少しは運動しようと思ってたのに、なんだかことごとく外されるわ・・・


「天気ばっかりはしょうがないけどね・・・」


お陰で最近ますます太った気がする。

最近地面に座っても座布団要らないし、お腹周りもなんだか・・・


「・・・来年こそは痩せるわ」


まだ1年生。

あと3年あるし、4年生は殆ど自由時間みたいなものだって言ってたし・・・

なら痩せるタイミングなんていくらだってある。


「なら今年はゆっくりと準備を整えて、来年から頑張ればいいわね」


痩せたらどうしよう・・・とりあえずあの二上を見返して、あのブス達にも一泡吹かせてやろう。

私は今後のことを考えながら、買いだめしておいたみかんの皮を一つ剥き始めるのだった。



【ピンポーン】


「・・・あ、ピザ来たかしら?」


私は体に力を入れて立ち上がると、ゆっくり玄関へ向かう。

最近疲れからか立ち上がるのも一苦労だ。

それになんだか歩くのすら疲れるし・・・息だってすぐに上がる。

足が上がらないから体を横にゆすらないと歩けないし、そのせいで廊下は狭くなるからすぐぶつかっちゃう。

それにしてもこのマンション、借りた当時はインターホンなんてあんまり使う予定ないから適当に選んだけど、受話器がよく壊れるのは酷いわね。

まぁどうせ宅配ぐらいしか来ないから良いけど・・・でも宅配って便利だけど取りに行くの面倒よね・・・どうせならテーブルに直接出てくれればいいのに。

それにしても10枚は頼みすぎたかしら・・・まぁいいけど。


「はーい・・・っ!!あんた!!」

「どうもー!お久しぶり!元気だった金本さん?」


扉を開けて目の前に立ってたヤツを見た瞬間、私は怒りを覚えた。

そこに居たのは高校生の頃から更に垢抜けた感じになったあの二上だった。


「・・・なんの用よ」

「別に、この間同窓会やったのに来てなかったら寂しくて会いに来ちゃったってだけだよ」

「そう・・・私は会いたくなかったわ」


なんでこいつが居るのにわざわざ同窓会になんて行かなきゃ行けないのよ。


「にしても・・・相変わらず太いねぇ~いや、昔よりも更に太ったよね?」

「なっ・・・そんな訳無いでしょ!!」

「そう?そのお腹凄いよ?ほら!!」


そう言って私の腹に手を伸ばして揉む二上。


「うわすごっ!手がどんどん沈んでく!!」

「な、やめなさい!!」


思わず体をひねり二上の手から逃れて・・・その反動で尻餅をついた。

ドシンッと音が鳴って、一瞬家の物が揺れる。


「あはははは!!凄い!まるで地震みたい!」

「うっさい!そこまで揺れてない!!」


私は勢いよく立ち上がろうとして・・・お腹がつっかえて出来なかった。

仕方なく体を傾けて、壁に手をかけてから体をゆっくり立ち上がらせる。

外の熱気のせいかそれだけですごく汗が出てくる。


「にしてもホント凄いね・・・同窓会の後、気になってクラスメイト全員に会ってきたけど金本さんが一番太ってるよ?」


その言葉に、私は思わず固まった。


「う、嘘よ・・・」

「いや本当だって。大学進学したり就職したりってみんな色々だったし、高校卒業して痩せた人やさらに太った人など色々いるけどさ・・・

 金本さんよりも太ってる子、居なかったよ?水町さんはケーキ屋さんに就職して更に太ってたし、相川さんは190kgだって言ってたっけ?

 坂上さんは確かアメリカ留学して太ったって言ってたけど・・・それでも250kg位だって。ほら写真」


クラスメイトの名前を言いながら私に写真を見せてくる二上。

そこに映っていたのは確かに坂上さんで、卒業式の頃よりも更に太ってるのは確かみたい。

でも、このデブよりも私の方が太ってるわけがない。


「あ、その顔は『私がコレより太ってるわけない!』って顔でしょ?それこそそんな事無いよ?証明してあげるね!」


そう言って二上は小さいカメラを構えると、パシャリとシャッターを切る。

すぐに小さい写真がプリントされて出てきて、それを見た二上が笑い声をあげた。


「あはははは!!見てコレ!!なるべくフレームに収めたのにお腹とお尻はみ出してる!!」


そう言って私に写真を手渡してくる二上。

思わず受け取ったそれには、とんでもないデブの姿が映ってた。

それが私だと理解するのに少し時間がかかった。

正方形の写真のフレームからはみ出し、膝よりもさらに下のところまで覆い隠すお腹。

でろんと垂れはじめ、お腹に完全に乗っかってる胸。

お腹よりも更に横幅が広いからか、合わせて3割位写真からはみ出てるお尻。

腕はまるで丸太みたいだし、足はなんかもう象みたい。

顎の肉が分厚すぎて首と区別つかないし、顔だって気づけばほっぺたの肉が大きくなりすぎて少し垂れ下がり始めてる。

海外でもめったに見ないようなデブ。

それが今の私の姿だった。


「な・・・な・・・・!!」


思い返せば心当たりはある。

なんだかんだと理由をつけては運動せず、ついには買い物すら面倒になり基本は食事は出前。

ダイエットだって始めて見れば体が重すぎて動けず、すぐにやめていた。

でも、私は・・・だった私はすぐに痩せられるから・・・

だから大丈夫だったはずなのに・・・


「金本さん、今大学4年生だよね?多分授業でなくても良いからってご飯いっぱい食べてゴロゴロしてたでしょ?

 駄目だよ?ちゃんとダイエットしないと私みたいに可愛くなれないんだからね?

 それじゃ、また会いに来るから!それまでにダイエット頑張ってね!!」


私をあざ笑いながら、歩いていく二上。

その後来たピザの配達員に声をかけられるまで、私はその場に立ち尽くすしかないのだった。













金本桜

身長:157cm

体重:156kg → 185kg → 197kg → 216kg → 340kg

B:129cm → 137cm → 141cm → 149cm → 175cm

W:132cm → 144cm → 150cm → 158cm → 197cm

H:140cm → 159cm → 163cm → 169cm → 218cm

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POSTEDAug 29, 2021
ARCHIVEDJun 10, 2026