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【全体公開版】スケベスキルで世界最強~やっぱ最強はちんぽっしょ!!~ 番外編1

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 おれの国には最強がいる。

 ジェイルラル=クリン=アーミライト、おれの大好きなジェルだ。

 『神風』とうたわれるほどの速さを持ち、戦えば傷ひとつ負わずに敵をせん滅させる。まさに最強にふさわしい狼。

 正直、おれってポジション的に異世界チート枠だと思ってたんだけど、ジェルには勝てる気がしない。おれがスキルを発動する前に斬られて終わる。対人には強い自覚はあるけれど、おれのスキルはどちらかというと搦め手が主なので、戦いとかそもそも向いてないし。


 だけど、コハクが戻ってくるときの騒動を経て、最強格が二人も増えた。


 『鉄塊拳』ゴライザと『土神』ウィザロン。

 圧倒的防御力を盾にすべてを薙ぎ払う狂犬を傷つけることがまず難しい。さらにはおれとのあれこれで覚えた『効果無効』や『空気抵抗』のおかげで、あらゆるものを打ち消し、吹き飛ばしながら進む姿はまさに重戦車のようだ。

 ジェルと相打ちした時はさすがに死にかけていたから、おれは心配だけどね。

 だけど傭兵街で派閥を築き上げた時には、傭兵街の全戦力を一人で相手にしたと後から聞いた。それで勝ってるんだから怖すぎる。狂犬が過ぎるでしょ。本当にあいつは自分の命を軽く扱いすぎ。


 ウィザロンは土神だけあって超広範囲攻撃とかいう兵器並みのスキルを兼ね備えていて、多数を相手取ることを得意としているらしい。実際に見たことあるのは周辺の地形を変えたりしてる程度だけど、それでも十分強い。

 そもそも自身の周辺を聖域化するスキルもあるらしくて、ふいをうつとかしないと絶対勝てない。そう考えたらおれのスキルがばれてる時点で勝ち目がねえなー。


 この三人のおかげで我が国の兵力はえげつないことになってる。

 個人で大軍を相手取れるレベルだと、周りの国もあせるよね。


 しかも、だ、もとから歴史を紐解いても類を見ないほど、二つ名持ちが多いときている。

 遠距離せん滅を得意とし城すら燃やせる『華炎』。

 潜入暗殺お手の物で兜の中身は誰も知らない『影に満ちた鏡』。

 結界ごと突撃をかまして周囲を圧殺する『騎士道走行』。

 大多数相手は苦手だがタイマンにおいては無類の強さを誇る『茜差す栄光』。

 『竜の冠』や『墜落する三日月』はいなくなってしまったが、その代わりヤードが最近『混濁した海』という二つ名をもらったし、フォグやコハクも強さ的には比肩するだろう。

 それに、傭兵街から『戦勝鬼』と『技能泥棒』も来た。この二人はこの二人で別枠のやばさがあるんだよな。スキル的にも結構特殊なタイプだと思う。

 つまり、兵力として見れば、前よりもずっと強くなったというわけだ。


 さて、ではそんな中、内乱を制したコハクが新たに作った部隊が注目を浴びないことがあるだろうか。いやない、あるわけがない。

 ゴライザが始めた騒動とはいえ、対外的にはコハクの王位継承という大義名分がある以上、諸外国の目はどうしてもコハクが大部分を持っていくことになる。

 そんなコハクが作った部隊。しかも『戦勝鬼』を副隊長にして、『華炎』が部下にいるという異常事態だ。

 当然隊長は誰だ? あいつは何者なんだ? と言われるのは自明の理だよね。


「……というわけなので、お前の行動にはコハク王子の威信がかかっている。行動には気を付けるように」

「はーい」


 いつも通りおれはフォグから小言をもらい、いつも通りに返事をしておいた。

 白竜宮の一室でベッドに横たわるおれのそばでたたずむフォグは、相変わらず真面目が服を着ている態度で注意喚起をする。そのメンタルは素直にすごいと思う。

 なにせ、周りでは屈強な男たちが白濁まみれでぐったりとしているからだ。


 エロで育成という頓珍漢なコンセプトのもと発足したおれの部隊は、こうやってまぐわうことが日常茶飯事になっていた。

 まずは普通の部隊のような訓練をして、そのあとエロでスキルを鍛えるというルーチンになっている。おれの相手は機会が均等になるように設定されており、今日はトリドスだった。


「ふふっ、フォグ君は真面目だな❤」


 おれを肉厚霜降りボディに埋めながら、トリドスは熊へと視線を向ける。角がでかすぎる雄牛はベッドで寝ながら振り返ることができない様子だ。

 黒い毛皮は甘い匂いを漂わせ、雌であることへのアピールは欠かさない。おれとさんざんやったせいで雄臭さは強いものの、とろけるようなでかい胸に視界が占められると脳が混乱しそうになる。


「これが仕事なのだから、構わないと思うがね。それに、私のような雌はこうして愛でてもらわないとすぐ欲求不満になってしまう。リンドン君も頑張っているのだから、私たちも気持ちよくならねばならんだろう?」


 なんて言われるとフォグも反論できない。年上で戦闘経験豊富だし、ギルド長として人を見てきたトリドスだ。フォグも『竜の爪』副隊長の職歴はあるけれど、やっぱり経験の差はでかい。


 名前が挙がったリンドンはスキル研究の第一人者だ。今は協力して効率的にスキルを育てる方法を模索している。

 実験と評していろんなエロをやらされているおかげで、隊員のみんなは少しずつ強くなっていると思う。それが効率を重視した結果なのか、彼らの素質によるものなのかはまだ判断がつかないけど。モウダンをはじめとして、元から強い連中の集まりだからね。

 究極的には二つ名クラスを量産することが、リンドンの目標らしい。完全に世界のパワーバランス壊れちゃう。


「……よし、ある程度のデータは集まったな」


 リンドンは長いウサギの耳を動かしながら、ほくほくした顔で手元のノートにいろいろ書きこんでいる。

 ウサギの持つ『触手解析』のスキルは相手の深くに触手を埋めるほど解析精度が増す。おかげで隊員たちは上下の口に触手をはめられて、いきながらけいれんしていた。

 ……絵面があまりにも地獄。

 さらにここから『スキル改造』などで他人を捻じ曲げられるスキルホルダーなのだから、あまりにたちが悪いとしか言いようがない。ちなみに自分のことは棚に上げた。


 そんなリンドンは触手を消してからおれに向き直り、すぐさまフォグのおっぱいに視線を吸い寄せられて鼻の下を伸ばした。わかりやすいが過ぎる。


「だいたいの仮説は立ったよ。あとは君からなんの恩恵を受けていない人に対して検証したいところだが……結構激しい行為になると予想されるから頑丈な方が良い」

「うーん、それじゃあ候補を募ってみるしかなさそうだね」

「一応こちらで候補を絞っているのだけれど、『茜差す栄光』ファンダル、『騎士道走行』グランド、などがいいと思うんだ。『影に満ちた鏡』は一度君とやってるから、正確なデータにはならないだろうから除外したよ」

「二つ名持ち限定なんだ」

「やはり元からの才覚もあって結果がわかりやすいからね。今したいのは方法の最適化で、一般人にどれほど有用なのかは、時間がかかることを踏まえて最適化が終わった後で検証したいんだ。二つ名持ちがさらに強くなるのはそっちにとってもいいことだろ? 結果が出ることは確定なんだ、後はその方法だけが知りたい」


 そこで耳をそばだてていたフォグが口を開いた。


「だが、それじゃあ残りの二つ名持ちはあの二人しかいないだろ。検証するにしても、二回までが限度になるな。それにあの二人がすんなり頷いて……ああいや、ファンダルはたぶん行けるか……」

「そのくらいわかっているよママ! 僕ちゃんだって大事な二つ名持ちを使いつぶすようなことはしないさ! だからこうしてデータをしっかりとって、後は『竜の爪』の人らにも問診して、スキルの芽生えた時期に行っていたエロなどからちゃんと仮説を立てたよ! 褒めてママーーーーっ!!」

「おーおー、えらいぞリンドン、えらいえらい」

「えへへぇ……」


 このウサギは本当にフォグの前だと駄目さ加減が爆増するな……。これでファンダルとジェルも狙って、ママハーレムを築こうとしているのだから怖すぎる。放置してたら駄目なタイプのやつ。

 リンドンがおれのスキルで進化したらどうなるのかわからないから、フォグから絶対手を出すなと言われている。コハクが自分の得意を伸ばしてスキルに絶対耐性を獲得したことから、ろくでもないことにしかならないのはわかる。


 ……でもリンドンの性癖は欲しいなとはこっそり狙っていたりはする。『性癖抽出』を使えばマザコンが取れるのは確定だ。そして、ここにはフォグとトリドスがいる。困ったら彼らの包容力で解決できるのだ。最終手段にはなるだろうと、おれは見積もっていた。


「なので、こちらからコハク王子には提案しておく。ひとまずここまでかな。僕は戻ってデータ作業でもしようか。今日やったプレイ内容をまとめておいてくれ。明日もらってまたまとめるから」

「ああ、わかった。頼りにしている」

「ママのためにも、僕ちゃん頑張るよ!」


 フォグの一言で速攻キャラを崩したリンドンは、スキップしながら部屋を後にした。なんか、扱いなれてきてるなーとは思う。


「さて」ウサギを見送ったフォグが口火を切る。「今後の予定だが、もうすぐゴライザの部隊と合同の演習がある。これが何のために催されているか、覚えているよな?」

「コハクが編成し直した軍の力を見せるためです!」


 げんこつは怖いのでちゃんと覚えておいたよ。フォグは優しいけどスパルタなのだ。

 特にここ最近はおれを隊長として立派な人にしようと奮闘しているせいで、詰め込み方が半端ない。教育ママじゃん。ただエギザクタ家でメンタル壊すくらいの教育をされてきた遍歴が、おれへの扱い方から垣間見えるのが何とも寂しい。

 本人も自覚があるみたいだけど、小さいころからのくせはなかなか抜けないようだった。別におれはフォグが優しいのを知ってるから冗談半分で流せる。そうしないと気に病んじゃうしね。


 熊はおれの答えを聞いて満足そうに鼻息を鳴らし、教育の成果を噛みしめているようだった。


「その通り。ゴライザやウィザロン様を編入させるために軍部は大改造が行われた。元帥だった親父をすげ替え、おれらの部隊も作られた。その結果を他のやつらに見せることで、コハク王子の権力を知らしめる……いうなればけん制するってわけだ」


 こういう話はあんまり実感がわかないので、なるほどとだけつぶやいておいた。政治関係の話は縁がなかったから、そういうものだという風にしか思えない。

 それから延々と流されるフォグの情勢解説をぼーっと聞いていると、おれの頭を抱きしめていたトリドスが固い手で撫でてくれた。先ほどの問題を答えられてえらいということなのだろう。そういう意図で選んだわけではなかったんだけど、副隊長二人の包容力が強すぎる。


「演習内容などに関しては通達が来てたが……読んでねえよな」

「……え、そんなのあったっけ?」

「お前は一応隊長だから、情報はしっかり届くようになっているはずだ。というか、おれがこの前確認したよな? 読んでおけよって。お前に関係あることなんだから、伝達物は把握してもらわねえと困るぞ」

「う、ごめん。読んでても内容が頭に入ってこなくて……」

「まあ、急に隊長なんてやってるんだ、情報量が多くて大変なのはわかるがな」


 となんとか怒られずにすんだ。実際部隊としてのスケジュールだけじゃなくって、育成方針とかも考えないといけないから、考えることが多いんだ。新設部隊ということで、成果のアピールのためにいろいろやらされたりするしね。


 そのすべてを把握してくれるフォグはもはや副隊長というよりかは秘書だな。最近訓練も頑張ってるおかげでさらに胸も腹も膨らんできたし、エッチな秘書って実在してたんだと感慨深くなる。

 

「おい」熊のジト目が刺さる。「変なこと考えてただろ」

「なぜわかる……」

「お前の考えそうなことくらいお見通しだ。まだやりたりないっていうのか?」

「そういうわけじゃないけどさ、フォグがあんまりやってくれないような気がして……」

「おれはもう十分お前とやって、スキルも強化されてるからな。優先度は低い」

「やりたくないわけじゃない?」

「……まあな」


 バツの悪そうな顔でそっぽを向く熊の頬は、ほんのりと色づいているように見えた。真面目過ぎてため込むタイプだからなぁ。新しい副隊長業務に真剣すぎて、息抜きが必要だと思う。

 ベッドから手を伸ばしてフォグの黒い袖を引っ張ると、重い体が傾ぐ。思えば最近フォグとはやってない。こんな凄惨なエロ現場にいて、やってないなんておかしな話だ。

 トリドスもそう思ったのか、おれごと横にひいて場所を開けてくれた。キングサイズのベッドなのに、フォグがはみ出しそうな隙間しか空かなかったけど。


「フォグ君も気にせずやってもいいだろうに❤スキルが鍛えられてるとはいえ、そんな調子じゃすぐ部下に抜かされるぞ❤❤」

「余計なお世話だ。それに、隊長がこいつなんだ、副隊長が強くなけりゃいけないってわけでもねえだろ」


 ごもっともではある。だけど、フォグは抵抗らしい抵抗もせず、こうしてベッドまで手繰り寄せられてくれる。

 おれらの部隊の服は黒い軍服で、前まで着ていた青と違って引き締まって見える。だが、脱ぎやすいようにと随所に工夫がされているため、熊の豊満な体はすぐさまさらけ出されていく。


 どうせ普通の訓練はもう終わっているんだ。後は盛るだけでも問題はない。実際他の連中はリンドンが帰った後も楽しんでいるようだし。


「しょ、しょーがねえな」わざとらしくフォグがため息をついて。「確かにこれも訓練だ。付き合ってるよ」


 素直じゃない奴。それじゃあと熊のたくましく太い体を抱き寄せた時。


「ご主人、いるか」


 地を這うような低い声がおれのことを呼んだ。


****


 『鉄塊拳』ゴライザは山のように膨らんだ腹とずば抜けて高い背丈を持つ、がっちがちに膨らんだ暗灰色の犬だ。限界まで肉を詰め込んだ四肢は筋肉の盛り上がりがすさまじく、筋繊維からして常人と違うのではと思わせるほどにごつく発達している。

 顔つきは常に不機嫌をまき散らしているように鋭く、初対面時には吐きそうになったことすらある。口を開けば牙が顔をのぞかせることも、恐ろしさに拍車をかけている要因だろう。


 つまるところゴライザという男は、常時殺気駄々洩れ屈強強面犬とかいう、道ですれ違ったら全力横跳びで逃げるくらい圧のある男なのだ。


「ごっ主じーん❤❤ご主人ご主人ご主人っ❤❤❤」


 そしてそんな最恐わんちゃんから全力で甘えられているおれは、顎下をわしゃわしゃと撫でていた。


「んーー❤❤ご主人のなでなで好きぃ❤❤なあ、もっとわんちゃんの全部をいい子いい子してくれよご主人~~❤❤❤」


 話したいことがあると呼び出されてゴライザの家にやってきたとたん、大砲の玉みたいな巨体にベッドまで連行された。

 一緒に住んでいるトリドスが白竜宮にいるおかげで、憚るものがないのだろう。尻尾はもうはちきれんばかりに揺れ、低い声に可能な限りの媚びを煮詰めている。


 忠犬の性癖を発露させたゴライザは、おれの前では狂犬から駄犬に代わる。

 全裸に首輪スタイルで腹を見せながら喜びにのたうっているなんて、部下のアリギラドらに見られたら確実に終わる光景だろう。まさかあの狂犬が飼い主に可愛がられることが生きがいの駄犬だなんて、誰も思わない。


「ごめんなご主人~❤話があるって呼びだしたのに❤二人っきりになっちまうと、我慢できなくなっちまったんだわん❤ご主人にいい子いい子してもらいたくって、ちんぽびんびんにしちまう駄犬でごめんなさいだわん❤❤❤」


 もはや不機嫌顔なんてどこにもない。でれっでれに蕩けた駄犬の顔があるだけ。

 舌まで垂らしてハフハフしている様は、狂犬の名折れが過ぎる。可愛らしいからつい甘やかしてしまうおれも悪いんだけどさー。


 腹を見せた降参スタイルの股間では、太いちんぽがビンビンにそそり立っている。根元から伸びる袋には、ごろんとしたでか金玉がはっきりと浮かび上がっていた。

 巨体に見合った雄々しさの塊はしかし、犬としての喜びがあふれてびしゃびしゃだ。股間周りの毛は先走りで湿り、それがなお情けなさを生み出していた。


「あおーん❤❤ちんぽいい子いい子っ❤俺のちんぽに、いい子いい子してぇ❤❤ご主人にいい子いい子されないと、俺の忠犬ちんぽは満足に射精もできねえんだよぉ❤❤」

「待って、それって相当長い間満足してないってことじゃ……」


 おれがコハクの所に飛ばされて、王都で怪我をして、それから今までまともに相手をしてあげた記憶がない。

 お見舞いに行くのも遅れてしまったくらいだし、あの時はトリドスが来てしまった。それからおれも隊長になって忙しかったから、こうしてここに来るのも久しぶりな気がする。


 その間ずっと、ゴライザは性欲を持て余していたってこと?


「そうだぜ❤❤マンコほじったり、腰振りも試してみたけどよ❤ご主人のいい子いい子じゃなきゃ、本当の意味で満足なんてできねえんだ❤寂しがり屋のわんちゃんを一人にするなよぉ❤❤」

「それは……ごめん」

「ご主人も悩んでたみてえだからいいんだぜ❤でも、もう我慢できねえんだ❤❤だから一回❤一回だけいかせてくれっ❤❤俺のちんぽからビューって❤いい子いい子、してぇえぇ❤❤❤」


 でっぷりした金玉には、これまでの騒動の間ずっとため込まれて精子がうごめいているのか。そう思うって握れば、ずっしりとした重みがある。おれとの経験によって性豪になっていることもあり、かなりの量がありそうだな。


 思えばゴライザはちょっと会えなくなっただけで、寂しさこじらせて舐めまくってくる忠犬だったのだ。今まで会えなかった時間で見れば最長と言っていいだろう。

 そりゃこうなる。本当はおれの顔を舐めたりキスしたりしたいはずなのに、必死に抑えているだけなんだ。相変わらずけなげすぎる忠犬だ。どこぞの猫とは大違い。


「ううおぉぉっ❤❤❤」

「たくさん溜めたんだ」

「溜めたぁ❤ご主人のことを想ってオナっても、全然っ❤気持ちよくなぐってぇ❤❤ご主人の手じゃねえと❤俺ぇ……❤❤」


 もじもじと太ましい腰を動かしてゴライザが弱々しい声を出す。ゴライザを知っている人が聞いたら耳を疑うような声だが、おれにとっては聞き慣れたものだ。


 ゴライザはおれのために怒って、立ち上がってくれた。

 そして自分が怪我をしてまでジェルの洗脳を解除してくれた。

 そんなゴライザがおれでなければ満足に射精できないと嘆き、乞うている。さすがにそれは不義理がすぎるというもの。今までたくさん頑張ってくれたんだ、お返ししないとね。


「よし。ゴライザ、話ってすぐ済むやつ?」

「おう❤ただ、ご主人たちと訓練してほしいってだけだからぁ❤❤はふはふっ❤」


 それだけなら時間もかからなさそうだ。それに、そういう話はフォグとかがいたほうが良いだろうに、わざわざおれだけを呼んだということはやっぱりこういうことを期待してたに違いない。


「じゃあゴライザ」

「なんだ、ご主人❤❤」


 おれの言葉に期待したのか、尻尾の揺れが大きくなりシーツがぐちゃぐちゃになっていく。ようやく射精できるのだとちんぽが期待に震えているところ申し訳ないけれど、せっかくなのだ、ゴライザには心行くまで気持ちよくなってほしい。

 それが、おれにできる精いっぱいの恩返しだから。


「お散歩しよっか」


 というわけでおれはゴライザのリードを引っ張って町を歩くことにした。

 日はまだ高く、昼を過ぎたばかり。普段はセックス訓練の後にご飯を食べるようにしていたから、実は腹ペコだったりする。

 ……戦闘訓練とセックス訓練を午前に詰め込んだせいで、毎日早起き過ぎるのが本当に難点なんだよなぁ。午後からみんな各自任務があるからしょうがないのだけど、さすがに詰め込みすぎだよ。社会人って大変。


「ご、ご主人……❤❤」


 足元から響く不安そうな声に我に返れば、ゴライザが体を丸めながらこちらをうかがっていた。

 全裸でたくましい体をさらけ出しながらも、首からリードをつながれた姿は誰が見ても変態わんちゃんだと言うだろう。それは、おれ以外の前で決して忠犬を見せないゴライザにとって、最も避けたいことだというのは知っている。


 王都だけあって町には賑わいが満ちており、往来は激しいものだ。そんなところにぽつんとうずくまる黒く大きな犬は、おれの足に縋り付いていた。


「大丈夫。周囲には催眠をかけてあるから、ゴライザのことは大型犬としか思われないよ。お散歩、したかったんでしょ?」

「したかった❤❤ここに来てから、室内犬みてえな扱いばかりで……それも嫌いじゃねえけど、俺はご主人とこうしてお散歩したかったんだぜ❤❤」

「じゃあ今日はたくさん遊ぼうか」

「おう❤❤」


 実際道行く人らはゴライザに全く注意を払わない。こんなにごつくいかめしい黒犬が変態プレイをしているとくれば、人目を引かないわけがないというのに、だ。

 ゴライザもそのことを受け入れ始めてきたようで、おずおずと四つん這いで歩き始めていく。


 整えられているとはいえ、町の床にはいろんなものが落ちている。さらに石畳だから、膝が痛くないか、普通なら心配するところだろう。


 だがこいつは『鉄塊拳』なのだ。

 単純なスキルレベルも高く、最高峰の身体能力を持つ化け物の一人。

 そんな奴が石畳程度に後れを取るわけもなく、なんならこすったところで毛の一本さえ抜けない。

 その証拠に、本人はばれないことを確認した瞬間にはもう走り出しているけれど、顔は喜色のままなのだ。


「一応、怪我とかしたら言ってね」

「問題ねえよ❤生半可な剣じゃ俺に傷ひとつ付けられねえ❤❤俺はご主人の忠犬で❤立派なボディーガードだからな❤わん❤❤」


 お座りの体勢でおれを見上げる目には自信がみなぎっている。そりゃ最強の一角でジェルの洗脳を解いた立役者だもんね。そこらの人が徒党を組んだところで、負けるヴィジョンが見えない。

 そもそも元が巨体過ぎるせいで座っていても目線がそんなに下がらないのだ。大型犬というか魔獣と言われてもおかしくないくらいでかいぞ。


「ご主人❤早く行こうぜ❤わんわん❤❤」


 リードを軽く引っ張って催促されるので、おれも歩き出す。ちゃんと首で引っ張るところに忠犬根性がうかがえて、完全に犬になっているのがわかる。

 おれ程度の腕力じゃリードを引っ張ったところで首が締まるわけもないとはいえ、ちょっと躊躇してしまうな。


「心配するなよ❤」そんな懸念を見透かして犬は胸を張る。「ご主人が本気で引っ張ったところで、苦しいわけがねえ❤お散歩でテンション上がっちまってるから、ちゃんとリードしてくれよ❤❤」


 あの『鉄塊拳』がここまで下手に出ていると知ったら、みんな驚くだろうな。

 尻を振って意気揚々と四つん這いで歩き出す犬は本当に嬉しそうで、ちょいっと手に持った紐を引っ張るとすぐさま方向転換してくれた。


 町は賑やかで人混みが激しいというのに、ゴライザは遠慮なく分け入って進んでいく。自分こそが一番だという態度は忠犬になっても変わらないようで、尻尾を振りながら堂々とした態度だ。

 踏まれてもまるで動じておらず、剣が効かないと豪語するだけある。それどころか体当たりで人波をどかしていくくらいだ。根性が座りすぎている。


「おら❤おらぁ❤俺のご主人の邪魔するんじゃねえぞ❤❤道を開けろ❤❤今俺のご主人とお散歩中なんだ❤前に立ちふさがるなんておこがましいんだよ❤❤」


 やくざ犬か???

 しかもたまに振り返っては『役に立ってますよね?』と目線でアピールしてくる。これで好感度稼げてると思ってる当たり、狂犬は健在だと痛感する。催眠中じゃなかったらいたたまれなくなってたぞ。


 どかされた人らはちょっと視線を向けるだけで、誰もがゴライザを大型犬だと思っている。まあ普通、こんなデカい犬がそばにいたらビビるだろうけど、そこも催眠でいい感じにごまかしている。超広範囲に薄い暗示をばらまくなんてあんまりやったことなかったけど、何とかなっているようでよかった。

 ……歩くたびに範囲が更新されるから結構しんどいが、ゴライザが楽しそうだから頑張らないとね。


 扇動する大型犬はのっしのっしと闊歩し、鍛え上げられた尻が目の前で揺れている。突き出した腹が少し地面とこすれているようだが、本人はまったく気にしていなかった。


「散歩楽しい?」

「もちろん❤久しぶりにご主人がしてくれた散歩だ❤もう嬉しすぎてずっといってるみてえになってるぞ❤」


 うん、四つん這い出歩くゴライザの足の間から、ナメクジが這ったような跡が続いてるから察してたよ。さっきから生殺しの状態だとはいえ、散歩してるだけでこれはさすがに舌を巻く。忠犬性癖の元祖なだけはある。


「人目とか気にならないならよかった」

「別に有象無象に見られたってかまわねえよ❤ご主人が催眠をばらまいてくれてるおかげで、俺の地位は安泰だからな❤❤」


 あくまでおれだけの視線が欲しいとゴライザは吠える。露出狂に目覚めたらどうしようかと懸念したが、この調子だと問題なさそうだ。ゴライザにとって、他人の目など基本的にはどうでもいいらしい。

 こうして忠犬を隠しているのも部下からの信頼を失わないようにという配慮から来ているから、ばれないとなったとたんに活き活きし始めているわけだ。


「んで、どこに行くんだ?❤行きたいところがあれば、俺に乗ってもいいぞ❤❤」

「せっかくの散歩だからもうちょっとこのままで歩くよ。お昼がまだだから、広場で買い食いでもしようと思ってね」


 この前ヤードに教えてもらった屋台、まだやってるかな。日替わりとかだったら他の物を食べよう。


「わかった❤ならこっちだな❤❤」


 すでに地理を頭に入れているのか、ゴライザの足取りに迷いはない。派閥のトップをやっていただけあって、優秀なんだよな。前はヤードに案内してもらっていたから、ちょっと自信がなかったんだよね。助かった。


 暗い灰色の大きな背中が太陽の下で広がっている。気温が高いわけではないけれど、ごつごつとした背筋には汗が浮かんでいるのが見える。おれに負担をかけないよう、四足歩行でも早めに移動しているせいだろう。


「もうちょっとゆっくりでもいいよ」

「別にこの程度❤何の問題もねえ❤せっかくご主人とお散歩できるっつうから、気持ちが急いてんだ❤久しぶりすぎて待ちきれねえんだ❤わんちゃんは寂しかったんだぞ❤❤」

「そっか、なら今日はたくさん遊ぼうね」

「あおーん❤❤❤❤」


 元気のいい返事をもらい、おれらは広場へと向かう。

 ゴライザのやくざムーブによってすんなり到着したここは、前見た時と変わらぬ活気を蓄えているようだった。


 さて、ここで前食べたお肉がまた売ってるかなぁ。

 なんて周りをきょろきょろしていると、突然声がかけられた。


「おんやぁ、すげえでかい犬だな。あんたの飼い犬かい?」


 黒い熊の男性が物珍しそうな視線をゴライザへと向けている。見た目から言って、戦いが得意そうな印象を受ける。

 軽装の隙間から見える体はちゃんと鍛えているのがわかり、その手には本物の大型犬がつながれていた。


「そうだよ。ゴライザって言うんだ」

「いい犬だな。おっと自己紹介が遅れたな、おれはタズィ、魔獣を専門に狩る冒険者だ。こっちは相棒のガンラ。見ての通り魔獣だが、人に危害は加えねえよ」


 訂正、魔獣だった。どう見てもちょっと大きな犬だと思ってた。

 ゴライザと比べたら小さいってだけで、普通に考えるとでかすぎるか。


「くぅーん……」


 下に伸ばした犬歯が特徴的なガンラは、なぜか耳を伏せてたじたじだ。

 ……なぜか、では全くなかった。ゴライザが全力でガンつけていた。威圧感で魔獣を圧倒するな。


「おーガンラがこんなにおびえるなんてめったにねえぞ。よほど強い犬なんだな」

「あ、ははは……そうだね……ところで何か用?」

「いや、あんたの犬が珍しいもんでつい声をかけちまっただけだよ。見ての通り、魔獣には目がなくてな」


 怯えるガンラをなだめながらニカッと笑う熊。フォグやらグリッジやら素直じゃない熊ばかりだったから、てらいのない笑顔は新鮮だ。最近はフォグもこんな顔をするようになったとは思うけど、頻度は多いとは言えない。


 というかなんでゴライザはガンラを威嚇してるんだ。落ち着け。


「ご主人の忠犬は俺一人で十分だ」

「初対面の魔獣に嫉妬するな!」


 これは撫でようとしたら機嫌を損なうな。犬としての独占欲が高すぎないか?


「どうしたんだ?」

「なんでも……」


 タズィが不思議そうな顔をしてきた。暗示のせいでゴライザの発言は全く理解できないんだった。


 ……待てよ。せっかくのお散歩だ、少し遊んでもいいかもしれない。

 『暗示』のスキルを発動。タズィに命令を上書きして、違和感をより感じにくくした。


「よかったら、触ってみる?」

「ご主人! 俺ぁご主人以外に懐くつもりなんて、さらさら――――」

「ちょっとだけだから、ね?」

「くぅん……」


 頼み込むとしぶしぶゴライザは頷いてくれた、おれ以外に触られるのもだめなのかよ。


「おっ、触ってもいいのか? ありがてぇ」

「ご主人に頼まれなかったら、誰がてめえなんぞに……!」


 嬉しそうに顔をほころばせるタズィに、ゴライザのうめき声は全く届かない。ごつい手でわしゃわしゃと頭や背中を撫で、その下蓄えられた筋肉に感銘を受けている。


「おおぉ……すげえな、こんなたくましい犬を初めて見た……おれより鍛えてるんじゃねえか?」

「そうだろうね。ゴライザはおれの自慢なんだ」

「ご主人……」


 世界中を探したって、こんなに強くて、かっこよくて、賢い犬はいないだろう。

 ゴライザのような雄が忠犬でいてくれて、おれはとても助かっているんだ。


「ご主人~~~~❤❤❤❤」


 感極まったゴライザが尻尾を振りながらおれの足に頭をこすりつけている。へたすると靴を舐めそうな勢いだ。よほどうれしかったのだろう、足元で水たまりが広がった。嬉ションみたいに先走りを出すな。


 ゴライザは忠犬を人前にさらすことを好まない。

 だからおれはずっとゴライザがいかにかっこいいかと、他人に言う機会を持てずにいた。せっかくのお散歩なのだから、飼い犬自慢をしたっていいはずだ。


 そしてそれはゴライザも一緒だろう。忠犬として褒められる経験なんてなかったものだから、それはもう誇らしそうにお座りの体勢を取って遠吠えをあげている。


「俺こそがご主人の一番❤❤一番強くて頼りがいのあるわんちゃんなんだ❤❤あおーん❤❤」

「ねー」

「わおん❤」


 大きな頭をぐしゃぐしゃにする勢いで撫でても、返ってくるのはもっと❤という期待だけ。最近『鉄塊拳』としてしか活動できていなかったようだから、より忠犬ムーブに熱が入っているのだろう。


 暗示が効いているとはいえ、今のおれらはどう見ても仲睦まじい相棒だ。黒い熊はこわもてのゴライザがここまで懐いている驚きに目を丸くしながら、ガンラを引き寄せて抱きしめた。おれらの関係がうらやましくなったのかもしれない。


「おお、相当あんたに懐いてるみたいだ。こんなデカい犬をここまで懐かせるなんて、相当いいブリーダーがいたんだな」

「秘訣を教えてあげようか?」

「そいつは願ったり叶ったりだな。実のところ王都なんて始めて来たもんで、おれと同じようなハンターなんていねえと思ってたんだ。ギルドに行っても、魔獣を相棒にするなんてはやってねえみてえだしよ……」


 なるほど、完全なお上りさんか。ジェルの家と王宮ぐらいしか知らないおれが言うなという話ではあるが、それならなおのこと暗示のかかりもいいだろう。

 

「ゴライザ、ちんちん」

「わう❤」


 膝立ちさせればでかく張った腹の下からにょきっと極太ちんぽが顔を出す。ゴライザは舌を出した荒い息でこっちをしっかりと見ているのだけど、膝立ちでもおれより背丈が高いから威圧感が半端ない。


 これから何をされるのか、ゴライザは大体わかっているのだろう。

 期待にあふれる先走りがその量を増して、とろとろと地面と糸を引いているのだから。


「うちのゴライザはちんちんをいい子いい子するとすごい喜んでくれるんだ」


 むき出しの亀頭を掌でこすってあげると、忠犬は屈強な背中をそり返して吠えた。


「あおーーーーんっ❤❤❤❤」


 人の集まる広場で恥知らずな咆哮を上げる『鉄塊拳』。

 それでも群衆は誰も不審を覚えることはなく、それどころか熊にいたっては神妙な顔でなるほどとつぶやいている始末。

 

 人前で撫でられているゴライザは尻尾どころか尻まで振って歓喜を表現し、表情筋をでれでれに溶かしている。久しぶりの忠犬扱いが欲求不満と結びついて、今にも射精してしまいそうになっていた。


「ご主人❤ご主人❤もっともっとおぉ❤もっと俺の忠犬ちんぽ❤いい子いい子してええぇぇ❤❤❤へっへっへっへっ❤❤❤」

「うん、わかったよ。よしよし」

「あおーーーーん❤❤❤❤」

「……と、こんな風にすごい喜んでくれるんだ」

「へー、王都ではこう躾けるのか。勉強になるな」


 しげしげと眺めるタズィの前で、忠犬ちんぽがびくんびくんとのたうって汁をまき散らす。ここまでされてなおゴライザの視線に羞恥などは一切なく、ただおれから与えられる快楽を貪っているだけ。忠犬としての自分に誇りを持ちすぎてない?


「あおーん❤ちんぽきもちいいぃ❤❤これが❤ずっとほしかったんだ❤ご主人❤だーい好きだぞ❤❤早く俺のこと、飼ってくれよおぉ❤❤毎日散歩して❤いい子いい子で忠犬射精させてくれぇ❤❤❤」

「なるほど、確かによく懐いているみたいだ。おれもガンラにやってみようか」


 なんて言うと横の魔獣が『え?』みたいな顔で飼い主を振り返った。人じゃないから暗示のかかりがよくなかったかな。おれのせいで主従関係が崩壊するのは申し訳ないから、あとで記憶は消しておかないと。

 そう考えたら最初にゴライザが格付けをしてくれて助かったかもしれない。ガンラに攻撃されたらゴライザが完膚なきまでにぶちのめしてた。これで動物虐待は避けられたな。


「じゃあ、試しにやってみる?」

「おれが触っても大丈夫なのか? 見たところ、あんたにしか懐いていないようだが」

「大丈夫大丈夫。ね、ゴライザ?」

「……っち、しょうがねえな❤本来ならご主人以外が俺に触るなんて絶対にごめんだが、そのご主人が言うなら従ってやるよ❤❤」


 ずいっとちんぽを突き出しながら、ゴライザの眼光は鋭い。おかげでタズィが不安そうじゃないか。

 このままだと話が進まなさそうだから、おれは後ろからでかぶつわんちゃんに抱き着いて、腹や胸を揉んでご機嫌取りをする。むっちむちで手が弾力のいい肉に沈んでいく感触は、控えめに言って最高だ。

 大きなものが与える無条件の安心感が掌から染みこんでくる。そこに性欲を混ぜ込んだおかげで、我ながらいやらしい手つきで揉んでいると思う。


「んーー❤ご主人のなでなできもひぃ❤❤好きっ❤好きぃ❤❤❤」

「ありがとう、ゴライザ」

「いいってことよ❤俺は忠犬だぜ❤ご主人の言うことには、絶対服従なんだ❤❤わんわん❤でも、きちんとできたら後でちゃんとご褒美をくれよだわんっ❤❤」

 

 おれが目線で合図を送ると、熊はゆっくりと手を伸ばしてきた。目線はゴライザに合わせたまま逸らすこともしない。魔獣の扱いに慣れているせいだろう、安心させるように話しかけてきさえした。


「怖くないぞ。おれはお前に危害は加えねえ。お前のご主人だって、それはよーくわかってるはずだ」

「はんっ❤てめえごときが俺を傷つけられるわけねえだろ❤いいからとっとと忠犬おちんぽをいい子いい子しやがれ❤❤」


 向こうはちゃんと犬に話しかけているつもりで、それがものすごい違和感を生んでいる。熊が笑顔を浮かべているのは相手を警戒させないためだとはいえ、ゴライザに効くわけはない。

 それでも忠犬はちゃんとちんちんのまま、後ろから抱き着くおれに頬をすり寄せて待っている。つくづく忠犬だと思う。


 受け入れられたことを悟って、タズィの武骨な手がついにちんぽをつかんだ。


「あおーん❤❤」

「よーし、いい子だ。……それで、これからどうすればいいんだ?」

「いつもしこってるようにするといいよ」

「なるほど、任せてくれ。相手もいないから毎日しこってるんだ、そういうのは得意だぞ」


 暗示のせいか恥ずかしい情報をぽろっと漏らしたな。結構モテそうなのにね。

 王都は初めてみたいだし、田舎ではこういうタイプはモテないのかもしれない。言われてみると毛並みはぼさぼさだし、話し方もどこかなまっている気がする。

 とはいえ、体はしっかり大きく鍛えられてるし、いかついけど笑うと人懐っこくて可愛らしい感じもする。男女問わず、人から好かれるような気がするんだけどなぁ。

 おれがフォグを見慣れてるせいで熊に求めるハードルが高いのは自覚しているけど、それを差し引いてもいい雄だと思う。フォグはあれで身分も才能も教育も全部持った引く手あまたな物件だから、比較対象にしたら絶対だめ。


「こうか? おれは裏筋をくちゅくちゅってするといいんだが、どうやらゴライザも気持ちが良いみたいだな。ほーれよしよし」

「わうわうっ❤はん、手つきは慣れてるみてぇだが❤やっぱり『愛撫』がねえとこんなもんか❤❤俺のご主人の足元にも及ばねえぜ❤❤お゛おおぅ❤❤ふーっ❤ふーっ❤」

「うーん、やっぱりあんたの方が嬉しいみたいだな。おれならもう射精してるはずなんだが」


 真っ赤な顔で意地を張るゴライザを見るに、おれの手じゃないと嫌だとアピールしてるみたいだ。さっきからの興奮でいついってもおかしくないのに、必死に耐えている。


「そんなに耐えなくてもいいのに」

「せっかくのお散歩なのに❤ご主人以外の手でいくなんてぜってぇ嫌なんだよ❤わんちゃんの金玉はご主人に会えなかった分のザーメンをためてんだ❤せめて最初くらいはご主人がいいんだよ❤❤」

「けなげが過ぎる……」


 つくづくこんなけなげな人を放置してた罪悪感があるな。

 そこまで言うのなら、最初はおれがいかせてあげよう。


 おれはちんぽを握る熊の手をやんわりと押しのけて、その場を入れ替わって前に座ることにした。握ってみると、熱く脈打ったちんぽがまるで鉄の杭のように硬くいきり立っているのがわかる。

 それだけでゴライザからはふっ❤と可愛らしい吐息が漏れ、期待がさらに硬度を増していく。喜びが大きかったのか、体がでかすぎておれの指くらいはありそうな血管が膨らみ、追従して鈴口がパクパクと開閉して汁を噴いた。


「じゃあお手本を見せるね」

「ああ、頼む」

「わおん❤」

 

 ゴライザのちんぽはでかいから、両手を使って思いっきりしごく。

 すでにぬるぬるで滑りがいいちんぽは湿った音をたてながら、持ち主へと快楽を叩きつけた。


「あおーーん❤❤これだよこれぇええぇっへええぇ❤❤俺のご主人のいい子いい子がぁ❤一番気持ちいいんだあああぁ❤❤❤あぁ、もっと俺の忠犬おちんぽおぉ❤いい子いい子じでえええぇ~~~~❤❤❤」

「うん、わかったよ。今まで我慢出来てて偉かったね。いい子いい子」

「んへへへぇ❤❤ご主人❤ご主人❤俺の大好きなご主人~~~~❤❤❤わんちゃんいっぱい出すぞ❤今までご主人に会えなかった分の寂しさ❤ぜーんぶ忠犬ちんぽからびゅーびゅーするっ❤❤んへ❤あおーん❤」


 先ほどから限界を我慢していたせいで、爆発するのは早かった。

 腰が動いているせいで金玉が踊っているのだが、それが射精を前にしゃくり上げているように見える。この大きな玉から生産されたザーメンが、ゴライザの尿道を登っているのだろう。


「ふへえええぇ❤❤こ、このままじゃ俺っ❤ご主人にザーメンぶっかけちまう❤んでも❤このままいい子いい子じでほじいぃいぃ❤❤❤」

「『精液操作』で全部取れるから、気にせず出していいよ」

「あ、ありがとうなご主人❤❤ちんぽ❤ちんぽ❤いい子いい子すきぃいぃ❤❤❤」


 だらしなく垂れた舌からこぼれる唾液が丸い腹に染みこんでいく。その下で腰だけがカクカク動くのは、それだけ快楽が強いということだろう。

 ちんちんの体勢で悦に浸るゴライザをタズィは真剣な目で見ていた。参考にしようという腹積もりなのだろうが、無駄な努力でしかないよ。だって、そのガンラはドン引きした目をゴライザに向けてるから。魔獣の表情って案外わかりやすいな。


「わ、わんちゃんいぐ❤いぐいぐぅ❤ご主人~~❤忠犬ちんぽげんがいいぃ❤もうだめだあああぁ❤❤❤」


 射精に向けてぐっと硬くなったちんぽに、おれは驚きを禁じ得なかった。ここからさらに硬くなるんだ……殴ったら鈍器にできそうだな。


「ふんぐうぅぅ~❤いぐっ❤いっぐうぅうぅ❤❤ちんぽいぐ❤いっちまう❤❤ご主人にいい子いい子されて久しぶりに出すぅぅ❤ああぁ~たまんねええぇぇ❤へっへっへっ❤❤」

「じゃあ広場のみんなに聞こえるくらい、大きな声でいこっか。おれにゴライザの強いところを見せてよ」

「わがっだぁ❤任せろご主人❤ご主人のわんちゃんはぁ❤世界で一番強くてかっこいいんだってことっ❤見ててくれ、んぐおぉ❤あっ❤おおぉおん❤❤」


 ちんぽと同じように腹も力み、丸い腹に腹筋が浮かんで鋼へと変化する。こうなればたとえタズィが剣を振るったところで、傷ひとつつかないだろう。


「あおーーーーーーーん❤❤❤❤❤」


 だが、そこから出てきたのは快楽に蕩けた犬の遠吠えでしかなかった。

 余りの声量と覇気に、広場に集まった人たちが驚きながら視線を向けた。例え暗示影響下であっても、ゴライザの将としての風格は確実に人目を引きつける。


 そして、ゴライザはいく。

 自分が主に愛されている犬だと満足そうに見せつけながら、満たされた射精を空へと向けて。


「あおーーーーーーーーーーーん❤❤❤❤❤❤❤」


 さらに大きな遠吠えを合図として、極太ちんぽからこれまた極太な白が飛ぶ。おれの、ゴライザの頭上を越えた白は、広場の噴水よりも高くはじけていく。

 スキルによる強化があるとはいえ、さすがに飛ばしすぎだろ。太陽を受けてきらきら輝くザーメンを見上げながら、おれはあんぐりと口を開けるしかできなかった。


「んぎもぢいぃいぃいぃぃぃ❤❤❤ご主人のいい子いい子さいこおおぉお❤❤もうこれじゃなきゃダメなんだ❤ご主人じゃなきゃ、こんな気持ちよく射精できねえええええぇぇぇ~~❤❤❤」


 衆目を集めていることなど頭に残ってないのだろう。ゴライザは腰を突き上げながら射精の快楽に脳みそを焼かれている。忠犬がばれたくないから我慢していたゴライザにとって、胸を張りながらの射精は相当気持ちが良いはずだ。


「おーおー❤忠犬ちんぽどまんねっ❤尿道馬鹿になっちまうよおぉ❤❤忠犬ザーメンびゅるっびゅるでぇ❤幸せえええぇ~~~~❤❤❤」


 あまりに強い勢いで飛ばしているものだから、タズィが呆然となっている。雄ならこれがいかにすごい射精かわかるせいで、その精力に感嘆しているはずだ。おれのスキルの影響を受けたやつらの中でもこの射精はすごい方だからね。

 本人が言うだけあって、よっぽどため込んでいたんだな。子宮に出したら着床確実どころか、一気に三つ子くらいできそう。それほど濃い精液がびゅるびゅるあふれ出している。


 腹が出ていなかったらもっと高く飛んでいただろうに。発射角が小さくなったせいでザーメンは遠くまで飛び、広場に集まった人たちに雄犬の精液臭がまとわりつくことになる。


「ご主人~❤すんげえ気持ちよかったぜ❤お散歩中の射精はやっぱり最高だよな❤❤わんわん❤ご主人様ありがとうだわんっ❤❤❤」


 だが当の本人は他人のことなど全く意に返さず、おれだけを見据えて、射精後の残滓を垂らすちんぽを尻尾のように振っている。他人のことなど気にかけない性質は忠犬になっても変わらないのだ。

 ちんちんのポーズを取っていなかったらその場で抱き着いて、顔中舐めまわされていたかもしれないな。

 まあそれは別にいいんだけど、まずは飛び散った精液を集めないと。最近『忠犬』の性癖を集めてなかったからもったいないしね。こんなに濃いんだ、さぞかし性癖も濃いに違いない。


「……すんげえな」


 ゴライザに待てをしてから精液を集めていると、熊から賞賛をもらった。


「こんな射精初めて見た……王都って本当にすごいところなんだな……」


 王都は全く関係ないけど、タズィの中ではそう結論づいたみたいだ。その股間はいきり立ち、先端にはシミができていた。ゴライザのことは犬だと思うように暗示をかけたのに、だ。

 ……やっぱ悪影響出る前に記憶を消さないと。本能的に人だと見抜いて発情してるならいいんだけど、そうじゃなかったら大問題だ。主にガンラにとって。


「はんっ❤」忠犬は誇らしそうにちんぽを突き出して。「何が王都だ❤これはご主人の忠犬である俺だけの特権なんだよ❤ご主人の手でこんなに出せるのも❤俺がちゃんと忠犬だからなんだ❤てめえには一生無理だね❤」

「ちゅ、忠犬になれば……おれも気持ちよくなれるのか……?」


 やっっっっっば、会話が駄目な方向に傾き始めた。暗示がよくない具合に作用してる。しかも会話できてるってことは、暗示が興奮で解け始めてるみたいだし、かなりまずいことになる予感がひしひしと伝わってくるぞ!

 

 急いで記憶を消さないと。

 ……と思っていたおれの体が、たくましい手によって抱きかかえられた。丸太のようなぶっとい手足を前にするとおれは無力で、されるがままゴライザに頬ずりされてしまう。


「馬鹿野郎が❤ご主人は俺のなんだよ❤おとといきやがれ❤❤」

「うわっと!」

「ごめんなご主人❤あいつがあまりに分不相応なことを言ってきやがるもんだから、待てができなくなっちまった❤ご主人が大好きすぎる駄犬を許してわん❤❤」


 ぺろぺろしたかと思ったら、すぐさま熊にガンつけ始めるゴライザ。変わり身が早すぎて心構えをする前にもろに威圧を浴びてしまって、胃の中が大混乱し始めた。気軽に人を失神させるほどの殺気を出すな。

 

 おれはできるだけゴライザの顔を見ないようにしながら、自分の中に芽生えた感情を整理できていないタズィがこれ以上深淵に浸かる前に記憶を消しておく。

 今日おれらとは会わなかった。ただ広場で愛犬と戯れていただけ。いいね?


「……う、あ?」


 念のためガンラにもかけておこう。無駄に警戒されて、熊が思い出したら面倒だ。


「よし記憶操作終了! このままずらかるよゴライザ!」

「おうとも❤じゃあご主人を抱えたままいくか❤二足歩行だけど、嫌なら這って駆けるぞ❤」

「このままでいいから!」


 リードをつないだ犬に抱かれながら、おれらは広場を後にする。お腹が減っていたんだけど、食事は別のところで取ることにしよう。


****


 結局あれからすぐゴライザの屋敷に戻ってきたおれは、ソファに座って豪勢な料理をふるまわれていた。お昼を食べるために広場に行ったということをゴライザはちゃんと覚えていて、帰ったとたんに厨房に指示を飛ばしてくれたのだ。

 ちなみに使用人たちにもちゃんと暗示はかけてある。ここはまだトリドスと一緒に住んでいるから、使用人たちも入り乱れているんだ。


 おかげで、まだ忠犬のままでいられると喜んだゴライザは、おれの太ももに頭をのせてくつろいでいる。いまだ全裸と首輪スタイルのまま、顎を乗せながらソファの上でゴロゴロしていた。

 これ、スープとかこぼしたら大変そうだな。熱さとかは感じないだろうけど、毛皮が汚れると申し訳ない。


「ご主人~❤❤なでなでして❤❤」

「ん……ほら」

「わふん❤❤はっはっはっ❤❤❤」


 おれの数倍はあろうかという体躯を誇る狂犬が、でれでれになって何度も体をこすりつけてくる。最近構ってなかった分のたまり方がえぐい。こいつが求めるのはあくまでおれなんだと痛感した。他の誰でも代用できないんだな。

 もしおれが元の世界に帰ったら、多分ずっと待ってそうだな。今なら忠犬ハチ公の話を泣きながら聞ける気がする。まあ帰る気なんてもうないけどさ。


「そういえば」ふわふわのパンを食べながら聞いてみる。「結局話って何だったの? 訓練してほしいってことらしいけど」

「あぁ?❤ただ俺の力を見せつけるために協力してほしいってだけだぜ❤どうにも俺は他の二人に比べるとなめられてるみてぇだからな❤❤」


 ゴライザをなめてる奴がいるとは思わなかったので、うっかりパンが喉に詰まりかけた。誰だそんな命知らず。


「……うぐぅ?!」

「ご主人?! 大丈夫か、背中叩いてやるからな!」

「いっだあぁ!!!」


 背中に走る衝撃で思わず叫んでしまった。異世界転移するときに味わったトラックの衝突より強かったぞ?!

 馬鹿力が過ぎる! 背骨が折れるかと思った。


「だけど、呼吸は楽になった。ありがとうゴライザ」

「当然のことをしたまでだ。ほら、水でも飲んどけよ」


 すっかり元に戻ったゴライザが肩を抱きながら水を渡してくれたので、ありがたく頂戴する。寄りかかってみると、本当におれより数倍でかいのだと実感する。厚みがまず常人とはかけ離れてるもん。

 元の世界に居たら百貫デブだと言われそうな体重だけど、このほとんどが筋肉なんだよなぁ。人類の極致みたいな体形してるわ。


「まさかゴライザをなめてる人がいるなんて思わなかったよ」

「案外多いぜ。ジェイルラルと比べて、俺を格下だと思ってやがる。さらにウィザロンまで来たとなりゃ、この国では俺なんて新米みてぇなもんなんだよ」

「そもそもその最強格の座に行ける人が何人いるんだよって話でさ……」


 三人しかいないうちの新参って、もはや価値観バグるぞ。


 まあ言いたいことはわかるけどね。ジェルの強さはけた違いで、国の中にはまだ『神風』を信奉する人がいるんだ。グリッジが政権を握っていた中でもジェルが隊長をやれていたのは、その人たちのおかげでもある。

 で、今度はその人たちがジェルと比べてゴライザをなめているわけか。


「それで、今度の合同演習で俺の力を見せつけてやりてえんだ。てめえらが妄信してるジェイルラルなんぞ俺の敵じゃねえぞってな!」

「なるほど、確かに今度の演習はかなり注目を集めてるってフォグが言ってたから、見せつけるにはちょうどいいのか」

「そういうことだ。ただ、まあ……ご主人にとってあいつが大事だっていうのも理解してるし、実際拳を競わせるわけじゃねえけど、俺のこと見下しているゴミ共の嘲笑をぶち抜いてやる」

「ゴライザは負けず嫌いだからなあ」


 だから傭兵街にいたころは独立派として息巻いていたのだ。ジェルに絶対勝つという意気込みは昔から変わっていない。

 それでも王宮での騒動の時には、自分の身を犠牲にしてまでジェルの洗脳を解除する視野の広さを見せてくれた。相当勝ちたかっただろうに、大局を優先して抑えてくれたのだ。


「……別に」ゴライザの顎がおれの頭に乗る。「あの頃とは勝ちてぇ理由が違うんだけどな」

「あれ、そうなんだ」

「昔の俺は全部が気に食わなかったからな。今はあいつに勝ったところで何も変わらねえってのは理解してる。だけど、それでも俺が勝つ」


 ゴライザがぐっとおれを引き寄せ、弾力のいい体に埋める。


「俺が……俺こそが、ご主人の一番だって知らしめないと気がすまねえんだ。他のどんな奴より、俺こそが強くて頼りがいのあるわんちゃんだって、認めてもらいてえんだ」

「……そっか」


 独占欲の強い忠犬だからなぁ。おれがジェル最強だと思ってるのが気に食わないんだ。いつになってもやっぱり根っこは変わらない。負けず嫌いの狂犬だ。


 でも、そういうところを含めてゴライザのことは嫌いじゃない。

 向上心があるってことだからね。それが高じて派閥を持ったって考えると、普通にすごいことなんだよなぁ。


「俺はご主人のわんちゃんだから、演習とはいえ勝とうなんておこがましい限りだ。だからせめて、いい戦いがしたい。少なくとも周囲に最強の座を一考させる程度には、爪痕を残してやらねえと気がすまねえんだ」

「それで訓練したいってことか。それはいいけど、別に勝ってもいいからね。おれは気にしないよ。そもそも合同演習って勝ち負けがあるのかすら知らなかったし」

「それはあのくそ猫が決めたことだ。ご主人の所は人数が少ないから、代表を戦わせてはどうかってな……はんっ、腹の中まで腐ってやがる」


 確かに、今のリブラは元帥という立場だからそういうことにも口出しできる。

 だけどどうしてゴライザは怒っているのだろうか。おれの所の人数が少ないのは本当で、その内容も妥当な気がするけど。


「あいつは俺がご主人に勝てないって知ってるんだよ。一応あのくそ猫もご主人の犬だからな。だからこの演習は俺が無様に負けるさまを想定して組まれてるんだ」

「リブラからしたらいやがらせ程度の意味しかなさそうだけど……」

「だが、俺からしたらジェイルラルと名声の差ができることになる。結局『神風』の前には『鉄塊拳』は勝てねえってなるわけだ。……あのくそ猫、一度本気で頭蓋骨かち割ってやろうか」


 待って待って待って、殺気抑えて! 牙をむいてうなると本当に怖いんだから!

 食べたもの吐く!


「うおっ! ごめんなご主人……」


 でかい手が背中を撫でてくれて何とか事なきを得た。危なかった。


「……あれ、その話だとまるで大将戦みたいなのがあっておれが出る前提な気がするけど」

「まるでどころかその通りなんだが……ひょっとして、ご主人はまだ概要を聞いてねえのか?」


 フォグにぶん投げてて全く知らなかったんだが!

 そう言えば、さっき確認しろって言われてたわ!


「無理! ゴライザと戦うなんて絶対無理!」

「俺だってごめんだね。だけど、こちらが取り下げたとあっちゃ何を言われるか分かったもんじゃねえ。敵前逃亡なんて馬鹿にされちまったら、そいつの顔面を血まみれにしちまうかもな。だからご主人は適当に戦ってくれりゃいい。俺が適当なところで負けるからよ」

「じゃあおれが取り消す! 別の人をあてがうから!」

「……本当か?」


 ゴライザがびっくりした顔をしているけど、なんでおれらが戦う前提なんだよ。

 無理に決まってるでしょ。ぶん殴るだけでスキル効果全除去する奴だぞ! 元から最強だったのにおれのせいでさらに強くなった化け物だぞ! 

 そりゃ確かにゴライザが本気で戦うわけはないと思うけど、殺気一つでおれは降参するね。間違いない。


 そんな無様なところを見せたくはないから辞退一択。これで確定。今度絶対フォグに言っておかないと……。


「ご主人……俺のために……!」


 なんかゴライザが感極まってるけど、完全に自衛のためでしかないからね?!

 おれが無様さらしたなんてジェルにばれたくないだけ!


「ご主人~~~~❤❤❤大好きいいぃぃ~~~~❤❤❤❤」

「聞いてな……ぶぎゃ!」


 そして襲い掛かる『鉄塊拳』全力の抱擁。食べたもの出るっ!

 おれの太ももよりでかい腕と巨木より太い体幹のプレスに、吐かないようにするので必死だった。毛並みは整えているおかげでふわふわなんだけど、それを押しつぶす筋肉量が台無しにしている。

 鋼の肉体って言うじゃん? あれまじだから。硬すぎて怖いくらいだもん。


「ご主人ご主人ご主人~~~~❤❤やっぱり俺のご主人は世界で一番最高だぜぇ❤❤ご主人みたいな主を持てて、俺はぁ❤世界一幸せなわんちゃんだあああぁぁ❤❤」


 さらに顔中舐めまわされ、全力で嬉しさを表現してくる。急に駄犬になったゴライザが覆いかぶさってくるから、体重がもろに腹にかかった。だから死ぬって。


「ご主人❤」


 それから舌入りディープキスで呼吸も塞がれるコンボ。完全にむさぼられてる。


「ジュプッ❤んちゅぅ❤ご主人っ❤れろっ❤好きぃ❤んっ❤んんむぅ~~❤❤❤」


 舌がおれの中で暴れまわって、呼気すら奪われている。とっさのことでおれの脳は混乱してて、スキルを発動することすらできなかった。


「ありがとうなごすじんっ❤❤ジュプジュプゥ❤俺ぇ❤ぜってぇ❤❤チュウゥ❤世界一のわんちゃんになるからよぉ❤❤ご主人の❤んふぅ❤意志は❤無駄に❤しねえぇ❤❤❤」


 しゃべるかキスするかどっちかにしてくれ! たまに牙が唇に当たるんだよ! 勢いが強すぎる!


 ドーム型の腹肉が何度も押し当てられているから、絶対腰がへこへこしてる。さっき出したばかりなのに、もう次を求めているのがすぐに分かった。

 腕力で勝てるわけがないのでされるがまま口を犯され続け、ようやく解放されたときには、おれらの顔は唾液でべたべたになっていた。


「す、すまねえご主人❤つい興奮しちまって……❤」


 飛び掛かった自覚はあるのか、耳を伏せた駄犬が顔を拭いてくれた。自分を後回しにしてるせいで口周りに泡がついていて、駄犬感が倍増している。

 ただの自衛のためなので、そこまで喜ばなくてもいいのに……。


「ご主人にとっても今回の演習が大事なのによ、俺のために譲ってくれたんだ。嬉しくないわけねえだろ」

「そうみたいなんだけどさ、いまだに政治闘争とかピンと来なくて」


 みんなをスケベスキルで最強にする。

 その目標は揺らがない。だけど、だからと言って地位が欲しいかと聞かれたら首を横に振る。

 おれはただ、大好きなみんなが無事でいてほしいだけだから。彼らの上に立ちたいわけじゃないんだ。


「だから、ゴライザが元気でいてくれれば、おれはそれでいいんだ」

「……」

「はぁ……我ながら草食系で、ゴライザからすると情けない奴に見えるよねぇ」


 欲しいものをすべて己の実力でつかみ取った『鉄塊拳』だ。おれみたいな軟弱者、普通なら好かれるわけもない。こうして思うと、いくら『忠犬』とはいえ、よくおれのことを主だと仰いでくれるよね。


「……いや」


 大きな犬はおれから目を逸らす。いつも真っすぐなゴライザにしては珍しい。


「ご主人は立派だよ。間違いねえ。俺が保証する」

「うん? そうかな」


 完全に忠犬フィルターがかかってるな。おれが立派なわけないだろ。

 ゴライザから教えてもらわなかったら、演習の内容も知らなかったくらいだ。


「ご主人」ゴライザが顔を擦りつけながら。「誰が何と言おうと、俺のご主人は最高だ。ご主人以外に忠義を尽くすつもりもねえ。だから、この忠犬わんちゃんをもーっと可愛がってくれ❤❤」

「わかったよ」


 分厚い体は熱く重い。くっついているだけでその熱が興奮に置換していきそうになる。ここで盛ってもいいけれど、そろそろ帰らないとフォグになんて言われるか。

 別に今日は何か予定があるわけじゃないからそこまで厳密じゃないし、そもそもおれの仕事はエロだから、遅くなっても構わない。


 頭をなでなでしてやると、尻尾がやばい速度で揺れる。残像が見えるくらいって怖い。


「せっかくご主人が譲ってくれた機会だ❤俺が最強だってことを、国中に轟かせてやる❤❤」

「頑張って。訓練に関してはおれよりフォグに聞いたほうがいいだろうし、また今度話し合おっか」

「わかったワン❤ご主人ご主じーん❤❤これで話したいことは以上だ❤ ❤だから、今日はこれから俺のことを――」


 などと言いながらまたも巨体がおれを埋め始めた時、ゴライザが何かに気づいたようだ。

 忠犬から狂犬へと戻った視線は鋭く、おれには感知できないものをつかみ取る。


「……ちっ、帰ってきやがったか。もっと働いてくりゃいいのによ」

「ああ、トリドスが帰ってきたんだ」


 ここから玄関までどのくらいあると思ってるんだ。いったい何をしたらそんなセンサーを持てるのか不思議すぎる。


 部外者がいるとなれば、忠犬の時間は終わりだ。人一倍プライドが高いゴライザはすぐさま新しい制服に袖を通していく。この前全裸に首輪を見られたばかりなのに、一応気にするんだ。


 きりりと引き締まった顔が鋭いせいで、表情を消しているだけなのに不機嫌面に見えてしまう。さっきまでの落差のせいで余計にそう思う。


「これからご主人におマンコもおちんぽもいい子いい子してもらうつもりだってのによぉ……空気の読めねえ奴だぜ」


 着替えも済めばそこにいるのは凛々しい『鉄塊拳』だ。最強の一角としてたたずむ、一騎当千のスキルホルダー。

 おれの隣に座って肩を引き寄せれば、はたから見ればゴライザがはべらせているかのよう。本人の尊大な態度やでかすぎる体形と合わせて、似合いすぎている。


「ご主人、ごめんな。俺ばかりが気持ちいい思いをしちまって。今度はきっと俺がご主人を気持ち良くしてやるからな」


 確かにおれは出してないからなぁ。訓練でたくさんしてきたとはいえ、ゴライザを可愛がってはいないんだ。でも、まあいいかな。


「ゴライザが楽しんでくれればいいや。今まで放置してたこっちが悪いしね」

「ご主人……❤❤」


 感極まってまた抱きつぶされそうになったので、今のうちに抑えておこう。一挙一動に感動されたらこっちの身が持たないから!


 こわもてを維持しながらもどこか嬉しそうな大型犬は可愛らしい。確かに攻撃的なところもあるけれど、基本的には理性的な忠犬だ。

 おれは昔のゴライザを知らないけれど、理性的な面を知っているから、なんで狂犬なんて呼ばれてるのかわからない。戦闘スタイルが荒々しいからかな。


 この調子だと狂犬と呼ばれることはなくなるだろうなー。

 なんて思いながら、おれはゴライザの丸々とした腹に抱き着いて、トリドスを待つことにした。


****


 ゴライザという男は砂漠のような存在だ。

 そう言ったのは誰だったかゴライザは覚えていない。


 ただ、その通りだなと思ったことだけは覚えていた。


 傭兵街にいたころのゴライザは満たされない飢えに悩まされ続け、いらだちのままに拳を振るっていた。

 殴っても、殴っても、殴っても満たされない。

 食べても、食べても、食べても満たされない。


 天才と評される能力は彼を強くはしたが、満たしてはくれなかった。むしろ、誰と戦っても満たされることはない、空虚さを与えていた。


 派閥のトップに上り詰めたのはただ単に、地位を得れば飢えが満ちるだろうかと思ったからで、それ以上の理由はない。

 そして、地位を得たところで彼は何ひとつとして満足しなかった。


 そんな彼が唯一満たされたのは、自分より強い存在と戦う時だけ。

 だから手当たり次第に殴り続け……傭兵街で最強と言われ、相手が消えた。


 だからこそ『狂犬』と人は言う。

 自暴自棄な戦いを繰り返すくせに、誰よりも戦果を挙げる狂犬と。


 次に、地位を手に入れた彼は他の娯楽にも手を出した。

 酒や女、果てには薬まで。娯楽に属するものすべてを試し、むさぼりつくした。


 だが、賭博は動体視力と観察眼の良さから勝ちまくり。

 酒や薬は状態異常耐性が高すぎて効きやしない。

 身体能力が化け物ゆえに女を抱くのも一苦労だった。


 結果として彼の飢えを満たすものは、何一つとして存在しなかった。ただ積み上げた地位と金だけが彼の手元に残り、一層いらだちを募らせるだけだった。

 なぜ自分が飢えているのか、それすらもわからないことが苦痛でたまらなかった。生まれ持ったものだろうと言われたところで、納得できるわけがない。


 彼に残ったのは拳での楽しみだけであり、傭兵街を独立させようとしたのも、そうすればもっと強い敵と戦えるからでしかない。そのためにどうでもいい利益を語り、派閥として立ち続けた。

 彼は自らを満たすためなら何でもやるつもりだった。たとえそれが法に背こうとも構わない。ゴライザという男は、自分こそが世界の中心であると信じていた。


 狂犬と評されていようとも、彼が大局を見る目を持っているのは事実。このまま進めば、ゴライザは傭兵街を掌握していただろう。


 ――――『彼』に出会ったのはそんなときだった。


「……まさか君がそこまでおとなしくなるなんてね。私もまったく思わなかったよ」


 広い食堂にトリドスの声が響く。牛はマナーよく切った肉を口に運びながら、向いに座ったゴライザを眺めた。


「はんっ」くだらなさそうに犬が吐き捨て。「てめぇに言われたくはねえな。ギルドを裏切ってこっちに付いた不忠な牛がよ」

「そう言われると痛いな。だが、後悔はないよ。今の仕事の方が性に合っている。私はもともと、新人の育成がしたくてギルドに入ったのだからね」


 鬼のいる軍勢は必ず勝利するとまで言わしめた牛、『戦勝鬼』トリドスは巨大な角に似合わない柔らかな笑みを浮かべ、ナフキンで口元をぬぐう。

 元はゴライザと同じく冒険者上がりだったが、ギルド長という立場が彼にマナーを染みこませたようだ。


 遅くなってはジェイルラルが心配するからと、異世界人は帰った。ゴライザとしては泊まっていってほしかったのだが、牛の手前駄犬として鳴くのもはばかられた。


「ちっ」それが不機嫌な態度に直結して。「俺らが傭兵街にいたころ、てめぇの育成した新人どもはこっちに全く流れてこなかったじゃねえか」

「それは当然だろう。私はもともと育成した冒険者を向こうの国、ホスタットに流すことを条件にギルド長の立場をもらったんだ。それに、独立派だった君に戦力を渡すほど耄碌してないぞ」


 他者の育成に心血を注ぐトリドスは傭兵街では名の知れた教育者だった。冒険者の育成だけでなく、カルハバと協力して教育水準を引き上げる活動をしていた。

 その性質が異世界人によって引き出されたことで包容力が強まり、今の性癖になったのだろう。そういう意味では忠犬となったゴライザと大して変わらない。

 ただ、ゴライザの場合、そのような性質があることに本人すらも気づいていなかった、という話である。


「私は今の君の方が好ましいよ。昔は本当にただの狂犬だったからな」

「はあ、それは別に否定しねえ。あのころに比べりゃ、ちったぁ考えをまとめるようになった」

「人はそれを大人になったというのだろうね」

「知ったような口を利くんじゃねえ」


 一世代前に伝説を作ったトリドスはゴライザより年上だ。しみじみ言われてしまうと、ゴライザの中にくすぶっている反骨精神が煩わしそうにうなるのも当然だった。

 ゴライザもマナーは特に悪いわけではない。派閥のトップに位置するために、たいていのことは習得済みだ。


 有り余る才覚をすべて自分のために使う。昔の狂犬はそういう男だった。


「そういえば、件の演習についてだが」トリドスがナフキンで口を拭きながら。「うちの隊長が辞退したため、君の相手は私が勤めることになった」


 帰り際に異世界人が全力で、自分は出ない! と念押ししていったおかげか、トリドスは今後のことを憂いなく口にすることができる。


「みたいだな、勝ちの目が出てきてありがてえ話だ」

「もとよりフォグ君も彼が直接出るとは思っていなかったからね。私かフォグ君のどちらが相手をするかで話し合っていたのだが、今回は私が引き受けることにしたよ。新参として力量を示さねばならないのは、私も同じだからね」

「まあそうだろうな。てめぇは教育者でもあり、バーサーカーでもあるからな。ご主人からもらった力を試したくてうずうずしてんだろ」

「それもあるが……」


 トリドスは手に持ったグラスを揺らし、ワインを波打たせる。もったいぶったように口の中で言葉をためながらも、弧を描く瞳だけはじっとゴライザに向けられていた。


「あの部隊で働いて一番に感じたことは、誰もが出世欲というものに薄いということだ」

「だろうな。『華炎』のように変わったやつもいるが、大体はジェイルラルの配下だったやつらだ。隊長の気風を受け継いでるんだろ。フォグのやつは隊長を蹴っている。そうでなければ編成に時間を取られて、こんなにすんなりと俺が隊長にはなれなかったしな」

「異世界人の彼に至っては、私たちを自分より強くしようとしている。スキルの有用性や希少性を、当然のように分け与えてくれた」


 それが彼の戦略だとはいえ、根本にはお人好しというのがある。そのことについて、両者の見解は一致していた。


「だから、今回の演習で自らの有用性を示すことがどれだけ大事かわかっていないんだ。フォグ君の方はわかっているだろうが、組織としての調和を優先している節がある」

「それで責任を理解しているお前が出るってわけか。まあいいんじゃねえか。政権をとったとはいえ、コハクの立場は不安定。ここで軍部の力を見せることで反抗する意欲をそいでおけば、俺としても楽でいい」


 異世界人の部隊だけでなく、ジェルが隊長を務める『竜の爪』も基本的には政治に疎い。今はリブラが元帥になったこともあって、生半可な手段でちゃちゃを入れてくる手合いも減っているが、今後何があるのかわからないのだ。

 王家直属の二部隊がこれでは、確かにトリドスも心配になるというもの。明らかに、彼らの部隊は政治的弱点と言える。


 そういう意味でもやはり、この二人は似た者同士だ。

 派閥を率いてけん制し合っていたため、互いの力量をある程度認めている。


「もう少し落ち着いたら、カルハバを城に呼ぼうと思っているんだ。今は傭兵街の教育機関や魔術ギルドの運営に忙しいが、彼ならここでもうまくやっていけるはずだ」

「……てめえ、軍部だけじゃなく政治中枢にも影響力を出すつもりだな」

「しょうがないだろう、私の可愛い子たちは政治が苦手なのだから」


 異世界人が率いる部隊だけでなく、ヤードがいる『竜の爪』もトリドスにとっては庇護対象だ。雌としての自覚と包容力が膨らんだ今の彼は、自分のためではなく彼らのために動いている。


 黒牛はグラスの中でワインをくゆらせ、ゆっくりと口に含んでいく。傭兵街でも十分な地位にいたトリドスだが、やはり王都のワインは味が違うと舌鼓を打つ。


「要するに、何が言いたいのかというと……」


 空になったグラスを置いて、牛の口がにやりと笑う。

 その顔は以前の『戦勝鬼』そのものだ。


「発言力を得るために、最強とうたわれる君を倒そうと思っているから、そのつもりで頼むよ」

「……はっ」


 あからさまな宣戦布告。傭兵街では誰も逆らわない頂点だった彼が求めていた、血沸き肉躍る戦いの誘いだった。

 忠犬となってから久しく忘れていたこの昂ぶりを前に、ゴライザは牙をむいて愉悦を表現する。自然と殺気があふれ出し、控えていた執事の肩が震えるほど。

 空気すら怯える気概をまとい、巨体は剣呑に笑っていた。


「最強の座を俺に奪われたてめえが、性懲りもなく挑んでくるってのかよ。タイマン向けのスキルじゃねえくせに、わざわざ?」

「私も成長している。決して一方的な試合にはならないと約束しよう」

「いいぜ! てめえがどこまで食らいつけるか、楽しみにしてやる!」


 トリドスがゴライザの知っているままだとしたら、勝負になることはない。どんな小手先の手段を弄しようと、拳でスキルのすべてを黙らせれば済む話なのだから。

 だが、それでもこの牛は勝算をもっている。元最強という肩書では満足できず、狂犬を組み敷こうとしていた。


「うちの隊長が言っていたのだがね、三人より四人の方が収まりがいいらしい。なんだったか……四天王、だとか」

「はんっ、ご主人がどういう意図で言ったのかは知らねえが、そもそも最強は俺一人で十分なんだよ」

「だが彼の発言力は無視できるものではない。最強と評される武人の四人目を決めるとなれば、それはもう荒れるだろうね」


 ただでさえ今のコートリル王国には過去最大人数の二つ名持ちがいるのだ。その中であと一人を決めることは至難の業だろう。


「つまり、だ、てめえはその四人目になることで発言権を増そうとしてて、そのために俺を倒したいってことだ」


 異世界人の四天王という趣旨をコハクあたりに聞かせれば、あっという間に広がるだろう。その枠づくりと、そしてそこに収まるためにトリドスが動いているのだと、ゴライザは気づいた。


「なに、私も元最強として、その名が持つ影響力がどれだけすごいかは知っているからね。四席目があるのなら、ぜひとも座りたいと思っているだけだよ」

「つくづく油断ならねえ奴だな。だが、てめぇに務まるのかよ」

「当然。これでも『戦勝鬼』なのでね」


 現時点で『混濁した海』の名をもらったヤードを筆頭に、最強の座に近い雄はかなりの数に上るのだ。そんな彼らを差し押さえて、自分こそが最強だと牛は言ってのける。


 場所が変わったところで、人の営みは変わらない。

 誰もが強くなろうとし、最強という肩書を欲している。


 それに気づいた時、ゴライザの胸には奮い立つほどの歓喜が沸き上がってきた。

 彼らのすべてを下し、自らこそトップだと証明できた時。


(ご主人は喜んでくれるだろうか……)


 強い相手と戦いたいという感情はなくなったわけではない。

 だが、それ以上に大好きな彼に喜んでほしいという感情が強かった。自分こそが彼の一番であり、最も頼れる存在なのだと知らしめる。


(んで、最終的にはジェイルラルなんかより俺と一緒に暮らすんだ。そしたら毎日散歩してもらって、いい子いい子してもらって……俺がご主人を守る)


 金も地位も名誉もいらない。彼が欲していたのは、ただ自分を満たしてくれる小さな手。それだけでよかった。

 気づいてしまえば、なんてことないくらい単純で。だからこそずっと気づくことなく、渇望だけを持て余してしまっていた。


 最強の四席目を決める。それはゴライザにとって好都合でしかない。

 自分こそ最も強いのだと知らしめるいい機会だと、狂犬は肉に食らいつくのだった。


****


 なんとかゴライザの相手をすることは避けられた。

 危うくみんなの前で無様をさらすところだったよ。ジェルにばれたら死にたくなっていたはず。


 演習はおれの想像以上に人気で、広めの演武場には人がひしめき合っていた。

 耳を澄ませてみれば、どちらが勝つのか非合法の賭けすら行われているようで、モウダンがしれっと自軍の勝利につぎ込んでいた。違法じゃないんだ……。

 ちなみに、おれが出ないと知った時は泣きながら出てくれと縋り付いて来たけど、自業自得だとフォグに一喝された。かわいそう。


 周りにはヤードやジェルといった『竜の爪』のメンバーだけでなく、全く知らない顔もたくさんいる。ファンダルもランドも、グランドもいるな。本当にみんなが注目してたんだ……出なくてよかったぁ。


「それまでっ!」


 審判役の人が声を上げ、試合が終わる。

 さすがにゴライザの部下である竜のアリギラドや虎のスレイスはおれによってそこまで強化されていないので、負けるのもしょうがないかな。元の実力で考えても、こっちはモウダンとか『華炎』がいるので……。

 というかうちらが強すぎるだけなので、気にしないでほしい。


「これで今のところ全勝か。まあ想像通りだな」


 自陣の席で隣に座っているフォグが話しかけてきた。


「フォグは出なくてよかったの?」

「ジェル様の前で『乳霧』は使いたくねえ……」

「ああ……」

「それに、これでコハク王子の提唱する育成が問題ないことが実証されたから、さすがにおれまで出るとやりすぎなくらいだ。あくまでおれの目的は、コハク王子についている軍部がどれほど強いかを見せつけることだからな」


 フォグは個人の名声にはあまり興味がないタイプだから、これでいいと納得している。そういうところも真面目委員長だと思う。そうじゃなかったら隊長職を蹴ってまで来てくれなかっただろう。


 ただ前にゴライザから話を聞いた感じ、ここで力量を見せつけておくのって結構大事みたいだけど。


「まあそうだろうな」あっさりと熊は同意する。「もともと軍部が力を競うという行事自体がなかったんだ。こうして互いの力量を把握させて見せつけることで、畏怖を手に入れることだってできるだろう」

「ああ、今までなかったんだ。なんで?」

「ジェル様という最強がいるというのと、あのくそ親父が軍部の結託を防ぐために交流を妨害してたからだな」

「本当……君のお父さんの名前ってちょいちょい見るよね……」

「あんなのでも元帥だったからな」


 やっぱりゴライザの言う通り、ここで勝つことが名声を高めることになりそうだな。


「フォグも出ればよかったのに。結構強くなったじゃん」

「それはあくまでおまえのおかげだからな。まだスキルをものにできてないところもある。確かにおれはジェル様が目標だから、いつかは最強の座が欲しいとは思う。が、それは今じゃねえ。副隊長が最強の座をもらっても、めんどくさいだけだ」


 あくまでおれを立ててくれているというわけだ。真面目過ぎる。

 だけどおれは気にしないというのに、フォグは全体を見すぎている気もするな。せっかくグリッジから自由になったんだから、もっと好きにしていいのに。


「……? これでも十分好きにしているつもりだぞ」

「うーん、真面目。君がいいならいいけどさ。でもいくらフォグがおれの顔を立ててくれたところで、トリドスはそう思ってなさそうだけどね」

「だな。あいつも派閥を率いていた猛者だ。ここでの戦いが注目を集めていることの意味を、しっかりと理解している。少なくともゴライザらと肩を並べたいんだろう」

「そうなると最強が四人。四天王ねえ……」


 試合に向かう前、トリドスはしきりにそれを気にしていた。せっかく二つ名持ちが多いのだから、正式にそう言う名称を作ってもいいかもしれない、と。

 やっぱりいくつになっても男の子的なわくわく感ってあるんだな。


「……ことはそう単純じゃないとは思うが、そういう面があるのは否定しないな」

「やっぱりフォグも欲しい?」

「言っただろ、いつかは最強の座に就きたいって」

「そうだったね。フォグならすぐいけるよ」

「お前がそう言うと、本当にすぐな気がするな」

 

 などとだべっているうちに、最後の試合がやってきた。

 ゴライザ対トリドス。傭兵街の最強と元最強が競うとあって、注目も一入だった。


 黒い軍服を身に着けた牛と、赤い軍服を身に着けた犬。

 フォグが引き継ぐはずだった『華炎』の部隊を引き継いだゴライザは、いつになく殺気立っているように見えた。


 正直、二人の手の内をおれは知り尽くしている。だけどどちらが勝つかと聞かれたら、わからないと答えるだろう。

 トリドスも強気になるのはわかるからね。タイマンとか苦手だったのに、最近克服したからなぁ。おかげでマジで隙が無い化け物が誕生したと思う。


「お手柔らかに頼むよ」トリドスが微笑んで。

「俺はただぶっ飛ばすだけだ」ゴライザが牙をむく。


 両者気合十分で、離れて見ているおれにも殺気がびんびん突き刺さる。近づいたら吐くね、間違いなく。隣でフォグがそっと袋を準備しているけれど、できるなら吐かないようにしたいよ。


 これだけ人がいるのに、沈黙が重い。みんな期待してるんだ。彼らの戦いがどれほどすごいかを。

 おれだってそう。ゴライザもトリドスも好きだからどちらも勝ってほしいけど、勝者は一人しか生まれない。


 そして審判からの合図が放たれて、本日一番の大勝負が、ついに幕を開けた。


【続きは来月の支援者限定公開となります】

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POSTEDNov 28, 2023
ARCHIVEDJun 10, 2026