なんだ? 何が起きた?
記憶が確かなら、今の今まで教室で次の授業に備えて準備をしていたはずだ。
それなのに、いつの間にか仰向けに倒れてしまっているみたいだ。目に映っているのは真っ白な天井だけ。
気絶? でも今まで気を失ったなんてこと一度もないぞ。
辺りを見渡しても誰も居ない。というか何だ、ここは。だだっ広くて見晴らしがいいけどどこまでもずっと白いだけだ。
誰か、誰か人は居るのか?
「んぐっ!?」
声を出そうとして口の中に何かが入り込んでいたことに気が付いた。ボール、か? 吐き出そうとしても頬を押される感覚があるだけで吐き出せない。ボールに紐が付いていて、顔の後ろにまで回されているみたいだ。
ボールは口いっぱいに入り込んでいるけれど呼吸は出来る。舌の感覚からするとボールにいくつも穴が開いているっぽいな。
これって、ひょっとしてボールギャグってヤツか。漫画とかで見たことはあるけど実物を見るなんて……というか自分で付けるなんて思ってもみなかった。
多分だけど、紐さえ外せば吐き出すことだって出来るはず……あれ? なんか、手足も変だぞ。 肘も膝も伸ばせない。
……視線を身体に向けて一瞬脳が理解を拒んで固まってしまった。
腕と足が折り曲げたまま、黒い布でグルグル巻きにされている。いや布? テープかも知れないがとにかく手が自由にならないんじゃ確認のしようもない。
しかも手足に巻かれた布以外は何も着ていない裸にされていた。厳密にいうなら裸とも少し違うか。
股間に、何か取り付けられている。
銀色をした円盤みたいなもの。本来ならチンコがあるはずのところが円盤が見える。円盤から生えた金属の棒が玉の後ろに回り込んで固定しているみたいだ。
ってことは、チンコはこの円盤に押し潰されてるってことだよな。
痛みはない。けど意識したらチンコが潰されているような違和感は感じられるようになった。
それと、円盤の真ん中からは濡れた黒いチューブのようなものが飛び出していている。円盤の真ん中、つまりチューブが飛び出しているのは本来なら尿道がある辺りだ。それにおしっこを出している最中のように、尿道が広がっている感覚が続いている。まさかだけどあのチューブってってチンコの中を通って膀胱まで届いているのか? チューブが濡れているのだって漏れ出したおしっこのせいだとしたら辻褄が合ってしまう。
「あらあらぁ、目が覚めたみたいですねぇ。」
「んんっ!?」
女性の声? 誰だ。辺りを見渡した時には誰も居なかったはずなのに。
「そんなに怯えなくっても大丈夫ですよぉ。用事が済んだらすぐに開放して差し上げますからねぇ。」
用事? 俺をここに連れてきたのはこの人だってことか? だとしたら何の用があってこんな目に合わせたって言うんだ。
「はい、まずはこちらを見て下さいねぇ。」
……なんだ、あれ。
畳まれた肌色の布。その上に金色をした細い糸が載せてある。……糸、か? まるで髪の毛みたいにも見えるけれど……
「このままじゃあ分かりませんかねぇ。ではぁ、広げればどうでしょうかぁ。」
なんだあれ、人? いや、形は人っぽいけど厚みはない。顔まで覆う全身タイツとでも言えばいいのだろうか。金色の糸はやっぱり髪の毛だったみたいで、頭に当たる部分の両側でまとめられている。いわゆるツインテールって髪型だ。
ただこうしてみると全身タイツというのもちょっと違う気がする。質感は本当に人の肌みたいで、胸には乳首だってある。それに……女の子を再現しているのか股間には一本の筋が刻まれている。まるで金髪の女の子から中身を抜き取って真っ平にでもしたようにも見える。
「今から貴方にはぁ、この皮を着て頂きますねぇ。」
「んっ!?」
皮? これを着る? いや、確かに全身タイツなのだとしたら着ることだって出来るだろう。ただ問題はそのサイズだ。身長がせいぜい1mくらいしかない。
いや、今の俺は膝を曲げたままで固定されているから身長は合うのかも知れない。けどそうすると手足の太さが全然合わない。合うわけがない。
「無理だと思ってますかぁ? そうでもないんですよぉ。」
「んんっ。」
女性の手がタイツの胸元に伸びる。両胸を掴み、左右に広げるとタイツの前面にぱっくりと切れ目が現れた。内側はピンク色で、濡れていているようにぬめぬめと光を反射している。口の中がちょうどあんな感じだっただろうか。
「そのままでは着せづらいですからぁ、ちょっと起き上がってくださいねぇ。」
「んんっ。」
背後に回った女性に背中を持ち上げられる。足が固定されているせいで正座しているような体勢だ。
「それでは着ていきましょうねぇ。」
いきなり視界が奪われる。頭に何かが……いや、さっき皮と呼ばれていたスーツを被せられたんだろう。俺の頭よりも一回り小さいように見えてたけれど頭全体が包み込まれてしまった。圧迫感はあるけれど、痛みがあるって程ではない。見た目よりも伸縮性が高かったってことか。
「次は腕ですねぇ。」
背中に皮が触れたかと思ったら腕が細い空間に押し込まれていく。ぎちぎちと締め付けられているが当然だ。今の俺は肘を曲げて固定されたせいで一、二の腕が纏められている。少女程度しか太さのなかった腕の中に入っているんじゃ多少皮が伸びたところできついに決まっている。
「後は足ですけれどぉ、もう一回ごろんと横になってもらえますかぁ。」
「んん。」
再び仰向けに倒れると同時にお尻の下にも皮が入り込む。そのまま曲げたままの足も皮の中に押し込まれてしまった。これで頭と手足が同時に締め付けられている。
「後はカテーテルを調整しましてぇ……最後は切れ目を閉じていきますねぇ。」
股間から腹、胸に向かって皮が閉じていくのが分かる。胴体までが締め上げられているみたいだ。
首筋にまで閉じて全身がタイツに閉じ込められてしまったと思った瞬間、急に視界が開けた。
「ぅぇ!?」
目に映ったのはこちらを向いている華奢な少女。金色の髪をツインテールにまとめている姿はさっき見せられた皮を連想させる。
「んんっ!?」
少女は俺が動くのに合わせるようにして動いている。俺が右手を動かせば少女は左腕、左足を動かせば右足……完全に鏡写しのように、というか、天井が鏡になっている!?
ただおかしい。目に映る少女は本当に少女としか言いようのない体型だ。少なくとも俺の体格が中に納まるような身体じゃない。
「どうですかぁ? 皮の着心地はぁ。」
「んぇっ。」
鏡の中の少女の口には何もついていない。けれども俺の感覚ではボールギャグを咥えさせられたままだ。まともに喋ることなんて出来やしない。
「ちょっと立ち上がってみましょうかぁ。」
「んんっ!?」
軽く持ち上げられ、立たされてしまう。正面にも鏡が用意されていて俺の……少女の姿が映っている。
ただ普通に立っている少女の見た目に反して、俺自身は膝立ちをしているような感覚だった。腕も肩からは動かせるもののそれだけだ。見た目では肘が存在しているものの曲げることはできない。というかすでに肘は曲げたままなのだからこれ以上曲げられるような関節は存在してない。
「うふふふふ。可愛らしい姿になりましたねぇ。」
「ぅぅ。」
確かに、見た目は可愛らしい少女でしかない。けどこれが俺で、しかもまともに動くことも出来ないんじゃ可愛いなんて思ってもいられない。
「あぁ、それから気を付けて下さいねぇ。皮を着る前に通してあったカテーテルはぁ、皮の尿道部分に繋げてありますからねぇ。貴女の意志に関わらずぅ、おしっこは垂れ流しになってしまうんですよぉ。」
「んっ!?」
言われてみれば太ももを液体が伝わる感覚があった。
いや、それもおかしくないか? 足はテープで巻かれていたよな? その上で皮まで着せられてるのに、なんで液体が流れていくのを感じられるんだ?
「でも安心してくださいねぇ。お漏らしをしても大丈夫なようにぃ、ちゃあんとおむつを穿かせてあげますからねぇ。その後はドレスでおめかししましょうかぁ。」
どこから取り出したのか大量の布と巨大なパンツのようなものを見せつけてくる。あれがおむつ? それにロリータ服っていうのか? フランス人形が着ているような豪奢なドレスが吊るされている。あれを着せようっていうのか!?
「ぅぅぉ……」
逃げようとして、前のめりに転んでしまった。考えてみれば足首から先には俺の身体は届いていない。ただ直立しているならともかく、歩こうとするとバランスが取れないみたいだった。
「練習すればゆっくり歩くことくらいなら出来るようになりますからねぇ。とはいえぇ、ここで歩いたところでどこにも行けないんですけどねぇ。」
確かに見渡す限りの白い空間だ。逃げようにも逃げ場なんて存在しない。
「お着替えが終わりましたらぁ、元の居場所に戻してあげますからねぇ。もうちょっとの我慢ですよぉ。」
「ぅぉお……」
地面に広げたおむつの上に転がされる。このままなすが儘におむつを付けられ、ドレスを着せられるしかないのか?
それで教室に戻れるなら……いやでも、戻ってもこの姿なのか? まともに喋ることも出来なくて、おしっこは垂れ流しのままで……
どうすればこの皮ってのを脱げるんだ……