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【全体公開版】ヒーローたちが宇宙人からママナール光線を受けてママになる話

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「オデと結婚を前提にお付き合いしてください!」


 なんて言われた大柄な獅子の男は困ったように眉をひそめた。

 それでも指輪を差し出す緑色の男は目を硬くつむったままで、迷惑そうな表情には気づいていない。返事をしなければ反応しないだろうということがわかり、獅子は困惑を吐き出しながらつぶやいた。


「はあ、顔を上げてくれ。そもそも、こんなところで話す内容じゃないだろうが」


 ヒーローたちが集う食堂は昼過ぎだというのに賑わいを見せており、いくつかの好奇の視線が彼らに降り注いでいた。だが、それ以外は興味をそそられていない、つまり日常として受け流している視線だ。


 緑の異星人――ドードドッド星人たちが来てから、ヒーロー本部にとってこれが日常となっているのは事実だった。


「そ、そうなのか……? 給料三か月分とかいう石で作った指輪を渡してプロポーズをするというのが、この星の流儀だと聞いたんだが……」

「いつの話だ。給料三か月分は石の名前じゃない。それは何の石だ」

「ダイヤモンドの別名らしかったので、こう……炭素を圧縮して作ってみたんだ」

「普通に人工ダイヤだった……」


 まだ到着してから日が浅い彼らの努力は認めるが、獅子のヒーローことカリガラタヴァにとって受け入れられる話ではない。彼には結婚などしている暇はないのだ。

 きれいな黄金の毛皮はつややかで、凛々しく太い眉に首どころか鎖骨まで覆うほど豊かなたてがみは明るい茶色をしている。黒を基調としたスーツ越しにでもわかる隆々とした肉体は日ごろの成果が実った証であり、分厚い筋肉の塊で構成されていた。


「何度も言うが、俺はまだヒーローを辞めるつもりはない。子作りをしたいなら、別のやつを当たってくれ」

「だが、オデはお前が好きなんだ。お前ならきっと素晴らしい子どもを産んでくれると本能がささやくんだ。だから頼む、オデと結婚して、実家の両親に挨拶してくれ!」

「お前の実家、何光年先にあるんだよ!」


 ドードドッド星は太陽系の外にあると聞く。行き帰りだけでどのくらいの時間がかかるのか、カリガラタヴァにはわからない。


「問題ない。ワープを使えば一日もかからないはずだ。ハネムーンだと思って……」

「そもそも結婚する気はないんだ。いい加減あきらめてくれないか」


 カリガラタヴァを追いかけまわすドードドッド星人、ドリスはしょぼんと肩を落として向かいの席に座った。帰れよ、と獅子は内心で塩をまいた。


 ドリスは全身緑色が目立つ巨漢で、ゲーム好きな同僚がオークのような見た目だと評していたことを思い出す。獅子に匹敵する上背に脂肪混じりの分厚い体。言われてカリガラタヴァが調べてみれば、確かにと膝を打つことだろう。

 彼らはこの星より圧倒的に進んだ文明を持つ異星人であり、今はまだ一般人への情報規制がされている段階だ。


 そも、事の起こりは半年前にさかのぼる。

 ヒーロー本部に宇宙から通信が届いたのだ。


 そして、彼らは自らをドードドッド星人だと名乗り、

・他人の体を孕ませることでしか繁殖できないこと

・大昔植民地を作って惑星を管理した歴史を持つため他宇宙人から忌み嫌われていること

・そのため絶滅の危機に瀕していて助けてほしいこと

・見返りにヒーローたちを強化するための技術を提供すること

と明け透けに泣きついてきた。


 侵略行為は銀河基準法とかいうものによって禁止されているため、向こうの善意を信じるしかないのだと、ドードドッド星人の代表は言っていたらしい。それを破れば、今度こそドードドッド星人たちは根絶の憂き目にあうだろうとも。


 それを受けたヒーロー本部の意向は婚活を認めるというものだった。婚活、今カリガラタヴァが頭を悩ませているものがそれだ。互いの同意があるというのなら、ヒーロー本部は受け入れるという意向だ。


 せっかくの友好的異星人を無下にするわけにもいかないというのは、獅子も理解している。見返りとして与えられる技術によって、ヒーロー活動の功績が著しく上がったことも認めざるを得ない。


「だが……何故俺なんだ。もっと見目の良いヒーローならごまんといるだろうし、可愛い職員もいるだろうが」

「オデらは他人を孕ませることで増える種族だ。他星人の出産には体力が必要とされるから、頑丈なほどいい嫁というのがオデらの価値観なんだ。雄でも孕ませることができるから、できれば強い雄がいい」

「なるほど、それでわざわざヒーロー本部に連絡してきたのか……」

「そう! ここは本当に素晴らしい場所だ! 今日びここまでストイックに体を鍛えている種族なんてなかなかいないんだど! 文明が進めば進むほど怠惰になる種族がほとんどの中、ヒーローたちは他人のためにここまで鍛え上げている! オデは一目見た瞬間、絶対ヒーローを嫁にすると決めたんだ!」

「そうかい……はあ」


 何を言っても無駄だと悟ったカリガラタヴァは、オーク似のドリスに向けてこれ見よがしにため息をぶつけた。もっとも、まだこの星の文化に慣れていないドリスが気づくことはなかったが。


「だったらまずはデートからどうだ! 互いを知ることから始めるんだど!」

「お前らはまだ外に姿を見せていい段階じゃないだろうが。この星で滞在が許されているのも、この本部の中だけだ」


 友好的だからと、おいそれと信用する本部ではない。こうして本部内の自由行動を認めているのは、危険度測定という意味合いもある。

 実のところ、ドリスたちの行動は逐一チェックされているのだ。


「オデらの宇宙船は相当広いから心配するな。新しいものがたくさんある。それに、この星の住民の目を欺くくらいなら、造作もないだど」

「そうだったな、こいつらの技術力は俺らの数百年先だ。だけど、俺は忙しいんだ。お前らのせいで……いやなんでもない」


 ドードドッド星人たちの婚活が始まってから、ヒーローたちの時間が無くなっている。それはデートだけではなく、こうして付きまとわれていることからも明白だ。

 最近では同期のヒーローが、ドードドッド星人と結婚するという話も出ている。おかげで現場は慢性的な人手不足であり、カリガラタヴァが気を抜ける環境ではなくなっている。


「ともかく、俺は忙しいんだ。ヒーローの数が足りてないから、俺が抜けるわけにはいかないんだよ」


 カリガラタヴァはヒーローの中でも優秀であり、責任も重い立場である。愛だの恋だのにうつつを抜かす予定はなく、今後もない。


「だが、オデらの提供した監視技術のおかげで、十分まわせているはずだろう?」

「それはそうだが、万が一がある。ヒーローはいついかなる時でも、誰かのために構えていないといけないんだ」

「そういうところ本当に好きだ……はあ、オデの嫁がかっこよすぎる……」

「お前の嫁じゃねえ!」


 テーブルに肘をついて顎を乗せたドリスが熱い視線を注ぐ。緑色の禿げ頭のうっとりとした視線を受けて、獅子は尻尾の先まで寒気を走らせた。


 ドードドッド星人たちを一般人に明かすのはリスクが伴うため、地球の文化に慣れてからの方が良いと通達がされている。そのため、こうして現地民とのコミュニケーションもかねての婚活を推奨していると、獅子もわかっていた。

 実際ドリスは最初会ったころに比べて理解し始めているし、今日にいたってはプロポーズという文化を実践してきた。


 その調子で無下にされていることに気づいてほしい。そうカリガラタヴァが頭を押さえていると、目の前に小さな封筒が置かれた。


「これは?」

「オデの友人ドーランとお前の友人シャランティスの結婚式の招待状だ。お前、行かないって返事を出したそうだな。シャランティスが悲しがっているってドーランから教えられたぞ」

「…………」


 余計なことを。なんて言いそうになる口を抑えつけ、獅子はじろりとドリスをにらみつけた。同期にしてライバル、そして親友であるヒーローの結婚式など見たくもない。その感情が眼光に鋭さを与えている。


 白虎のヒーローシャランティスは獅子にとって目標であり相棒であった。力強く悪を打ち砕く心優しい男。同期として付き合いも長く、二人で世界を守っていこうと青臭い理念を語り合ったことすらある。

 そのシャランティスが結婚する。そして、妊娠したら産休を取るのだという。


「確かにオデらみてえな異星人と結婚するって言われて……その、受け入れられねえのはわかる……でもな、ドーランは良い奴だし、シャランティスのことを絶対大事にするはずなんだど。オデらが侵略者だったのは本当に遠い昔の話で、今は番を大事にする必要性を理解してる。だから、顔だけでも見せてやってくれねえかな……」


 なんて諭されてしまえば、自分が駄々をこねているだけだと突き付けられた気分にさせられる。獅子は頭を振って冷静さを取り戻そうと努めた後、何とか大人らしい言葉を絞り出す。


「わかった。参加しよう」

「本当か!」

「ああ。世話をかける」

「なんのこれしき! これを機にお前も結婚っていいなと思ってもらえればオデも万々歳だど!」

「どう考えてもそっちが目的だろ!」


 だが一度行くと言った手前、発言を翻すのもはばかられた。獅子は苦虫をかみつぶしたような顔で食器をもって立ち上がり、不思議そうな目をするドリスに背中を向けた。


「とにかく、今の俺は仕事が優先だ。種の存亡がかかっていることには同情するが、俺でなくてもいいはずだ。他を当たってくれ、それでは」


 昼休憩を想定時間よりオーバーしている。現場ではカリガラタヴァを待つ新人たちが暇を持て余していることだろう。それを思えば、こんなところで時間を浪費するのはばかげている。

 責任感が人一倍ある獅子は後進を育て終えるまで、ヒーローを辞するつもりは毛頭なかった。拒絶を示す硬い音が、獅子が歩くたびに奏でられていく。


 そして、振り返った獅子の鋭い一瞥をもらったドリスは、遠ざかる姿が消えるまで眺めてからテーブルに顔を伏せた。肩を震わせる仕草はまさに恋する乙女のそれでしかなく、周囲の職員が不憫そうな目や奇異の目を注いでいく。


「ああぁっはあぁ~。やっぱかっこいいなぁ。この広い宇宙で、まさかこんな素晴らしい人がいるなんて思わなかったど」


 こわもての顔をでれでれに溶かし、燦然と輝く獅子の相貌を脳裏へと焼き付ける。


 ドリスにとってカリガラタヴァは好みど真ん中だ。

 凛とした相貌に豊かなたてがみ。そして盛り上がった筋肉と合わせて彼以上の雄は存在しない。広い宇宙を種の存続のために飛び回ったドリスはそれを断言できる。


「ううぅ……結婚したいいぃ……! 絶対、絶対カリガラタヴァじゃなきゃ嫌だ!」


 もはやドリスには獅子しか見えていない。他の雄で妥協するなど論外だった。

 もしこれからドードドッド星人が受け入れられて交流が盛んになれば、カリガラタヴァのような素晴らしい雄が引く手あまたなのは想像に難くない。ドリスにとって、母星との往来が活発でない今だけがチャンスなのだ。

 

「やっぱアレ、使うしかないかぁ。ドーランも効果抜群だったって言ってたし……」


 一つ、カリガラタヴァらヒーローは勘違いをしていることがある。

 確かにドードドッド星人たちは温和な種族だ。大昔の罪のために他惑星から拒絶され、種の絶滅に瀕して心を入れ替えた。今では地位向上のために銀河中で善行に励んでおり、その名声は少しずつだが回復の兆しを見せ始めている。

 だがその根、本能は未だ狩猟民族だ。他者を孕ませることを宿命づけられ、どうすれば篭絡できるかを無意識に考える。


 そして最もヒーローたちとずれているのは、アプローチの違いだった。

 彼らは他人の心を手に入れるためなら暗示を厭わない。本部から婚活の概念を聞いた彼らはこう考えた。どんな形であれ、心を手に入れればいいのだろう、と。

 だからこそ彼らが銀河中で忌避されているのだが、残念なことに、初邂逅した宇宙人がドードドッド星人であるヒーローたちはそれを知らなかった。


 その無邪気な牙は、確実にヒーローたちへと食い込んでいた。


****


『結婚式、来てくれるんだってな』

「ああ」


 仕事終わりのカリガラタヴァに通信をかけてきたのは、白く大きな虎だった。

 自室のソファに座った獅子は宙に浮かぶ通信ウィンドウに向けて、こわばった顔にならないように気をとがらせていた。不快な感情を表に出して、白虎を悲しませるのは本意ではなかった。


 その窓の向こうでは見知った白虎の隣に、ドリスに似た緑の男がいる。ドーランというドードドッド星人はシャランティスの肩を抱き寄せ、幸せですと言わんばかりに顔をほころばせていた。


『ありがとう! 君が来てくれると知ってシャディも喜んでいたよ!』

『馬鹿お前! それは言うなって言っただろ! こいつは絶対来るって、おれは信じてたからな!』

「その割には、断ったとき耳がしおれてただろうが」

『あれは……まさかお前が断るなんて思ってなくて……絶対祝福してくれると思ってたから。だから来てくれてすげえ嬉しいんだ!』

「そうかい」

 

 鼻息荒く前かがみになる同僚を見て、獅子はその顔に嘘がないことを認めなければならなかった。シャディと呼んでいいのは本当に親しい人だけであり、そこにこのドーランが入っているのは明白だ。


 獅子の耳には白虎の言葉がいまだ脳に焼き付いている。『おれ、結婚するんだ』と満面の笑みで語られたとき、カリガラタヴァは世界から音が消えたような気がした。

 少し前までは互いにドードドッド星人に絡まれて大変だと話していたはずだった。だが、それからあれよあれよという間にシャランティスはドーランと親しくなり、気づけば仕事終わりに会える時間も減っていた。


 たまに会える時もあったが、口を開けば『少しずれてるけどそんなに悪い奴じゃない』や『これからのヒーローには必要な存在だ』など、獅子が聞きたくない言葉を吐くようになった。親友の心が離れているのだと気づくのに、時間はそうかからなかった。


 そしてついに、結婚するのだという。


 画面の二人が何か話しかけているが、カリガラタヴァは心の整理がつかないまま、あいまいに頷くしかできない。何か取り返しのつかないことが起こっているのではないか、そんな予感を持て余す不快感にたてがみをかきむしりたくなっていた。


『……それで、お前のほうはどうなんだよ?』

「どうって、何がだ」

『ドリスだよ。招待状を渡す時に会ったが、ありゃかなり惚れこんでるぞ』

「いい迷惑だ……っと悪い、ドーランの前で」

『構わないど。オデも最初はシャディにきつく当たられたからね』

『悪かったって。今では愛してるから許してくれよ』

『当然許す』


 通話中だというのにキスをしながら盛り上がる二人を前に、獅子はため息を我慢できなかった。シャランティスは直情型だが、ここまで露骨なアピールをするようなやつだったのかと、見たくもなかった親友の一面に心がざわついてやまない。


「どうやら俺はお邪魔なようだから、そろそろ切るぞ」

『ああっ! 悪かったって、すねるなよ! 今日電話したのは、お前に会いたかったからなんだ。これから結婚式の準備で忙しくなるだろうし、その前に会っておきたいんだ。ほら、前に会ったのって招待を断った時だろ』

「そうだな……」


 それから気まずくて顔を合わせていなかったのだ。その埋め合わせがしたいと言われれば、獅子に断るという選択肢はない。


『お前には友人代表のスピーチも頼みたいしな。だから来てくれて本当に嬉しいんだ。というわけで仕事終わりに集合な。最近はドーランたちのおかげで急な呼び出しも少ないから、多分大丈夫だろ』

「わかった。なあシャディ」

『なんだ?』

「今、幸せか?」


 返ってきたのは緩んだ白虎の笑顔で、それだけで獅子は理解してしまった。


『もちろん、今は人生で一番幸せだぜ』

「……そうか、おめでとう。お前らの結婚を心から祝福する」


 この顔を見てしまえば、もう、それしか言うことはなかった。


****


「…………はめられた」


 幾日か経った仕事終わり、本部の個室でカリガラタヴァは顔を覆ってつぶやいた。

 そこには獅子の他にもう一人、緑の巨体が申し訳なさそうに肩を縮こまらせている。


「だますような真似をして悪いと思う。だけど、そうでもしないとカリガラタヴァはオデと会ってくれないだろ……」


 獅子の手元の端末には、白虎から『友人代表同士よろしく!』とすがすがしい裏切りの言葉が書かれている。あの虎のお節介気質はたまに厄介だったのだと、ようやく獅子は思い出した。


「お前を招待に成功したら便宜を図ってくれるってシャランティスとの約束だったんだ。あいつ、お前が来てくれて……」

「嬉しがってただろ。わかってるよそんなこと」


 ここで腹を立てて帰るほどカリガラタヴァは子どもではない。それに、鍛えている新人たちも帰らせた今、すぐに帰ってもむなしいだけだと知っている。

 ドリスらドードドッド星人たちは悪い奴ではない。それは様々な悪と対峙してきた獅子が本能で理解できる性質だ。異星の文化を熱心に習得し、合わせようと努力している。技術の提供も惜しまず、ヴィランの検挙率はうなぎのぼりだ。

 だけど同じくらい警告が鳴っている。それが何なのかわからないまま、獅子は彼らに心を開くことはできなかった。


 それでも理性はここで無下にすることは良くないと訴える。

 獅子は立派なヒーロー。他人を救う仕事で、どうしようもないお人好しでもあるのだ。


「えっとな、こういう時なんて言えばいいのか、まだわかっていないんだ。オデはお前のことが大好きで、お前以外の嫁を貰う気もない。だから、どうしてもお前と結婚したい。それだけなんだど」

「……」


 かつてここまで熱心に口説かれたことなど、獅子には覚えがない。心の底からドリスはカリガラタヴァを求めている。不器用な文化を使いながらも、懸命に歩み寄ろうとしていた。


(なるほど、シャディが心を開くわけだ。あいつは素直だからな)


 その一端が垣間見え、獅子は尻尾を下げた。警戒するにしても、近くに置いておいた方が良い。そういう言い訳を受け入れたのだ。


「わかった。それならまずは友人から……」

「だからオデ考えたんだ。どうしたらお前に好きになってもらえるだろうって」


 妥協点を提示しようとした獅子の前で、ドリスはボロンとふてぶてしい緑のちんぽをさらけ出す。大蛇のように太い肉棒はカリガラタヴァが見たことないほど大きく、一瞬思考が停止してしまった。


「え……?」

「オデの嫁になれば毎日が気持ちいいってわかれば、きっと、オデのこと好きになるはずだど!」

「なるかーーーーっ!」


 獅子の腹の底から壁を震わすほどに大きな否定のツッコミが出た。


「ええぇっ?! ならんのか?! 男なんて快楽に弱いからこうすれば一発って本に……」

「そんな! いかがわしい本を! 今すぐ! 捨てろ!」


 いったい何を読んで得た知識なのかは知らないが、ドリスは真面目に考えているようだ。それがなおさらカリガラタヴァの頭痛を誘発して、胃すら痛み出したようだ。


 渾身の否定をもらったドリスは計算外だと慌て始めたが、ここまで来て引くわけにはいかない。今日ここで獅子の心をもらうのだと、踏ん張って口を開いた。


「え、ええっとだな、一応オデらの長所をまとめたプレゼン資料があって、だな……」

「この状況のプレゼンなんて、嫌な予感しかしないんだが。帰っていいか?」

「頼む~! せめてこれだけは見て行ってくれ~! ドーランに頼み込んで、ようやくもらったアピール資料なんだど~!」

「はぁ? なんでお前のアピールポイントの資料をドーランからもらう必要があるんだ」

「だって、オデはお前に操をささげるって決めてるんだ!」

「やっぱりそういう資料か……」


 本心から見たくはないと告げるカリガラタヴァだが、ドリスは逃がすまいと慌ててプロジェクターの準備を始めていく。

 大きな体でてきぱきと地球の機械を操作するドリス。おそらく、獅子に見せようと事前に練習してきたのだろう。


「なんでその努力の方向性がこうなんだ……」


 地球の文化を知らないだけだというのを加味しても、今回は到底見逃せる話ではない。肉体関係から入るのはあまり良いことではないと、正論を突きつけようとした獅子の言葉が――


『よーす、見えてるかカリガ!』


 親友の声によってかき消された。


「な、シャディ……!」


 プロジェクターの映像には、見慣れたたくましい白虎と緑のオーク似の宇宙人が並んで座っていた。両者ともに全裸で、それもベッドに腰かけているということが、獅子の頭に最悪の想像を抱かせる。


『なんかドーランがどうしてもっていうからさ、これから夫婦のガチ孕ませセックスを録画することになったわ』

『こうすれば地球の雄は一発! その方法を見せようと思うんだど!』

『……っていうていだけどな。おい、こんなのまじでカリガに送るなよ。せっかく結婚式に来てくれるっていうのに、反故にされかねん』

『わかってるさ。でも、たまにはこういうのもいいだろ?』

『……まあな❤』


 好色に微笑む白虎の顔。同期として、親友として長い間付き合いのある獅子も見たことのない、メス顔だった。


 こんなもの見たいわけがない。怒鳴りながら振り返ろうとしたのだが、獅子の体は全く動かなかった。

 ただ、画面に目を吸い寄せられたまま、呼吸すら忘れて見入るだけ。


(なぜ、俺は……)


 自分のことがカリガラタヴァにはわからない。何故胸が高鳴るのか、何故心臓がうるさいのか。

 何故、ドリスと同じようなふてぶてしいちんぽから目が離せないのか。


 その答えはすべてドリスに握られているレーザーポインターにあるのだが、それを知るのは少し先の話。

 今のカリガラタヴァは映像のすべてに焦がれるように変えられてしまった後だった。


『いつもならキスしてからやるんだけど、もうやったあとなんだよな❤』

『そうだど。シャディはキスするとすーぐトロトロになるんだ。だから撮影を許可してくれたんだけどね。最初は嫌だって言ってたど』

『だって、恥ずかしいじゃねえか❤んっ❤❤今だってこんなにおマンコうずいてんのによぉ❤❤お預けなんて❤❤』


 言われて見れば白虎の口周りはすでにべたべたになっていて、それが唾液なのだと獅子は理解した。さらに白くふわふわした毛皮はどことなく湿っているようで、興奮に汗ばんでいるのがわかる。

 特に目を引くのは、ドーランの股座にそびえる緑の包皮に包まれたデカマラだった。それは興奮の印を垂らしている。糸を引くちんぽを見ているだけで、獅子の体がどんどんと火照ってたまらない。


 白虎がカメラに向かって大股を開くと、鍛えた体に似つかわしい巨根が汁をこぼしながらそびえていた。だが隣のちんぽがでかすぎて、まるで子どものようにしか見えない。そのギャップがなぜかまた獅子をときめかせた。

 本来なら戦うための体を緑の手が這いまわる。そのたびに虎の口からな艶めかしい吐息が漏れていき、獅子の興奮をくすぐった。


『じゃあカリガラタヴァに一言くれないか?』

『あっ❤そこまでやるのか、なんかAVみてえだな……カリガ、最近仕事終わりに会えなくて悪いな❤でもドーランとの子作りに忙しくってさ❤❤仕事終わってからずっと種付け本気交尾してんだ❤❤ドードドッド星人たちは相手を孕ませる準備として、精液を相手の体になじませないといけねえみたいなんだ❤❤❤』

『そうだ。オデらの精液を取り込み続けると、相手の遺伝子情報と混ざった卵ができるんだ。だけど……そっちの言葉で言うなら着床だな、着床する確率はあんまりよくないから、毎日やりたいんだ。大事な親友を取ってしまってごめんな』

『ドーランは悪くねえよ❤おれが頼んだんだ❤ママになりてえから、毎晩してくれって❤なあカリガ❤』


 シャランティスは自身の巨根よりもさらに大きなちんぽを握って、破顔する。カリガラタヴァが見たこともないほど、下品で媚びた顔で。


『ドードドッド星人のちんぽな❤すっげーぞ❤❤やばいとこまで入って、ゴリゴリに犯してくれるんだ❤これを知っちまったら、もう地球の雄となんて付き合えねえよ❤❤雄子宮の奥を突かれて雌アクメ決めちまう❤❤んっふぅ❤❤』


 白虎はカメラに視線を向けながらも、緑の巨根を緩やかにしごいている。息が荒くなっていく様は発情した犬そのもので、親友の痴態を見せられて獅子は脳が焼き切れそうなほどの興奮を覚えた。

 それでも心のどこかで否定したいという感情が、獅子の口から乾いた言葉を引きはがした。


「シャディ……お前は、ヒーローだろ……」


 青く輝くスーツを身にまとい、最前線で敵と戦う英雄だったはずだ。その雄姿を隣でずっと見てきたのはカリガラタヴァだ。

 だというのに今の白虎は情夫さながらの媚びを浮かべた顔で、ちんぽを愛撫している。もう片方の手は乳首に添えられ、毛皮からはみ出すほど大きくなった突起をつまんでいた。


 こんな親友の姿を見たいとは思わない。だけど、目を離せない。

 脳が混乱を起こしている獅子は、自分が勃起していることに気づかなかった。


『ドーラン❤しゃべってたら興奮しちまった❤❤早くおマンコ❤おマンコ❤❤』

『わかったよ。じゃあまずはいつも通り舐めてくれ。今日はカメラがあるから、横から頼むど』

『おう❤❤❤』


 座っているドーランの太ももに倒れ掛かり、白虎の顔がちんぽに近づく。カメラを意識しているため横から舌を伸ばす顔がはっきりと映っており、それは誰が見てもちんぽに恋した淫乱の表情だった。


『れろぉ❤❤❤』


 根元から舐め上げると、細い尻尾がぴんと立つ。まるでちんぽが震えるようだと、獅子は思ってしまった。


 ドーランの肉塔はへそをゆうに超えるほどの巨根で、そのくせ太さもしっかりと持っている。まるで三本目の足であり、夢中で舐めるシャランティスの顔が小さく見えるほどだった。

 包皮の中は赤い肉があり、獅子はそこに少しの親近感を抱く。どうしてそんな感情を抱いたのかも分からないが、美味しそうに見えるのは否定できないことだった。


『でっけぇ❤いつ舐めてもぉ❤んろ❤うまいしさいこぉ❤❤玉もでっか❤❤❤』


 だらりと垂れ下がる金玉を口に含んでご満悦の白虎は、ちんぽが寂しくないようにと愛撫をかかさない。その仕草があまりに慣れていたため、毎晩していたのは本当だったのだと嫌でも思い知ることになる。


『おおっのおぉおぉ❤❤雄くせぇ❤❤マンコがうずく匂いだ❤たまんねえ❤❤』

『シャディはオデがちんぽを鼻にくっつけると、どんなに疲れててもセックスしたがるもんな❤』

『だってこんなの我慢できねえだろ❤おれはお前の妻なんだから、ちんぽぐらい気持ちよくしてあげねえとな❤❤』

『そんなこと言って、本当はお前が欲しいだけだろう』

『まあな❤❤ドーランのちんぽ臭嗅いでると、マンコが我慢できねえんだ❤❤んちゅ❤ちゅぅ❤❤』


 毎晩、それはどんなに仕事で遅くなっても、どんなに戦いで疲れていても、ということだ。

 同じヒーローとして新人の育成と現場とを行き来しているカリガラタヴァは、それがどれだけ大変かを知っている。だけどあの緑のちんぽにはそれを覆すほどの魅力があるのだと、シャランティスは笑う。


『お゛っほぉ~~~~❤❤❤❤❤』


 アヘ顔を決める白虎に精悍な面影はなく、鼻水を垂らしながら舐めるのに必死だ。まるで薬でもきめているのかと、カリガラタヴァは不安そうになりながらも心臓の鼓動だけは耳元で響いていた。


『シャディ、足持つぞ』

『ふぁい❤❤』


 ドーランが片足を持つと白虎の股がカメラに向かって開き、興奮に震えて先走りを垂らすちんぽが良く見えた。しかも腰を何度もヘコへこ動かしていることもあって、糸がぷらぷらと舞い踊っている。

 どんな時でも戦意をたぎらせていた白虎の脳みそが興奮だけに占められている。夜にはこんな顔をさらしながら、昼は隣でヒーローとしてふるまっていたのだと、獅子は言いようのない不安感に襲われた。


『おぃ❤❤❤恥ずかしいところ撮るんじゃねえよぉ❤❤』

『喜んでるくせに❤』

『ちんぽちらつかせていうんじゃねえ❤❤何でも許しちまうだろ❤』

『じゃあここからフェラしてって頼んだら?』

『もちろんする❤❤』


 少し体を起こしてからちんぽを咥えるシャランティス。頬に亀頭の膨らみができ、牙の隙間から唾液がぼたぼたと零れていく。

 だけどドーランのちんぽはいまだほとんど見えたまま。長いそれは虎のマズル程度では覆うことなどできやしないようだ。


『んっんっ❤ん~❤❤』


 白虎の顔が前後し、口から亀頭が現れては消える。そのたびにチュウとわざとらしく音をたて、愛しの旦那へ興奮してとささやきかける。

 亀頭を重点的にフェラしているだけで期待が脳を溶かすのか、白虎のちんぽから先走りが飛んだ。それでもしごくことなど眼中にないようで、ただただ奉仕を続けていく。


『ちゅっちゅぅ❤ヂュウゥゥ❤❤❤』


 なんだかんだ言いつつもカメラを意識しているのだろう、たまにカリガラタヴァと視線が合えば、獅子の胸中で感情が跳ねる。それは不安と罪悪感、そしてこれらをはるかに上回る興奮だった。


『んへぇ❤❤うまぁ❤❤』


 ちんぽを垂らした舌にぺちぺち当てて、白虎は満足そうにつぶやいた。呼吸を忘れて耽溺していたため息を整えようとすると。分厚い胸板が上下した。


『んじゃ、ここから喉奥使ったディープフェラでも……❤❤』

『今日は無理しなくていいからな。これは一応カリガに見せるていなんだ、毎晩そんなことさせてるって知られたら怒られるかもしれん❤』

『いいじゃねえか❤どうせカリガもこうなるんだろ❤ちんぽが大好きすぎて、全部咥えたくてたまらなくなっちまうんだ❤❤』

『でもオデも毎回苦しそうなお前を見るのは忍びないんだよ❤今回は、な?❤代わりにマンコ気持ちよくしてやるから❤❤』


 シャランティスのごつごつした足を持ち上げていた緑の手が下りていき、尻まで来た。それでも白虎は意図を汲んで足は上げたままなので、芋虫のような指が谷間に潜り込んでいく様子が獅子にはよく見えた。


『――――お゛っ❤❤❤❤』


 濁った汚い声が親友の喉を震わせる。


『おマンコ❤❤おマンコおおぉぉ❤❤❤』

『ちょーっとだけ慣らすから待ってくれよ❤』

『なんでっ❤いつもはもっと遠慮しねえのにぃ❤❤』

『カリガの前だからな❤いい顔しとかねえと❤』


 そんなことを言ってる時点で意味はないのだが、シャランティスはスパイスとしてぞくりと毛皮を震わせた。発情に翻弄された雌の顔を親友に見られている。そう思うだけで、体中から寒気にも似た快楽が沸き上がってたまらないのだ。


 豊満に張り詰めた白い尻から、クチュクチュと粘液をかき混ぜる音が聞こえてくる。

 それはマイクの収音性がいいからなのか、ただカリガラタヴァの頭蓋で補完されただけなのか。獅子にはわからない。

 使ったはずのない尻に切なさを覚えることも、唾液が多く分泌されていることも。


 獅子には何もわからない。


『じ、じらすなよぉ❤もっと奥ぅ❤マンコかき回してくれよおぉおぉぉお❤❤』


 どれだけ怪我を負っても、どれだけ逆境でも折れなかった白虎の相貌がゆがんで泣きを入れている。腰を浅ましく動かしながら媚びる姿に、獅子は倒錯的な興奮を覚えた。


 ドードドッド星人は体こそでかいが身体能力ではヒーローに遠く及ばない。その気になれば押し倒すことも可能だというのに、画面の中の白虎は完全に主導権を明け渡していた。

 完全に格付けが済んでいる。この虎は身も心もドーランのものだ。


『浅いところばっがり❤❤ぬぽぬぽすんな……❤奥っ❤雄子宮、切なくて❤狂っちまうよおぉ❤❤ドーランの❤あほっ❤❤❤』

『へへ、可愛いなシャディ❤お前は早くママになりたいもんな❤❤』

『そうっ❤そうだ❤おれはっ、早くママになりてえんだ❤お前のぶっといちんぽで子宮に種付けされて❤子ども、孕みてえっ❤❤お前が、おれをこんな風にしたんだ❤❤毎日、毎日子作りするから❤もう孕みたくってたまらねえんだよおぉおぉ~❤❤』


 ドーランの太ももに縋り付きながら大股を開いて腰を前後させる白虎。目の前にちんぽがそびえたっているせいで、余計に焦がれてたまらないのだろう。

 舌を伸ばしながらマンコの快楽にけいれんし、鼻水と涙を垂らして懇願し続ける。時折クリちんぽから射精にも似た濃さの汁が噴出しては、白く綺麗だった毛皮を汚していく。


 これがヒーローシャランティスだと言われたところで、誰が信じられるというのか。

 少なくとも、親友の獅子は信じなかっただろう。昨日の時点では。


『ちんぽ❤ほじいぃ❤ちんぽちんぽちんぽぉおぉ❤❤早く、いつもみてぇに❤本気種付けで雌アクメ決めさせてくれよおぉ❤❤』

『そうだな、そろそろ子宮も降りてきた頃だろうな』

『降りだぁ❤もういつでも孕めるっ❤❤子宮がちんぽくれってうるせえんだ❤狂っちまう❤❤❤なあドーラン❤おマンコ❤おマンコ早くぅ❤❤❤夫婦の営み❤いつものやろうぜ❤❤』


 あるはずのない子宮をうずかせて、シャランティスは膨らんだ緑の胴体に抱き着いて頬ずりしながら甘えた声を出す。もはや雄であることの気概など不要だと言わんばかりで、ケツマンコの奥に種付けを渇望する。


 こんなことを毎晩していたのかと、獅子は胸をかきむしりたくてたまらなかった。

 ヴィランのアジトに殴り込んだ夜も、新人たちに説教をかました夜も、ヒーローの未来を話し合った夜も。

 この猫は、情夫のように下品に堕ちていたのだ。


「な、んで……❤俺が、こんな……❤❤」


 やめさせなければならない。親友が見せる気もないものを、これ以上見てはいけない。

 わかっている。だけど、止められない。勃起した先端でスーツの色が変わっていようとも、獅子は動くことができずにいた。


 映像は流れ、ついに期待通りのものがもらえることに喜んだ猫がカメラに向かってデカ尻を広げていた。ふりふりと左右に躍らせることに忌避はなく、餌を前にした犬のような従順さだけがそこにはあった。


『カリガー❤実はおれの尻、こんなマンコになっちまってたんだわ❤❤毎晩旦那のちんぽで子作りしてたら、おまえもすぐにこうなるからな❤❤❤❤』

「ひっ……❤」


 そこはもはや肛門と呼ぶのもはばかられるほどに膨らんだ、グロテスクな器官だった。縦に割れた肉はつぼみというには生々しすぎて、思わず獅子が息を飲む。

 カリガラタヴァが映像を見た限りでは、ドーランが唾液などの粘液を指にまぶした様子はなかった。だというのにそこは湿潤に濡れそぼり、ぶら下がった玉袋にとろとろと蜜をこぼし続けていた。


 こんなもの、もはや雄の肛門とはとても言えない。

 マンコという単語が獅子の脳裏に浮かび、振り払うようにたてがみを揺らしてドリスをにらみつけた。


「お、おい……お前……シャディに何をした……❤❤」


 もろもろの状況を加味すれば、あの白虎がこんな簡単に堕ちるとは思えない。

 親友としての経験とヒーローとしての勘が、諸悪の根源はこの緑だとささやくのだ。


「うんうん、どうやら効いてるみたいでよかった。オデと結婚すれば、カリガラタヴァもすぐシャランティスみたいになるからな」

「だから、何をしたと聞いているんだ……❤」

「後で教えるから、今はプレゼンを見てくれ。せっかく撮ってくれたんだからな」


 やはりドードドッド星人のせいだった。おそらく今の自分がおかしいのもそのせいだと、獅子は気づいている。

 それでも視線は画面にくぎ付けで、白虎にドーランが覆い被さる瞬間を網膜に焼き付けていた。


 シャランティスはカメラに向かって前面を見せるために横たわった状態で、足の間にドリスが入り込んでいる。まるで松葉崩しのような体位だが、性知識の少ないカリガラタヴァはただ漠然とこれから挿入するのだと察するだけだった。

 丸太のような白い足を腋に抱えたドリスが腰を近づけると、目に見えて白虎の顔が崩壊していく。


『お゛っお゛っんおおおおぉおぉぉ~~~~❤❤❤❤』


 入っているのだと、獅子は理解した。あの太く巨大な一物が親友の尻を裂いて侵入していく様をありありと思い浮かべ、その衝撃はいかばかりかと試算する。

 だけど、狂ったように嬌声をまき散らすにはどのくらいの快楽が必要かなど、彼にわかるはずはなかった。


『きだぁあ❤きだきたきぃったああぁ❤❤ったく待ちくたびれたぞおぉ❤マンコが子作りした過ぎてうずいてんだ❤そのまま奥までず――――っどおおおぉおぉおぉん❤❤❤❤これこれええええぇぇ❤S字ぶち抜きちんぽさいっこおおぉおぉお❤❤❤マンコにきくううぅうぅ❤❤』


 白虎の顔は喜色を浮かべながら壊れていく中毒者と同じだ。足の指先までけいれんさせ、アヘオホとした顔を振り回している。

 聞くに堪えない声でわめき散らし、媚びと無様をまき散らすあれを親友と判断していいものか。カリガラタヴァの脳内は混迷を極めていた。しかし、どれだけ瞬きしたところで現実は変わらず、見慣れた屈強な白虎が見慣れない顔でちんぽを貪る姿があるだけだった。


『おおぉ、やっぱお前の中は最高だ❤早く子どもが欲しいってキュウキュウしてくるよ❤❤』

『んおおぉ……ふへぇ、あったりまえだ❤おおう❤おっぉう❤❤おれのマンコは子どものためにあるんだぜ❤着床ザーメンぶちまけて❤早くおれを、ママにしてくれよおぉ❤❤』

『まかせろ。今日こそは妊娠してもらうぞ❤❤』

『おう❤逆流するまで頼むぜ旦那様❤❤❤』


 そこからの光景は暴力にも似た絡み合いだった。

 ドーランは荒々しい腰つきでシャランティスの中を食い漁り、勢いよくぶつかる結合部からは乾いた破裂音が鳴る。同時に汚い音も鳴り響き、愛液らしきしぶきがいくつも飛んでいった。


『おっお゛お゛おぉおぉぉん❤❤子宮にあだる゛っ❤おっほおぉん❤❤結腸ずぽずぽんぎもぢいぃいいぃ~~~~❤❤早く子種❤こだね゛ええぇぇええぇ~~❤❤』

『わかってる!❤マンコからあふれるくらい注いであげるよ❤❤オデが絶対にお前のことをママにしてやるからな!❤❤』

『んぎいぃ❤ママになりてえぇ❤❤あっあっ❤子どもほしいいぃい❤❤マンコにザーメンがねえと❤おれっ、満足できなくなっちまった❤❤んおっ❤おおぉんっほおぉおぉ❤❤❤❤』

 

 緑の太い腰が小刻みに抽挿を繰り返し、白虎の中を荒らしまわる。かと思えば、ぎりぎりまで引き抜いて一気に叩き込む。

 決して慣れさせることのない振動にシャランティスの涙がこぼれ、よだれや鼻水と混ざって顎から滴っていく。それでも口角は歪みあがっていることが、恍惚を演出していた。


 カリガラタヴァは決して性行為に慣れているとは言えない。憧れのヒーローになってから自分を律し、シャランティスというライバルに負けないよう、日々研鑽に勤しんできたからだ。

 だから、子作りというものがこれほどまでに汚いことを知らなかった。歓喜を叫んでは汁をこぼし、狂乱の渦に身を投げることを是とする行為だなんて、まるで思ってもみなかった。


「はあ❤はぁ❤」


 息荒く、獅子はねっとりと股間をまさぐる。ドリスに何かされたことを理解していても、発情した体には関係ないことだ。スーツ越しにオナニーをするカリガラタヴァの口から、唾液が糸を引いて落ちていった。


『おっ❤おっ❤おっ❤おぉおぉっほおぉおぉ❤❤❤結腸マンコやばぁ❤おくぅ❤奥奥おぐうぅうぅ❤❤うおおぉおおぉ❤❤お゛っお゛ほおぉ❤❤』


 ベッドの上でのけぞるシャランティスはただただ口をおの字にしながら汽笛のように嬌声を打ち上げる。夫に向ける媚びではなく、自身の体内で発生した快楽を受け止めきれないがために漏れ出た感情。少なくとも、カリガラタヴァの目にはそう映った。


 ヒーローは捕まった場合に備えて、拷問に対する訓練も受けている。だがちんぽ一つで篭絡されるのなら、何の意味があるというのか。

 今のシャランティスを見れば一目瞭然だ。何を聞かれてもちんぽ欲しさにべらべらしゃべることだろう。

 そこにヒーローとしてのプライドなどかけらもなかった。


『子作りたっまんねえぇ~❤お゛っおっほぉおぉおぉ❤❤❤きもちよすぎりゅぅ❤もっど子づぐりするうぅ❤❤おれの子宮ぅ❤もっどぱこぱこじでぐれえええぇ❤❤❤』

『すっかりセックスにはまっちまったな❤最初は気持ち良すぎて怖いって言ってたくせに❤❤』

『だっで❤ごんなの゛むり゛っ❤我慢む゛りいいぃぃ❤❤❤このちんぽでおぐ、こじあけられでがらっ❤もう毎日、ちんぽのことしか考えられねえ❤❤種付け交尾じだいって❤っほおん❤仕事中もずっとおマンコうずくんだよおおぉおぉ~~❤❤』


 犯される白虎のちんぽはおもらしのように液体を吐き続け、ベッドや毛皮をびしょびしょに濡らしていた。それが潮であることなど獅子にはわからないが、はしたないという点では変わりない。


「お、おぉ……❤」


 オナニーの手つきも早くなり、スーツの中を先走りで満たしていく。カリガラタヴァの人生でこれほどまでに興奮したことなど一度もなく、くっきりと浮かび上がる怒張は何度もけいれんしていた。


「あ、いく……いくっ❤❤」

『んほおぉおおぉ❤❤子宮ぶん殴られるのぎもぢいいぃいぃぃぃ❤❤❤❤結腸マンコにぐるうぅ❤お゛ー❤んほっんっほおおぉおぉぉぉ❤❤❤』


 獅子の絶頂の声が白虎の嬌声によってかき消された。それでもそばにいたドリスには、筋肉質な肩が何度も震えたのが見えただろう。

 だが、獅子の肉棒は萎える気配もなく、いまだそそり立ったままだ。オナニーを覚えたサルのように、ザーメンを潤滑油にまたしこしこと手を動かし始めていく。


 カリガラタヴァが一度射精したというのに、それ以上の快楽を注がれているシャランティスはどうなのだろう。獅子はふと、そんなことを考えた。


『おう゛っへええぇぇ❤❤❤』


 舌を突き出したまま顔をのけぞらせる白虎のちんぽはずっと硬く、濁った体液をブピュブピュと漏らしている。だがそれは半透明であり、精液とは言えないだろう。

 幸運なことに、そんな獅子の疑問はすぐに答えが振ってきた。


『い゛っでる❤いぐの、どまんねえぇ❤❤❤』

『オデもわかるど、さっきからマンコ肉がぐねぐねしてるからな! 気持ちよくなってくれて嬉しいぞ!❤』

『おほぉ❤いーーーーっぐううぅぅ❤❤いぐいぐううぅう雌アクメすんごおぉおぉぉ❤❤❤脳みそやける゛っ❤ちんぽすきいいぃぃぃ❤❤❤のおぉぉ❤』


 先ほどから獅子の知らない単語が飛び交っているが、射精の伴わない絶頂を味わっていると察することはできた。そのせいでシャランティスは眼球をひっくり返しながら、カエルのようにけいれんしているのだろう。


 画面の中で絡む二人は汗にまみれ、息も荒くなり始めている。

 それでも溶け合おうとするかのように体をくっつけ、互いの劣情をぶつけ合う。

 ケダモノのように激しく汚い行為。むき出しの欲望を見たカリガラタヴァの価値観がゆがんでいく。


『もうっ、出すぞ!❤❤❤』

『だじで出してぇええぇ❤❤子種でおれのっ❤雄子宮まんたんにじでえええぇ❤❤今度こそ、着床っ❤するんだ❤おれは❤ママになる❤ドーランの子ども❤ぜっだい産むうぅうぅぅぅ❤❤❤❤』


 ドーランの一突きごとに透明な汁をまき散らす白虎の目が、光を帯びた。

 ママになる。その言葉を呪文のようにつぶやきながら、オホ声で歓喜を叫ぶ。


「ママに、なる……❤❤」


 茹った獅子の脳みそで、自分もなりたいという感情が生まれていく。あの凶悪なちんぽでゴリゴリと犯され子どもを孕めたら、どれだけ幸せなのだろう。

 しごきながら腰をくねらせるカリガラタヴァはまだ自分に植え付けられた欲求を知らない。だから、ママになると意気込んでアヘる白虎を見る目に、羨望が混ざっていることにも気づかなかった。


『マンコ締めるぞドーランっ❤ヒーローとして鍛えたケツマンコにっ❤たっぷりザーメンぶちまけろおおぉぉぉぉ❤❤❤❤』

『うぐおおおぉ、出るぞシャディ❤頼む❤オデの子どもを孕んでくれぇ❤❤❤』


 そして、ドーランが力いっぱい腰を打ち付け、凶器が結腸入り口を突き破って奥へと至る。ヒーローの頑丈な肉体だからこそ許される雄のピストン運動は、ついにシャランティスを限界の向こうへと連れて行く。

 確実にこの雌を孕ませるという意志を浴びて、白虎の興奮は処理能力をパンクさせた。


『お゛、お゛ほぉ――――』


 舌を突き出したまま眼球を裏返すさまが、意図せずカメラの真正面で行われた。カリガラタヴァは親友の尊厳が崩壊する音を聞く。どんな強敵や逆境でも折れないと信じていた白虎、獅子の中にあるヒーローシャランティスが終わる瞬間を。


 確かに聞いてしまったのだ。


『お゛んっほおおぉおぉぉぉぉ~~~~~~❤❤❤❤❤❤』

 

 舌ピンアクメする白虎は人として終わった顔を映し、これまでで最も大きな嬌声を響かせる。それは発狂と称してそん色ないものであり、全身を何度も何度もけいれんさせながらイキ狂っていた。


 そのちんぽからは毛皮よりも黄ばんだ汚い白を噴き上げている。先ほどカリガラタヴァが出したザーメンよりずっと多く、人というものはこれほどまでに射精できるのかと獅子の口があんぐりと開いた。いったいどれほどの快楽を感じれば、ここまでの量を出せるのか。興味が獅子の金玉を刺激する。


『ぎでるきてるぅ❤ドーランの雄ザーメンんんんんっ❤❤❤孕め孕め孕めえええぇ❤❤着床しろおおぉぉ❤❤ママのおマンコで受精してくれええええぇぇぇ❤❤❤』


 だがそれでも、ドーランの射精には及ばない。

 シャランティスの尻から逆噴射する量はまさに奔流だ。バケツをひっくり返したとしても、ここまでの量は出ないだろう。

 白虎も子ども欲しさに必死に締めているはずなのに、ザーメンは易々と縦割れマンコを広げて飛び出していく。のけぞる白い腹が、少し膨らんだように獅子には見えた。腹筋を押し上げるほどの量を注がれてなお、シャランティスは貪欲に締めているようだった。


『すっげ❤すっげえええぇ❤ぴちぴちの子種がこんなに❤くっそぉ❤なんで毎回これで着床しねえんだよおぉおぉぉ❤❤おらっ❤おれのマンコめ❤孕め孕め❤❤大好きな旦那の特濃ザーメンだぞ❤❤❤絶対に、孕んでやるううぅうぅぅぅ❤❤❤❤』


 でかすぎるちんぽと金玉から繰り出される濃い男の性がドードドッド星人を作っている。たてがみと体毛が濃いカリガラタヴァも男らしいとはよく言われていたが、彼らとは次元が違うのだ。

 他種族を孕ませることで繁栄してきたドードドッド星人の前では、鍛えた肉体も、濃い体毛も、何の意味もなさない。ただ圧倒的な性機能を前に、親友は陥落したのだと今更獅子は気づいてしまった。


『シャディ❤』

『おほー……❤はへ❤❤』


 洪水のような射精を終えたドーランがシャランティスの腹を優しく撫でる。絶頂に頭のネジが飛んだ白虎はゆっくりと反応し、その手に手を重ねて夢見心地にまどろんだ。


『つらくないか? 今日もたくさんだしちまったからな』

『平気だっつうの❤だからおまえはおれみたいな頑丈なヒーローを嫁にしたんだろ❤』

『だけど、やっぱり腹もこんなに膨らでしまって……』

『ばーか、おれが欲しくてやってんだよ❤なあ、孕んだと思うか❤❤』


 二つの手が腹筋の上で赤子を呼ぶ。どう見ても仲睦まじい夫婦の営みで。


『わからない。でも、孕んでるといいな❤』

『ああ、そしたらおれは晴れてママになるんだ……❤❤』


 つながったままなのはこれ以上零れないようにするためだろう。腹に溜まった子どもの種を愛おしそうに撫でながら、シャランティスは背後にいるドーランの腕の中で体を預けている。


 その感情が作為的なものだと知ったうえでなお、カリガラタヴァは何も言えなかった。

 前回の通話時に幸せだと言った親友の笑顔が偽りなのだと、糾弾することもできず。


 獅子は呆然と股間をいきり立たせたままだった。


****


「ママナール光線とな」


 急いでスーツを着替えた獅子が向かったのは、このヒーロー本部の心臓ともいえる部屋、指令室だった。


 そこに鎮座する大きな犬の男に、獅子はこれまでのことを直訴している。

 銀色の毛皮は動くたびに輝く軌跡を作り、骨太の体でいくつもの悪を退けてきた。きりりとした眉と眼光は若々しいが、ヒーロー本部指令官という立場を長年勤めあげてきた貫禄が随所に滲み出していた。

 自身も生涯現役を掲げて研鑽を怠らず、新人ヒーローを凌駕するほどの筋肉量を持っている。今もこうして指令室で書類を眺めている時も正装としてスーツを着ていた。


 そんな屈強なヒーロータイランダラスは、勇んで飛び込んだ獅子の発言を脳内でかみ砕く。


「つまり、ドードドッド星人たちはママナール光線というものをヒーローに当て、ママになってもらっているというわけか?」

「はい、その通りです。自分の知っている限り、シャランティスがやられました。きっと他にも変えられたヒーローがいるはずです」


 自分で報告しながら、何を言っているんだと客観的な思考はあざ笑う。事実しかないのだが、列挙された単語は明らかに冗談としか思えない。

 だが、プレゼンが終わってすぐドリスを締め上げて得られた情報だ。それに、本人もまったく悪気はないようで、ぺらぺらと話してくれた。


「それを浴びると雄を好むようになり、ママになりたくなります。ドードドッド星人はそれを利用して、ヒーローたちと子作りしているそうです」


 そうでなければあのシャランティスがあそこまで落ちることはなかったはずだ。カリガラタヴァはヒーロー活動一筋だった彼があそこまでママにこだわるのは、確実にこの光線のせいだと訴えた。


 ドードドッド星人たちはそれを悪いことだとは思っていない。ドリスには二度と使うなと念押ししたが、どうしてだかわからないようだった。


「とにかく!」指令のテーブルを勢い良く叩いて。「これ以上ドードドッド星人たちに婚活を推奨するのは危険です! 彼らは確かに悪意を持っていませんが、我々とは価値観が異なります! このままではヒーローが全員ママになってしまいます!」


 光線を浴びたカリガラタヴァの心はママという単語に何度も反応している。それになれたならどれだけ素晴らしいか、脳が歓喜を放出するのだ。

 だが、獅子はヒーローに憧れ、人生を走ってきた男。ヒーローを差し置いてママになるなど、許せるはずがなかった。


「なるほど……」


 タイランダラスが顎下を撫でながら、ゆっくりとつぶやいた。


「少し、遅かったようだな」

「ご存じだったのですか……?」

「ああ。そういうものは人道にもとると忠告したのだが、ドードドッド星人たちに広まる前に使われてしまったらしい。私の力不足だ、すまない」

「だったらなぜ彼らを放置しているのですか! これは明らかな悪です! 罰が必要ではありませんか!」

「だが、ドードドッド星人との交流は我らにとって有意義だ。おかげでヴィランの検挙率が上がり、世界はより平和になった。それに、彼らは話せばわかる種族だ。事を大きくしたくなかったのだ」

「…………」


 その発言を獅子は理解できる。ドリスにもそれはよくないと言えばもう使わないと言ってくれたのだ。それが本当かわからないが、これまで付きまとわれた経験から、嘘は言っていないと判断した。

 だが、それではシャランティスはどうなる。すでに身も心もママにされ、毎晩あのような醜態を喜んで演じるようになった獅子の親友は。


「ママナール光線は時間によって効果が薄れる簡単な暗示だ。シャランティスのように毎晩子作り交尾しなければ、すぐに元に戻る。ただ、シャランティスはおそらくもう戻らないだろう。なにせ、子作りの喜びを知ってしまったのだからな」

「その言い方ですとまるで……」


 獅子は言いよどむ。何かとてつもなく嫌な予感がしたから。

 しかし、タイランダラスは隠す気もないようで、自身の鍛え上げた腹筋を柔らかく撫でた。

 その顔は先ほどの映像で見た白虎と全く同じ、うっとりとしたおぞましいものだった。


「ああ、もう一か月になる」

「……! 指令もすでに……」

「そもそも、ママナール光線の被害者一号が私だ。おかげでママになる喜びを知ってしまった。生涯現役を掲げていたのだが、これからはママと兼任せねばならんな」


 途方もない衝撃がカリガラタヴァを襲い、足元が崩れていくような感覚に溺れた。気を抜けば崩れてしまいそうではあったが、ママナール光線の乱用を止めたことを思い出し、一縷の希望にすがる。


「だから指令はママナール光線の使用を止めるよう指示したのですね」

「その通りだ。こんなものに浸ればヒーローがどうなるのかわからないからな。毎日種付け交尾のことしか考えられなくなってしまえば仕事にならん。私ですら、休憩時間にマンずりしてなんとかごまかしているというのに……」

「元には、戻らないのですか……」

「戻る気もないな。ママになるということはとても素晴らしいのだと、ドードドッド星人たちのちんぽはそれを教えてくれた。お前は知らないだろうが、あの巨根に結腸マンコの奥をごりっとされる喜びは……ああ❤何物にも代えがたいのだ❤❤」


 タイランダラスは自身の感情がどれだけいびつなことか理解している。理解したうえで、ママになる喜びを取ったのだ。

 司令官にまで上り詰めた歴戦のヒーローですらこうなのだから、他のヒーローではママになることしか考えられなくなるかもしれない。

 憧れのヒーローが汚される感覚がして、獅子の怒りが性欲と拮抗し始める。


「それに、今はもう妊娠一か月目だ❤ドードドッド星人たちの着床確率は低いというのに、私はこんなに早く孕むことができた❤きっと夫ちんぽと相性がよかったのだろう❤❤ドードドッド星人の幼体は夫のザーメンを栄養にしている❤おかげで最近は結腸ぶち抜き子作りセックスが激しくてな❤」


 話しながら思い返しているのか、精悍だった犬の顔が発情に彩られていく。

 それでも現実に引き返して来れるのは、ひとえに彼が歴戦の猛者だからだろう。


「……おっと失礼、ママになってからというもの発情が止まらないのだ❤どうやら腹の子どもが食事をせがむために母体をセックスへと導くらしい❤❤本当ならずっと家にいて四六時中生ハメするのがいいのだが、私は現役ヒーローママだからな❤指令官ともなれば、そうそう休むわけにはいかん❤❤だから本部にいる他のドードドッド星人たちに協力を要請して、子どものお食事セックスをしているんだ❤当然夫は了承ずみだぞ❤」


 元からドードドッド星人たちは子どもを種全体で育てるため、孕んだ母体は共有財産として扱うらしい。なんてどうでもいいことを、ヒーローのトップは嬉々として語る。


 ヒーロー本部指令官としての立場で取り繕ってはいるが、今のタイランダラスの頭にはセックスのことしかない。スーツを押し上げる豊満なおっぱいをもみほぐしながら、ねっとりとした視線を獅子へと注いでいる。

 そこにカリガラタヴァが憧れたヒーローとしての姿はなかった。


「ママになったのなら苦労することもあるだろう❤シャランティスには私から連絡しておく❤どうせ本人にも戻る気はないだろうから、これからママ友として面倒を見る❤それでいいだろう❤」

「いいって……指令をこんな風にしておいて、シャランティスもああなってしまって……なにが、いいんだ……!」

「そうだな❤ヒーローとしての私は確かにその意見に頷くだろう❤だが、ママとしての私は今を肯定している❤夫の雄臭デカちんぽで奥までぶち抜いてする子作りがたまらなく愛おしくて……」


 そこまで言いかけた犬の言葉は、ドアを開ける音によって遮られた。

 カリガラタヴァが後ろを振り返れば、ドードドッド星人が二人、しかも見知った顔が部屋に入ってきた。


「ドリス、ドーラン……」

「お、カリガラタヴァさん。こんにちは、こんなところで会うなんて奇遇だね」

「カリガラタヴァ……その、オデ……」


 先ほどこっぴどく怒られたドリスは丸く膨らんだ体を縮こまらせているが、その肩をドーランが叩く。


「ああ、先ほど聞いたど。ママナール光線は駄目だって。実はオデもついさっき通達をもらってね、知らなかったんだ許してくれないかい?」

「知らなかったで済むと思うのか……!」

「いい、私が許す。不幸な事故だったんだよカリガラタヴァ。最も、私もシャランティスも不幸だとは思ってないがなぁ❤」


 ヒーローの司令官がそう言うならば、カリガラタヴァに言えることは何もない。

 獅子はただ歯噛みしながら拳を硬く握るだけだった。


「くそ……ここには何しに来た」

「えっと……」おどおどとドリスがぎこちない笑みを作って。「聞いてるかもしれねえけど、タイランダラスのお腹には子どもがいてな。その子が大きくなるために、オデらでご飯をあげないといけないんだ」

「そうそう。タイランダラスの旦那はオデらの船の船長だから、忙しいんだ。だからこうしてオデらが代わりにご飯をあげてるんだよ」

「あっ! 勘違いしないでくれよ! オデが好きなのはカリガラタヴァだけだからな! オデはただ、カリガラタヴァがさっきの映像を気に入ってくれてそうだったから、また新しいのを撮らせてもらおうかと思って……」

「俺があんなものを喜んでいたとでもいうのか!」


 思わずかっとなってたてがみを震わせる獅子に一喝されて、ドリスはしゅんとうなだれる。そもそもカリガラタヴァが発情しているのはママナール光線という正体不明の暗示のせいであり、獅子自体の性的嗜好は生まれた時から女性だった。


 暗示は時間と共に抜けると聞いている。カリガラタヴァはこれ以上自身を歪まされる前に、ドリスから距離を取るべきだと決めた。

 タイランダラスについてはどうしようもないと見切りをつけるしかない。本人がそこまで言うのなら、獅子にできることはないのだから。


「もういい! これ以上俺に付きまとうな!」

「あ……カリガラタヴァ……」


 怒りをまとって踵を返す獅子の眼光は鋭く、悪にしか向けないことをドリスも知っている。ここでようやく、ママナール光線を使うことは最悪の手だったのだと気づいたのだ。

 ドリスの伸ばした手は届かず、獅子は去っていく。

 だが、憤慨して部屋を出ようとした獅子に低い声がかかった。


「カリガラタヴァ」

「……!」


 威圧感に足を縫い留められ、カリガラタヴァは苦々しく振り返る。色狂いになったとはいえタイランダラスはヒーローのトップ。その覇気が衰えていないことを喜びつつも、嫌な予感が獅子をからめとった。


「なんでしょう」

「お前が怒るのも理解できる。だが、問題はそう単純でないことはわかるだろう?」

「……」

「異星人と交流するのはこの地球で我々が初めてなのだ。何故彼らの行動を本部に制限していると思う。そこにある価値観の違いを一身に受けるためだ」

「それは、わかっていますが……!」

「なら、我々が許さず誰が許す。誰が、彼らに地球の価値観を教えることができる」


 ドードドッド星人は異星人なのだ。地球の価値観では許されないことをしたとして、どこまで責めることができるのか。タイランダラスはそう問うていた。


「彼らに悪意があるなら私とて抗うさ。ドーラン、ママナール光線を使ったのは今のところ三人で間違いないな?」

「そう。タイランダラスとシャランティスとカリガラタヴァ。この三人だけで間違いない。オデもたった今、船長にこっぴどく怒られてしまって……だから仕事を与えられてこうして子どものご飯に来てるんだ。ドリスもそうだ」

「んだ。だけど、オデはカリガラタヴァを最初にしたいから、ドーランが代わりにしてくれるってことになったんだど」

「お前が怒られたのはオデのせいだからね。その代わり、シャディにばれても破局とかにならないようにフォローしてくれよ! 絶対だからな!」

「わかってるって」


 それからドリスはおずおずと獅子へと視線を移し、肩を落としたままためらいがちに口を開く。

 大きな緑の山のような体躯が、獅子には子犬のように小さく見えた。


「カリガラタヴァ、すまなかった」

「……」

「オデは……カリガラタヴァがそこまで怒るとは思ってなくて……反省してる。本当だ。オデはただ、カリガラタヴァと一緒に居たいだけなんだど……」

「だ、そうだ」大きな犬がにやりと笑いながら。「どうするカリガラタヴァ?」

「……」


 ヒーローとは人を助ける仕事だ。誰かのために戦い、傷を一身に受ける存在。

 結局カリガラタヴァもヒーロー、つまりは底抜けに甘いお人好しなのだ。


「はあ」だからため息で自分を納得させるしかできなくて。「しょうがない、指令がそこまでいうのなら、許してやろう」

「本当か……! ありがとうカリガラタヴァ!」

「ただし!」


 獅子は感極まって抱き着こうとするドリスを制し、厳しい目を向ける。


「ママナール光線の効果が抜けるまで、俺に近づくことを禁止する。わかったな」

「それでお前の気が済むなら、オデは従うど!」

「指令、ここが俺の妥協点です。暗示が抜けきるまで、現場仕事を多めに振ってください。できる限り彼らとの接触を減らします」


 冷静な判断でその場の最適解を下した獅子は、もういいだろうと犬へと退出の許可を得ようとしている。だが、タイランダラスの口から出た言葉は、やはり獅子の期待を裏切るものだった。


「さすがはカリガラタヴァだな。だが申し訳ないが、そうするわけにはいかんのだ」

「何をおっしゃっているのですか……?」

「なに、ドッコウとも――ああ私の夫だ、と話していたのだが、どうやら本星から圧がかかっていてな。種の存続が厳しそうなら、ヒーローに固執するなと」

「それが俺と何の関係があるのですか?」

「考えてもみろ。ドードドッド星人たちは我らに革新的な技術を多くもたらしてくれた。だが、我らが彼らにしたことは本部の中で婚活を許したことだけ。それはあまりにも釣り合いが取れていないだろう?」


 正論過ぎてカリガラタヴァは口を噤む。ドリスは一言も言わなかったが、普通に考えればその通りでしかない。

 彼らは種の存続のために焦っている。だというのに、こうしてママナール光線というショートカットを使ったことを謝り、地道に婚活に勤しんでくれた。地球人が用意したレールを必死に走ってくれているのだ。


「だから、ここで我らも何かお返しすべきだという話になったのだ。我らができる最上のお返しは何か、もうわかるだろう?」

「……子ども、ですね」

「そうだ」


 ここでようやく、カリガラタヴァはタイランダラスという最高のヒーローがママナール光線を受け入れた理由が分かった。彼はヒーローのために自分の身を差し出したのだ。


「もちろん、ママナール光線を受けてからする子作りセックスが最高なのもあるし、ドッコウのことを愛するようになったのもある。それでも私は生涯現役を掲げるヒーローだ。その優先順位はいつだって揺らがない」

「だから、次は俺を……ということですね」

「お前の意志を最大限尊重したいのはやまやまだ。だがやはり、私一人の子宮では本星が満足するような結果を残せるとは思えない。そこにタイミングよくママナール光線を受けたシャランティスとカリガラタヴァがいる」

「自然と夫婦ができるのを待つのは駄目なんですか……?」

「そんな時間を許してくれないから困っているんだ。何度も言うがドードドッド星人の着床率は低い。まだ彼らが本部になじんでいるとは言えない現状、悠長に待つわけにはいかん」

「……」

「カリガラタヴァ。もし我らがドードドッド星から見切りをつけられた場合、どうなると思う。彼らを止めるものは何もないのだ。この技術を仮にヴィランや拝金主義の企業に買われてみろ。待っているのは制御不能な混沌だ」


 今ヴィランの検挙率が上がっているのは、技術で大幅な差をつけているからだ。それが無くなれば、ましてやヴィランとドードドッド星人が手を汲めば、世界の秩序は大いに乱れることは想像に難くない。

 タイランダラスはその混沌を引き起こさないよう、おマンコで食い止めている。だとするなら、これは協力要請だ。カリガラタヴァのおマンコで地球の平和を守ってほしいと言われれば、獅子の感情が揺さぶられてしまう。


「結婚と子作りともなればプライベートなことで、私が口出しできる範囲ではない。子どもだけでもと言えるほど薄情でもないつもりだ。そこで提案だ。カリガラタヴァ、お前にはドリスと共に行動してもらう」

「どうして……!」

「ママナール光線の効果が抜けるまでの間でいい。ドッコウからは確か、一週間ほどだと聞いている。そうしてもなお、お前がドリスと添い遂げる気がないというのなら、私はもう何も言わん。可能性は低いが、ヒーローの中から志願者を募るようにしよう。だがもしお前の気が変わったなら、ドードドッド星に報告することで時間稼ぎができる」

「こんな暗示を受けた状態で、正常な判断ができるとは思えません!」

「その場合お前は被害者として、ドードドッド星での交渉に使えるカードになる」


 タイランダラスはあくまでドードドッド星の技術をヒーローの中だけにとどめておくために、交渉の材料を探している。

 それは子どもでもあり、無法な手を使ったドードドッド星人への糾弾でもある。


 ヒーローは自分の身を犠牲にしてでも誰かを守る必要が出てくるだろう。

 それは新人に向けてカリガラタヴァの放った言葉だ。


 だがまさか、こんな形でなんて思ってもみなかった。獅子は今、自分が試されているのだと強く感じていた。ヒーローとして自分を犠牲にできるのか。そう聞かれたなら、彼は当然のように首を縦に振るだろう。


「……卑怯な奴だと私をそしってくれていい。だが、これが私のできる最大の譲歩だ。私はどうしても、この平和を守らねばならん」

「……」

「ドリス、これは君にとって最後のチャンスだ。カリガラタヴァを落とせなければ、金輪際機会はめぐってこないだろう」

「わかってる。カリガラタヴァといられるなら、オデは自分が政治の道具になろうが構わねえ。機会をくれて感謝している」


 獅子はまだ受けると言ったわけではないが、逃げ道などあるはずがない。ドードドッド星がヒーローたちを見限ることこそ、最も避けねばならない事態なのだから。

 

「……わかりました」


 だから絞り出すように了承を出すしかなかった。

 親友を狂わせた種族を許してはならないという義憤と、平和のためなら身を差し出しても構わないという覚悟。それらはどちらも、ヒーローカリガラタヴァの持つ正義への信念から来ている。

 そして熱く燃える正義の心は、タイランダラスの言葉を受け入れることを選んだのだ。

 

「ふぅ」タイランダラスは重いため息を吐いて。「すまないカリガラタヴァ。私にはこれしか選べないのだ」

「いえ、選択肢をくれたことに感謝します指令。犠牲になれと一言命じるだけで良いのに、最大限自分の意志を尊重してくれました」

「ふふっ、犠牲だなんて言葉を使うとドリスに悪いだろう?」

「オデは気にしねえ。怒らせちまったのは事実だし……カリガラタヴァ、これからお前の信頼を取り戻せるように頑張るから。だから、オデのことをしっかりと見ててくれ!」

「力づくで篭絡しようとしたら、ぶっ飛ばすからな」


 カリガラタヴァは完全に納得できたわけではないが、拒むこともしなかった。それだけでドリスは頬が緩んでしまう。

 

「さて、話はまとまったな。いい加減、私の可愛い赤子がお腹を空かせているからご飯にせねば」


 険しい顔をしていたタイランダラスの眉から、ゆるりと緊張が解けた。ヒーローの顔を止めて、大型犬の表情は先ほどのような発情した赤らんだものへと変わっていく。


「ふぅ❤さっきからおマンコがキュンキュンしてたまらんのだ❤❤いつもはもう特濃ザーメンで腹をぱんぱんにしているというのに❤❤❤ドーラン、早速だが生ハメ交尾を頼む❤❤」

「わかった。オデのザーメンを腹いっぱい食わせてやるぞ❤」

「おっとそうだ、カリガラタヴァ❤見ていくがいい❤ママナール光線を受けたヒーローがいかに幸せか、お前にも教えてやろう❤❤❤」

「何故俺が……!」

「ドリスは撮影するつもりだったのだろう?❤そして私はお前にドリスと共に行動することを命じた❤当然のことではないか❤❤」


 二の句を継げない獅子の前で、タイランダラスは立ち上がる。

 骨が太くがっしりした体格はカリガラタヴァにも負けないくらい大きな筋肉の塊だ。膨らんだ胸筋の両端でぷっくりとスーツを押し上げる乳首は肥大化しており、雄々しさの中に雌の色香を混ぜ込んでいた。


「ふふふっ❤まさかこの歳になってこのような淫行にふけるとは❤ヒーローとしては落第だろうな❤❤」


 熱っぽい吐息を漏らしながら、ゆっくりとスーツが解除されていく。

 どこもかしこもたくましく屈強な銀の犬が、一糸まとわぬ姿へと変わる。茹った笑みを張り付けたまま、使ったことのない綺麗なピンクをしたクリちんぽをビクンと揺らした。それは肉体に見合った太さを持っていたが、少しだけ皮を冠った可愛らしいものだった。


 銀色の綺麗な毛並みに走るいくつかの傷跡は戦いの証だ。生涯現役を貫くために訓練をかかさない見事な肉体美だが、性欲に焦がれて身をよじる姿は証をアクセサリーへと貶める。


「さあ、カリガラタヴァ❤お前は果たしてママになりたい欲求を我慢できるのか❤この私がしっかりと見定めてやろうではないか❤❤❤」


 ヒーローの頂点、誰もが憧れる司令官ヒーロータイランダラスは、そう言いながらぺろりと口角を舐め上げた。


【続きは来月の支援者限定公開となります】

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POSTEDDec 24, 2023
ARCHIVEDJun 10, 2026