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堕ちた王者と砕かれた友情~凛香VSあきら~Part.3/The Fallen Champion and a Shattered Friendship: Rinka vs. Akira—Part 3

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堕ちた王者と砕かれた友情~凛香VSあきら~Part.3/The Fallen Champion and a Shattered Friendship: Rinka vs. Akira—Part 3
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■前回


■試合内容

当サークルで一番の人気シリーズである「堕ちた王者」の最新話です。

先月のPart.1~2も過去最高レベルのいいね数を頂いており、皆様楽しんで頂き本当にありがとうございます!!


ネタバレ防止の為に詳細は省くのですが、ナッツはストロ◯リー・パニ◯クで育った百合豚なので、親友モノが大好きなんですよねぇ^^


挿絵は全6枚、SSは約13000文字です(pixiv換算で読了まで約26分)。

長くなってしまい申し訳ないのですが、対戦よろしくお願いします~。



凛香さんスランプ編こと堕ちた王者シリーズは下記にまとめてありますので、もし良ければそちらも是非~。


あと先日のUBC-IFに関して、挿絵に軽い修正が入っておりますので、既に見ていただいた方には恐縮なのですが、是非気が向いた際にもう一度ご覧頂けますと幸いです~。



■Content of the match

This is the latest chapter of “The Fallen Champion,” our circle’s most popular series.

Last month’s Parts 1 and 2 also received a record number of likes, so thank you all so much for enjoying them!!


I’ll skip the details to avoid spoilers, but as a yuri fan who grew up on *Strawberry Panic*, I absolutely love best-friend stories ^^


There are a total of 6 illustrations (as usual, there are character portraits).

I'm sorry this got a bit long, but I appreciate your patience.


The “Rinka's Slump” arc, also known as the “Fallen Champion” series, is summarized below, so please check it out if you're interested.


Also, regarding the recent UBC-IF post, there have been some minor revisions to the illustrations, so I apologize to those who have already seen it, but I’d be grateful if you could take another look whenever you have a chance.


Thank you for your support.


★最後にアンケートがあります。プラン内容の方針を決める要素になりますので、よければ皆さんのご意見を教えていただけると幸いです。

There is a survey at the end. This will be a factor in deciding the content, so if you would like to give us your opinion, please do so. (Japanese)


★For non-Japanese users★

Please take a moment to translate and read this short story on sites such as https://www.deepl.com/translator m(_ _)m


---

堕ちた王者と砕かれた友情~凛香VSあきら~Part.3

The Fallen Champion and a Shattered Friendship: Rinka vs. Akira—Part 3




「凛香選手、ゴングに救われたものの…………

 果たして、次のラウンドまともに闘うことは出来るのかぁ!!?」


「ん……………………んぅ………………………………」


意識を完全に刈り取られ、白目を剥いたまま口からだらしなく涎を垂れ流し続けている凛香。


レフェリーがダウンを取る前に鐘が鳴り響いたため、彼女は”まだ”負けずに済んでいるものの、あとほんの数秒でもゴングが遅れていれば間違いなく10カウントKOを喫していたであろうことは、会場にいる誰の目にも明らかである。



「おねぇ…………」


「ぅ……ぁ………………よし…………の………………………………」


傷だらけの肉体でキャンバスに綺麗な大の字を描き、ぷるぷると不規則に乳房を揺らすだけとなっている元王者。


ベルトを巻いていた時の凛々しさはもはや欠片も残っておらず、余りにも無様なその姿は、誰がどう見ても”KOされた惨めなジョバー”のそれでしかなかった。






「おねぇっ…………おねぇ、起きてっ!!」


インターバルに入り、青コーナーへと引きずられるように戻された凛香の頬を、由乃が涙目で何度も叩いている。


「…………ぅ、ぁ………………よし、の…………」


そんな時間が数十秒ほど続いた後に、妹の必死の呼びかけと、首筋に押し当てられた氷嚢の冷たさで、ようやく凛香は昏い意識の底から浮上した。


だが、焦点の合わない琥珀色の瞳は虚ろに揺れており、まともな思考が働いているとは言い難い。



(あ……私、また失神しちゃってたんだ…………)


これまでの経験から、凛香は完全に意識を飛ばされていたことと、またしてもゴングに救われた事を即座に悟る。


だが、全身を駆け巡る鈍い痛みと、先ほどのジョルト・カウンターを顔面に浴びた瞬間の衝撃が、脳裏にこびりついて離れない。


(あーちゃんは……私の動き、全部わかってる。 それに、あのジョルト…………)


UBCでも最強格であるちかるとの激闘を経験し、ワンデイトーナメントで優勝した親友の実力は、自分が考えていたよりも遥か高みに到達していた。


(そもそも9連敗中の私なんかとは、格が…………)


その残酷な現実が、少女の心を黒く重い絶望で塗り潰していこうとする中───────彼女の耳に、セコンドからの声が届けられていく。


「おねぇ、しっかりして! まだ試合は終わってないよ!!

 おねぇなら逆転出来るって、あたし信じてるからね!!」


由乃が必死に励ましの言葉をかけるが、その声は僅かながら震えている。


そんな妹を元気づけるべく凛香は無理やり口角を上げようとしたが、ジョルトのダメージが残っているのか、どこかぎこちない笑みを浮かべる事しか出来なかった。


「ありがと由乃。

 可愛い妹が応援してくれてるんだもん……私も本気出さなくちゃね!!」


心を埋め尽くそうとする暗い感情を振り払うべく、敢えて強気の言葉を放つ凛香。

だがその言葉とは裏腹に、少女の膝は今もガクガクと震えてしまっていた。






カーン!!!


「さぁ始まりました第3ラウンド!!

 凛香選手はここまで全く良い所がありませんが、果たしてこの逆境にどう抗っていくのか!?」



ゴングと共にリング中央へ歩みを進めた凛香は、対戦相手と向かい合った瞬間に全身の産毛が逆立つような悪寒を覚えた。


(あーちゃんが……こんなに大きく見えるなんて)


目の前に立つ親友から放たれる、絶対的な強者特有の風格。

先のラウンドでジョルト・カウンターを完璧に決めた事により、あきらの集中力は極限まで研ぎ澄まされ、”ギア”が明確に数段跳ね上がっていた。



ボクサーとしての本能が盛大な警鐘を鳴らす中、凛香は背後をチラリと振り返る。

そこには、心配そうに自分を見守る妹の姿があった。


(由乃と約束したんだ……もう二度と、カッコ悪い姿は見せないって!!)


「やぁぁぁっっ!!」


湧き上がる感情を無理やりねじ伏せ、凛香は決死の覚悟で拳に力を込め、蒼いグローブを全力で振り抜いていくのだが───────



「ぶひゅぅっっ!!」

「このぉっ……おぶぅっっっ!!!」

「まだまだっ…………はべぇっっっっ!!!!!」


必死に繰り出した拳はその全てが虚しく空を切り、逆に紅色のカウンターが元王者の顔面へと容赦なく突き刺さっていった。


「あきら選手のカウンターが冴え渡る~~~~!!

 凛香選手、必死に手を出すもののまるで相手になっておりません!!!」



「あ゙っ…………ぅ、ゔぅっ………………」


パンチを打ち込めば打ち込むほど、強烈なカウンターを貰ってしまい情けない声を上げる羽目になってしまうという残酷な現実。


文字通り手も足も出ない絶望的な状況に、辛うじて繋ぎ止めていた凛香の心は折れ、ついに”その時”が訪れてしまう。




(あっ……ダメっ…………これ、勝てない……………………)


フットワークを刻んでいた足が止まり、腕は辛うじて構えてはいるものの力なく固まり、殴り合いの最中であるにも関わらず完全に動きを止めてしまった少女。


最近の彼女の闘いを見ている者であれば、それが何を意味するのかは容易に理解できた。



「あ~っと凛香選手、完全に動きが止まってしまったぁ!!

 これは…………お馴染みの”サンドバッグタイム”が到来してしまうのかぁ!!?」


”相手が自分より格上”だと心が屈服した瞬間、ボクサーとしての思考や動きが完全に停止し、無抵抗のサンドバッグと化してしまう少女の悪癖。


これまでの数々の敗北から刷り込まれた”格が違う相手に勝てる訳ない”という学習性無力感に起因するこの致命的な深層心理こそが、現在彼女が泥沼の9連敗を喫してしまっている最大の理由であった。






「あら…………ねぇ凛香、もう心が折れちゃったの?」


「……………………」


呆れたような声であきらが問いかけるも、少女は虚ろな瞳で宙を見つめるだけで、一切の反応を示さない。


「だから……棒立ちになってちゃ、話にならないって言ってんのよ!!!」


もはや反撃の恐れすらないと判断したあきらは、懐まで踏み込んで全力の拳を振るっていく。


その重い紅の拳には、余りにも情けない親友に対する『怒り』と、愛しい想い人に対する『愛情』、そして────────必ず立ち直ってくれるはずだというライバルへの『信頼』が込められていた。



「ぶべぇっっっ……ごふぅっっ……ぶふぅっっ……ぐぴゅっっっ!!!」


「あ~っと、リング中央で凛香選手が滅多打ち~~~!!!

 ガードすら出来ずただ殴られるがままだ~~~~!!!」


もはや恒例となってしまった元王者の情けないサンドバッグ姿に、会場が本日一番の盛り上がりを見せていく。


「何やってんのおねぇ……反撃して、ちゃんと手上げてよ!!!」


由乃の悲痛な叫びが響くも、対戦相手の紅い拳は的確かつ無慈悲に少女の肉体を打ち抜いていく。


「がひゅぅっっ…………んごっっ…………おぶぅぅぅっっ…………」


顔面を弾かれ、顎を跳ね上げられ、ガラ空きの土手っ腹を深く抉られる。

情けないうめき声と共に、サンドバッグと化した凛香の肉体は────────



「これでっ……ぶっ飛びなさいっっ!!!」


「ぶへぇぇぇぇぇぇ…………」


為す術なく滅多打ちにされ続けた末に、最後は全身の力を込めた右ストレートで身体ごと吹き飛ばされ、白いキャンバスに綺麗な大の字を描いて沈んだ。




「あ~っと凛香選手、またしても一方的にダウンを奪われてしまったぁ!!

 もはや両者の実力差は明白かぁ!!?」


「あ゙…………お゙あ゙っ……………………」


半ば白目を剥きながら、雌の魅力に溢れた艶めかしい肉体をビクビクと痙攣させている地下ボクシングの元王者。


だらしなく開かれた口元からは、大量の唾液にまみれたマウスピースがポロリと吐き出されていた。



「ダウンッッ!!! 1……………………2……………………3……………………」


レフェリーのカウントが響く中、ニュートラルコーナーから鋭い声が飛ぶ。


「寝てないで早く起きなさい、凛香!!

 アンタのその負け犬根性、今ここでアタシが叩き直してあげるわ!!!」


はたから見れば完全に失神していると思われるほどの衝撃的なダウン。


だが、あきらは”この程度で親友がKOされる筈がない”と確信しており、白目を剥いたまま痙攣を繰り返す対戦相手へ向けて容赦のない熱い檄を飛ばしていく。




「8………………………………9…………………………………………っっ!!!」


「……まっ、まだ…………まだっ、やれますっ……………………」


そんな親友の叫びが届いたのか、それとも地下特有の長いカウントに助けられたのか。


カウント9で少女はフラフラと立ち上がり──────ぷるぷると弱々しく震える腕で、再びファイティングポーズを構えていった。






「ボックスッッ!!!」


レフェリーの声が響き、試合が再開される。


ダメージを隠しきれない凛香に対し、あきらは余裕の笑みを浮かべたまま、自身の傷一つない白い腹筋をグローブでポンポンと軽く叩いた。


「相変わらずのタフさで安心したわ…………それじゃ、次は”ここ”の打ち合いと洒落込みましょうか」


「っっ……!!」


「まさか……ガードなんてダサい真似はしないわよね?」


ノーガードでのボディの打ち合い。

親友からの突然の提案とあからさまな煽りに、凛香は一瞬だけ怯んでしまう。


(一体なにが狙い? ……でも、純粋な殴り合いなら私の方が上のはず!!!)


だが、体格とパンチ力で勝る自分が殴り合いの土俵で負ける訳がないという確信が、折れた少女の心に再び闘志の火を灯していった。


「随分と舐められたものね…………後悔しても知らないわよ、あきらっっ!!!」


覚悟を決めた少女は自らガードを下げて前へと踏み込み、腰の捻りを最大限に活かした重いボディブローを放っていく。


「やぁっっ!!」


「うぐっ…………!!」


鈍い打撃音が響き、あきらの顔が僅かに歪む。

ベルトを巻いていた頃はリーグトップクラスのパンチ力と称されていた元王者の一撃が、この日初めて親友の肉体を打ち抜いていった。



(くっ……相変わらず、クソ重いパンチ打つわね……)


絶賛9連敗中ではあるものの、それでも腐らずに練習を続けていた成果が、その拳の重さにしっかりと表れていた。


だが、あきらは必死に歯を食いしばり、顔色一つ変えずにノーダメージであるかのように振る舞ってみせる。


「こんなもんなの、凛香? ……元王者の拳も随分と錆びついたものね」


「っっ…………」

(いい手応えだと思ったのに……もしかして効いてない?)


渾身の一撃を涼しい顔で耐えられてしまったことで、凛香の心に焦りと動揺が広がっていく。



「……それじゃ、次はアタシからいくわよ!!」


それを見たあきらはニヤリと笑うと、怯んだ親友の土手っ腹へ向けて、的確かつ容赦のないボディアッパーを突き刺していった。



「おぶぅぅぅっっ!!!!」


鳩尾を的確に打ち抜かれた激痛が、凛香の全身を貫く。

予想を遥かに上回る威力の一撃を貰ってしまった少女の口から、無様なうめき声が零れ落ちた。


(き、効いたぁ…………あーちゃんっ、こんなにパンチ強くなってたなんて……)



「なんと……まさかのノーガードでの腹パン対決が始まってしまったぁ!!

 女のプライドを賭けた闘いは、果たしてどちらに軍配があがるのかぁ!!?」


実況のその言葉を皮切りに、熱狂渦巻く地下リングの中央で、二人の美少女による拳の応酬が繰り広げられていった。






かつてベルトを巻いていた頃、凛香はエリザベスと並んでリーグトップのパンチ力と称されており、更には体格でもあきらを上回っている為、純粋な殴り合いでは流石に彼女が優勢かと思われたのだが──────現実は残酷であった。



「うぶぅぅぅぅっっっ…………」


「あ~っと凛香選手、完全に悶絶~~~!!

 またしても手が止まってしまっております!!!」


これまで被弾し過ぎて腹筋の防壁が剥がれかけていた事に加え、何よりも”気迫”で完全に負けてしまっている凛香は、得意なはずの殴り合いの土俵で呆気なく打ち負かされてしまっていた。


琥珀色の瞳を上ずらせ、膝をガクガクと震わせ、完全に動きが止まってしまった情けない親友へと、あきらは厳しい言葉を投げつける。


「昔のアンタなら、アタシなんかに打ち負ける事はなかったハズよ!!

 ほら……根性見せなさい、凛香!!」


「っ、あ゙っ…………おぶぅぅぅっっっ!!!!」


熱い言葉と共に放たれた鋭いボディブロー。

だが、黒髪の少女は無様な悲鳴を上げるだけで、反撃の拳を返すことができない。


「ほらほら……後ろで由乃ちゃんも見てるんでしょ!?

 情けない姿晒してるんじゃないわよ!!」


「あ゙え゙っっっ…………ごぶぅぅっっっ……ぶひゅぅぅぅぅっっっ!!!!」


あきらは更に数発の追撃を柔らかくなった親友の生腹に叩き込むが、少女は無防備に打たれ続け、その度にビクンと身体を大きく跳ねさせるのみであった。



「凛香選手、ボディを貰うばかりで全く反撃出来ておりません!!

 これは格付けが決まってしまったかぁ~~~!!?」


もはやロクに構えてすらおらず、ビクビクと腹筋を痙攣させているだけの元王者。

琥珀色の瞳はどこか虚ろで焦点が合っておらず、だらしなく開いた口元からは、白いマウスピースがポロリとキャンバスへ零れ落ちていく。


「アンタねぇ……アタシ如きに、得意の殴り合いで負けてんじゃないわよ!!!」


「お゙べぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!!」


苛立ちと共に放たれた紅色の強烈なボディアッパーが、黒髪の少女の胃袋を容赦なく抉り抜いた。



「お゙っ……あ゙っ…………あ゙ゔっっ………………」


その拳が引き抜かれた直後、凛香はぷるぷると震える腕でお腹を抱え込むようにして、丸まって防御を固めてしまう────────それは、この女同士の殴り合いにおいて”完全降伏”とも呼べる、余りにも惨めなポーズであった。



「凛香選手、お腹を押さえて完全に沈黙~~~~!!

 女の意地を賭けた勝負は、あきら選手の完全勝利となりました!!!」


(殴り合いもあーちゃんの方が上だなんて……こんなの、もう勝ち目なんか…………)


最後の拠り所であったパンチ力と体格のアドバンテージすら粉砕された結果、少女の中の”格付け”は更に強化され、その瞳はより一層深い絶望の色を帯びていく。


だが、そんな心を折られた親友の姿は、逆にあきらの逆鱗に触れる結果となってしまった。


「だからっ……その情けない負け犬根性、何とかしなさいよっ!!!」


「えっ…………がべぇぇぇぇっっっ!!!!!」


怒号と共に放たれた渾身の右ストレートが、ガラ空きとなっていた凛香の顔面を無慈悲に、豪快に打ち抜いていく。



「強烈なストレートが炸裂してしまったぁ~~~~!!

 あきら選手、親友相手に一切容赦有りません!!!」


強烈な衝撃で身体ごと吹き飛ばされた凛香は、そのまま青コーナーまで激しく弾き飛ばされていく。


「…………ぁ………………うぁ……………………」


ダウンこそしていないものの、半ば意識が飛んでしまっており、力なく腕をロープに絡めて辛うじて立っているだけの凄惨な状態であった。






「……………………ぁ…………ふぁっ……!?」


(あれ……しあいは…………って、あれはっ!!?)


コーナーポストに背を預け、朦朧としていた意識がようやく鮮明さを取り戻した時、凛香の視界に飛び込んできたのは、極端な前傾姿勢で沈み込む愛しい親友の姿だった。


全身のバネを極限まで圧縮した、あきら独特のフォーム。

それは紛れもなく、彼女の必殺技であるジョルト・カウンターの構えだった。


「おはよう凛香…………さぁ、次は”これ”よ」


「っっ……」


(またジョルト…………今あんなの貰ったら、確実にKOされちゃう!!)


極限の集中力から放たれる底知れぬ凄みに気圧され、凛香の足はキャンバスに縫い付けられたかのように一歩も動くことができない。


そんな動けない親友を見据えながら、あきらは冷ややかなため息を吐いた。


「はぁ…………いつまで突っ立ってるの?

 由乃ちゃんも、こんな情けないアンタの姿は見たくなかったでしょうに」


「ッッ!!」


最愛の妹の名前を出されたことで、凛香の目に微かな光が戻る。

チラリと視線を巡らせ、スクリーンに表示されたラウンドの残り時間を確認した彼女は、腹の底で一つの悲壮な決意を固めた。


(残り時間はあと少し……意識さえトばされなければ大丈夫。

 ジョルトが来ると分かっているのなら……絶対に耐えきってやるんだから!!)



「やぁぁぁっっっ!!!」


覚悟を決めた黒髪の少女は、全身に負っているダメージの深刻さとは裏腹に、鋭くキレのある右ストレートを放っていく。


蒼い拳は弾丸の如き疾さで相手に襲いかかり、普段のあきらであれば被弾を避けられないほどのスピードとタイミングであったのだが────────ジョルトの成功を経て最高のコンディションに達している今の彼女には、残念ながら通用しなかった。


「シッ!!」


放たれた渾身の一撃は、あきらの最小限のヘッドスリップによって紙一重で躱されてしまう。


(躱されたっ……でも、ここまでは想定内。

 次の顔面へのカウンターを耐えきれば…………!!)


顔へと飛んでくるであろう必殺の一撃に備え、凛香が奥歯を強く噛み締めて耐えようとした、正にその瞬間────────あきらの口角が、嘲笑うかのように歪んだ。



「えっ……?」


親友の思考を完全に見透かしていたあきらは、踏み込んだ勢いそのままに拳の軌道を急激に下へと変化させる。


(顔じゃないっ……お腹っ…………!!?)


少女が自身の置かれた絶望的な状況に気づいた時には既に遅く、顔を庇ってガラ空きとなった彼女の、これまでの被弾で赤く腫れ上がった生腹へ向けて────────全身のバネと体重を乗せた紅のジョルト・カウンターが、無慈悲に突き刺さっていった。


「ん゙お゙お゙お゙ぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!!!」




これまでの彼女の試合でも見たことのない、ボディへのジョルト・カウンター。

通常のボディブローとは比較にならない程の破壊力を秘めた必殺の一撃が、防壁を失っていた凛香の腹筋を完膚なきまでに粉砕した。



「あ~っといけません、凛香選手、ガラ空きのボディにジョルト・カウンターを貰ってしまいました!!!」


「お゙っ…………あ゙っっ…………ん゙お゙お゙っ……………………」


もしこれが部活の試合であったなら、即座にタオルが投げ込まれていたであろう程の凄惨な悶絶具合。


小刻みに震える汗に濡れた艶めかしい肉体は完全に白旗を上げてしまっており、腹にめり込んだ拳が引き抜かれた瞬間、即座にダウンしてしまう事は明白であった。


だが──────あきらはその赤い拳を引き抜く事なく、更に奥へと容赦なくグリグリとねじり込んでいった。


「あ゙っ…………お゙あ゙あ゙っっっ……………………」


気が狂いそうになる程の激痛に、凛香は白目を剥き、口からは声にもならない呻きと大量の粘ついた唾液が零れ落ちていく。


そして、少女の意識が限界を迎えようとする中──────



カーン!!!


「あ~っとここでゴングですっっ!!!

 凛香選手またしてもゴングに救われ…………いや、むしろこれは……あきら選手に”生かされた”のかぁ!!?」




「ん゙お゙っ…………」


ゴングの音と共に腹部から拳が引き抜かれた瞬間、凛香は糸の切れた操り人形のようにキャンバスへと崩れ落ちていく。


そして───無様な声と共に、自らの胃液で神聖なキャンバスを穢してしまっていた。


「お゙え゙え゙え゙え゙っっっっ……………………」




「あ~っと凛香選手、たまらず嘔吐してしまっております!!

 それにしても、親友対決であるにも関わらず、まるで相手になっておりません!!

 もはや10連敗待ったなしか~~~!!?」


「お゙あ゙っ…………あ゙っ……………………ん゙え゙え゙っっっ…………」


必死にお腹を押さえて這い蹲り、小刻みに震え続けるだけの元王者。

その余りにも弱々しく惨めな姿は、もはや闘いの最中にあるボクサーのそれではなく、完全に蹂躙された哀れな敗北者そのものであった。






「おねぇ、バケツだよっ…………吐くならここで」


「あ゙え゙え゙っっ…………お゙っ…………がひゅぅぅっ……………………」


インターバルに入っても凛香は立ち上がることが出来ず、青コーナーに戻ることすら叶わない。


彼女はリングの中央で蹲ったまま、由乃が差し出したバケツへと激しく胃液を吐き出し続けていた。



(おねぇ……ひどい有様…………これじゃ、とても逆転なんて)


震える姉の背中をさすりながら、由乃は薄々悟っていた。

目の前の大好きな姉が、今日も勝てないであろう事を。




「がっ…………はぁっ……こひゅっ……………………」


未だビクビクと痙攣を繰り返し、息も絶え絶えの凛香。

苦痛に歪む視線を僅かに上げると、ふと、赤コーナーに佇むあきらと目が合った。




胃液と汗と涎に塗れ、キャンバスに這い蹲っている惨めな自分。

対して、未だ顔面に有効打を一つも貰っておらず、傷一つない綺麗な顔のまま、余裕の表情でこちらを見下ろしている親友。


その余りにも残酷な対比が、少女の心に一つの確信をもたらしていく。


(だめっ……あーちゃん、強すぎるよぉっ…………)


圧倒的な”格の差”を身体に刻み込まれた少女は、本能で理解してしまっていた。

自身が今日もまた、惨めな敗北を喫してしまうであろう事を。


(こんなの……私に勝ち目なんて…………)


あの愛すべき親友には、どう足掻いても敵うはずなど無いのだと。






カーン!!!


「さぁ始まりました第4ラウンド!!

 凛香選手、かなりダメージが深い様に見えますが、果たしてまだ闘えるのか!?」



(あーちゃんがどんなに強くても、それでも……私は負ける訳には…………)


インターバルの終盤で辛うじて立ち上がり、由乃の肩を借りてどうにか青コーナーまで戻っていた凛香。


ゴングが鳴り響くと共に、彼女は折れかけた弱気な心を必死に奮い立たせ、重い足取りでリング中央へと歩みを進めていく。



だが、対戦相手である親友と視線が交錯した、その瞬間──────


「…………ッッ!!」


あきらの全身から放たれる、研ぎ澄まされた刃のようなプレッシャー。

そして、圧倒的な強者のみが纏うオーラを前に、前へ出ようとしていた少女の身体はピタリと動きを止めてしまっていた。



(あっ……だめっ…………あたま、ぼーっとして…………)


先ほどのボディへのジョルトによる深刻なダメージと、骨の髄まで刻み込まれてしまった彼我の実力差。


それらが引き金となり、元王者である少女を9連敗という地獄へ導いた致命的な”悪癖”が、ここに来て再び顔を出してしまったのだ。



「ぁ………………ぅぁ……………………」


グローブは辛うじて構えたままだが、その拳に力は入っておらず、凛香はリングの真ん中で半ば棒立ち状態となってしまう。



「…………そう、来ないのね」


そんな、一番見たくなかった親友の姿を見て、あきらは冷徹に瞳を細め、氷のように冷たい声で言い放つ。


「なら、遠慮なく行かせてもらうわよ!!!」


鋭い踏み込みと共に、サンドバッグと化した哀れな少女へと襲い掛かる。

そして紅い拳にありったけの怒りを込めた猛ラッシュが、無防備な親友の肉体へ容赦なく叩き込まれていった。








「これは酷い……凛香選手、ダウンすら許されずコーナーで滅多打ちだぁ~~~~!!! あきら選手、親友相手に一切容赦ありません!!!」


「あ゙べぇっっ……おぶぅっっ、んがぁっっ…………ごぴゅっっっ!!!」


コーナーポストと絶え間ない拳の嵐に挟まれ、防御も、回避も、そしてダウンすることすら許されない元王者。


逃げ場を失った少女の肉体は親友の放つ無慈悲な連撃によって、実に1分以上もの長きに渡り、ただひたすらに蹂躙され続けてしまっていた。



「んがぁっっ…………ぐへぇっっっ…………ばびゅっっっ…………」


もはや意識が残されているのかすら定かではなく、連打の衝撃に合わせて、ただ無様に上下左右へと揺らされるのみとなってしまっている黒髪の少女。


リングに情けない嬌声が響く度、トップレスルールにより無防備に晒された彼女の豊満な双丘が、激しく、そして卑猥に跳ね回っていく。



「おねぇ、お願いだからガードしてっ!! 腕上げてよ、おねぇっ!!!」


すぐ傍の青コーナーから由乃の悲痛な叫びが響き渡るが、今の凛香には最愛の妹の声すら全く届いていない。



「うお゙お゙っっ…………ぶふぅっっっ…………はべぇぇぇぇ…………」


この余りにも一方的な惨状に、レフェリーがスタンディングダウンを取るべきか迷い始めている中──────あきらの放ったショートアッパーが、凛香の顎を鋭く打ち抜いた。


「かひゅっ………………ぁ……ぅぁぁ……………………」


その一撃で脳を大きく揺らされ意識を混濁させた少女の肉体が、糸が切れた人形のように前へと崩れ落ちる。


だが、あきらはそれをキャンバスへ逃がすことなく、倒れ込む親友の身体を自身の胸で優しく受け止めてみせた。


「あ~っと凛香選手ここでクリンチ…………というより、あきら選手が受け止めていったぁ!!!」






キャンバスへ崩れ落ちようとする凛香の身体を優しく抱き止めたあきらは、汗に濡れた親友の耳元へと顔を寄せ、熱のこもった声で甘く囁きかけた。


「知ってるわよ……本当の貴女は、こんな状況からでも逆転出来るって………………アタシ、信じてるからね」


密着したあきらの頬は微かに紅潮し、その眼差しは優しさを帯びている。


数秒前まで容赦なく親友を滅多打ちにしていた非情な対戦相手としての面影はなく、まるで愛しい恋人に語りかけるかのような、甘く情熱的な雰囲気を醸し出していた。



だが────────


「…………ぅ…………ぁ……………………」


あきらの狂おしいほどの愛情と信頼が込められた言葉を受けてなお、少女は何の反応を返すことも出来ず、焦点の合わない虚ろな瞳を宙に彷徨わせ、ただ力なくうめき声を漏らすのみだった。



「……………………アンタねぇ……」


その余りにも無様な想い人の姿を見た瞬間、あきらの顔からスッと甘さが消え失せる。


「アタシの言葉…………ちゃんと聞きなさいよっっ!!!」


先程までの恋人のような囁きから一転、苛立ちに満ちた怒声と共に。


あきらは僅かに互いの距離を離すと、凛香の完全に力の抜けた腹部へ向けて、腰の入ったボディアッパーを深々と突き刺していった。


「お゙ぶぅぅぅぅぅぅっっっっ!!!!」



無防備な腹を狙って穿たれた強烈な一撃。


既に限界に達していた少女の肉体にそれを受け入れる余力など残されている筈もなく、少女は舌を突き出しながら大きく白目を剥き、激しく痙攣した後─────────そのままプツンと糸が切れたように意識を手放し、対戦相手の腕の中でぐったりと脱力していった。






「あら……もうオチちゃったの?」


自らの腕の中でだらりと首を垂れる、かつての王者。

涎を垂らしながらだらしなく口を開けて失神している、その余りにも無防備で煽情的な顔を間近で見つめていたあきらの瞳に、今まで抑えていた情欲の火が灯る。


「……………………」


目の前には数年ものあいだ恋い焦がれた想い人の最高に魅力的な姿。

腕には愛しい少女の重みがずっしりと感じられ、密着しあった胸の柔らかな膨らみには、固く勃起した相手の乳首が突き刺さっている感触がある。


「…………………………………………」


激しい闘いで本能が剥き出しになっていたあきらは、熱い吐息を漏らしながら、汗ばんだ薄桃色の唇へと────────自らのそれを、貪るように深く重ねていった。






「んっ♡……ちゅっ♡♡…………じゅるるっっ♡♡♡…………りんかぁっ♡♡♡」


見目麗しい少女達による濃厚な接吻で湧き上がった地下リングの片隅で、あきらは気を失ったままの親友の唇を、貪欲に、そして情熱的に奪い続けていた。


汗と唾液と雌の濃密なフェロモンが交じり合う生々しい水音が、歓声の裏でひっそりと、しかし確かな熱を帯びて響き渡る。



「じゅっっ♡♡…………じゅるっ♡♡…………ちゅぅぅぅぅっっ♡♡♡♡」


深く長い口づけによる酸欠と、柔らかな唇から注ぎ込まれる熱い吐息。

それらに当てられるようにして、深く沈んでいた凛香の意識がゆっくりと浮上してきた。


「んんっ…………ぁっ♡……ふぁっ♡♡…………あ、あーちゃん♡♡……?」


朦朧とした意識のままそっと目を開けた凛香の口から、甘い吐息が漏れる。


未だ状況が掴めていない彼女の顔は、試合のダメージによるものか、それとも親友との深い口づけの熱によるものか、だらしなく蕩けきっており、これ以上ない程の妖艶な雰囲気を醸し出していた。



そんな想い人の無防備で可愛らしい表情を至近距離で見つめ、あきらは愛おしそうに微笑む。


「おはよ、りっちゃん♡…………やっとお目覚めかしら?」


「あ、あーちゃん♡…………これ、は…………!?」


未だ困惑を隠せない凛香の顔を見つめるあきらの耳に、ラウンド終了残り10秒を知らせる拍子木の乾いた音が響き渡る。



そして、その音を鼓膜に捉えた瞬間、あきらの瞳から甘い熱が消え去り、再び冷酷な地下女子ボクサーとしての鋭い光が宿る。



「それじゃ……キツイのいくから、歯ぁ食いしばりなさい!!」


あきらは抱きかかえていた親友の身体を乱暴に突き飛ばし、そのまま背後のコーナーポストへと強く押し付けた。


「えっ……あ゙ゔっ…………」


──────そして、ただされるがままになっている凛香へ向けて、あきらは全体重を乗せた渾身の右ストレートを放っていく。


「ぐぴゅっっっっっっっ!!!!」




硬いコーナーポストと体重を込めた紅い拳に挟まれ、サンドイッチにされてしまった少女は、逃げ場のない衝撃を全て顔面に叩き込まれた結果、盛大な悲鳴と共に大量の唾液を周囲へと撒き散らした。



「おねぇっっっ!!!」


セコンドの由乃は悲痛な叫び声を上げながら本能的に直感していた。

”あれ”は、絶対に貰ってはいけない一撃であると。



「…………………………………………」


そして、その予感が正しかった事を証明するかの様に。

哀れな元王者の肉体は、白目を剥き、ビクビクと痙攣を繰り返すばかりで完全に脱力しきっていた。



「………………か~わいいっ♪」


無慈悲で致命的な一撃を打ち込んだ少女が恍惚とした笑みを浮かべている中─────会場に、このラウンドの終わりを告げる救いのゴングが打ち鳴らされていった。


カーン!!!



「あ~っとゴングっ……ここでゴングです!!!! 凛香選手またしても……というか、この試合ずっとゴングに救われております!!!」


実況の興奮した声が響き渡る中、あきらが親友の顔面にめり込ませていた拳をゆっくりと引き抜くと──────支えを失った少女の肉体は、ぺたんと力なくその場へと崩れ落ちていく。




「………………………………」


闘うボクサーにあるまじき、うさぎ座りの体勢でキャンバスにへたり込んだ凛香。


殴られすぎてボコボコに腫れ上がった顔は上を向いており、皮肉にも、その惨状を作り出した原因である女を見上げる形となっていた。


そして、圧倒的な暴力によって骨の髄まで刻み込まれた”本能的な敗北感”と、このラウンドの地獄からようやく解放されたという”極限の安堵”から、少女の膀胱の括約筋は、本人の意思に反してあっさりと緩んでしまう。



「な、なんと凛香選手…………親友の拳で失禁させられてしまいました!!!」


「………………ぁ…………ぅぁ………………………………」


虚ろな表情を浮かべ、自らの股間から溢れ出る情けない黄金水によって、神聖な白いキャンバスを穢してしまっている元王者。




一方的に殴られ続けたものの、このラウンドも何とかゴングに救われて生き延びることが出来た。


だが、果たしてそのゴングで彼女は本当に救われたのだろうか。 それとも──────


「これはっっ……どう見ても闘う力など残されていないように思われますが…………果たして次のラウンド、一体どうなってしまうのかぁ!!?」


そんな一抹の不安と、響き渡る由乃の悲鳴を地下リングに漂わせながら、親友対決は運命の第5ラウンドへと突入していくのだった。






【堕ちた王者と砕かれた友情~凛香VSあきら~】Part.4(Fin)へ続く___________




ここまでお読み頂き誠にありがとうございます!!

堕ちた王者と呼ばれるまでになってしまった凛香さんの敗北の記録は下記にまとめてありますので、もし良ければそちらも是非~。


堕ちた王者シリーズまとめ


■次回

https://syusyokunuts.fanbox.cc/posts/12131393




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POSTEDJun 18, 2026
ARCHIVEDJun 18, 2026