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世間知らず田舎者気弱強面力持ち黒縁めがね元剣道部ガチムチ和犬オスケモを手籠めにする軽薄な俺

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 サブスクリプション制の音楽配信サイトから流れてくる聞き飽きた人気のポップスを鬱陶しく思いながら、マックブックエアーのやたら薄いキーを一心不乱に叩いていた男はそろそろ煙草が吸いたいと思った。

 疑ってしまいそうな薄さに内蔵されたファンがローテーブルの上で穏やかな音を立てていて、パシャパシャと水音にも似た打鍵音を淀みなく動く男の十指が奏でる。トラックパッドに添えた親指で様々な資料を表示させ、論拠を引用し、必要なものは切り抜きスライドに張り付ける。文章を羅列するだけでなく、図や数字を用いて目を引くポイントを用意することは発表用資料を作るうえで肝要だった。長引いている作業への苛立ちを感じながら男は新規スライドを追加し、しかしそんなこともわからないような連中に任せるわけにもいかないと荒れる心を宥める。昼からずっと起動しっぱなしのマックブックは快調だが、肝心の自分のパフォーマンスが落ちていることを男は認めると、ふぅっと深く息を吐いた。

 安請け合いするんじゃなかったな。何度繰り返しても尽きぬ後悔を前に、ノートブックの上から離れた手が机の上を探り、傍らの缶コーヒーを手に取った。軽く振って、その中身が空であるとわかると途端に疲れが増したような気がする。

 殴れば貫けそうなモニターの隅を見る。午後六時二十八分。学食で昼食を摂ってから、家に来て作業を始めたので実質五時間ほどぶっ続けで作業をしていたということか。

 集中力が落ちていることを認めて、男は、深角衛人(みすみ えいと)はとうとう観念したように両腕を上げて大きく伸びをした。随分へたれてしまっている座椅子がぎぃ、と音を立てて家主に比べたら軽量な、男の平均的な質量を受け止める。

 進捗はグループ実習の結果をまとめ終え、仮説と考察を残すところとなっていた。本来これはメンバーがそれぞれ担当した研究内容を持ちよって共同で製作すべき資料である。それを深角が一手に引き受けて、グループ員の研究結果を預かり一つの資料としてまとめ上げているのは共同製作だと遅々として進まず、責任の所在すらあやふやになっていたからだった。二年生になったばかりの学生らにリーダーシップなど期待できるわけもなく、彼らのせいで進行が遅れるくらいならとすすんで汚れ仕事を引き受けたという文脈があった。

 しかし今はその決断を悔やんでならない。思ったより手間のかかる作業への苛立ちを紛らわすように、ちらりと室内を見回す。1K構造のリビングは狭くもなく広くもない。インテリアにこだわった様子もなく、男が使用しているこたつ暖房機能付きのローテーブルも大型家具店のありふれたものだし、座椅子に至ってはここに来てから購入したものでまだ一年そこらしか使っていないはずなのに長年使ったような年季の入り方を見せていた。

 テーブルから少し離れて、壁に隣接するように幅広な一組の布団が敷かれていた。定期的に干しているのは知っているが、それでもフローリングの床に敷き布団は合わないんじゃないかというのは当然の疑問で、しかしそれはそれで家主らしい田舎情緒があって良いと思ってしまう。脇には時代錯誤な東京観光雑誌や少し過激な表現が売りの青年誌などが放り出してあって、繰り返し読んだことでページのノドの部分が広がったのか雑誌というには少し不格好に膨らんでおり、家主の思い入れを感じるようだった。

 布団と向かい合うようにして床に直接置かれた十九インチの薄型液晶テレビもどことなくくたびれて見えるのは気のせいなどではないのだろう。上京したばかりのテレビっ子の彼のことだ、自分の気になる都会の情報を仕入れるために酷使させられているに違いなかった。

 家具という家具はそのくらいで、この部屋にはエルゴノミクスを加味した木目の穏やかなパソコンデスクも、イソップのアロマティックキャンドルも置いていない。目を休ませる観葉植物の緑もないし、技巧を凝らしたインターフォルム社のウォールクロックだってかかっていない。置いてあるものは全て目線の下にあるという、オシャレさやインテリアの基本など到底知らないような部屋だ。

 それでいて、こんなにも心が安らぐのはこの部屋を満たす家主の生活臭のためだろうか。ただ、それを他人の家のにおい、とだけ表現するのは正しくない。わざとらしく振り撒かれた消臭剤の石鹸に似たにおい。干したての布団による太陽のにおい。彼の体臭をそのまま希釈したようなポップコーンにも似たにおい。これら全てが、布団から蒸散した寝汗や、彼の毛皮から発せられたフェロモンのためであると感じるのは気のせいではないはずだ。においの出所を探すように鼻を利かせれば、消臭剤のにおいでは隠しきれない青カビのチーズのような馥郁としたにおいはゴミ箱から特に強くにおっていてるのがわかった。

 すっかり手につかなくなった資料を他所に、深角は一回だけ深く息を吐くと傍らのキャスターマイルドを握って立ち上がる。ばさ、と山のように積んであったパチンコ屋の広告の挟まったポケットティッシュがちゃぶ台から落ちたのを見て、断り切れずに受け取る様が脳裏に蘇る。

 ずっと缶詰になって作業していたからだろうか、脳内の映像にすら思慕を抱いたのは。少し隈の残る目尻が長い垂れ目で感情を切り替えるように目頭を押さえながら数度まばたきすると、キッチンに足を向ける。左右非対称に耳の上を威勢よく刈り上げたツーブロックのために、立ち上がると頭に風を感じて、残った部分にパーマを掛けて伸ばした前髪がふわっと揺れた。


 ♂♀


「おっ、ヤドカリが出てきた! 終わったのかぁ?」

「……だと良かったんだけどねえ。残念ながら休憩だよ」

 キッチンに立つ巨漢が男の姿を認めて、分厚いレンズの黒縁眼鏡をマズルの上に乗っけたまま笑みを浮かべる。小麦色の毛並みに浮かせた感情は朗らかなもので、しかし笑顔の割りにその人相が悪く見えるのは太い眉同士の間隔が狭く眉根を寄せているように見えるためだろう。

 部屋着にしている黒いTシャツは高校の時に土産でもらったらしい垢抜けないゴシック体のタイポグラフィがされたもので、昔から着ているためか襟の部分はヨレてる上にそれを包む肉体のサイズには段々と合わなくなってきているように見える。ただでさえ毛皮があるにも関わらずあちこちが空気を吹き込んだように膨らんで張り詰めた上半身のために、無残に引き延ばされたTシャツの前面に『原宿系』と書いてあるのが辛うじて読めた。

 深角の太腿ほどもあろう太さの二の腕は手に取った鍋を操るたびにぷるぷると揺れて、それが脂肪か筋肉かの判断を曖昧にしている。ただ、それ以上に目を引くのは東京で深角と出会ってから六キロは太ったという腹よりも迫出た胸板だ。服の上からでもわかる見事な半円のドーム状になったそれは、片方だけでも深角の手のひらより大きく体を揺するたびにぷるぷると艶めかしく震えている。バスケ部の知り合いがおすすめしていた、学食で提供される白米八百グラム使用の体育会系御用達特盛からあげ丼に使われる丼ぶりを逆さにくっつけたようなその膨らみは、当然ながらヒトである深角のそれとは限りなく似ても似つかない。偏見だが、女子ならば慎ましさの欠片もなく見えてしまうだろう豊満すぎる大胸筋は乳房よりも大きく丸く膨らんでいて、そうかー、なんて能天気に言いながら皿を取ろうと吊り戸棚に手を伸ばすのにつられて形を歪めてたぷんと揺れていた。

「腹減ったかぁ? もうちょっとかかりそうだけど大丈夫か?」

「ん、へーきへーき。今日はなに?」

「おうどんにしようかなーって、あと知り合いのあんちゃんがまた魚送ってくれるって言うから残ってた干物も適当に焼いちゃうな!」

 ただの部屋着姿のはずだ。「よかったねえ」なんて言いながら、シャツにチノパン姿の深角は喉を鳴らして平静を取り繕う。

 下半身には薄手のスウェットを召しているので、丸太のような太さで上等な抱き枕を思わせるシルエットをした脚の地肌は確かめられない。更に背中を向けているのだがその前面には皮を被りながらひどく黒ずんだ大根サイズのちんぽが股間にぶら下がり、みみずばれのようにスウェットを浮かせたシルエットを作っているに違いなかった。尻尾穴から飛び出して和犬の血筋らしく中途半端に丸まってわさわさとした小麦の束に引かれるように視線を向ければ、胸よりも丸く目を引く優美な曲線がそこにあった。寸胴な腰回りをなんとか覆い切ったスウェットは、しかしウエストよりも更にふとましい脂の乗ったヒップラインのことは計算外だったようで、突き出た尻が直接スウェット生地を押し上げているのがはっきりわかる。その胸もそうだが、布の下にどうにか押し込んだという印象を持たせてくる膨らみは却って人の想像をかきたてるようで、下手に裸でいられるよりも気になってしまって手が疼いてしょうがない。深角のマックブックから流したままになっている音楽に上機嫌に体を揺らしながら一年前のポップスを下手な鼻歌で奏でているので、尻尾はもとよりスウェット越しの巨肉がゼラチン質を思わせる動きで左右にゆさゆさと揺れるので思わずこちらを誘っているのかと疑ってしまう。

 露出らしい露出は一切認められない。だのに、深角の心を乱して止まない家主の榛原梓(はいばら あずさ)はイヌ科らしい立ち耳をピンと立てたまま夕食の準備を続けていた。

 既にコントロール下にない右腕を抑えるように左手を添えて、危ういところで深角はキャスターを咥える。

「アズ、換気扇強くして」

「ほぉい。……いや、お前ここで吸うなよぉ」

 文句を言いながらも男の言葉に従う大型犬は、既に材料に火を通すだけの工程にあるようで、まな板や包丁をがちゃがちゃと狭いキッチンの収納に戻していた。男はシンク台に背中を預けながらその隣に佇んで、「固いこと言うなよぉ」と軽薄そうに言い返してからライターのレバーを押して火を起こすと薄い唇に咥えた煙草の先にそっと近づけた。十分に火が灯ったのを確認してからライターを戻すと、心を落ち着けるように深く吸ってから、指に挟んだ軸を離した。

 燻ぶった煙が肺の中を満たすのを実感しながら、虚空に向かって気持ちを落ち着かせるように紫煙を吐き出した。鼻を抜ける甘やかなバニラの香り、舌に残るえぐみのあるタール、喉の奥に絡む焦げたにおい。合法的に喫煙ができるようになってまだ数か月かそこらだが、少し冷静さを取り戻したのは血中のニコチン濃度による一時的なドーピングのためであることはわかっていた。しかしこれが自分の衝動を抑えるにはうってつけで、この細長い筒が燃えている間は自分が早まらずに済む、言わば獣性を抑えて人として繋ぎとめてくれる頼れる理性回復剤のようなものになっていた。

 しかし、深角は思い知る。着ていたシャツの裾が大型犬の体と擦れ合って、自分の獣性を過小評価していた青年は見ないようにしていた隣に目を向けてしまった。

「……んん? ねえなぁ……こっちじゃなかったっけか……」

 全身が固まってうまくリアクションが取れない。それでも、喫煙者のマナーとして、そして客人としてのマナーのために腕だけが無機質に動いて煙草の灰をシンクに落とす。

 でっぷりとした尻が真っ先に目に付いた。無論、服の上からだ。並んで立って料理をしていた榛原は、深角が少し目を離したすきに流しの下の収納を検めていて、素直にしゃがめばいいものを立ったまま前屈みになって腰より低い台の下を覗き込んでいた。

 背中を丸めて、後ろに向かって腰を突き出すように中腰になったためにぶりんとした尻肉のラインが直立している時よりも一層の丸みを帯びて深角を誘惑する。雄を魅了するラインを作る丸々と肥えた尻に、いつだったかいくら走って運動をしても脂が落ちないと話していたのを思い出した。

 唇が震えて、うまく声が出ない。辛うじて大型犬の名前を口にすると、突き出た尻に乗っかっている尻尾がわさっと揺れた。

「んー? 呼んだかぁ? あっ、なあなあおっきい丼ぶりそっちだっけか。ちょっと見てくれよぉ」

 大きいどんぶりなら目の前に二つあるなあと思いながら深角はキャスターの煙を強く、大きく吸った。先程まであんなに頼もしかった煙草も、今ではただただ口の中をイガイガさせるだけで、体を動かそうとする衝動は肥大化するばかりだった。自分の理性を過大評価していたのか、はたまたこの大型犬の体を過小評価していたのか。

 深角は意を決したように深く煙を吐き出すと、凭れていたシンク台から離れてフィルターを口に咥えたことで自由になった手を持ち出した。

「えッ、ん、んぁ゛っ?!♥♥」

 もにゅ、とした感触はまるでマシュマロのようだった。スウェットの生地と獣毛が擦れるのも無視して、男の手は到底覆いきれない豊満な肉塊を撫でていた。布地の上からさするように、あるいは、布地越しに肉質を確かめるように。たぷたぷとした肉質は脂肪のようでいて、しかし前傾している榛原の体が震えるたびに固くどっしりとした重みを持つ筋肉に擦り替わる。その二面性を確かめるように、深角は五指で押しつぶすように巨尻を揉みこんだ。こんなにも柔らかく大きいのに、押し込めば押し込むだけ指を押し返してくる肉質が指に心地よかった。

「ん、んん゛♥♥ なにすんだよぉ♥♥ メシ作ってる途中だってばぁ♥」

 収納の戸をぱたんと閉めて、むくりと起き上がってコンロに向き直る大型犬は、しかし横に立つ深角の手を振り解こうとはしない。料理を続けようと気にしない素振りで鍋の中身を検めているが、集中力を欠いているのは明白だった。深角は頭ひとつ大きい犬頭の巨漢に寄り添うように身を寄せつつ、咥え煙草のまま軽薄に宣う。

「スキンシップスキンシップ、これくらいアズなら慣れっこだろ?」

「そっ、それはッ……ぁ゛♥ い、今はやめろよぉっ」

 無論、体格が違うということは膂力も違う。この大型犬の筋肉が伊達でないことはこの一年ほどでよく見知っているし、本気で抵抗すれば一般的な体格のヒトでしかない深角などそれこそ赤子の手をひねるよりも容易く振り解けるだろう。

 しかし榛原は、口だけの抵抗をしながら平静を取り繕って料理に専念し続ける。反応しないよう努めているらしいが、触られてがくがくと腰が震えるのが深角の手からありありと伝わるのがいじらしくて、尻を撫でる手つきはエスカレートしていく。

「友達同士ならこれくらい当たり前だって~、なぁ?」

「ぅ、ぅうっ……♥♥」

 火を使っているので過激なことはできないが、それはそれでこの尻をじっくりと堪能できるということでもある。深角は咥えていた煙草をシンクの水で消火し行儀悪くも三角コーナーの中に放り投げると、コンロに向かって立つ榛原の背後に佇むと遠慮なくその尻に両手を添えた。

 ぐにぃ、と押せば押すほど歪みながらもはっきりと押し返してくる復元力につい口角が上がってしまう。こんな小さい手のひらひとつに、これほどの大きさの尻をそれぞれ一つずつ割り当てられる果報に胸が躍ってしまうのは果たして男のサガだろうか。手の痕を残すくらい強く押し付けた時に手からこぼれる柔肉が指の間を擦るのがたまらない。暫く手のひらを押し付けていたが、しっかりと両手で巨肉を保持すると今度は外側に向けて思い切り引っ張った。動揺したのか、深角の眼下でわさっと尻尾が跳ねた。

「あ゛ぅっ、ひ、ひぃ♥」

 耳を忙しなくばたつかせて、犬が悩ましい声を漏らす。菜箸を握る手がふるふると未練がましく震えて、何かを堪えるようにフンフンと荒く鼻息を漏らしていた。

 深角はぴったりと大型犬の巨躯に重なって、身じろぐたびに筋肉がぼこぼこと躍動する広い背中に頬を添えるとそのまま円を描くように豊満な尻肉を両手で捏ねた。もちっとした肉質の山がぶつかり合うたびにだぷんと手の中で波打って揺れて、深角は腕を動かしながら躍動する肉を確かめるように五指を不規則に動かして丹念に揉みこむ。

「う、うぅぅ~っ……♥♥」

 もどかしそうな声を出すが、正直言ってその反応に深角は不満足だった。尻を揉まれることにちょっと慣れてきたようにも聞こえたためであった。もっと鮮烈な反応を欲して、ついに男の手は尻尾穴の周りを探り出す。

「っ、あ♥♥」

 ごぉぉ、と換気扇のノイズにかき消されない動揺が小さく上がる。スウェットの背面の布地に空けられた尻尾穴は、スウェットを穿くたびに尻尾をそこに通すためにもっとも劣化しやすい箇所だ。特にこの大型犬の穿くソレのように、長年使ってるとなれば尻尾穴はもはや本来の大きさの一回りも二回りもほつれて拡がってしまっていて、深角の指の数本なら容易く忍び込める内緒の抜け穴となっていた。

 滑り込ませた指が、ムッとした熱気に包まれるのがわかった。それで、思わず口が笑みを象る。

「アズ、パンツは?」

「っ、ぅ♥♥ は、穿いてねえっ……♥♥ お、お前が、都会ならそっちのがフツーだって、言うからぁ♥♥」

 そんなこと言ったかなと深角は一瞬だけ記憶を巡らせる。が、恐らく過去の自分ならこの豊満な肉体を有する大型犬のノーパンスウェット姿を見たいがためにそれくらいの出まかせなら平然と言うだろうなと断じて、「そうだったねえ」なんて努めてにこやかに返す。

 指に意識を向ける。体温の高いイヌ科獣人らしい暖かな毛皮が指にくすぐったくも心地よい。それでいて、指先だけながらもただ熱いだけではないことを深角は感じ取っていた。

 慣れ親しんでいるからこそのバイアスかもしれない。ただそれでも、深角は明確に湿り気のようなものをそこに感じていた。サウナの熱気のような、熱いだけではない湿地帯の奥を目指して手を動かす。尻尾の付け根から下って、谷底を攫うように臀裂へ指を進ませた。

 満員電車の痴漢おやじさながらに尻尾穴に手指を挿し込みながら、もう片方の手で持ち上げるように尻たぶの肉を堪能する。垂れ下がるようなことのないもっちりとした肉を、たぷたぷと動かすように弄んだ。

「うっ、ぅぅん゛……♥♥」

 豊満な肉壁に挟まれながら鬱蒼とした峡谷を進む深角の指を拒むように、榛原のふとましい腰が揺れる。悩ましげな声を出しながらも、料理する手がすっかり止まっていることを深角は見逃さなかった。もさもさとした尻毛を撫でていた深角のつるつるとした指が、ぷにっとした粘膜に触れる。全身の毛を逆立てるように、大型犬の体がびくりと跳ねた。

「だ、だめぇ♥♥ だめだっ衛人♥♥ 汚ねえから、だめだぁ゛ってぇ♥♥♥」

「嘘だぁ。帰ってきて真っ先にシャワー浴びてたくせに」

「そ、それは汗かいたからッ、ぁ゛っ♥♥」

 指を曲げて、輪郭を確かめるようにその窄まりの表面へ触れる。体格相応な大きさをした無毛の淫唇が深角の指を押し返して、ヒクヒクと打ち震えていた。グラスの縁をなぞるように円を描いて指を動かすと、噴火口のように盛り上がった粘膜が奥へ引っ込むように窄まって収縮するのがまるでねだられているようで、つい喉が鳴る。指に新しいぶにぶにとした感覚が忘れられず、尻を揉んでいたもう一方の手でドラム缶のような腰を持って、深角はとうとう曲げた指を突き込んだ。

「っひあぁ゛っ♥♥ だ、だめだぁ、っつってんのにぃ♥」

 言いながら、大型犬の両手は深角を拒絶するでもなく流し台の縁に置かれていて降伏の意を示していた。思っていた通り、尻尾穴に手を入れた時から感じていた谷間に立ち込める湿り気と温度を凝縮したような粘膜が指に触れる。爪を短く切った指先が遠慮なく柔肉を滑って、必死で進入を拒もうとするみっちりとした腸壁をかき分けて進む。

 何重もの輪になった括約筋がきゅうきゅうと入り口を締めてくるが、体格のせいかそもそもの門戸が広い排泄器官はヒトの指一本くらいなら簡単に通してしまうほどに緩い。つるっとした深角の指をずぶずぶと飲み込んでしまった榛原の雄膣は既にぬるぬるとした愛液を分泌し始めていて、反応の良さについほくそ笑んでしまう。

「ぃ゛っぃい♥♥♥ ゆっ、ゆびだめッ、だめぇえ♥♥♥ 挿れるなあぁ゛♥♥」

「じゃあ抜こうか?」

 深角は根元まで埋まった人差し指をかぎ爪のように曲げたまま緩やかに前後させる。みっちりと腸壁が詰まって隙間の無い円筒型の直腸を引っ掻きながら手を引くと、まるで痙攣するように犬膣が締まった。

「っひぃ゛ぃい♥♥♥ や、っだぁ、やだぁ゛♥♥ ぬ、抜くなっ、動かすなぁ゛あ♥♥」

「抜いちゃダメ? わかった」

 榛原は大きな肉食の脚を仔鹿のように震わせながら、俯きがちに声を上げる。我慢するような素振りの割に、深角の指にまとわりつく柔肉はすっかり湿潤さを増しながらむちゅむちゅと媚びてきていて、この中に思い切りちんぽを突き入れたらどのくらい気持ちいいかを伝えてくるようだった。

 深角は中途半端に引き抜いた指を曲げたまま再び押し込み、表面に盛り上がった淫肉が水かきに触れるくらい根元までしっかりと突き立てる。窮屈な肉の洞穴の中で探るように曲げたり伸ばしたり動かして、遠慮なく指の腹で腸ヒダを擦った。キーをタイプするようにリズミカルに指をとんとんとタップさせると、わかりやすく大型犬の体躯が跳ねる。

「っぉ゛っおぉっほぉぉ゛♥♥♥ それっ♥♥ だめ、だめえ゛だぁあ゛ああ♥♥♥」

 天を仰いで、腹の底を震わせるような低い声で咆哮を上げる。イヌ科らしい扁平な舌をでろりとマズルの横から出して仰け反ってかぶりを振る榛原は、ハッハッと蒸気のように荒く息を吐きながら断続的に下半身を震わせていた。スウェットに穿たれる尻尾穴が更に伸びて拡がるのを無視して、深角はついにあふれ出して尻の毛を濡らす愛液を掻き出すように指を動かす。ぬちゅぬちゅとした感触を堪能すると、その粘り気のある音すら耳に蘇ってくるようでついつい昂ってしまう。了解を取るでもなく、深角は人差し指を軽く抜いてから中指を合流させて、二本まとめて突き込んだ。入り口が緩い犬膣は易々とヒトの指を飲み込み、奥を抉ってほしそうに腸壁が伸縮していた。ふわふわとした粘膜の段々になったヒダが必死に閉じようとするのをこじ開けながら、奥目掛けてずぶずぶと指を進ませる。

「ん゛んっぉぉぉぉ゛お♥♥♥ っひ、ひぃぃ♥♥」

「アズ、声大きいよ」

「お゛ッ♥♥♥ おまえがぁ♥♥♥ ケツっ、するからだろぉ゛おッ♥♥♥ お、おれぇ料理ちゅう、メシぃ作ってんのにぃ゛っ♥♥♥」

 押し寄せる柔肉を拡げるように中でピースサインを作って指の腹を擦り付けると、ドラム缶のような大型犬の腰がガクガクと震えるのがわかった。一際強くその巨体が痙攣したからか、深角の鼻には仕度された夕食の香り以外に犬の体から漂うボディソープの香りと、じっとりとした発汗による体臭が立ち上るのが感じられた。

 本来なら少しの空洞もなくみっちりと閉じた腸壁が無理やりに押し拡げられて、動揺に汗をかいているのが指でわかる。まとわりつくねとねととした愛液を塗り広げるように、手首ごと回して手を動かした。ぐにぐにとした粘膜が必死に元の位置に戻ろうと抵抗するが、それはつまり本来あるべき場所を制圧した深角の指にその身を擦りつけているだけで、一層の摩擦に嬌声が上がる。

「っん゛ぉおおおっ♥♥♥ けつっ、指っ♥♥♥ だめ、それぇだめだぁあ゛♥♥ ケツっ、ぐりぐりすりゅなあぁ゛ぁ♥♥」

「ケツじゃなくてマンコ、だろ?」

 ぴんと伸ばしてた指を曲げて、蕩けた媚肉を強く引っ掻く。掻き出すように指を前後させて、愛液でしとどに濡れた腸ヒダを摩擦するとバランスボール並みの尻がゆさゆさと面白いくらいに揺れた。

「ぉお゛っぉおおぉ♥♥ まんこっ、マンコぉおお♥♥ まんこっしないでぇえ♥♥♥」

 ぞくぞくとした征服欲が背筋を駆け上る。無垢の新雪を踏みしめる時のような高揚感。馬鹿でかい筋肉達磨の大男が指二本で善がって言いなりになっている全能感たるや。

「アズ、おまんこ気持ちいいっしょ?」

「ぎっ♥♥ ぎもちぃい♥♥♥ まんこ気持ちい゛ぃいッ♥♥♥」

 理性と本能の天秤が傾いてきたのを感じる。快楽に脳が蕩けてきたらしい大型犬が、ハフハフと天に向かって荒く息を吐きながら深角の言葉に頷く。揺れていた巨尻は、今やふとましい腰をカクカクとはしたなく前後させるほどになっていて、尻を後ろに向かって突き出す様は深角の手をより深くまで食らわんとする勢いだった。スウェットの前面に浮いていたみみずばれの様なシルエットは、今や明確に研ぎ澄まされていて、今にもそこを突き破かんばかりに逞しく脈を打って成長していた。下向きに収納されていたそれは、重々しそうに首を垂れながらも懸命に起き上がろうと脈を打っていて、スウェットの繊維におびただしいシミを作っている。

「火消して、アズ」

「っ、はーっ♥♥ はぁっ♥♥ う、うぅ゛っ♥♥」

 もはや何も手につかなくなっていた榛原は、青年に言われて筋骨逞しい太腕を頼りなく震わせながら持ち上げて、ガスコンロのつまみを操る。

 ちょうど床を擦るように二本指で腸壁をこそいで褒めてやると、「ん゛ぉぉ゛っ♥♥♥」と野太い声が狭いキッチンに響いた。

 深角は空いている手で自分のチノパンのボタンを外す。デスク作業をする際に窮屈だからとベルトを取り去っていたのがここで役立った。既に反り返ってカルバンクラインのボクサーパンツを窮屈そうに押し上げる自分自身を片手で手早く解放すると、そのままの勢いで深角は毛皮に覆われた太腕を手に取る。

「ほらアズ、触ってみ?」

「っ、あ♥♥」

 自分の尻穴をほじられながら、榛原は手に触れた熱に思わず声を漏らす。それが何なのかはとっくに知っていたし、親しみすらあった。だから、毛むくじゃらの指がそれに触れた瞬間に腸壁がきゅんっと締まって、押し寄せる柔肉が収縮して深角の指を悩ましく舐め上げる。

 成人ヒト男性の平均以上はあるそれは深角の自慢のちんぽだったが、それでも榛原の手には丁度良いサイズだった。しかしそれでも、大型犬がそれを撫でる手つきは慈しみに溢れていた。毛並みの色もあって巨大なクリームパンのような手指からは想像もつかないほど優しく、それでいて滑るような手つきで深角のちんぽの輪郭を撫ぜる。ふさふさした犬の手が確認するような、愛おしむような手つきで撫でるので、深角はたまらずちんぽを跳ねさせてしまう。脈を打つ熱棒が先走った汁を拭きとるように榛原の指が亀頭を撫でて、握りこみながらゆるゆると扱いていく。

 捲れ上がった縁肉どころか、地続きになっている尻の毛まで濡らすほど蜜を溢れさせる肉壺からぬぷんと指を引き抜くと、「ぁん゛っ♥♥」と大型犬の体が跳ねた。

「ケツ、突き出して」

 深角の言葉に、これから自分が何をされるのかわかりきっているはずの榛原はしかし少しだけ逡巡するような素振りを見せる。ぎこちない手つきで劣情を撫でられている深角としては、その様に何をいまさらと思わないでもないが、少し恥じらいのある方がかわいげがあるのもまた確かだ。おずおずとした様子でキッチン台に手を突いてスウェット越しの巨尻を後ろの深角に向かって突き出すと、そのまま期待するように尻尾をわさりと一回だけ動かした。

「ほら、背中は?」

「んん゛っ……♥♥」

 つ、と深角の指が広い背中を滑る。それを嫌がるように丸まっていた背中が弓なりに反るので、深角はその後頭部に「お利口だねえ」とにっこりと微笑んだ。それで、あちこちに繕った跡の残るスウェットのゴムが通ったウエストバンドに手を添える。大型犬がずっと触っているちんぽから手が離れないように折り重なるように密着して、反った背中に吐息をぶつけたまま、深角は手元を見ずにずるりとそれを引きずり下ろす。

「んぅっ……え、衛人っ……♥♥」

「なに? アズ」

 どっしりした下半身を深角に差し出しながら、もじもじと身を揺する大型犬と肩越しに目が合う。艶っぽさが増して見えるのは、普段ならピンと天を指す三角耳がだらしなく斜めに寝そべっている上に、ハァハァと荒く息を繰り返す半開きの口からピンク色の舌が見え隠れしているからだろう。それで、恐る恐るという様子で言葉を紡ぐ。

「ご、ご飯おそくなっちまうってぇ゛……♥♥」

 てっきりまた口だけの抵抗を繰り返すものかとばかり思っていた深角は、自分の見立ての甘さを悔いた。懇願するような声音に、股間に一層の血流が集まるのを感じてはしたなくちんぽを跳ねさせてしまう。そこに触れたままの榛原には興奮が伝わってしまったかもしれない。ただ、その台詞がいかに煽情的かはわかっていないのだろう。

「いいよ、後で」

「そ、そういうことじゃ……あっ♥」

 ずるん、と。ゴムウエストのスウェットは容易くずり落ちる。尻尾穴を通る尻尾だけが抵抗していたが引っ張り続けると尻尾穴をくぐり、くるんと丸まって定位置に戻ってくれた。反動で、あるいは榛原が身動ぎしたために、小麦色の尻がだぷんと波打つのが毛皮越しにもわかった。

 丸々とした尻と丸太のような脚がキッチンスペースの蛍光灯に照らされるのを嫌がって所在無げに揺れる。深角はそっと腰を引いて榛原の手からちんぽを取り上げると、片手が濡れてるのも厭わず両腕を毛むくじゃらの腰に添えた。

 腰の厚みがすさまじすぎて手のひらで掴みきれない。ふとましさの中に詰まった筋骨を確かめるように、腰に添えた手を揉むように動かす。足元を見るようにその股座を後ろから一瞥すると、そこには一対の丸い核を内包ふっくらとした陰嚢が重力に引かれて揺れていた。薄く毛の生えた膜に覆われている睾丸達は体格に見合った大きさをしていて、深角は鶏卵よりも大きいだろうなと確信を抱く。持ち主がどれほど乱暴に扱ってきたのかを物語るような黒ずみ方をしたちんぽがその股間に下向きにぶら下がっていて、大根サイズのそれは質量がありすぎて十分に血が通りながらも頭を上げられずにいた。先端から銀色の糸を床に向かって伸ばしていて、はっきりと欲情している様を認めると深角はわけもなく心が晴れやかな気持ちになった。

「ふっ、あぅう……♥♥」

 腰を掴んでいた両手を滑らせるように尻に沿えると、押し開くように外側に向けて引っ張った。ぐぱあ、と尻たぶの中で秘されていた肉汁と芳香が混ざりあって、男の鼻をくすぐる。溢れた愛液はべっとりと尻たぶの間に橋をかけていて、それが沁みこんだ尻の毛が細かい毛束を幾つも作り上げていた。

 自分の影が下半身を突き出す大型犬にかかっているので仔細にはわからなかったが、俯いてある程度位置に当たりをつけながら痛いほどに勃ち上がって快楽を求めている雄槍で尻の谷間を探ると、濡れた毛に撫でられる感触の中にぬるついたスライムにも似たそれを亀頭に覚える。

「っ、ひっ♥ あ、ぁあ゛……♥♥♥」

 大型犬が息を呑むのがわかった。事前に準備していたのかと疑って止まないほどに犬膣はもはや濡れそぼっていて、既に受け入れる態勢を十二分に整えているようだった。むしろ、大して拡げていないにも関わらずぽっかりと口を開ける淫らな洞は、閉じようにも閉じきれない様相でヒクヒクと半開きの口を開閉させていて、呼吸に合わせて亀頭を緩慢に撫で回していた。この大型犬の素質もあるだろうが、日々の中で深角が仕込んだこともあって縁肉が捲れ上がって存在感を増している蜜壺は多少指で中をかき回されただけで粘質な音を立てるほどになっており、ローションいらずの淫らな肉孔と化していた。

 なんの感慨もなく、深角はそれがまるでいつものことであるように腰をぐっと突き出した。芯のある熱棒が宛がわれた窄まりに突き刺さる。みっちりと閉じた括約筋をこじ開けて、馴染みのある体温の奥を目指す。

「ッぃ゛♥♥♥ あっ、ぁぁ゛ぁ、~~~ッ……♥♥」

 ビクン、と身を跳ねさせた大型犬はむっちりとした下半身をぐいぐいと後方に立つ男に押し付けたまま、背筋を弓なりに反らせて天を仰ぐ。耽溺するような、諦めるような悩ましい声が漏れてヘッヘッと舌を出しているのがわかる。

 腰の動きに合わせて押し付けられる男の欲棒を、ぬっと盛り上がった縁肉が蠢いて腸ヒダを伸縮させながら易々と飲み込む様は貪り喰っているような品の無さすら感じてしまう。上向きにそそり勃つ深角自身は、隙間なく肉が詰まって閉じた腸壁にちょうどちんぽ一本分の余裕を作り出すように遠慮なく滑り込んでいく。亀頭や裏筋が段々になったヒダを抉って、その身を擦りつけながら深部を目指す。

「うっわ……アズ、マンコ動かしすぎ……っ」

「っふん゛んぅ、ふーっ゛♥♥ だめ、だってぇ゛♥♥ 言ってん゛のにっ、こんなぁ゛♥♥♥」

 少し長さのある男のちんぽも、しかし巨漢の直腸にとっては易々と飲み込めるサイズのようで、腰が止まらない深角はたまらず根元までをその中にねじ込んでしまう。ごりゅっ、と沈んだ亀頭が円筒形の突き当りを抉って、股間から全身に響く切ない熱に自分勝手な抽挿を開始してしまいそうになる。自分の下腹部を毛足の短い犬の尻毛に擦れさせるように軽く腰を左右に揺らして、我先にと上り詰めようとする身勝手の波が過ぎ去るのを待った。

「っひ、かきまわすなぁ゛♥♥ ケツっ、けつん中こすれるのっきもちぃい゛からやめろぉ゛♥♥♥」

 余裕げな雄膣の具合とは裏腹に、大型犬は息も絶え絶えにかぶりを振って男を甘く非難する。ねっとりと蕩けた秘肉をまとわりつかせて、ちんぽに媚びるようにぐねぐねと身をこすりつけるマンコと違って、シンク台に軽く手を突いて後方に尻を突き出す腰は頼りなげに震えていて、くるんと丸まった尻尾の毛足がススキのように揺れている。

 とはいえ、樹齢何千年の杉を思わせる逞しい脚が二本もしっかりと床を踏みしめてその自重を支えているので、今すぐに倒壊するような気配は微塵も感じられない。故にか、反らした背中の向こう側で頭頂部の三角耳をぺたりと寝て時折ぴこぴこと動くのも合わせて、その様は……ケツにちんぽを挿入されて体を震わせている様は欺瞞に満ちているようで、深角の目にはこの上なく煽情的に映る。これだけの巨漢が直腸をちんぽで抉られただけで生娘のように体を震わせる嘘みたいな光景に騒ぎ出す雄丸出しの征服欲は深角の飢餓を囃し立てる。砂漠にいるような喉の渇きをおもむろに覚えて、ごくりと生唾を喉に追いやって応急処置を施す。

「ケツ、じゃないだろ。マンコでしょ?」

 言いながら、尻たぶに添えた両手にぐっと力を込める。指を押し返す肉の分厚さ、逞しさは流石のもので、深角は負けじと毛皮がへたれるくらい乱暴に尻肉を掴んだ。

 ずっ、とわざと緩慢に腰を引く。大きくグラインドさせるのに合わせてぬくまった粘膜に根元まで収められていた肉刀がずるる、と抜き放たれる。

「っひッぃ゛いぃい♥♥♥」

 そそり立つカリ高の生ちんぽに腹側の腸壁をこそがれて、榛原は口から悩ましい濁声が上がるのを抑えられない。排泄にも似た感覚を味わいながら、薄い筋膜と共にある腸壁がみちみちと摩擦されるのがわかると、ぼてっと重たげに首を垂れたちんぽがびくりと脈を打った。

 内臓を押し上げる熱が失われて、圧迫感が薄まって楽になったはずが、何故かそれを惜しむ自分を止められない。それと同時に次に訪れる瞬間を、本格的に始まる蹂躙を待ちわびて背筋をぞくぞくとした官能が走る。溜めを作るようにゆっくりと抜かれたちんぽは、器用にも亀頭部分だけを窄まりの中に嵌め込んでおり、最も円周が大きくなったカリ首の段差で輪っか状の括約筋を伴う粘膜を引っ掻いていた。

 ちゅぽちゅぽと入り口部分を小刻みに往復する熱に擦られて、不随意に股間に力が入ると抜けるちんぽを惜しみながらも押し出すように弛緩していた括約筋が噴火口をヒクつかせる。

「くぅ……っ。ほらアズ、先っぽだけ入ってんのわかる?」

「ん゛ぅッ、っふぅ♥♥ ふぅーっ♥♥♥ わ、わかる、わかるからっあ゛♥♥」

「ケツ揺れてるね。どうして欲しい、とか聞いておく?」

 言われながらも無意識にもじもじとデカケツを左右に揺らしていた大型犬は「う、ぅぅ゛~ッ♥♥」と低く唸る。深角とて、今すぐにでも腰を突き入れて乱雑にピストンを開始したい気持ちで溢れてたまらなかった。しかし、このまま腰を振ったらそれこそ三擦り程度で果ててしまいそうなほど眼前の光景に昂っていたのもあって、喋りながら自分を落ち着かせるのに必死だった。

 シンク台の直角になった縁を掴むように手を突いたまま俯いて唸る榛原が、ちらりと肩越しに視線を送る。それから、イヌ科にしては短く見えるマズルをがぱりと開くと肉厚の舌を波打たせて懇願してみせた。

「た、たのむぅ♥♥ は、はやくケツっ♥♥ ケツ、まんこずぼずぼしてくれよぉ♥ がまんできねえ、早くちんぽハメてくれえ♥♥♥」

「いいの? ご飯遅れちゃうよ?」

「う、うるせえ♥♥ お、お前がはじめたんだろぉ♥♥♥ せっせきにんっ♥ 責任とってぇ゛おまんこっ、してくれよぉ♥♥ はやくぅ♥」

 その媚態に、深角は自分の平坦な胸に切ない痛みが走るのを認める。すっかり変わってしまった、一年前だったらとてもじゃないがこんなこと言わなかっただろう榛原の声は、深角の知らないところにあった良心を少しだけ引っ掻く。出会った頃では想像もつかない巨犬の痴態に呵責を覚えるとともに、どうしようもない熱が下半身を蝕む。

 本気を出せば自分など軽く一ひねりできるだろう膂力の備わったその体を、ちんぽ一本で支配下に置いてふにゃふにゃに弛緩させるのは他ならない自分だ。素朴な黒縁眼鏡を掛けながらも太い眉根が寄っているように見える三白眼のためにどことなく険しく見える表情を、だらしなく舌を出して下がり眉に歪ませるのは他ならない自分だ。

 性知識もなく無垢で純心だったこの犬を、ちゅぽちゅぽと肛門を出入りするちんぽに対してデカケツを揺すってねだるほど淫乱に作り替えたのは。

 水中の気泡のように沸々とこみ上げるこの思いは、どれだけ綺麗な言葉で飾り付けたところで所詮は歪んだ征服欲でしかなかった。それを憂う権利が自分にあるのかどうか、男にはわからないフリをした。寸胴な腰回りのシルエットを作り上げるぼこりと浮いた腰骨を強く押すように持って、緩い蜜壺から愛液が跳ねるほどに思い切り腰を突き出した。

 ずぷぷっ、と粘着質な音を立てて深角の長槍は一息に沈み込む。突然の攻撃に硬直したらしい腸壁は一瞬だけ力が入って収縮しきったために凝り固まっていたが、深角の熱杭はそれをごりゅごりゅと容赦なく削り奥へ達する。巨漢の犬は胎内を侵す異物感に反射的に腹圧を掛けて力むが、排出しようと迫り出す柔肉を嘲笑ってちんぽは易々と奥へ突き進む。むしろ迫り出したばかりに、より激しく、より面積を増して表面を摩擦されてしまい、体を劈く性感に自分の口から随喜の声が迸るのを止められない。

「んん゛ぉォッっほぉ゛ぉおッ♥♥ ぎ、きたぁ゛ああ♥♥♥ まんこっ♥♥ おまんこされんのぎもちいぃぃ゛♥♥」

 体を内から抉る熱と質量に押し出されるように濁声を上げる榛原は、そこが玄関にほど近いキッチンであることも忘れた様子で全身を随喜に震わせている。一瞬だけその声のボリュームを憂慮した深角は、一人暮らしにしては広く巨漢の榛原には手狭な二口コンロ付きキッチンの壁に掛かる時計を一瞥してその問題を切り捨てた。深夜ならばいざ知らず、夕方ごろに大学生が騒いだところで大した問題にはならない……はずだ。

 もちろん限度はあるが……と思いつつも、男は腰を止められない。それが嬌声と知られればどうなるかわからないが、そんなことよりともかく、深角は根元まで挿入した際に亀頭を押し上げる柔らかな鉱脈を掘削するように、引いた熱杭を何度も突き込む。深角の手を離れてぷるんと震える尻たぶと深角の腰がぶつかり合う打擲音は粘着質な水音を伴っていて、キッチンに響くそれを嫌がるように榛原がかぶりを振る。

「んッ、ぐッぅ♥♥ ひっぃ゛ぃい♥♥♥ やべ、やべえぇ♥♥ 音ったてるなあ♥♥ まんこ♥♥ けつン中、まんこになってる音するっ♥♥♥ やだぁ゛♥♥」

「もうとっくに、立派なマンコだろっ。何を今更……っ」

 振りかぶったハンマーを打ち下ろすように遠慮なく腰を叩きつける。フローリングを踏みしめる脚に力が入って、突き込んだ性器が抜けないように動けるだけの振り幅を演出する。深角の前腿が、腰を落とした大型犬の尻たぶを打って絶えず打撃音を響かせる。へたれた耳を忙しなく動かす巨漢の尻の間で明確に盛り上がった無毛の陰唇を目掛けた力強いストロークがその上に重なって、ばちゅんばちゅんと他に形容のしようがない交接による二重奏を奏でていた。

 音の力強さに引き立てられるように、深角の股間に絡んで床に雫を落とすほど溢れた愛液が徐々に泡立っていく。赤黒い土手肉が白いヴェールをまとうのを厭うように、血走った熱杭はそれを洞の奥へ押し戻そうと突き込んで抽挿を繰り返す。

「っふっぅ♥♥ ぐぅうッ、ぉぉッぉお♥♥♥ あっ、あ゛ーっ♥♥ やめろよぉ♥♥ けつっ、けつかき出される♥♥♥ おッおんなみてぇに、ちんぽでえぐられてるッうぅ゛♥♥」

 しかしそそり立つ深角自身が作り上げる上反りの曲線は、押し込むだけでなく引きずり出す方でも殊の外活躍するようだった。あちこちがうねって曲がりくねっている直腸を無理やり真っすぐに正すような角度に加え、返しになっている雁首が腰を引く時に榛原の腹側の粘膜を暴力的なまでに苛むらしく、その摩擦にじっとりと毛皮が湿った巨体を震わせて仰け反ったまま声を上げてみせるのだった。

「ケツん中マンコにされて女の子みたいに声上げて……ちんぽも、こんなに大きくして。スケベだなあ、アズは」

 巨体を抱えるように手を前に回すと、腕が回りきるか不安だったが辛うじて指に熱い肉塊が触れる。深角の手指が掠めた犬の巨砲は、今や黒ずんだ包皮に太い血管を浮かび上がらせながらはっきりと充血していて、全体を覆う皮に抵抗するように真っ赤に膨らんだプラムのような亀頭が顔を出していた。

 芯全体が充血して体積が増したためか、手放しでも包皮が若干ながら後退して中途半端に剝けており、全容とまでは行かずとも多少の露茎を果たしている。故に、包皮の中で外気に触れることなく蒸されていた饐えた淫香の素が男の指先をぬちゃぬちゃと汚してにおいを拡散させる。

「っぉほぉ゛ぉおおぅ♥♥♥ ちんぽっ♥ ちんぽぎもちイイッ♥♥ ちんぽっちんぽぉ゛ぉおもっとなでてぇ♥♥ ちんこ触ってくれぇええ♥♥♥」

 体温の高い獣人の皮膚に蒸されながら、性器特有の淫気を孕んだそれは得体の知れない悍ましい粘つきで深角の細指を汚すも、その熱さを確かめるように皮に包まれた肉芯に塗り広げる手は止まらない。果物の皮でも剥くような気軽さで、指でたるんだ皮を摘まんで伸ばすように引っ張ったり、指に付着した恥垢を拭うように撫でたりして弄ぶ。

 踊る指先に苛まれ、持ち主の性分を映したような素直な一物がびくびくと戦慄いて悦ぶのがわかった。恥部を触る男の手は自分に快感を与えてくれるとすっかり覚えてしまった榛原がさつまいものような太さの性器ごとデカケツを揺らして媚びるので、奥を抉るように力強く打ち込んでいた腰の動きをただ前後する動きに切り替える。突き込むというより、じゅぼじゅぼと出し入れをするのが目的のピストンでも蕩けた粘膜にちんぽを摩擦されるのは変わりなく、これだけでも果ててしまいそうな悩ましい熱が原動力となる。

「ん゛んぉぉおぉお゛~~ッ♥♥ かッかき出されるぅまんこ♥♥ おまんこじゅぼじゅぼされてっ♥♥ ひっくり返っちまう、まんこ肉裏返っちまうよぉ゛♥♥♥」

 みっしりとした柔肉で構成される直腸を上反りの杭に蹂躙される大型犬にとっては、ただの抽挿だけでも瀑布のような刺激となる。血管を浮かせて脈を打つ剛直は榛原の蜜壺を出入りするたびに、天を衝くように上を向いた亀頭がごりゅごりゅと筒状になった粘膜の天井を引っ掻いていく。返しになったカリ首が腸ヒダを掴んで、引きずり出そうと無遠慮にその身を擦りつけるのだった。

 内臓を突き上げる圧迫感がなくなったと思いきや、敏感になった腹側の腸壁をひたすら摩擦されるその動きに、放尿感にも似た切なさが股間を貫いた。きゅんきゅんと疼いてしまう下腹部は、今か今かとそれを待ちわびて腸壁をうねらせる。

 詰まった柔肉をかき分けて、自分の性器を押し付けて扱くように擦りつける独善的なピストンすら、遊び慣れていない大型犬には視界に星が飛ぶほどの快楽だった。

「っぃ、ひぃッ♥♥♥ ぁ、ぁ~~ッ♥♥ え、えいとぉっ♥♥ おれっ、おれやばいっ♥♥ で、出ちゃいそッぉ……ッあ♥♥♥」

「っふ、ぅッ……いいよッ。出しちまえよ、手伝ってやるから、さっ」

 殆ど抱き着くように腕を前に回してようやく指が届く犬のちんぽを、深角は言葉通りに慣れた手つきで責め立てた。手のひらで掴みきれない太さの雄根を、それでも握りこむように五指を添えて乱雑に上下に擦る。指の腹がぐちゅぐちゅと粘液で滑って、ゴム質にも似た質感の竿の表面を磨いて腰を前後に振り続ける。

「ぃ゛ッ、いぃィ゛ッ♥♥ きもちっ♥♥ きもちぃぃ♥♥♥ っは、あっ、ちんぽっ♥♥ ちんぽもまんこもっ、気持ちいいぃっ♥♥♥」

「そっか、気持ちいいの好きだもんな」

「お、おうぅ♥♥ 好きっぃ♥♥♥ まんこされんのもっ、気持ちよくてぇ゛♥♥ すきっ、すきぃ、たまんねえぇ゛え♥♥」

 沸騰直前のような胸中を、榛原の野太い声がかき乱す。ごうごうと音を立てる換気扇が、立ち込める汗臭さと恥垢の饐えたにおいを懸命に吸い込んでもなお深角の鼻には己自身を狂奔に駆り立てる淫らなかぐわしさが忍び込む。

 文脈を無視して、この大型犬の口が好きという二文字を紡ぐたびに情けなくも勘違った多幸が全身を包み、胸の奥から広がる熱が全身に循環する。ぐつぐつと煮え立つそれが、尿管で燻ぶるのがわかる。水門が開いて、解き放たれるのを待つように充填されているのがわかる。ぴったりと寄り添った毛むくじゃらの身体はじっとりと汗ばんでいて、風呂上がりだというのに犬らしい体臭を毛細管現象でそこらに蒸散させている。

 深角は片手で手早く大型犬が着ているTシャツをたくし上げる。巨漢を包むにはサイズが小さいそれはぴっちりと肌に張り付いているようで、中途半端に背中と腹を露出させたままその場に留まっていた。それ以上捲り上げると豊満な胸板につっかえそうだったので、深角はひとまず露わになった背中に寄りかかるように体を重ねて、腰だけをカクカクと動かしたままちんぽを掴んでいた腕でその巨体を抱き寄せる。軽く目を伏せて、露わになったぼこぼこと筋肉が隆起した背中の獣毛に遠慮なく鼻をくっつけて息を吸うと、榛原梓という雄獣人個人の体臭がダイレクトに脳幹を揺さぶった。トップノートは洗いたての獣人用せっけんのシンプルながらもムスクにも似たにおい。それを彩る出来立てのポップコーンのにおい。ミドルノートに体育会系らしい力強い汗臭いにおい。体臭を骨太に支えるペットショップのような毛皮の蒸れた獣らしいにおい。ラストノートは変わらぬ汗臭さに、立ちのぼるチーズのような恥垢のにおいが加わった。

 セクシーさやダンディズムを演出する香水とは全く違う、武骨で芋臭い垢抜けない体臭。エチケットや身だしなみの中では下位に相当するそれが、今はたまらなく魅力的に感じてしまう。このにおいごと犯してやりたいと、ちんぽを包むぬるついた愛しい熱を擦る腰の動きが一層激化してしまう。

「っあ゛、あーッ♥♥♥ 出るッ、でちまう♥♥ こんなっ、立ったままぁ♥♥ 立ったままおまんこされてッ、ちんぽからザーメン出るっ、漏らしちまうぅ♥♥♥」

 毛むくじゃらの背中を震わせる振動に深角はトリップから帰着する。頭を上げて密着していた上体を起こすと、榛原がヘコヘコと腰を揺らしているのがわかった。間隔としては身動ぎに近しい振り幅だが、元々がドラム缶のように豊満なために軽く揺さぶられるだけでそれなりの迫力があって、深角が握る仮性包茎のちんぽも無毛の手に擦り寄るようにぬちゃぬちゃと音を立てて前後していた。

「っあ、コラッ……!」

「っひ、ぃぃ゛♥♥♥ おぐっ、奥きたああ♥♥♥ まんこの奥きもちいぃぞぉ♥♥ もっと、もっとぉずぼずぼしてくれえ♥♥」

 しかし、深角の意図していないタイミングで突き出されていたデカケツが引かれるので、ずるりと性器が抜けそうになってしまって、咄嗟に奥まで突き込むことで挿入を保った。背中を反らして尻を後ろに突き出した状態をキープしてもらわないと、挿入がし辛いどころかその分厚すぎる尻の肉に阻まれて魅惑の蜜壺まで届かなくなってしまうのだ。

 寝バックとかもしているので届かないわけではないけど、それはそれで浅い位置での挿入になってしまうのだ。けっして自分のが短いとかそういうわけじゃなく、と深角は誰にともなく言い訳を重ねて、ぐいと腰を抱き寄せる。巨砲を覆う包皮をにゅるんと剥くように掴んで、ふとましい腰を後ろに引っ張ると大型犬が「んぁ゛ッ♥♥」と声を漏らして尻を突き出してくる。

 一番最初に伝えた通りの姿勢に直る大型犬に、これなら大丈夫そうだと腰を引いた男は、魅惑の曲線を描く双丘を見下ろして良くない考えを抱く。熱に浮かされた頭では、それは最良の思い付きのように思えて、なぜ今までそれを見落としていたのかと惜しむように左手を互いの胴の間に滑り込ませる。

「っはぁああ゛ん♥♥ まんこぉ♥♥ まんこじゅぼじゅぼされてっ、ザーメン出ッ、ぉ゛ッぉおっほぉ゛?!♥♥♥♥」

 隙間が大きくなる腰を引くタイミングで、ぶるんと形を歪めて揺れる尻肉目掛けて平手を打つ。べしっ、と毛に覆われた肉を叩く打撃音は、大型犬の喉から迸るそれにかき消された。

 叩いたタイミングとほとんど同時に熱杭を突き込まれた蜜壺は、きゅうぅっと食いちぎらんばかりに膣肉が収縮して、奥へ引っ張るように縮こまった腸壁がちんぽを柔らかく揉みこむ。締まった直腸の中は奥の方が更に独立して動いているようで、全体に密着して強く圧迫しながらも亀頭部分を小さく吸着する結腸の動きに思わず息が漏れそうになる。

 さっきよりもいい音を鳴らすように、今度は肘からしっかり振ってスナップを効かせた一撃を加える。ばしん、という音に溜飲が下がる。

「っんぉお゛ぉおお♥♥♥ っひ、た、たたくなぁ゛あ♥♥ や、やめろぉ゛よぉおお♥♥ け、ケツ叩かれながらっ♥♥ おまんこされんのッやばい、やばいっからぁ゛ああ♥♥♥」

「知ってる。さっき勝手に……っ、動いただろ? そのお仕置きだ、ほらっ」

 べいん、と少しミスショット。やはり少しの叩きづらさに、肉槍から手を離して上体を起こした。どっしりとした腰を掴んで、腰を打ち付けるたびに眼下でたぶたぶと揺れる小麦色の尻肉目掛けて手を振り下ろす。ばぁん、といい音がして波打った巨肉の振動が手のひらに伝わる。スパンキングした衝撃とわずかな痛みに、じんわりとした熱が手のひらからもちもちとした尻肉に伝わっていく気がした。

「~~~~ッ♥♥♥♥ っひぃ、きもちぃいッ♥♥ あっ、やばいッ、ほんとにッやばいってぇ♥♥ え、えいとぉ゛っ♥♥」

 腰を軽やかに動かしながら手のひらを鞭のように打ち付ける深角は、叩かれる度に挿入している肉槍をしゃぶりつくすように縮こまる膣壁の動きに体の中心が切なく疼くのを止められない。一度味わってしまったそれを貪るように、間を開けながらぴしゃりと大きく突き出た尻肉を打ちながら前後に腰を揺すり続けた。

「っひぃ゛、あっ、ぁ~~~ッ♥♥♥ だめっだめだぁあッ♥♥ 出る、出るっぅ、ざーめんッ♥♥ おまんこされながら種汁出ちまうぅぅう♥♥♥」

 背中を弓なりに反らせて、まるで遠吠えでもするように天に向けたマズルで榛原が限界を訴える。シンク台に突いていた片腕が性急に動いて、尻を穿る剛直に押し出されて白濁が溢れてきた己のふてぶてしい肉棍棒を握ると、がしがしと乱雑に上下に扱きだした。充血しきってパンパンに膨らんだ赤黒い亀頭を覗かせる肉砲は、剣道をしている大型犬の握力に負けじと硬度を増してびくんと跳ねる。ぐちゅぐちゅと粘っこい音を立てて、手の獣毛が恥垢と漏れ出た白濁ととめどない先走り汁で汚れるのも厭わず、一心不乱に皮オナに耽る大型犬にはとてもじゃないがまともな思考能力が、況や知性が残っているようには見えない。

 尻を叩かれ、直腸を穿たれ、結腸をノックされ、腸壁を削られ、それでいて榛原は喜悦に声を濁らせて尻尾ごと腰を揺らし更なる快楽と絶頂を求めて自分の一物を扱いている。

 普段の穏やかな様相とは似ても似つかぬ嬌態に、達成感にも似た征服感が胸の中を満たして、深角は円筒形の上側をより抉れるよう角度を付けながら腰を動かす。

 ほとんど同時だった、亀頭を優しく包みながら吸い上げる結腸の動きに突き当たるのと、まるで痙攣するようにぐねぐねとうねり出した腸壁が竿全体を扱き上げるのは。

 そして、背後に立つ深角に押し付けたデカケツを震わせて、榛原が絶頂を謡うのは。

「出るっぅ♥♥ ざーめんっ、ザーメン出すぞぉぉッ♥♥♥♥ っぐ、ぉ゛ぉぉおおぉォあぁッ♥♥♥♥ イぐッ♥♥ イぐイくイくッぅぅう♥♥♥♥♥」

 大型犬の身体が一瞬だけ大きく膨らんで、全身の筋肉が硬直する。肩をすくめるように背中がほんの少し丸まって、元々太い手足が更に空気を吹き込んだようにパンプアップする。

 ぎゅっと締まった括約筋が深角のちんぽに制止を求めてしがみついてくるが、それを振り切って腰を振るのがたまらなく気持ち良くて、自分もそろそろ近いことを認める。

 膨らんだ筋肉に押し出されたように、体調を崩した時に深角に出された粥に似た白濁がキッチンの床に叩きつけられる。高所から水を落としたような、バタタッという重々しく勢いのある衝突音はその元凶となる白濁液がどういうものなのかを伝えてくるように思えた。

 野球の硬球というより、ソフトボールくらいの大きさのあるふぐりが身を寄せ合うように縮こまってヒクヒクと痙攣する会陰部に合わせて所在無げに揺れている。ごろっとした二玉は毛だらけの皮に包まれながら小さく蠢いていて、吐き出した分の子種を現在進行形で生産しているようである。

「イくっ、出るぅ、まだざーめん出るッぅぅうう♥♥♥ あッ、っはぁああああ♥♥♥ 手ぇ止まっん゛ねぇ♥♥♥ ざーめんまだ出てるッ♥♥ ぜんぶっ♥♥♥ 全部出してっキンタマ空っぽになっちまう♥♥♥」

 栓の壊れた蛇口のような勢いで精液を床に打ち付ける欲棒を力強く扱き上げながら、大型犬がぺったりと耳を寝かせたまま喘ぐ。ぼたぼたと塊が落ちるような音が示すように、白い水溜まりがキッチンのフローリングの上に出来上がっていて、青臭いタンパク質のにおいを空気に混ぜていた。水滴が落ちた、というより殆どバケツの中身をぶちまけたような惨状になっているそれは獣人種だからというだけでは説明がつかないもので、この大型犬の精力の強さを雄弁に物語る。最初の勢いこそ失われた今、長大な一物を通る尿管の中にまだ留まっている半ゲル状の白濁を押し出すように扱くにつれて、鈴口からはもはや流動体ですらないつぶみのある粘液塊がどぷどぷと垂れ落ちていく。

「っはぁ、俺も、そろそろッ……!」

「ん゛ああ♥♥♥ いいぞォ♥♥♥ 出してっ、たくさん中出ししてくれぇえ♥♥♥♥ まんこにざーめん浴びてッびくびくってするの♥♥ すきぃ♥♥♥ ざーめんっ♥ ざーめん出してぇ♥♥♥」

 硬直して凝り固まっていた腸壁が花開くように緩んで、出入りする深角の竿を明確に意識して絡みついてくるのがわかった。突き込めば引き込み、引き抜くと押し寄せる。きゅっと締まった膣肉が引き抜く瞬間には柔らかくほどけて、竿を追い出すようにせり上がってくる表情の変化が腰に愉しい。排するように腹圧がかけられて蠢く柔肉でみっちりと隙間なく埋まった雄膣をかき分けて再度突き込む時の摩擦はまさしく万の舌で舐め上げられているような快楽を齎してくる。独立した動きで竿の先端を優しく締め付け吸い付いてくる最奥部のうねりを意識すればするほど、自分が急速に上り詰めつつあることを実感する。

「くっ、アズ……! 出すぞッ……!」

「ぉっぉおお゛♥♥♥♥ 出せ♥♥ おれのぉおまんこにっ、お前のガキ汁っいっぱい出せえっ♥♥♥♥ おれんことぉ゛孕ませてくれえぇ゛え♥♥♥」

 ゆさゆさと揺れる尻尾が、深角の腹を擽る。もはや拡がりきった上に、床に垂れるほど愛液著しい蜜壺にちゅぷちゅぷとピストンを重ねながら、深角は自分の知能指数がどんどん低下していくのを感じていた。

 限界が近い。裏筋にむずむずとした腰の浮くような感覚を覚えて、それを舐める腸ヒダの動きをはっきりと知覚する。はしたない台詞を口にする大型犬の広い背中も、腰の当たるたびにぶるんと波打って揺れる丸い尻肉も、けだものが唸るような低い声で媚びる濁声も。全てが深角にとって悩ましい熱となって作用する。敏感になった粘膜を擦ることで生じた官能が脳髄を痺れさせる。ぞくぞくと肌が粟立って、快楽を貪る腰が下腹部に蟠る切なさの解放を夢見て力強いストロークで踊る。

 突き込んで、引き抜こうとして、諦めた。ずるる、と抜く途中に裏筋を這う腸ヒダにとどめを刺されたから。

「っ、出るっ、イく……ッ!!」

「いいぞッ、イけ♥♥ イっちまえ、ざーめんいっぱい、っあ、ぁ゛っはぁあああ♥♥♥♥ あぁ゛~ッす、すげえぇええ♥♥♥ きたっ、お前のっぉ゛ぉざーめんん゛きたぁあぁあ♥♥♥」

 姿を視認せずとも、敏感になった腸壁に多量の飛沫が飛び散る感覚を榛原は鋭敏に感じ取っていた。それでなくとも、背後に立つ深角に掴まれた腰や触れ合う尻から伝わってくる彼の痙攣が待ちわびたその瞬間の訪れを伝えてくる。絶頂に至りながらもかくかくと揺れる腰によって一滴残らず腹の奥底に注ぎ込まれる何の生産性もない行為に、榛原はそれでも尻尾を無垢に躍らせた。

「すげっ、すげええ♥♥ まんこん中にっ、いっぱい♥♥♥ ちんぽがびくびくしてっ、びゅーびゅーざーめん出して……おれっ、オンナに♥♥ お前のおんなにされちまってる、メスにされて孕んじまうぅう♥♥♥」

 何事かを言おうとした深角はしかし土石流のような快感の波の中で立っているのがやっとで、十分な息が喉から出なかった。喋るのに使うリソースがなくて、ぎり、と強くしがみついたふとましい腰に縋りつくように体を押し付け、せめて一番深いところで射精しようとぐいぐいと最奥を抉りながら負けじと濃厚な白濁液をその場にまき散らす。

 飛び出した遺伝子は無理やりこじ開けられた腸壁の間に居場所を見つけてぼってりと居座りながら、断続的に脈を打ち今なおゆるゆると粘液を溢れさせる熱杭に腸のうねりに合わせてねっとりと絡む。自身が放った精と、大型犬の胎内の熱が溶け合って自分の性器を包み込むその瞬間に、深角は耐え難い多幸感を覚える。IQの低下した頭には抱えきれないほどのそれは、閃光のように病みつきになるほどの快感と幸福感を体に焼きつけて、男が息を整えると途端に鮮烈な記憶だけを残して波が引くように去って行ってしまう。

 それを惜しむようにぐいぐいと腰を押し付けると、「ぁぉお゛っ♥♥」と榛原が嬉しそうな声を上げる。射精した冷静さで、料理をしていた背姿に欲情した自分を見つめなおすと途端に胸をかきむしりたくなるような恥ずかしさを感じて、努めて冷静に振る舞う。

「っはぁー♥♥ はっあぁ゛……い、イっちまったぁ……こ、こんな、とこでえ♥♥」

「っふぅ……でも、興奮しただろ? またこんなにいっぱい出して……あとで掃除しないとね?」

 床に広がった白い水溜まりは、キッチンに立つ大型犬の三十センチ越えの足にも降りかかっているように見えた。それを一瞥して、深角は息を整え平静を装いながらそう宣う。水溜まりというには、なんだか表面がぼこぼことしていて、それがただの液体でないことを示しているのがここからでもわかった。

 畳一畳くらいありそうな広い背中を小さく震わせて、耳を忙しなくピクつかせながら肩を上下させる榛原に、腸内に収まったままの一物が反応してしまう。それを感じ取ったのか大型犬の巨体がぶるる、と身震いするときゅうきゅう膣内が締まるので深角は平静を取り繕うのに苦労する。

「さ、て。じゃあまずシャワー入ってからメシにでも……」

「……な、なぁ♥♥」

 天を向いていた犬頭が俯いてハフハフと荒い息を繰り返していたので、深角が宴の終わりを告げようとしたときだった。ゆっくりと振り返るマズルが肩越しにその言葉を遮ったのは。

 どき、と心臓が跳ねたのは肩越しにぶつけられるその目のためかもしれない。ずっと背中を見ていたために、久しぶりに直視した黒縁眼鏡のレンズ越しの瞳が思ったより妖しく濡れていたからかもしれない。

 その目は、とてもじゃないが満足したようには見えなかった。武骨な眼鏡を掛けて、芋臭くて、垢抜けてない男性性の塊のような相貌は、深角にとってこの上なく煽情的で、今まで見てきたどんな雄よりも艶麗に映る。ねだるようで、それでいて甘えるような表情で大型犬はマズルを縁どる黒いゴムめいた唇をべろりと舐めると、後ろに立つ男に視線を送りながら唸った。

「……ふ、布団で、もっかい……シねえ……?♥♥」

 きゅっと締まる柔肉が、挿入されたままのちんぽを鼓舞する。それで、ぐっと下半身に血流が集まってびくりと跳ねたのが返事みたいになってしまって、少しばかり身勝手な羞恥を覚えたのだった。


 ♂♀


 実は榛原梓という犬獣人が深角衛人という男とこのような関係を持ったのは、およそ一年ほど前からのことだ。当然ながら、それまでにお互いの間に面識はなくれっきとした赤の他人同士だった。

 元々は東海地方の片田舎に住む榛原にとって、東京というのは憧れの地だった。最寄りのコンビニに行くまで車を飛ばして二十分、通っていた高校へは一時間ほど歩いたのちに五十分バスに揺られて登校。昔からの遊び相手は祖父母の畑の芋虫とドジョウと澄んだ川水で、所属している剣道部の練習相手はあちこちが凹んで曲がっている打ち込み台。十八年間をその環境の中で生きてきた大型犬にとって、都会というのはテレビの中でしか見たことのない異世界に等しかった。

 テレビや物語などでしか見ることのできない地への憧れの一心で、榛原は都内の大学への入学を決める。男手一つで自分を育て、祖父母の畑仕事を手伝いながら街で警備会社の仕事に就く父の反対を説得できたのはその入試の成績が上位十名に食い込んでいたためによる特待生の資格を満たしていたから、というのが大きい。年間の授業料の半額を減免してもらえるという大学からの通知は、入試当日まで上京を渋っていた父の首を縦に振らせるには十分すぎる吉報だった。

 こうして晴れて都内の大学生となり、垢抜けた友人たちとのキャンパスライフを夢見た榛原は、しかし入学式とオリエンテーション初日で同じ学部の新入生がグループを組み談笑する中で早々に孤立することとなった。

 理由は二つ。一つは、榛原は知る由もないが、学部の新入生たちはSNSなどを通じて合格した時から同期達と独自に集まったり顔合わせをして交友を深めていたためだった。既に仲良しグループがあちこちで出来上がり、まるで顔馴染みかのように軽々と会話をこなす彼らを見て、榛原は急速に自分に自信が持てなくなってしまった。無論全員が全員親しくなっているわけではなく、同じように一人で室内に佇んでいる者も少なくはなかった。しかし榛原は、明らかに地元の友達とは違うどこか洒落た印象を持つ彼らの振る舞いにすっかり気圧されてしまい、そのような振る舞いや会話ができなければ人に話しかける資格はないとまで考えてしまった。一度そう思ってしまうと、話しかけるタイミングをどんどんと逃してしまうことになり、榛原は結局一か月ほどの間誰とも喋らずに家と大学の往復を繰り返すこととなる。

 二つ目の理由は、榛原梓という巨漢を客観的に見たときの問題だった。田舎育ちの、というわけではないが、この大型犬の図体はオリエンテーションの際に教室に集まった学部新入生の中でも極めて稀な巨体をしており、良くも悪くも目立っていたというのがある。加えて、眉間が狭く見える生来の太眉のために元々の目つきが悪く見えるというのもあった。その上に瞳が小さく見える分厚いレンズの黒縁眼鏡を掛けるのだから、その印象はどちらかというと常にしかめ面をしている寡黙な巨漢というところで、とてもじゃないが親しみやすい印象を持てるものではなかった。更に言うならば榛原のような体格の獣人は他にもいることにはいたのだが、それらの大体はスポーツ推薦でその学部へ入学して来た生粋の体育会系であった。一般入試や推薦などで入学してきた新入生らと彼らとの間に明確な軋轢があったわけではない。ただ、暗黙ながら体育会系は体育会系で、一般学部生は一般学部生でつるむ空気がそこには頑として存在した。

 故に、どちらにも属せぬ榛原はあっさりと孤立した。これらの理由の一つ目が榛原が自分から話しかけ、動的に友達作りができなかった理由ならば、二つ目は周囲から話しかけられることがなかった静的な理由と言えるだろう。

 夢に見た都会での生活、華やかなキャンパスライフに賑々しいビル群の喧騒、地元とは違うどこか垢抜けた空気纏う同年代の彼ら。それら全て、田舎上がりの大型犬にとってテレビの中同様手の届かぬものだと思い知らされる失意たるや。

 アパートに到着した時に家族に連絡したので、そう頻繁に連絡を取るというのもなんだかやるせない。

 上京という理想と現実の相違に五キロほど痩せたころだった。

『あ、ここの席空いてる? 大丈夫大丈夫、端っこ座るからそのガタイの邪魔にはなんないって』

 当時から変わらぬ片方の側頭部だけを刈り上げた威勢の良いヘアスタイルに似つかわしくない軽薄そうな笑みを浮かべながら、榛原の座る三人掛けの机につく男と出会ったのは。


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「ん゛ぅ……っ♥♥ っふ、っちゅ、ぅんん゛……♥♥♥」

 はあはあと獣のように息を荒げて酸素を取り入れながら、しかし舌の交接は求めて止まない。セックスも当然ながら、キスのやり方さえ知らなかった田舎男はリビングの干したての布団にその巨体を預け、仰向けになったまま覆いかぶさる優男の首に腕を巻き付け必死にその唾液を啜っていた。リビングに移動する際に耳障りだった音楽は止めていたが、そのままスリープモードに入ったらしいマックブックの光を失った液晶が布団でまぐわう二人を映し出していた。敷いた枕で腰を浮かしながら大股を開き、自分の半分ほどもない胴体に丸太のような脚で組みつくさまは遊女のするような行いだが、その迫力はひとつのプロレス技のようですらあった。


 これらは東京に来て覚えたものだった。

 いや、正確にはこの男、深角衛人と出会ってから知ったものだった。

『えっ、席、あ、はいッ。ど、どうぞッ』

『サンキュー、てかガタイすげえね~。スポーツ科?』

 へらついた様子で話しかけてくる深角は榛原にとって、上京して初めてまともに話した同級生ということを差し引いても印象深い存在だった。ダンス集団のように整えたツーブロックの髪型に、首元に控えめなネックレスを光らせながら襟ぐりの広いカットソーに身を包むその姿は、榛原がテレビやドラマで見た理想の大学生そのもので、返事をする声が上擦ってしまったのを覚えてる。

『え、今どきガラケーなん? ウケんなー、名前なんつうの?』

『ほえッ、は、榛原梓、です』

『んじゃアズだな、あずにゃんでもいいけどネコ科じゃないもんね……ライン、ああいや、電話番号でいっか。連絡先教えてよー今度遊ぼうぜ』

 緊張気味の榛原を他所に、飄々と話を進める男の口振りがあまりにも軽かったので、榛原は電話番号を聞かれているとすんなり理解できなかった。

『うわー電話帳開くのクソ久しぶり。おっけー登録した、ワン切りしとくからアズも登録しといてよ。俺、深角衛人。えいとでいいよぉ』

 そしてこれを機に、榛原は自分だけでは知ることのなかったあれやこれやを深角と共に経験することになる。

 一人で入ろうと思わなかった学食で二人でランチしたり、ずっと入りたかった剣道サークルを紹介してもらったり、深角の友人らとチェーンじゃない居酒屋で食事をするなんてこともあった。

『え、一人暮らししてんだー。めっちゃ偉いじゃん、あ。じゃあアレしとく? 東京観光とか乗り気?』

 その他にも、深角は榛原が田舎から出てきていると知るとそれをバカにすることもなく、榛原が行きたかった渋谷や原宿のアパレルショップや雑貨店にも快く案内をしてくれた。一時期は暗く閉ざされていたようにう思えていた榛原の都会での生活が、急に色づいて華やぎ始めたのは間違いなくこの男のおかげだった。

『おじゃましまーす……さーてエロ本とかあるかなー?』

『ね、ねえよぉ! 変なとこ探すんじゃねえぞぉ!』

『いやそれ完全にある反応じゃん……』

 そんなある日、終電を逃した深角を榛原は自分の家に泊めることになる。一人暮らしの家に同じ大学の友人を招くのが密かな憧れだった大型犬は、むしろ初めて家に呼ぶ友人が深角であることを誇りに思うほどその日は浮かれていた。

『でも一人暮らしだとさぁ、ヤりたい放題じゃん』

 何かのきっかけで、深角がさらりとそう切り出したのを覚えている。主語を省いたその語り口に、田舎者の大型犬には何の話かいまいち判然としなくて聞き返す。

『へ? なにをだぁ?』

『え、オナニーとか?』

『ん゛ごふッ!』

 さらりと言うので、榛原は飲んでいた麦茶で噎せてしまった。下ネタを恥じるほど初心であるつもりもないし、むしろ子作りとか暇つぶしのためにそういう下世話な話は地元でも盛んだったので慣れているつもりだったが、まさかこの端正な顔立ちの男からそういった話が出てくるとは思わなかったために動揺したのだった。

 しかし動揺しながらも、榛原はむしろこの住む世界が真逆にありそうな男が下ネタを振るほどに信用してくれている、仲が深まっていると感じたために嫌な気持ちはしなかった。

『週何回すんの? あ、むしろ一日何回? ガタイでかいから結構大変っしょ』

『ま、まあなぁ……多くて十回とか、ずっとしてるときとかあるぞぉ』

『すっげー、エ……元気だねえ』

 自分の性事情をこの男に赤裸々に打ち明けるのは多少気恥ずかしかったが、榛原はそれでも素直に受け答えをしてみせた。その語り口の妙味は、共感するようで、気遣うような声のトーンにあった。茶化すわけでも、下心があるわけでもない、ただ単純に聞きたいから聞いているという以外に意図を感じさせない声音。そのために榛原も、友達同士なら、都会ならこれくらい普通と隠し立てせずにあれこれ聞かれるがままに答えてしまったのだった。

 そう、それを訊く深角の目が怪しく歪むのも気づかずに。

『てかガラケーだとオカズ大変じゃねぇ? スマホだとさあ、エロビデオめっちゃ見れるんだぜ。ほら』

『えッ、な……お、ぉぉ……?』

 ささっとスマホを触った深角は、アダルトコンテンツを配信している海外の動画サイトを表示して榛原の前に掲げた。動画の内容は、組み敷いた体格の良い雌のシマウマ獣人に細身のハイエナが上から腰を打ち付ける洋物のビデオだったが、ガラケーでアダルトコンテンツを探したことなどあるわけもない田舎者の大型犬にとってはエロ動画など貴重なもので、それをあまりにもカジュアルに見せてきたことにショックを受けながらも画面を注視する。音量を上げようと大きな手でスマホをこね回す榛原のためにサイドボタンを押して音量を上げた深角は、食い入るように動画を見る榛原に微笑みかける。

『……もう勃ってんじゃん、マジで元気だねぇ』

『あッ、いやっ、これは……!』

 窮屈そうにジャージをぐいぐいと突き上げる股間を一瞥して、深角は穏やかに言い放つ。流石に勃起した浅ましい姿を見られるのは気恥ずかしくて、榛原が慌てて隠そうとするのを……深角の手がやんわりと制す。スマホを持ったまま胡坐をかいている榛原が体を硬くしたのは、驚いたためばかりではなかった。

『……へへ、リラックスリラックス。そのまま動画見てなって』

『え、なっ、衛人? な、なにをっ、あッ……♥♥』

『気持ちよくしてやるよ、他のやつには内緒だぜ?』

 天を衝いて主張する股間のテントを、男の細い指がカリカリと引っ掻いていた。ちんぽを意識したその手つきはそのままびくびくと脈を打つ大型犬の巨根のシルエットを確かめるように表面を滑って、遊女のように快楽を与える目的を持って動いていることが、腰が揺れてしまいそうになる快感と共に伝わる。

 そして。

 それが全ての始まりだった。

『な、アズ。お返しに俺のも咥えてよ』

 男性器の味も。

『こっち使うと、もっと気持ちいいらしいぜ? 気にならねえ?』

 直腸を抉られる異物感も。

『ほら、口開けてみ。マズルと人の口でもちゃんとキスできる方法があるんだってよ』

 キスの仕方も。

『アズ、ケツじゃないだろ? ココのこと、なんて言うんだっけ?』

 劣情を煽る台詞も。

 それは全て、深角衛人という男に教え込まれたものであり、今では、この男がもたらす快楽に病みつきになってしまっていた。


 元々の素質がなかったわけではないのだろう。ただ、それを差し引いても一年前とは比べ物にならないほど淫らになっているのは確かで、色を知った男の成長と末路そのものの姿でイヌ科らしい幅広な舌を伸ばし獣臭い息で喘ぐ榛原に深角の中芯がじくりと熱を訴える。

「んん……っは、キス上手になったね。アズ」

「ふあ♥♥ へへぇ、そおか?♥♥ お前といっぱいしてるもんなあ♥♥」

 甘えるような巨漢の声に、深角が決まって抱くのはどうしようもない征服感と一抹の罪悪感だった。自ら仕込んでおきながら、無垢で純真だったこの田舎男をここまで染め上げたことが度し難き大罪であるように重く圧し掛かる。そのあとは、自分はひどい奴だとモヤが胸の内に広がって息を詰まらせる。他人の人生を狂わせて、自分に都合の良い人形にして、それに興奮する自分は誰が見ても言い逃れようのない極悪人で、異常な同性愛者だ。

 こんな風に肌を重ね、甘えられる価値などないのに、それでもこの犬は変わりなく自分の与える餌を求め快楽に悦び縋ってくる。そうなるよう仕向けているのは自分なのだから当然だ。本来なら男など知らずに華やかなキャンパスライフを送っていただろうに、味を覚えさせた体は敏感に反応して深角に甘えてくる。

 リビングに移動して布団に寝転ぶ際に、着ていたものはお互い全て脱ぎ捨てていた。毛皮が肌を擽る感触に、じんわりと伝わってくる熱に、触れる毛の奥に漲った筋肉に心が躍ってしまうのは悲しい雄の性だ。そして抱くのは劣情、続いて背徳感。だからこれは堂々巡りのループになって、深角の全身を苛む。じりじりと身を焦がす行き詰った感情を八つ当たりするように、身を起こす。

「そうだねえ、いっぱいセックスしたもんな」

 唇を離して、寝そべった上体に両手を這わせる。仰向けになって重力に押しつぶされながらもその胸板は確かな丘陵を作っていて、巨漢が身じろぐたびにぷるんと揺れていた。何度見ても、脂肪を思わせる揺らぎ方をするそれが運動をする中で鍛え抜かれた歴とした天然物の大胸筋であることを疑ってしまう。そういえば初めて触れたのは、この犬の体格が凄まじいことを褒める態で筋肉を触る言い訳に手を添えた時だったな、なんてことを思い出すほどにこの体は何度触れても触れ飽きるということがないようだった。

「ぁふ、そ、そうだぞぉ♥♥ おまえのせーで、こ、こんなあ♥♥ せっくすなんて、おれっ、知らなかったのにぃ♥」

 和犬にしてはビロードのようにきめ細かい胸毛に覆われた乳房は、深角の手に押されるに合わせて形を歪める極上のゼラチン質のように思えたが、しかし手のひらのそれは榛原のふとましい腕が深角に絡むのを諦めるように動くのに合わせてがしりと鋼のように硬くなってみせる。

 かと思えば、榛原の腕が布団にぼふんと着陸し脱力すると途端にたゆんとした手触りに戻るのが愉しくて、五指に力が入って握りこむように念入りに揉んだ。

「まあまあ、友達とこれくらいフツーだよ、都会じゃこれくらいみんなヤってるって。天原とかもしてるしてる」

 知らんけど、と胸中で付け足しながらもこの口は変わらず誤魔化すように軽薄な文句を口にする。大型犬の言葉に思うことがないわけではない。そうだ自分のせいだ、この純朴な犬が性奴の狗と堕ちたのは。だから非難されて然るべきであり、本人に誹られ、嫌われたとてやむなきことだ。深角だってそれはわかっているからこそ、自己に対する嫌悪の念が尽きないのだ。しかしてそれはこのような事態を招いた己の軽率さにではなく、それでも自分を拒絶しない犬の厚意に甘える自分に対してだった。

 無論、この大型犬に対して蔑ろにしているわけでもないし、粗雑に扱っているというわけでは断じてない。むしろこの胸にあるのはその姿を見る度に燃え上がる、体に触れたい、こちらを向かせたいという執着心にも似た浅ましい劣情だ。とはいえただのセックスフレンドだなどと思ったことはない。友人として彼が慣れぬ新天地での生活で困っていれば力になってやりたいし、友人としてあらゆる苦難や障害から遠ざけてただ笑っていて欲しいと思っている。だからこそ、そう在れずに彼を自分の都合の良いように作り替え続ける己を極悪人のように感じている。

 かけがえのない友と感じている親愛と下劣な欲望を抱え合わせたこのどうしようもない感情が、恋でなどとあるはずがないのだ。

「んなワケねえだろぉ! ぜ、ぜったいウソだっ、あっ、ちくびっ♥♥ ちくびっぎもちぃい゛ぃ♥♥」

 自信家な共通の友人の名に触発されたか、大型犬の瞳にはっきりと理性の光が灯ったのを男は許さない。半円状の豊満な大胸筋を揉む両手の腹に主張してくる指の先ほどの突起を、音量ダイヤルのようにつまんで捻り上げた。

 甘い痺れが巨体を貫いて、下半身に耐え難い疼きを伝える。快楽に蕩けた瞳は僅かばかり取り戻した理性の灯をすぐに手放したようにどろりと濁って、嬉しそうな濁声を響かせた。今でこそ深角の爪の先ほどの大きさに育って、快楽の芽として膨らんだ胸板の頂点にツンと存在を主張するそれは元々毛並みに覆われた目立たないものだった。ただの人体に付随する一部位にすぎないそれを、触れれば股座がいきり立ち鼻息を熱くする性感帯に仕上げたのは紛れもなく深角の仕業だった。むくむくと勃起したそれはじっとりとした毛皮の中に埋もれることはなく、固めのグミのような感触を男の手に伝えている。それを押しつぶし、指の中で擦るように触れてやると自重に潰された尻尾ごと巨体が痙攣するように悶えるのがわかった。

「んはぁ゛あ♥♥ あっ、ぁ~ッ♥♥♥ ちくびっ、ちくびコリコリされんのやばい♥♥」

「どうやばいの?」

「あっぁ゛あ♥♥♥ ちんぽ♥♥ ちくびっ弄られっとぉ゛ちんぽムズムズしちまうからぁ゛♥♥」

 マズルの横から扁平なピンクをでろんと覗かせながら、大型犬が腹を見せたままの姿勢で股間のふてぶてしい剛棒をピクつかせる。言葉の通り、深角が指を使って胸の突起を弄繰り回すのに反応するように、だぶついた包皮に覆われた熱芯が脈を打って跳ねる。一発出したくらいではびくともしない硬さを誇ったまま、先端から絶えず我慢に涎を溢して腹の毛を湿らせているそれは榛原の快楽のバロメータとして手酷く抱いているつもりだった深角に多少の安堵をもたらした。

 深角は膝立ちになったまま腰を突き出す。挿入されたままの一物がごりゅんと柔肉の天井を貫いて、「お゛ッほぉ♥♥」と榛原が堪えようともしない声を上げて悦んだ。

「じゃあ……乳首とケツをこうやって、一緒にされんのは?」

「ッぉぉおおぉ゛♥♥♥♥ ほ、すっ、すげぇ♥♥ しゅげええぇぎもちぃい゛♥♥♥♥ ちんぽっ、ちんぽさわってねえのにぃ♥♥♥ ちんぽしごいてるみてぇでッ、たまんねえ゛ぇ♥♥」

 深角という男は自分が同性愛者で、しかも雄の獣人にしか興奮しない性癖の持ち主だと早い段階から自覚していた。早咲きの部類に入る深角は、弱冠二十歳ながらも既に様々な相手との性交渉を遊びとして経験しており、多少なりともそのイロハを理解していたつもりだった。榛原に手を出したのも遊び慣れた自分が欲を出したためであると言えるが、ここまで乱れてくれる相手というのは初めてのことだった。自分の性技が卓越しているのだと錯覚してしまうほどこの大型犬の反応は常に顕著で、隣から苦情が出るのではと危惧するほどに声を上げて悦んでくれる様にはどうしたって男として誇らしく感じてしまう。

「ふっ、んぐぅっぅぅう♥♥ っはぁ♥♥♥ あっ♥♥ くる♥♥♥ えいとぉッおれ♥♥♥ また、また出ちまうぅ♥♥」

 犬らしく後頭部を敷布団に擦り付け、腹を見せたまま両手で布団カバーを掴む大型犬は眼鏡の奥できゅっと目を閉じて力んだように呻いてからそう宣った。すると途端に雄膣を蹂躙していた深角自身を追い返そうと柔肉が迫り出してきて、むちゅむちゅといきり立つ竿に絡みついてくる。当然そんな蠕動如きで排されるわけのない剛直は、外へ押し出そうとする腸壁の動きに逆らって更に奥を突き込み、それなりの当たりをつけて自らの亀頭を擦りつけるように天井を抉る。

「ぉおぉぉ゛~ッ♥♥♥ ちんぽっ♥ ちんぽバカになるうぅ♥♥ しょんべん出る、出ちまうってぇ゛♥♥、ほんとにッ♥♥ でっるぅぅ♥♥♥」

 そんなことだろうと思って予め敷き布団の上には厚手のバスタオルを敷いておいた。が、水を吸ったそれが下まで沁みるのは想像に難くなくて、せっかく綺麗に干してくれたのに申し訳ないなと少しだけ憂う。しかし股を開き腹を見せる大型犬の痴態を欲する熱の前にはその程度の憂慮は些末事でしかなく、深角は口角が上がるのを感じながら更に腰の勢いを強める。

「いいよ、出せよ。犬らしく嬉ションしちまえって」

「ちがっぁ゛あ♥♥ うれションっ、じゃない、ぁあ゛っ♥♥ うっ゛ぅぅ~~ッ♥♥ ちがうのに、ちがっぅのにぃ゛ぃ♥♥♥」

 否定しようとする声もちんぽに擦られる腸壁と、指で挟んで転がされる乳首の刺激で霞んでしまう。唸るように声を上げながらかぶりを振って懸命に否定を重ねる巨漢の迫力は凄まじいものだが、何故かそれが喩えようもなく愛おしく感じられた。

 大型犬には既に一切の余裕が無いようで、西瓜が二つ並んだような尻たぶの中央を穿るちんぽが中から腹を突き破らんと動く度に獣のような唸り声を上げていた。そしてそれは唐突に、限界まで張り詰めていた袋が破裂するように、悲壮感すら感じられる情けない濁声と共に堰を切って溢れ出す。

「っはぁあ゛、だめっ♥♥ でる、出るっぅぅう♥♥♥」

 じゃあ、とか細い水音。ペットボトルの水を芝生に溢したときに同じような音がした気がする。毛むくじゃらの原っぱに水やりをするように、表面に血管を浮かべたサツマイモのような犬のちんぽからじょろじょろとそれは溢れ出していて、潮と言うには多すぎて、尿と言うには透明すぎた。

 尿道がヒクヒクと広がって、時折脈を打って跳ねるものだから巨漢のせり出た腹を飛び越えて深い胸の谷間や首、あるいはイヌにしては短めのマズルまでそれはかかったように見えた。

 半ば透明に近い体液を吸ってびちゃびちゃに濡れた毛並みを、深角は胸を触っていた手で捩るように撫でた。そもそも主成分から違うのかもしれないが、出したてのそれらは思った通りアンモニア臭くはなく、しかし立ち上る熱気は独特の重たいにおいを伴って二人を包む。そもそも夏場は四リットルも水分を摂取するほど代謝の良いこの犬の尿がそこまで臭わないことは知っていたが、しかしこうして目の当たりにするたびに理性的なイヌ科獣人なれど獣らしいマーキングを行っているように錯覚してしまい、見てはいけぬものを見ているような背徳感で胸がいっぱいになってしまう。

 大の男が他人の前に情けなく全裸で股を開きながら性器と肛門を晒し、あまつさえ小便すら漏らす痴態、その羞恥は察するに余りある。しかし元凶である深角は、背徳感や罪悪感がねじ曲がって達成感や多幸感に変換されて、更にちんぽをいきり立たせるのを認めずにはいられなかった。

「あッぁぁあ~~~ッ♥♥♥♥ でてるっ、出てるのとまんねえ♥♥♥ 出すのぎもぢいぃぃ♥♥♥ まんこされながらぁ♥♥ しょんべん出すの気持ちいいんだぁ♥♥」

 歯を食いしばって耐えていたのとは一転して、恍惚そうな蕩け切った表情で榛原が虚空に宣う。その焦点が覆いかぶさる深角を捉えているかどうかは怪しく、体中の毛と下に敷いたバスタオルを噴いた潮で濡らしながらゴムめいた黒い縁肉に小さく唾液で泡を作ったままでろんと舌を出してハフハフと喘ぐ様はなるほど獣じみた狂気を感じるものだった。

 しかし、人相の凶悪さと反して気弱ながらも誠実で都会に夢を見がちな田舎者にしては日々しっかり地に足を付けた生活を送る偉丈夫である榛原がここまで乱れ狂っている眼前の光景は深角にとってこの上なく扇情的に映った。故に、嫌悪感や拒絶する様子を感じさせることなく、慈愛に満ちた顔で笑んで濡れた毛皮をべちゃべちゃと撫でる。

「ひっ♥♥ や、やだぁ♥♥ その顔っこわい゛っ♥♥」

 噴き出す勢いの失せてきたちんぽをビクつかせて、大型犬は胡乱な瞳でなんとか男の像を認めると弾かれたようにかぶりを振った。一体全体何が怖いのかと心外である深角は、それを体に問い詰める。

「ほら、アズ。ちゃんとちんこ扱いて。ザーメン出してもっと気持ちよくなりたいだろ?」

「っひ、ぁあ゛っ♥♥ だっ♥♥ いまっ、いまだめだってええ♥♥♥ しょんべんっ、だしたばっかなのにっ♥♥♥」

 ぐっしょりと濡れた手のひらで、ぴったりと下腹部に張り付くように反り返るふてぶてしい一物を掴むと、手の中でびくりと蠢くのがわかった。深角は手の水分を拭うように竿の包皮を擦ると、耐えず流していた先走りが潮の水分を吸って湿潤さを増してく。ちんぽを雑に上下に擦られて、潮を噴いたことで広がった尿道口からはこぷこぷと澄んだ粘液が溢れ続けていた。緩く腰を振りながら、敏感になっているちんぽの三分の一ほどを片手でくちゅくちゅと弄ぶ手つきは大型犬にはもどかしく感じられたようで、唸り声を上げながら腰が揺れる。もはや己の使命など忘れ切ったように拡がりきった腸肉が思い出したようにきゅっと締まって深角のちんぽを苛んだ。

「っふぅ♥♥ ふーっ♥♥♥ だ、だめだあ♥♥ ちんぽっ♥♥ ちんぽばかになってるから♥ いまっ触るなっあ゛♥♥♥」

「えー、でもアズのイくとこ見てえなー」

 触るなと言われたので扱く手つきを止めて、代わりにぶら下がる巨玉を掬うように手に取る。ごろっとした感触のそれは片方だけでも深角の手のひらを埋めるようで、両玉をまとめて手にするには手がもう一つ必要なように思われた。

 玉を覆うために袋自体も大きな毛むくじゃらの陰嚢は、先程あれだけ子種を消費したにもかかわらずどこも萎れた様子がなく、むしろパンパンに膨らんで精力で漲っているようであった。普段の自慰ですら激しいこの犬が、マンコを抉られながら自分の前で大根のようなちんぽを扱いて精液を噴き上げる様はきっと見ごたえのあるショーになるだろうと深角は確信していた。

「おっぉぅぅ♥♥ きんたまっ♥♥♥ 金玉もまれてるっ♥♥♥ っあ、ああっ♥♥ だめだっ♥♥♥ ちんぽっ、ちんぽむずむずしちまう♥♥」

 榛原の表情が再びとろんと蕩けていくのを見て、もう一押しだなと深角は次の手を打つ。やわやわと玉袋を揉みながら、空いている手でクリームパンのように大きな犬の手を取って引っ張った。

 そのままフリーになっている股間を触るよう導くと、大きな手が言葉とは裏腹に先走りとも潮の残滓ともつかぬ粘液を汲み上げながらビクビクと戦慄いて快楽を待つちんぽをおずおずと握りしめる。ぐちゃ、と濡れた体の毛皮がこすれて音を立てたのは、ちんぽを握った手が緩く上下に動き始めたからだった。

 そしてそれと同時にきゅっと締まった括約筋がちんぽを咥え込んだので、性器に血を集めるために榛原の下半身に力が入って硬直したのだとわかった。潮を噴くときとは違い、骨盤底筋に力を入れて尿を切るように筋肉を漲らせる大型犬の直腸はぐねぐねと腸壁が蠢いていて、輪っか状になった括約筋が連動して腸管の直径を狭くする。しかしそれは既に中を占領した深角のちんぽにとってはまるで精液をねだるように蕩けた腸壁が吸い付いて締め上げてくる極上の歓待でしかなかった。

 その具合を気に入った深角は玉袋を揉んでいた手を離し、両手で大型犬の膝を掴んで更に広く股を開かせると、無遠慮に腰を打ち付けた。

「っぉおおぉ゛ぉお♥♥♥ すごっ、しゅっげえぇえ♥♥♥ けつっ、ケツん中がっあ゛、マンコになってるっぅぅう♥♥♥ ちんぽおっ、ちんぽ入ってくるっぁ゛っ、ああ゛ぁ~~~ッ♥♥♥」

 榛原は背中と布団の間に隙間ができるほど背を反らし、天を仰いで嬌声を響き渡らせた。かぶりを振って乱れたためにマズルの上に乗っかった眼鏡がずれてしまっているで、深角は眼鏡が歪まないようにそっと取り外して隣のローテーブルに置いた。

 拡がりきって外にまで盛り返す粘膜はしとどに濡れそぼるばかりか、抽挿によって白く泡立った腸液と精液がちんぽにかき出されて白く汚されており、仰向けになっているために結合部より垂れ落ちて尻尾の付け根まで及ばんとしている。当然中の具合も相応に潤っており、ローションなど足す必要もなく次から次へと天然の潤滑液を分泌しているようだった。

 二人の熱気で室温が上がったためか深角の額には汗が浮かんでいたが、それを煩わしく感じながらも拭きとることもせず腰を振り続けた。この快楽は今この時、この瞬間にしか味わえないような気がして他のことに意識を向けることが惜しまれたためだった。

「んッ♥♥ あん゛っ♥♥ ぐッあぁっ、あああ゛ぁ~~~ッ♥♥♥♥ まんこっ♥♥ まんこぎもちいぃいぃ♥♥♥ 手ぇ止まんねえよぉ゛ぉ♥♥♥」

 深角が上り詰めるべくぱっくり開いた肉の隙間を穿ち続ける傍らで、榛原もまた快楽を享受し続けていた。

 最初は片手でずりずりと扱いていたちんぽも、今やいつも自慰をするときのように両手で握っていた。巨大な手のひら二つでようやく竿の八割ほどが隠れるようで、剣道の竹刀さながらに両手で握るそれを傍若無人に上下に擦り続けていた。

 その手つきにも一切の遠慮がなく、竹刀を素振りし続けて硬化した肉球で力強くちんぽを握りしめているために、腕を動かすたびに分泌されたカウパー腺液に塗れた手とちんぽがぐちゃぐちゃと激しく水音を立てて、深角の腰が打ち付けられる打擲音に重なっている。室内に響く協奏曲を演出するのはそれだけでなく、手だけではなく腕ごと動かすような手つきに擦れた濡れた毛並みとバスタオルもそれを彩った。

「っくぅ……すっげぇ……!」

「ぉっほぉぉおぉ゛ぉ♥♥♥ ぎもちっ、ぎもちぃいいぃ♥♥♥ オナニーよりっ、せっくすぅ♥♥♥♥ ケツマンこーびたまんねえよぉぉ゛ぉッ♥♥♥♥」

 天を仰いで弛緩しきった表情のまま、サイズ感が桁違いである巨根を節くれだった両手でごしごしと武骨に扱くその様はこの上なく雄臭い所作で、それが深角の下半身に悩ましい疼きを与えて止まない。ちんぽを扱いているためか、あるいは射精が近いのか。マンコの中もぐねぐねとした蠕動を繰り返していて、中に別の生き物を飼っているようにちんぽにむしゃぶりついては餌はまだなのかとせっついている。うねる腸壁はただただ激しく前後して出入りするだけの闖入者にも極上のもてなしを見せているようで、鋼のような剛直を丹念に揉み捏ねては射精を促していた。突き込んだ際に一段狭くなる管を無理やり通すような、亀頭が吸われるような感覚を求めて腰を振り続ける。

「ん゛ぐぉぉ♥♥ っほぉ゛ぉおお♥♥ っはぁ、ちんぽぉ゛っ♥♥ マンコされながらっちんぽ扱くのっとめられねえ♥♥♥ すきっ、これすきぃ♥♥♥♥ 気持ちよすぎるっ、ぅ゛ぅぅ♥♥♥ ひっ♥ ひとりよりぃ゛♥♥ 一人でやるよりぃ♥♥ きもちよくてぇ゛ッ、たまんねえぇえ゛ぇ♥♥♥」

「アズ、気持ちいいの好きだもんね」

「うっぅぅぅ゛うん♥♥♥♥ すきぃ♥♥♥ ちんぽもっ、ちくびもぉ♥♥ おまんこもぉ気持ちよくて好きぃッ♥♥♥♥」

 カエル脚に股を開きながら、自慢の棍棒をずりずりと両手で扱くその様はオナニーや自慰というよりせん擦りというに相応しい雄々しさを伴っていた。両手を下に向かって伸ばしていることから、締め上げられた大胸筋が両腕の間でこんもりと膨らんで下腹部から伝わる衝撃に合わせてたぷんたぷんと揺れているのがまた甘美だ。

 じゃあ俺のことは好き? とくだらない疑問が深角の頭を過ぎった。そんなこと聞けるはずもない。ましてや、快楽に浮かされた状態で聞いたところで、と純朴な田舎者を手籠めにした自分にしては至極正当な意見が出るものだった。

「えいとっ♥♥ えいとのちんぽもすきぃ♥♥♥ おまえとせっくすするのぉ、おれッ好きぃぃ♥♥♥」

「……っ」

 それは、快楽の供給を担う深角に媚びれば更なる餌をくれるだろうと躾をされた榛原がいつものように媚びてみせただけの文句に違いない。餌を欲した愛玩犬が必死に芸を披露するのと相違ないそれが、しかし深角の深いところに突き刺さって抜けずに留まった。

 熱で浮かれた頭に何を言ってもしょうがない。

 だけど、熱で浮かれた頭だからこそ何を言っても問題ないだろう。いつも通り、軽薄そうに聞こえるトーンを作るのに苦労した。

「……ああ、俺も、好きだぞ。お前のこと」

「っへ、えへへっぇ♥♥♥ りょーおもいっ、両想いだぁ♥♥♥♥ すき、すきぃっ♥♥♥♥」

 その文句に追い立てられて、自分の限界が近づきあることを自覚する。榛原梓という極上の肉を前に射精をお預けされるのは拷問に近く、早くこの柔肉に自分の子種をぶちまけて楽になりたいという解放を望む本能に深角は必至で抗う。自分の中にわだかまったそれらを解き放つ目も眩むような光の奔流に身を投じたいという思いはあれど、それはこの大型犬が絶頂を迎える様をしっかりと見聞きしてからの方が良いと思っていたからだ。

 その理由は、相手をしっかり気持ちよくさせるためという男役としての義務感でも況や思いやりでもなんでもない。ただ、この大型犬がザーメンを噴き上げ獣のように咆哮する光景はこの上なくそそるものだと確信していたためだった。

「っは、はぁあん゛っ♥♥♥ イっ、ぎそうぅ゛♥♥♥ え、えいとぉ゛♥♥ ざ、ざーめん出ちまいそぉ♥♥♥ い、イっていいかぁ゛っ?♥♥♥」

 蕩けた瞳を細めながら、マズルを縁どる黒々とした唇から獰猛な牙をギラつかせて阿ってくる大型犬の声音に、ついその要求を突っぱねてみたいという衝動が顔を出す。駄目だと告げれば、きっと泣きそうな顔でイかせてほしいと懇願してくるだろうことは間違いない。そう言い切れるのは、いつだったかのセックスで実際に射精を禁止して寸止めさせ続けて泣かせたことがあったからだ。

 黙ってイけば良いものをわざわざ伺いを立ててくるその様子が深角にはこの上なくいじらしく、そして榛原という大型犬らしく感じられた。とはいえ限界なのはこちらも同じことだったので、そのあざとさに免じて膝を押し開いていた両手をそっと前に伸ばしてたゆんと揺れる乳房をぎゅっと握りこんだ。

「いいよ、イっちまえよ」

「~~~ッぉ゛、っほぉ♥♥ お、おっぱいぃ♥♥♥ おれのおっぱいつぶすなっぁ゛、あっ、あーっ♥♥♥ だめ、いまちくびだめえっぇえ゛♥♥♥」

 自分の体重を支えるようにその豊満な胸板に手を突きながら、ぷっくりと主張してやまない突起をつまんで押しつぶした。コリコリと表面を擦って平たく押しつぶしてやると威勢の良い濁声が太い喉から迸る。

「ぅ゛ぐぉぉおおおぉッ♥♥♥ いぐッ♥♥ イぐぅ♥♥♥♥ ざーめんでるっ、だすぞぉお♥♥♥ ちゃんと見てろよぉお♥♥ っは、はーっ♥♥ 出るっ、イっぐぅぅうぅうう♥♥♥♥」

 大型犬の逞しい肢体が一層膨らんで、時折痙攣しつつ強張る。びゅぶ、と音がしたような気がした。ただ、擬音をつけるならそのような類になるだろうことは間違いなかった。ソフトボール大の睾丸が内包する精巣から汲み上げられた多量の白濁は、小便やカウパー腺液に反応して凝固したタンパク質が蓋をしたようで噴き出す際に千々になって飛び散った。

 ふっくらとした玉裏、骨盤底筋がビクビクと痙攣して筋肉が収縮する勢いのままに射精菅に蟠る精液を押し上げていく。しかしそれは思い切りよく飛ぶためにはいささか濃厚すぎたようで、せり出た大型犬の腹や胸に飛ぶものもあれば、ぼたぼたとその場に落ちて亀頭や竿を濡らすものもあった。その方向には一貫性がなく、赤黒く充血したちんぽが戦慄くたびに多量の精液をびゅくびゅくと噴き出していて上半身全体を白く染める勢いであった。

 二発目といえどその量も濃さもキッチンで漏らしたときと見劣りしないようで、むしろ先に潮を噴いたためか凝固したタンパク質が良く煮込まれた米のように竿や毛皮に張り付いていて、その濃厚さを物語っている。腰を上げて股を開く大型犬の丸くせり出た腹や胸の溝に白い池となって溜まるほど噴き上げて、びゅるびゅると尿道を駆け上がる音が聞こえそうなほどその放精は止まらない。

「っあっあぁ゛ぁ~~~ッ♥♥♥ イっぐッぅうぅ゛♥♥ ザーメンとまんねええぇええ♥♥♥♥ っはぁ、はあーっ♥♥♥ びゅーびゅー出すの気持ちいいぞぉぉっ、まだ出るっ、んん゛ぅ゛ううぅ♥♥♥」

「っくぅ……俺も、出すぞ……!」

「っはぁあ♥♥ きてえ♥♥♥ またっ、またいっぱい中出ししてくれぇ゛え♥♥♥ お前のガキいっぱいはらませてえくれぇ゛ぇえええ♥♥」

 栓の壊れた蛇口のようにびゅくびゅくと精液を溢れさせる剛棒に触発されて、深角は絶頂間際の背筋が粟立つような感覚に息を漏らす。精液を搾り尽くそうと太長いちんぽを両手でぐいぐいと握りこんでいる大型犬は、舌を出したはしたない笑みを浮かべてザーメンをねだる。出会った頃からは考えられない好色極まるその笑みに、男は胸をかきむしりたくなるほどの切なさを抱く。

「っあ、出るッ、イくっ……!」

「お、お、おぉぉッぅうう♥♥♥ ざーめんくるっ、出てるっ、あっちいザーメンきてるぅうう♥♥♥ すっげえ♥♥ これ、これ好きぃ♥♥♥ 腹ん中にぶちまけられてるっ、ざーめんで内臓叩かれてんのにぃッ♥♥♥ きもちいい、きもちよくてイぐの止まんねよぉおぅッ♥♥♥」

 言葉の通り、大型犬は力強く握った竿を小さく上下に扱いて、勢いこそないもののゆるゆると白濁液をちんぽの先端から漏らしていた。今やその小麦の毛並みはひどい有様で、熱を失ったさらさらとした潮で胴体を余すことなく濡らし毛皮の下の肉体のシルエットを浮かび上がらせているほかに、飛び散った白濁液が随所に水溜まりを作って浸透することなく浮いていた。一つの水溜まりですら掬いあげれば深角の手のひらを埋めるだろうそれは、大型犬の腹と胸の織りなす丘陵に振り積もった雪のようで、重力に引かれ榛原の体を伝う最中に濡れた毛に絡んでべっとりと留まっているのがわかった。

 溢れさせた精液を潤滑液にそのまま手淫を続けたために、肝心の竿の周りはそれこそ生クリームを塗りつけたように白く汚れていて後処理の大変さを感じさせていた。手のひらにも付着したそれらは小刻みに収縮する玉袋にも垂れ落ちていて、脚の付け根の深い溝にデザートのようにぷるんと溜まっていた。

「はぁー♥♥ はあっ♥♥ ぁ、す、すげえぇ゛……っあ♥♥ っ、う、ぅぅう♥♥♥」

 組み敷かれたままぶるり、と身震いする大型犬の胎内がきゅっと締まって、用意した子種を殆ど注ぎ終えて肩を落としつつあるちんぽを優しく揉んでくる。腰が浮くような絶頂感から戻るのを惜しむように榛原は痙攣するように身を断続的に硬直させていて、それに伴って動く腸壁のうねりが射精後の敏感になっている粘膜にもどかしい。動いていないのにむちゅむちゅとちんぽに絡みつく柔肉はもっともっとと更に精液を欲しているようで、深角は押し付けるように震わせている腰を思い切り引いてもう一度ピストンを再開したくなってしまう。

「……っ、アズ……!」

「ん、っあ♥♥ っふ、ちゅっ、んん♥♥♥ えいと、えーとぉっ、んっん゛んぅ♥♥♥」

 その思いを、キスで誤魔化す。互いの息をぶつけ合うようにはあはあと荒く息をして、ぬちゃぬちゃと舌を絡ませる。大きく開いた口とマズルを嚙み合わせるようにくっつけて、伸ばした舌をなすりつけ合った。互いの唾液がぼたぼたと下に敷かれている大型犬の喉元にぽたぽたと落ちるのすら、もう二人には気にならなかった。

「っふ、ああっ♥♥ はぁー♥♥ っは、ふぅっ、ふーッ……♥♥」

 肩で息をする大型犬を前に、唇を離した深角は腰を引こうとする。噴き上げた体液の殆どは大型犬の巨体がまとう毛皮が吸収したが、下に敷いたバスタオルも相応に濡れているようでせっかくの干したての布団のことを考えると少しだけ気分が重くなった。料理も中断させて、相手の体を好き勝手汚して、考えれば考えるほど自分がどうしようもないやつだという気がしてならない。気分が暗くなってくるのは、射精後に熱が引き始めたからだろうか。所詮自分はこの男の体目当てでしかなく、相手の無知に付け込んで好き勝手欲を満たしている外道に過ぎないのだ。だから、この感情が恋などであるはずがないのだ。

「……布団、濡らしちゃったねえ。すぐ乾かせば多分だいじょう、ぶ……っ?」

 しかし。深角が色気のないいつもの軽薄な調子で口を開いて、腰を引こうとするのを引き留めたのは他ならぬ組み敷かれた榛原の両脚だった。

「あッ……梓?」

 電柱のように太い脚ががっしりと男の胴体を挟んでホールドしていた。それはまるで蟹のハサミに挟まれたように力強く、離れようとする深角を引き留め抱き寄せるように脚を絡ませている。腰を密着させたまま動けぬ男に、大型犬は締まりのない緩んだ顔でにへらと笑みかける。

「も……もーいっかいしてほしいっ♥ だ、ダメかぁ?♥♥」

 蕩けた目が真っすぐ深角を捉えるので、まだ足りないのか、とは思わなかった。むしろ、暗く沈まんとしていた深角の心を慰撫するには十分なものだった。それがたとえ熱に浮かされた故の言葉でも、性欲に支配された欲求でも。

 セックスに前向きな姿勢を示されて、自分の心は一方通行でしかないと思っていた深角は己の身勝手さを肯定されたように錯覚してしまう。けして独りよがりではないのだと認められているようで、後ろ暗さのない暖かな熱が胸に広がる。それを知ってか知らずか、榛原の大きな手が深角を抱き寄せるように首に絡む。それと同時に、四肢の全てを、文字通り全身で求めるような大型犬の仕草を愛おしく思う気持ちが深角を突き動かす。

「……バカ、ダメなわけないだろ?」

「あっ……♥♥」

 がぱりと開かれたマズルに、横から噛みつくようにキスをする。まるきり人口呼吸をするようなそれは、どちらともなく舌を絡ませ合って、互いに互いの唾液を啜り合う背伸びしたキスだ。

 かけがえのない友だと感じ慕う親愛に下劣な欲望を抱え合わせたこのどうしようもない感情が、恋などという尊いものであるはずがない。

「っふ……なあ、アズ」

「あ、ふぁっ、え、えいとぉ♥♥」

 それでも、期待していいのだろうか。住む世界が違うとわかっているのに、手を出してしまう浅ましい自分でも。知れば知るほど離れがたく感じてしまう身勝手な自分でも。その大きな体に寄りかかることは、許されるのだろうか。

「好きだぞ、ずっと前から」

「ふぁ……っ!♥♥ っは、はうっ……♥♥」

 大きな手が優しく撫でた、縋りつくようにキスをする深角の頭を。

 それだけで、この煩悶の救いとするには十分だった。


 ♂♀


「え! 衛人くんって毎回ご飯彼女さんに作らせてんの!?」

 昼食に向かう学徒達がチャイムの鳴る講義室を後にする中で、同じグループ実習を履修している女学生が心底意外そうに声を荒げるので会話しているメンバーの注意が自分に向くのを深角は感じていた。非難するような声がいくつかと、逆に納得するような声が上がるので全てに反応することは諦めて、「俺料理下手だしさぁ」と愛想笑いで返す。

「え~、でもそれって絶対相手の負担だよ。なんか家事お返しとかしてるの? 洗い物とかは?」

「いや? 別に」

 サイテー! と声が上がるのは覚悟していたので、それにショックを受けたようなリアクションを重ねて軽く笑いを取っておく。

 実習仲間である年の近い大学生達との会話に対するモチベーションを欠いている理由は、単に自分のタイプの男がいないというだけではない。昨晩は結局遅くまであの巨漢の犬獣人とセックスした後にそのまま寝入ってしまったため、実習結果発表用の資料を完成させたのは今日の明け方のことだった。そのまま一限、二限と地続きになった発表に臨んだため、頭の奥がぼんやりともやがかかったように判然としないのだ。途切れそうになる意識を昨晩の痴態を思い出してなんとか繋ぎとめている状態にあるため、深角の会話の返事は実のないものだった。

 出来ることならさっさとその場を離れて昼食を摂り寝たいのだが、深角がまとめた研究結果資料を読み上げただけで妙な仲間意識を持ったらしいグループの学生達はおしゃべりに夢中になっていて、なかなか解放してくれそうにない。一年生を除いた三学年の学生が集うグループ実習は、幾つか枠があるが一つのコマで受けれる人数は少なく履修登録時に抽選を経て集められている。それもあって、別の学部だけど同学年だからという横のつながりを意識して余計な世話を焼いてくるのがありがた迷惑であることは言えずにいた。こういう時知り合いのバスケ部の彼ならきっぱりと飯行くから、とか言えるんだろうなーなんて思っていた時だった。後ろから冷ややかな声が聞こえる。

「おい、教室の前で屯うなよ。通れねえって」

「あッ……すいませーん」

 トートバッグを肩越しに掛けて、持ち手を指に引っかける威勢の良い持ち方をした三年生の青年が出口の邪魔になっていた女学生に鬱陶しそうに声を掛ける。短めに整えられながらもAラインのシルエットにセットされた髪型、薄手のジャケットに襟ぐりの鋭いVネックのカットソーをインナーにした彼はヒトの中でも整った顔立ちをしていて、迷惑そうに眇められた切れ長の瞳はどことなく刀剣のような美しさを感じさせた。

 同じ実習仲間の先輩とはいえ、親しく会話をする仲でもない上級生に元凶の女学生ら数人が謝罪を口にしながら出口の前から退くので、グループ内にもそれが波及して次々にやる気のない謝罪を口にする。深角もそれに倣って「さーせーん」と気のない返事をした時だった。その目がこちらに向けられたのは。

「……教授も何も言わなかったし、今回はいいだろうけど次の課題から分担して資料作るようにしねえとキツくなるぞ」

「えっ」

 それが自分に向けられた台詞ではないと理解したのは、トートバッグの彼がこちらを一瞥してから足を止めてグループ全体を見回すように視線を送りながら声を発していたからだ。ある者は突然の言葉に目を丸くし、ある者は疑問符を浮かべる中で、深角を公然と批判していた一番おしゃべりな女学生が「そうなんですか?」と聞き返した。

 青年はトートバッグを担いだまま肩をすくめて、「割とな。だからまあ、個人技に頼るのはやめとけ」と今度はまっすぐ深角を見て言い放つ。資料の発表時には深角が作成した資料を映し出し、交代しながらスライドを回し原稿を読み上げていたので誰が一手に火引き受けて作成したのかは見ていた側はわからないはずだ。それを言い当てられて、グループ内に気まずい空気が流れるのもお構いなしにジャケット姿の青年は「じゃ、また来週な」と教室を後にしていった。

 沈黙こそ流れなかったが、「そうだよなあ」「課題キツくなるのかぁ」なんて宙ぶらりんの話題を続けるグループ内の気まずさに耐えかねたわけではない。何故なら、青年がグループメンバーに面と向かって諫言するのを見てどこか胸のすくような思いがしたのも確かだったからだ。ただ、明確に話題が途切れたのを感じて、このまま全員で学食でランチ、なんて開催されたらたまったものではないのでここぞとばかりに深角はレザーのショルダーバッグを肩掛けしてその場を離れる。

「じゃあ、俺も飯行ってくるよ。また来週~」

 襟ぐり広めのシャツの首元を飾るお気に入りのクロムハーツを揺らして肩越しに手を振る深角に別れの挨拶を返す生徒の中には、先程の三年生の言葉に思うところがあるようで深角に何か言いたげにしていたが、深角はそれを無視した。

 代わりに「またラインして~」と言葉を残したので、何かあればメッセージを送ってくることだろう。それはそれで面倒だが、今この場でその話を展開されるよりはマシなはずだった。

 少し早足で教室を後にし、今いる棟の出口へ向かう。すると、その途中にあるトイレから出てきて前を歩く見覚えのある影に気づいた。

 その背姿を無視しても良かったのだが、深角は早足で追いかけて声を掛けた。

「せーんぱい」

「? ……あぁ、エイトか。お疲れ」

 先程のジャケット姿の青年だった。一学年上のこの先輩と深角は特別仲が良いというわけではないのだが、実習中の座席が近くなったり学年合同の実習時に同じグループになったりと何となく話す機会が多いのでそれなりに親交がある上に、深角にしては珍しく上級生として敬っているからというのもこうしてわざわざ声をかけた理由の一つだった。一学年上だからというだけではなく、振る舞いだったり言動だったりとその全身から溢れる気品のようなものは深角にとっても尊敬に足るもので、それは普段のファッションだったりちょっとした小物使いだったり言葉遣いの雄々しさだったりから来るものかもしれなかった。

 ゲイである深角からしたら、タイプではないものの見た目が良いヒトの男性が珍しいというのもあって、なんとなくお近づきになりたい先輩の一人として認識していた。

「さっきはどうもでーす。よく俺が作ったってわかりましたねえ」

「いやわかるだろ……お前以外原稿スラスラ読めてねえし、こぞってお前に相談してたし」

 そう言われて、それはそうか、と眠たい頭で発表中の様子を思い出す。完成した原稿もスライドも今日の朝に見せたので、発表としての出来が高かったかどうかと言われれば否だ。しかしそれだけで誰か一人が一手に作成したものであると、ひいてはそれが深角だと確信できるものかというのは疑わしい。

 疑わしいが、それくらいは造作もないことなのだろう。

 この相坂秋慈という男にとっては。

「はー、なるほど。いやぁおかげで次くらいから徹夜することもなくなりそうで助かりますわあ」

 へらへらと愛想笑いを浮かべて返す深角に「あんな授業に徹夜したのかよ……」と相坂は苦笑する。それから相坂は並んで歩く深角の横顔を一瞥して、少し強張った声音で切り出した。

「……っと、エイト。お前結構男もののブランドとか詳しかったよな」

「ええ、まあ」

「大人向けとか社会人向けでも大丈夫か?」

 言われて、深角は少し考え込んだ。どういう意図で質問しているのか測りかねるが、自分用ではなさそうなジャンルのチョイスから何らかのプレゼントの相談だろうか、と予想がついた。しかしその送り主についてはいまいち判然としなくて、深角は大人しく自分の知識の引き出しを確認する。

「え~と……まあ、ある程度なら人気のヤツとかわかるかもっすねえ」

「コレ知ってんだ! すげー! みたいな穴場っぽいやつとかも?」

 いやどういう質問だそれ、というか何を誰に送るつもりなんだ……という疑問は飲み込んで、要望に沿えるような衣料ブランドは二つくらい思いついた。

「まあ、ありますねえ。知る人ぞ知る! みたいなヤツですね?」

「そうそう! わかってんじゃねえか! じゃあ今度飲みついでに教えてくれ!」

 別に飲まなくてもラインか何かでササッと送るのに、と返事をしようとして、もしかしてブランド云々の話は自分と食事の席を設けるための方便かもしれないと思い至る。

 さっきの女子達を含めた実習生達との飲み会ならいざ知らず、この先輩となら少し話してみたいし二人きりで飲むこともやぶさかではない。タイプ外の男とはいえ、自分がここまでノンケに興味を持つのはあの大型犬以来かもしれない。

「いいっすよぉ。大体いつでもヒマなんで呼んでくださいねえ」

「助かるわー、んじゃまたラインするわ」

 出口が近くなった頃、相坂はそう告げて会話を締めくくる。深角もそれに倣って「お待ちしてまーす」と返したところで、相坂は駅に向かうらしかったのでそこで二人は別れることとなった。


 ♂♀


 学食は既に人が押しかけて混んでいたので、購買で適当に軽食と飲み物を買って、先んじて次に履修している講義の教室に向かった。この講義は昼寝をしようと考えているので、昼休み中のためまだ人がまばらの教室の最後列、隅っこの席を取って三人掛けの机に鞄を置く。ツナマヨネーズのおにぎりを開封しながらあてどなくスマホを触って、SNSに投稿されている動画やシェアされた誰が元ネタともつかぬバズネタを冷やかしながら食事を済ませる。

 おにぎり一つ食べ終わるくらいに、耐え難い眠気がやってくるのを感じて深角は購入したジャスミン茶を喉に流し込むもいまいち気分は晴れない。硬い机に突っ伏したままペットボトルを閉めて、ぐらぐらし始めた頭で最後の気力を振り絞って現在地をメッセージで送ったのを最後に、深角の意識は途切れた。


「…………あっ」

 次に目を覚ました時、隣には見慣れた毛むくじゃらの巨漢がそこにいた。二人しか座っていないというのに、わざわざ三人掛けの机の端にかける深角に寄り添うように真ん中の席に座る巨体は、眉根を寄せて眼鏡越しに目を凝らして板書を見つめている。元々厳めしく見える顔つきが更に迫力を増して、殆ど睨むように前を向いてノートにシャーペンを走らせていたが横で机に突っ伏していた深角が起き上がるのに気づくと小さく声を発した。

「おはよお。良く寝てたな」

 ストレッチ素材かと疑ってしまうほど黒いTシャツの袖を太い二の腕でパンパンにして、隣にいながら榛原梓が小さく手を振る。『unbounded energy』と洒落たフォントで書かれたTシャツは二人で有名な某書店兼雑貨店に行った時にこの犬にぴったりだと思って深角が買ってやったもので、その言葉の意味も知らずに気に入って着ているのがいじらしいことこの上ない。

 そんな上半身とは打って変わって、座っているために形を歪める太腿を覆ってなおヒラヒラと生地に余裕のある極大サイズの短パンは暑がりな大型犬のために風通しのよいジャージ素材でできていて、膝が隠れるかどうかすら怪しい短い丈のものだった。どこのブランドのものかを示すような特徴的な三本のラインが横に入っているので、一般的に見ればそれは体育会系らしくあるが深角から見れば露出著しい代物だった。

 どうやら寝ている間に昼休みが終わり、そのまま講義が始まったらしい。ボーッとした頭で起き上がって周りを見渡すと、ちらほら空席が散見される教室内はそれなりの人数で埋められており、黒板に群がるように半分より手前の中央席などは殆ど空いていないようだった。

 深角はこの講義が楽に単位を取得できる所謂楽単に部類するものだと知っており、昼寝するつもりで最後列の隅の席を取っていたが、この日の出席率は特に低いようでひとつ前の列の三人席などは丸々空いていた。

 教室の最後列付近は基本的に不真面目な生徒が屯うので、通路を挟んだ隣の列の学生らもコソコソとおしゃべりをしたり、あるいはスマホや携帯ゲームなどに夢中であるのが見える。居眠りをしていた身を棚に上げて、大学に来てまでゲームするなよと思いつつ、教室内の壇上で初老の教授がカツカツと軽快に板書するリズムがまた強く眠気を誘った。

「おはよ……いや、おやすみ……」

 あふ、と欠伸を一つ漏らして、前の列に人がいないのをいいことに両腕を投げ出すように机に突っ伏すと、首元のネックレスがちゃらりと机を打つ。

「結局徹夜したんだろ? 大丈夫かよぉ」

 最後列から目を凝らしながら板書を写しつつ、榛原が声を潜めて口を開いた。深角は何となく、もうちょっと前の席を取ってやればよかったな、と申し訳なさを覚える。

「んん……おまえこそ、俺より朝出るの早かっただろ。朝練だっけ、眠くなんねえの?」

「ぜーんぜん、これくらい余裕余裕」

 朝練、というのはこの大型犬が所属している剣道サークルでの活動のことだった。好き放題セックスして夕食を摂ったあとゼミの発表資料作りに戻る深角を横目に布団で鼾をかいて寝ていた大型犬は、しかし早朝に目を覚ますと出かける準備をしてマックブックに向かい合っていた男を残して練習着を持つとさっさと家を後にしたのだった。転がり込んでいる身としては、そう簡単に施錠とか任せていいのかと突っ込みたくなるものの、何となく信用されているようで嬉しく感じたのも事実だった。

 へへ、と机に突っ伏してる深角を見下ろしながら笑いかける顔を横目で見る。声量を抑えているために、声帯が震えるのがわかる低い声はまるで唸るようで心地よく感じた。

 人見知りと生来の気弱さが災いして、サークルに所属できていなかった榛原を剣道サークルに紹介したのは他ならぬ深角だった。広場や中庭が人でごった返す勧誘シーズンなどもあるにはあったが、榛原の巨躯に目をつけて我先に獲得しようと群がってきたのはラグビーやレスリングサークルなどに所属する厳めしい雄の獣人達ばかりで、剣道の活動をしている集まりを見つける前にその勢いや迫力に気圧されて逃げ出してしまったのだった。中には書道や尻相撲サークルなどの文化系サークルからも勧誘されたが、新入生を何としても獲得しようとする上級生の誘いはなかなか強引で、断るのがやっとな榛原にとってはとてもじゃないが他のサークルについて尋ねることなどできなかったのだという。

 サークル勧誘の季節も終わったころに深角から紹介を受けたそこは、同好会ながらも部活並みの高いレベルの稽古を続けている団体で、すすんで早朝の練習にも参加するくらい榛原をそれを気に入っているようでこうしてサークル活動について話すときの朗らかな顔からは楽しみながら続けられているのがありありとわかるようだった。

「元気だねえ……そうか、朝練かぁ」

 硬い机は枕には不向きで、のっそりと顔を上げた深角は暫くぼーっと黒板を見つめていたが、思いついたように顔を背ける。視界の隅に、色気のないスポーツブランドのエナメルバッグが床に置かれているのが見えた。隣で腕を動かしている大型犬に耳打ちするように顔を寄せると、榛原は「おう?」と耳をピンと立たせて小首を傾げる。しかし深角は何を言うでもなく机に肘をついている太い腕、ちょうど二の腕が見え隠れするTシャツの袖口まで鼻を寄せるとそのまますんすんと確かめるように鼻をヒクつかせたのだった。

「……ひッ。お、おい……! か、嗅ぐなって……!」

 意図を理解したらしい大型犬は尻尾すらきゅっと強張らせるとわかりやすく身を竦めて、顔を寄せる深角から逃れようと身を捩るがそもそも三人掛けの席の半分くらいを一人で占める幅を持つ巨漢に逃げる術はない。ましてや講義中ともなれば、表立って騒ぐわけにもいかず結局榛原は僅かに身を引いて深角から逃げようとするだけで、しかし互いの間の距離が大きく離れるようなことはなかった。

 深角は二センチほど先にある太腕に顔を近づけながらにおいでみた。衣類から幾分薄まった洗剤の香りがするが、もう少し深く嗅いでみるとすぐにそれに突き当たった。ツンと鼻を刺すような饐えたにおい。生乾き臭にも似たそれはTシャツに押し込められた犬の体毛からにおっているのは間違いないようで、猛烈ににおい立つようなものではなかったがこうして近づいて毛皮を直接嗅いでみると運動後の体臭がはっきりと鼻を打った。

「ん~……ちょっと汗臭いねえ、やっぱ剣道って臭くなるもん?」

「あ、当たり前だろ……! や、やめろってぇ……お、お前の分のノート見せてやんねえぞ!」

 榛原は耳をぺたりと寝かせて身を仰け反らせながら恥ずかしそうにそう宣う。この講義の試験はレジュメの持ち込みありのペーパーテスト形式なので、ノートを取らずともほぼ配られた資料だけで単位が取れるのだが、深角は敢えて「それは困るなあ」と本意とは逆のことを口にして、嗅ぐのをやめる素振りを見せた。

 榛原は仰け反っていた体をゆっくり戻して、「だ、だろ……?」と胸をなで下ろしていた。いいにおいだったのに、と告げてやればどんな反応をするだろうか。これで会話を終わらせるのが惜しくて、深角はふと正午の会話を思い出した。講義の最中なので、なるべく声を潜めたままそれを切り出す。

「……なあアズ、今日のメシ俺が作っていい?」

「えッ。ど、どうした急に……珍しいなあ」

 そもそもこの犬の家に入り浸っているのは、いつだったか深角から同じ学部の一年生らとの親睦会に榛原を誘って、終電を無くした後家に泊めてもらったのが始まりで、以降半ば無理やり押しかけるように住み着いているという文脈だ。深角はそれをちょっとした同棲のように感じて気に入っていたが、夕食などはほぼ毎日榛原に仕度してもらっていた。最初の頃は気を遣わなくていいのにと深角も遠慮していたが、田舎から送られてくる食材を腐らないうちに処理したいという内情を知ってからは遠慮なくご相伴に預かっていた。

 元々料理が好きな榛原も、都会らしい洒落た見た目の深角が故郷の食材をうまいうまいと食べてくれるので何となく自分の料理の腕前を誇らしく思っていた。しかし、それを翻して料理を作ると宣言してきた深角に普段の食事に何か不満があったのかと榛原は思わず身構えてしまうが、続く男の台詞に杞憂だったと安心する。

「彼女に毎回飯作らせるなんてサイテー! って言われてさぁ」

「かッ……う、うぅ……ッ」

「ま、いつものお返しだよ。何か食いたいもんあるか?」

 正面から恋人扱いされたことにたじろいだ大型犬は、思わず視線を外してしまう。一貫して軽薄なトーンに聞こえるよう努めながら、深角は机に頬杖をついたまま下から真っすぐ榛原の目を見て柔らかく笑みかける。続く言葉に視線を戻した榛原は、自分に向けられている他に意図なんてない純度百パーセントの男の微笑みが実はちょっと怖いことを悟られないよう、無礼な自分を律しながら声を紡ぐ。

「そ、そんなんいいってぇ……でも、うーん……食いたいもんかあ」

「指定が無ければパスタでも作るけど、いい?」

 生まれ故郷にパスタがないわけではない。が、食事といえば煮物と干物と味噌汁という和食が第一の食卓事情を過ごしてきた榛原の中で、夕食にパスタというのは何となく憧れがあった。

「ぱすた、全然いいぞぉ。あっ、じゃあクリームのやつ食いたい!」

「クリームソース? いいよぉ。じゃあイタリアンにしようか」

 田舎の畑でもトマトはよく採れたし、トマト煮込みはよく食していた榛原にとってクリームソースというのはファミレスや外食でしか食べたことのない味だった。都会に出てきた今も、獣人の中でも身体が大きめな上に二十歳真っ盛りの筋金入りの体育会系でもある榛原は一回の食事量もかなり多く、外食するにも食費が高くついてしまうので生活費を親の仕送りに頼っている身としてはそう易々と外に食べに行くことができない。

 作り方を調べて自作を考えたこともあるが、大量のバターや生クリームなど不慣れな食材を前に結局手慣れた和食に逃げたことは一度や二度ではなかった。それを深角なら作れると知っていたわけではないが、快諾されたのが嬉しくて「うん!」と力強く頷いた。

「じゃあ帰る前に買い物して適当に前菜とか肉とか作るかねえ……アズ、今日サークル?」

 聞かれた大型犬は、ハッとした。榛原が自宅でクリームパスタを作ろうとして断念した理由の一つに、生クリームやバターの値段の高さがあったからだ。貧乏学生が一食のために買うには少し勇気のいる値段をしていたので、それを深角に押し付けてしまうことになると思い至り顔色を窺いながら返事をする。

「あ、おう……夕方くらいに帰る……と思う。買い物したらレシートとっとけよ、おれもちょっとくらい……」

 それが金の話であることを察すると同時に、深角は「いやあ、いいよ」とやんわりと突き返した。

「日々のお返しだしさ、俺にご馳走させてよ」

「う~……そ、そうかあ? なんか悪いなあ」

 深角からしたらおかしな話で、普段ご馳走してくれる榛原に深角は対価として金銭を渡したことはないし、本人も腐らないうちに食べて欲しいだけだから、と言ってそれを要求するようなことはなかった。だのに、それが逆になった途端そんなことを言い出す榛原がおかしくて、胸の内に暖かな気持ちが広がるのがわかった。

「……じゃあ、アズ」

 高校の時から共働きの両親のために料理することの多かった深角にとって、クリームソースのパスタというオーダーは少し意外だったがレシピは頭の中に入っていた。サーモンクリームにするか海老やカニにするかを考えつつ、それに合わせるメニューを頭の中で組み立てながら、深角はにっこりと榛原に微笑みかける。

 対価を支払いたいというなら、遠慮なく要求しよう。

「ひっ……な、なんだあ?」

 平素から深角の笑顔を少し恐ろしく感じるのは、こういう事が多いからだ。

 屈託のない笑顔を浮かべて、深角は心持ち少しだけ巨漢に顔を寄せて嘯く。

「代わりにさ……ちんぽ見せて」

 いっそ聞き間違いだったなら、と思った。しかし、頬杖をついていない深角の手がさわさわと大型犬の太腿を短パン越しに撫でるので、深角の要求は言葉通りでそれ以上でも以下でもないことを思い知らされる。

「ち……ッ、お、おまえっ、なにをっ……! い、今?!」

「そうそう、今。いーじゃん、端っこなんだし見えねえって。その短パンからこっそり見せてくれよ、そしたら作ってやるからよぉ」

 言いながら、深角は狼狽える榛原の様子を見逃さないようにしていた。自分がとんでもない要求をしているのはわかっているし、端っことはいえ周りに人がいる講義中の明るい教室で露出をするなんてついこの間まで前立腺すら知らなかった榛原には考えられない変態行為だろう。嫌がられて当然であることを理解しつつ、しかし深角はもし本当に榛原が嫌がるようなら即刻取り下げようと考えて目を光らせていた。

「そ、そんなん……見せれるわけ、ねえだろ……!」

「じゃあ今晩はカップ麺だなあ」

「うッ……!」

 言いながら、それなら別に作ってくれなくていい、と榛原が反旗を翻す様子がないことに深角は勝利を確信する。その一手を出されたら深角は観念して降りるしかなかったのだが、少しくらい迷う余地があることを目ざとく感じ取るとダメ押しの一手を打つ。

「いや、俺だけ作って一人で食うのもありかあ」

「えっ……お、お前……!」

 無論そんなひどいことをするつもりはないし、榛原も本気で深角がそんなことをする冷血漢であると思っているわけではないだろう。だからこの言葉の真意は『もしかしたら』という揺さぶりにあった。そして深角の意図通り榛原はその言葉に動揺してみせるが、それはこの男の機嫌を損ねたらどうしようという危惧によるものだった。

 榛原にとっての深角は今でこそ込み入った関係性にあるが、元々は恩人でありながらかけがえのない親友であり、自覚しているかしていないかはさておいてけして裏切りたくない大事な人と感じているのもまた事実だった。頭ではそんな荒唐無稽な要求飲めるわけがないと理解しているのに、この男を失望させたくないという思いが決断を鈍らせる。そこに更に囁かれる悪魔の誘い。

「だーいじょぶだって。なにもこの場で扱けってワケじゃないんだからさ。ちょーっと見せてくれるだけでいいから、な?」

 その言葉に、見せるだけなら、と思ってしまう。思ってしまったが最後、榛原は反抗しようという気骨が急速に萎んでいくのを感じていた。

「う、うぅぅ~~~……」

 唸りながら、しかし体は舵を切っていた。自分が何をしているのか、あまり深く考えないようにしながら椅子を軽く引く。挙動不審げに周りを見渡すと、教室の真ん中に背を向けるように深角に軽く向き直る。軽く前傾して背を丸めて、まるで自分の大きな体で隠すように片腕を机の上に置くと短パンの右の裾を大きな手でしっかり掴んで、たくし上げるように捲る。色気のないひらひらとしたトランクスと一緒にジャージ生地の短パンを捲り上げて、ふさふさとした毛に覆われながら肉厚な太腿と下腹部とで深い溝を作る付け根が露わになる。一瞬手を止める榛原は、ちらりと深角を一瞥すると諦めたようにぐいっと股間まで掴んだ衣服を捲り上げた。

 ドラム缶のような腰回りを覆ってなお余裕のあるサイズの短パンは獣人専用の特注サイズであると聞いたことがある気がする。元々が結構ストレッチの効いた布地であることもあって、ズボンの裾からぼろんと股間を露出させるのも容易いようだった。

「っお……」

 頬杖を突きながら下を向いて、僅かにこちらに体を向けてズボンを穿いたまま露出させたちんぽに目を向ける深角は思ったよりも迫力のある光景に思わず息を呑んだ。

 流石に勃起していない大型犬のちんぽはナマコのようにでろんと項垂れていて、充血していないにもかかわらず五百ミリリットルのペットボトル程度はあるように思えた。包皮に包まれて亀頭の三分の一ほどしか露出していない竿は、大型犬の身体を覆う小麦を思わせる柔らかな色合いの毛皮とはかけ離れたグロテスクな黒ずみ方をしており、無毛の粘膜がこれまでどれほど強く擦られてきたかをありありと伝えている。

 穴が開くほど注視されて、ちんぽに涼しい外気を感じて。少しだけ血が集まりつつあるのはおかしなことではないはずだ。榛原は素知らぬフリで半勃ち状態のちんぽを晒すものの深角はとっくにそれに気づいており、その上で敢えて少し膨張していることについては言及することなくまじまじと観察を続ける。完全に勃起している一物の状態を知っているので、半勃ち状態でこの大きさということは膨張率がそこまで高くないということでもあるのだがそれでも何度目の当たりにしても慣れぬ巨根というに相応しい迫力に圧倒され、深角は生唾を呑む。男の喉が上下するのに合わせて、ふとましい腿に沿って横たわるちんぽが緩慢に息づいた。

「こ、これで……い、いいだろ……!」

 毛皮越しにもわかるほど赤面して、大型犬は腰骨の位置までたくし上げた短パンとパンツを戻したそうに身じろぐ。渋々応じているという態度とは裏腹に、豪快に捲り上げたためにちんぽだけでなくふさふさとした毛に覆われた玉袋まで露わになっていて、玉の片方などは完全に短パンからこぼれ落ちて教室の椅子の座面にだらりと垂れ下がっていた。

 むっとした生臭いにおいが鼻を擽る。早朝に起きて汗をかいてから今の今まで洗い流されていない榛原梓という獣人のフェロモンがそこに沈殿していることは間違いなかった。アンモニア臭と海産物のような生臭さを併せた得も言われぬ強烈なにおいが立ち上ってきているのを深角は認めて、頬杖をついたままゆっくりと片手を持ち上げる。

「……アズ。口閉じとけよ」

 生の太腿を撫でながら、深角の手はぐったりと横たわる雄砲を目指す。その表面に指先が触れると、びくりと榛原が身を震わせた。

「えッ、あッ、っぐ……!♥♥」

 慌てて周りを見渡す榛原は、しかし変わらず淡々と進む講義と周囲にこの営みが知られた様子がないことに僅かばかり安堵する。机の上に出していた片手でぎゅっと机の縁を掴んで、なるべく平静を装いながら軽く前傾して深角の手から逃れようと腰を引くが大した成果は得られず、分厚い包皮を滑る深角の指に呼び起こされ浅ましい熱が顔を出す。

 こんなところでちんぽを出して、しかも触られているという異常事態。今の自分を客観的に見れば見るほど興奮してしまうのは、ちんぽを撫でる手が気持ちいいからだと思いたい。けして自分がバレたらどうしようかという背徳感を愉しんでいる変態になったのではないと信じたい。

「っふ、ふぅーッ♥♥ え、えいとっ……!♥♥」

「先っぽ気持ちいい? 中、すっげえくちゅくちゅ言ってるよ」

 包皮をなぞるように撫でていた指が先端に回る。唯一露茎している尿道口をカリカリと引っ掻くように撫でながら、深角の指はそのまま包皮の内側に滑り込む。覆われているために陰になっているカリ首の段差をこそぐように指を這わせて、裏筋を確かめるようにずぶずぶと生暖かい洞窟の中を男のすべやかな指が動き回っている。

 当然朝練後にシャワーなど浴びていない大型犬の仮性包茎はしっかり汗で蒸れており、一限、二限の講義中の不意の勃起で溢れた我慢汁などがこってりと包皮の内側に付着していた。獣人らしい高めの体温を内包しつつ、悍ましい湿気を伴った皮の内側を深角は堪能する。

 そして今、深角の手で情欲を掻き立てられる榛原は股間に急速に血が集まっていくのを認めながらも止められずにいる。はっきりと硬くなって反り返りながら体積を増しつつある剛棒はたくし上げた短パンを元に戻すのに邪魔になるのは確実で、先端から指を差し込まれて中をかき混ぜる深角の指を喜ぶようにビクビクと戦慄いていた。

「えっろ、ソッコーでギンギンになってんじゃん」

「お、おぉッ♥♥ そ、それはお前が触る、からっぁ゛……!♥」

 指の腹で裏筋を擦るように、包皮の中で指が踊る。ちゅくちゅくとごく小さな水音が二人の間にだけ響いて、榛原はぞくぞくと背筋が粟立つのを止められない。

「俺が触る前から半勃ちだったじゃん、昨日あんだけ出したのにまだ足りねえの?」

 結局昨晩は榛原が求めるがままに生でハメて、深角の体力が尽きてもなお満足しない大型犬のふてぶてしい竿から手や口で精液を搾っていたので、五回か六回くらいは絶頂し精液を噴き出していたはずだった。しかもその後も物足りなそうに自分のちんぽを触っていたのを覚えている深角ですらまだちょっと腰が痛いし性欲もすぐには湧いてきそうになかったのに、この巨体はまだまだ元気が有り余っているようだった。

「っぐ、ぅ……!♥♥」

「やーらしい、まだ講義中だよ? ほら、ノート取れよ」

 熱芯と包皮の隙間に滑り込ませていた指を抜き取ると、ほかほかとした温もりを伴っていて、嗅がなくてもそのにおいの想像がつくようだった。そのまま手が回りきらない太さの竿を無理やり上から掴んで、柔らかな皮でごしごしと反り立つ剛直を扱いてやると嬉しそうに手の中で跳ね回るのがわかった。

 俯いて背中を丸めながらぷるぷると体を震わせる大型犬はもはや講義など耳に入っていないようで、ぎゅっと目をつむったまま弱々しくかぶりを振ってみせた。

「ふ、っふぅッ♥♥ ふーっ、え、えいとっ♥♥ た、たのむぅ、も、やめッ……♥」

 それから恐る恐るという様子で開いた目が深角を捉える。濡れた瞳と震える声は許しを請うようで、あるいは媚びるようで。軽く揶揄って遊ぶつもりだった深角は、その声に少しだけ腰が疼いてしまう。これ以上やればお互いに収まりが付かなくなるだろうと理性が告げていたが、もっとその瞳を歪ませてやりたいと本能が騒ぎ立てていた。

「……はい。終わり。悪かったな無茶ぶりしちゃって」

「っはぁっ♥ っは、ぅ、うぅっ……♥♥ っふぅ、ふーっ♥♥」

 危ういところで、深角は引き返すことに成功する。ぱっと手を離して、頬杖をついたまま涼しい顔で前に向き直る男とは対照的に、先端に雫を浮かせて脈を打つちんぽを露出させたままの大型犬は短パンの裾を掴んだまま余裕のない鼻息を繰り返していた。榛原の唸り声は僅かに惜別の情を孕んでいて、すぐにちんぽを隠そうとしない大型犬の様子に深角はぞくぞくと征服欲がのさばり出すのを止められない。

 震える手でたくし上げた短パンの裾をようやくとばかりに時間をかけて戻そうとする榛原をちらりと一瞥して、深角は口角の緩んだ顔で言葉を紡ぐ。

「……なあ、アズ」

 一体全体どこまで俺好みなんだと思わずにはいられない。快楽に弱いこの巨漢を気が済むまで気持ちよくしてやりたいと考えずにいられない。

「ふぅっ……ふ、こ、今度はなんだよぉ……?♥」

 それがどれだけ歪んだ感情なのだとしても、許され難い外道の所業だとしても。

 この世間知らずな田舎者を独り占めしたいという恥知らずな欲望は留まることを知らないようで。

「俺のこと、好きって言ったら……トイレで気持ちよくしてやるけど、どう?」

 この口は、変わらず軽薄な文句を口にする。それを嘘や冗談だと受け取られるのなら、それはそれで良いのかもしれなかった。




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POSTEDApr 22, 2021
ARCHIVEDJun 10, 2026