「それでもぉ、疑り部会先生のことですから扉を閉めている間に別の箱に入れ替えたんじゃないか、なんて疑うかも知れませんよねぇ。なのでぇ、他の扉を開いてみせましょうかぁ。」
「あ、はい……」
一番上……本来なら2番目だった扉に手がかけられる。もし本当に私の身体が切断されているならあそこに入っているのは私の上半身の筈だ。
「はい、御開帳~。」
「え……きゃあっ!?」
箱の中にあったのは首から腰までの人の身体。なのだけれど驚いたのはそこじゃない。
「な、何で裸になっているんですか!?」
服を着ていたならはっきりとは分からなかったかもしれない。けどあの平均よりは少しだけつつましやかな胸のサイズ、その割には大きめな上に色素がしっかりしていて存在感を主張する乳首、そしてちょっと油断してしまったお腹周りはどう見ても私の身体だ。
「え……うそ。」
反射的に胸を隠そうとして、実際に隠せてしまった。明らかに私と離れた場所にある身体なのに、動かそうと思った通りに腕が動いて胸を隠している。
じゃあ本当に、あれは私の身体なの?
「すみませーん。先生の顔も見たいんですけどー!!」
ショーを見ている生徒から声があがる。
そうだ。私の裸、あの子達にも見られちゃったんだ……
「そうですねぇ。でも先生もご自分の身体がどうなっているかは見たいでしょうしぃ……それならこうしたらいいですかね。」
頭の箱をぐるりと回され、生徒側に向けられる。箱の中、顔をそむけることも手で隠すことも出来ない。それにこれでは私の身体がどうなっているかだって分からないじゃない。
「では先生はこちらを見て下さいねぇ。」
目の前に置かれたのはスマホ……しかもこれ、私のだ。いつ持ち出したの? しかも勝手にロックを解除されているし……
「え……」
いや、解除とかの話じゃない。画面に映っているの、今この場所?
教壇の上に積まれた3つの箱と、少し離れた机置かれた頭の入った箱。
誰が撮影してるの? でもそれっぽい動きをしている子は居ないし……
でも間違いなく画面には映っている。それってつまり、録画をされているかも知れないってことじゃない。
まさかとは思うけれど、配信なんてされたりはしてないでしょうね。
「はぁい。それでは生徒の皆さんは十分ご承知かと思いますがぁ、ここで改めてこのマジックのルールを説明しておきますねぇ。」
ルール? マジックにルールなんてあるの? タネじゃなくて?
「見ての通りぃ、先生は4つのブロックに分かれた箱に入って頂きましたぁ。これが人体切断マジックだってことは先ほども言った通りですねぇ。切断は完了しましたのでぇ、これから再び組み立てる際に『どっち』にするかを皆さんに選んでもらいますねぇ。」
「え……どっちって……」
元通りにするだけじゃあないの?
「と言うわけでぇ、まずは上半身からいきましょうかぁ。候補はこちらの2つとなりますよぉ。」
いつの間にか、上半身の入った箱の左右に2つの箱が置かれていた。片方は大きくて片方は小さい。
「では中身を見てもらいましょうねぇ。」
「なっ……」
扉が開かれ、中身が見える。入っていたのは人の上半身、首から腰までの部分だ。私と違うのは両手は左右に開かれ、箱の壁で途切れているってこと。
箱の大きさが違うのも納得で、体格があまりに対照的だった。片方はまるで小学生の低学年かそれ以下、下手したら幼稚園児並みの小さな身体。多分女の子だとは思うけれど、胸の膨らみも無ければ腰の括れもないからはっきりとは分からない。
そしてもう片方は……体格自体は私とさほど差はないのかも知れない。けれどもそこについている胸のサイズが圧倒的だった。片方だけでバスケットボールを軽く上回るサイズの胸が2つ。扉を開けたことで一部が箱から飛び出してしまっている。先端の乳首も巨大で握りこぶしくらいあるんじゃないの? 普通の胸にあんな巨大な乳首がついていたら気持ち悪いくらいだけれど、おっぱい本体が大きいせいで何となく納得できてしまうバランスになっている。
「生徒の皆さんにはぁ、事前にどんな身体になって欲しいかアンケートを取りましたよねぇ。まずはその中から上半身に関する希望を集めましてぇ、無作為に引いていったんですねぇ。希望内容に矛盾が出た時点で打ち切り、集まった内容を叶えた身体に仕上げてありますよぉ。」
「矛盾?」
「えぇ。幼女の様な平らなおっぱいとぉ、AV女優でも居ないような巨大なおっぱいは両立出来ませんよねぇ。なのでかち合ったらそこで終了ってことです。それにしてもぉ、随分と対照的な仕上がりになりましたねぇ。」
確かにそうだけれど……確か組み立てる、とか言ってたよね?
「あの、まさかこの上半身って……」
「はぁい。お察しの通りぃ、今日から先生に使ってもらうための身体ですよぉ。あぁ、ただしですねぇ。状況によっては元の身体に戻って貰うこともありますよぉ。その場合は我慢してくださいねぇ。」
まるで私が望んで別の身体を使いたがっているかのような言い草だ。
確かに私は人様に自慢できるような体型じゃないかも知れない。でも勝手に変えられたいとは思わないし、しかもそれがあんな普通の成人女性とはかけ離れた体型だなんて絶対にごめんだ。
「どちらにするのかは生徒さんたちに選んでもらうんですけれどぉ、まずはそれぞれの身体を体験してもらうとしましょうかぁ。あ、ちなみに先生には選ぶ権利はありませんからねぇ。とは言え民主的にぃ、ちゃんと多数決で決決めますから楽しみにしておいて下さいねぇ。」
「うぅ……」
こちらを見る生徒たちの顔を確認する。
そこにあるのは一体どんな身体にしてやろうかと楽しみにしている顔ばかりだ。私を助け出そうなんて冷静な表情をしている子は1人もいない。
「……あ。」
先輩は? 先輩ならこんな馬鹿げたショーを止めてくれるかも……
あれは、どんな表情なんだろう。ほとんど無表情、でも少し辛そうな……なんで? 生徒たちの暴走を止めてくれないの?
「それではぁ、まずは1番目。小さい方の上半身から体験して貰いますねぇ。」
頭の箱を持ち上げられ、移動させられる。持っていかれるマジシャンの言葉通り、小さな身体の上なんだろう。
でもそれを見せてどうするの? バランスを見たいとか? わざわざそんなの見なくたって十分予想は……
「ひあっ!?」
え……何? この感覚……
胸が、熱い!?
「え、あれ!?」
胸に触れて確認しようとしたのに腕が動かない? いつの間にか手が左右に広げられてる。さっきまでは胸を隠していてたはずのに……
ううん。違う。胸を隠していたのは私の本当の身体の方。こっちは元から両手を広げていたんだ。
体験ってのはこの身体と私の感覚を繋げるって意味だったの?
「お分かりになりませんかぁ? 今の先生はぁ、元の身体ではなくこちらの幼女ボディと感覚が繋がっているんですよぉ。」
やっぱり。でも本当にそんなこと出来るの?
「ちなみにですねぇ。先ほどまでこの上半身は『ただ箱に入っていただけ』だったですねぇ。先生の頭と繋がったことでぇ、『その身体が持っている本来の機能が働き始めている』んですよぉ。」
機能? どういうこと? 胸が熱いのと何か関係があるの?
「では説明を続けましょうかぁ。おっぱいの先端、乳首が熱いんじゃないですかぁ? それもそのはずでぇ、その身体が本来持っている機能が働きだした結果として母乳が出ているんですねぇ。」
「は?」