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「そんな……」
アヤシーネの方を見ればボールの貼りついていた板だけが残って空中に浮かんでいる。
「そんな未練がましい目をしてもダメですよぉ。コレはもっと別の場所に送っちゃいましょうか。」
浮かんでいた板がフッと消える。けれども私の胸元のボールは残ったままだ。ひょっとしたら板を引っ張ればボールを抜き取れるかもしれない、そんな希望も無くなってしまった。
せめてもの救いはこれがただのボールだってこと。全部が肌色だから乳首もなく、おっぱいではないってことがちゃんと分かる。逆に手で隠してしまうと本物の様に見えてしまうかも知れない。
「あらあら、恥ずかしがって隠そうとしてくれるかと思ったのに随分と堂々としてますねぇ。でもぉ、まだこれでおわりじゃあないんですねぇ。仕上げはぁ、ハイ。」
仕上げ? 一体何をしたんだろう。何か変化があったとは思えないんだけど……
「あらあら、分かりませんかぁ? ではぁ、空間を弄ってアナタの正面に穴を開けてみましょうかぁ。丁度自分の姿が見えるようにしますよぉ。」
空中に円形の光が現れる。その中に映っているのは私だ。いや、映っているってのはちょっと違うか。鏡なら左右が逆になるはずだけれど、見えている私はカメラで映したように私の姿そのままだ。
「え……あれ?」
ついさっきまでボールは肌色一色だった。けれども、今はその先端にピンクの円が出来ている。色だけじゃない。円の中心には小さな突起がツンと飛び出していた。ううん、円とか突起とか。そんな言葉で誤魔化したって意味はない。あれは、どう見ても乳首だ。
「ちょっとっ!? ひうっ!?」
急に恥ずかしくなって反射的に手で覆ってしまった。あくまで見た目だけだと思ったその乳首に手が触れたら、本当の私の乳首に触れている感覚があった。
「な、なにこれ!? どうなってるの!?」
「あらあらぁ、分かりませんかぁ? ソレは正真正銘、貴女の乳首ですよぉ。ボールの表面と貴女のコスチュームの中を繋げましてぇ、乳首が出てくるようにしちゃったんですねぇ。目に見えるおっぱいはとても大きいのにぃ、乳首は本来のおっぱいの大きさに合わせた小さなサイズのままでしょう? どうですかぁ? とっても違和感があって面白くありません?」
「ば、ばっかじゃないのっ!?」
一体何が面白いというのか。さっきまではただのボールだと思えていたのに、乳首が張り付いてしまったことで本物のおっぱいを晒しているかのように錯覚してしまう。
隠そうとしてもボールが大きすぎて手で隠せるのはほんの一部だけ。こうなると乳首だけでも隠しておかなくっちゃ。
「あらあら。ダメですよぉ、隠しちゃ。さっきまでは堂々と見せてたじゃないですかぁ。そんなことをする子にはオシオキですよぉ。」
「え……んくっ!?」
何? 急に乳首に変な感覚が襲ってきた。私の体勢は変わっていない。手の平で乳首を覆うようにして隠しているだけだ。それなのに乳首が感じているのは手の平とは違う感覚。もっとこう、ねっとりと湿った柔らかいものに包まれている様な……
「えぇとですねぇ。今はアナタの手の平に空間の穴を作りましてぇ、誰かさんの口の中と繋げちゃったんですねぇ。つまりぃ、今は乳首を舐められているってことですよぉ。」
「はっ!?」
舐められ……えっ!?
確かに言われてみれば指を咥えた時に感じるような感覚が乳首から送り込まれている様な気がする。
「ちなみにぃ、舌の上に直接空間を繋げてますから噛まれたりする心配はありませんからねぇ。安心してください。」
「くっ……」
安心と言われても、どこの誰かも分からない相手に乳首を舐められて嫌悪感がないはずがない。しかも最初は舌が当たっているだけって感じだったのが、飴玉を舐め回しているかのような舐め方に変わってきている。
こうなると周りの人達に乳首を見られるのと、どこかの誰かに舐められるののどっちがマシかって話になる。
私が選んだのは、手を離して見られるのを我慢するって方だった。手の平を見てもそこには何もない。手を離したことですぐに空間の穴ってのを閉じたんだろう。
「うふふふふ。改めてこうしてみるとぉ、おっぱいがとっても大きくなったみたいに見えますねぇ。それにぃ、乳首も奇麗なピンクで可愛らしいですよぉ。」
「うっさい!」
アヤシーネはともかく、野次馬たちからはそれなりに距離がある。これだけ距離があればそんなにはっきりとは見えないはずだ。車を運転してる人たちなら動いているからじっくりとは見れないだろうし。
「これで満足なの?」
恥ずかしがっていると余計に恥ずかしくなってしまう。どうせ隠せないなら虚勢でも堂々としていた方がマシだ。
「いえいえ。こんなのはまだまだ序の口ですよぉ。とは言えぇ、次はどれにしましょうかねぇ。う~ん、これにしますかぁ。」
序の口って、今度は一体何をしようと言うんだろう。
「貴女がた魔法少女は変身すれば身体能力は向上しますがぁ、生理現象は変わらず残ってますからねぇ。この場で生活してもらうに当たってぇ、そこを放置するわけにはいかないじゃないですかぁ。」
生理現象?
「と言うわけでぇ、まずは下準備からですねぇ。」
「さっきから何を遠回しな……んんっ!?」
何、これ。何で急に……アヤシーネは指を立てて軽く振っているだけ。さっきのボールみたいな何かが見えたりはしてない。
「どうですかぁ? 何が起きているかぁ、ご自分の口で説明して貰えますかぁ?」
「せ、説明って……」
言えるわけないじゃない。急におしっこがしたくなっただなんて。
「どうしたんですかぁ? きちんと説明して貰わないとぉ、こちらでも対処が出来ませんよぉ?」
私に何が起きてるかだなんてアヤシーネは私以上に把握しているハズなのに。
「う~ん。それともぉ、まだ余裕があるからいけないんですかねぇ?」
「あっ!?」
更に尿意が増してくる。反射的に股間を手で押さえつけてしまう。慌てて手を離したけど、今のって周りの人たちに見られちゃったのかな。
「説明するまではずうっとこのままですよぉ。あぁ。このままと言うのは今のまま変わらないという意味ではなくてぇ、今の変化が継続して続いていくって意味ですからねぇ。」
「んっ!! くっ!!」
尿意が更に増し、既に痛みへと変わってきている。それなのに尿意は止まる気配がなく増え続けている。
「だ、ダメッ!! え、あれ?」
増え続ける尿意に抗いきれず漏らしてしまった……はずだった。限界を超えてしまったはずなのに、おしっこは1滴も漏れていない。
「あっ、んくぅ!!」
別に漏らしたかったわけじゃあない。けれども我慢の限界を越えて漏らしたと感じてしまったせいか、尿意が減っていくことを無意識に期待してしまっていたみたいだ。期待を裏切られ、身体は私の意志を無視して何とかしようとしてしまっている。
身体が勝手にいきんで思い切りおしっこを出そうとしてしまって、それでも全くおしっこは出てくれなくて……頭の中がめちゃくちゃになりそう。
「ですからぁ、今の状態を説明してもらえません? しない限り、ずうっと今のままですよ?」
「それは……」
もう恥ずかしいとか言っている場合じゃなかった。
「おしっこが、おしっこが凄くしたいのに出せないの。これも貴女のせいなの? 何とかしてよ!!」
「はい、よく言えましたねぇ。じゃあ種明かしをしておきましょうかぁ。今の貴女はおしっこを出したくても出せないようになっているんですねぇ。本来ならおしっこが出て行ってくれる膀胱の出口を膀胱の奥に繋げちゃったんですよぉ。ですのでぇ、おしっこは膀胱の中を循環するだけ。空間を繋ぎ直さない限り決しておしっこは出せないってわけですねぇ。」