堕ちた王者と絶望のアイアンマンマッチ~凛香VSナギサ~Part3(Fin)/The Fallen Champion and the Iron Man Match of Despair ~Rinka VS Nagisa~ Part 3(Fin)
■前回
■試合内容
当サークルで一番の人気シリーズである「堕ちた王者」の最新話です!!
凛香VSナギサのアイアンマンマッチも折り返しを過ぎたが、大方の予想通りドミネーションが繰り広げられていた。
そんな中、ナギサは凛香にとある提案を持ちかけていき─────
といった感じで、今回は完結編になります!!
挿絵は全5枚+α、SSは約13000文字です(pixiv換算で読了まで約26分)。
長くなって申し訳ないという気持ちはありつつも、当FANBOXで歴代2位のいいね数(Part2で63)を誇るこの試合の完結編としては満足のいくものになったと信じております。
是非対戦よろしくお願いします~。
凛香さんスランプ編こと堕ちた王者シリーズは下記にまとめてありますので、もし良ければそちらも是非~。
■Content of the match
Here is the latest chapter of “The Fallen Champion,” our circle's most popular series!!
The Iron Man match between Rinka and Nagisa has passed the halfway point, and as most people predicted, it has turned into a one-sided domination.
Amidst this, Nagisa approaches Rinka with a certain proposal─────
And with that, this chapter marks the conclusion of the series!!
While I do feel a bit sorry for making it so long, I believe this conclusion to the match—which boasts the second-highest number of likes in the history of this FANBOX (63 in Part 2)—is a satisfying one.
Please do give the match a read~.
The “Rinka's Slump” arc, also known as the “Fallen Champion” series, is summarized below, so please check that out as well if you'd like~.
★最後にアンケートがあります。プラン内容の方針を決める要素になりますので、よければ皆さんのご意見を教えていただけると幸いです。
There is a survey at the end. This will be a factor in deciding the content, so if you would like to give us your opinion, please do so. (Japanese)
★For non-Japanese users★
Please take a moment to translate and read this short story on sites such as https://www.deepl.com/translator m(_ _)m
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堕ちた王者と絶望のアイアンマンマッチ~凛香VSナギサ~Part2
The Fallen Champion and the Iron Man Match of Despair ~Rinka VS Nagisa~ Part 3(Fin)
「さぁ~て…………残り12分、どこまでポイント伸ばせるか楽しみね♡」
ご機嫌な様子で小悪魔的な笑みを浮かべるナギサの足元で、凛香の意識は依然として深い闇の中へと堕ちてしまっている。
「ぁっ…………んぅっ………………」
肉体はとっくに限界を迎えており、精神は本能レベルで完全に屈服してしまい、もはや逆転が不可能な程のポイント差がついていても──────それでもなお、試合はまだ終わらない。
なぜなら─────他ならぬ彼女自身が、そのルールを選んだのだから。
「アイアンマンマッチ……最後までた~っぷり愉しみましょうね、凛香ちゃん♡」
妖艶な色香を纏った女の宣告と共に、残り12分間にも及ぶ【堕ちた王者と絶望のアイアンマンマッチ】の、真の地獄が幕を開けたのだった。
キャンバスに広げられた”黄金色の無様な染み”を清掃するため、アイアンマンマッチのリングでは異例となる長めのインターバルが取られていた。
「…………っ、ぅぅ…………」
青コーナーのパイプ椅子では、黒髪の少女がぐったりと俯いている。
気付けの処置を受け、なんとか深い意識の底から引き上げられた凛香だったが、その虚ろな瞳はどこにも焦点が合っておらず、まるで突きつけられた残酷な現実を直視するのを拒んでいるかのようだった。
(打撃なら勝てると思ったのに……まさか、10カウントKOを奪われるなんて)
未だにズキズキと痛む頭で先ほどの屈辱的な敗北を反芻し、更にはここまでの試合の状況を振り返る。
(ハンデを貰っておいてこのザマ…………我ながら情けないわね)
ナギサは本職のレスラーとはいえど、今回は媚薬という重いハンデを背負っている。
かつて自分が同じようにハンデを背負って彼女とボクシングで戦った時は、手も足も出ず完敗を喫したにも関わらず──────自分は、相手の土俵どころか、一番自信のあった打撃戦ですら完全に子ども扱いされ、いまだに1ポイントすら奪うことができていない有り様。
(これがボクシングなら、さっきのダウンで既に試合は終わってる。……ううん、ルールがどうであれ、このポイント差じゃ、もう逆転なんて絶対に無理…………)
もはやどれだけ足掻こうとも、試合の勝敗は既に決してしまっている。
それに加えて──────
「…………ッッッ!!!」
向かい側で余裕の笑みを浮かべている藤色の髪の少女が”完全なる格上”であることを本能が認めてしまっており、遠くから目が合っただけで少女の思考回路は即座に停止しかけてしまう。
もはや戦う前から肉体が白旗を揚げかけている様な絶望的な状況の中──────少女の耳に、親友の声が届けられていく。
「凛香っ、私の顔を見なさい!!」
心が折れ、うつむきかけた凛香の頬を、セコンドのあきらが両手で強引に挟み込んで上に向かせる。
「残念だけど、スコア的にここから逆転するのは厳しいわ…………でも、貴女の今日の目的はそれじゃないでしょ!?」
「あーちゃん……」
「一ポイント……せめて一ポイントでいいから、何としてもナギサちゃんからもぎ取ってきなさい!!」
至近距離から叩きつけられた、悲痛な、しかし熱い想いを携えた親友の檄。
その言葉を受けて、凛香はハッと息を呑む。
(ここで諦めたら……今までと、何も変わらないっ……!!)
元より今日の試合は勝つことが目的ではなく、格上相手にすぐ心が折れてしまう自らの悪癖を克服するために挑んだものである。
リングに立つ本当の理由を思い出した凛香は、ギュッと薄い唇を噛み締めると、あきらの瞳を真っ直ぐに見据え、己を奮い立たせるように力強く頷いていった。
カーン!!!
「凛香選手、非常に苦しい状況ですが、ここから一矢報いることはできるのか!?」
熱を帯びた実況の声と共に、アイアンマンマッチの再開を告げるゴングが鳴り響いた。
(一ポイント……せめて、一ポイントだけでもっ……!!)
あきらの熱い想いに応えるべく、凛香はギュッと拳を握り締め、自らを鼓舞してリングの中央へと歩みを進める。
だが──────
「あはっ♡」
向かい合う藤色の髪の少女が、妖艶な美女のような、それでいて絶対的な捕食者の笑みを浮かべた瞬間。
「あっ…………」
凛香の身体が、ピタリと固まってしまう。
(だめっ……またっ……なにも考えられなくっ…………)
気合を入れ直したはずだったのに、頭では前に出なきゃいけないとわかっているのに、体の奥底まで刻み込まれてしまった無力感が、少女の両足をキャンバスへと縫い付ける。
”堕ちた王者”が、その不名誉な二つ名を賜るまでに連敗を重ねてしまった原因であり、彼女が克服したいと心から願うその悪癖が、少女の思考を、身体を、どうしようもないほど縛り付けてしまっていた。
「ほらほら、なにぼーっとしてんのよ!!」
「えっ…………ぁっ、がはぁっっ!!!」
蛇に睨まれた蛙のように硬直してしまっている凛香の無防備な首元へ、助走をつけたナギサの強烈なラリアットが容赦なく叩き込まれた。
「凛香選手の体ごと根こそぎ刈り取るような強烈なラリアットが炸裂~~!!!」
たった一発。
力任せに放たれたその一撃で、かつての王者はまるでおもちゃのように派手に吹き飛ばされ、キャンバスへと無様に崩れ落ちてしまう。
「あ゙っっ……ん゙があ゙っ………………」
「も~……隙を見せたらダメだって、アタシちゃんと教えてあげたでしょ♡」
強烈な衝撃で息を詰まらせ、手足に力が入らずうつ伏せに倒れ伏す凛香。
そんな彼女の頭部を、ナギサは自らの両脚で器用に挟み込むと、そのまま華麗な身のこなしでキャンバスへと転がり込んだ。
「んぐっ!?……ぁ……ぐぇぇっ……!!!」
そのまま相手の首元を白い太ももでガッチリとロックし、自らの足首を組んで万力のように締め上げる、プロレスの伝統的な絞め技──────首四の字固めが、這いつくばる少女の気管を容赦なく圧迫していった。
「あ゙っ……が、はぁっ…………ぎぃっ……!!」
気管を激しく圧迫され、酸素を絶たれた凛香の顔が苦痛に歪み、白く細い喉から掠れた悲鳴が漏れ続ける。
「アタシもそろそろ調子出てきたから……本気でいっちゃうよ!!」
試合開始から20分近くが経過し、ナギサの体内を巡っていた媚薬の効果は徐々に薄れ始めていた。
それはつまり、ハンデを背負った状態から、本来のレスラーとしての実力を十二分に発揮できるコンディションになりつつあるという、凛香にとって残酷な事実を意味している。
「アハッ♪……凛香ちゃん、絞め上げられてる顔もめっちゃイイじゃん♡」
だがそれ以上に、黒髪の少女にとって不幸だったのは、薬が抜けかけてもなお、彼女の内に芽生えた嗜虐心と攻撃性が収まらないことであった。
「ゔっ、がっ……あ゙あ゙あ゙っっ…………」
むしろ、自らの股の間に挟み込んだ元王者の、酸素を求めてあえぐ官能的な痴態──────汗と涎と涙にまみれ、苦痛に顔を歪めて無力にもがく友人の姿が、ナギサの底知れぬ加虐心をさらに煽り立てていた。
「ねぇ、凛香ちゃん……苦しいよねぇ?」
「がっ……んあ゙っ…………こひゅっ……………」
真剣勝負の舞台とは思えないほどの蕩けそうな甘い声色と共に、ナギサは自らの太ももに更なる力を込めながら、無様に喘いでいる友人へ向けて囁く。
「”参りました”って言えば…………ここで全部、終わりにしてあげてもいいけど?」
どうする?と言葉を続けながら、藤色の髪の少女はその整った顔に嗜虐的な笑みを浮かべていった。
「ッッッ…………!!!」
それは、単にこの首四の字固めに対するギブアップの勧告ではない。
残り時間をすべて放棄し、このアイアンマンマッチそのものに対する『完全なる白旗』を促す、極めて残酷な悪魔の誘いだった。
「な、なんと……ナギサ選手、凛香選手に完全降伏の申し出だぁ~~~!!!」
(それはっ…………それだけはっ……絶対に、だめっ…………!!)
徐々に薄れゆく意識の中で、少女は必死に抗う。
勝ち目がないほどの圧倒的な格上に対し、どれだけ無様な姿を晒そうとも、どれだけ蹂躙されようとも、心折れずに最後まで闘い抜くこと。
そうして自らの悪癖を打ち破ることこそが、彼女がこの過酷なアイアンマンマッチに挑戦した目的であり、もはや惨敗が確定しているこの試合において唯一の道標となっていた。
ゆえに、それを根底から覆す『完全降伏』の宣言だけは、絶対に口にするわけにはいかなかった。
「どう凛香ちゃん……ギブアップ? …………それとも、”まいった”しちゃう?」
完全に主導権を握ったナギサは、自らの太ももの間で苦痛に顔を歪める友人の顔を覗き込み、ニヤニヤと愉しげに問いかける。
「っがっ…………こひゅっ……」
(まいったなんてっ……絶対に、しないんだからっ…………)
朦朧とする意識の中で、黒髪の少女は必死に首を振る。
たとえどれだけ苦しくても、完全降伏の宣言だけは絶対しないという覚悟が、その弱々しい動作に表れていた。
(でっ、でもっ……流石にもう、限界っ…………一旦ギブして、体勢を立て直さなきゃっ……!!)
降伏はしたくない。
しかし、悲しいかな肉体はすでに限界を超えている。
「がっ…………ぁ…………」
強烈な絞め技による酸欠と激痛で目の前がチカチカと明滅し始める中、少女はせめてこの地獄の苦しみから逃れるため、通常のギブアップを宣言しようと震える唇を必死に動かす。
「ぎ……ぎb…………」
────────だが、非情にも彼女の言葉が最後まで紡がれることはなかった。
カクン、と。
言葉を発しようとしたその瞬間、凛香の白く細い首が力なく折れ曲がり、琥珀色の瞳から完全に光が失われる。
「………………………………」
限界まで締め上げられた頸動脈が脳への血流を完全に遮断し、ギブアップの言葉すら許されないまま、無惨にも意識を刈り取られてしまった黒髪の少女。
白目を剥きながら舌を突き出し、小刻みに痙攣している肉体を見たレフェリーは全てを察するやいなや、素早い動作でゴングを要請した。
「ストップ! ストップ!!」
カンカンカーン!!!
「あ~っと、既に失神してしまっているのか~~~!!?
凛香選手、ギブアップすらできずに無念のブラックアウトです!!」
6ポイント目を告げる鐘が響き渡る中、慌てた様子のレフェリーがナギサを引き剥がし、哀れな敗者の肉体を解放していく。
「オチるまで頑張っちゃうなんて…………本当に、健気で可愛いわね♡」
「ぅ……………………ぁ………………………………」
口からうわ言を吐き出しながら完全に脱力し、キャンバスに投げ出された元王者の姿を見下ろし、ナギサは心底愛おしそうに微笑んだ。
「凛香っ!!」
凛香が地獄の苦しみから解放された直後、青コーナーからセコンドのあきらが血相を変えてリングへと飛び込み、ピクリとも動かない親友の元へと駆け寄る。
「それじゃ……あとはよろしくね、あきらちゃん♡」
そんな必死な姿のあきらに対し、ナギサは小悪魔のようにウインクを投げると、悠然と自陣のコーナーへと戻っていった。
試合はさらに時間が経過し、リング上で繰り広げられているのはもはや闘いではなく、ただの凄惨な蹂躙劇と化していた。
「ほらほら凛香ちゃん♪……ギブアップ? それとも……”まいった”、しちゃう?」
ナギサがご機嫌な声を出しながら凛香にかけているのは、本日二度目となるドラゴンスリーパー。
「ぁ…………ぅ…………」
喉笛を容赦なく締め上げられ、白く美しい顔を無惨に歪ませた凛香の口からは、もはや言葉にならない弱々しい呻き声だけが漏れ続けている。
ロープを目指して這いずることも、技を解こうと手足をバタつかせて足掻くことすら、今の彼女にはできない。
なぜなら──────悲しいことに彼女は既に、白目を剥いて失神してしまっているのだから。
「ストップ!! この娘、またオチちゃってるっ!!」
そして数分前と同様に、異変に気付いたレフェリーが慌てた様子でゴングを要請した。
カンカンカーン!!!
「これで驚愕の7ポイント連取~~~~!! 下馬評通りといいますか、もはや完全にドミネーションとなってしまっております!!!」
もはや実力差という言葉すら生ぬるい、余りにも一方的な公開処刑。
そんなリング上の惨状を見守っていた観客席の一角──────凛香とナギサのクラスメイト達の間にも、異様な空気が漂い始めていた。
「凛香ちゃん……このままだとマジで1ポイントも取れずに終わるくない?」
「流石にこれは想像以上っていうか……ナギサちゃん、鬼過ぎるでしょ」
校内有数の有名人である地下ボクシング元王者の、見るに耐えない無様なサンドバッグ姿を見て、応援席の熱狂はすっかり冷めきり、気まずさと哀れみの入り交じった空気が静かに広がっていく。
だが、友人たちのそんな冷ややかな呟きすら、呆けた表情を浮かべて失神してしまっている凛香の耳には届かなかった。
「いい? もし試合に負けたとしても、諦めずに最後まで立って闘うことができれば……貴女は本当の意味で勝ったと言えるわ!!」
短いインターバルの中、青コーナーのパイプ椅子でぐったりと項垂れている凛香へ向けて、あきらが必死に檄を飛ばす。
現在のスコアは0対7。
ここからの逆転が無理なのは当然として、もはや1ポイントを奪い返すことすら不可能なほどに、両者の間には絶望的な実力差が横たわっている。
だからこそ、あきらはこの過酷な試合に挑んだ本当の目的──悪癖の克服──を、心が折れかけてしまっている親友に再び叩き込んだのだ。
「ありがとあーちゃん…………私、最後まで頑張るから」
あきらの熱い言葉を受け、焦点の合っていなかった琥珀色の瞳に、わずかながら闘志の光が戻る。
だが──────その痛ましいほどにささやかな目標すらも、圧倒的な暴力の前では無惨に打ち砕かれる運命にあった。
「あははははっ♪ ほらほらぁ……どんどん行くわよ!!!」
再開のゴングから、わずか数十秒後のこと。
少女の悲壮な決意はリングの上でなんの成果を生み出すこともできなかった。
凛香の肉体は宙に持ち上げられ、そして────────ナギサの無慈悲なパワーボムでキャンバスへと連続で叩きつけられていた。
「がはぁっっっ!!」
「あ゙ぐぅぅっっ…………!!!」
「ん゙お゙っ………………ぅ……ぁぁ………………」
一発、二発、そして三発目。
脳髄を揺らす強烈な衝撃と、全身の骨が砕けるような激痛。
限界をとっくに超えていた肉体はついにその負荷に耐えきれず、三発目の着弾と同時に、黒髪の少女の意識はプツリと完全に刈り取られてしまった。
「はい、おしまい♡」
白目を剥き、口からだらしなく涎を垂らして大の字にノビている友人を見下ろすと、ナギサはその豊満な胸の上に、むにゅぅっと冷酷に自らの片足を乗せる。
相手が失神していると確信したからこそできる、屈辱的な踏みつけフォール。
この試合で二度目となるそれは、意識のない少女に跳ね除ける力など残されているはずもなく、レフェリーの掌が無情にもキャンバスを三度叩いた。
「ワン…………ツー………………スリー!!!!
ナギサ、1ポイントッッ!!!」
カンカンカーン!!!
「ナギサ選手が止まらない~~~~~!!
友人相手に情け容赦なく、怒涛の8ポイント目を連取していきました!!!」
実況の叫び声が、またしても為す術なく敗北した元王者の無様な姿を、世界中へと知らしめた。
「おいおい……せっかく凛香ちゃんに賭けてやったのに、今日もこのザマかよ」
「残りあと5分か……これ、もしかして10ポイント行くんじゃね?」
UBC屈指の人気ファイターである凛香のドミネーション劇で、会場は本日一番の盛り上がりを見せる。
だが、観客の興味はもはや勝敗そのものではなく、点数差がどこまで伸びるのかと、凛香が完全降伏をしてしまうかどうかに移っていた。
残り時間はあとわずか。
だが、その数分間すらも、今の少女にとっては永遠に等しい拷問の時間だった。
「あ゙あ゙あ゙っっ……ん゙っ…………ん゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙~~~~!!!!」
リングの中央で、再び悲痛な絶叫が上がる。
声の出どころは美しく弓なりに反らされた雌として極上の肉体。
本日二度目となる弓矢固めに捕らえられ、凛香は背骨が折れんばかりの激痛に顔をぐしゃぐしゃにして泣き叫ぶことしかできなかった。
「ほ~ら、凛香ちゃん…………”参りました”、は?」
愛馬の手綱を引き絞るように肉体を極限まで反らせながら、ナギサは耳元で残酷な降伏を促す。
「ん゙がっ…………あ゙っ、ゔぅぅっ………………」
だが、凛香の喉からは、もはや意味を成す言葉の欠片すら出てこない。
アイアンマンマッチそのものを放棄する「参りました」はおろか、ただ技から逃れるための「ギブアップ」すら声に出せないほど、彼女の意識は深い混濁の底へと沈みかけていた。
そして──────
「ぎ……ぎ、ぶっ…………あ゙っ………………」
カクンッ、と。
またしても、限界を超えた脳が強制的に機能のシャットダウンを引き起こした。
白く細い首が力なく垂れ下がり、情けないうめき声を上げていた口からはどろっとした涎がこぼれ落ちる。
「……って、またオチちゃってるよこの娘」
完全に抵抗の力を失い、ただの肉塊と化した友人の重みを感じ取り、ナギサは呆れたような、それでいて心底愉しそうなため息を吐いた。
「ストップ、ストップ!! ゴング鳴らして!!」
凛香が失神していると判断したレフェリーが、すかさず両腕を交差させて試合を止める。
カンカンカーン!!!
「これで9ポイント目~~~~!!!
凛香選手、もはや目も当てられない状況です!!!」
実況の悲痛な叫びがアリーナ中に虚しく響き渡る。
「これはもしや……前代未聞の二桁失点となってしまうのかぁ!!?」
スランプ中のボクサーと本職のレスラーの試合であることから、凛香の苦戦は予想されていた。
だが、目の前で繰り広げられる予想を遥かに上回る凄惨な光景は、会場の観客たちだけでなく、画面越しに見守るたった一人の妹の心をも、無惨に引き裂いていた。
─────────由乃の部屋─────────
「おねぇ…………」
スマートフォンを握りしめたまま、由乃は震える声で画面の中の姉を呼ぶ。
だが、当然その声が返ってくることはない。
画面に映っているのは誇り高き元王者ではなく、手も足も出ずに嬲られ、好き放題に痛めつけられ、白目を剥いて失神を繰り返す無力な少女の姿だけであった。
「だから、勝てるわけないって言ったのに…………」
かつて心から憧れ、尊敬し、強い親愛を抱いていた自慢の姉。
そんな彼女のあまりにも無残な姿を前に、由乃はもはや言葉を紡ぐことすらできず、ただ涙目で画面を凝視し続けることしかできなかった。
アイアンマンマッチにおいて、ポイント変動後に与えられるインターバルはわずかに1分。
だが、その短すぎる休息時間すらも、今の青コーナーにとっては永遠のように長く、残酷な焦燥の嵐となっていた。
「凛香っ、凛香っ!!…………お願いだから、目を覚ましてっ!!」
首筋に氷嚢を押し当て、あきらが必死に頬を叩き続けても、パイプ椅子で項垂れた凛香の意識は一向に戻らない。
すでにインターバルの時間は40秒を経過しており、レフェリーが試合再開の準備を促す中、セコンドの悲痛な叫び声だけが虚しく響いていた。
(だめっ、このままじゃ…………っ!!)
「……ぅ…………あー、ちゃん…………!?」
時間切れを告げるゴングが鳴る直前。
数十秒ぶりに、ようやく琥珀色の瞳が薄く開かれた。
だが、そこにはかつてのような強い闘志の炎は欠片も残されていない。
(しあい、まだ続いてる…………でも……もう、からだ……動かない…………)
打撃、関節、絞め、投げと、プロレス技のフルコースをこれでもかと受け続けてしまった少女の肉体は、すでに限界を通り越しており、もはや立ち上がるのすら困難な状態にあった。
「よく起きたわ、信じてたわよ凛香!!
…………もうすぐゴングなっちゃうけど、今は少しでも休みなさい!!」
「ありがと……あーちゃん…………………」
勝つことなど、とうの昔に諦めていた。
その次に掲げた1ポイントでも奪い返すという目標も、圧倒的な格の差を見せつけられ、断念せざるを得なかった。
(せめて……せめて、一桁の点差で…………これ以上は、もう…………)
すでに心が屈服しており、完全なる敗北を受け入れてしまっている、元王者の哀れな少女。
せめて二桁失点だけは免れたい。
それが、今の彼女に残された余りにもささやかで、ひどく惨めな最後の願いだった。
だが──────無情にも、会場の電光掲示板に表示されている残り時間は『3分』。
万全の状態であればまだしも、サンドバッグとして嬲られ続けることしかできない今の彼女にとって、それは永遠にも等しい長さであった。
(あ、あと3分も…………無理っ……耐えられるわけ、ない…………)
ここまで蹂躙された記憶が、本能に刻み込まれた格の差が、絶対に不可能だと警鐘を鳴らしていく。
どうせこのまま無様に嬲られ続け、惨めな姿を晒し、最後にはまた失神させられるだけなのだとしたら。
(それならいっそ…………『まいった』って、言っちゃったほうが………………)
かつて【堕ちない少女】と呼ばれた少女の心に、ほの昏い淀みが満ちていく。
もはや完全に心が折れかけ、自ら白旗を揚げるという甘く危険な誘惑に囚われたまま──────絶望のアイアンマンマッチの再開を告げるゴングが、会場に鳴り響いた。
カーン!!!
「この試合も残りあとわずかです!! このまま二桁失点となってしまうのか!?
そして、凛香選手は最後まで降参せずに意地を貫き通すことができるのか!?」
再開のゴングと共に、アイアンマンマッチ最後の3分間が始まった。
だが、青コーナーから進み出た凛香の身体は、リング中央の手前でピタリと止まってしまう。
「あ……うぁっ………………」
未だに収まる気配のない格上に対する悪癖と、完全に限界を迎えた肉体。
その両方が重くのしかかり、彼女の身体は見えない鎖で縛られているかの如く動けずにいた。
「あはっ♪……もー、ホントにダメダメじゃん♡」
躊躇なく近づいてきたナギサが小悪魔じみた笑みを浮かべ、案山子のように突っ立っているだけの凛香の胴体を正面からがっしりと両腕で抱え込んだ。
「ゔぐぅっっ…………!?」
ベアハッグ。
ただ抱きつくだけの単純な技ではあるものの、本職のレスラーであるナギサの膂力で締め上げられれば、それは凶悪な拷問器具へと姿を変える。
「あ~っと凛香選手、無防備なままベアハッグに捕まってしまいました!!!」
「がっ……はぁっっ…………ゔあ゙あ゙あ゙っっっ…………」
肋骨がきしむ嫌な音と情けないうめき声のデュエットが奏でられる中、少女の肺の中に残っていたわずかな酸素が無慈悲に絞り出された。
「ねぇ凛香ちゃん…………いい加減、”まいった”しちゃいなよぉ~♡」
汗だくの柔肌同士を密着させた状態で囁かれる、蕩けるような甘い毒。
返答を待たずして、藤色の髪の少女はさらに腕力を込めて締め上げる。
「がはぁっ……あ゙ぐぅっ…………ゔっ、ゔあ゙あ゙あ゙あ゙っっ!!!!」
少女の琥珀色の瞳から、大粒の涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。
激痛、窒息の苦しみ、そしてただ泣き叫ぶことしかできないという無力感。
思わず『まいりました』という言葉が脳裏をよぎるものの──────
(それだけはっ…………それだけはっ、絶対に言わないんだからっ!!!)
それでもなお、凛香は涙と涎で顔をぐしゃぐしゃに歪めながら、声にならない悲鳴を上げて必死に耐え続けていった。
「全く、本当に強情なんだから♡…………それなら、もっと可愛がってあげる!!」
どれだけ締め上げても首を振らない凛香に対し、ナギサは少しだけ不機嫌そうに唇を尖らせた。
だが、すぐにその表情は新たな玩具を見つけた子供のような邪悪な笑みへと変わる。
「よっと…………ほら、次はこっちよ♡」
締め上げていた腕を少し緩めると、ナギサは凛香の身体をひょいと、まるでお姫様抱っこでもするかのように軽々と持ち上げた。
「んっ……ふぇぁ…………」
そのまま、抵抗する力すら残されていない元王者の肉体を自らの肩の上へと担ぎ上げ、仰向けの状態に固定していく。
「あ゙ゔゔっっ…………!!!」
脊髄を頂点にして、少女の肉体が無残に反り返る。
プロレス屈指の拷問技──────アルゼンチンバックブリーカーが、抵抗すら許されない元王者の肢体を、これ以上ないほど惨めな晒し者としてリングの宙に磔にした。
「ゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙~~~~~!!!!」
「強烈なアルゼンチンバックブリーカーが決まってしまったぁ~~~~!!!
凛香選手、これは万事休すかぁ!!?」
「凛香っっ!!!」
実況の熱狂と親友の悲痛な叫び声が会場に響き渡る。
そんな中、リングの宙で無惨に反り返らされた黒髪の少女は、全身の骨が砕けるような激痛を前にただ悲鳴をあげることしかできない。
「あ゙っ、あ゙あ゙っっ……あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙~~~~~!!!!」
これまでの試合中、弓矢固めやキャメルクラッチなどで執拗に背中を攻められ続けてきたダメージがここに来て臨界点を迎えており、少女の心に僅かながらに残された意思の力を軽々と消し飛ばした。
(だめっ……背中、折れちゃうっ…………!!)
もはや意地や誇りを保つことすら不可能。
痛みのあまり思考が完全にショートした凛香は、せめてこの地獄の苦しみから逃れるため、震える声で通常のギブアップを乞おうとする。
「ぎ…………ぎぶっ、」
だが────────その言葉を最後まで紡がせるほど、彼女を捕らえた捕食者は甘くはなかった。
「あ゙あ゙あ゙あ゙っっっっ!!!」
「ねぇ、違うでしょ? …………他にいうべきこと、あるよね?」
ナギサが自らの肩を支点にして、さらに容赦なく凛香の四肢を引き絞る。
ギブアップの宣言すらも強烈な激痛によって強引にキャンセルさせられ、元王者の口からは涎混じりの悲鳴だけが迸った。
「ナギサ、凛香のギブ宣言を無理やりシャットアウト!!
完全降伏以外は認めないということなのか~~~!!?」
「ほらほらぁ……いい加減、諦めて楽になっちゃいなよ♡」
まるで聖母のような優しい声で囁かれるのは、悪魔のような堕落への誘い。
限界を超えた肉体と完全に屈服してしまった心に、その言葉はどうしようもないほど染み渡った。
「あ゙ゔっ……あ゙っ…………ひぎぃっっ……………………」
「残り時間はあとちょっとだから何とか耐えるのよ!!
アタシ信じてるからね、凛香!!!」
そんな中、もはや凛香の耳には届いていないであろうことを承知の上で、あきらは必死にエプロンを叩きながら親友に激を飛ばした。
「ここにきて見事な粘りを見せる凛香選手!!
これはもしや、このまま耐えきることができるのか~~~!!?」
時間にしてあとわずか1分足らず。
”せめて一桁失点で終わりたい”という、少女の最後の願いが現実味を帯びつつあったのだが─────────
「あ゙っ……あ゙あ゙っ…………ゔあ゙あ゙っっ……………………」
極限の痛みで何も考えられなくなってしまった哀れな少女は、決して口にしないと誓ったその言葉を、ついに震える唇から零してしまう。
「…………ま、まいり……ましたぁ…………」
「え……何? 聞こえないからちゃんと大きな声で言ってくれる?」
微かなその敗北宣言を聞き逃さなかったナギサは、満面の笑みを浮かべながらわざとらしく小首を傾げ、さらに背骨への圧迫を強めた。
「あ゙っ、ひぐっ……あ゙あ゙あ゙っっ…………!!!」
そして、すべてが完全に砕け散った瞬間。
もはや格闘家でなはく、ただ痛みに震えるだけの少女へと成り果てた元王者は、アリーナ中の観客が静まり返る中、世界中に向けて、はっきりとその屈辱的な言葉を泣き叫んだ。
「ま……参りましたぁっ…………私のっ、負けっ……ですぅぅぅ…………!!!」
カンカンカンカンカーン!!!!!
「り、凛香選手……ついに……ついに、完全降伏を宣言してしまいました!!!」
アイアンマンマッチの絶対的なルールである『時間切れ』を待たずして、無情にも試合終了を告げるゴングがアリーナ中に乱れ打たれる。
「なんと……アイアンマンマッチにおいて前代未聞の戦意喪失による完全決着!!
残り時間はわずか15秒……たったの15秒が、彼女には耐えきれない永遠の地獄だったのかぁ~~~~~!!」
観客を煽る実況の絶叫が響き渡る中、青コーナーではパサリと、乾いた音が鳴った。
「嘘でしょ凛香……アタシ、信じてたのに…………」
それは、セコンドのあきらの手から力なくタオルが滑り落ちた音だった。
絶望的な状況でも最後まで愛する親友のことを信じていた、ただ一人の少女。
これまで幾度となく手酷い惨敗を喫してしまったものの、凛香の意思で降伏宣言を行ったのはほとんど初めてであり、その事実がより一層彼女の失望を招いていた。
「ふふっ…………よく言えました♡」
一方、リング中央。
自らの手で可愛らしい友人の心を完全にへし折ったナギサは、心底満足そうな、妖艶な淫魔のように艶やかな微笑みを浮かべた。
「あ゙っ…………ぅ、ぁ……………………」
拘束が解かれ、地獄の苦しみからようやく解放された少女の肉体が、まるでお役御免となった壊れたおもちゃのように、ドサリと無様にキャンバスへと転がされる。
精も魂も完全に尽き果て、ピクピクと弱々しく痙攣し、虚ろな瞳で視線を漂わせながら涎を垂らすその姿に、かつての誇り高き王者の面影は微塵も残っていなかった。
─────────由乃の部屋─────────
「……………………」
スマートフォンから流れる実況の絶叫と、観客たちの熱狂。
そして画面の中央に映し出された、自ら「まいりました」と泣き叫んでキャンバスに転がされている姉の、あまりにも、あまりにも惨めな姿。
憧れ、尊敬し、誰よりも強いと信じていた自慢の姉の完全なる失墜を前に、由乃はもはや声を出すことすらできない。
ただポロポロと、大粒の涙を止めどなく流し続け、絶望に染まった瞳でその残酷な現実を凝視し続けることしかできなかった。
─────────試合会場─────────
熱狂のるつぼと化したアリーナの頭上。
巨大なメインモニターには、残酷なテロップがデカデカと踊っていた。
『堕ちた王者、またしても惨敗!!
アイアンマンマッチで異例の完全降伏による試合終了!!』
「UBC創設以来となる、最大得点差での大敗!!
及びUBCの最多連敗記録に並ぶタイ記録!!
さらにはアイアンマンマッチにおいて、前代未聞となる『完全降伏による決着』という、余りにも不名誉な記録の数々が打ち立てられてしまいました!!」
試合終了のゴングの余韻が冷めやらぬ中、実況席から残酷な事実が立て続けに突きつけられる。
「…………ぅ……………………ぁ………………………………」
そんな中、力なく横たわったままの少女の脳裏では、全身を焼くような痛み、ほぼ毎日顔を合わせる友人に心の底から屈服させられた情けなさ、そして、またしても何もできなかったという悔しさ……数え切れないほどの感情が濁流となって溢れ出した。
だが、それらの感情すらもとっくに心の許容量を超えており、元王者はただ口を半開きにしたまま茫然自失とすることしかできない。
(もう…………なにも……なにも、かんがえられない……………)
あまりにも惨めな敗北を喫してしまった少女の無様な顔のアップが、ライブ配信の画面を通じて世界中へと生中継されており、この瞬間も接続数はグングン上昇している。
(でも……………………)
衝撃の結末にどよめきと熱狂が渦巻く会場の中で、凛香の心だけはひどく静まり返っていた。
画面にデカデカと映し出される幾多の屈辱的な記録も、アリーナを揺らす観客の嘲笑も、もはや彼女の心に波風を立てることはない。
(おわった……これで………………もう…………いたく、ない…………)
誇りも、意地も、闘志も。
すべてを極限まで搾り取られた少女の脳裏を最後に支配したのは、屈辱でも後悔でもなく、ただ地獄が終わったという甘美な『安堵』だけである。
虚ろに濁った琥珀色の瞳は、もはや自分がどれほどの痴態を世界中に晒しているのかすら、微塵も理解できていないようだった。
【リザルト】
◯ナギサ─凛香✕ (シャイニングウィザード→ピンフォール)
◯ナギサ─凛香✕ (低空ドロップキック→おっぱい踏みつけフォール)
◯ナギサ─凛香✕ (弓矢固め→ギブアップ)
◯ナギサ─凛香✕ (キャメルクラッチ→ギブアップ)
◯ナギサ─凛香✕ (シャイニングウィザード→10カウントKO)
◯ナギサ─凛香✕ (首四の字固め→失神KO)
◯ナギサ─凛香✕ (ドラゴンスリーパー→失神KO)
◯ナギサ─凛香✕ (3連パワーボム→おっぱい踏みつけフォール)
◯ナギサ─凛香✕ (弓矢固め→失神KO)
◯ナギサ─凛香✕ (アルゼンチンバックブリーカー→完全降伏)
【アイアンマンマッチ最終結果】
ナギサ 10 ─ 0 凛香
試合時間29分45秒、完全降伏により凛香の敗北(現在9連敗)。
【堕ちた王者と絶望のアイアンマンマッチ~凛香VSナギサ~】___________Fin.