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雄同士で孕む獣人達が暮らす敵国の片乳首ピアス顎髭経産夫子持ち子宮ドラミング虎将軍に学ぶ命の使い方

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1/27 おまけの世界、キャラ設定を追加しました。


 ♂♀


 矢よけの木盾を構え、武器を手に隊列を組むイム国の兵士たちの士気は低かった。

 この戦いを始めてはや七日。最初は善戦していた自軍も、今ははっきりと劣勢に追い込まれている。

 都市国家に過ぎないイム国が他国の併呑、領土拡大のための侵略戦争の標的としたのは数里先の森林を中心に繁栄を築くルォの国だった。


 粘土状の大地が広がり、土壌の痩せたイム国は、毎年越冬のたびに厳しい食糧問題に悩まされている。ゆえに、かの国の肥沃な土地は十分奪うに値した。

 食料だけでなくとも、森林由来の材木や繊維などは国家の成長のためには欠かせない要素だった。

 森の蛮族上がりの弱小国など我らの目ではない。これはもはや戦争などよりむしろただの征伐である。

 我らが偉大な国はここより始まるのだ。

 統一を夢見る欲望、そして差別と偏見は人の目を簡単に曇らせる。

 しかし目先の利益に囚われて奇襲を仕掛け、勢いに乗ったイムの兵士を迎え撃つは事前に想定された規模よりも遥かに強力な兵力、そして恐るべき士気の高さによって鍛えられた屈強な獣人の兵士達だった。


 結果、取り返しのつかないところまで前線は押し上げられ、ここを過ぎれば国家としての存続も危ういところまで来てしまっている。

 旗色の悪さは誰の目にも明白なのに、自分たちから仕掛けたこともあって分水嶺はとっくに過ぎていた。負けを認めて降伏したらいいのに、とその場にいる誰もが思っていた。

 ゆえに、なおも駆り出されるイム兵の表情は暗く、士気は低い。

 反面、装備すら統一されておらず、兵とも呼べぬ恰好で相対するルォ国の獣人兵は遠目にも士気に満ちていた。


 態勢を整えた獣人兵と数度ぶつかり合っただけで、イムの兵達は彼らの異様な熱気を感じ取っていた。その屈強さに加え、全てを薙ぎ倒し進むさまは激流のようであった。

 もはや領土を防衛するだけでは収まらぬ覇気に溢れているのがこうして睨み合っているだけでもわかるほどで、それがしんと水を打ったように静観して遠巻きに列を作っているのがなんとも不気味だ。

 あれはきっと嵐の前の静けさで、今にも俺たちを食い殺すべく飛びかかってくるに違いないと身構える心は弱気に縮こまっている。

 出征した兵士のうち三分の一ほどをこれまでで失っているイムの軍は、その半数を捕縛され今日に至るまで誰一人として帰ってきていない。

 きっと獣の姿をした蛮族どもに食われてしまったのだという噂まで立っていて、誰もその現場を見たことはないのに、皆がそれを信じ込んでしまっていた。

 それほどまでにイム国の兵達の士気は意気消沈していて、妙な噂を馬鹿馬鹿しいと一蹴することは誰にもできなかったのだった。


 戦傷で掠れた軍旗を掲げた獣人兵の集団から、ゆっくりとだが力強く駆け出す騎兵があった。

 裸の体に篭手と胸当て、そして簡素な下穿きに具足のみを身に着けた騎手はイム国の兵士達がはっきりとその姿を視認できるほどまで躍り出ると、太い腕で握った矛を掲げる。


「愚かな侵略者ども」声は低いがよく通り、臓腑の奥まで響くような迫力に満ちていた。「貴様らに勝ち目はない!」

 獣人兵の中でもひときわ体格の良い虎は、騎乗しながら自らの下っ腹を力強く叩く。


「貴様らが何人何十人でかかってこようが、我らのココから無限に現れる戦士達が貴様らを必ずや全滅させるだろう!」


 その言葉を皮切りに、大地が揺れんばかりの雄叫びがルォ兵の一団から上がった。

 半裸の獣人兵が声を上げ、虎の所作を真似て戦太鼓のように自らの下腹部を力強く叩く音が、怒号と共に地響きを伴って響いてくる。


「終わりなきを相手にしたくばかかって来るがよい! 我らが産む無限の戦士たちが貴様らの前に立ちはだかるだろう!」


 体中に駆け巡る黒縞と同じ色の顎髭を蓄えた口吻を大きく開いて、ビリビリと怒声で大気を震わす。

 その言葉の真意を正しく理解できた者はいなかった。ただ、何か恐ろしいことを言っているということだけは伝わって、イム兵の表情には怯えとも不安ともつかぬ色が浮かぶ。

 どん、どん、とリズミカルな拍子は音の波というよりむしろ空気の槌のごとく響いて、もはや殴りつけるような振動を戦列に並ぶイム兵達に与えている。

 虎は下っ腹を叩いていた手を高く掲げる。

 来る、とその場の誰もが思って、逃げ出したい気持ちのまま縋るように武器を握りしめる。


「全軍!」虎が言うと、背後に並ぶ獣人兵が一斉に身構える。そして、戦端は開かれる。


「突撃! 軟弱なオスを蹂躙せよ!!」



 ♂♀



 そもそも今回の戦には懐疑的だった。

 戦略的優位や資源の重要性を説くならば、友好的な関係を築いたほうが遥かに有用だ。

 侵略し奪ってしまえば確かに手っ取り早いだろうが、相手の戦力や立地も試算できないまま仕掛けるのは得策ではない。まして、開戦する事由すら利己的とあれば、諸外国にどう思われるかも自ずと知れようというものだ。


 しかし、たかが出納係の、それも雑用ばかり任せられる文官風情が政治に口出しできるわけもない。

 悲しいことに我が国の王やお偉方は随分と高尚な意識をお持ちのようで、ルォの民をたかが蛮族と見くびり、醜悪で劣等な化け物どもを我らが浄化してやろうという愚かしい種族差別を声高に宣うのである。

 そして自らこそが優れた民族である、という恐ろしい思想に酔いしれる武官らを殴ってでも諫める忠臣は不在で、宣戦布告もなしに国境を渡り城郭を攻めて火ぶたを切った此度の戦はイム国の大敗で幕を閉じた。


 幼くして家族を亡くし、天涯孤独の身ながらどうにか食っていけるだけの知識を身に着けた矢先にこれだ。

 さらに、母の病が悪化したのは痩せた土地にもかかわらず重い税を強いてくる役人どものせいで困窮したためでもある。

 一時はそんな国の仕組みを変えるべく算術に励んだのだが、為政者達がこの調子ではいよいよこの国に対して希望が持てなくなるというもので。


 だが、そのように愛国心が欠片もない俺だからこそ今なおこうして生き長らえていられるとも言える。


 もっとも、このまま長生きできそうかというのは自信がない。

 捕虜として捕らえられた俺を取り巻く状況は、けして芳しくはなかった。


「将軍がお待ちだ、入れ。くれぐれも、妙な気は起こすなよ」


 逞しい上半身を外気に晒し、下腹部を守る鉄板と共に袴の帯を締めた豹の獣人兵に連れられて、俺は砦の中でもひと際大きな扉に手をかけた。

 本当は気が進まないが、背丈ほどもある槍を片手で軽々と持ち運ぶ兵士に歯向かうほど蛮勇でいるつもりもなかった。


 石を組んで築かれた砦は巨大で、ルォの獣人たちの屈強さを雄弁に物語っている。そんな益荒男どもが常に詰めているためか、建物自体に汗と獣臭さが染みついているようだった。

 蛮族と軽んじ甘く見ていた武官どもにこの光景を見せてやりたいと思うほど、彼らの文化様式は我々と大差なく感じられる。

 特に部隊内の組織体制や統率力には一切の弛みが見られない。

 もっと言えば、これから会うことになる人物は、戦場で相対した姿に鑑みるとイム国が持つルォの民への偏見とはかけ離れて感じられる。

 ならばせめてその知性に相応しい処遇を求めるが、生きた人間を食らうという馬鹿馬鹿しい噂は俺の頭にこびりついて離れそうもなかった。


「……ム、来たか」


 俺の後ろで、木造の扉がバタリと閉まる。閉まり際に、扉の脇に槍を構えた豹が直立して佇んでいるのが見えた。

 パッと見たところ窓がある様子もないし、唯一の出口には出入りを見張る兵も立っている。そんな気はないが、逃げ出したり抵抗したりという妙な考えを持つのは避けたほうがいいだろう。

 俺は覚悟を決めて、室内に目を向けた。


 簡素だが大きな寝台が一つと、切り出された丸太のような椅子が二つ置いてあるだけの部屋に足を踏み入れた途端、饐えたオスのにおいがツンと鼻を突いた。

 思わず顔をしかめそうになって堪えるが、寝台に腰掛けながら俺を出迎えた大柄な虎には見抜かれていたようだった。


「におうか? 戦が続くと満足に水浴びする暇も与えてくれぬからな、まあ気にするな」

「い、いえ……大丈夫です」


 虎はくたびれて見える股の分かれた袴一枚を召して、惜しげもなく上半身の筋肉を晒したまま唸るような声で俺に言う。場を和ませようとしているのか、「そのうちこれがたまらなくなる」なんて冗談も言ってくれるのが少し意外だった。

 確かに部屋中に充満する汗臭さとも獣臭さともつかぬにおいは鼻の奥が痺れるようだが、ここ数日間牢に勾留されていた俺も清潔な身とは言い難く、お互い様であるので文句は言えない。

 俺は曖昧に笑いながら、イム国の敗走を決定づけただろう先の戦を率いていたこの虎の将軍にどうして自分が呼ばれたのか、そして自分に何をしようとしているのかを効率的に聞き出すための計算を頭の中で繰り返していた。


 自ら仕掛けておきながら劣勢に追い込まれた戦で、練度と士気で劣るイム国の兵士が徹底して抗戦したのかというと、もちろんそうではなかった。

 ここを明け渡せばもはやイム城は目と鼻の先。何としても相手を追い返さねばならぬイム兵の意地を嘲笑うように、ルォの獣人兵は早々に前線を破り、侵略者を蹂躙した。

 勢いづいた牙はあわや指揮官にまで届くかというところでようやく全隊退却の号令が出たが、早々に見切りをつけて撤退する部隊も少なくはなかった。


 かくいう俺も、同じようなもので。


 此度の出兵がそもそも本意でなかった俺は、実力を発揮できない畑違いの役目を押し付けられたこともあって、この戦いに命を捧げ殉じるほどの意義を見出せていなかった。

 現場の指揮官も見当たらずに散り散りになって逃げ惑い、戦意を喪失した恐慌状態の兵士達を守るような実力も義理もない。

 しかし玉砕覚悟で特攻し、無駄死にしていくイム兵をむざむざと見捨てられるほど非情にもなり切れなかった。


 乱戦状態となったからか、弓矢を射かける弓兵らの手が止まっているのをいいことに、顔見知りの連中に声をかけて動ける者をまとめ、自分たちの退路を確保する。

 戦場は敵味方が入り乱れて、足場は血でぬかるみ、前後左右すら覚束ない死地と化していたので、戦いの目を盗んで起伏のある平原を這いずり回って逃げ出した。


 周りには数人、自分と同じように戦意を削がれた兵士が固まっていたが、ルォの兵は見た目通りの獣らしい素早さで離脱を図る俺たちに迫る。

 その数はこちらの三倍ほどだが、意外にも統制された動きで敗残兵を追い詰めた。


 このまま決死の覚悟で歯向かえば数人は道連れにできるだろうが、代償も高くつくだろうというのはすぐにわかった。

 負傷者もいる中、武器を振るって抗戦するのは得策ではない。

 しかし、どうせ殺されるならと最後に奮い立つイム兵を前にして、選択の余地はなかった。


 この戦いは、大局を見ずとも敗戦は必至。であればその瞬間から、命を守ることこそが勝利である。

 そのためには、反撃の意思がないことを示すのが第一だと思った。でなければ、全員が無事に生き残るための勝算はない。

 俺は一歩踏み出てからこれ見よがしに武器を捨てると、戸惑うイム兵を無視して諸手を挙げた。


『降参する。俺が捕虜としてそちらに降るから、こいつらのことは見逃してくれないか?』


 なるべく毅然とした態度で言い放ったつもりだったが、今にして思えば背中は丸まり膝は笑っていたような気がする。

 俺と一緒に逃げ回っていた兵の中には、相手に降ろうとする俺に動揺する者もいたが、抵抗しても結果は見えている。

 醜悪な二足歩行の獣に屈するなど、とこの期に及んでそんな文句を言う者もいたが、それでも圧倒的な物量差を前に口を噤んでいた。


 だが、俺達を取り囲む獣人兵は兵士とも言い難い統一感のない服装でニヤニヤと下卑た笑いを浮かべる。

 中には半裸の者もいて、賊か野盗かというほうが相応しい恰好だ。

 一人として逃がすつもりはないというのがその嘲笑からありありと伝わって、俺は逆にそりゃそうだよなと納得したものだ。


 彼我の戦力差は圧倒的だ、力ずくで全員を拘束するか、あるいは皆殺しにすれば済む話なのに自分たちに不利な提案を飲んでみすみす取り逃がすことがどうしてできようか。

 ここで見逃せば、復讐や捕虜の奪還にとまた牙を向いてくるかもしれない。

 兵士の数はそのまま戦力に繋がる、それなら少しでも削いでおくのが最善だろう。


 ましてや喧嘩を売ってきた側のイム兵がそんなことを嘆願したとて、受け入れられるわけがないことはわかっていた。

 何か企んでいると怪しまれたら頓挫する。だから俺は、そうすることによる利益と、そうしなかった際の損失を提示する。


『いいのか、お前ら。どうせ後がないんだ、このままヤりあえば俺らも死ぬ気で戦うし、一人か二人は確実に道連れにする覚悟だぞ。それに、俺は軍の勘定方を任されていた者だ。兵の規模でも国内の地理でも、そっちが欲しがる情報を教えられるはずだ。だが聞き入れてもらえないと言うなら、この場で喉を裂いて死を選ぶ』


 概ねそんなことを言った気がする。

 ここでようやく、戦意のない哀れな兵士によるただの命乞いではないことが伝わったのか、余裕を見せていた獣人兵の間にピリッと剣呑な空気が漂う。

 背後のイム兵達も俺の啖呵に動揺していたが、この取引以外に選択肢がないことに異議はないようであった。


 少し離れたところで剣戟と怒号が響く。地面に倒れ伏している兵のほとんどはイムの男達で、生き残っている兵達も次々取り囲まれては剣を捨て捕縛されているのが見える。

 時間をかけることで事態が好転するとは思えない。


 生きるか死ぬかの極限状態で、どうしてそこまで生き残ることに執着したのかはわからない。

 そこまで追い詰められていたのも事実だが、やぶれかぶれで一か八かの勝負を仕掛けて死ぬよりは断然マシだと思っただけかもしれない。

 それに、他の誰かが下手に武器を振り上げて突撃するよりも、俺の方が理性的に話ができると自負していた。


 実際、そこらの兵卒と違って自分には利用価値がある。

 阿るわけではないが、今回のイム国の開戦事由にも疑問だったことをルォ国にわかってもらえれば、そこまで悪い扱いはされないだろうと思ったのだ。


 つまり自己犠牲などではなく、これは単なる打算だった。

 だからこそ、相対する獣人兵が互いに顔を見合わせてから、武器をもう一度構えなおしたところで、やっぱりダメか、と覚悟を決める。

 そして、声がした。大きく張り上げたわけでもないのに、戦場の喧騒の中でもよく通る声だった。


『そこまでだ、そういきり立つなお前ら』


 獣人兵の一団を割って、騎馬が一騎現れる。

 馬もデカいが、騎乗する男もまた相応にデカい。


『よかろう、ならばそなたの身はおれが預かる。貴様らは国に戻り、驕った国王らに傲慢を改める気があるならば国までは落とさぬと伝えよ。愚昧(ぼんくら)どもがその気になるよう、せいぜい必死になって我らの怒りを喧伝するがいい』


 号令をかけた時と同じような、有無を言わさぬ迫力に満ちた声だった。

 すっかり竦み上がったイム兵を睥睨し、馬上の虎は簡素だが重厚な作りの鎧を身に着けたまま、長い柄の先に刀を取り付けたような矛で目の前の空気を払う。

 それだけで敗残兵は武器をその場に取り落とすと、背中を向け獣人らの気が変わらぬうちにげ帰るのだった、その場に立ち尽くす俺と、無事を祈る言葉をその場に残して。


 そして俺は、この虎の配下に捕らわれ、密林の中をしばらく歩かされて連中の砦に連れられてきた……というのがことの顛末だ。


 俺が自ら降ったからか、あるいは別の理由か収監された石牢は周囲に人の気配すら感じない独居房で、手枷すらつけられないばかりか手荒い扱いを受けることもなかった。

 狭くはあるものの牢の中もそれほど劣悪な環境ではなく、一日二食は食わせてくれた。澄んだ水も飲めたし、尋問係とは別に見回りにきたらしいこの将軍と顔を合わせて調子はどうかと言葉を交わすこともあった。


 しかし今、二人きりで面会してなお俺に一切枷をつけないのはどういうことなのか。

 自信の表れか、それとも単に愚かなだけなのか。どちらにしろ、枷の有無にかかわらず俺のやることは変わらないのだが。


 改めて虎と相対した俺は、獣そのものの頭をした大男に僅かに慄いた。

 ルォに住まう異形の民姿には慣れたはずだったが、この虎の鋭い視線に射竦められるとそれだけで威圧されるようでもある。

 虎はどっしらとして文字通り重たそうな腰を上げると、寝台の脇に置かれたこぢんまりとした机案(きあん)の上に手を伸ばす。

 鉄の水差しから素焼きの茶器に水を注ぎながら、顎髭を蓄えた口を開いて「飲むか?」と尋ねるので、俺は中途半端に頷いて返した。


 そして、嫌な想像を一つ。

 尋問のために呼び出したのなら相応の部屋があるだろうに、なぜわざわざ自室に呼び出したのか。

 まさか取って食おうというわけではありませんよね? と直球で聞いてしまいたいが、そのつもりだと言われた時の絶望が恐ろしくて言葉にできない。


 そんな俺の緊張を察してか、虎は「安心しろ、命を奪うような真似はせん」と短く言う。

 続いて、水の入った湯呑を俺に手渡すと丸太椅子に掛けるよう促してくるので、大人しくそれに従った。

 虎が湯呑に口をつけるのを見て、俺もまたごくりと水を飲み下す。

 言葉もなくお互いに水に口をつけると、緊張で固まっていた喉が潤って少しだけ気が紛れた。


「少しそなたと話がしたくてな……自己紹介がまだだったな。おれはルォの六騎将が一人、ラオ・フー」

「あっ……ど、どうも。イムのフェオ・ロンです。生まれは、シェイ江のチョウ村です」

「シェイ江……? 随分遠いな、なぜそんな男がイムに?」

「ご、ご存知なので?」

「あぁ、一度だが行ったことがある……魚のうまい地域だな、おれの腕ほども大きな鯉が泳いでるのを見たことがある」

「えぇと……はい。地元の子供たちは、釣った鯉の大きさを比べて遊んでいます。俺もよくやっていました」


 ルォ国の北部に存在するイムの都。そこからさらに東へ十日ほど歩いた先の故郷について、この虎が知っていることに少し驚いた。

 そして、どちらかというと驕り高ぶった故国より生まれ故郷のほうが愛着のある俺は、悪しざまに言わず懐かしむような眼をする虎に妙な親近感を覚えた。

 どうやら俺も、この虎をはじめ彼らをただの蛮族と軽んじていた節が少なからずあったようで、深呼吸して反省する。


「して、いつからイムに?」

「十六の齢からです。母を亡くしたのもあって、村を出て算術のできる文官として都に席をいただいておりました」

「それで勘定方、か」


 杯を下ろしたまま俺は頷く。この砦に来てから数日、尋問を受けたのはこれが初めてではない。

 最初は連れられてからすぐ、そして三日後にもう一度同じようなことを聞かれた。

 戦団の中での役割を明かした俺に尋ねられた内容は、イムの将の特徴についてや、兵站を運び入れる経路、そして近隣の国家との関係性やイムの民の男女比率など多岐に渡る。


 俺はそれらに、できる限り嘘をつかずに答えたつもりだ。

 捕虜を情報源にするつもりなら、虚偽の内容を見抜くためにも複数人から同じ内容を聞かねば情報としての信憑性はない。

 俺が収監された牢の周囲には見当たらなかったが、恐らく俺以外にも尋問している捕虜がいるはず。

 ならば適当なことを言ってもすぐに露呈するだろうから、わからないものについてはわからないと素直に言い、それ以外について知っていることは隠し立てせずに答えていた。

 元よりあんな国に立てる忠義などあろうはずもない。しかし、命惜しさに何でも喋ると思われては足元を見られるので、あくまで毅然とした態度を保つのがコツだった。

 なので、尋問係からもそのような報告を聞いていると思ったが、虎は不思議そうな顔で続ける。


「フム……何ゆえそなたのような男が、あのような戦場へ出向いていたのだ?」


 訝しんだ声と裏腹に、小首を傾げる大虎の姿はまるでどうして空が青いのかと聞く子供のような無邪気さで、どことなく愛嬌があった。

 何故と言われれば、それはあの戦場で何をしていたのかということしか答えようがない。

 それとも他に、何かを探られている? と思ったが、この手の質問は捕虜となった際に散々繰り返されていた。

 存亡に関わるような機密情報を握っているわけもないし、逃げ延びただろう連中には悪いが仕えるべき相手もいないあの国のことはとっくに見限っている。

 俺はお決まりのように、散々繰り返してきたセリフを繰り返す。


「計算係として、あるいは測量のため前線へ送られておりました。ですので、イムの兵糧や輸送の経路、各小隊の規模などならお答えできましょう」


 内部の情報を握っているぞと主張するのは、生かしておいたほうがいい捕虜だと強調するためだ。

 聞かれたことには答えるが、それら全てを自分から吐くことはしないのが捕虜として軽んじられないための鉄則である。

 それ以外にも色々知っている、利用価値がある、と言外に含めながら自分が生き延びるための算段をする俺に、しかし虎は大仰そうに足を組んでかぶりを振った。


「よい、そのたぐいは俘虜取りから聞いている……おれが聞きたいのは、なぜそなたのような武器も扱えぬオスが死地に追いやられていたのか、ということだ」


 首を振る振動で、丸々とした大胸筋が柔らかそうに震える。

 虎が言っていることに、思い当たる節がないわけではなかった。


 自分で言うのもなんだが、非戦闘員は隊列に加えず、後方や本陣に控えさせておくべきだ。

 適材適所というもので、俺のような男が血と鉄の飛び交う最前線にいても意味がないのは誰の目にも明らかである。


 それなのに、俺はあの日の戦いにおいてだけは一番壊滅しやすく取り囲まれやすい、端の戦列へと加えられていた。

 後方で筆と書状と算木を片手に部隊の収支や兵站の在庫を管理する金庫番が、慣れぬ革鎧と武器を手に前線に立つ。

 それも、生涯初めての伝令として、だ。


 もちろん俺は足が速いわけでも、馬を駆る技術に優れているわけでもない、運動能力に恵まれぬ平凡な文官だ。

 兵站の輸送にかかる日数を割り出し、残兵力を数え上げ、食料や武具の残数や損失を記録するのが本来の役割だ。


 それがその日だけは違った。

 おそらく本命の伝令係は他にもいて、自分は伝令の格好をした囮なのだろうというのはすぐにわかった。

 しかし、それだって他に適任がいるはず。

 伝令とはいえ同じ武器を持たせて立たせるなら、まともに練兵した兵卒のほうが役に立つに決まっている。

 つまりはそれができないほど、伝令に使う兵士を惜しみ文官崩れの男を駆り出さなければいけないほどの窮状というわけで。

 武器を持てる男は全て戦線に送り出さないと成り立たぬほどに追い込まれた戦況を把握するのに時間はいらなかった。

 唯一良かった探しをするとしたら、おかげで元々は非戦闘員だというのが早期に信用されて、捕虜としては丁寧な扱いを受けることができたことくらいだが。

 侵攻のための大隊に従軍する文官や、小間使いなんかはもちろん他にもいた。

 ではどうしてその中でも自分が、という発端を思うと気が重くなる。


「そなたのような男を囮として、捨て石として扱う道理は一体なんだというのだ? そなたは、何をしでかしたのだ?」

「……何も、と言えるほど潔白な身ではありませぬ。おそらくですが……此度の戦について、私のような身分の男が降伏を進言したのが気に入らなかったのでしょう」

「ほう?」


 虎は視線だけで続けろ、と促す。俺は続きを何とするべきか少し悩んで、かつて味方だった陣営に述べたものと同じ文句を口にする。


「推測ですが……将軍、先の戦ですがルォ国側にはまだ兵に余力があったのでは? そしてそれは、おそらくイム国が侵攻を仕掛けている間ずっとで、最初から数では勝(まさ)っていたのではないでしょうか」


 問われた虎は少しだけ目を見開く。それから自らの顎下の髭を撫でながら、「なぜそう思う」と聞き返した。


「私は……算術を学ぶ平凡な文官です。武においては何一つ秀でておりませぬが、見えているものを見えている範囲で計算するだけなら自信があります。ですので、撤退していくルォ国の兵士の数や、双方の殉職者の数などがわかれば全体を成す数はある程度試算できましょう。あの場に集ったイムの兵が五千人規模ですので、日毎の合戦における双方の死傷者の割合が……ええと、ともかく、おそらくですがルォ国側の戦力は総じてその三倍ほどと求められます」


 細かい計算方法や根拠となる数字を用いようとして、自身も筆や器具がなければ算出できないと気付いたので諦めた。


「それなのに全力でこちらを叩いてこないのは、何か別の狙いが……例えば、こちらを引き込むことが目的ではないかと軍議で提言しました。数による戦力差は一次式で求まります、よって相手が本気になれば僅か三分の一程度の我々は手も足も出ないでしょう。降伏とは言わずとも、撤退して戦略を考え直すべきです、と。ですがその結果が……」

「憶測で余計なことを言い、士気を下げる不忠者として前線送りか」


 頷いて、「彼らはそんな私に木を見て森を理解した気になるようなものだ、とも」と続ける。


「ですが、実際その通りなのかもしれません。私は戦の才に恵まれたわけではありませんし、机上で計算しただけの結果を事実であると証(あか)したわけでもありませぬ。自ら始めたこととはいえ彼らとて死力を尽くして抗っていました、そこへ横から知った顔で口出しされていい気がするはずもなかったのです。私を戦犯者のように扱うのも、無理からぬ話です」

「しかし、結果としてそなたの言葉は正しかった」


 手に持った杯を小さく揺らして、虎が興味深そうに眼を細める。

 俺が顔を上げて「では、やはり」と言うと、将軍は鷹揚に頷いて答えた。


「そなたの算定通り、我らはイムの者どもを叩きのめすことが本意ではない。むしろその力を削ぐことこそが真の狙いであった。ゆえに、連中を引き込めるよう常に同数か、わずかに上回るほどの戦力でのみ相対しつつ、敗走を演じたのだ。我らも消耗しているよう装いつつな」

「隊の装備をバラバラにしたり、あえて統一していなかったのも……そのためでしょうか?」

「目聡いな、だがその通りだ。……誰か一人くらい、まともな指揮官がそなたの話を聞いていれば結果は違ったかもしれぬな」


 何だか実力以上に評価されてしまった気がして、両手を足の間で握り締めて「恐縮です」と背中を丸める。

 侵略戦争を仕掛けた数日はイム国が勝っていたし、あちこちでその吉報が飛び交っていた。

 それがはっきりと覆ったのは三日目からだ。押し込んだ前線を維持できず、多くの兵を失いながら押し戻されてしまった。

 力任せにぶつかってくるしか能がないなどと揶揄されていたルォ国の兵士だが、しかしそれは向こうの思惑通りに『勝たされて』いただけだったのだ。

 現に、応戦するべく出てきたルォ兵とは数も練度も桁違いだったし、さらに裏にははっきりとした思惑が隠されていた。


 最初に大勝し勢いづいてしまったからこそ、引き際を見極められないまま、相手も苦しいはずだ、と戦いを続けた。

 その結果、決定打に欠けたままずるずると敗走し兵を失い、先の大戦でイムの軍団はついに殆ど壊滅状態に陥ってしまったと聞く。

 戦いは数で決まるが、必ずしも全ての駒が戦場に出るわけではない。

 であれば、この戦いは初めから負けていたのだ。

 せめて、俺と一緒に逃げていた彼らは無事に都まで辿り着けていてほしいと祈るばかりである。


「それは……なんのために、でしょうか」


 問うと、「なんだと思う?」と聞き返される。少し考えてから「わかりません」と答えた。

 戦力の逐次投入が愚策とされるのは、その損耗のためだ。

 互いが互いに決死の覚悟で挑むと仮定した白兵戦の損害と結果は、実に単純な一次式によって求まる。

 つまりは一人が一人と戦えば双方が相討って解はゼロだが、百人が五十人と戦えば五十人が生き残る。

 もしもこれが飛び道具や弓矢を介した戦いならばこの限りではないが、原始的な戦においてその概数は大体がこの法則に当てはまる。


 だからこそ数で下回る方は策を弄し、自分たちが数で上回るよう、あるいは有利な位置で戦えるよう立ち回る必要がある。

 しかし自軍の数が大きく上回るならば話はもっと単純だ。全戦力を投入し、片っ端からひき潰してしまえば良いのだから。


 その方法を採らず、損害を度外視して相手を摩耗させることが目的というのはどうしてか。そして、その理由が何かと考えてみても、答えは出そうにない。


「フ……元はと言えば仕掛けられた戦だ、売られた喧嘩は買わねばなるまいが、その全てを殲滅しては目的が果たせぬ……というだけだ。それがこちらも相応に『潤った』ので、先立っての戦でわかりやすく決着とさせてもらったワケだ」


 その言葉には少し引っかかったが、文意としては些末だったため無視することにした。そうする意図は、と考えて、俺は言葉を返す。


「……相手の抵抗力を奪うことで、交渉の席を設けやすくするため、でしょうか?」

「あるいは、都そのものを攻め落とすため、かもな」


 理には適っている。

 例えばたった一回の戦いで圧倒的な戦力差を見せつければ、相手も考え直してより防衛的に戦法を変えてくるだろう。

 つまり、早々に立て直す機会を与えてしまうことになる。対応させる間を与えず、万事順調と見せかけて均衡を保ったままじわじわと消耗させることで、取り返しのつかないところまで手札を張らせていたのだ。

 そして、全てが出切ったところで、底を見極めてから満を持して攻勢に転ずる。

 もはや殴り返すための力はなく、返す刀で牙城に迫る一団に抵抗する術もない。

 今はまさに、そんな状況になっているのではないだろうか。


 もしそれが誰かの思惑通りの展開ならば、この虎がその絵を描いたのだろうか?

 俺が言葉もなく驚くと、虎が試すような目つきで「それともそなたが止めてみるか?」なんて聞いてくるので、かの国の末路を憂う思惟をそこで切り上げる。

 そんなものを考えるより、この問いにどう答えるべきかと頭を使うほうがよっぽど懸命なように思えた。

 妙に粘つく生唾をぬるい水で無理やり喉の奥に押し込んで、ふるふるとかぶりを振って答える。


「……いいえ。残した家族も忠誠を誓う相手もいない私にとって、かの国への執着はとうにございませぬ。むしろ、これほどの規模の戦を意のままに操った将軍の手腕に感服いたすほどです。どうぞ、将軍の為すべきことを為してください。彼らの浅薄さにはいい薬になるでしょう」


 売国奴と罵られようが、不忠者と後ろ指を差されようがもはやどうでもいいことだ。

 イム国が敗け始めたころ、獣人などに敗北するなど気合が足りん、などと失笑ものの文句を言っていた自国の将を思い出す。

 脅威を脅威と見抜けず、偏見に目が曇ったまま意固地になった彼らに対する忠義などハナからあるはずもない。

 よって、この胸にはただ漠然とした生きるための執着と、何も為せぬまま死ぬのは嫌だという思いのみが残っていた。


「……フ、面白い」

「えっ?」

「おれはこう見えても多くの言葉を聞き分けてきた身でな、ゆえにそなたの言葉に嘘がないことはよくわかる。だが、嘘がないからこそ、腹の中には行き場を失くした竜がぐるぐると唸っておる」


 さすがにすぐに言葉を返せなくて、「えっと……」と言い淀む。

 どういう意味か、この国に伝わる諺(ことわざ)か何かなのかと聞き返そうとして、虎が続ける言葉に驚いた。


「気に入った。竜が天に昇るさまを見届けてやろう」

「え……えっ?」

「そなたはこれよりこのおれのモノだ。ただ虜囚として飼い慣らすだけでは惜しい、そなたをおれの下で使ってやろう。差し当たって帳簿係を任せたいのだが、不服か?」


 正直、捕虜として捕らえられた時から敵国の……ルォの下で生きることを考えなかったわけではない。

 殺されずに済むなら頭脳労働でも、肉体労働でもこなしてみせる。もちろん過酷だったり不当だったりというのは望まないが、敗戦国の虜囚として奴隷のような扱いを受けてでも生き延びてやると思っていた。

 しかし、まさか指揮官自ら俺の身を引き取ると言い出す展開はさすがに想像していなくて、戸惑ってしまった。


「いッ、いえ、その、ええと……不服などと滅相もございませぬ、ですが何故自分などを……? 私は……将軍やルォの民にとっては侵略者も同じ身です」

「だがそなたは此度の戦には唯一懐疑的であったと聞いているぞ。それに、聞いた話通り有象無象のイムの民ほど偏った見方もしておらぬようだからな」

「それは……国の益にならないから、というだけのことです。結果が違えば、私は喜んで貴殿らを屠る手助けをしていたでしょう」

「ウム、そうだろうな」

「ではやはり、私などでは……この身に余る処分であることに違いありません。もちろん、過分であるからといって虜囚の身で拒むほど恩を知らぬわけではありませぬ、ただ貴殿ほどの男がどうして、と思わざるを得ないのです」


 そこで初めて、虎は間を置いた。

 考え込むように、あるいは言葉を選ぶように押し黙ってから、寝台の上で腕を組むと「理由はいくつかあるな」と言った。


「いくつか、ですか?」

「ウム。先程申した通り……我が隊の勘定方はここのところ不足していてな。そなたのような算術に長けた学のある男を欲していたのだ。加えて、その慧眼はこの場でただの『肉』とするには惜しい」


 指を一本立てて虎がそう言う。

 べろり、と黒々とした唇を舐めながら語るものだから、思わず背筋が伸びる。

 聞き間違いでなければ、その言葉の意味はそれ以上でも以下でもないのだろう。気に入られていなければどうなっていたのかを想像して、悪寒に身震いした。


「さらにもうひとつ。これは我が国ならではの理由で、先の戦でも死力を尽くさぬことについての答えでもある」

「それは、いったい」

「人手不足だ」


 は? と言いそうになったが、危うく息が漏れるだけに留められた。

 しかし顔には出ていたようで、二つ目の指を立てた虎は迂遠な表現で続ける。


「我が国では、慢性的にオスが不足していてな。そなたのような健やかなオスが一人でも多く国に欲しいのだ」

「……それは、つまり」

「あぁ。イムのオスどもを捕らえるためにも、かの国には戦を継続してもらいたかったのだ。そなたが見抜いた通り、我らが全力で応えれば此度の侵攻はすぐにでもカタがついただろう。だが、それでは足りぬ。あと少しというところで希望を持たせ、何度でも剣を交え、イムに残る男どもを絞り出させてこそ、ようやく我らの勝利と言えるのだ」


 それで、潤った、とか言っていたのか。

 確かに、戦端が開かれてからというものの前線を押し込めずじわじわと敗戦を繰り返していたのは、戦の規模以上に兵士を失っていったことにも原因があった。

 点と点がつながると、しかしまた新たに疑問が浮上する。

 あれだけ兵が多いのに人手不足? と訝しむが、軍役に勤めるものが多いということは労働者が少ないのかもしれない。

 特に頭脳労働に関して人員が不足していると言っていたこともあって、俺はその言葉を『何らかの仕事を手掛けるための人手が不足している』ということで解釈した。

 これほど立派な砦を都市から離れたところに持っているくらいだ、築城でもしているのだろうか。それならばまあそういうこともあるだろうと納得する。


 しかしさっきの舌なめずりがチラつくのもまた事実で。

 まさか食料として不足している、という意味ではあるまいなと薄ら寒い想像に見て見ぬふりをしつつ曖昧に頷いた。

 虎は「そして最後に」と指の肉球を見せつけるように三本目の指をピンと立てる。腕の隙間から、分厚い胸板にぷっくりと実った乳頭を貫通した金環が揺れるのが見えた。


「このおれが、そなたを気に入った」

「……は?」

「信じられんか? だが、事実だ。その顔は眉清目秀としていて、心思は理知に満ち満ちて聡明だ。多少おカタくはあるようだが、沈思黙考の表れというだけのこと。見目だけでなく頭も切れる優秀なオスとなれば、おれが傍に置くには十分足り得る理由だ」


 まるで女を口説く詩を聞かされている気分だった。その語り口があまりにも情熱的だったので、俺は呆気にとられてしまう。

 嘘や冗談で俺を褒めそやす利点はないだろう。であれば、本心からそう言っているのか。


「だが、何より、そなたの目はまだその命の使い方を識らず野心に燃えている。果たすべき何かを探し飢えている。実に、おれ好みだ。まったくそなたのような男を切り捨てたイムの者には感謝せねばなるまいな。そなたならばさぞ優秀な子を作るだろう」

「いやぁ、そんな……」


 謎に下半身を褒められたが、そこまで俺を高く評価してもらっているとは思わなかった。

 思わず鼻が高くなってしまう俺は、ハッと我に返ってかぶりを振った。

 丸太の木椅子に腰かけたまま、背筋を伸ばす。


「お、恐れ入りますが買い被りです、このフェオ・ロンは将軍が思うよりも愚劣で、融通の利かぬ平々凡々なる男にございますれば」

「それを決めるのはおれだ、フェオ・ロン。そなたはおれの見る目を信じられぬと?」


 組んでいた足をどすんと下ろして、大股を開いて座る虎が前のめりに俺を睨む。

 その言い方は卑怯だ。言葉を返すその迫力に、俺は虎の尾を踏まぬよう慎重に言葉を紡ぐ。


「い……いえ、滅相もございませぬ。ですが……将軍。この私こそが間者であり、将軍の命を狙う刺客でないという保証はないのでは? そのような者を登用するのは、いささか酔狂が過ぎるのでは……?」

「応、ならばいつでもおれを殺しに来るがよい」


 虎は自分の胸を力強く叩く。太鼓のような重低音が室内に響いて、俺はますます身が縮こまってしまう。


「おれ以外の誰かが保証する安全など実にくだらぬ、そんなものは愚鈍な驢馬(ろば)にでも食わせてしまえ。酔狂も危険も承知の上だ。おれはそれでもなお、そなたが欲しいと言っている。他に道理が必要か?」


 まだ出会ったばかりの俺の何をそこまで気に入ってくれたというのか。

 まるで理論的でない物言いに、一切の根拠を伴ってないことはわかりきっている。

 だからこそ、自信満々にそう語るその目が、歴戦を潜り抜けてきた体躯が他の何にも勝る根拠のように感じてしまう。

 胸を張って、真っすぐな目でそう言える獣頭の男を、不覚にもかっこいいと思ってしまった。


 小国が割拠するこの乱世で、覇を唱えるのはこういう男なんだろうと思わせる気迫。

 それは全能感にも似て、この男とならばきっと俺も何かを成せるのではないかと、午睡の夢よりも心地よい何かをそこに見てしまう。

 熱意が伝染する、もしかして自分は自分が思うよりすごい男ではないのかと浮足立つのを止められない。


 そうだ、どのみち俺には行く当てもなければ帰る国もないのだ。

 捕虜として薄暗い石牢にいつまでも繋がれているわけにはいかない。

 自由と引き換えに、多少の頭脳労働と奉仕を提供することに何の躊躇いがあろうかと考えると、どう計算してもその申し出を飲む以外に答えはなさそうだった。


「……わかり、ました。このフェオ・ロン、この時よりルォのため、ラォ・フー将軍のため我が算知を揮いましょう」

「ほう、頷いてくれるか。そなたが望まぬのならば故郷に帰れるよう図らってもやるが?」

「いいえ、元より帰る家もない身です。どうぞ貴殿の望むままにお使いください。計算仕事や書類仕事、測量などであればお力になれることでしょう……ですが、けしてご安心めさりませぬよう。私はあくまでも貴殿らの敵であった男ということをゆめゆめお忘れなきようお願いいたします」

「フ、面白い。国には帰らぬが、あくまで道具としておれに使われることを望むか?」

「得体の知れぬ捕虜を登用しようという酔狂は、いささか度が過ぎていると思われますのでね」


 実際、俺にその気がないからいいものを、これで俺が腹に一物抱えた刺客であった場合この虎の身に危険が及ぶことは明白だ。

 本人は豪気なことを言っているが、用心しすぎるということはない。忠告のつもりでそう言うと、虎は「まったくだ」と言ってガハハと笑った。


「実にカタい男だ。だが、そうさな。望むままに……か。それはよいな、実に」


 寝台に座る虎が背筋を伸ばすと、腕を開いて持っていた湯呑を机に戻す。

 そして自分の隣を叩いて示す、隣に座れということだろうか?

 ちょっと嫌な予感はしたが、「来い」と言うので、ひとまず腰を浮かせてそれに従う姿勢を見せながら問いかける。


「……この痩せた男に伽をご希望で? お言葉ですが、私ではご期待には沿えないかと」

「いいや、違うな」


 虎に倣って杯を手放し、意外と柔らかい寝台に座ると、すぐ隣にある巨体からむっとした獣臭が感じられた。

 派兵されたことである程度の男所帯にも慣れたつもりだが、それとはまったく違う別種のにおいにクラクラしてしまう。

 むくつけきオスのにおいと言うに相応しい饐えたにおいは、虎が腕を持ち上げて腋をさらすと一層強く鼻孔に忍び込んだ。

「では一体」と隣に座った俺が口を開く。「何を」と言うころには、俺は肩を押され、仰向けにされていた。


「言っただろう、そなたなら優秀な子を残すだろう、と」

「っ、ええ、まあ」


 そんなことも言っていたかもしれないが、それと今俺の袴越しにちんぽを撫でることとどう関係があるのだろう。

 いまいち結びつかない俺に覆いかぶさって、虎は黒い顎髭を蓄えた口に獰猛な笑みを浮かべる。ぎらりと尖った牙が垣間見えて、俺はやはり食われるのではと体が強張るのだが。


「だから、ここはひとつ、そなたとの子が欲しくてな♡」

「……、……は?」

「そう構えるな、ちょっとばかし子作りをしようというだけだ……では、存分に孕ませてもらおう♡ とくと励めよ♡」


 どうやらそれは、当たらずと雖も遠からずといったところのようだった。



 ♂♀



 ルォ国の獣人は男同士で生殖すると言われて、俺はそんな馬鹿なと笑った。

 なんでも尻の奥に子を孕む袋があるらしく、普段は閉じているがちんぽで性感を得るにつれ口が開き、そこへ子種を注ぎ込まれることで命が宿るのだという。


 そんな話は聞いたことがないが、イムは特に獣人種への偏見と差別意識が強いために情報が入って来なかっただけで、近隣の国や旅人間ではそこそこ有名な話らしい。

 さらにルォの獣人同士では子供ができにくいから、他種族の種を積極的に欲しがる国民性と聞いて、俺は引きつった笑いを浮かべながらも逆に合点がいって、全てを理解した。


 アレほど兵力に満ちているのはつまりそういうことだし、慢性的にオスが不足していると言っていたのはつまり孕ませるための種を出す竿役が足りなかっただけのことだ。

 となると捕虜となって帰ってこない連中は、死んだか食われたかと噂されていたが、そうではなく今頃敵兵の膣内に精を出し続けているのだろう。

 願わくばその未来に幸多きことを祈る。


 そして、俺がこのようなことを考えて現実逃避するのは、恐ろしくも厳めしい虎頭の大男が露わになった俺のちんぽに嬉しそうに頬ずりする眼下の光景を現実と受け入れがたいからだ。

 ちんぽに感じる獣毛は意外にも柔らかく、まるで筆の先でくすぐられているようでもある。

 現状は信じがたいが、その感触は意外にも心地よく、俺の煩悶など露知らずちんぽはすでに半勃ちという有り様だった。


 どうしてこうなった。

 何が起こっているんだ。

 確かに俺自身外国と関わりのある仕事をしていたわけではないから知らないのも無理はないだろうが、こんなのはただ男色するための方便ではないのか。

 男同士で生殖ってそんな馬鹿馬鹿しいことあり得るのか。


 そう思いながらも、俺の両足の上へ乗り出すように股間に顔を寄せる虎の支配からは逃れられない。

 それは抵抗した時の報復が恐ろしいからで、断じてここ一か月ほどろくに味わっていない性感を惜しんだためではない……と思いたい。


「おォ……♡ これはなかなか、立派な得物を持っているではないか♡♡」

「あ、あのッ?! いくらなんでも、お、お戯れが過ぎるのでは……?!」

「ウム、そうだな♡ いつまでも見聞気取りではちんぽに悪かろう♡ では遠慮なく♡」


 惚れ惚れとした様子で言う虎頭の偉丈夫に、そういう意味じゃない、と言おうとした俺は、しかし自分のちんぽをぬるりと包む温度と肉感に言葉を飲み込まざるを得ない。

 猛獣の頭をした大男のくせに、その口内は嘘のように温かく、そして柔らかかった。

 ずらりと並んだ牙を思い出して縮み上がりそうになったのは一瞬で、硬質な感触がひとつたりともちんぽに触れないその口吻はひょっとして歯が生えていないのかと疑ってしまうほどだ。

 隣に腰かけたまま上体を乗り出して覆い被さり、半勃ちのちんぽを咥える虎は上機嫌に尻尾を躍らせる。

 幅広で肉厚なベロでちんぽを迎えると、包み込むようにうねらせて裏筋をねぶるのだ。

 予想外の、そして未知の快楽に思わずうぅっと呻くと、虎は背筋にしなを作って機嫌よく宣う。


「んふぁ♡♡ しゅっごいな♡ ふぁまらんひほいふぉあふぃがすふぞ♡♡ ひつに濃ふておぇごぉみら♡♡」

「しょ、将軍っ……咥えながら、しゃべんないでくださいっ……!」


 信じられない、この人は本当についさっきまでの虎と同一人物か?

 あれほどの逞しさと気迫に満ちていた顔は、今や雌猫のように弛緩しきっている。

 獣人の男の顔など区別もつかないし見慣れてもいないのに、はっきりと媚態が見て取れるほど蕩けていた。


「じゅるっ♡ ぷは、おぉ、すまぬな♡ そなたのちんぽのにおいと味わいがおれ好みだと感心していたとこだ……ん、ちゅっ♡」

「う、うっ……!」

「まあそれも、満足に湯浴みもしていなければ当然か♡♡ なァに気に病むことはない、酒もちんぽも、おれは濃いほうが好みであるからな……フフ♡ じゅるっ♡」


 虎はちんぽにまとわせてにおいを移した唾液をすすり取るように吸い上げる。顎髭を震わせて窄めた口を離し、唾液で濡れた唇を燭台の灯りに妖しく照らしながら亀頭を小さく吸った。

 敏感な部位に触れる粘膜はちんぽをむず痒くさせる。いっそ自分の手で荒々しく扱いてしまいたいと思うほど、俺のちんぽは充血しはしたなくしゃくり上げていた。


「フム♡ 持ち主に似ずこちらの竜はいささか気が短く見える、簡単に昇ってしまったぞ♡」


 勇将が俺の中に何を見たのかはわからないが、ちんぽと比較されて少しいたたまれない気持ちになる。馬鹿にされているようで、しかし応援されているようでもある。

 物言いたげな俺の視線などどこ吹く風という様子で、虎は寝台に上がって膝を突いて四つん這いになると、シュルッと袴を留めていた腰帯を解く。

 それを床の石畳の上に投げ捨てると、緩んだ袴で下半身を隠した半裸姿のまま俺のちんぽを再び咥え込む。


「んんっ♡ よいぞ、実に好ましいな♡ 戦も交尾も……話が早いに越したことはない、んむっ♡♡」

「うぁっ……!」


 そんなことを言いながら、将軍はぱくりと俺のちんぽに食いつく。

 食いちぎられやしないかと肝を冷やしたが、ちんぽを包み込む熱とぬるついた感触にはたまらず声が漏れてしまった。

 虎は藁を固めた寝台に沈ませるように手を突いて、短めの口吻にちんぽを咥えたまま頭を上下に動かし始める。

 尾根のように盛り上がった首に力が入りひと際太くなって、頭の動く反動のために大きく張り出た大胸筋と乳首にぶら下がった環状の装飾品がゆさゆさと揺れていた。


「んん゛っ♡ じゅっじゅるっ♡♡ んはぁ♡ どうした、しゃぶられるのは初めてか?♡ 蜜が次から次へと溢れてくるぞぉ……♡」


 ふーっ、と虎が俺のちんぽに息を吹きかける。それだけでも刺激として十分で、思わず呻いてしまう俺は、その言葉を否定できなかった。

 幼くして親を亡くした農民の子である自分は、本来文官として召し抱えられるような身分ではない。

 入ってから知ったことだが、イム国の官僚として登用されようと思うなら生まれの血筋か生家の財産のどちらかが肝要で、そんな中で半ば雑用係として俺が任用されたのはひとえにこれまで死に物狂いで勉学に励んできた成果だ。

 ただでさえ農民の生まれというだけで嘲笑の対象というのに、それも辺境の片田舎の出ともなればなおさらである。それを見返すために、田舎者と言われようがカタブツと言われようが仕事や学術に打ち込んできたものだった。


 ゆえに、俺はこれまでそういった遊びとは無縁であったし、良縁に恵まれるわけもなかった。

 そんな自分を恥じるわけでも惨めに思うわけでもないが、誰かに性器を触られることも見せるのも初めてであることをこの虎に悟られるのはなんだか気恥ずかしく感じる。

 黙したまま語らぬ俺の顔をちんぽ越しに見る虎は、全てお見通しとばかりにその口元に微笑を浮かべる。


「フフ、良い顔だ♡ そんな目をされてはからかうのも気の毒というものよな……んん゛っ♡」


 言って、虎はじゅっぽじゅっぽと俺のちんぽを丹念にしゃぶり始める。

 ぶにぶにとした唇で挟まれ、ぬるぬるとした口腔に擦りつけられる感触に思わず下半身に力が入る。


「っはぁ♡♡ んん~ッ、じゅるっ♡ はっぁ゛、たまらんッ♡ おれのおまんこも疼いてしまうぞ♡♡」


 虎は片手を自分の背後に回し、緩んだ袴の内側に滑り込ませる。

 分厚い毛むくじゃらの手がよく肥えた瓜のように丸く張り出した双丘の間に入り込んで、ちんぽをしゃぶる水音とは別にクチュクチュとくぐもった音がするようであった。

 まさか自分で尻孔を穿(ほじ)っているのかと思うと、その光景は劣情を持て余した女が自分を慰めるようにも見えて、思わず鼓動が早くなる。

 虎は尻孔を指で撫で回しながらも、口淫を疎かにするようなことはなかった。

 亀頭を磨くように口蓋が当たって、幅広な虎の舌はこびりついた垢をこそぐようにカリ首の段差や裏筋を丹念にねぶっている、

 かと思えば、まっすぐ伸び上がった竿をべろべろと舐め回し振り子のように左右に振れて擦るので、もはや切ないくらいの勃起に腰すら跳ねる。


「しょ、将軍っ、そ、それ以上はっ……!」

「ん♡ でそぉか?♡♡ かまわん♡ ほのまま、じゅぷっ♡ たんと出せ♡♡」


 その口技になすすべもなく達しそうになって、慌てながらそう伝える。

 今となっては男、それも獣人族のオスにちんぽをしゃぶられているということに疑問すら抱けない。

 快楽でいっぱいになった俺の頭は、もはや間近に控えた射精のことしか考えられない。

 しかし、凡百のつわものを束ねる将の口に自分の劣情の極みを叩きつけるのは致命的な過ちのように思えて、残った理性を総動員してその頭を、肩を押し退けようとする。

 が、虎はそんな俺の手を毛むくじゃらの分厚い手で軽々と受け止める。

 がっしりと両指を絡めて握られて、その肉球が肉刺のように固く節くれだっていることに気づいた。両手を制するうちの片方の手がどこかほこほこと湿っているのも、気のせいなどではないのだろう。


 虎は俺の制止を求める声などまるで意に介さず、熱心にちんぽをしゃぶって精子を求める。

 相手は敵国の将とはいえ目上の身分、それも捕虜たる俺の身受けを申し出るお方だ。

 先の大戦で見事な勝ちを収めた指揮官自ら俺のことを単なる捕虜ではなくしっかりとした人間として扱おうというのだ。

 そこに恩義を感じるべきだし、敬意を払うべき相手であることに間違いはない。

 しかし、自分もそのようにすべきだと思っているのにその口に思いっきり精液をぶっぱなしたい欲求が増長して止められない。

 まさか自分がここまで見境のない男だとは、と恥じ入るのと同じくして、そもそもそんな相手にちんぽしゃぶられて求められているんだから逆に出さないほうが失礼に値するのでは、と思い至る。


 何者かもわからぬ捕虜をわざわざ配下に取り立てようという酔狂なお方だ。ここでは一般的な規律規範など意味をなさぬことなど先だっての問答で理解したはずではないか。

 であれば、ここで射精に至ることは何もおかしくはなく、むしろこの厳めしい将軍の機嫌を損ねることこそ第一に避けるべき最悪、何をおいても優先すべき事柄ではないのか。

 頭の中でそんな仮説が出ると、全細胞がそれに同意するようだった。

 ぐっと持ち上がった金玉から、腰の奥から込み上げて爆ぜる解放感に目も眩む。ばちばちっと落雷に似た閃光が前頭を駆ける。


「あっ、あぁッ! しょ、将軍、出ます、イ、イくッ……!!」

「んんむ♡♡ ぐるるる~~……ッんん、むぅ~……♡♡」


 仰向けになったまま背が反って、腰を突き出す。

 牢に閉じ込められている間とてもじゃないがそんな気になれず、牢の見張りもいるしなぁと抜くに抜けずに溜め込まれていた子種が、ぶら下がった金玉の中で熟成された白濁がちんぽから噴き上がる。

 下半身が不随意にこわばって、そのたびに尿道から迸る質量を感じる。


 虎は俺の勧告にこくこくと頷いて、その舌腹で射精を察するとぐっと沈み込むように竿を根元まで咥え込む。

 俺の陰毛に獣の黒鼻をほとんど押し付けて、舌で脈打つ竿をからかいながら喉奥で精液を受け止めていた。

 二度、三度としゃくり上げる射精は永劫続くかのように感じられた。強すぎる快楽が呼び水になって、次から次へと金玉から子種が噴き出す。

 そもそも性感を得ること自体久しぶりだったのでそう感じただけかもしれないが、いずれにしろ今後の自分を狂わせるには十分すぎるほど鮮烈な体験であることには間違いなかった。


「んっぐ……はぁ♡♡ ウム♡ 見込んだ通り、良い子種だ♡ 量も多く、イキが良い♡♡ おれの舌の上で喜び勇み、くっさい精子がぴちぴち跳ね回っておるぞ♡♡」

「っは、はぁっ……将軍、お戯れが過ぎます……っ! も、もう十分でしょう……?!」

「フ、馬鹿を抜かすな♡」


 わざとらしく喉を鳴らして飲み干した虎が、なんとも生臭い息で一喝する。

 のっそりと上体を起こすと緩んだ下穿きを親指に引っ掛けて、果物の皮でも剥くような気安さでずるりとそれを下ろしてみせた。

 一糸まとわぬ姿になると股間で重たげに頭をもたげている巨砲と鶏卵ほども大きな睾丸を俺に見せつけながら腰を上げる。

 充血してなお重たそうに首を垂れる虎槍は人間のそれと同じ形をしていて、先端から糸を引いて垂れた滴が寝台にシミを残していた。

 そして、俺が抵抗を考える隙も与えず寝台の上に両足を立てて、仰向けになった俺の体を跨いでしゃがみ込んだ。


「まだ上澄みを抜いただけだろう♡ おれを孕ませるまで、そなたの竿を萎えさせることは許さんぞ?♡」


 熟れた李のように赤黒く張り出した亀頭が俺に向けられている。

 俺の上に跨った虎の股間から伸びていながら、俺の鳩尾まで届こうかという大きさのそれは矛か、あるいは槌のようだ。

 切っ先を向けられた俺はどこにも逃げ場のないことを知って、怯えか、それとも期待からか言葉にならぬ呼気を口から吐くことしかできない。

 凶器じみた規格の肉槍は、きっと俺を貫き殺すのにぴったりだろうから。

 虎は寝台の木枠をぎしりと軋ませ、寝床の脇に置かれたこぢんまりとした机案に手を伸ばした。石造りの殺風景な一室における唯一の家具と言ってもいいその上には水差しと湯呑のほかに、艶のある茶色い小甕が置かれていて、虎はその中に手を突っ込む。

 水でも飲むのかと訝しんだ俺の想像に反して、とぷん、と内容液で毛皮を張り付かせた指先からそれを滴らせながら、蹲踞している虎は背後に手を回す。

 膝を折り立て蹲ったまま、まるで尻の痒いところでも掻くように腕を回す虎は的確に俺のちんぽをがっしりとその手に収める。

 俺が思わず「うわっ」と声を漏らしたのはちんぽを扱く毛むくじゃらの手が濡れていたためばかりではない。その毛を湿らすぬるぬるとした油がちんぽに塗り広げられたからだ。


「それに、そなたのココはあるじと違ってまだ満足しておらぬようだぞ♡♡ 勇猛果敢におれの手の中で奮い立っておるわ♡」

「そ、それはッ……!」


 将軍が触るから、とは言えなかった。責任をなすりつけるのは簡単だが、そもそも男にちんぽをしゃぶられ射精したのも、今こうして油まみれの硬くごつごつしい手で扱かれて情けなく勃起しているのも全て自分の意思のように思えたからだ。

 自分でも性感を享受しながら、どうしてそれを全て彼のせいと言えようか。ちんぽを硬くして黙りこくる俺を、虎は豪気に笑い飛ばす。


「まったく、なんともカタい男だ♡ だがまあ、それもそなたの美徳か……いったいどうして、そなたのような男が名を上げずにいたのだろうな、イムの民はそなたを失ったことを生涯嘆き悔やむだろうよ」

「それは……」

「あぁ、気にするな、おれの独り言だ。そうカタくならずともよい、おれはただそなたにルォの男を……そして、おれというオスを知ってもらおうというだけだからな♡」


 ぬちゃ、ぬちゃと裏筋をなぞるように人差し指を這わせながら、虎の手は巧みに俺のちんぽを操る。

 擽るようで、擦るような手つきはもどかしく、腰を振って押し付けてしまいそうになる。

 それを堪える俺のちんぽは、更なる快楽が訪れないことを不満げに跳ねて訴える。


「もっとも、こっちは硬くしてもらわねば困るのだが……この分なら問題なさそうだな♡ つくづく、良いちんぽをしておる♡ 惚れ惚れしてしまうぞ♡」


 それが褒めるような調子だったので、少し嬉しくなってしまう。

 だが、後になって下半身の節操無さを、はしたなさを肯定されたようにも思えて、自らを恥じ入った。


「そうは言っても……そなたのような男はハイそうですかとはいかぬのだろうな♡ ならば……」


 がっしりと根元を掴まれたちんぽが、体と直角になるよう正される。亀頭がまっすぐ天を衝いて、俺のちんぽは期待と不安に涙を流す。

 正直、何をされるかというのは想像に難くない。物証を並べずとも、少し鑑みれば計算せずともわかりきったことだ。

 だからこそ、それを跳ね除けないのは俺がそれを受け入れているからということに他ならない。

 抗っても仕方がないと諦めているのか、あるいは。


「そなたはただ、何も考えず……」


 つぷ、と。

 毛深くちくちくとした谷間を探っていたちんぽの先端が無毛の窄まりに触れる。

 名状しがたき軟らかさを感じさせるそこが、人体のうちで何という器官なのかは知っているし、その用途だってわかっているはずだった。


 しかしそれでも、想像せずにはいられなかった。

 輪状になった縁肉が盛り上がって出た肉の井戸へ、ちんぽを突き込んだらどれほど気持ち良いのかを。


「おれのおまんこで、気持ちよくなっておればよいのだ♡」


 虎が容赦なく腰を下ろす。その巨体で俺の腰がへし折られるのではと危ぶむまでもなく、生々しく凄まじい快楽が俺の脳髄を襲う。

 俺という一個体が作り変えられるほどの鮮烈な体験を拒むことなどできやしない。

 油でぬめったちんぽがずるずると腸のヒダを滑って、その全身が包み込まれる快楽を幸福にすら感じた。


「うっ、わ……!」

「ぉ゛おッほぉおぉ゛お……♡♡♡」


 虎は俺の体の上に深々としゃがみ込むと、力とともに空気が抜けたような声で唸る。

 その胎内はまるで中に別の生き物を飼っているのではと思うほど不規則に蠢いていて、そして俺のちんぽを窮屈そうに締め付けている。

 不思議なのは、挿入するときには一切抵抗がなく緩々と拡がっているように感じられたその肉孔は、ひとたびオスの性器を受け入れるとみっちりと閉じて離れまいとしがみついてくるのだ。

 その欺瞞に満ちた肉感が俺にはどうしようもなく、そしてこの上ないほどの快楽をもたらしている。

 肉の悦びに打ちひしがれる俺は言葉もなく歯を食いしばるしかない。

 挿入しただけで耐えるのに精いっぱいだった。これ以上の快感はきっと飽和してしまう。慣れるまで待ってくれとは言わないが、せめてひと呼吸つきたい気持ちであった。


「っ、ふんッ!♡♡ ふぅッ♡♡ ふうんん゛ぅッ!♡♡♡」


 しかし、この虎が勘所を逃すわけもない。領土を奪い返しイムの軍団を追い詰めるルォの兵を率いる手腕が確かならば、弱ったちんぽを膣肉で攻める腰遣いもまた果敢で的確であった。

 丸太のような両足を膂力に漲らせ、胸の前で腕を組むと、新雪を踏むかのごとく寝台を足の形に凹ませながら自重を持ち上げる。

 力強く突き出てえくぼの浮いた尻を持ち上げて、戦槌のように振り落とす。その衝撃で、尻肉がゆさっと弾んだ。


 引き抜かれたちんぽが一息に飲み込まれて、快感を求める性器が蕩けた肉に擦られる。思わず持ってかれないように下半身に力を入れると、さらに血が通ってちんぽが一層硬く大きくしゃくり上げる。

 それを悦ぶように虎の尻が再び持ち上がって……あとはその繰り返しだ。

 屈伸運動に際して、腕を組んだことで強調されている大胸筋が水面を揺らす波のように上下に振れている。苛烈に俺のちんぽを出し入れする虎の尻肉もぶるんぶるんと振動に震え、振り下ろす際に俺の太腿を強かに打つほどであった。

 しかしその打擲音に反して、俺の体にかかる重量は軽微なものである。体重の殆どは両膝を立ててしゃがみこんだ足から寝台に逃げているようで、木樽のように大きな尻で俺が真っ二つにへし折られることはひとまずなさそうだった。


「っはぁあ♡ どうだッおれのおまんこは♡♡ よく鍛えられ、よく練られたおまんこだと国でもっ評判なのだぞぉ♡♡♡ そなたのちんぽには、ふぅんっ♡♡ 少々、荷が重いか?♡♡」


 その言葉には、国ぐるみで何をやってるんだこの人?! と驚くが、きっと何かの比喩であると思うことにした、今は、とりあえず。

 俺は手のやり場に困って、ほとんど直角になっているその膝に目が留まる。深く考えず、両手でその脛や脹脛に触れると、ちくちくとした毛並みの奥にむっちりとした肉質を感じられた。


「い、いえっ……その、ようなことは……!」

「ッ、あぁ♡♡ そうだろうなぁ♡♡ そなたのちんぽもおれのナカで張り切っておるわ♡♡♡ よいぞ♡♡ たんとおれのおまんこを味わうがよい♡♡ そして存分に果てよ♡ 外に漏らすでないぞ、しっかり中に注ぎ込め♡♡」


 どすん、と腕組したままの虎が浮かせた腰を下ろす。俺の腹の上で重たそうに横たわっている虎ちんぽにも力が入って、その先端がブレるように脈打っているのがわかった。

 膝を立ててしゃがむ虎の両足が丸太ならば、そのちんぽはさながら城門を破る槌だ。並みの遊女では歯が立たぬそれは大根ほども太く、将軍の体が上下するに合わせてその竿を俺の腹にびたんびたんと打ち付けて、突き破らんとしている。

 男として劣等感を抱かざるを得ない大きさのちんぽはすさまじくにおい立っていて、部屋全体を包むオス臭さの根源だと確信した。

 しかし今となっては、不思議なことにそれに性的興奮を掻き立てられている自分がいるのもまた事実だ。


 ひとたび嗅いでしまえば、不潔さや嫌悪感を抱くよりも先に鼻を二度、三度と動かしてしまうような好奇をそそる魅惑の猥臭。

 ただでさえそんな臭気の源が体に擦り付けられているというのに、虎の体が動いて室内の空気をかき混ぜるものだから、大気に溶け込んだにおいは常に新鮮なオス臭さを俺に届けていた。


「おぉ゛っほぉ♡♡ よい、実によいぞ♡♡ そなたの猛るおちんぽがおれのおまんこの肉を抉りよるわっ♡♡ っふぅう♡♡ これはこちらもっ、本気で応えねば無作法というもの……♡♡」


 ゆらり、と揺らいだ虎頭が前に傾ぐ。倒れ込んでくるのではという俺の予想を裏切って、虎の体はより深く前かがみになるだけに留められた。

 そのまま俺の肩に両手を置くと、ぐっと力が入る。藁を押し固めた寝台に押し付け縫い留めるように抑え込んでくる手は俺の肩をたやすく外し骨を砕くだろうに、ちょっと痛いくらいの力加減で済んでいた。

 支えを手に入れた虎は、腰の動きを一段階激しくして俺を搾り取りにかかる。


「っふんッ♡♡ ふッ♡♡ ふんん゛ぅッ♡♡♡」

「う、うあっ、しょ、将軍っ……! は、激しすぎますっ……!」

「まだまだッ♡♡ こんなものではないぞぉ♡♡♡」


 豊満な尻肉がぶつかる打撃音。そこへ肉の詰まった蜜壷をかき混ぜる音が混ざり、ばちゅんばつんと殊更淫らに響く。

 俺という馬を駆って上下に巨体は弾ませる虎は、その口吻からべろりと舌を出して牙を覗かせる。毛皮から滴った汗が粒になって、その逞しい体が動くに合わせて濡れた毛束から跳ねていた。

 起き上がろうにも起き上がれない、上から押さえつけられて身体の自由を一切奪われたこともあって、肉食の獣を前にしたとき特有の本能的な恐怖がこのままでは食い殺されるぞと警鐘を鳴らす。

 しかし体を、主にちんぽを支配する快楽は貪欲にこの時間を欲していて、その不調和に体がバラバラになってしまいそうだった。


「っふぅん゛♡♡ っふぅ、んおッぉ゛おぉ~ッ♡♡ た、たまらんっ♡ そなたのちんぽをっ、おれの子袋に感じるぅ♡♡ おっ、おぉっ、おまんこがぁっ疼いてたまらんん゛♡♡」


 むちゅむちゅと縋り付いてくる柔肉が遠ざかって、また包まれて。蕩けた肉でちんぽを擦られて、擽られて。

 ゆっさゆっさと大きなケツを揺らして腰が下ろされるうちに、俺の尿道口が新たな感触を覚える。

 不定形の溶けた熱肉の中に、輪を作った何かがある。きつく閉じたそれは入口のようでもあって、虎が俺のちんぽの上に腰を落とす度に少しずつ押し開いていくのがわかった。

 そしてその度に、カリ首の段差が引っかかるように擦れて視界が弾けるほど気持ちいい。

 思わずうぅっと唸ってしまうと、虎の巨体の背後で尻尾が上機嫌に踊るのが見えた。


「どうだ♡♡ おれのおまんこは気持ちいいだろう?♡ なぁに、答えずともよいぞ♡ おカタいそなたと違ってそなたのちんぽは実に雄弁であるからなぁ♡♡♡」


 あれほど猛々しく勇ましかった虎が、ケツを振って女のように男根を咥え込み、淫語まみれのはしたない冗談を言ってガハハと笑う。

 その落差と言い分が腹立たしくもあったが、何も間違っていないので反論のしようもない。

 現に俺のちんぽは繰り返される抽送に耐えかねて、すでに限界ギリギリまで張り詰めていた。

 そもそも性交経験自体が俺にはないというのに、百戦錬磨の雄膣が初体験の相手では余りにも力不足だ。


 掻痒感にも似たもどかしさを裏筋に感じる。

 充血した亀頭が一際大きく膨らむのがわかる。

 虎はわざとらしく腰を中途半端に浮かせると、尻と俺の体の間に隙間を作って膣の入り口で浅くちんぽを咥えたまま屈伸運動を繰り返す。

 熱を持ってうねる膣肉がちんぽを愛撫するのが、けして平坦ではないちんぽの表面を腸壁がねっとりと舐め上げるのがはっきりとわかって。


「っは、や、やべっ……で、出ます、出そうです……!」

「ウム♡♡ 出せ出せ、好き放題ぶちまけるがよい♡♡ そなたの種汁でおれを満たすのだ♡♡」


 ガニ股になって両膝を立て、汗の滴を俺の体の上に滴らせながら屈伸するように尻孔でちんぽをしゃぶる虎が好ましそうに宣う。

 それが俺の射精を後押しするのは、絶大な捕食者から許しを得られた安心にも似た感情を抱いたからだ。

 この行いが倒錯しているのは元より、それでも何も考えずイっても良いのだ、と理解してようやく、俺はこの身を押し流さんとする濁流のような絶頂に身を任すことができた。

 それまで浅くちんぽを咥えていた虎の腰が、急にいつもの調子に戻る。

 どふん、と腰を落として寝台を沈ませ、じゅぶじゅぶと竿の全体をコくような抽送を繰り返す。

 それが俺への最後通牒だった。


「い、イく、またイっちまう……っう、うぅっ……!!」

「っお、ぉぉ゛ぉおお〜〜〜ッ……♡♡♡ 来る、来る来るっ、おれのおまんこにィ、そなたの子種が来てるぞぉ♡♡ おちんぽがビクビクしてっおれの子袋にびちゃびちゃ当たっておるわ♡♡」


 頭に上った血流が勢いよく爆ぜて全身を巡る。

 激しくなった鼓動に押し出された血流で細部がずきずきと痛む。

 硬くそそり立った竿が魚のように跳ねると、先端から鉄砲水のように熱い白濁が飛び出るのがわかった。

 尿道をギュンと駆け上がるその勢いは猛烈だ。直腸内にびたびたと叩きつけて、蓋をしたまま虎の内臓の奥へ種を注ぎ続ける。

 ぎゅっと目を閉じて射精の快感に堪える俺は、薄く目を開けた先で虎が恍惚そうに舌を垂らして身震いしてるのが見えた。

 射精を歓迎するように虎の腸壁はうねり、充血して感度の増した亀頭をむにゅむにゅと擦るものだから、下腹部に力が入ってちんぽを跳ねさせてしまう。

 まき散らした精液を腸壁に擦りつけるように尻を穿ったままのちんぽが跳ねるたびに、虎は耽溺するように息を漏らして、「おぉ♡」とか「たまらん♡」などと小さく呟いていた。

 ハフハフと荒く呼吸を繰り返すのに合わせて、膣内が緩んだり引き締まったりとうごめくのが絶頂を迎えたばかりのちんぽに辛くて思わず呻く。


「うっ……す、すっげ……う、動かさんでくださいっ……!」

「フフ、何を言う♡♡ そなたの子種を余すことなく搾ろうというだけだ……残っていたのでは勿体無かろう?♡♡」


 むっちりとしたデカ尻を左右に振ってぐいぐいと押し付けながら、虎は身じろぐ。立膝を作っていた足を折りたたんで、正座するようにその場に膝をつくと、今度こそ俺の体の上に完全に覆い被さった。

 肌に触れた毛皮は濡れそぼりながらもどこかごわついていて、ムッとした汗臭さが俺の鼻腔に忍び込む。

 おそるおそる深呼吸をする。革を鞣すために使う渋汁にも似た饐えたにおいはとてもじゃないが心地よいとは言えないが、不思議と嫌悪感は抱かず、むしろ背徳感に胸が高鳴ってしまうのはどのような計算違いか。

 結合部の挿入を保ったまま、両腕を寝台に突き俺を捕える檻とした虎は生臭い呼気で獰猛に笑む。

 その屈強な体を以ってすれば、まさしくこれは誰に破られることのない堅牢な牢と言えた。


「くはぁあ……♡♡♡ た、たまらぬちんぽをしておるッ、やはりおれが目をつけただけのことはあるな♡♡ 実に、イムの者たちは見る目がない♡ 斯様な男を捨て石にするなど……まことに惜しいことをしたものだ♡♡」

「なん、ですか、それ……っ」

「フフン、感謝しなくてはな♡♡ 危うくそなたのような価値あるオスが無駄になるところだった、見過ごすわけにはいくまい♡♡」


 呼気が当たるような距離で虎はそう言って、べろりと俺の頬を舐める。


「だがそれも、もうおれのモノだ♡♡」


 果たして俺の何をそこまで気に入ったのか、そんなこと言って実は俺の下半身にしか用がないのではないかというのは至極当然の疑問だが、それを口にすることはなかった。

 虎の言うことはともかく、俺を取り巻く現状は侵略を企てた仇敵として処罰されるより、そして敗残兵として国中から非難されるよりもよっぽどマシな待遇であると思えたからだ。


 俺にはまったく理解できぬ動機だが、下半身でもなんでも、価値を見出してくれたのならそれに肖らぬ手はないように思える。

 そう、これは打算の末の結論。そうすることに利があると思うから、命惜しさにこれを振る舞うだけなのだ。

 今はそれでいいと思えた。

 なぜならこの虎が俺のどこを気に入ったのか、それが下半身以外であれば良いと思うのは……フェオ・ロンという俺個人を気に入っていてほしいと願ってしまいそうになるのは、きっと打算ではないから。


「……しょ、将軍、俺は……」

「さて、ではもう一発ヤるとするか♡♡」


 はっ? と声が出た。

 まだヤるつもりなのか、という俺の機先を制して、虎が牙を剥いて言う。


「小休止は十分だろう? よもや、これで終いなどと思うワケあるまいな♡」

「い、いえ……ですが、俺はもう、二発も……」

「まだ二発、であろう?♡」


 大虎が凄むように顔を寄せると、ぐっ、と挿入したままのちんぽが締め上げられた。大量に吐精したためか、あるいは塗り込んだ油のためかしとどに濡れた腸壁がぐちゅりと俺のちんぽを揉み込んでくる。

 丹念に揉みほぐすように収縮を繰り返すので、ちんぽをしゃぶられているのかと錯覚してしまうほどだ。そして、そんな目に遭う俺のちんぽはと言えば。


「フフ、やはりこちらは素直だな♡♡ まだ足りんと奮い立っておるぞ?♡ まるで初陣にいきり立つ戦士のようだな……っと、これでは比喩にならぬか♡♡」

「それはっ……あぁ、もう……っ」


 胎内でギンギンにそそり立ち、充血しきった勃起を指摘されて俺は頭を抱えたくなる。

 捕虜になってからは元より、そもそも従軍中すらまともに自慰をしていないのだ。

 そこへ許容量以上の快楽を叩き込まれればどうなるかは火を見るよりも明らかだ。すっかり肉の悦びを知ってしまった俺は、あの快楽をもう一度味わえるとなれば拒絶する理由もないのだが。


 なんというか、他人の前で生まれたままの姿を晒し続けていることにぎこちなさを覚えてしまう。

 そんな格好で、本能のまま快楽を求める行為はあまりにも明け透けなように思えて居た堪れないのだ。

 それははしたないことで、恥ずべき行いだと理性が白い目で見てくる。俺を指差し笑っていた文官どももこうして淫蕩に耽ったのだろうかと、ふと思った。


「フフ……この短時間で、おれもそなたのことが大体読めてきたぞ♡」

「さ……然様ですか」

「ウム。ゆえに、そなたはおれのモノであるが、ただ命ずるだけというのも味気なく思えてきたな♡ そうすればそなたは疑いようもなく従ってくれるだろうからな♡」


 だから、と虎が言う。のっそりと起き上がり、その肉厚な尻に挟むように咥え込んでいたちんぽを抜いて、立ち上がる。

 どすん、と寝台から降りた虎はくるりと踵を返す。


「せめて、道理をくれてやろうか♡」


 少し褪せた山吹色に走る黒縞は闇に轟く雷鳴の軌跡のようにギザギザだ。

 俺に背を向け、その尻をぐっと突き出す。手を背後に回し、自らのデカケツをぐっと割り開く。

 山吹色の尻たぶの間に、綿のような白毛に覆われた谷間があった。

 そしてその中心に、盛り上がった肉の井戸がある。

 捲れ上がって赤い肉を覗かせる洞は、今や乳酪のような白濁に汚れ、どろりとした粘液を孔の奥から溢れさせている。

 そんな様相の尻孔を俺に見せつけながら、虎は告げる。


「おれのおまんこはこの通り万端だ、そなたの竜もまだまだ気力十分とお見受けする。さて、晴れておれのモノであるそなたはこれを前に……どうする?♡」


 どうするもこうするも。

 ごぷっ、と蜜壷から溢れた白濁が虎の足の間を伝う。蒸れた毛並みの上を滑り、転がるように垂れ落ちる。

 それを惜しむようにヒクつく尻孔を見つめて、俺はごくり、と生唾を飲んだ。



 ♂♀



 俺の眼下で、縞々の巨体が寝台の上で仰向けになっていた。

 生まれたままの姿で両足を抱えて、惜しげもなく秘部を晒すその目にははっきりと喜悦の色が浮かんでいる。

 服を脱ぎ捨て、横付けするように寝台の脇に立つ俺にむっちりとしたデカ尻を差し出す虎の吐息があまりにも熱っぽいから、思わずその尻に手が伸びてしまった。


「フフ……♡ いい目だ♡ そんな目で射抜かれれば、どんなオスだろうと疼いてしまうだろうな♡♡」

「ぐっ……」


 さぞやひどい顔をしていたのだろう、仰向けになって足を抱える虎が両足の間から俺を見つめて煽情的に舌を舐める。

 喉がカラカラな俺は、虎に言われるまでもなく自分が性に飢えた顔をしていることはわかっていた。だが、それを取り繕えるほど余裕がないのもまた事実で。

 ただでさえ太い脚は膝を引き寄せるようにぐっと抱えられているので、腿の肉が撓んで潰れて一回りほど質量を増して感じさせる。内腿を見せつけ、丸く張り出た尻へ至る曲線は限りなく優美だ。

 もっちりとした肉感を強調した下半身に手を添える。表面を覆う白がちの体毛は意外にも柔らかく、毛の繊細さは貂の毛皮にも負けぬようであった。


 その奥に、熱を持って震える肉質を感じる。張りがあって、むにゅっとして柔らかくも片手が沈みそうになるほど肉厚な尻肉。

 よく実った西瓜でもここまで大きく育ったことはない。左右一対にでっぷりと実った球状の肉に、俺は両手を添えてグッと五指を沈ませる。

 ただの脂肪とも言い難い、よく鍛え上げられて詰まった肉は俺の指が力を加えるとたぷんと揺れていた。


 肉をつまむことは想像できても、まさかがっしりと掌で掴めるほどとは思ってもいなくて、その尻たぶの分厚さに驚いた。

 さらさらとした毛並みは脚に向かうにつれゴワついていくようで、尻の谷間に近い毛並みが一番柔らかく感じる。

 その奥に感じる、もちもちぷるぷるとした感触が指に心地よかった。いつまでも揉んでいたくなる感傷をぐっと堪えて、俺は両手からこぼれるほどの尻たぶを奥に押し込むように割り開いた。


 無花果を思わせる熟れた肉が、土手のように隆起して円を成している。それを目の当たりにした瞬間、ムッとした生臭さが一層濃くなったように感じた。

 虎の雄蕾はもはや慎ましく窄まるようなことはなく、陰唇をこんもりと盛り上げて物欲しそうにヒクついている。

 本来なら閉じているべき器官であるのに、そのおちょぼ口は俺の指程度ならそのまま入りそうなほど緩んで開きっ放しになっていた。

 揺らぐ灯りに照らされてかように艶めかしく光を跳ね返す肉の井戸を、醜悪で不潔な排泄器官と切り捨てることがどうしてできようか。


「い……挿れますっ」

「応とも♡♡ 遠慮せず、そなたが望むがままにハメるがよい♡」


 べろり、と自らの唇を舐めた虎が頷く。

 寝台の脇に立つ俺の脚に、虎の豊満な尻の下から逃げ出した尻尾がじゃれつくように絡んでくるのがくすぐったい。

 虎はひかがみに添えた腕に力を入れて、両膝を自分の胸に押し付けるように体を簡潔に折り畳んだまま、もどかしそうに腰から身じろいだ。


 天然の巨岩のような質量と迫力を有する虎の下半身が、尻孔を俺に差し出したまま待ちきれない様子で揺れる。

 低めの寝台に横たわってるとはいえ、俺の腰がその尻と位置を合わせるためには足を開かずその場に直立してやっとというところで、肉の悦びを覚えてしまった俺のちんぽはびくびくと脈打って虎の尻毛を擦る。

 塗布しなおした油以外にも、なんだかわからぬ生臭い粘液で俺の竿はべとべとに汚れていて、潤滑は十分足りて見えた。


 遊びや色事とは無縁だったとはいえ、年頃の男子として幼いころは地元の男友達とそれなりの時代を過ごしてはいる。

 よって、俺の一物も比べあった男子の中では大きい部類だと自負しているが、それでも虎の棍棒の如き雄根を前にしては劣等感も湧こうというもので。

 この虎が自分よりオスとして優れているのは言うまでもないことだろうが、直にこの大きさの性器を前にしてそのことを実感すると自分の中に奇妙な感情が芽生えるのを止められない。

 いち文官に過ぎぬ自分などより、現役の軍人として鍛え上げられたその巨体は明らかに逞しく、敵国の捕虜ですら配下に迎えようというその豪胆さは人の上に立つ名将に相応しき器と言わざるを得ない。

 このひとは、馬を駆る背姿で兵を率い、蝋燭を吹き消すように命を屠り、勇ましく勝ち鬨を上げる猛き虎だ。

 あぁ、だからこそ俺は俺の感情に戸惑いを隠せない。


 そんな男を今から犯すのだと思うと、危うい官能が騒いで堪らない!


「うぉっ……す、すっげえ……」

「はぁん♡♡」


 ちんぽを当てがうと、虎の蜜壺がキュッと縮こまって反応を見せた。

 まるで亀頭を味わうようにむしゃぶりつくので、それだけで俺の劣情はムラムラと掻き立てられる。

 逆さになって宙に投げ出された虎の素足が震えるのがわかる。ふくらはぎが張って、足指が肉球を隠すように丸まると生乾きになった雑巾のような饐えたにおいが俺の鼻腔に忍び込んだ。


 意を決して、腰をぐいと突き出す。

 入り口をみっちりと閉じた虎の雄膣は、自らの本懐を遂げるようにふわりと緩んで突き込まれるちんぽを受け入れるようだった。


「っ、ぐぅ……!」

「お゛っほぉおお♡♡ き、きたっ♡♡ ちんぽきたぁっ♡♡」


 剣の林と切り結び、矢の雨を掻い潜ろうともこの虎は息一つ切らすことはないだろう。

 そんな男が、俺のちんぽ一本で巨体を震わせて情けなく喘いでいる。

 その目にはっきりと媚びの色を浮かべて。

 自らの腹を打つ巨大な肉槍から半透明の粘液を溢れさせて。


 自分は平凡な男だから、せめて一芸を身につけようと思い酒や遊びには目もくれず学問に打ち込んできた。

 この身に染みついた恒常が、この異常を受け入れきれずに呆然としている。

 戦に駆り出されてからずっと俺は俺を認識できていないような、どこかズレた感覚があったが、これはその最たるものだった。

 夢を見ているのではないかと確かめるように、腰を引く。どこか自失した状態だが、体は変わらず俺が動かしたいように動いた。


「あッ、抜けるっ♡♡ ちんぽがっ♡♡♡ おれのおまんこから抜けてしまうぅんっ♡♡」


 虎の声は期待に満ちている。その先にある切り返しを見据えているから、ちんぽを引き抜かれる自分の膣について昂った声で実況できるのだろう。

 ゆっくりと腰を引くにつれて埋没した竿が外に出てくる。温かい柔肉に包まれていたちんぽはかつてないほど火照っていて、二回射精したにもかかわらずまだまだ壮健なようであった。


 抜かれるちんぽにまとわりつく虎の膣肉は、引きずり出されるようにめくれ上がってちんぽを離すまいとしている。

 立ったままその様子を見下ろしている俺は、ちんぽに付随して赤黒い肉が隆起して蠢くのがはっきりとわかった。

 虎の膣は期待にわななく。悔しいのは、それを裏切れない自分がいるからだった。


「っほぉっ♡♡♡ おっ、ぉ゛ぉぉおほぉお〜〜〜ッ♡♡」


 髭を震わせながら口吻を天に向かって突き出して、虎の喉から唸るような嬌声が響き渡る。俺はというと、呻くことしかできない。

 あれだけ緩んで見えていたのに、挿入してみればその中には重たい生肉がみっちりと詰まっている。

 硬く張り出した亀頭で、血走って脈を浮かせた裏筋で肉をかき分け進むのが気持ちよくて、この快楽をもっと味わいたいと思う頭から知能がどんどん抜け落ちていくのがわかった。


「くっ……うぅ……!」

「よいっ♡♡ よいぞォ♡♡♡ そなたのちんぽがおれのおまんことコスれよるぞぉ♡♡ もっとだ♡ 遠慮なく腰をぶつけてくるがよい♡♡」


 腰から下が自分のものではなくなったように制御が効かない。

 ずるずるとした膣壁に性器を擦りつけて性感を得ることが全身の総意であるように、俺は虎の豊満な太腿へがっしりと両指を食い込ませて腰を前後に動かす。

 保持している脚は太く、横たわる下半身は肉厚だ。俺ごときが多少乱暴に扱ってもびくともしないだろうという信頼性に満ちた重厚さが今はただ下半身に切ない。


「あ゛ッ、はぁあ゛あぁ~~♡♡♡ すっ、しゅごいぃ♡♡ おれの子袋にちんぽ感じるっ♡♡ おまんこゴリゴリされてっ、ガキ孕みたがっておるっ♡♡」


 尻孔を差し出しながら挑発してきた虎の胎内を掘削すると、宙に掲げた両足の足指をぎゅっと丸めて快感に喘ぐ。

 気取った物言いが崩れてきたのを感じると、余裕なさげに荒げた息を途端に愛しく思えてしまった。男同士で孕むなどそんな話聞いたこともないし、虎の言うことを全て理解し信じたわけではないが、本当に孕めるなら孕んでしまえと思った。


「くうぅっ♡♡♡ そ、想像以上だ♡♡ このおれを雌伏させるというのか……っ♡♡ こ、小癪なぁッ♡♡ っあ゛、んはぁあんっ♡♡♡」


 いや自分から股開いてただろ、とは言えなかった。

 いくら自ら緩んだ尻孔を差し出し腸壁で男根にむしゃぶりつき、淫らに舌を出しているとはいえ、この虎は万の兵を率いる一国の将軍だから……というわけではない。

 単純に、すっかり快楽の虜になった俺にはそこまでの余裕がなかったからだ。


 低い声で媚びる虎の様子に煽られて、ちんぽを更にいきり立たせて腰を振る。

 虎の胎内で伸び上がるようにぐんと上に跳ねたちんぽが、その亀頭で肉筒の天井を遠慮なく擦るのがわかった。


「お゛っおぉおぉ゛お~~~ッ♡♡ そっ♡ そこっ、当たる♡♡ おれのっおまんこのぉ♡♡♡ たまらんところにっ、当たっるぅぅ゛♡♡」

「こ、ここですか……?」

「んぉ゛おぉおッ♡♡♡ ソコぉ♡♡♡ そ、それっ♡♡ その動き、下っ腹に響いてっ♡♡ 実にたまらんん゛っ♡♡」


 目に見えて反応を返してくれるので、思わず探りながら腰を振る。

 下半身に力を入れ、ちんぽを極限まで反らせた状態で角度をつけるように抉られるのがどうやらお好みのようであった。

 俺より二回りも大きな偉丈夫が、俺の腰つきで切なげに濁声を上げている光景は、喜びや楽しさに似た感情をもたらしてくれる。

 ともすればそれは充実感や達成感にも似ていて、もっともっとと腰に力がこもる。


「き、気持ちいいですかっ、将軍」

「んはぁ♡♡♡ あぁ♡♡ いいッ♡♡ きもちいぃぞ♡♡♡ そなたのちんぽにっ、おれの急所が突かれて……んッ、くぅう♡♡ も、漏れるっ♡♡ おれのちんぽからもっ、子種が溢れよるわ♡♡」


 虎の陰嚢は腰を打ち付けられ揺さぶられるたびに股の間でたぷたぷと揺れている。

 白い毛並みに黒を走らせた袋に包まれた睾丸はごろっとしていて、鶏卵ほども大きい。

 会陰部すらふっくらとした玉裏は蒸れた汗のにおいと股間部分の独特な猥臭を漂わせていて、ふぐり自体もきゅうきゅうと縮み上がって溜め込んだ子種を汲み上げていた。

 玉袋から伸びる幹を辿って目を走らせると、まるで自分の鳩尾を貫くように反り返り逆さになった虎の剛直がびくびくとわなないているのがわかった。

 赤黒く腫れ上がり、張り巡らされたツタのように血管を浮かせた竿は小刻みに震えて、その先端の鈴口から半透明の粘液を分泌している。

 勢いもなく、酒を注ぎすぎた盃から溢れるように漏れ出ているそれが精液であると理解したのは、栗の花にも似たにおいが鼻をかすめたからだ。

 触れもせずに達したのかと驚く俺は、この虎がしっかり性感を得られているとわかってわけもなく嬉しく思った。


「い、イってしまったんですか?」

「ふ、フフ♡♡ 案ずるな、そなたのちんぽに押し出されて漏れただけだ……んんっ♡♡」


 虎は自分の両足を抱え込んでいる手で腹の毛に絡まった白濁に触れると、つまむように指先へ固形物化したそれを集める。

 指ごと口に含んで、舌の上に乗せるとわざとらしく咀嚼して生臭い息を吐いた。


「じ、自分のですよ……?」

「っはぁ♡♡ 何か問題が?♡ このおれの子種だ、無駄にするのも勿体なかろう♡♡」


 べろり、と粥を食べるように固形化した白い粒を舌の上に乗せたまま虎は唇を舐める。

 それから「ほれ、腰が緩んどるぞ♡」と言って壺に詰まった肉を動かして催促するので、俺は慌てながら引き抜いたちんぽを勢いよく突き入れた。

 亀頭が覗くくらい引いた腰を一気に叩き込むと、ちんぽ全体をじんわりと侵していた掻痒感が解消されたような多幸感と、ぞくぞくとした官能が腰から背筋を駆け抜ける。

 虎も虎で「ぉほォ゛んッ♡」と舌を突き出して雄膣をうねらせて感じ入っていた。

 腹に圧をかけられてせり出してきた膣肉をかき分けて無理やりちんぽを突き込むと、虎は一層悦ばしそうに丸々とした尻を震わせる。


「あッはあ゛ぁ♡♡ よいぞっ、やればできるではないか♡♡♡♡ そなたのちんぽにィっ、おッおれのおまんこが引っぱり出されるようだ、ッぅう♡♡♡ っほォん゛♡♡ おッおまんこがヒクついてしまうっ♡♡」


 充血しきった俺のちんぽは張り出たカリ首から竿の根元に至るまでむず痒さを覚えていて、原始的な欲求に駆られたままじゅぼじゅぼと抽送を繰り返す。

 知識として、男子は女陰に矛を突き立て繰り返し出し入れしてまぐわうのだ、ということは知っていた。

 それこそが夫婦の営みで、子を儲けるための神聖な儀式であってけしていかがわしい行いではないと学んだはずだ。

 だが、今俺が経験しているこれはどう言葉で言い繕っても、いかがわしさそのものでしかないだろう。


 まさか自分がそういうことをする日がくるなんて。それも異種族の、獣にしか見えない男を相手に。

 快楽を求めて勝手に動いてしまう体をどこか他人事のように眺めながら、もはや制御の利かぬ劣情のまま腰をぶつける。

 ちんぽを包んで蠢く軟肉は、表面が不規則に隆起したり陥没しているようで、いきり立った欲棒を擦り付けると絶妙な摩擦で刺激してくれた。


「っはぁ、はあっ……!♡」

「っお♡♡ ん゛おォっ♡♡ いいっ♡♡♡ よいぞっぉお゛ぉ♡♡♡」


 虎の中に注がれた種汁は、腸液や油と一緒にちんぽでかき混ぜられて泡立ってしまっている。こってりとちんぽにまとわりつくそれは良い潤滑油として、ぬるぬるとちんぽを包み込んでいた。

 そのためちんぽを出し入れされた弾みで溢れたものが虎の噴火口を汚し、尻の谷間を滑り落ちて毛に絡まってすらいる。

 外にかき出されたためか、下半身からにおい立つ濃厚な性臭は無視できないほど強まっていて、腰の律動に動かされた空気が循環して俺の鼻を犯し続けていた。


「あ゛っ……♡♡」


 その声が注意を引いたのは、それまでの媚びた喘ぎ声とは若干質が違って聞こえたからだ。

 まるで何かに気づいたような声を上げた虎に目を向けると、その手が自分の胸を探っていることに気づいた。


「どう、しました?」

「いやなに……そなたのちんぽが存外気持ちよくて、だな……♡ 思わず、乳が漏れてしまったようだ♡」

「はッ……はい?」


 見れば、虎の手が探る胸板の毛が僅かに湿っているのが見て取れた。

 最初は腹の上にこぼした精液の残滓かと思ったが、よく見ればぷっくりと熟れた乳頭から半透明の体液がじわりと滲んでいる。

 本来我が子に与えるべきだろう母乳まで分泌するとなると、いよいよオスが孕むという話も現実味を帯びてくるようだった。


「飲んでみるか?♡」

「えッ」

「なに、遠慮することはない♡ そなたがおれのモノならば、おれもまたそなたのモノだ、子が生まれるまではおれの体も、この乳もそなた専用であるからな♡ 存分に味わうがよい♡♡」


 虎は謎の話術を用いながら、谷間ができるほど大きな胸板を強調してくる。

 そんな得体の知れないもの飲みたくなるはずもないのに、呼吸をするたびにまとわりつく饐えたにおいが抵抗を削いでくる。

 そして、腰をぶつけるたびにぷるんと揺れる大胸筋を見ていると気の迷いを起こしそうになる。

 片方だけ金属の環が貫いている非対称な乳首は俺の親指の先ほども腫れて膨らんでいて、色合いは枸杞の実を思わせた。

 その身に体を重ねるように前掲すると、俺の口はちょうどいい位置を捉えた。


「よしよし良い子だ♡♡ さぁ、お乳をあげような♡♡♡」


 赤子をあやすような口調で、虎が自身の乳首を俺に差し出す。仰向けになってなお椀状に張り出した胸板はまさしく乳房というに相応しく、恐る恐る手を添えると柔らかく震える肉が俺の指を出迎えた。

 尻穴を穿ったままのちんぽにむちゅむちゅと膣肉を押し付けられるのを感じながら、乳環の通っていないぷっくりした乳首を擁した胸に手を添える。

 どことなくじっとりとした白毛に包まれてなお存在を主張する肉芽からじわりと体液が垂れるものだから、俺はこれ以上それを無駄にしてはいけないという倒錯した衝動のままに口に含んだ。


「うはぁ♡♡ ウムウム♡♡♡ 愛いやつめ、たんと飲むがよい♡♡」


 発汗に濡れて塩気のある乳頭を唇で挟むようにしゃぶりつくと、先端から舌の上に母乳がどろりと広がった。

 生暖かくさらさらとしたそれは、何か明確な味わいがあるわけではなかった。舌触りは唾液にも似ていて、ぷっくりとした乳首を突きながら舌の上で転がすと、ほんのりとした甘さを感じた。

 早採れの桃より淡い糖度は、意識しないと感じられないほど幽かだ。

 俺はそれを確かめるように、そして吸い出すように虎の乳首にむしゃぶりつく。頭上で「ん゛ぉお♡♡」と喜ばしそうな声が聞こえて、気づけば俺は乳飲み子のように夢中になってちゅうちゅうと吸い付いていた。


「ち、ちくびが♡♡ おれの乳首がぁ♡♡♡ っぁ、あ〜そ、それっ♡♡ それっ擦れてぇ♡♡ き、きもちいぃ、授乳が止まらんぞぉお♡♡」


 喋りながら興奮しているのか、虎の乳頭からぴゅるっと滴が溢れる。生暖かくて口当たりのいいそれは、俺の咥内に溶けるように吸収されていく。

 牛の乳にも似たまろやかな口当たりに、ついつい腰にも力が入って虎の尻穴を容赦なく突き回した。

 石牢に転がされる捕虜に甘味など与えられるはずもない。ゆえに、虎の豊満な大胸筋からこぼれるつゆは俺にとって至上の甘露のようにも感じられた。


「あはぁ゛っ♡♡ た、たまらぬぅ♡♡♡ お、おれのちくびっ吸われてるっ♡♡♡ もっと吸ってくれぇ゛♡♡」


 仰向けになっている虎が覆い被さった俺の頭をかき抱く。ぼこぼこと筋肉が隆起した虎の腕はそれ自体が頑健な拘束具のようでもあるが、俺の腰ほども太いかいなに抱かれ包まれるのは不思議と悪い心地はしなかった。

 ただでさえ椀状に盛り上がっている胸板が虎の腕が動くに合わせてむぎゅっと寄せられて、俺の顔はさらに膨らんだ乳房に埋もれる。後頭部に手まで添えられてしまえば、いよいよそこから抜け出すのは困難のように思えた。


「ふ、ふふっ♡♡ まるでそなたがおれの子のようだな♡♡♡ 良い子良い子♡♡ いっぱい吸って大きくなるんだぞぉ♡♡」


 快楽に浮かされながらも茶化すような口調で虎が言う。

 顔を押し当てるように乳首を咥えているので、胸板から漂うツンとした汗臭さが顔中に染み渡るようだ。

 雨に濡れた衣服を丸めたまま放置したようなにおいに包まれながら、節くれだった大きな手で髪を梳くように撫でられるのがこれほど心地良いとは知らなかった。

 他人という存在と肌を重ねて、間隔の短い鼓動を、じっとりとした熱を伝え合うだけで、こんなにも安心できるとは。


「おぉ♡♡ そなたのおちんぽがわなないておる♡♡♡ おれのおまんこを孕ませてやると息巻いておるぞ、もうイきそうなのか?♡♡」

「う、うぅっ……♡」


 度重なる抽送でかき混ぜられた虎の体液と俺の放った精液が泡立って、互いの結合部をこってりと汚している。

 粘液の塊と化したそれは突きこまれるちんぽと共に虎の膣内に押し込まれて、引き抜かれるちんぽと共にかき出されてはばちゅんばちゅんと音を立てていた。

 揺れる俺の金玉が虎の尻尾を掠めるたびに腰にぞくぞくとした官能を覚えて、俺の頭は性欲で塗りつぶされてしまう。

 粘液をまとって蠢く腸壁越しに俺のちんぽの様子を鋭敏に察知した虎は、太い親指で俺の耳を擽りながらそう宣う。

 ちうちうと乳首に吸い付いた口を離して、ゆっさゆっさと揺れる大胸筋に頬ずりするように抱き着きながら俺は呻く。図星だった。


「よいぞっ♡♡ 何度も言っておるだろう、遠慮せずおれを孕ませろとな♡♡♡ ほーれ♡♡ 我慢せずおれのおまんこにブチまけてしまえ♡♡」

「っあ、しょ、将軍っ……!」


 そう言って、密着している虎の下腹部が不規則に上下する。わざとらしく腹筋や尻の筋肉に力を入れるものだから、それに合わせて筋肉の輪で構成された直腸がぐねぐねとうねり、締め付けたり緩んだりして俺のちんぽを愛撫してきた。

 どっしりとした下半身は仰向けに股を開いたまま微動だにしていないというのに、その尻穴だけが独立して動き的確に俺を絶頂へと追いやる。

 筒状の粘膜が前後に伸び縮みしては、円の直径を狭めるように収縮している。内部に収められた俺のちんぽが伸びる腸壁と擦れる感触は腰を打ち付けるだけでは味わえない。縮まった柔肉に締め上げられる感触についても言うまでもない。

 だから俺はついつい腰を動かしてしまう。与えられる快楽をもっと味わいたいと希って、対価とばかりに自分勝手に虎の尻を穿り続けるさまは、おそらく神ですら目を背ける悍ましさに満ちていることだろう。

 サカりのついた犬よりも浅ましく腰を振って、勃起したちんぽを虎の蕩けた膣肉に擦りつけることに夢中になる俺を、しかし虎は優しく抱きしめる。


「んはぁあ゛あんッ♡♡♡ こ、こしゅれるっ♡♡ おれのおまんこがっ、めくれあがっちまうぅ♡♡♡ そッ、そなたのおちんぽでっ♡♡ おれのおまんこが引きずり出されりゅぅう♡♡♡」


 天を仰いで、口吻から中途半端に舌を垂らした虎が開きっぱなしの口で喘ぐ。

 部屋中に響き渡るようなだみ声で喘ぐその姿は、春先で発情した猫のようでもあった。ハッハッと息をしながら媚態とも演技ともつかぬ声を上げる虎の両腕が頼りなげに俺へと縋りついて、思わず快美感に浸る。なるほど、俺が犬なら彼は猫というわけか。悪くない。

 俺が倒れこむように乗っかって上半身の体重を丸々預けている虎の体は、下敷きにされながらも平気な様子で呼吸に上下する。

 そのくせ奥までちんぽを突き立てられた際にはその分厚い胴がびくびくと強張って緊張するので、その反応を信じるならば俺は今まさにちんぽ一本でこの男を制圧していると言い換えても良さそうだった。


「っお、ぉおぉお゛おぉ~~~ッ♡♡♡ んぉっ、す、しゅごいぃ♡♡♡ そなたのちんぽがおまんこにひびくっ♡♡ おれのおまんこがっそなたのおちんぽと子作りしたいって疼いてたまらん♡♡ はやくっ♡♡ はやく出してしまえ♡♡ そなたのせーえき♡♡ そなたの子種をおまんこに浴びてぇビクビクってさせてくれえぇ♡♡」


 はぁはぁと夢中になってデカケツに腰をぶつける俺は、輪を狭める虎の腸壁をパンパンに張り出した亀頭で無理やりこじ開けるのに忙しくて返事ができない。

 エラの張った敏感な段差の部分がぐぽぐぽと狭い輪っかを引っかけながら出入りするので、むず痒さにも似た痛烈な快感を腰に覚える。

 挿入深度を浅くして、往復の間隔を狭めた短い前後運動に切り替えて、痒い所を掻くように俺は腰を振る。

 蕩けた肉の詰まった壺の奥まったところを掘削するようにちんぽを短く突き入れ続けると、虎の声の質が変わった。


「んっほぉおおおぉおおおぉ~~~♡♡♡ そッ♡♡ そこッ♡♡ お、おれの子壷がっ、入り口小突かれてるうぅっ♡♡♡」

「くぅっ、すっげ……か、絡みついてくる……!」


 虎の膣内は入り口や中間まではよく練られて弛み、よく拡がっているようだが最奥はむっちりと肉が閉じて詰まっているように感じた。

 なので、ちんぽで無理やりそれらをこじ開けて亀頭を滑り込ませるとすっぽりハマるように蕩けた粘膜が絡みついてくるので、俺は唸りながら腰を突き込む。

 パンパンと間隔の短い律動が互いの下半身から響く。今や虎は両腕だけでなく、両脚すら俺の胴に絡めて抱き着いてきていた。


「ひ、開くぅ♡♡ おれの子袋がっ、そなたのちんぽで拡がって孕んでしまううぅ♡♡♡ おまんこが、子袋がずぼずぼ叩かれるのが臓腑に響きよるわ♡♡ んはあぁ♡♡♡」

「っは……はぁっ、孕んで、孕んでくれるんですよね、将軍っ……!」

「ウムっ♡♡♡ 孕むぅ♡♡ そなたとの子がほしい♡♡♡ 敗戦国の捕虜せーしでっおれのことを孕ませてみせよっ♡♡」


 両腕を巻き付けるように虎の胴体に巻き付く。とてもじゃないが腕が回りきらない厚みに富んだ体は、馬上で武器を操るために必要な体幹を十分に備えていると感じさせる。

 そんな逞しい体が、尻穴を穿たれて情けなく震えている。ちんぽで奥をコンコンと小突くだけで、頼りなげな反応を示す。

 愛しさにも似た感情が胸中を満たす。気の迷いだと知りつつも、倒錯していると理解しながらも、その慕情が俺の金玉から子種を押し上げるきっかけとなった。


「や、やべ……で、出そうっ……!」

「おぉぉお゛ぉっ♡♡ 応♡♡ 出せ出せ、中に出せ♡♡♡ 外に溢したら仕置きぞぉ♡♡♡ そのままっ、おれのおまんこにッ♡♡ ヒクつく子袋の中をそなたの精液でびっちゃびちゃに満たしてくれえ♡♡♡」


 目を細めて恍惚とした様子で虎が言う。胸の谷間に溜まった汗を塗り付けるように顔を擦り付けていた俺は、顔の横でぷっくりと肥大した乳首からぴゅるっと乳が漏れるのを感じて、迷いなくそれを口に含んだ。

 どうやら先程からとろとろと勢いなく漏らしていたらしい乳首はその胸板の白い毛をじっとりと濡らしていて、毛皮の汗臭さにほんのりとした生臭さを加えていた。

 口に含んだ乳頭から搾り出すように唇で挟んで、時に甘く歯を立てて吸い付く。まるで射精する勢いで乳が漏れて、俺はそれを喉を鳴らして嚥下した。


「んひゃぁああッ♡♡♡ ちっちくび噛むにゃあぁ♡♡♡♡ っき、きもちいぃからっ、だめだぁ♡♡♡♡ んふぅーっ♡♡」


 なんという情けない声か。これがあの勇ましく馬を駆る将軍の姿か。

 屈強さを感じさせる肉体は元より、威風堂々たる佇まいが印象に強い俺は虎が甘えるような、あるいは服従するような声で鳴くたびにちんぽにビキビキと血が滾るのを止められない。

 オスとして、生物としてこの虎より優位に立っていると錯覚してしまう。優越感に増長せずにはいられない。


「すっご、次から次へと母乳溢れてきてますよ……! そんだけ気持ちいいならっ乳首弄ってもいいですよね、将軍……ッ!」

「んひぃいぃ♡♡♡♡ い、イイっ♡♡♡ ちくびぃ♡♡♡ ちくび吸われながらおまんこほじられるのがっ、きもちいぃぃ゛ッ♡♡♡」


 声に呼応して、虎の乳首からびゅっと母乳が飛び出るので、快感を享受していることに嘘はないと直感できた。

 俺は虎に抱き着いていた手の片方を胸に添えて、金環をぶら下げながら自由に乳を漏らしている乳頭を指先に捉える。

 そして、豆を上下から押しつぶすようにぎゅっと力を込めた。中を貫いている芯を指先に感じる。


「んッほぉおぉぉお゛ぉお~~~ッ♡♡♡♡ た、たまらんん゛ぅッ♡♡♡ ちくびとっ、おまんこぉ♡♡♡ どっちも責められてっ、イくのが止まらんぞぉおお♡♡♡」


 途端に虎の体がびくびくと痙攣して、上に乗っかっている俺の体は振り落とされそうになる。

 全体重をかけつつ抱きついている腕で負けじとしがみついて、今度は退屈そうに揺れている輪っかを指先で弾いた。重力にぶら下がった装飾具はそれなりの太さをしていたが、俺の指先ほども大きな乳首には見合っている。そのまま口に含んでいた乳首を吸い、唇で挟んで噛むと虎の膣肉が激しくうごめいて苛烈に俺を責め立てる。


「イっぐゥっおまんこイってるぅっうう♡♡ おッ♡♡ おまんこと乳首っ、そなたにいじられてっイくのが止まらんんッ♡♡♡ き、ぎもちいぃぃッ♡♡」


 虎の下腹部がキュンと跳ねて、折り重なった俺の下っ腹に押し潰されている剛直が存在を主張するのを感じる。窮屈そうに跳ねるそれは、熱を持ちながら脈を打ち、互いの体に挟まれて温かいものを撒き散らしているようだった。

 他人の精液に汚されることなど、少し前の自分ならとてもじゃないが受け入れられなかっただろう。だが今はそんなことすらどうでもよく、目の前の快楽のことでいっぱいだった。


 力強く締め付けたかと思えばふわりと緩んで、筒状の腸が伸びるように淫肉が蠢く虎の雄膣はこれまで経験したことのない至高のちんぽ穴と言えた。

 この肉の愛撫を経験してしまえば、俺はもう二度と自分の手などでは満足できないだろう。それほどまでに鮮烈な快楽を前に、俺はついに我慢の限界を迎える。


「っくぅ、俺も……イ、イきます、イくっ……!」

「んはぁぁ♡♡♡ いっしょにっ♡♡ 共にイこうぞっ♡♡♡ そなたの精液でおれのおまんこを満たしてくれ♡♡♡ おれの疼きをっ♡♡♡ そなたのおちんぽで満たしてくれえ♡♡♡」


 残された猶予は幾許もない。

 だから俺は、せめて一番奥に種を残せるように、ぐいぐいと腰を押し付けるような抽送を繰り返した。

 むずむずとした掻痒感を亀頭に、そして裏筋に覚えて、放尿するときのように尿道が疼くのが分かった。

 最後の意地で、あるいはオスの本能で、俺は奥へ奥へとちんぽを押し込む。窮屈な肉壁がちょうど痒かったカリ首を撫でて、俺の中で何かが弾けた。


「で、出るっ……イくっ!♡」

「ぉ゛オっ、ほぉおぉ゛おぉ゛おぉおおお~~~~~~~ッ♡♡♡♡♡」


 下半身に不随意に力が入って、筋肉が汲み上げた精液を尿道へと送り込む。

 尻の穴すらヒクついて、張り詰めた筋肉で圧力をかけられた精液が勢いよく鈴口から迸り、びたびたと虎の深いところに白種を残した。

 ひっくり返ったカエルのように股を開いていた虎は丸太ほど太い脚で俺の腰をがっちりと挟み、逃がさないと言わんばかりに固定している。

 俺もまた、虎の豊満な尻たぶを押しつぶしながら腰を押し付けて可能な限りの密着を図った。


「す、すごいぃいんッ♡♡♡ そッそなたのせーしがっ、おれのおまんこに出てりゅっぅ♡♡ 子種がっ、んあ゛っ♡♡ 種汁注がれてッ、おまんこイっぐぅ♡♡♡ ンん゛ッ、ぐるるるっ、ぐぅうう~~~ッ♡♡♡」


 何度もしゃくり上げながら精液を噴き上げる俺のちんぽを奥深くまで沈められて、虎の肉壷は歓喜に震える。

 激しい抽送などしていないというのに、虎は足指をぎゅっと丸めて、俺の背中に回した腕に力を入れ逞しい全身に小さく痙攣の波を走らせていた。

 分厚く毛むくじゃらな体が、予兆なくビクンビクンと跳ねるのが密着している俺にはつぶさに感じ取れる。

 なんとなく俺は俺を誇らしく感じてしまって、びゅるびゅると射精が止まらなかった。


「っくぅ……す、っげぇ、搾り取られる……っ♡」

「あっあっ♡♡♡ ま、まだ出てるっしゅっごいぃ♡♡♡♡ そなたのおちんぽの力強さっ、実におれ好みだぁ♡♡♡ おまんこも喜んでおるぞぉっ♡♡」


 虎の手が抱き着く俺をあやすように髪を撫でる。他人に体重を預けているからか、抱きあいながら子のように撫でられるのは悪い気分ではなかった。

 むっとしたオスのにおいは今となっては栗の花のにおいにも似た生臭さを伴っていて、呼吸のたびに身体の中にこのにおいが染み込んでいくようである。

 体と思考を塗りつぶしていた劣情が次第に落ち着いてくると、俺のちんぽからの射精もようやく止んできた。


 尿道に蟠った子種を出し切るように小さく腰を揺さぶると、仰向けになった虎のでっぷりとした尻に詰まった柔肉がそれを手伝った。

 相変わらずいやらしくうごめいて、敏感になったちんぽをぬちゅぬちゅと揉むものだから俺は思わずウッと呻いてしまい、虎に小さく笑われた。

 じっとりと湿った虎の胸板に頬を押し当て、その反動でぐっと上体を起こす。

 体を重ねていた虎の腹や胸の毛皮は蒸れてくしゃくしゃになっていて、変に潰れたり跳ねたりしていた。

 しかし俺が驚いたのは、その股間で重たそうに反って充血した虎の一物を見たからだ。


「んん゛っ……♡♡♡ ぁあ、これかぁ?♡♡ そなたのちんぽでおれもイかされてしまったようだなぁ♡♡」


 見れば、俺の下腹部は粒状に固まった白濁でべったりと汚れていた。

 さっきも見たのだから手も使わずこの虎が射精していること自体に驚きはない……はずなのだが、虎が自分から跨って腰を振って達するのと、俺が自分から腰を振ってイかせるのとでは意味合いが異なって感じられる。

 俺が招いた事実ということを俄かには信じがたく、この虎をイかせたのだという満足感が湧いてくるまでに少し時間を要した。


「フフ、すばらしいちんぽだ♡♡♡ やはり……そなたはおれのモノにふさわしい♡♡ んっ♡♡ じゅる♡」


 虎は自分の毛皮に絡んだ精液を指二本で摘み取り、慣れたことのように口にする。鮮やかな色をした舌ベロを米粒のような精液が彩って、俺は思わず喉が鳴った。

 半ば凝固してしまっているぷりっぷりの虎の子種にこれ以上変な感情を抱く前に、俺は後ずさりざまにちんぽを引き抜く。

 虎の脚は名残惜しそうに俺の腕や脇腹を擽っていたが、離れることを許してくれるようだった。

 ずるり、と半勃ちになった俺のちんぽが抜けると、汚れた虎の陰部が薄暗がりに照らし出されてよく見えた。


 土手状に盛り上がった陰唇に囲まれて、その肉洞はちょっとした饅頭ならそのまま収まりそうなほどぽっかりと開いている。仔細に観察すれば、その奥で色鮮やかな赤い肉が緩慢にうごめいているのがわかった。

 虎はガニ股に脚を開いた状態のまま、拡がった尻の穴を閉じようとヒクつかせている。その様子をあまりにも煽情的に感じるのは、そこにちんぽを突っ込んだときの快楽が想起されてしまうからだと思いたい。

 宙にぶらついた足裏の肉球に視線を逃すが、しかしその肉井戸の様子から目を離せない。

 とうとう俺は、戸締まりができぬまま収縮を繰り返す膣孔からごぽりと白濁が溢れるのを直視してしまった。


「んはぁ♡♡ いかん、そなたの子種が溢れてしまった♡♡♡ せっかく注いでもらったというのに♡♡♡ もったいない♡♡」


 虎は依然として仰向けになったまま、股の間から自分の尻に触れる。まるで尻でも拭くように指で自らの肛門を撫でると、指の毛に絡まった精液とも腸液ともつかぬ粘液を迷いなく口に運んだ。

 唇や舌腹にさっきまで舐めていた自身の精液粒が残っている口で、俺が出した精液をもったいなさそうに舐めとる姿から目が離せないのはどういう理屈だろうか。


「そなたに溢すなと言っておいて、おれがこれではまったく立つ瀬がなかろうよ……んふ?♡♡」


 視線に気づいた虎は自分の指をツパツパとねぶりながら、立ち竦んだままの俺を上目遣いで捉える。

 そして、悪い笑みを一つ。虎は精液にまみれた口をがぱりと開くと、白濁の残滓がチラつく舌をべろりと出した。

 まるで相手の切り込みを誘うように人差し指でちょいちょいと俺を誘うので、わけもわからぬままフラフラと仰向けの虎に歩み寄る。


 否、本当はわかっていた。

 ルォの国ではどうかはともかく、イムではそれは紛れもなく契りとして意味を持つ。

 好き合ったもの同士でしか交わさない、愛情の証明だ。

 伴侶となる妻にのみ行うべきもので、軽々に許していいものではない。

 そう知りながら、体は制御できない。

 この虎に呼ばれたのだから、と俺の体はガニ股に開いたままの虎の脚の間に収まって、ぐっと前傾する。

 これまで生得した全てを下に敷いて、将軍に呼ばれることは何よりも強い意義と動機に成り得ている。

 だからこそ、俺はこれに逆らえない。


 歩み寄った俺を、再び虎の太脚が挟む。ぐっと引き寄せるように抱きついてくるので、ほとんど倒れ込みながら寝台に手を突いた。相応の体重でのしかかっても、毛むくじゃらな豊満体はビクともしない。

 数寸もないくらいの距離に寄せられた黒鼻の先で、虎の目が愉快そうに細められていた。

 獰猛さの欠片もない、まるで母が我が子を慈しむような目つきだった。

 僅かな抵抗に逡巡して、体が強張る。しかし唇に生暖かくぬるりとした粘膜が触れて、俺は満を持して口を開いた。

 こうなると、もう俺の中で意を唱える声はなかった。

 これが我が子を身籠って伴侶となる妻に施すものならば、どうして今がその時でないと言えようか?


「んん゛っ……♡ ふ、フーッ……♡ じゅるっ、ぁむっ……♡♡」


 虎は俺の唇を食むように口を使って、そのまま舌を差し込んで下からドロッとした粘液を差し出してくる。

 口移しに従うと、塩気とも苦味ともつかぬ味わいを覚える。それから、熟していない柿に齧り付いた時のような渋みというか、えぐみが追ってやってくる。

 飲み下しても、息をすると喉から立ち上ってくる魚にも似た生臭さが鼻を抜ける。ネバネバとした食感は口腔内から拭えなくて、お世辞にも美味とは言い難かった。


 しかし、それでも。

 俺は自ら舌を突き出し、虎の幅広な舌と絡め合った。唾液に反応した精液が粒状に凝固して、互いの舌の間を何度も往復した。

 唾液を啜り合うと、虎を犯すのに使った油が唇をコッテリと汚すのがわかる。

 この行為に夢中になってはいけないと思えば思うほど、虎の尖った歯列をなぞるのを止められない。

 粘ついた液体を飲み下し、喉の奥からせり上がる生臭さを吐き散らかす。

 ぴちゃぴちゃと唾液を交わし合う。誰かとの接吻など初めてだったが、頭の後ろがぼんやりと痺れるような心地があって、それが醜悪な獣の男相手だとしても嫌悪感はなかった。


「っふー、ふぅっ……ぐるるっ……♡♡」


 喉を鳴らし、俺に全身を絡めて縋り付いてくる虎の毛皮が素肌にくすぐったい。

 フンフンと鼻息荒く舌を絡ませて、頭を持ち上げていた虎の頭が引くと、息継ぎをする余裕が与えられた。

 が。

 虎の手が俺の肩から脇腹に滑り、股間へ至る。アッと思った頃には、それをギュッと握られていた。


「んふ♡ 物欲しそうな顔をしていると思ったら、やはり剛毅なものだ♡ まだまだ足りないと猛っておるわ♡」

「い、いえ……その、俺は、もう」

「謙遜はよい♡ これはそなたの歓迎会でもあるのだ、遠慮せず種を撒くがいい♡」


 舌を交わしたのがいけなかったのか、あるいは他の何かか。

 すっかり硬さを取り戻してしまったちんぽを握りしめられて、俺は悪事が露見した小悪党のような心持ちだった。

 虎は笑みながら続行するよう勧めるが、そうはいかない。

 疲労もあるが、これ以上肉の悦びを覚えてしまうのはまずいことのように思えて、丁重にお断りするつもりなのだが。

 虎は豪放に笑って流す声音とは裏腹に、柱のような両足でがっちりと俺を挟んで離さない。


「さあさあ、交尾の続きだ♡ 渋っても無駄だ、そなたよりそなたのちんぽはよほど物分かりが良くあるようだぞ♡♡」

「うっ……!」


 刺さった矢でも引き抜くように、虎が俺のちんぽを前後にちゅくちゅくと扱く。

 その言い方だと、つまりまだまだ満足していないということだろうか。

 どちらにしろ、絶対的強者であるこの将軍の意に背くわけにはいかない。いっそ満足するまで腰を振り続けろと命令されたほうがマシだが、あいにく俺の体は肉体疲労を概観できるほどの精力に漲っていた。

 ならばあとはどうして男同士でこんなことを、というこれまでの常識から乖離しすぎた現状に疲労した精神に目をつむるだけだ。

 白々しく苦痛を感じる心を無視して、この虎がそう言うのであれば……と俺は自分の劣情に少しだけ素直になることにする。


「わ……わかりました。では……も、もう一発だけ、種付けさせていただきます!」

「ウム♡ よかろうっ♡ そなたのぷりっぷりの種汁をおれのおまんこに存分に放つがいい♡♡ 遠慮はいらぬぞ、一発と言わずいくらでも来い♡♡ そなたがおれのモノであるように、おれはそなたのための孕み袋なのだからな♡♡ たくさん子づくりしような♡♡」


 熱烈な文句に思わず顔が熱くなる。言っていることは依然として倒錯しているが、生殖行為に励もうというその言葉は夫婦の営みを想起させたからだ。

 故も知らぬが、どうしてかはわからないが、この虎にいたく気に入られていることだけは確かだ。

 敵国の将で、獣の頭を持つ大男で、男同士で孕むなどという意味不明な性質を持つ、汗臭くむくつけき虎の益荒男、将軍ラォ・フー。


「た、体力がもつかわかりませんが……」

「かまわぬ♡ なぁに、安心しろ♡ 先は長いのだ、明日も明後日も力尽きるまでまぐわおうぞ♡♡ フフ♡」


 そんな男に気に入られたという事実で、俺の胸は綻んでしまう。

 快楽を刷り込まれたからか、あるいはただの気の迷いかはわからない。


「しょ、将軍、挿れます……っ♡」

「応♡ 今はそなたのためのおまんこだ、いーっぱい気持ちよくなってくれ♡♡」


 それでも、計算抜きで芽生えたこの想いは、理外から去来した解答は、意外と悪くないもののように思えたのだった。



 ♂♀



 次、と虎が吠えた。

 丈の長い上衣を身にまとい、倒れ伏す大男から目を離して踵を返す。裾を飜して、手にした得物を正眼に構えると次なる標的に鋒を向けた。

 たった今背中を練兵用の剣で打ち据えられた牛の獣人が、鈍痛に悶えながらも慌てたように虎の足元からよろよろと立ち去る。

 歯を潰した剣は切れ味がないとは言え重く、それだけでも立派な鈍器だ。

 いくら体格が近しい獣人同士と言えど、虎の膂力で振るわれたそれをまともに受ければ打撲というだけでは済まないだろう。


 それをわかっているからこそ、一歩前に踏み出す狼の顔は硬く強張っている。

 尻尾を丸めずにいるのが精いっぱいという様相で、狼は自らを奮い立たせる雄叫びを上げて踏み出す。

 勇み足に勢いをつけて、上段に剣を振りかぶった。


 虎はそれを直立のまま剣の腹で受ける。剣戟の轟音が練兵場に響いて、兵舎の建物までびりびりと振動が伝わるほどだった。

 柄を握る手が痺れそうな衝撃にも虎は一切動じた様子はない。衝突の勢いを逃すために後ろに下げていた片足のふくらはぎがグッと膨らむと、力強く地を蹴ってその巨体ごと盾のように構えた剣を前に押し出した。

 突然のぶちかましにうまく対応できず、狼はそれを正面から受け止めてしまう。体勢を崩したところへ、虎は横蹴りを繰り出す。

 ヒュン、と虎の袴が閃いて丸太のような脚が相対する敵を捉える。狼は咄嗟に腕と足で胴体を守るが、虎の脚力で強かに打たれてたまらず後ずさりつつ剣先を下げてしまう。

 歴戦の猛者はその隙を見逃さない。蹴り足を浮かせた時にはすでに構え直していた剣で、体勢を整えるべく距離を取ろうとする狼を下から上へ切り上げた。

 間抜けな声を上げて長い口吻を下から叩かれた狼は、後退するために傾けた重心を支えきれずそのまま背後に倒れ伏す。

 ぼす、と芝生に仰向けに倒れた狼は、意識はあるようだが目を回して不明瞭に唸ることしかできなかった。


 人体の急所を鈍器で思い切り打ち据えれば、最悪即死は免れない。

 それがわかっているからこそ、虎は振り抜く瞬間に脱力し、その脳を揺らすに留めていた。

 これまでの経験で培われた絶妙な力加減があってなお、しかし狼は平衡感覚を失い、泥酔状態にも似た眩暈でその場で降参する。


 虎は剣を肩に担ぎ、練兵場で二人組になって、あるいは木人を相手に剣を振るいつつ見て見ぬフリをしている兵卒らを眺める。

 こっちを選んでくれるなという緊張に満ちた顔を眺めながら、生きの良さそうなオスは、あるいは有望そうな兵はいないかと見定めようとして……兵舎の方から駆けてくる声があった。


「殿~~~! こちらですか、殿~~~!」

「む」


 丸耳を動かして、虎は背筋を正す。持っていた剣をスッと下ろして「いかん」と続けると、その場の兵達に言葉を残す。


「カタいのが来よった、ではそなたらは引き続き練兵に励め。そしておれは来ていないと伝えてくれ!」


 膝上まである平服の下で少し丸く張り出た腹を隠すように颯爽と踵を返し、虎は足早に逃走する。

 周囲の兵卒も慣れたことのように思い思いの返事をして、あるいは自分が標的にされずに済んだことに胸を撫で下ろしては鍛錬に戻るのだった。


 やがて、動きやすそうな丈の短い袍服に身を包み、黒髪を短く刈り込んだ人間男性が練兵場に現れると、半裸で汗を流す獣人兵の集団に物怖じせず駆け寄っていく。

 キョロキョロと周囲を見渡し、目当ての姿がないことを認めると、鍛錬をしている一団の中で立て込んでいなさそうな者を探して足を向ける。


「はぁ、はあ……は、ハン副長。すいませんが、殿はどちらに……?」

「おうフェオ殿、無駄だろうが我らが将軍なら来てないぜって言っておくぜ」


 ハンと呼ばれた熊の大男は、脳を揺らされ芝生に伸びている狼のそばにしゃがみ込んで介抱しながら言葉を返す。

 息を切らして走ってきたフェオは、その狼以外にもまさにたった今叩きのめされたと言わんばかりに座り込んだり、倒れ伏している兵卒らを見回して溜息をついた。


「また皆さんと鍛錬していたのですね……? まったく、あの体でどうしてそんな無茶をなさるのか……!」


 黒髪を振って呆れるフェオにハンは笑いながら、「おい、起きろ」と気付け代わりに狼の頬を平手で軽く打つ。

 うぅん、と目を覚ました狼は仰向けになったまま周囲に目を走らせた。


「う、あ……オレ……あれ……?」

「どうも、ツァイさん。お加減はいかがですか?」

「やあ、フェオ先生……算術教室、今日だっけ……?」


 違いますから大丈夫です、と言うフェオの言葉に安心したのか、ツァイという灰狼は「そっかぁ」とまた芝生に倒れ込む。

 熊はそれに「起きろって」と苦笑して、肩を揺らしながら腰に手を当てて嘆息している男に振り向く。


「ガキひとり腹に身籠ってるくらいで相変わらず大げさなやつだな、イム人はみんなそんな感じなのか?」

「というより、ルォの方々が特別すぎるんですよ! まったく……お腹の子に何かあったらどうする気なのか……!」

「大丈夫だって、俺のお袋だって俺を孕んだままシャン国の将軍を討ち取ったりしたんだぜ? ちょっと動いたほうが優秀な戦士も産まれるってもんよ」


 フェオはもう一度溜息をこぼす。

 ここ数ヶ月でルォ国の民俗と文化など暮らし向きをその勤勉さで十二分に学習した男は、ここで抗弁しても仕方がないことを理解する。

 故にそれは事実上の降参であり、確かに当人の状態のことは当人がよくわかっているだろうから任せればいいのだが……万が一を心配してしまう心情は理屈ではなかった。

 それも、腹にいるのが自分の子ともなれば、なおさらというものだろく。


 ルォ国にイムの捕虜として捕らえられ、奇特な将軍に勘定方として召し抱えられてから、既に二月ほどが経っていた。

 相手を見誤り、領土戦争に敗走したかの国は今や風前の灯火で、もはやルォ国の傀儡化は免れないという話を聞いたフェオ・ロンは、故国の哀れな窮状にそりゃそうだろうという感想を抱いた。

 相手の兵力も、体制も、規模も定かではないのに目先の利益に囚われ戦争を仕掛けるなど最初から大博打に出るようなものだ、むしろ返す刀で滅亡されないだけマシというものではないか。

 結果、イムの都は今や事実上のルォ領となっていて、獣人達が我が物顔で出入りしているという。捕虜の何人か、つまり自分以外のイム兵達も講和と友好の証に送り返されるのが決まったようだが、それでも再度侵攻を仕掛けるほどの兵力にはならないだろうのは確かだった。

 この敗戦の責任を取って、イムの国王は放逐され政の舞台から引き摺り下ろされたらしい。

 愚君の末路としては妥当というもので、ルォの国境から数里しか離れていない虎の将軍の領内でそれを聞いたフェオが取り乱したり動揺するようなことは終ぞなかった。


 そして戦が終結してからもフェオはルォの地に、ラオ・フー将軍を仕えるべき殿としてその下に留まり続けることを希望した。

 今は部隊内の兵卒らに支払う給金や、隊の兵糧や武具に関する運営費の出納管理を行いつつ、希望者には教えられる範囲で基本的な読み書きや算術を教えている。

 イムでもそうだったが、一般的な農民や兵士は字が読めない。しかしそれも、彼らは読み書きを必要としない職務に携わっているからで仕方のないことで、実際それでも問題なく生活はできているのだ。

 だが、意外にもルォの獣人兵の中には読み書きを始めとした算術に興味を持つ者が多かった。

 実際読み書きができて困るということはないし、逆に彼らがより良い地位を、あるいは仕事を得ようとするのならば覚えておいて損はないはずだ。

 それに、今はいいかもしれないがフェオに何かあった時に同じ仕事を任せられる後釜がいて損はないはずだ。そういった理由から、フェオは読み書きや簡単な語彙、そして四則演算についての教室を臨時で部隊内で開くことにした。


 最初は自分がモノを教えるなんて、と乗り気ではなかったが、回数を重ねルォの兵士たちの勉強を診るにつれ、彼らがあまりにも本能的というか、合理的でないというか……要するに知能が著しく低いことに気がついた。

 知識欲があるのはいいが肝心要の土台がまったくできていないことがわかると、危機感のようなものを覚えた。せっかく勉強を教えてもそれを活かせるものがあまりにも一握りでは意味がない。それに、日常会話が成立しないほどのバカが多いのも困る。

 後進育成のためと作戦効率などへの影響も加味し、将軍に進言したところ同じようなことを考えていたと明かされ、当初は数人に向けて臨時で開いていた算術教室を定期的に開催するまでに至ったのであった。


 そうして自分の職務と立場を作り上げていったフェオだが、ルォの兵達から一目置かれる理由はやはり将軍の懐妊にあった。


「しかし、まさかラォ将軍を孕ませちまうとはなぁ。他種族の種は孕みやすいっつうけど、そのせいかね?」

「……俺が知るはずもないでしょう」

「今度俺のことも孕ませてくれねぇ? ここ最近ろくにガキ産んでねえからさぁ、ちょっと景気づけたいんだよな♡」


 言って、熊は深くしゃがみ込んだままフェオに上目を遣う。ニヤニヤと細められた目つきの下でむっちりと深い谷間を作っている乳に目を奪われてしまって、フェオは慌てて視線を逸らした。

 驚いたことに、自分でも耳と目を疑ったことには、ルォ国の獣人兵にとって、子を孕み育てることはオスとしての栄誉だと言う。

 男としての尊厳を誇示するように、腕っぷしや知能を披露するように、子を何人産んで育てたかというのは獣人としてのオスらしさ、そして優秀さを測るうえで大事な指標らしく、この国の男達は隙あらば子を儲ける機会を窺っているのだ。


 一説によれば、獣人の男子が真に絶頂に果て、そして心からそう願ったときのみ孕み袋の口は開くとされており、そうして身籠った子供は半月ほどで産まれる。

 雑に膣内で射精すれば孕むというものでもないようで、子を孕んだオスもそうだが子を孕ませたオスもこのために同様に価値あるオスとして認定されるのだ。

 そして、フェオ・ロンという男がラォ・フー将軍の率いる獣人兵らにどう見られているか。

 捕虜でありながら将軍に見初められ、勘定方としてその学知を振るいつつ異種族でありながら分け隔てなく学びを与えている。

 そればかりか、偉大なる将軍を一夜にして孕ませたというではないか。

 まさしく見上げたオスである、さぞ勇ましい益荒男なのだろう、いったいどのようなちんぽをしているのか。

 ここ数十年ろくに子を授かっていない将軍をあっさりと孕ませたそのちんぽで俺も孕ませてもらいたいものだ。

 娯楽に植えた兵卒らの中であっという間にその噂は広まり、今では末端の獣人兵にすら名と顔を知られている。そして、隙あらばこうして交尾に誘われるようになってしまっていた。


 フェオは最初こそ虎を孕ませたのは自分以外の誰かだ、と信じたかったが、捕虜として召し抱えられた初夜以降ほとんど毎晩のように体を求められまぐわっていたのだ。

 まして、虎が自分から嬉しそうにフェオへ報告するものだから、もうすっかり自分が仕込んだのだということは受け入れていた。


 田舎臭い、と女受けも悪く、色も知らなかった自分にまさか子供ができるなんて思ってもいなかった。すっかり諦めていたこともあって、もし孫ができたと知れば今は亡き母も喜ぶだろうという感傷は堪えない。

 今となっては一児の父として子を迎える覚悟は十分だが、肝心の母……というか産む側の虎が身重にもかかわらず平気で武器は振り回すわ鍛錬は続けるわで気が気でないのがここ最近のことだった。


「え、遠慮します。そういうのは、ちょっと」

「あンだよ、いいじゃねェかちょっとくらい♡ 将軍に負けず俺だっていいケツしてんだぜ?♡ お前さんも俺みてえなケツのデカいオスが好きなんだろ?♡」

「す、好きとかそういうことじゃなくて……! お、俺の独断では決めかねると言いますか、殿が何と言うかわかりませんし……!」

「いいだろ別に、むしろ将軍のことを思うなら一人でも多く子を作って優秀な種を残すべきだと思わねえか?♡ きっとそっちのが将軍も喜ぶぜ♡」


 普通は……というか、イム国では愛し合う男女の営みとして子を設けるのが常識だった。それ以外での男女の不貞行為は品がなく、卑しくはしたない行為として忌避されるべきという理性的な世界だ。

 だが、ルォではそうはいかない。

 逞しいオスは一人でも多く子を孕み、出産すべきという社会通念のため、子種を提供するオスとの関係性や誠実さなどとは無縁の文化を形成しているのだ。


 そういう意味では、彼らを蛮族と揶揄したイムの官僚らは正しかったのかもしれない。その在り様はどちらかというと野生の獣や動物の繁殖に近しく感じるからだ。

 どちらにしろ、そのような環境の中で道徳や貞操を説いても栓のないことで、フェオは極力異なる価値観を尊重し郷に入っては郷に従うと決めたのだが。

 十数年前に第二子を孕んでからというものの、竿役が干からびるほど中出しさせても孕まなかったという天下の将軍をものの数夜で孕ませた男を見る獣人兵の目は、どいつもこいつも下心に溢れていた。


 しかしフェオからしてみれば、同性間で性的交渉を行ったことが公然と知れ渡ってしまったとはいえ、それはあの将軍だからこそというもので男なら、ましてや獣人ならば誰でもいいというわけでは当然ない。

 自分の心情の変化を合理的に納得したわけではないが、大陸に名を轟かす大将軍に必要とされ、そして豪傑の武人がはしたなくちんぽをしゃぶり尻穴で快感を得ている光景に意義を見出したからこその産物というだけだ。

 フェオはいまだに自分は女の方が好きで、性的嗜好はイムにいた頃から何も変わっていないと信じている。


 しかし、そうは言えども……ラォ将軍と同郷で、幼馴染でもありこの部隊の副長として五千人を率いるこの熊の大男は確かにそれなりの体格をしている。

 熊はしゃがみ込んだまま舌舐めずりすると、ぴっちりとした筒状の下穿きに覆われたケツを突き出しこれ見よがしにゆっさゆっさと揺らす。そればかりか、胸元が広く開いた簡素な服の隙間からこんもりとした乳肉を寄せて谷間を強調するのだ。

 小山のような迫力のある体でしなを作って上目を遣われると、フェオは何だか落ち着かなくて目を背けることしかできない。

 いや、自分は将軍の所有物なのだ、勝手に他のオスを孕ませるわけにはいかない、と拒絶するその態度は、ともすれば操を立てる人妻のようにも映っただろう。


「……副長、最近ろくに孕んでないから焦ってんだ、ハハ」

「うっせーぞツァン、テメェこそ同じようなもんだろ」

「オレはまだ若いしヘーキヘーキ……つーかそんなに孕みたいなら竿奴隷のとこ行ってくりゃいいのに。アイツらなら年中ちんぽおっ勃ててんじゃん?」


 その言葉にフェオの手が強張る。

 屈強なオス同士で、男を探す婚前の女のような会話をしていることに動揺したのではない。

 竿奴隷、という単語と、それが意味するものは、たまたまこの軍団内に職を得たイム国の捕虜である自分とは必ずしも無関係ではなかったからだ。


「バカお前、フェオ殿の前で何てこと言ってんだ」

「あッ……す、すいやせんフェオ先生」

「あっ……い、いいえ、お気になさらないでください」


 ルォの獣人兵はオス同士での妊娠が可能だが、獣人同士での交尾で妊娠する確率は低いとされている。

 そこには犬同士だとデキにくいとか、馬の子種は孕みやすいなどという眉唾物の通説から、相性のいい袋と種同士は一夜の交尾ですぐに孕むという運命的な噂話も偏在するが、基本的にはルォの国民同士ではデキにくいというのが共通理解らしい。

 そんな獣人達が自らの価値を高めるために子を孕み、国に貢献しようと思うのなら、仕入れる種を選別するしかない。

 ゆえに、ルォ国に立ち寄った異種族の行商人や同盟国の兵士などは熱烈な歓待と共に執拗に種をせがまれるのでその気になれば乾く暇がない……というのがイム国を除く諸国間、旅人間での常套句であった。


 戦争で捕えられた敵国の女が犯され、孕まされるのと同じように。

 ルォの獣人兵に捕まった捕虜の男子も、同じ運命を辿る。

 そしてそれこそが、ルォ国が数で勝り戦況も優勢であるにもかかわらずイム国の兵士を殲滅せず、健康な男子を数多く投降させ国家を傀儡化するという生殺しの理由だった。


 ルォのもっとも近くに栄えるイムの都市は、つまり絶好の竿の養殖場だ。

 もっとも、フェオが敬愛する虎の将軍曰く、相手側が受け入れれば友好的な関係を築きたいというのがルォ国の総意であるらしい。

 フェオが心を痛めぬようにと気遣った言葉でなく本心であることは、性的に倒錯しているものの比較的温厚なルォ兵の自分や他の捕虜に対する扱いを見れば自ずと信じられようというものだった。


 しかし、一部ではちんぽをおっ勃てる他国のオスを全て自分たちの竿奴隷にしたいという欲望を抑えきれぬ派閥があるのも事実らしく、そういった者たちが中心となり、捕虜を非人道的な竿役たらしめていだ。

 潔く投降した者はともかく、最後まで反抗的な態度を貫き国に対する忠義を貫いた者は純然たる侵略者としてそれなりの扱いを受けているようだった。

 イムの国に愛着はないとはいえ一時は同じ陣営だった人間のことだ、気にしないでとは言いつつ、そのことを思うと多少気が沈んでしまう。

 あちこち擦り切れた綿服姿のツァイは失言を詫びるように、座り込んだまま努めて明るく切り出した。


「ま、まあでもホラ! 基本ウチってよっぽど態度ひどいオスじゃないとそんなことしないし、自由意志っつーの? ソンチョーするからフェオ先生が気に病むことないって!」

「そ、そうそう! よく練兵終わりにイムの奴っぽいオスが木陰でハメてるとことか見るしよ! 元気にヤってるって!」

「いや別に、ほんとに気にしてないんで……」


 反骨心を砕くために薬を盛り、自分が帰るべき場所も忘れたまま一日中交尾のことしか考えられなくなるよう仕立てられた竿奴隷は、ここでは便所のように利用されている。

 しかしそれも、当人が選んだ結果なのだから同情する余地もないとは思うし、フェオは実際早々に投降した自分以外のイム兵が雑用係として楽しそうに獣人兵と話しながら働いているところを目の当たりにしたりもした。

 これは戦争なのだ、すぐに命を奪われるようなことがなかっただけマシというものだろう。

 だが、一歩間違えれば自分がそのようになっていたのかもしれない、と考えてぞっとしまうのは、いつになっても慣れなかった。

 しかし、それにしても。


「……ほんと、敵だったっていうのに、よく皆さん平気で仲良くできますよね……」

「え?」

「なんで?」

「なんで……って、」


 フェオは言葉に迷う。

 私怨がないとはいえ、互いに国同士の争いに駆り出された間柄だ。

 戦場で顔を合わせていれば、どちらかが倒れるまで武器を振るっていたのかもしれない。

 あるいは、個人間に諍いがなくとも、親しい友を殺されているかもしれない。手にかけた本人ではないとはいえ、その原因となる組織の一員というだけで恨むには足る理由だ。

 友達も家族もいないフェオとは違い、二人にとっては故郷を焼き払い同じ陣営の仲間を殺して攻め込んだ侵略者の一人に違いないだろう。

 逆の立場だったら、とてもじゃないがこんな風に話しかけることなどできない。憎いとは思わないのか、と尋ねられた二人は、ぽかんとした顔で答える。


「殺されたって、ンなもん殺されるヤツが戦士として劣ってたって話だろ? じゃあそいつが悪いだろ」

「うんうん。ていうかフェオ先生は俺らにも優しいし、勉強も教えてくれるから全然憎む理由とかねえよ」


 あっさりと言ってのける二人に、その死生観の違いに眩暈を覚えた。

 弱いやつが悪い、強いやつが偉い、という子供と同じ理屈の文句が大の大人から出るとは思ってもいなかったのだ。

 いやでも確かに、あの虎も同じようなことを言っていた気がする。あれは将軍の器から来る物言いだからかと思ったが、どうやらこの無垢にも似た淡白な思想はごく一般的なもののようでもあった。


「い、いや、そうだとしても、ほら。俺とか、大人しそうに見えて実は間者として働いてたりとかするかもしれないじゃないですか?」

「フェオ先生が……」

「間者……?」


 もしかしたら表面上は大人しくしていても、裏では密かに反逆の計画を企てているかもしれない。

 それなのに、あの虎といいこの国の兵は捕虜を……特に俺のような男を平気で自由にしすぎているというか、軽々しく信用しすぎではないのか。

 熊と狼は下からジッとフェオに目を向けて、見上げたまま顔を不躾にじろじろと眺めた後、声を揃えて「見えないなぁ」「見えねェな」と言った。


「例え話です! その、必ずしも見えてるものが全てじゃないというか、人間誰しも裏があると言いますか……!」

「ま、言いたいことはわかるぜ。そりゃもちろんきな臭ぇやつは警戒するし、俺らだって見境なく自由に歩かせてるわけじゃねェって」


 ハンが宥めるように言って、ツァイがウンウン頷いて尻尾を振った。

 え、そうなの。とフェオが気勢を削がれると、ツァイが言葉を引き継ぐ。


「そうそう。監視役というか、それなりに腕の立つ人が看ることになってるんだよ。フェオ先生はそれが将軍殿だったけどね、だからこそなおさらっていうか」

「ンだな。将軍が認めたオスなんだ、それだけで信用に値すると思ってるぜ」


 熊はにやりと笑って「それにあの将軍を孕ませるようなオスだしな」と付け足す。

 それについては結果論というか、後付けだろうと言葉を返したくなったが、面と向かって信用に値すると言われるのが思いのほか照れ臭くてうまく言葉にならない。

 ハンは狼に手を差し出し、「起きたならそろそろ戻るぞ」と言って引き起こそうとする。ツァイは耳を寝かせて嫌そうな顔で了承し、立ち上がる。


「でも」とフェオは食い下がる。自分でもどうしてこんなことにこだわっているのか、わからなかった。

 もしかしたらかつてこれほどまでに他者から慕われたことがないから、それに戸惑っているだけかもしれない。


「もし、本当に隠し事があって、皆さんの知らないところで俺が裏切ってたり、どこか他国に情報を流してたりしたら……どうしますか?」

「フェオ先生、俺らのこと捨てちゃうの……?!」


 ツァイの悲痛な声に我に返る。自己否定が行き過ぎて、思ったより真剣な声が出ていたことに気が付いた。

「い、いえ。すいません、これも例え話です」と慌てて否定するフェオに「よかったぁ~」とツァイが安心する。

 ハンはそれをニヤリと笑って「まあそんなことはないと思うし、あったとしても大丈夫だろ」と軽々しく言う。

 また根拠もなくそういうことを……と言い返そうとしたところで、半裸の熊は肩に訓練用の戦斧を担いで言い放つ。


「もしそんなことがあったら、真っ先に将軍が気付いて始末してるだろうしな」

「うんうん、そうじゃなくても俺らが殺してるから大丈夫大丈夫。フェオ先生はいい人だからあんまりそういうことしたくないけど!」


 そして二人してガハハと笑い飛ばす。

 フェオはそれ以上拘泥するべくもなく、引きつった顔で「ハハ」と乾いた笑いを漏らすことしかできなかった。



 ♂♀


 魚油に明かりを灯したにおいは炊事場にも似ている。

 竹紙や革紙に記された帳簿や、各地から届く書簡をまとめた棚を壁一面に敷き詰めた書斎は、獣臭さとも魚臭さともつかぬにおいに満ちていた。

 野生の獣の皮を使った書状などもあるのだろう、鞣した革特有の渋いにおいが立ち込める部屋の中央に置かれた机に掛けて、虎は筆を動かし続けている。

 石造りの兵舎の一室で夜もすがら書類仕事に励む虎は、顔も上げずに口を開く。


「柚子と……生姜茶か」


 こちらに一瞥もくれぬまま、においと気配だけで俺の接近を悟った虎に驚いていたのも今となっては昔の話だ。

 その五感の鋭さが、将軍にまで上り詰めた実力を裏付けている。きっと背後から迫る矢だって避けてみせるのだろう。


「はい、お好きだと聞いていたので」

「あぁ。特にこの時期はな、冷え始めに丁度いい」


 ゆったりとした絹の衣服を着こんだ虎は何かをしたためていた書類を脇にどかし、山になっている紙束からまた一枚取る。

 油壺にも似た墨壺に筆を離して、虎は椅子を僅かに引く。

 大股を開いて座り直し、「来い」と自分の片膝の上を叩いた。

 俺は湯呑を持ったまま虎の膝の上を跨ごうとして……やめた。


「お腹の子に悪いですかね」

「構わんさ、そなたの手で腹を撫でてやってくれ」


 あっさりと切り返されて、それならばと俺は「失礼します」と告げて、虎の脚を跨ぐ。

 まさしく丸太のような脚は俺の体重如きではビクともせず、椅子代わりにちょうどいい。

 片足だけでも俺が腰掛けるのには十分で、虎は俺に向かって体を開いたまま目線を書面に落とし、差し出される湯飲みを受け取った。

 湯気が出ているのは俺の分だ。虎の頭をしたこの大男はどうも熱いのが苦手なようで、飲めるぎりぎりの温度まで冷ましたものを淹れてきていた。


「……今日はずいぶんと無茶をされておりましたね」

「んぐ……」


 虎は俺から目を逸らして机上を見つめたまま、受け取った湯飲みに顔を隠す。

 ずず、と茶を啜る音はバツが悪そうに聞こえた。


「む……無茶ではない。動ける範囲で動いたまでだ」

「それを無茶と言うのです。もちろんおれも気高く強い殿を慕っておりますが、身重の体で模擬戦など言語道断です。腹を打たれでもしたらどうするのですか?」

「おれがそのような不覚を取るとでも?」


 それは実際その通りだ。だが、配下の兵士達が虎の予想を上回らないことがないなどと誰が断ずることができようか。

 虎はごくりと喉を上下させて、湯呑を下げる。


「だとしても、殿がそのような体では兵も気を遣って身が入らないでしょう。せめて自己鍛錬に留めてください」

「む、それは……」


 何か抗弁しようとして、しかし虎は刺すような視線に気づいたようで、「心得た、以後気を付けよう」としおらしく肯首した。

 俺の譲歩を汲んだのか、あるいはこれ以上は危険だと察したのか、虎は意外とあっさり引き下がる。それがまるで、この天下の大将軍が俺なんかの顔色を窺っているように感じてなんだかむず痒かった。

 しかしそれでも、有事の際にはこの虎は全てを放り出して危機に駆け付けるのだろう。

 今でこそルォ国との衝突は収まりつつあるが、また反旗を翻さないとも言い切れない。

 その時にお腹が大きいからという理由で戦線に出れないのでは将軍の名折れだろうか。せめて出産するまでは平穏な日々が続いてほしいと願うばかりである。


「お腹、大きくなってきましたね」

「あぁ」


 毛皮の上からでも力を蓄えた凸凹の腹筋が感じ取れるほど逞しかった虎の腹は、今や丸みを帯びてふっくらと膨らんでいた。

 四肢を含めた体の輪郭に変わりはないが、腹だけが絹の平服を押し上げて膨らんでいるので、明らかにただ太っただけとは違う腹の張り方をしている。

 そういえば、その分厚い胸板はさらにむっちりと豊かさを増して見える。

 出産に備えてこちらも丸く張り出してくるのだろうか、とその腹を撫でながら考えていた俺は、虎が湯呑を置いた音で我に返る。


「元気に生まれてくるといいですね」

「あぁ、きっと同い年の子の中では一番の戦士になる」


 虎は俺に体を触らせたまま筆を取って、「これまでもそうだった」と言ってさらさらと作業の続きに入る。


「殿は……」

「なんだ?」

「既に二人、ご子息がいらっしゃるのですよね?」

「そうだな」

「今はおいくつで?」

「上は十八になったな、下は今……十一、か」


 別に婚姻したわけではないのだが、なんとなく連れ子の面倒も見ないといけない再婚相手のような気分になってしまう俺を他所に、虎はどこか自慢げに続ける。


「上のは今は別の隊だが、既に立派な戦士でな。そのうちそなたと見えることもあるだろう。下のは都で軍師の修行中だ」

「へえ……若いのにすごいですね」

「フ、おれの子だからな」


 それはそうだ、この虎の子ならばなるほどそういうこともあるだろう。

 蛙の子は蛙ならば、傑物の子もまた名を馳せる傑物であるはずだ。

 しかし。

 翻って、俺はどうだと考えて……少しだけ気が重くなってしまう。

 虎の腹を撫でて、じんわりとした体温を手のひらに感じていた。


「今日、練兵場で……副長と歩兵長と話しまして」

「あぁ、ツァイのやつ支障なかったか?」

「えぇ、すぐに鍛錬に戻られてましたよ」


 もはやその場にいたことを隠そうともしない虎に思うところはあったが、ひとまずは見逃すことにして言葉を続ける。


「それで……話の流れで、どうしてみんな敵だった俺にそこまで心を許せるのかと聞いてみたんです」

「二人はなんと?」

「将軍が信じてるから、と」


 フ、と虎は口角に笑みを刷いて、手元の紙を脇に寄せる。

 それから紙束からもう一枚引っ張り出して、淀みなく書状に墨を走らせていった。


「その……自分からするような話でないことは承知しておりますが……」

「ん?」

「仮に、俺がそのような男ではないと。信用に値しない人間だとわかったら……」俺を見ず、机に向いている顔を見上げて、続ける。「ラォ殿が殺してくださいますか?」


 虎はピタリと筆を走らせていた手を止めた。

 顔の向きは変えないまま、視線だけを膝の上の俺に向ける。


「何故そんな話を?」

「それは……」


 正直、自分でもよくわからない。

 でもそれは、今日一日中ぐるぐると考えていたことだった。


 この二ヶ月ほどを虎の将軍が率いる部隊と行動を共にしてきたが、皆親切に接してくれる者ばかりで、捕虜上がりの身に余る破格の待遇は俺は受けていた。

 後ろ指を指されることも、侵略者と謗られることも覚悟していたが、この部隊の獣人兵達は一人で食事している俺をほっとかないほど友好的だった。

 有意義な仕事を与えられるばかりでなく、忌むべき余所者である俺のことを温かく輪に迎え入れてくれた。

 そこに多少の下心はあれど、イム国で雑用を押し付けられ農民の子と嘲笑されてきたことに比べればルォの人々は皆純朴な善人で、自分の能力を必要としてくれる。

 自分などを受け入れてくれるからという思いと、虎の期待に応えたいという思いが何よりも俺を突き動かした。

 だから、俺が評価されているのはほとんどこの虎のおかげと言っても過言ではないのだろう。俺は言葉を続ける。


「今の暮らし向きに不満があるとか、ルォの人々を謀ろうというわけでは断じてありません。皆自分によくしてくれますし、それに救われています」

「ならば、なぜだ?」

「ただ……不安を抱いてしまうのです。自分はそこまで言われるほどの器ではなく、取るに足らぬ小人に過ぎませぬ。それに気づいた時、今優しくしてくれる皆は、そして我が殿はどのように失望なさるのかと、考えてしまうのです」


 虎はしばし手を止めて、筆を持った手とは逆の手で俺の頬に触れる。

「それはつまり」一日の終わりで毛皮がごわついた指先で俺の頬を撫で、耳を擽る。「そなたを見出だしたおれの目を、疑うと?」


「そ、そういうわけではありませぬ、ただ……自信がないのです。この身に過ぎる役目に眩み、皆を泥舟に乗せやしないかと思ってしまうのです。怒りを買い報復に会うことが怖いのではなく、俺を見る目が変わるその瞬間こそが恐ろしいのです」


 虎はそれを黙って聞いていた。

 何を弱気になっているのだと怒られやしないかと思っていた俺は、予想外に穏やか声音で「おれのフェオよ」と名を呼ばれて驚く。


「ならば、ひとつ。そなたに約束しよう」

「やくそく?」

「ウム」


 虎は筆を置いて、もう片方の手で俺の腰を抱くとまっすぐ俺を見つめる。頬を掠める指が俺の頬骨をなぞっていた。


「そなたがこれから何を悩み、迷い、選択したとしても。その結果で失態を演じ、おれを怒らせ、誰の不興を買おうとも」虎は穏やかな父の顔で続ける。「おれがそなたを見限ることは、断じて無いとここに誓おう」


 戦場に響くような怒号でも、閨で囁く熱に浮かれた嬌声とも違う。

 大きく張った声でもないのに、その穏やかな声音は乾いた土を撒くように俺の体へスッと沁み入った。


「でも、将軍、貴方のような男に俺は……」

「くどいぞフェオ・ロン。そなたがどう思われようとも、最後にこのおれの隣に居ればそれで構わぬ。降り注ぐ矢の盾になり、道を切り開く矛となろう。おれの道行きにはそなたが必要だ、いいな?」


 あまりにも情熱的な言葉に、時が止まったのかと思った。

 頬に添えられた手から、とくとくと鼓動と体温が伝わる。

 この虎が、俺を安心させるためにその場しのぎの心無い言葉を口にするような男でないことはとっくに知っている。そうでなければ、俺も本気で仕えようとは思わなかっただろう。

 だから、その言葉に胸が詰まる。万の兵を率いる偉大で気高き将軍から寄せられる無償の信頼と愛は、動揺や戸惑いよりも多幸感で俺を満たす。


「どっ……どうして、貴殿ほどの男が、そこまで」

「忘れたか? おれはそなたを気に入ったのだ」


 またそういうことを軽々しく言って、と思ったが、虎の目の奥に燃える情熱が俺の反論を抑制する。


「その顔も、その体も、目も、声もだ。一目見た時から……そして今なお、そなたを知れば知るほど、な♡ ゆえに、おれの許可なくおれから離れることは許さん、わかったな?♡」


 虎の目はどこか追憶するようで、その目が現在の俺と、過去の俺を見ていることはすぐにわかった。


 あの日、俺が自ら投降したとき、もし出会っていたのがこの虎でなければそうは思われていなかったのだろうか。

 俺などのどこにそれほど惹かれるのかはわからない。

 わからないが、この虎がそんな世辞を言うような男ではないことは確かで、だからこそ俺は無性にそれが嬉しかった。


 誰かに求められている、必要とされているというだけで、これほど無敵な気分になるとは思いもしなかった。

 俺は顔が緩むのを堪えて、ぐっと頷く。


「……肝に、銘じます。この先何があっても、必ず貴殿のお傍に生きて帰りましょう」


 虎は鷹揚に頷いて返す。膝の上に座っている俺がじっとそれを見上げていると、まばたきの拍子にぴくりと顔の縞模様が動いた。

 背中を曲げて前傾するのに合わせて、俺も天を仰いで背筋を伸ばす。

 ふっくらとして俺の五指をふにゅっと包む胸に手を添えて、寄せられる口吻を受け入れた。


 ふさふさとした毛並み、次いでぷにっとした黒唇が口に触れる。

 舌を出してがっちりと閉じられた唇を突くと、小さく開門した虎の口ががっぷりと俺のおとがいに噛みついた。

 人間の平たい口を割り開くと、ぬるつきながらもざらっとした舌が俺の舌腹を撫で、歯列をなぞった。負けじと突き出した舌で唾液を混ぜあって、口の間から糸を引いてこぼれ落ちる。

 虎はじゅるじゅると柚子風味の唾液を啜ってから俺の唇をべろりと舐めて口を離す。

 変わらず穏やかな声で、しかしどこかばつが悪そうに言った。


「……イムでは、接吻が求愛の方法なのだろう? そなたもこれを愛しく思うのか?」

「え、えぇ……その、恥ずかしながら習熟しているわけではないのですが……将軍と唇を重ねるのは、俺も特別な感じがして、好きです」

「フ、そうか」


 ルォ国には特定の相手と夫婦になる習慣がない。

 子育ては家族ではなく集団で行うもので、たくさん孕むことを善き行いとしているからか、配偶者を作るような文化は多様な生き方の一つでしかなかった。

 あまりに交尾が身近すぎるからか、特定の誰かに義理立てる婚姻や交際の契りは他国間との交流が盛んな今でこそ広く知られているが、根底には堅苦しい奇特な文化という印象が残っていて、ルォの者にはまだ縁のない話だったという。


 ゆえに、顔中を舐め回すのではなく、唇を重ねて舌を交わす接吻によって愛を伝え合う行いについても知識がなかった。

 俺はそれを人間同士の……というよりイム国での恋人同士の求愛方法として紹介した。

 平たい顔の人間と吻のある獣人では難しいだろうが、好き合う者同士、あるいは相手を愛おしく思っていることを伝える手段だと教えたところ、この虎は俺相手にそれを要求してきた。

 それはつまりこの大虎がどう思っているのかということであり、そして俺はそれを拒む理由がないことに気づいた。

 それからというものの二人きりのときや、閨で肌を重ねるときにはこうしてどちらからともなく唇を寄せ合うようになった。もう一か月も前の話だ。


「フム、奇妙なものだが……そなたの柔らかい唇とうねる舌を擦り合わせて熱を交えるのは悪くない心地だ。それに、そなたのココもこれを好いておるようだからな」

「あ、っ……と、殿……!」


 俺の腰に手を回していた虎が、鼻に息が当たるくらいの距離で宣う。

 頬を撫でていた手がするりと蛇のように麻の長褲を穿いた股間をまさぐり、中心部で容積を増して鎌首をもたげていた熱棒を撫でた。


「フ、実にいい反応だ。つくづくそなたはおれをそそらせる」

「う、うぅっ……面目ありません……」

「よい、むしろそなたほどのオスがおれを相手にいきり立たせることが……何よりも喜ばしい♡ 本当ならこのまま……とイキたいところだが、まだ片付けねばならんものが残っていてな」


 そこで、この虎が職務中であることを思い出した。

 途端に罪悪感が湧き出して、俺はさっと血の気が引いた。妊娠して大変なのは向こうのほうなのに、何を勝手に慰めてほしそうに憂鬱になっているのだ。すっかりこの虎に甘えきってイチャついたことで腰に物欲しさを覚え始めているはしたない自分を辛辣に考える。

 仕事中の主君にくだらぬ用事で時間を取らせたことを後悔して、謝罪する。


「も、申し訳ありません。お忙しいところに、このような話をして」

「構わぬ。そなたはよくやってくれている、もっとおれを困らせるくらいで丁度いいくらいだ」


 それに、と虎は俺の額に口づける。ちゅっ、と窄めた口先で小さく吸って、続ける。


「おれはそなたのそういうおカタいところこそ、実のところこの上なく好ましいと思っておるからな♡」


 にっこりと弧を作る口角が、虎目に浮かんだ穏やかな色が、その言葉に偽りはないと告げている。

 だからこそ俺は照れ臭くて、曖昧な返答しかできなかった。


「……その、俺も、将軍を……ラォ殿を、お慕いしております」

「フ、そうか。……不思議なものだ、そんな言葉だけでもこんな心地になるのだな」


 迷惑をかけている身でありながら何を、と思ってしまうが。

 すっと細められた目が俺をじっと見るので、根拠もなく自分は物事の正しい側に立っているという自信が湧いてくる。

 この虎を慕い、必要とされることは他の何をおいても優先すべき最善であるように感じてしまう。


 仕えるべき誰かを持たず、漫然と嫌われながら生きていた頃から考えると、俺は今ようやく俺という役割について理解したように思える。

 もし同じように捕虜として捕えられることがあったのなら、俺はこの主君を裏切り生き延びるために情報をペラペラ喋るのだろうか。

 否、そんなはずはない。決定的に違うのは、穏やかな熱で包み込み、俺を暖かく包み込む想いがこの胸に宿っていることだ。

 あぁ、今度は殉じれる。信じたものに胸を張れるよう、俺はこの命を正しく使えるに違いなかった。


 あの日、俺を見つけ出したその虎目。

 期待と自信に満ちたその目に見つめられるだけで、その体躯から発せられる熱が移るように自分でも何かできるのではないかと思ってしまうのだ。

 大陸中にその名を馳せる大将軍の熱量が俺にも伝わってくるのを感じる。

 俺の些末な憂鬱なんて、自己否定に病むくだらない自分なんて、それだけでどうでも良いと思えてしまった。


「……ええと、その。処務中に失礼いたしました。俺はこれで」


 しかし、面と向かって好意を伝えるのが気恥ずかしいのと、目と鼻の先にある虎の分厚い体のことを考えると妙にそわそわしてしまうのもあって、俺はその場を離れようとする。

 しかし虎の手がそれを許さない。がっしりと再び腰を抱いて、虎が言う。


「よい、ここにいろ。茶の礼がまだだ」

「お礼など、そんな……っ、い、いえ。承服しました」


 机上に向き直った虎がじろりと視線だけで俺を一瞥するので、慌てて取り下げて背筋を正す。

 物分かりのいい返事に将軍は「ウム」と満足げに口元を緩めると、俺の腰に添えたままの手で脇腹を擽ってきた。

 指先で擦るように撫でる指遣いに、ぞくぞくと快感が想起されてしまう。

 そして、流し目を俺に送りながら、べろりと舌なめずりを一つ。


「終わったら……今日も存分にかわいがってくれるのであろう?♡」

「……っ、はい、勿論です」


 断る理由も、断れる道理もなくて、俺はおとなしく拝命する。

 よし、と虎は言って上機嫌に尻尾を躍らせると、書類に意識を戻すのだった。


 それから俺はしばらくの間を虎の膝の上で過ごす。

 さらさらと紙の上を筆が走る音、虎の大きく長い鼻息、丸く張り出した腹の胎動は、この場に俺一人ではないという安心感を与えてくれるようでもあった。


 きっと自分は何も成し得ぬ、長い国の歴史に名も残らぬただ一人の男である。

 それでも、あの日、この虎に出会ったことには何かの意味があると思いたい。


 見出してくれた主君の隣に相応しい男になるには、そして生まれてくる子に胸を張れる父になるには。

 あとどれくらいの時間が必要かというのは、何度計算を繰り返しても答えは出ないようだが。

 せめてその時に、頭のカタい父親と思われることがないよう祈るばかりである。





~おまけ~


◆イムの国

 地理は大陸北部、台地にある都市国家。名産は粘土、鉄鉱。

 粘土状の大地が広がり、作物が育ちにくく、冬は雪まで降る。

 東部に長い河があるため漁業や海産資源は豊富。

 利己主義な国王を中心とし、民に重税を強いていたが、自国民への食糧供給問題と税の搾取に限界があると知るや否や他国への侵攻を決意する。


 善き王ではないが、メリットをぶら下げて他者の心を掌握する口八丁に長けており、ルォ国侵攻の扇動に当たった。

 男女比率は七対三、文化的工芸品はなく市場は逼迫している。

 財政に関しても汚職や圧政が見え隠れする上、選民思想から来る差別意識と短慮のために外交はほぼなく、ルォとの大戦から二年、大陸暦21年にルォ国の属国と化し、建国から100年余りで事実上滅亡した。滅んで当然だこんな国。


◆ルォの国

 地理は大陸中央部、密林地帯を中心に栄える国家。名産は果樹や作物などの豊富な食糧類のほか、木材や繊維類なども存在する。

 元は密林に住まう蛮族が木々を切り開いて興した国家であるため、中心部の都は周囲を天然の要塞に囲まれている。

 詳細に記録している者が少ないため周知されていないが、建国から実に300年ほどである。


 その文化の最たる特徴は、国民の大多数が獣人族という獣が二足歩行する部族であることが挙げられる。国内に見られる種は虎、獅子、馬、犬、狼、牛、熊、猪、狐、貂、ハイエナ、鯱などの哺乳類のほか、鮫や鷹、トカゲなども存在する。また国内には竜族が住む隠れ里もあるとされている。

 どの種族にも全て女性(雌)が存在せず、オス同士で繁殖する。

 しかし獣人同士での受精率は、他種族(主に人間)と比べると三割ほど低下するとされているが確たる証拠は今のところなく、あくまでデキにくいという程度である。

 また、挿れただけで絶頂を繰り返してしまうほど相性の良い運命のつがいがこの世のどこかにいるとまことしやかに囁かれているが、都市伝説扱いである。


 その生殖については、ルォの民は肛門、直腸の奥に前立腺小室が変形した子宮が備わっている。これは普段は閉じているが、オーガズムによって入り口が緩むことで受精の準備が整う。

 よって卵管も体内に存在し、成人した獣人は月に一度排便とともに排卵される。これは十六~十八歳頃の獣人に初めて訪れる性徴であり、成人の証と共に妊娠可能になる合図でもある。

 なおこの時期は強制的に子宮が開き、体の生理的反応から分泌された快楽物質で直腸全体が敏感になるため、排便するだけで絶頂を伴う。

 ゆえにルォ国の便所は常に誰かの喘ぎ声が響き渡っているとかいないとか。


 懐妊後六か月ほどで出産、また身籠っている間も母体は身重になるほかに目立った変化はなく、食欲は少し増進する。オスによってはつわりもある。

 また、子を孕むことを最大の善行とする価値観を有する。

 我が子を国や周囲に誇れる一人前の戦士とすることで社会から認められるため、オス達の中でも経産夫はヒエラルキー上位に位置する。

 次点で孕ませたことのあるオスが尊敬視されるが、妊娠に比べて目に見えて証明しにくいため、虚偽の申告をする者も多く、自称したとしても確たる証拠がなければ嘘つき扱いされやすい。

 逆に、事実であると証明できれば『相手をケツで絶頂させてなおかつ孕ませるほど射精できるオス』として周囲の見る目は一気に変わってくるが、他種族のオスならばそれだけで竿役としてそれなりに色目を使われる(後述)ので、よっぽどでない限りこれを自称する必要はない。


 裏を返せば、ルォの獣人は射精するためではなく繁殖するために交尾を行うので、かの将軍(後述)のようにおまんこが屈強すぎるあまりろくに孕まないオスは敬遠されがちである。

 また、孕ませてくれるオスなら誰でもいいというわけではなく、当然だが母体によって色々なこだわりで相手を選ぶ。

 そのほか、平均して性欲が強い種族のため、獣人同士で交尾ではないラフな性処理というのも頻繁に行われている。

 しかしただの性処理(しゃぶるか扱き合いをするか)の相手ならいいかとベッドに行ったらヒートアップしちゃってマジ交尾しちゃって孕んじゃいました、というアホな獣人も相応に多く、そういった向こう見ずな獣人らが出生率に貢献しているのもまた事実である。


 産まれてくる子の種族は産む側のオスの遺伝子に因る。たまに竿役の遺伝子が入り込むこともあるが、それは種族や形質的なものではなく、目の形や性格、魂の在り方に出るとのこと。

 ちなみに雌がいないルォの国では妊娠しているオスのことはお袋や袋役、妊娠させたオスのことは竿役と呼び分けているが、他国との交流もあって近年では母親や母体という呼称が用いられがちである。


 産まれた子の親権は原則として孕んだ側が有し、孕ませた側のオスは希望すれば育児に参加できる程度であり、多少気にかけたりはするものの全面的に養ったりツガイになる義務はない。

 乳飲み子を卒業した幼児の面倒を見るのはコミュニティ内の歳を取ったオスの役目とされているが、決まった形はない。その場合は、育児に参加する共同体全員を家族として育つ。

 もちろん中にはお互いに操を立ててツガイとなり、外国式に言えば婚姻して核家族化するオス同士もいるが、たくさん交尾して若いうちに一人でも多く子を孕んだほうがオスとして優秀である、という価値観が根付いているため、まだあまり浸透していないらしい。


 軍備に関しては、国王直属の軍のほか、軍事部の事実上トップである六騎の将がそれぞれ数万の兵を率いるなど兵力は強大。

 加えて、政務にも携わるそれぞれの将の間にも劣情のまま男を全て捕えて竿奴隷とする蛮族時代からのルーツをなぞる過激派と、あくまでも相手の自由意思を尊重する穏健派が存在する。


 国内の男女比率はほぼ十割が男子だが、一割にも満たないくらいの移民女性が存在する。

 大体は針仕事や炊事、そして子守を担っており、軍旗を初めとした細やかな装飾を施す彼女らの腕もまた貴重とされている。

 ちなみに一応獣人との子も孕めるようだが、そもそものルォの獣人族がおちんぽ大好きなため相手にされることは稀なようである。中には意中の相手や旦那を獣まんこに寝取られた、なんていう悲劇も……。


 経済に関しては、近隣国を併合してできた国のため都心部以外にもそれなりに大きな都市を持ち、各都市間を国内の商人や、国外から来た隊商が行き交っているため市場は非常に活発である。

 特にルォ国の女性が織ったとされる織物や工芸品は諸外国に好評で、買い付けに来る商人は多い。


 中心に位置する首都も盛んではあるが、六騎の各将軍が治める六方にある都市も人通りは多く、人口の多さに比例するように市場も大きい。

 そこに住まう淫らで粗野な国民性の獣人達とは裏腹に、どの街並みも整然とした石造りであるため治安が良く見えるが、少し奥に行けばそこかしこの路地裏で獣人達が励んでいる上に、隙を見せれば腰を抱かれて誘われるので初心者はあまりあちこち出歩かないようにしたい。


 それだけ広大な土地を有する併合国家のため、実はどの都市でも獣人以外の人種がそれなりの数生活している。

 彼らをただの竿としてしか見ていない過激な獣人もいるにはいるが、獣人種ではないオス、というだけで子供を孕ませやすい竿役としてそれなりの待遇を受けられるため、意外にもちんぽ一つあれば差別や迫害とは無縁でむしろ金すらもらえるくらいの生活を送っているという。

 これらの理由から、交易商人や諸外国の旅人、大使の受け入れにも寛容で、特にもてなしているつもりはなくとも一部の彼らにとっては居心地が良いらしく、この国を訪れるときだけ滞在期間を長くする男もいるとかなんとか。



◆ラォ・フー

 222cm 161kg 38歳

 ルォの六騎将が一人、毛並みの鮮やかな虎で、毛を伸ばして誤魔化しているが実は片耳が深く切れている。現在二児の母で、劇中で晴れて三人目を身籠った。

 ミルクの出る豪傑。


 ルォの田舎村の出身。元々は七人兄弟だが今では数えるほどしか残っていない。

 その血筋はけして名のあるものではなく、生粋の叩き上げの将軍。

 まだ近隣諸国との諍いが続いている頃に生まれたため、戦の続く国境沿いの村と家族を守るため成人する前から戦士として戦いに出ていた。

 そのうえで、生き残るために戦に必要な軍略の重要性に気づき、幾度にわたる出兵で独学ながら兵法を体得している。


 性格は豪傑らしく豪放磊落、竹を割ったような快男児でありつつ実力に裏打ちされた自信家である。嘘やできないことを言わない性格で、将として常に合理的で正しい判断ができるよう心を殺している一面もある。

 ウム、よかろう!とか言って壁をぶち破るタイプ。


 副長ハン・レイとは同じ村の出で、同じ六騎将でもある獅子のクアン・ザオと共に数少ない当時の彼を知る幼馴染である。

 特に、自身の生まれ故郷を治めていた将軍を父親とするクアンとはどちらが先に立派なオスとして、そして大将軍として名を上げるかを競い合った仲であり、成人してからもどっちが孕むか、孕ませられるかを競って互いに子作りしたこともある。

 その結果、クアンより先んじて二十の時に第一子に恵まれる。そして、産後すぐに戦時中であったシャン国との戦線へ向かい友であるクアン、およびハンらの窮地を救い部隊を再編して勝利へ導いた手腕を評価され、翌年に大将軍の地位を授かる。これにより、ルォの国にそれまで存在した五大将軍という称号を六騎将と改めた。

 フーという姓と右乳首の金環(ピアス)はその際に与えられたもの。虎を意味するほか、人々に勝利を与える風、という由来がある。


 直属で動かせる配下の兵は一万、そこへ別動隊扱いである副長ハンの五千人が加わり、総勢一万五千人。

 部隊の要となる副長格はハンを含め三人おり、全員が将軍とほぼ同格の実力の持ち主。

 得意な武器は剣か長矛。騎乗しての戦いはもちろん、白兵戦では無類の強さを誇る。

 また、軍略にも長けているため前線に立ちながらも積極的に戦術の立案、および指揮を執る。

 戦だらけの人生を送ってきたからか、他人の嘘や善悪、および本質を見抜くことに直感的に長けている。特に他者の善悪性には敏感で、その超人的な観察眼と直感は九割の確率で的中する。


 将としての総合的な実力は並外れているが、近年懐妊が見られないためオスとしては軽んじられ気味で、落ち目の将軍などと噂されてもいた。

 しかしイム国による侵略の防衛を一手に引き受け、これを撃退したことと自軍およびルォの都に多くのイム兵を引き入れた戦功、そしてめでたく第三子を授かったことで国内での評判は一気に持ち直し、改めてひとかどの人物であることを国中に知らしめた。

 子を孕むための努力も続けていたが、大体は将軍の体力についていけずろくに相手を気持ちよくさせられないまま干からびるまで精液を搾り取られる竿ばかりのため、孕むことができずにいた。

 そのため、孕ませることのできない将軍に対して竿役を申し出る者も年々減り、しばらくは本気でイくこともあまりなかったという。

 とはいえ一晩の行きずりの相手にせがまれて孕ませたこともあるにはあるが、ルォでは子供の親権は原則産む側のみが有するのと、行きずりの相手だったため本人も把握していない腹違いの子供がたくさんいる。

 これを知ったフェオが父親が育児放棄とは何事かとちょっと怒るのはまだ先の話。


 劇中ではルォの奇襲に対しては侵略戦争であることを第一に見抜き、すぐさま伝令を飛ばしまともにやり合わず退却するよう指示した。

 その後も数人の捕虜を取りつつ必要以上に退却し攻め込ませた上で、拿捕する準備を整えながら敵の拠点と前線が十分に遠ざかった頃に反撃に出る。

 敵の心が完全に折れないように常に相手の戦力をわずかに上回る程度の兵力を送り込み、その上で損耗を避けるよう徹底させたため自軍の死者は全体の百分の一にも満たなかったという。

 ちなみに部隊内の兵士の服装がバラバラだったのは着ろっつっても着ないのでそのままにさせつつ、こちらが消耗しているように見えるよう利用した。


 捕らえたイム兵のうち、戦意が薄く抵抗意思のない者は懐柔策として丁重に扱い、信の置ける部下に処遇を任せた。

 劇中で言われているのは大体がこちらの扱いの捕虜で、想像より人が良い獣人たちとその快楽に愛着が湧いた彼らもなんだかんだでそれなりに楽しくやっているようだ。


 そして敵対心が強く反抗的な者は強硬策として、いわゆる過激派としての思想が強い部下に任せており、竿奴隷として末端の兵卒も使える性処理道具としていた。

 強壮剤を打ち込み、常に勃起するよう調整させた竿奴隷の体は獣人兵の尻の毛で擦れて腰や太腿の皮膚が擦り切れていたり、体重を受け止めすぎて腰が折れて下半身不随になっていたりと惨憺たるありさまである。

 無論、そんなことだから死んだら使い捨てである。ちなみに肉が臭いので食用にはしないが家畜の餌にはする、とのこと。


 前述の善悪を見抜く勧により、捕らえた捕虜を振り分けるため予め将軍が全員を面通ししている。

 この信頼が基になっているため、部隊内の兵士も安心して捕虜と接することができる。

 そして捕らえた兵士の数が千を超えたころ、戦の決着をつけるため国境沿いの平野に陣を構えるイムの軍に攻勢をかける。

 結果は目に見えており、虐殺になるだろうことは明らかだったため逆に開戦前に大演説を披露。自軍への士気高揚もそうだが、必要以上に威嚇することでイム兵の心を折り撤退のきっかけとさせるための最後の仕掛けだった。


 出産し命をつなぐことを誉れとする国民性が下地となって、道半ばで死すことを忌避し生き延びるための意志が特に強い。

 ルォ国の獣人兵全体に言えることだがそれは別に生き意地が汚いというわけではなく、自己犠牲や役割を果たした上でなお生きて遂げようとする意志のことを言うものであり、十数年前に今は亡き某国との戦において殿を務め身柄を捕らえられるものの、自らの体で救出までの時間を稼ぎ無事生還するほどである。

 そのため、同じように生きる意志の強い者に惹かれる傾向がある。


 長男レン・フーは獅子将軍のクアンとの子であり、次男のシャオ・フーは上記の事件の際に凌辱され孕まされた子である。

 慰み者とされている間、唯一自陣営の非人道的行為に心を痛め、凌辱に参加せず世話係を請け負っていた下っ端の兵士は現在の部隊の主厨長を務めている。

 また、捕虜に対する必要以上の干渉のために間者として疑われた彼を身をもって庇い、公衆の面前で自身を凌辱させることでその疑いを晴らさせた。第二子シャオ・フーは実はその時にできた子供であるが、輪姦されていたこともありそのことは本人を含め公に知らされていない。


 好きなものは柚子と強くて若い男。この強さというのは腕っぷしだけに留まらず、意志の固さや目つきの鋭さ、あるいは賢さなど本人なりの尺度らしい。若い男に関しては、若いほうがいいちんぽをしているから好きとかなんとか。

 嫌いなものは辛いものと他人の悪性。もちろん食べることには食べられるし嫌いなだけで弱いわけではないので取り乱すほどではないが、食事として楽しめないとのこと。副長ハンを含め部下には一定数辛党がいるが、ちょっと理解できない。

 他人の悪性は嘘をはじめとして他人を欺こうとする行いや、加害しようとする敵意を特に嫌悪しており、(獣人の中では)比較的平和主義であるラォもこれには容赦しない。


 性処理や交尾については繁殖のためのまぐわいであるほか、ほとんど腕試しにも似た認識。現代風に言うとスポーツ感覚のセックスというところ。

 フェオに関しても同じだが、愛情を感じるというより特別独占欲を掻き立てられることを認めている。

 しかしアレほどの良いちんぽを独占してはいけないという思いでグッと堪えている。

 そのため、フェオが他のオスに種付けを誘われていたとしてもそのスタンスは劇中で述べられた通り揺るぎない。

 でも交尾も無しにイチャついてたりキスしようとしてたら不機嫌になる。それは好き合うもの同士がするものと教わったので、自分以外にするなってなる、多分。


 フェオを見初めたのは劇中で言われている通り見た目や目つきが気に入ったからというのもあるが、一番は自らの身を差し出し仲間を守りながらも生き延びようとする貪欲な目つきに自分と同じ生への執着を感じたから。

 幼い頃から戦いに明け暮れ、兄弟さえ亡くし多くの死を見届けてきたラォは心のどこかで『絶対に生きて帰ると信じられる者』を探していたのかもしれない。


◆フェオ・ロン

 177cm 70kg 25歳

 ルォ国の第十五席付けの勘定方。この席次は末席に位置する。

 黒髪の成人男性。農民の子でありながら、科挙試験をほぼ満点で合格した秀才。勘定方としての役人仕事は貴族や名門の子が兵役逃れで籍を置くことが多い中、裏金もなしに科挙の学科試験で合格した異例の存在。


 本来戦線に立つことはない存在だが、第一次異民族征伐隊の派兵に伴い、従軍しながらの雑用と帳簿係を押し付けられ出兵。

 初日の奇襲で大勝したと報告を受けながらも、自陣営の兵が死傷より行方知れずとなっていることに違和感を覚えたことをきっかけに、ルォ国が何らかの思惑で手加減している可能性に気付く。

 しかし相手側との死傷者の数が逆転した四日目に頭に血が上っている指揮官らにそれを説く藪蛇を行ったため、弱気になっていると叱りを受け前線送りにされる。

 五日目に決定的な撤退をし、ついには当初の国境際まで追い込まれたのち、七日目についに崩壊した戦線を離脱し、せめて前線送りになった自分を気遣ってくれた兵士達だけでも助けようと思い自ら投降した。


 幼いころ目の前で母を亡くした際に、何があっても生きてと言われたことを無意識のうちに引きずっており、生への執着が強い。

 死ぬに足る理由を得られないまま死ぬことを恐れる……よりも強く嫌い、激しい怒りを覚えるため、極限状態にあればあるほど頭が回転する現場タイプ。


 劇中では捕虜として情報提供する代わりに身の安全を求める。最初は腹に一物あると見られていたが、将軍の面通しを経てから安全のお墨付きをいただく。もちろん本人のあずかり知らぬところで。

 自ら投降し交換条件を突きつけた唯一のイム兵のため、比較的きれいな独房に勾留されていた。

 なお、一緒に逃げまどっていた連中は無事逃げおおせたことを数か月後の手紙で知る。


 基本の四則演算はもちろん、鼠算や帳簿の巨大数暗算から二点間測量、三角測量その他諸々をこなす数学者。今は暦と星から方角を割り出す方法について勉強中。

 現代風に言うと人間電卓兼コンパス兼スキャナーというところ。

  官僚として登記する際に苗字を決めたが、当時流行っていた詩から引用して語感で適当につけた。それが竜を意味すると知ったのはルォ国に来てから。文系には疎い。


 ノンケの童貞で今回の被害者。イムの国の(というか人間の)一般常識から脱し切れていないため、主君であると同時に虎の将軍を生涯の伴侶として認識しており、『殿』と呼ぶようになったのもこれまでの自分とけじめをつけるためとか。


 しかしここ十年ほど交尾し続けていてもろくに孕んでいなかった将軍をものの数夜で孕ませたこともあり、今では一万ちょっとの獣人に名と性豪さを知られ下半身を狙われる日々である。

 肝心の殿に相談したらあっけらかんと『孕ませてやれば誘ってこなくなるのではないか?』なんて言うのでもう大変、私の下半身どうなっちゃうの~?!


 今は劇中の説明通り与えられた職務をこなしつつ、帳簿係や金庫番を担うことのできる人材を育成している。しかしまず基本的な読み書きから始めたので、先は長そうである。

 さらに言うと参加者の多くはワンチャン将軍を孕ませたオスのちんぽとヤれねえかな~なんて考えてるのでもっと不安である。


 そんなわけで、本人の戸惑いとは別に周囲の獣人兵とは比較的友好的な関係にある。

 すれ違いざまに挨拶されたり、仕事の合間に冗談交じりの世間話なんて何年ぶりだろう……と陰口と嘲笑の的になることも、仕事を押し付けられることもない新しい職場には本人も満足している。でも挨拶と同時にちんぽを揉んでくるのはやめてほしい。


 好きなものは甘いものと、不本意ではあるがオスの胸と尻。前者については曰く嫌いな人いるのか? とのことで、後者についてはここ最近ついつい目で追ってしまうようになったとのこと。

 無意識に目で追っていることをからかわれることが増えたが、俺が好きなのは殿の胸と尻だけです……と言い切ってしまうと嘘になるので何も言えないお年頃。将軍はそんな青年を見て愉快そうに笑うのだった。


 嫌いなものは馬鹿と不合理と非道。賢くあっても合理的でなければいけないし、合理的であっても人道に則っていなければいけない。そして、人道に則っていても賢くなければ意味がない……という信条を持つ。

 劇中で自分を身代わりに差し出したのはこれに基づいたもので、人を見殺しにできるほど非情ではないが、かといってみんなのために命を差し出すほど愚かでなかったため。


 性処理や性行為については、勃起が収まらないほど溜まったら抜く程度……だったがルォに来てからというもののどうにも勃起する頻度が増えたような気がしている。

 それなのに周りの獣人たちはあまりにもカジュアルに口の前で輪っかを作るジェスチャーやちょっとそこの木陰で立ちバック、という調子で誘ってくるので堪えるのも一苦労である。

 一応虎将軍に義理立てているので他のオスとヤるわけにはいかない……と思っているが、虎将軍は自分以外の腹に子供を作ることに肯定的でどうしようと思っているし、この頃は副長の熊に「色んなオスとヤって技術を鍛えたほうが将軍をずっと満足させられるんじゃねえか?♡」と言われたことがずっと引っかかっている。


人生で初めて自分を必要としてくれたラォを敬愛している。

彼を抱くのは自分を見つけ出してくれたことの恩返しのつもりでもあるが、最近では誘われるのを心待ちにしている自分がいる。



◆ハン・レイ

 215cm 180kg 38歳

 ラォ・フー隊の副長の一人。全身に傷跡を背負う巨漢のツキノワグマ。

 長柄ではなく、斧刃が自身の巨体と同じくらい巨大な鉄塊にも似た戦斧を得物としている。

 五千人を従える副長であり、ラォ・フーの率いる部隊の別働隊として動くことが多い。


 性格はガサツで粗野……のように見えて打算的。現実主義で、時に冷酷非情に見える策でも勝つためなら躊躇しない。

 おいおいマジかよ……とか言って壁をぶち破る将軍に肩をすくめるタイプ。


 超重武器である戦斧を掲げているのは武器の巨大さで相手の戦意をわかりやすく喪失させるためで、無駄な殺生は好まない。

 それは殺した殺されたによる怨恨の螺旋が面倒くさいからで、けして命を尊ぶわけではない。

 なので、ヤる気の相手は面倒だが渋々叩きのめす。


 主な役割は陽動、斬攪、挟撃など。巨体でありながら馬術に秀でているため、突破力と機動力を生かしての立ち回りを任されることが多い。

 粗野な物言いとは裏腹に、副長を任されるほどには冷静で、前線で怒号を飛ばし暴れていても自らの本分を忘れることはない。

 幼馴染である将軍との絆は厚く、半ば兄弟のように信頼しあっているし、よくお互いにしゃぶり合いながら抜いたものである。

 

 幼い頃はラォと共に戦場で名を挙げることを夢見て、鍛錬に励んでいた。

 体も大きくなった今もそれは同じで、三人いる副長の中でも将軍とまともにやり合えるのはハンだけである。

 その真骨頂は馬上から相対速度を乗せた強烈な一撃……ではなく、どんな馬でも即座に駆れる器用さと、あらゆる武器を使いこなせる万能さにある。

 愛用の戦斧は馬上であっても動きづらく、白兵戦では使いづらいのでどちらかというと不得手ではあるのだが、自分の立場上わかりやすい力強さを示すのも副長の役目だと思っている節がある。

 そして、普通の直剣を持たせたハンにラォが勝ち越したことはないという。


 五人の子を持ち、上から二十、十六の双子、十二、八歳。一番上は同じ獣人との子だが、それ以外は国外の商人や旅人との子でどちらかというと他種族の竿役を好む傾向にある。

 見た目がひょろっちくて片手でひねり潰せそうなオスに好き勝手腰を振らせながら煙草を吸うのに興奮する性癖で、「こんな頼りないオスに孕まされるワケねえだろ……♡」というスタンスで交尾に迫る。

お気に入りの竿役が次にいつ訪れるかを常に把握しており、それ以外にも他国の外交官や商人にはそれぞれ唾をつけているので実は部隊内では結構パイプを持っているほうである。



◆ツァイ・グエン

 200cm 130kg 30歳

 ラォ・フー隊の歩兵長。灰色の狼。騎馬を駆らず、歩いて進軍する兵をまとめている。

 剣で敵うものは副長か将軍くらいだが、劇中では訓練にやる気がないのと、身重の将軍に無意識ながら手加減していたためあっさり負けた。

 性格は怠惰で、訓練や勝負事の勝ち負けにあまり興味がなく、辛いことや苦しいことも嫌いで常に見た目のいいオスと交尾したいと思っている快楽主義の楽天家。

 どうせ将軍や他の優秀な誰かが何とかすると思ってるので欠伸しているタイプ。


 実力に波があるので副歩兵長が代理で歩兵軍に指示を出していることが多く、本人はやる気になることが稀だが部隊の窮地には誰よりも機転が利く昼行灯。

 敵味方の実力を分析する目が鋭く、軍議にも副歩兵長共々分析家として呼び立てられている。副歩兵長に大体は任せきりで、やる気はないけど求められれば的確に意見を言う。

 本人曰く、一人だけが優秀では意味がない。その優秀さを周りに伝播させてこそ真に優秀なのだ、とのこと。

 でもそれサボりたいだけですよね?!バレたか。


 好きなプレイは複数プレイ。竿も穴も入り乱れての乱交が好き。


 三人の子持ち。上から十、九、八の年子。基本的に乱交で孕んだので誰の子かわからず、乱交グループのみんなで子供の面倒を見ている。



◆結局どういう話だったん?(※作品のイメージを損なう恐れがあります)









〜プロローグ〜

イム国「アカン国民の人口に比べて食糧が足りなすぎる……このままじゃバッタバッタ死んでまう」

イム国「でも税を下げるのはイヤやで!腐れ農民どものためにワイらの収益が減るなんてあってはならんことや」

イム国「せや!なんか南の方にちょろちょろ出入りして栄えとる国があったな……そこからちょっと領土を永久に借りればええんちゃうか?」

イム国「今こそ汚らしい蛮族に成り変わり我らがこの地を頂く時!!」

イム国「突撃ィー!奇襲や奇襲!な〜に本気でボコったろうとは思っとらんで!ちょっとビビって領地譲ってくれたらええねん!」

フェオ「えぇ……もうダメやこの国」


〜一日目〜

虎将軍「ファッ!?何やこいつらこんな寡兵で奇襲?陽動か?ひとまず捕まえられるもん捕まえて撤退や」

イム軍「やったー大勝ちやー!このまま攻め上がるで!」

フェオ「なんか行方不明者多いな……」


〜二日目〜

虎将軍「とっ捕まえたやつ曰く、どうやらガチでこの数で侵略しにきたらしいな……彼我の戦力差がわからんのか?まま、ええわ」

虎将軍「ちょいと考えがあるしワイに任せとくれや」

ルォ国「ほな一任するで」


虎将軍「ぐわーこれはたまらんわー退却退却ー(棒読み)」

イム国「やったーまた勝ったぞー!故国がもうあんなに遠い!思えば遠くへ来たもんやねえ(しんみり)」

フェオ「んん……?」



〜三日目〜

虎将軍「そろそろええかな……よ〜し軒並みとっ捕まえたれ〜」

イム国「あ……あれ……?なんかこいつら昨日とはしぶとさが全然ちゃうやん!」

フェオ「ひーふーみー……あっ(察し)」


〜四日目〜

虎将軍「うーん大勝大勝、さ〜て捕虜どもは……コイツは良し、コイツも。コイツもいい。あとはダメやね、お前らで好きにしてええで」

獣人兵「ウッヒョーさすがラォ様話がわかる!」

イム兵「ヒェッ……」


イム軍「な、なんでワイらがあんな蛮族どもに負けとんのや?!」

イム軍「それもこれもお前らの気合がたるんどるからやで!!クソクソクソ!」

フェオ「あの〜これ、やめた方がいいと思うんですけど……」

イム軍「なんやチミは?!今ワイらいい感じなんやから黙っとけや!こいつ売国奴や!不忠者!(前線送りー)」

フェオ「……」

前線のみんな「あの……気を強く持って」


〜五日目、六日目〜

虎将軍「ダラダラやんのも飽きたな……そろそろ潮時やねぇ」

イム軍「あ、あかん……もはや国境の外まで追い返されてもた……兵も最初の三分の二ほどしかおらん……」

イム軍「こ、このまま帰ることもできん、何でこんなことに……」

イム兵「(もうこれ)無理だろ……」


〜七日目〜

虎将軍「ほな、終わらせるかぁ。まあ虐殺も本意ではないし適当に脅かすからイイ具合に逃げ延びてくれや」

獣人兵「ウッヒョォ〜!おちんぽの掴み取りだぜぇ!」

前線「グェー死んだンゴ」

イム兵「ヒェッ無理無理(逃亡)」

フェオ「あっやばい(逃亡) お前らも逃げるぞ、早く動け!」

前線のみんな「ヒェーッ死にたくないでやんす〜!」

イム軍「貴様らーっ!逃げるなー!戦えーっ!あっあっ、退却、退却!ポーラ!ポーラ!(討死)」


〜本編〜

フェオ「死ぬかと思ったけどおれの身柄一つでみんなのこと見逃してもらったし今のところ捕虜としてだけど無事に生きてるで」

フェオ「捕虜とはいえ拷問もされないし牢屋も悪くない、意外と良い人たちなんやないか?いやいやでも人を食うって言うし油断は禁物か……」

フェオ「と思ってたら将軍の部屋に呼ばれたやで。尋問室とか他にあるのに……?もうアカン(絶望)」

フェオ「えぇいこんなとこで死ねるか!何をしてても生き延びてやるで!」

虎将軍「う〜ん、ちらっと見た時も思ったけど、話せば話すほど……彼イイね……♣︎」

フェオ「あの〜なんか気に入られたのはいいんですけど……あのッそこまでするとは、アッ、アーッ!」


〜エピローグ〜

フェオ「なんやかんやでかの将軍を我が殿として仕えることにしたで」

フェオ「しかも新しい職場もホワイトで最高や!陰口もパワハラもモラハラもなくて涙が出るで」

フェオ「でもあの〜将軍を孕ませたことに後悔はないけど周りのオスどもにえっちな目で見られるのは何とかなりませんかね……」

熊副長「ダメです♡ 俺ともガキ作ろうぜ♡」

フェオ「ヒェッ将軍助けて〜ッ!」

虎将軍「ええで!たくさん子作りしてくるんやで、でもそなたはワイのもんやからな、最後にはちゃ〜んと帰ってくるんやで♡」

フェオ「と、とほほ〜ッ!もう子作りなんて懲り懲りだよ〜!」


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POSTEDJan 24, 2023
ARCHIVEDJun 10, 2026