またまたskeb様にてご依頼頂いた作品で、「嚙み合わさった・・・」(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7526716)の続編です。
以前の作品の続きということで、気に入って頂けたんだなととてもありがたい話です・・・
── ── ── ──
「・・・痩せなきゃ」
そうつぶやいて私は重い体を必死で動かす。
お腹は常に空腹を訴えてる。
「痩せなきゃ・・・」
一歩歩けばお腹も足も胸も全部が揺れる。
お腹が空いた。
「痩せなきゃ・・・」
どこかから揚げ物の匂いがする。
体を動かし、そっちの方へ・・・
「・・・って違う!!」
肉で溢れるほっぺたを叩いて、私は歩く予定だった道へ戻る。
かなえに言われて、ダイエットを始めて3日目。
確かに体重はぐんぐん落ちてる。
この2日でもう8kgも減ってる。
でも・・・お腹が空いて仕方ない。
でもご飯は食べられない。
食事制限しなきゃ・・・
「食べちゃ駄目・・・食べちゃ駄目・・・」
食べたらきっと止まらない。
痩せなきゃ・・・痩せてあいつが奪ったクラス1番の美貌を取り戻さなきゃ・・・
それに痩せたら・・・痩せたら好きなだけ大好きなレディバのチョコを食べるって決めてるんだから。
「・・・痩せなきゃ」
だから、私は今一歩でも先に進まなきゃ・・・
「あれ、麗子さん?」
「・・・かなえ」
最悪だ。
わざわざ夜に・・・それも駅や繁華街から遠いところまで来たのに。
よりによってこいつに会うなんて。
「・・・へー、ダイエットですか?」
「そうよ・・・悪い?」
「いえいえ、大変ですよねと思いまして。私も辛かったからわかります」
ニヤケ面で言うな。
私はアンタよりずっと辛いのに。
知ったふうな口を利くな。
「まぁまぁそう睨まないで下さいよ。ほら、これあげますから」
そう言ってかなえは手にした袋をこっちに渡してくる。
中身は・・・あっ・・・
「『私のおやつのつもり』で買ったんですけど、『麗子さんの方が必要そう』ですもんね」
「だ、誰が!!」
そう言っても私の視線は勝手に袋に固定される。
ポテチやチョコ菓子に甘い飲み物・・・
「まぁまぁそう言わずに。ほら無理し過ぎは駄目ですよ?」
そう言って袋から一つチョコバーを出して梱包を剥いてこっちに渡してくる。
甘い匂いが胃を刺激して、とてつもない空腹感が襲ってくる。
「ほら・・・どうです?食べたいと思いません?」
「あ・・・あ・・・」
「ほら、あーん?」
体が勝手に出されたチョコバーを手にして、そして・・・
「あはっ!美味しいですか?」
気づけば口の中にチョコとキャラメルの風味がいっぱいに広がっていた。
美味しい。
頭が蕩けそうになる。
「残りは全部あげますから、今日ぐらいお腹いっぱい食べても良いんじゃないですか?」
そう言ってかなえは袋を残してどこかに行ってしまう。
私はチョコバーを食べ終えると、残りのお菓子も次々にその場で開けていく。
ここが外だとか、食べたら太るとか、そんなの気にならなかった。
甘いのもしょっぱいのも皆美味しいから。
「・・・あ」
気づけば袋の中身は全部ゴミになってた。
それでもお腹は全然満たされなかった。
「食べ物・・・」
一度火が付いた食欲は止まらない。
体が自然とさっきの揚げ物の匂いの方へと向かう。
気づけば、私は自分の部屋で大量のカツ丼の容器のゴミに囲まれていた。
「・・・げっぷ」
ゲップと一緒に戻ってきた意識と満腹感。
ふと手に目をやれば、そこには特大の炭酸飲料のペットボトルが空の状態で握られてた。
「・・・やっちゃった・・・」
あんなに我慢しようと思ったのに・・・
私はここ数日の努力が無に返す程の暴食をしてしまった。
「・・・ま、まぁいいわ!明日からまた痩せればいいのよ!!」
そう、いつまでもくじけていられない。
ダイエットは続ければいつか痩せる。
そうすれば、かなえなんかすぐに見返してやれるのだから。
・
・
・
けど、そんな決意は実を結ばなかった。
ダイエットを何日か続けて、その度にどこかで食欲に負けてしまう。
気付いたときには目の前には大量の食事のゴミとお腹いっぱいの幸福感。
嫌だと思っても、どこかでいつも食べてしまう。
その度に痩せた分以上に体重が増えて、ついには200kgを超えてしまった。
そこだけは超えたくなかったのに・・・でも超えてしまった。
「・・・それもこれも、かなえが悪いのよ」
あいつはいつだって私に何かを出してくる。
学校で、下校中で、登校中で、町中で。
いつだって私に何かを渡してくる。
駄目だと思っていてもそれに抗えない。
それほどまでに私の空腹感は強くなっていた。
「・・・次こそは断って、そしてダイエットを成功させるのよ!」
かなえの妨害さえ乗り越えれば・・・
そうすればきっと痩せられる・・・!
そうすればきっと、私はもう一度クラスのアイドルとして輝くのだから・・・!
・
・
・
「それで・・・話ってなんですか?」
数日後。
放課後にいつもならこの辺で仕掛けてくるであろうかなえを逆に屋上に呼び出す。
「・・・そろそろだと思ってね。どうせ今日もなんか持ってきてるんでしょ?」
こいつとここで話すのも何度目だろうか?
そんな事を考えていると、かなえはふーんと笑いながら鞄から何かを取り出す。
「流石ですね。確かに今日これをお渡ししようかなって思ってました」
そう言ってかなえが見せてきたのは・・・あ・・・
「麗子さん、これ大好きですよね?レディバのチョコレートです」
レディバのチョコ・・・ダイエットのためにずっとずっと我慢してきたレディバのチョコ・・・
ああ・・・食べたい・・・あのレディバのチョコを食べたい・・・
「・・・それで?」
「え?」
「いえ、ですから私を呼んだ理由ですよ」
かなえの言葉に私はチョコの箱から目を離す。
「そ、そうね・・・いい加減私に物を食べさせるのはやめなさい!アンタのせいで私が一体どれだけリバウンドしたと思ってるの!?
そもそもこの体だってアンタのせいでしょ!!」
「はぁ・・・なるほど・・・」
私の言葉にかなえはあの見下したかのような笑顔をしながらこっちに近づいてくる。
「お話はわかりましたよ。でも本当に良いんですか?」
「な、なにがよ・・・」
「だって、麗子さんだって望んでるんじゃないですか?太るのを」
「そ、そんな訳ないでしょ!?」
「本当ですか?だって最近口では嫌だって言っても手はすぐに出てるじゃないですか」
「そんなハズ・・・」
そんなハズはない。
だって私は毎回ずっと悩んで・・・悩んで・・・?
「クラスの皆も言ってますよ?『麗子は口先だけダイエット』って」
「う、嘘よ・・・」
「へぇー・・・じゃあ私がこれここで食べても大丈夫ですよね?」
そう言ってかなえはレディバのチョコの封を開ける。
風にのって私の鼻にレディバのチョコの香りがスッと入ってくる。
途端に暴れだす胃袋と、まるで霧がかかったかのように重くなる頭。
「わぁ美味しそう!!実を言うと私も昔からレディバ大好きなんですよね!
だからあんなに太ってたんですけど・・・まぁ今は痩せて好きなだけ食べられますけどね」
そう言って一粒手にとって、口へと運ぶかなえ。
私はその様子から目が離せなかった。
「・・・食べたいんですか?」
「そ、そんな訳・・・ないでしょ・・・」
「その割には随分とこっちを見てますけど・・・本当に要らないんですか?」
「そ、そうよ!!」
「なら遠慮なく・・・あーーー」
「あっ!!」
「んっ!なんて・・・まだ食べてませんよ?」
口にチョコが入ったかと思ったけど、それは演技だったらしい。
かなえは意地悪く笑いながら私の方を見ると、手にしたチョコを持って私に向けてくる。
「やっぱり食べたいんじゃないですか・・・どうです?食べたいですか?」
「・・・そうよ!!食べたいわよ!!」
「そうですか。なら上げても良いんですけどねぇ・・・元々そのつもりで持ってきましたし」
そう言いながらかなえは手を引っ込めて更に私から距離を取る。
「でも一度断られてますしねぇ・・・そのまま貰えるなんて図々しいと思いませんか?」
心底おかしそうに、かなえは笑いながらそう言ってくる。
「な、なによ・・・何が言いたいの?」
「・・・麗子さん、選んで下さい」
かなえはこっちを向きながら、私に向かって『あの笑顔』でそう言ってくる。
「今ここでチョコを食べたいと私に懇願して服従するか。
それともこのままはねのけてダイエットを続けるか」
「なっ・・・」
「もしはねのけるならもう私は妨害しません。なんならダイエット手伝ってあげますよ?
でももしここでチョコを食べたいなら・・・わかってますよね?」
そう言って私を見下した目で見つめるかなえ。
『勿論はねのけるわ!』
そう言いたいのに、口が回ってくれない。
「ほら、早くしないとチョコが溶けちゃいますよ?それに今日はレディバのチョコいっぱい持ってきてるんですから・・・みんな溶けちゃったら勿体ないですよ?」
そう言ってかなえは指先でつまんだチョコをこっちに向けてくる。
かなえの言う通り、既にチョコの一部はトロリと溶け始めかなえの指先をベタベタに汚していた。
ああ・・・なんて勿体ない・・・
「・・・べたい」
「え?」
「食べたい・・・です・・・」
私の口は、それしか言わなかった。
「本当に?これ食べたらまた太っちゃいますよ?」
「いいから!!」
「私に服従して、私の思う通りに太ってもらいますよ?」
「それでいいから!!」
「もう二度とクラスで一番の美人にはさせませんよ?」
「もういいの!だからそのチョコレートを私に下さい!!」
「・・・はぁい、どうぞ」
かなえの指が私の口に突っ込まれる。
途端に広がる甘さ。
ああ・・・ずっと求めてた味がする。
思わずかなえの指先を舐めると、かなえが「もう、くすぐったいですよ!」と怒ってくる。
「まぁいいですけどね。それじゃあコレもどうぞ」
そう言ってかなえは鞄からレディバのチョコの箱をいくつも取り出してくる。
私はそれを無心で封を開けると、一心不乱に食べていく。
「あーあ・・・本当に好きなんですねそれ・・・まぁいいですけど。
それじゃあ明日からいっぱい太らせてあげますね?『麗子(こぶた)ちゃん』?」
その言葉もまともに聞こえない位、私はチョコレートをひたすら食べるのだった。
・
・
・
「ふひぃー・・・ふひぃー・・・」
一歩一歩階段を登る。
それだけで汗が滝のように流れ出る。
教室までが遠くて仕方ない。
「・・・ふぅふぅ・・・よいしょっと・・・」
教室の前で少し呼吸を整え、それから扉を開けて気合を入れてから中に入る。
【ムギュッ!】
当然のようにお腹とお尻が詰まる扉を無理矢理突破し、私はヨロヨロとしながら自分の席へ向かう。
周りのヒソヒソ話が聞こえるけど、私はそれを無視して鞄とは別に持ってきた袋からお菓子を取り出した。
「んぐ・・・あむっ・・・はぐっ・・・!!」
菓子パン5個とチョコ菓子5箱、それとサイダー1L。
また増えた『朝のノルマ』をどんどんこなしていく。
「おはよう麗子ちゃん!」
「お、おはよう・・・ぶふぅ・・・かなえさん・・・」
ノルマをこなしていると、随分馴れ馴れしい感じでかなえがこっちに来る。
かなえはニヤッと笑うと、鞄からいくつかのお菓子を私の机の上に置く。
「お腹空いてるみたいだし、『良かったらコレも食べてよ』」
つまりコレは『追加のノルマ』だ。
「あ、ありがとう・・・是非いただくわ・・・」
「うん!そういえばまだ測定するの?」
「え、ええ・・・また・・・ふひゅぅ・・・太っちゃったから・・・」
「そうなんだ!お腹凄いもんね・・・」
そう言ってかなえは私のお腹を触りながら揺らしていく。
それだけで体中の肉が揺れる感覚が全身に伝わる。
「ならまた今度スリーサイズの測定手伝ってあげるね?」
そう言って自分の席に戻っていくかなえ。
つまり・・・あいつはまた私の太った体を見て笑いたいんだ。
ふと、私は自分の体を見つめてみる。
でかすぎる胸に、机が届かなくなるまで間に挟まるお腹。
椅子を3つ並べないとはみ出てしまうお尻。
腕は丸太みたいだし、足は象みたいに太い。
ほっぺたは膨らみすぎて視界の端にチラチラ見えるし、首の肉が付きすぎて呼吸すらままならない。
もうすぐ300kgを超えそうな体・・・いや、もしかしたら今日超えるかもしれないし、もう超えてるかもしれない。
私はそんな体を揺すりながら、目の前に広がった食べ物を詰め込んでいく。
「・・・ああ、痩せたいなぁ」
もう二度とかなわないであろう願いを口にしながら、私はかなえの願いを叶えるために今はひたすら食べ物を食べるのだった。
向坂麗子
身長166cm
体重:199kg → 191kg → 205kg → 214kg → 302kg
B:118cm → 113cm → 122cm → 126cm → 144cm
W:155cm → 151cm → 163cm → 166cm → 187cm
H:169cm → 163cm → 176cm → 181cm → 215cm