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堕ちた王者と〇〇〇〇~凛香VSあきら~Part.4(Fin) /The Fallen Champion and 〇〇〇〇: Rinka vs. Akira—Part 4(Fin)

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■前回


■試合内容

当サークルで一番の人気シリーズである「堕ちた王者」の最新話です。

ここまでの回も過去最高レベルのいいね数を頂いており、皆様楽しんで頂き本当にありがとうございます!!

Part1~3


とりあえず一つだけ言える事があるとすれば、タイトルの〇〇〇〇は誤字ではありません。


挿絵は全8枚、SSは約13500文字です(pixiv換算で読了まで約27分)。

長くなってしまい申し訳ないのですが、対戦よろしくお願いします~。



凛香さんスランプ編こと堕ちた王者シリーズは下記にまとめてありますので、もし良ければそちらも是非~。




■Content of the match

This is the latest chapter of “The Fallen Champion,” our circle’s most popular series.

The previous chapters have also received a record number of likes, and we’d like to say a huge thank you to everyone for enjoying them!!


Part1~3


If there’s one thing I can say for now, it’s that the “〇〇〇〇” in the title is not a typo.


There are a total of 8 illustrations.

I'm sorry this got a bit long, but I appreciate your patience.


The “Rinka's Slump” arc, also known as the “Fallen Champion” series, is summarized below, so please check it out if you're interested.



Thank you for your support.


★最後にアンケートがあります。プラン内容の方針を決める要素になりますので、よければ皆さんのご意見を教えていただけると幸いです。

There is a survey at the end. This will be a factor in deciding the content, so if you would like to give us your opinion, please do so. (Japanese)


★For non-Japanese users★

Please take a moment to translate and read this short story on sites such as https://www.deepl.com/translator m(_ _)m


---

堕ちた王者と〇〇〇〇~凛香VSあきら~Part.4

The Fallen Champion and 〇〇〇〇: Rinka vs. Akira—Part 4



カーン!!!



「あ~っとゴングっ……ここでゴングです!!!! 凛香選手またしても……というか、この試合ずっとゴングに救われております!!!」


実況の興奮した声が響き渡る中、あきらが親友の顔面にめり込ませていた拳をゆっくりと引き抜くと──────支えを失った少女の肉体は、ぺたんと力なくその場へと崩れ落ちていく。





「………………………………」


闘うボクサーにあるまじき、うさぎ座りの体勢でキャンバスにへたり込んだ凛香。


殴られすぎてボコボコに腫れ上がった顔は上を向いており、皮肉にも、その惨状を作り出した原因である女を見上げる形となっていた。


そして、圧倒的な暴力によって骨の髄まで刻み込まれた”本能的な敗北感”と、このラウンドの地獄からようやく解放されたという”極限の安堵”から、少女の膀胱の括約筋は、本人の意思に反してあっさりと緩んでしまう。



「な、なんと凛香選手…………親友の拳で失禁させられてしまいました!!!」


「………………ぁ…………ぅぁ………………………………」


虚ろな表情を浮かべ、自らの股間から溢れ出る情けない黄金水によって、神聖な白いキャンバスを穢してしまっている元王者。




一方的に殴られ続けたものの、このラウンドも何とかゴングに救われて生き延びることが出来た。


だが、果たしてそのゴングで彼女は本当に救われたのだろうか。 それとも──────


「これはっっ……どう見ても闘う力など残されていないように思われますが…………果たして次のラウンド、一体どうなってしまうのかぁ!!?」


そんな一抹の不安と、響き渡る由乃の悲鳴を地下リングに漂わせながら、親友対決は運命の第5ラウンドへと突入していくのだった。






「おねぇ……早く起きて…………起きてよ、おねぇってば!!!」


「………………………………ぅ…………ぁ……………………」


青コーナーで涙目を浮かべながら叫び声を上げ、必死に姉の肩を揺する由乃。

だが、完全に失神してしまっている凛香は声にならない呻きを返すのみで、一向に意識を取り戻す気配を見せない。



「早く起きないと……インターバル終わっちゃうよぉ…………」


あきらは決してハードパンチャーという訳ではなく、エリザベスや凛香と比べると、その純粋なパンチ力はどうしても数段劣ってしまっている。


「…………………………………………」


だが、先ほどのラウンドで徹底的に打ち込まれた拳は、反撃の恐れがない無抵抗のサンドバッグへと向けられたが故に、そのどれもがフルスイングと言っていいほど力強く振り抜かれていた。


無防備な肉体にそんな容赦のない連撃を叩き込み続ければどうなるか。

ただでさえ深いダメージが蓄積していた少女の肉体は、もはや限界などとっくに迎えており、頼みの綱である気力さえも、完全に尽きて果ててしまっていた。






「……ぁ…………ふぇっ?…………」


インターバルも残り数十秒という終盤に差し掛かった頃、ようやく凛香は昏い意識の底から浮上する。


「あぇ?…………まだ、しあい…………」


まともな思考が働かない頭で呆然と呟く少女。

これまでの幾多の敗北経験から、自身が深い失神状態にあったことを察した凛香は、てっきり既に試合が終わってしまったものだと思い込んでいた。


「おねぇ、良かった……って、時間が無いから手短に説明するね!

 今はインターバルだけど、もう少しで終わっちゃうの」


「そっか、よかっ…………」


まだ負けていないという事実に安堵し、ホッとした息を吐き出そうとした凛香。

だが、その言葉は最後まで紡がれる前に、喉の奥でピタリと詰まってしまう。



(良かった…………本当に?)


ここまで露骨な状況が何度も続いたことで、凛香も理解していた。

自分がゴングに”救われた”のではなく、あきらによって”生かされていた”ことを。


数回はKOされていてもおかしくない悲惨な状況に加えて、自身の攻撃は、あきらから提案されたノーガードでの腹パン勝負以外では、ただの一発も当てられていない。



(このまま続けたところで、どうせ…………)


本能の奥底にまで刻み込まれてしまった、親友と自分との絶対的な『格の差』。

それを改めて自覚してしまった少女の心にもはや闘志の炎はなく、ただひたすら黒く重い絶望感に包まれていた。



そして─────ふと下半身に意識を向けた凛香の表情が、サァッと青ざめていく。


(冷たい……それに、トランクスが濡れてる…………)


キャンバスにへたり込んだ際の、膀胱が緩んでしまったことによる無意識の粗相。

殴り合いの最中であるにも関わらず、自らが衆人環視のリング上で失禁してしまったという絶望的な事実に気付き、少女は耐え難い羞恥にワナワナと唇を震わせた。


「あっ……私っ、漏らして…………」


「っっ……!! おねぇ、見えないようにタオルで隠すからね……」


姉の股間を濡らす生々しいシミに気付いた由乃が、慌てて手元の大きなタオルで凛香の腰回りをすっぽりと覆い隠す。


だが、最愛の妹から向けられたその余りにも優しく、そして痛ましい気遣いは、惨めな姉の羞恥心を2倍にも3倍にも膨れ上がらせていった。



「くっ……うぅっ……………………」


絶望、羞恥、無力感、惨めさ。

いくつもの耐え難い感情が少女の脳内を埋め尽くしており、凛香は瞳をギュッと瞑ってぷるぷると情けなく身体を震わせる事しか出来ない。


そんな、余りにも哀れな元王者へ向けて──────無慈悲にも、運命の第5ラウンドの開始を告げるゴングが鳴らされていった。






カーン!!!


「さぁ始まりました第5ラウンド!!

 凛香選手、先のラウンドではだいぶ痛めつけられてしまいましたが……果たしてまだ闘えるのかぁ!!?」


ゴングが鳴り響き、運命の第5ラウンドが幕を開ける。

リング中央へと重い足取りで歩みを進めた凛香に対し、あきらはスッと滑るように間合いを詰めると、呆れたような声でポツリと口を開いた。



「ねぇ、りっちゃん…………いい加減、そろそろ本気出してくれない?」


「……………」


「後ろの由乃ちゃんも期待してるわよ、きっと」


最愛の妹の名前を出して親友の闘争心を煽ろうとするあきら。

だが、その言葉を受けてなお、凛香は何も言い返すことができない。



「……………………」


腕だけは辛うじて構えているものの、焦点の合わない虚ろな瞳を浮かべ、半ば茫然自失とした状態の少女。


これまでの闘いと呼べるかすら怪しい一方的な試合の中で、彼女は自らの親友に対して完全に心が屈服してしまっており、例の”悪癖”によって思考が停止させられていた。



「…………………………………」


そして、もはやボクサーですらなく、ただ敗北を待ち受けているだけのジョバーと化してしまったその余りにも情けない親友の姿は、あきらの逆鱗に触れた。



「アンタねぇ…………どれだけ落ちぶれれば気が済むのよっっ!!!」


傷一つない整った顔に怒りを露わにしたあきらの鋭い踏み込みと共に、強烈な左フックが凛香の顔面を豪快に打ち抜く。


「ぶへぇぇっっっ…………」


襲い来る拳に対して反応すら出来なかった凛香の口から、情けない呻き声が漏れる。



「ぁぅ…………ふぁぁ……………………」


そして、盛大に顔面を弾き飛ばされた少女は弱々しく数歩たたらを踏み────────たった一発の拳で、あっけなくロープを背負わされてしまっていた。






逃げ場のない空間へ追い込まれた親友へ向けて、あきらは容赦なく追撃の拳を何度も振り下ろしていく。


「ねぇ凛香…………アタシにこんな一方的にボコられて悔しくないの? 情けなくないの? 恥ずかしいと思わないの!?」


「お゙ぶぅぅぅっっ……がひゅっっっっ……んべぇぇぇっっっ…………」


骨と肉を打ち据える生々しい打撃音と共に、無様な元王者の悲鳴が響き渡る。

だが、思考が完全に停止してしまっている凛香からは、反撃はおろか、パンチを避けようとする意志すら感じられない。



「凛香選手、早速捕まってしまったぁ~~~~!!

 やはりこのラウンドも何も出来ず殴られ続けてしまうのかぁ!!?」


「んがぁっっっ…………はぶぅぅぅっっ…………あ゙え゙っっっ…………」


熱の込められた親友の叫びに対して言葉を返すこともなく、ただサンドバッグのように無抵抗で殴られ続ける凛香。


そんな親友の情けない姿に苛立ちを限界まで募らせたあきらは、これまでで一番の怒気を込めて叫んだ。


「少しくらいっ…………言い返してみなさいよっ!!」


怒声と共に放たれたのは、腰の入った全力のボディアッパー。

それが、ガラ空きとなっていた凛香の鳩尾を深々と、そして容赦なく抉り抜いた。


「ん゙お゙お゙お゙お゙お゙っっっっっ…………」


急所を強烈に撃ち抜かれた激痛により、白目を剥いた少女の口から獣のような情けない悲鳴がリング上へと木霊していく。




極限の激痛に顔を歪めながら、これまで無言で殴られ続けていた凛香がようやくその口を開いた。


だが、その哀願にも似た弱々しい声は、決して闘う者としての意志がこもった言の葉などではなく─────────


「おながっ……もぅっ…………げんかいぃっ………………」


限界をとうに超えた肉体が白旗を上げ、ただ無意識に口から漏れ出ただけの、哀れな少女の本能からの叫びでしかなかった。



「………………………………」


そして、愛する親友からの、その余りにも惨めな言葉を聞いた瞬間。

あきらの心の中にあった”大切な何か”が、大きな音を立てて砕け散っていった。




「……………………はぁ」


深く、冷たい溜息。

先程まで親友を立ち直らせようと熱を帯びていた紅い瞳からスッと感情が抜け落ち、何の色もない氷のような冷たい眼差しへと変貌する。



「……もういいわ」


心底呆れ果てたような、ひどく平坦な声がリングに落ちる。

そしてあきらは、一切の未練を断ち切るかのように、冷酷な声で言い放った。


「こんな情けない貴女を、これ以上見ていたくないし…………一思いに、終わりにしてあげる!!」


それは、親友同士の闘いの終焉を告げる残酷な宣告。


その言葉と共に、あきらは目の前で蹲りかけている哀れな女へ引導を渡すべく、全力の拳を幾重にも振り抜いていった。






「がひゅぅぅっっ…………おぶぅぅっ………………んべぇっっっっ!!!」




「凛香選手、またしても棒立ちで滅多打ちにされてしまっております!!

 もはや勝負あったかぁ~~~!!?」


(あっ……これっ……夢とおんなじ…………)


容赦なく降り注ぐ紅い拳の雨に視界が激しく揺らされる中、凛香は防ぐことも躱すこともできず、ただ無防備な肉体でその衝撃を受け止めることしかできなかった。



『あきらっ! あきらっ!! あきらっ!!!』


地鳴りのように会場内に鳴り響く、対戦相手の勝利を確信する熱狂的な”あきらコール”。 その残酷な歓声をぼんやりと鼓膜で受け止めながら、少女は絶望と共に悟る。


(あれ……やっぱり正夢だったんだ…………)


今朝の微睡みの中で見た、自身が一方的に蹂躙されるあの悪夢。

それが単なる不安の表れではなく、自らの惨めな未来を暗示する正夢であった事を。


──────より正確には。


(ううん、違う……夢よりも…………もっと酷い…………)




「ほらほら凛香、ボディがガラ空き、よっ!!」


親友の鋭い声が鼓膜を打った直後。

視界の端を掠めた彼女の紅い拳が、度重なる打撃ですっかり柔らかくなってしまった凛香の生腹の奥深くへと、容赦なく、そして深々と突き刺さっていった。



「おぶぅぅぅぅっっっ…………!!」


胃袋を直接叩き潰されたかのような激痛に、思わず少女の身体がくの字に折れ曲がる。


その悶絶の隙を、あきらが見逃す筈もなかった。



「ぐぴゅっっっ…………」


間髪入れずに下から突き上げられた強烈なショートアッパーが、前のめりに沈み込んだ凛香の顎を真上へと豪快に跳ね飛ばす。


(あっ、駄目っ…………もう……意識が…………)


脳を直接揺らされた様な強烈な衝撃と、幾度となく味わってきた意識が刈り取られる瞬間の独特の浮遊感。


少女が自身の完全なる敗北を悟り、意識を手放しかけた────────その瞬間。



「スタンディングダウンッッッ!!!」


レフェリーの鋭い制止の声が、熱狂渦巻く地下リングに響き渡った。




「あ~っと、ここでスタンディングダウンですっ!!

 凛香選手、もはや万事休すといった感じですが果たして立ち上がれるのか!!?」


「1…………2…………3……………………」


熱狂する会場の中心でレフェリーがカウントを数える声は、今の凛香の耳には、まるで深い水底に沈んでいるかのように遠く、くぐもって聞こえていた。



「ぅ……………………ぁ………………………………」


ロープに背を預けた少女の身体は完全に限界を迎えており、セカンドロープから上体が半分リング外へとだらしなく投げ出されてしまっている。


滅多打ちにされたせいでひどく腫れ上がり、半ば塞がってしまった視界。

必死に噛み締めていたはずのマウスピースが、だらしなく半開きになった口元から今にもこぼれ落ちそうになっていることが、麻痺しつつある鈍い感覚を通しても伝わってきた。



(あーちゃん……こんなに強くなってたなんて…………)


涙と汗で霞む視界の先。 そこには、息一つ乱さず、冷徹なまでに研ぎ澄まされた佇まいでかつての王者を見つめる親友の姿があった。



(どうせ私に勝ち目なんてないんだし…………もう、このまま…………終わっても………………)


ぽちゃり、と。


ついに限界を迎えた口の端から零れ落ちた白いマウスピースが、少女自身の涎と汗、そして涙で濡れたキャンバスへと落ち、情けない水音を立てる。


それはまるで、彼女の中にわずかに残っていた闘志の欠片が、音を立てて完全に砕け散ってしまったかのようであった。



「凛香選手、ピクリとも動きませんっっ!!

 流石にこれで決着かぁ~~~~!!?」


「………………………………」


もはや指先一つ動かす気力すら湧いてこない、圧倒的な無力感と敗北感。


その痛ましくも甘美な誘惑に全身を優しく抱かれながら、凛香の意識は、底なしの昏い闇の中へと静かに堕ちていく──────────




だが、完全に意識を手放しかけた少女の耳に、不意に”ある声”が届けられていった。


「おねぇ、あたしと約束したでしょ…………もうカッコ悪い姿は見せないって!!」


それは、自身が何よりも愛する妹である由乃の悲痛な叫び声。


その約束が叶う可能性がどれほど低いか。

そして、目の前の姉が既に限界を超えている事を、一番近くで見守ってきた彼女自身が誰よりも理解しているはずだった。


「だから早く立って…………最後まで、カッコよく闘ってよ!!!」


にも関わらず、由乃はボロボロと大粒の涙を流しながら、それでもなお姉を奮い立たせるべく、必死に声を張り上げ続けていた。



「よし……の…………」


朦朧とする脳裏に、不意に思い出されたのは昨夜交わした約束。

妹がどこか照れくさそうにふっと吐き出した大きなため息。


(ううん……違う。 私は……………………)


完全に屈服してしまっていた心に、小さな、けれど決して消えない熱い闘志の火が灯る。



(もう二度と……あの娘の想いを、裏切りたくないっ!!)


ロープにだらしなく投げ出されていた哀れな元王者の肉体が、不格好に、しかし確かな意志を持ってゆっくりと起き上がり始めた。




「あ…………」


そして、どうにか上体を起こし、顔を上げた瞬間──────目の前で佇んでいる親友と、不意に視線が交差した。


(あーちゃん……なんで、そんな顔して…………)


先程まで一切の感情を排し、ひたすら自分の事を滅多打ちにしていたはずの親友。

だが、今のあきらの顔はそれとはまるで別物だった。


その紅い瞳には今にも零れ落ちそうなほど大粒の涙が浮かんでおり、まるで自分自身が傷ついているかのような、ひどく、ひどく辛そうな表情を浮かべていたのだ。



(そっか…………そういう、ことだったんだ…………)


親友の頬を一筋の雫が伝い落ちたその瞬間────────凛香は、全てを理解した。





少女の脳裏によぎったのは、先日行われた親友の無謀とも言える闘いの記憶。

UBC最強格であるちかるを相手に挑んだ、あきらの凄惨な試合だった。


(あーちゃんは何も言わなかったけど……この前の試合、あれは多分、私に向けたメッセージだったんだ)


圧倒的な実力差の前に幾度となくキャンバスに沈み、無様にボコられながらも──────決して最後まで諦めることなく、何度でも立ち上がり続けたあきらの姿。



(そして今日も…………)


そして、今まさに闘っているこの試合中においても。


あきらは自身が勝利することよりも、スランプに沈む凛香を立ち直らせることを優先していた。 苛立ち混じりに散々檄を飛ばし、その拳に”必ず復活してくれる”という信頼と愛情を込めて、ひたすら叩き込み続けてくれていたのだ。



(そこまでされたら…………親友として、裏切れないわよね)


凛香の胸の奥で灯った小さな闘志の炎は爆発的に勢いを増し、限界を迎えていたはずの満身創痍の身体に、熱く確かな力が満ちていく。



(あーちゃんは、本当に強くなった……もうほとんど身体も動かないし、今の私じゃ勝てないだろうけど…………でも、それでも!!)


少女は両足でキャンバスを強く踏み締めると、ぷるぷると弱々しく震える腕を上げ、力強くファイティングポーズを構えていく。


(あきらが『信じる』って言ってくれたんだ……なら、私は…………最後まで、絶対に諦めないっ!!!)



「な…………なんと、凛香選手、まだ闘えるというのかぁ!!?

 "堕ちない少女(アンブロークン)”と呼ばれていた頃を彷彿とさせる、凄まじいガッツです!!!」


熱狂する実況の声が会場に響き渡る中、凛香は口元に浮かんだ涎をグローブで乱暴に拭い去り、鋭い眼光を放ちながら宣戦布告する。


「待たせたわね、あきら…………ここからが、本当の試合よ!!」


誰が見ても満身創痍であり、冷静に考えれば、まともに試合が継続できるとは到底思えない絶望的な状態である。


だがそれでもなお、少女の琥珀色の瞳の奥には、”あの頃”と同じ強い闘志の炎が燃え盛っていた。



「えぇ、待ってたわよ凛香……これ以上、アタシをがっかりさせないでよね!!」


そんな、久々に見た親友の姿を前にして─────あきらはポロリと零れ落ちた涙をグローブで拭い去ると、心底嬉しそうな笑みを浮かべてみせたのだった。






「ボックスッッ!!!」


レフェリーの鋭い声が空気を切り裂く。

それと同時に、凛香は高くガードを掲げ、親友の懐へと果敢に踏み込んでいった。


「やぁぁぁっっ!!」


(頭のモヤが嘘みたいに晴れてる。 身体が…………羽みたいに軽いっ!!)


あきらへの屈服感も、無力感も消え失せていた。

限界を迎えたはずの肉体が、不思議なほどクリアになった思考に呼応して動く。



だが──────現実は、余りにも残酷だった。


「甘いっ!!」


「はぶぅぅっっっ!!!」


渾身のストレートはあっさりと見切られ、紅い閃光が凛香の顔面を的確に弾き飛ばす。


ジョルト・カウンターを経て極限の集中状態にあるあきらと、満身創痍の凛香。

反応速度も、身体のキレも、そのパフォーマンスの差は絶望的なまでに開いていた。



「このぉっっ…………あ゙え゙え゙ぇっっ!!!!!」

「まだまだぁっ…………がひゅっっっ!!!」


大振りのフックを空振りした脇腹を抉られ、前のめりになった顎をカチ上げられる。

凛香が手を出せば出すほど、その全てが鋭いカウンターの餌食となって返ってきた。


「凛香選手、果敢に攻めるもあきら選手のカウンターの前に手も足も出ない!!

 完全に動きを読まれてしまっております!!!」



まるで実力差を見せつけるかのように、黒髪の少女の肉体には、一発ずつ丁寧にカウンターが叩き込まれていった。


これまでの彼女であれば、例の”悪癖”が顔を覗かせ、思考を止めたサンドバッグと化していただろう展開だが────────少女は、それでも手を出し続けていく。



「負けるっ、もんかぁっっ………………ぶへぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」


どんなに無様に殴られ続けても。

どれほど情けない悲鳴を上げさせられようとも。


琥珀色の瞳に闘志を浮かべ、汗に塗れた蒼い拳を何度でも親友へと突き出していく。


そして、その攻撃が徐々に疾さを増している事に、拳を交えているあきらだけが気付いていた。


「ふふっ……貴女最高よ、凛香っ!!」



「まっ……まだまだっ………………がひゅぅぅぅぅ…………」


「凛香選手…………素晴らしい根性で必死に食らいついていきます!!

 が、一発も当てられておりません!! これはKOも時間の問題かぁ!!?」


もはや勝負の行方は誰の目にも明らかである。


だがそれでも、凛香はただ無抵抗のサンドバッグとしてではなく────────────誇り高き一人の地下女子ボクサーとして、リングで闘い続けていた。






「ぜぇっ……はぁっ…………はぁっ…………」


蓄積したダメージと極限の疲労により、ついに黒髪の少女の手が止まる。


ガクガクと膝を震わせ、肩で荒い息をする親友の姿を見て───────────あきらはトドメとばかりに、自然とその構えを取っていった。


「あ~っとあきら選手、ここでジョルトの構えです!!

 親友に完膚無きまでの引導を渡すつもりなのかぁ!!?」


客観的に見れば、ここまでグロッキー状態の凛香を相手にして、わざわざリスクの高い技を放つ必要はどこにもない。


万が一外してしまったら、あきらが逆転負けを喫する可能性すらあるのだが─────彼女は全てを承知の上で、あえてその危険な技を選択していた。




「「……………………」」


リング上の時間が凍りついたかのように、互いの動きが止まる。

交差する視線の中、二人は互いの瞳の奥底に、全く同じ感情を読み取っていた。


(凛香…………アンタはやっぱり)

(あきら…………貴女は本当に)




((最高の親友ねっ!!!))


互いの想いが完全に重なり合った瞬間、二人の少女は同時にキャンバスを蹴り飛ばした。


「やぁぁぁぁぁっっっ!!!」

「はぁぁぁぁぁっっっ!!!」





凄まじい打撃音と共に、リングの中央で、蒼と紅の拳が交差する。


「がっっっ…………!!!」


それはこの試合、あきらからの提案による『ノーガードでの腹パン勝負』を除けば、凛香が初めて自身の力で、親友の顔面へと叩き込んだ渾身の一撃であった。



だが、相打ちという形にはなったものの、立っているのがやっとの満身創痍の凛香が放つ拳と、万全の状態で放つあきらのジョルト・カウンターとでは、その破壊力は天と地ほども離れており───────


「ぐぴゅっっっっっっっ!!!!!」


顔面のど真ん中を貫かれた少女の視界が、文字通り真っ白に弾け飛ぶ。



「相打ち~~~!!!…………ですが、

 凛香選手が打ち負けて盛大に吹っ飛ばされてしまっております!!」


「お゙あっ……………………んぅ………………」


この日一番とも言える圧倒的な衝撃により、凛香の意識は一瞬にして刈り取られ────────吹き飛ばされた勢いのまま背後のロープに辛うじて両腕を絡ませ、何とかダウンだけは免れるという、余りにも無惨な状態へと陥ってしまった。






「ぅ……………………ぁ………………………………」


誰が見ても意識は既になく、”決着がついた”と確信出来る場面。

だが、あきらだけは一瞬たりとも油断する事はなく、無防備な状態の親友へ向けて容赦のない拳の雨を降らせていく。




「がはぁっっ…………あぶぅぅっっ…………んあ゙あ゙っっっ…………!!」


「あ~っと……あきら選手、グロッキー状態の親友に対して容赦ない猛ラッシュ~~~~!!!」


反撃どころかガードすら上げられず、ただ相手の好き放題に殴られ続けているサンドバッグ状態の元王者。


闘う術を完全に失ってしまったその哀れな少女は、もはや元王者としての尊厳を保つことすらできず、獣のような情けない嬌声をあげることしか出来ない。



「ん゙お゙お゙っっっ…………」


ガラ空きの鳩尾を深々と抉り抜かれ、途切れていた意識が極限の激痛によって強制的に覚醒させられる。


限界を超えた肉体からは、雌特有の甘いフェロモンを孕んだ汗と涙、そして涎がとめどなく溢れ出し、打撃の衝撃に合わせてリング上へと艶かしく飛び散っていた。




「んべぇっっ…………がひゅっっ……………………ぅぁ……………………」


白目を剥きながら悶絶しているところへ、間髪入れずに左右のフックが叩き込まれ、少女の意識は再び暗闇の中に落ちていく。



「ぶほぉぉぉっっっっ…………」


だが、その直後にはまたしても無防備な柔らかい生腹へと強打が見舞われ、絶叫と共に少女の意識は激痛の渦へと引き戻されてしまっていた。



「こ、これは…………あきら選手、余りにも容赦ありません!!!

 流石にレフェリーが止めに入るか!!?」


「おねぇ…………」


顔面を打たれては失神し、ボディを抉られては無理やり覚醒させられるという、地獄のような拷問の無限ループ。


少女はまさに文字通り好き放題に蹂躙されてしまっている。

にも関わらず──────激しく揺さぶられるその琥珀色の瞳の奥には、確かに闘志の炎が浮かべられていた。


(こんな状態になっても、アンタは…………!!)


この惨状にあっても未だ試合を諦めようとしない、愛する女の誇り高き勇姿。

それを己の瞳にしっかりと焼き付けながら、あきらは歓喜に打ち震え、紅の拳をより一層鋭く、激しく振るっていく。



「ぶふぇぇぇぇ…………あ゙ゔゔっっっ…………はべぇぇぇっっっ…………」


そしてその拳の激しさに呼応するかのように、少女の口から漏れ出る悲鳴はより無様に、より官能的な響きを増して、熱狂渦巻く地下リングへと木霊していった。






もう残り僅かとなってしまった親友との闘いの時間を慈しむ様に、そしてその全てを味わいつくす様に。


あきらは、一撃、また一撃と丁寧に拳を固く握りしめ、全力で愛する少女の肉体を打ち抜いていく。




「んあぁっっっ…………」


スマッシュ気味に下から突き上げられた強烈な一撃が、汗と涙で濡れた凛香の顔面を無慈悲に弾き飛ばす。


琥珀色の瞳は虚ろな光を浮かべるのみであり、迫りくる紅い凶弾を目で追うことすら出来ていない。





「あっ、んあ゙あ゙ぁっっ…………!!!」


続けて放たれた鋭い拳が、トップレスのまま無防備に晒された柔らかな双丘へと深く食い込む。


闘いのために一切鍛えられていない、女性特有の豊満で柔らかな部位を全力で打ち据えられ、限界を迎えた凛香の肉体がビクッと快楽にも似た痙攣を起こした。





「ん゙お゙お゙お゙お゙お゙っっっっっ…………!!!」


そして、完全に力が抜けきった無防備な生腹の奥深くへと、紅い拳が容赦なく突き進んでいく。


胃袋を直接かき混ぜられるような深い衝撃に、凛香はこの日もはや何度目になるか分からない白目を剥いて無様に悶絶した。



その直後。

激痛に悶え苦しむ少女の口から飛沫を上げて飛び散った粘ついた唾液が、あきらの艶やかな唇へと付着する。


「…………ふふっ」


あきらは舌を自らの唇へと伸ばすと、まだ熱を持っている親友のそれをぺろりと舐め取った。


口内に広がるその味は、汗と涙の入り混じった塩辛さでありながら─────今のあきらにとっては、得も言われぬほどの濃厚な甘さを秘めていた。




(凛香…………りんか…………りっちゃん…………!!!)


最高の親友と共に過ごす、狂おしいほど熱く、目を背けたくなるほど残酷で、余りにも甘美な時間。


このままこの幸福な時間が永遠に続けば良い。

恍惚とした表情を浮かべるあきらは、心の底からそう願っていたのだが────────終わりの時は、唐突に訪れた。



「あ゙べぇぇぇぇっっっ……………………」


あきらの放った強烈な右フックが凛香の頬を完璧に打ち抜いた直後。



「ふぁぁ……………………」


完全に意識の糸を断ち切られた少女の肉体が、自重を支えきれずにクルリと半回転し、力なく対戦相手へ背を向けるような形でロープにもたれかかってしまったのだ。


そして、それを見たレフェリーが、ついにその甘美で残酷な時間の終わりを告げる宣告をリングに響き渡らせた。


「スタンディングダウンッッ!!!」





「あ~っと凛香選手、ついにスタンディングダウンを取られてしまいました!!

 いかに彼女と言えども、流石にこれは立ち上がれないかぁ!!?」


この試合二度目となるスタンディングダウンの宣告。


そもそも、この地下リングにおいてスタンディングダウンが取られること自体が滅多にない異常事態であるため、ここで闘うボクサー達にとってその宣告は”一番の恥”とまで言われていた。



「ぁ…………んっ…………………………」


「おねぇ…………おねぇっ!!!」


涙を流しながらセコンドの由乃が悲痛な叫びをあげるものの、もはや姉の耳にその声が届く事はなく、『二度とカッコ悪い姿は見せない』と約束したはずの少女は、ただ情けないうめき声を虚空に返すのみである。



「ぅ……………………ぁ………………………………」


少女の艶やかな黒髪は汗と涙に濡れて乱れ、傷だらけの柔らかな肉体はピクピクと小刻みに痙攣を繰り返している。


愛する親友の手によって赤く彩られ、ボコボコに腫れ上がった顔面は白目を剥いており、これ以上ないほど情けない”負け顔”を晒してしまっていた。



だが──────どれほど完膚無きまでに失神させられようとも、どれほど無様な醜態を晒そうとも、少女は決して膝を折ることなく、自らの足でリングに立ち続けていた。




「7……………………8…………………………9……………………………………」


静まり返った会場に、レフェリーの無情なカウントが響き渡る。


だが、精根尽き果てた少女の肉体に再び力が戻る事はなく、辛うじて咥えていた白いマウスピースが、だらしなく半開きになった口元からポロリとこぼれ落ちた。


ぴちゃり、と。


それは、限界を超えた少女の股間から伝い落ち、足元に広がり始めていた温かい黄金の海へと落ちて、ひどく惨めな水音を立てていく。





そして────────無情にも、元王者の10連敗の決定を告げる鐘の音が、高らかに会場へと鳴り響いていった。


カンカンカーン!!!






「凛香選手……親友相手に徹底的にボコられた末、完膚無きまでの惨敗!!

 しかも、無様なスタンディング失神失禁KOを喫してしまいました!!!」


劇的な決着に会場が本日一番の盛り上がりを見せる中、実況は興奮冷めやらぬ様子で無慈悲な言葉を浴びせかけていく。


「そしてこの敗北で、UBC史上初となる10連敗を達成してしまいました!!

 かつてベルトを巻いていた頃の面影はどこへやら、もはや名実ともに”UBC随一のジョバー”といって差し支えないでしょう!!」


元王者である少女の不名誉な称号が声高に叫ばれる中、勝者である親友は勝ち名乗りを受け、会場中の熱狂的な歓声を一身に浴びている。



「……………ぁ……………………………」


そんな中、”堕ちた王者”は未だ股間から生暖かい金色の負け汁を垂れ流し続けており、白目を剥いた無様な失神顔と、荒い呼吸に合わせてぷるぷると揺れる柔らかな乳肉が、会場の巨大スクリーンや配信カメラへと盛大に晒されてしまっていた。








「おっと、ここで凛香選手が担架で運ばれていきますが……もはやこの光景も見慣れた物になってしまいましたねぇ」



『堕ちた王者、親友相手に手も足も出ず失神失禁KO負け!!

 UBC史上初となる、前人未到の10連敗を達成!!』


巨大スクリーンに残酷なテロップが踊る中、実況は楽しげに言葉を続けていく。


「果たして彼女が再び勝利……いや、せめて意識を保ったまま試合を終える事が出来る日は、いつになるのやら」




「………………………………」


未だ熱狂冷めやらぬリングの上で、あきらは、担架で運ばれていく親友の姿を静かに見つめている。


「よく頑張ったわね、りっちゃん…………今は、ゆっくり休みなさい」


それは”勝者”としてではなく、ただ一人の”親友”として紡がれた、誰の耳にも届かない、小さな労いの言葉。


その慈愛に満ちた紅い瞳は、誰よりも優しげな眼差しを浮かべていた。






「おねぇ…………しっかりして、おねぇ!!!」


セコンドである由乃が悲痛な声を上げる中、黒髪の少女はピクピクと小刻みに痙攣を繰り返すばかりであり、顔も身体も殴られすぎて至る所が赤く腫れ上がっている。


一昔前のメディカルポッドが存在しない時代であれば、即座に救急車で病院へ直行し、入院を余儀なくされるほどのダメージであった。



「………………ぅ……………………んぅっ………………………………」


試合内容を振り返ってみれば、親友でありライバルでもある相手に手も足も出ず、終始一方的に蹂躙され続け、惨敗という言葉すら生ぬるい程の完膚無きまでの敗北。


おまけに二度に渡る屈辱的なスタンディングダウンに加え、最後は愛する妹の前で失神失禁KO負けという、女としてこの上ない痴態まで晒してしまっている。


まさに文字通り、これ以上ない最悪の結末と言えた。



だが、それでもなお─────────少女は揺れる担架の上で、どこか憑き物が落ちたような、清々しく満足気な笑みを浮かべていたのだった。






【堕ちた王者と最高の親友~凛香VSあきら~】______________Fin.



■あとがき

ここまでお読み頂き誠にありがとうございます!!


(ナッツの性癖である)親友対決、これにて決着です。

タイトルギミック含めてやりたいことは全部出来たので、個人的には満足なのですが、流石に長文過ぎたという自覚はあり……


次からは5分割とかも視野に入れてプロット組むかもです。


■Afterword

Thank you so much for reading this far!!


The “best friends showdown” (which is one of Nuts' kinks) has finally come to an end.

I was able to do everything I wanted to do, including the title gimmick, so I’m personally satisfied, but I do realize it ended up being a bit too long…


For future stories, I might consider splitting the plot into five parts or something like that.






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POSTEDJun 30, 2026
ARCHIVEDJun 30, 2026